著者
菅原 計
著者別名
Sugawara Kei
雑誌名
経営論集
巻
34
ページ
1-34
発行年
1990-03-24
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005726/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja移転 価格税制と実質課税 の論理
菅 原 目 次 はじめに1. 我が国の移転価格税制2. アメリカにおける移転価格税制3. 国際租税における実質課税 おわりに 計 はじめに 我が国 の多 国籍企業 は,1970 年代 から急速に活発化し,それに伴い タック ス・ヘイブンを利用 した租税回避 現象 が見られるように なった。 かかる国際 的 規模での租税回避 を防止 するため,昭和53 年税制改正 により「内国法人 に 係る特定外国子 会社等の留保金額を益金算入」 す る規定が租税特別措置法第66 条の6 におかれ,いわゆるタックス・ヘイブン対策 税制が整備さ れたが1) これだけでは十 分とはいえ なかった。 何故なら, 第1 にタックス・ ヘイブン対策税 制で は, タックス・ ヘイブ ン に設置した子会社 が実体を有 する場合には適用除外 となり, 第2 に姉妹会社 間取 引について は機能しないこと, 第3 に合算課税 されて もそ れが資本の保 有割合によることか ら,移転 された所得の全部を取戻 すことがで きない, な どを指摘することができる2)。 昭和61 年 度 の税 制改正 により,我 が国 に もようや く移 転価格税 制が取入 れられ, 租税特別措 置法第66 条の5 に「国外関連者と の取 引 に係 る課税の特 例」 として規定 されることになった。 タッ クス・ヘイ ブン対策税制施行から8 年 も経過し た理由 は,移転価格税制の施行運用 が困 難であ ったことに もよ るが,多国籍企業 の国際競争力に対 する国家的 配慮 が作用 し たこと も見逃せ ない。 アメリカでは,すでに1968 年から移転価格税制が施行 さ れているか ら,我が国 移 転 価格 税 制 は アメ リカ と 較 べ て18 年 の遅 れを と っ たこ と に な る。OECD も, こ の国 際 的 移 転 価 格 問 題 に対 して1976 年 か ら取 組 んで お り,1984 年 に租 税委 員 会報 告 書 (TransferPricingandMultinationalEnter-prises ―ThreeTaxationlssues − )を 公 表 し て い る。 さ らに, イ ギ リス で は1970 年 , フ ラ ン スで は1977 年 ,西 ド イ ツで は1972 年 , そ れぞ れ移 転 価 格 税 制 を 施 行 し て い る3)。 こ のよ うに, 移 転 価格 税 制 が主 と し てT国 外関 連 者 と の取 引を 対 象 とし て 課 税 す ると ころ か ら, 一 国 の移 転 価 格 に対 す る課 税 は他国 の利 害 と衝突 し, 当 該 関 連 企 業 にと って は経 済 的 二 重 課 税 を もた らす。 か か る国 家 間 の利 害調 整 は, 租 税 条 約 に基 づ く相 互 協 議 によ り 解 決 さ れ るこ と に な るが, そ の場 合両 国 が 移 転 価格 に対 す る租 税 規定 を もっ て い る こと が前 提 とな る。 我 が国 も国 際 的 に 足 並 み を そ ろえ な け れ ば な ら な くな り, 同 税 制 を採 用 す る に 至 っ た が, 欧米 諸 国 より10 年 以 上 も導 入 が遅 れた こと は問 題 と いわ ざ るを 得 な い。 国 際 租 税上 , 各 国 の移 転 価 格 税 制 が異 な り, 認 定基 準 も異 な るた め, 複 雑 な諸 問題 が 日 々生 起 し て い る。 まさ に,「国 際 的 企業 や多 国 籍 企 業 を めぐ り, 関 係 各 国 間 に お い て深 刻 な税 源 争 奪 合 戦 を 展 開 す る事 態 にい た って い る4)」 といえ る。 本稿 で は, 新 設 さ れ た我 が国 の移 転 価 格 税 制 の問 題点 を, ア メ リカ の 移 転 価 格税 制 と比 較 し な が ら明 ら か に し, 実 質 課 税 の原 理的 思 考 を 通 し て 移転 価 格 を めぐ る国 際租 税 上 の 問 題点 を 検 討 した い。 1. 我が国の移転価格税制 昭和61 年度 (1986) の税 制改正 により新設された我が国 の移転価格税制 は,次 のように規定す る。法人が,昭和61 年4 月1 日以後 に開始す る各 事業 年度 において,当該法人に係 る国 外関連者との間で資産 の販売, 資産 の購入, 役務 の提供その他 の取引を行 った場合 に, 当該取引につ き,当該法人 が当該 国外関連者 から支払を受 ける対 価の額 が独立企業間価格 に満 たないとき,又 は当該国外関連者に支払 う対 価の額が独立企業間価格を超え るときは, 独立 企業間価格で行われたものとみなす(租税特別措置法第66 条の5 第1 項)。 したがって,本条 は,内国法人 が国外関連者へ独立企業間価格より高額 で 売却し た場合, または国 外関連者 から独立 企業間価格より低額で購入した場 合 は適用されない。 さ らに, 国外関連者との取引 に限定 される。 国外関連者
の定義 は, 租 税特 別 措 置 法施 行 令 第39 条 の12 で 次 のよ う に規 定 さ れ る。 ① 一 方 の法人 が, 他方 の法 人 の 発行 済 株式 の総 数又 は出 資 金 額 の百 分 の 五十 以上 の株 式 の数 又 は出 資 の 金額 を 直接 又 は間接 に保有 す る関 係。 ② 二 つ の 法人 が同 一 の者 に よ っ て, それ ぞ れそ の発 行 済 株式 等 の百 分 の 五十以 上 の株 式 の数 , 又 は出 資 金 額 を 直接 又 は 間接 に保有 さ れる関 係。 ③ 一方 の法 人 が, 他 方 の法 人 の事 業 の方 針 の全部 又 は一部 に つ き実質 的 に決定 で き る関 係。 ① 他方 の法 人 の役員 の二 分 の一以 上 , 又 は代 表 す る権限 を 有 す る役 員 が, 当 該一 方 の 法 人 の 役員 若 し くは使 用 人を 兼 務 して い る者 , 又 は当 該一 方 の法人 の 役員 若 し く は使 用人 であ った者 で あ る こ と。 ○ 当 該 他方 の 法人 が, そ の事 業 活動 の相当 部 分 を当 該 一 方 の法 人 と の 取 引 に依 存 し て行 って い る こ と。 ⑤ 当 該 他方 の法 人 が, そ の事 業 活 動 に必 要 と さ れ る資金 の相 当 部 分 を 当 該一 方 の法 人 か ら の借 入 れ に よ り, 又 は当 該一 方 の法 人 の保 証 を受 け て調達 し て い る こ と。 本条 によ れば, 国 外 関 連 者 の認 定 は, 株 式保 有 割 合 に よ る形 式 基 準 か, ま た は特殊 な関 係 によ る実 質 基 準 か に よ って 判定 さ れ る。 実 質 基 準 の採 用 は, 株式 数 の調 整 によ る国 外 関 連 者 除 外 に対 して対 抗 し よ う と す る も ので あ る。 百 分の五 十 以 上 の株式 又 は出 資 金 額 を 保 有 して い るか否 か の判 断 は, 直 接 保 有 と間接 保 有 の合 計 し た割 合 によ る( 同施行令第39 条の12 第2 項)。 ここ で 間接 保有 と は, 一 方 の法人 が他 方 の 法 人 の株式 を 直接 保 有 して い な くて も, 他方 の法 人 を支 配 す る法 人 の株式 を 保 有 して い る場 合, お よ び一方 の法人 が 他方 の法人 を 支 配 す る法人 と の間 に, 発 行 済株式 等 の保 有 を 通 じて 連 鎖関 係 に あ る場 合を 意 味 す る。 連 鎖関 係 にお い て百 分 の五 十 未満 の保 有 割 合 の法人 があ ると, そ こで連 鎖 は切 れ るこ と に な る。 たと え, 連 鎖 が 切 れて も, 実 質 的 に事業 の方 針 の全部 又 は一 部を 決定 で きる関 係 に あ れば , 特 殊 な関 係 と し て 国 外関連 者 と 認定 さ れ る。 と す れ ば, 資 本 の保有 割 合 を も って国 外 関 連 者 と認 定 す る基 準 は, 必 ら ず し も必 要 と はいえ ない。 何 故 なら, 実質 的 な支 配 関 係を も って, 特 殊 な関 係 のあ る国 外 関 連 者 と認 定 す るとい うこ と は, そ の中 に百 分 の五 十 以 上 の株式 の数 又 は 出 資 の金 額 を 直 接 又 は間 接 に保 有 す る 場 合 を 含 む の は当 然 で あ るか ら で あ る。 こ の こ と は,租税特 別措 置 法 第66 条 の5 で「百 分 の五 十以 上 の株式 の数又 は 出 資 の金
額を 直接又 は間接に保有 する関係その他の政令で定 める特殊の関係のあるも のをい う」 とあ るところから, 特殊な関係 の一 例示 として株式 保有関係を規 定 してい ることは明 らかであ る。 百 分の五十 未満であって も,租税特別措 置法施行令第39 条 の12 第1 項第3 号が適 用さ れるから,過半数持株基準 は移転価格税制上の国外関連者認定 にあたって なんの意味も有しないといえよう。現 に, アメ リカの内国歳入法 (InternalRevenueCode )482 条で は,支配 の認定 にあたって持株比率基準 を認定基礎 とはしていない。 租税特別措置法第66 条の5 第2 項 は, 独立 企業 間価格認定方法について,OECD 及 び アメリカの認定 方法を その まま採 用 し, 次 の4 つの方法を掲げ る。 ① 独立 価格比準法 ② 再 販売 価格基準法 ③ 原価基準法 ④ 上記3 つの方法に準ずる方法その他政令 で定 め る方法 各々 の認定基準の方法について,同条同項 は次のように説明する。 独立価 格比 準法と は,「特殊の関係にない売手 と買手 が,国外関 連取引に係 る棚卸資 産と同 種の棚卸 資産を当該国外関連取引 と取引段階, 取引数量 その他が同様 の状況 の下 で売買し た取引 の対 価の額 に相当す る金額を もって当該国外関連 取引 の対価 の額 とす る方法をいう」とする。 しかし, この説明で は,棚卸資 産の同 檜陸とは何か,取引段階,取引数量 その他が同 様 の状況下とは何を指 してい るのか, また内部取引と外部取 引の適用差異 について,何 ら触れられ ていない。さらに,問題なのは「独立 企業間 価格」の定義 がないことであ る。 そ もそ も, 移転価格税制を採用す る理由 は, 移転価 格の恣意的操作により 故意に租 税邁脱若 しくは租税回避 することを防止 することで あり,移転価格 を独立 企業 間価格 に修正 して課税すること により,納税者間 の課税 の公平性 を図ることにある。 移転価格を 独立企業間価格に修正 して課 税す るためには, 先づ比較す べき 「独立企業 間価格」を決定しなければならない。特定 の状況の もとでの「独立 企業間価格」 は,単一 でなけ ればならない が, 我 が国 の場合には三者択一方 式をと ってい るため,常に複数 の「独立企業 間価格」 が存在 する可能性があ る。 こ れは,OECD 及びアメリカの基準 と大 いに異 なる。
再販売 価 格 基準 法 につ い て,同 法同 条 は,「国 外関 連 取 引 に係 る棚 卸 資産 の 買 手 が特 殊 の関 係 にな い者 に対 し て当 該 棚 卸 資産 を販 売 し た対 価 の 額 か ら通 常 の利潤 の額 を 控除 して 計算 し た金 額 を も っ て当 該 関 連 取 引 の対 価 の額 と す る方 法を い う」 と 規定 し, 同 施行 令39 条 の12 第6 項 は, 利 潤 額算 定 のた め の通 常 の 利 益 率 につ いて,「国 外 関 連 取 引 に 係 る 棚 卸 資 産 と同 種 又 は類 似 の 棚 卸 資産 を, 特 殊 の関 係 に ない者 か ら購 入 し た者 が, 当 該 同 種又 は類 似 の棚 卸 資産 を非 関 連 者 に対 して 販売 した取 引 に 係 る当 該再 販 売 者 の売 上総 利 益 の 額 の当該 収 入 金 額 に対 す る割 合 と す る」 と 規定 す るが, 同 種又 は類似 の棚 卸 資 産 の平 均 利 益 率 が, 何 故特 定 の 独立 企業 間 価格 認 定 と して使 わ れる のか が 問 題 であ り, そ の点 に関 す る説 明及 び適 用 要 件 が ま っ た く示 さ れて い ない。 原 価基 準 法 につ いて同 法同 条 は,「国 外関 連 取 引 に係 る 棚卸 資産 の売 手 の 購 入, 製造 そ の 他 の行為 に よ る取 得 の原 価 の額 に 通常 の 利 潤 の 額を 加 算 して 計 算 し た金 額 を もっ て当 該 国 外 関 連 取 引 の 対 価 の 額 と す る方 法 を い う」 と し, この加 算 す る利潤 額 の算定 に関 す る利 益 率 につ い て 「当 該同 種 又 は類 似 の棚 卸資 産 を 非 関連 者 に対 し て販売 し た取 引 に 係 る当 該 販 売 者 の売 上 総 利益 の額 の当 該 原 価 の額 の合 計 額 に対 す る割 合 と す る」(同施行令第39 条の12 第7 項) と規 定 す る。 し かし, こ の 原価 基準 法 は, 前二 者 の基 準 を 適 用 す る より 実 際 に は難 か レ い。 何故 な ら, 原 価 計算 の段 階, 無 形 資産 の 有 無, 用 役 提 供 割 合, 効 率等 が 異 な れば , 単 純 に利 潤額 を 加算 す るわ け に は い か な い か らで あ る。正 確 に計 算 しよ うと す れば, 多 くの調 整 を 必 要 と し, 調 整 数 が多 くな れば な る ほど 真 の「 独立 企業 間 価 格」 か ら遊 離 す るこ と に な る。 問題 は, い か なる 基 準 若 し く は原 理 に よ って こ れ ら の方 法 の1 つを 選択 す るの かと い う こと であ る。 一 般 に, 課 税 所 得 の計 測 は, 実 質 課 税 の原 理 に支 え ら れて い な け れば な ら な いが, こ の実 質 課 税 の原 理 が 「独 立 企業 間 価格 」 認 定 にあ た って ど のよ う に作 用 す る ので あ ろ うか。 国 外関 連 者 と の取 引 にお い て, 自由 経 済 市場 に お い て成 立 す る価 格 と異 な る価 格 が設 定 さ れ, 自由 経 済市 場 を 前 提 と す る 独立 企 業 間 価格 と比 較 して課 税 の 公平性 が損 わ れ ると 認 め ら れ る場 合, 独立 企 業 間 価 格 に修 正 して真 の課 税所 得を算 定 把 握 しよ う と す る のが, 実質 課 税 と い う課 税 原 理 に基 づ く移転 価格 税制 の認 識 論的 性 格 であ る。 し たが って ,租 税 特 別措 置 法 第66 条 の5 に基 づ いて,特 定 の 移転 価 格を 独
立企業間価格 で取 引されたものとみなすためには,先づ第1 に当該特定取引 における独立 企業間価格を決定しなけ ればならない。独立 企業 間価格 が決定 されて始 めて, 当該移転価格が恣 意的に設定された価格であ るか否 かが認識 されること になる。 この独立企業間価格とは, 独立 した企業間 で自由経済市 場を前提に成立し たであろう取 引価格を意味する。故に,独立 価格比準 法が, 概念上最 も適切 な独立企業 間価格を認定す るための方法 といえ る。再販売価 格基準法と原価基準法 は, 独立 企業間価格を認定 する方 法として は第二義的 な方 法であり, 独立 企業間 価格を間接的 に把握しようとす るものであ る。 かかる意味で, 租税 特別措 置法第66 条の5 第6 項の規定 は,条件がついて はいるものの,課税庁 の判断認定 について実質課税 の本質か らみて問題があ る。同条同 項によ れば, 独立 企業間価格を算定するため に必要 と認 められる 書類若しくは帳簿又 はこれらの写 しの提示又は提出を求 めた場合, 当該 法人 がこれらを遅 滞なく提示 しなかったときは,税務署長は, 当該法人の当該国 外関連取引に係る事業 と同種 の事業を営む法人で,事業 規模 そ の他の事業 内 容 が類似するものの当該事業 に係 る売上総利益率又 はこ れに準ず る割合 とし て政令で定 める割合を基礎 として,再販売価格基準法若 しく は原 価基準法 に より算定し た金額を 独立企業間価格と推定して更正また は決定す ることがで きるというものであ る。 これは,同条第8 項 による確定申告書とと もに提出さ れた国 外関連取引 の 申告について, 独立企業間価格を算定するために必 要と認 められ る書類等 の 提出義務を法人 に課 した ものである。 問題 は, 当該法人 が「遅 滞なく提示又 は提出しなかったとき」に, なぜ独立価格比準法によらないのかということ である。換言 す れば, 法人に独立企業間価格を算定するために必 要と認 めら れる書類若しく は帳簿又は これらの写しの提出を求 めるということは,当該 国外関連取 引価 格 が独立 企業 間価格 に満 たない か又 は超 えて い る場 合であ る。 その認定 にあ たって, いかなる独立企業間価格を もって当該移 転価格と 比較したのかとい うことであ る。 同条第6 項 の規定から, この比較された独立企業間価格 に独立価格比準法 で算定された取引対 価の額 が使 われたとは考えにくい。 何故 なら, 独立価格 比準法により比 較さ れるべ き独立企業間価格に関する情報を すで に もってい ながら,新 たに再 販売 価格 基準法若しくは原価基準法 による独立 企業間価格 の情報を集 めて, そ れに基づ き更正又 は決定す るというのは租税運営上不自
然 であ る とい わな け れば な ら ない か らで あ る。 従 って, 課 税庁 は最 も得 や す い 情報 で あ る同 種 の規模 で 事業 内 容 の類 似 す る企業 の平 均 売 上 総利 益 率 を も って独 立 企業 間 価 格 を算 定 し, こ の独立 企 業 間 価格 に 満 た な い か又 は超 え ると き は, 独立 企業 間 価格 算定 の た めに必 要 と 認 め ら れる書 類 等 の提示 又 は提 出 を求 め, 当 該 移 転 価格 が 独立 企業 間 価格 で 設定 され て い る な らば, 企業 が自 ら それを 立 証 す べ き こ と を確 認 した ものと 解 さ れよ う。 もし, 当 該 企 業 が課 税庁 の要 求 す る書 類 等 を 提 示 又 は提 出 し ない と きは, 当 該 移転 価 格 が独 立企業 間 価格 に依 って い な い こ とを 当 該 企 業 自 らが認 め た こ とに なり, こ れに対 し て課 税庁 が す で に認 定 済 み の再 販 売 価 格 基準 法 か原 価 基準 法 に よ る価格 を もって 独立 企業 間 価 格 と み なし て 更 正 又 は決定 で き る とす るもの で あ ろ う。 もしそ う で あ るな らば, 租 税 法 律主 義 に 基 づ き課 税 の 公平 性 を理 念 と す る 実質 課 税 の本 質 か ら みて到底 容 認 で きな い。 何故 な ら, か か る認定 は推定 課 税 であ り, 実 質 課 税 か ら は完 全 に遊 離 した もの で あ る か らで あ る。 再 販売 価 格基 準法 及 び原 価 基 準法 は, 独立 価 格 比準 法 の代 替 的 方 法 で あ り, 真 の独 立 企業 間 価格 は独 立 価 格比準 法 に より 算 定 す べ き で あ る。 課 税庁 の基 本的 認 定 は, 原則 と して 独 立 価格比 準 法 によ るべ き であ り, こ れ に対 し当 該 法人 が再 販 売 価格 基 準 法 もし く は原 価基 準 法 に よ る 独立 企 業 間 価 格 算 定 の情 報 を提 供 し た場合, 又 は独立 価格比 準 法 によ るこ と が不 可 能 若 し く は 不合 理 であ る場 合 , 始 めて 次 の 代 替的 基準 と して こ れ らの方 法 に よ る独 立 企 業 間 価 格認 定 の 段 階 に進 む こと に な ろう。 しかし,独立 価 格 比 準 法 に対 し て,「実 際 の取 引 にお い て,問 題 と な って い る国 外関 連 取 引 と全 く同 種 ・ 同 様 な 取 引 価 格 が あ る こ と は 稀 で あ り, (独立 価 格 基準法 の難 点 の一 つ と して 独 立 企業 に お け る同 種 の比 較 可 能取 引 を 見出 す の が困難 であ ると い う意 見 が多 い) し たが って 通常 は 何 らか の調 整が必 要 と な って く る。 こ の場 合 そ の相 違 を ど こ まで 調 整 す るか, あ るい は ど こまで 調 整 すべ きか と いう問 題 かお る5)」 と い う指 摘 が あ る。 し かしな が ら企業 間 で の実 際 の取 引 価 格 を 税 務上 否 認 し, 別 の 認定 価格 を も って 独 立 企 業 間 価 格 と み な す わ け で あ る か ら, そ こ に は当 然 な が ら合 理 的 ・客 観的判 断 基 準 が必 要 と さ れ る。 課 税庁 は, 比 較 す べ き 独立 企業 間価 格 に関 する市場 価 格 情報 を 出 来 るだ け多 く収 集 し, そ れ に基 づ き最 も適 切な 独
立 企業間価格を 選定 し,客観的 に認定しなければならない。入手 可能な安 易 な情報だけに頼 って認定す ること は,明 らかに実質課税 に反 す るものとなろ うO 国税通則法第24 条 は,「その納税申告書 に記載さ れた課税標準等又 は税額 等 の計算 が国税 に関 する法律 の規定 に従っていなかったと き, そ の他当該課 税 標準等又 は税 額等 がそ の調 査 し たと ころ と異 なると きは, そ の調査 によ り,当該 申告書 に係 る課税 標準等又 は税額等を更正す る」 と規定 す る。 移転 価格税制 は, 租税 特別措 置法第66 条 の5 第6 項から更 正又 は決定 の範躊 と して捉え られてい る。 更正処分の原因 となる事由 は2 つあ る6)。 ① 取引の事実関 係を正確 に反映 して計算がなされないこと。 ② 法人税 に関 する法令 の規定 に準拠して計算がなさ れないこと。 独立 企業間価格によ る更正 は, 上記①に該当 しない。 何故 なら,実 際に取 引された価格 は, 事実であ って現実の価格だからである。 移転 価格 の更正又 は決定 は,この現実 の価格 に対 して,租税特別措 置法第66 条 の5 により,当 該価格が独立 企業間価格 と異 なる場合, 独立企業間価格を もって更正又 は決 定す るというものであ るから② に該当する。 ②に該当す るな らば, 法令の規 定に準拠 してい ない ことを理由に更正又 は決定す るのであるから,租税 法律 主義に基づ き何 かど のよ うに準拠していないかを明確にしなければ更正又 は 決定 が出来ない筈であ る。 この点,3 つの方法とその他 の方法を単純 に列挙 する同条 は,租 税法律主義 及び実質課税の原理か らみて極 めて大 きな問題 が あ ると言 わねば ならない。 2. アメリカにおける移転価格税制 アメリカにおける移転価格税制は,1968 年 に内国歳入 法(InternalReve-nueCode )482 条に基づ く所得税規則(lncomeTaxRegulations )1482 条 が整備されて以来実際 に施 行されてい る。IRC482 条 は・「同一 の利害関係者によって直接又 は間接 に所 有ソ:owned 」 さ れているか又 は支配(controlled)されている2 つ以上 の組織(organiza-tions )若しくは営業(trades)又 は事業(business )のいずれにおいて も(そ れらが法人格を有するか, アメリカ合衆国において設立 されたか,連結さ れ ているかを問 わず),財務長官 は,脱税を防止す るため又 は所得を明確 に算定 す るために必要 であると認 める場合に は, かかる組 織若しく は営業又 は事業
間 に,総 所 得(grossincome), 所 得 控除(deductions), 税額 控 除(credits)
又 はその 他 の控 除(allowances) を分 配(distribute), 割 り 当 て(appor-tion)
又 は配 分(allocate) す るこ と が で きる勺 と規 定 す る。Regulatons(ITR) のSection1482 −1 は,6 項 目 に わ た って こ こで 使 わ れてい る用語 に つ い て定 義 す る。先 づ 組 織(organizations) と は,個 人 企 業(soleproprietorship) か, パ ート ナ ー シップ か, 信託 財 産(trust), 遺 産(estate) に基 づ く が, 社団(association) か法 人(corporation) かを 問 わ ず, ま たどこ で設 立 さ れ,ど こで 管 理 し て い るか,さ ら に内国 法 人 か 外 国 法 人 か, 非 課 税法人 か否 か, ま た連 結 申 告 さ れるか又 は連 結 の一 員 であ るか を問 わ ず あ らゆ る種 類 の す べて の組 織 を 含 む と さ れる(Regs. §1482 −1(aXD) 。営 業 若 し くは事 業 と は, そ れが 組 織 化 さ れて い るか ど う か, ど こ で 組 織化 さ れ て い るか, 個人 的 に 所 有 さ れて い るかど うか, また ど こで 営業 さ れ て い るか を 問 わ ず, い か な る 種 類 の 営 業 又 は 事 業 で あ っ て も す べ て を 含 む と さ れ る(Regs. §1482 −1{a)(2))。 さ ら に, 支配 と は, 法的 に 強 制力 を 有 す るか ど う か, ど のよ う に 支 配 行為 が可 能 か ま たなさ れて い るか を問 わ ず, 直 接 又 は間 接 のあら ゆる 種類 の 支配 を 含 む。 決 定 的 なこ と は, 支 配 の 事 実(therealityofthecontrol) で あ り, 支 配 の形 式 とか 支配 行 為 の態 様 は問 題 に な ら な い。 もし,所得 若 し く は 控除 が恣 意的 に移転 す る こ とが可 能 であ れば, そ こ に は 支 配 が存在 す る と推 定 さ れ る(Regs. §1482 −1(a)(3))。 我 が国 の 租 税 特 別 措 置 法 第66 条 の5 は, 適 用 対 象 を国 外関 連 者 と 取 引 を す る法人 に 限 定 す るが , ア メ リ カ のCode(IRC)482 条 は, 法 人 は い う まで もな く, 個人 に も, 人 格 の な い 社団 に も適 用 さ れ, 国 外 関 連 者 と の取 引 に も 限 定 してい な い。 支 配 の認 定 基準 に株 式保 有 基準 は な く, す べて 支 配 の実 質 性 に よって判 断 す べ き もの と し て い る。 従 って, 本条 は, い か な る形 式 を 問 わ ず実質 的 に支 配関 係 に あ る個 人 又 は 法人 が, 独立 企 業 間 価格(arm'slengthprice) に よ ら な い支 配 価 格(con-trolledprice) で 取 引 し た場 合 に, 真 の課 税所 得(truetaxableincome) を 算 定 す るた め所 得 等 を 配 分 す る こ とが で きる 旨を 定 め た も の と い え る。Regulations は, そ の根 拠 につ い て, 支配 関 係 に あ る納 税 者 と 支 配関 係 に ない納 税者 と の 間 に課 税 の同 等 性(taxparity) を 得 る こ と に あ る と し,真 の 課 税所 得を 算 定 す る た め の所 得 等 配 分基 準 は, 支 配関 係 に な い納 税 者 が他 の 支 配 関 係 に な い 納 税 者 とarm'slength に 取 引 を す る 基 準 に 求 め ら れ る
(Regs. §1482 −1(b)(功 と説明す る。Arm'slength とは,自由経済市場での 独立 し た当事者間取 引を 意味す るから, ここで いう真 の課税 所得算定基 準 は,非関連者と他 の非関連者との間 で取引さ れた独立企業間価格によるとい う ものであ る。 独立企業間価格(arm'slengthprice) と は,「非関連 者が, 支配されてい る販売と同 じ条件 のもとで支払 うであろう価格をいう。 とい うの は,非関連 者 は通常, 利益を獲得するために資産 を売却 し,独立企業間価格での販売 は, 通常,販売 者に利益をもたらすからである。」(Regs. §1482 −2(e)(2)O))。 これは, 関連者間の支配価格 が, 往々にして独立企業間で は明 らかに成立 しえない価格で取引されることから, 独立 企業 間価格を非関連者が同様の条 件で取引し支払 うであろう価格 に求 めたものであ る。Regulations は, この独立 企業間 価格を 決定す る方法 について次の3 つを 挙げ るノ(1) 比 較 可 能 非 支 配 価 格 基 準 法(ComparableUncontrolledPriceMethod)(2) 再販売価格基準法(ResalePriceMethod)(3) 原価加算法(Cost-PlusMethod) 適用順位は,最初 にCUPM, 次 にRPM, 最後にCPM の順 となる。最初 にCUPM を適用しなけ ればならない理由 として,「 この方 法は独立企業間価格 に対して最 も正確 な判断を もたらす( 同 じ若し くは同種 の生産物 に対して非 関連者が実 際に支払 った価格に基づいてい るとい う理由 で)」(Regs. §1482 −2(e)(1)(u))と説明 する。 もし,どうして もCUPM が適用で きなければ,次にRPM を適用すること にな る。「再販売価格基準法(RPM) は,その場合2 番目に正確 な判断を もた らす方法だからであ る に の方 法で決定さ れる独立企業 間価格 は,原価加算 法(CPM) より, より直接的 に独立 企業間取 引 に基づいているといえ る)。」(Regs. §1482 −2(e)(1)㈲)。 このように, アメリカで は我が国と異 なり, 独立企業 間価格 の定義に基づ き適用順位を定 めている。 実質課 税 の立場 か らは,適用順位 の規定は不可欠 であ ると言 わなければならない。ところで,CUPM とは,関連企業 間での移 転価格を独立 した非支配販売 の もとで成立す る価格と比 較しようとするもの で, その比 較対象取引は次の3 つに分類さ れる(Regs. §1 留2 −2(e)(2)㈲)。
関 連企業 グル ープの一員から第三者への販売(2) 第三者か ら関連企業 グループ の一員 への販売(3) 独立 した第三者から独立した第三者 への販売 例えば,X 法人 は関連企業 グループ の一員であり,関連企業 た るA 法人に 商品を販売 する。 またX 法人 は同 じ商品を非関連 法人 た るB 法人 にも販売 していると,(1)の適用が可能 となり,比較すべき独立企業 間価格はX 法人がB 法人に販売 した価格 に求 められる。X 法人が国外関連法人 で,A 法人とB 法人 がアメリカで組織されてい る会社として, 仮 にX 法人 がA 法人 に商品 をS100 で販売 し,B 法人 には$90 で販売してい ると,B 法人 に対 する販売 価格が比較 すべ き非 支配価格となり,X 法人 とA 法人 と の移転 価格は独立 企業間価格$90 と認定さ れる。 これとは逆 に,X の関連法人 たるA 社がX 法人に商品を販売 する。 非関 連法人たるB 社が同 様の商品をX 法人 に販売 していると(2)のヶ −スとなり, 比較 される非支配価格 はB 法人 からX 法人 に販売 された価格と なる。 仮に,A 法人がX 法人 に販売す る価格 がS250 で,B 法人 がX 法人 に販売 する価 格 がS300 とす ると,比較すべき非支配価格は$300 でこの移転価格S250 は 独立企業間価格$300 と認定さ れる。(3) のケースは, 関連企業 グループ の一員 が独立 した第三者 と取引( 内部取 引) がない場 合, 比較すべき非支配価格を同様の販売 を業 とする非関連法人 間 の取引に求 めよ うとする ものである。 いわゆる外部取引価格を もって,比 較 すべき非 支配価格 と認定 する方法である。 内部取引が存 在す る場合 には, 独立企業間価格認定 に際 して比較 すべき価 格 は内部取 引価格であり,外部取引価格に求め るべきで はない。 ただし,内 部取引が存在して も, 資産 の同種性,取引段階, 販売 数量,市場,支払条件 に違いがあ れば, 単純に比較 することはできない。 条件 が異 なれば,比較可 能性は損われ るか らである。(1) の取引で,X 法人 が同 じ商品を関連法人た るA 社 にS100 で販売 し,非 関連法人た るB 社に$90 で販売 していても,B 社 に対す る価格 はFOB で ,A 社に対する価格 はCIF であり,保険料,運送 費に$20 かかるとす ると,X 社 とA 社と の独立企業 間価格は単純比較によ る$90 で な くS110 と認定 し なければならない。 さらに, そ れが外部取引価格であ ると,「 その棚卸資産 と同 種, 同量であ
り,細かく見 れば, 性状, 構造, 機能等の類似性や,取引段階,取 引数量, 時期,引渡条件, 支払条件, 取引市場等 も考慮す べきであろ う。また付属 サ ー ビ ス,特許権, 商標のような無体財産権の移転があ るか も考慮 すべ きであ8)」 り, その差異調整 価格を もって比 較す べ き非支配価格 とし なけ ればな らな い。 しかし,差異 調整項目 が多 すぎると,金額調整 が複雑になり すぎ, その 結果真実 な独立 企業間価格 から遊 離することになる。Regulations は,比較さ れるべ き非支配価格販売 は弁現実的な価格(unre-alisticprice ) によ る販売を 意味し ないとし,「差異 は, 価格に対 して明確で 合理的 に確認 め出来 る効果(definiteandreasonablyascertainableeffect) を有 する場合 にのみ,価格を調整 することにより反映される。 その差異が調 整 により価格 に反映さ れるな ら, 調整 された非支配販売 によ る価格 が比較可 能非支配販売価格 とな る。 資産価格 に影響する差異発生原因 は, 資産の質, 販売条件,販売にかか わる無形資産,売却時期, 市場段階, およ び販売市場 の違いから生 じる。 価格に影響を与え るほどの差異があ るかどうか, どの程 度 の差異であ るか, さらにそp 差異 が比較できない ほどの差異であ るかどう かは,その取引に伴なう特殊の状 況 や資産を勘案して判断される9)」 とす る。 例として,支配価格による販売 と弁支配価格による販売状況 が同一 であ る が, 支配価格 には商標がついており, 弁支配価格には商標がついていない場 合, 無形 資産の有 無による価格 への影響 は通常合理的 に確認 で きないので, 常態では弁支配価格を もって比較 す ることはで きない10)。 また,支配価格 販売 における製品 に軽微な改良 が施 され,非支 配価格販売 に はなんら改良 がなされていない場 合,一般に軽微な物理的 な改良 による価 格への影響 はほとんどないことが,明 確且つ合理的 に確認で きるので,か か る差異 は通常比較不能を もたらす ものではない11)。 調整可能な比較 すべき非支配販売 価格が2 つ又はそれ以上あ る場合 には, 最 も調整数が少 ない か単純 な調整 ですむ価格を一般 に選択すべきであ る。 例 えば,比較すべき非支配価格 が2 つ あり,1 つは配送条件と支払条件 が異な る場合, 配送条件 のみ異 なる非支配 価格を選択 し, これに調整を加え たもの を 独立企業 間価格とす べきであ る12)。 このよう にRegulations は,比 較 可能非支 配価格を 選定 す るにあ たって は, 出来 るだ け同 種 で同 様 の 条件 の もとで成立 す る現実的 価格 (realisticprice )によらなけ ればな らないとし,いくつかの条件が異なる場合 には,そ
の差異が価格 に対 してどのように影響を与え ているかを 分析し, 調整す る場 合には明確で合理的 に確認 できることを要件とする。非 支配価格と異な る支 配価格であ って も, その差異 が価格に対していかなる状況を反 映しているか を勘案しなければ ならない。例えば,「価格に影響を与え る要因 の1 つ に,売 手 が市場開拓若 しくは維持 のために,通常利益を下回 る価格 で販売すること がある。13)」 この場合,買 手 が第三者 に販売 する価格も通常 の価格 より下回 るか,通常 の価格であ って も他 の製品 より多 くの販売 促進費を必 要 とす る事実 があ れ ば,当該移転価格 がたとえ非支配価格 と異なっていて も独立企業 間価格とし て認められてい る。Regulations は次のような例を挙 げて説明す る14)。 バッ テリー製造業 のX 社は, 子社会Y を経由 して新市場で の販路を拡張 しよう とする。X 社 は,自社バ ッテ リーを小売業者には$20 で販売 し,卸売業者 に は$17 で販売 してい る。Y 社 は卸売業者でX 社のバ ッテリ ーを小売業者 に$20 で販売 してい る。しか し,この度 の新市場で はX 社 のバッテ リーは全 く 知られていない。 そこでY 社がこの新市場 でX のバ ッテリーを販売 するた めには, 他の製品 に比較 してより多額の販売 および広告 コストを負担 しなけ ればならない。 このような状況で,X 社がY 社 に一定期 間$17 以下 で販売 するとき,比較可能非支配価格 はS17 であ るが,その移転価格 が独立企業 間 価格としてそのまま認めら れる。仮に, その移転価格が総 製造原 価を割 った 場合でも, 独立企業 間価格 として認められる。 このように, アメ リカにおけ る独立企業間価格認定において は,実質価格 を重視す る。 ここでいう実質 価格とは,租税回避を意図 した形式的 移転価格 を否認し, 独立企業 間で成立 する現実的取引価格を もって比較可能非支配価 格とするものであ るが, その移転 価格に合理的 な理由があり, その合理性 が 関 連会社間機能分 析から明 らかにされれば,その移転価格を もって独立企業 間価格と認定 すること も含む ものであ る。 この例で,X 社がY 社 にX 社 の バッテリーを$13 で販売 すると,移転価格 は$13 で, 比較可 能非支配価格 は$17 であるか ら,単純 に適用す ると独立企業間価格は$17 とな る。しかし, 実質価格が$13 であ れば,独立企業間価格 は$13 と認定 される。仮に,Y 社 の販売および広告宣 伝コストが$4 かかるとし, そのコスト分 か考慮さ れて 移転価格が設定さ れて いるならば, 移転価格$13 はたとえX 社 とY 社が独 立 した企業であ って も成立 する価格であるといえ る。従って,厳 密に言えば,
移転価格が独立企業間価格として認 められたので はなく,独立 企業間価格認 定 のための実質価格が移転価格と一 致し たために独立 企業間価格 と認め られ たのである。 ここで, 移転価格 (transferprice ) と。 独立企業間価格 (arm'slengthprice )およ び実質価格(substantialprice )との違いを明確 にしておかなけ ればならない。 移転価格とは,関連 会社間 で商品あ るい は製品等の移転 があ る場合 に付 される価格であり, いわ ゆる振替価格であ る。関連会社とは,支 配・被支配関係にあ る会社を いうから,支配会社 はあ る特定 の所得移転政策 の もとに自由 に移 転価格を設 定で きる立場 にあ る。 課税 の公平 性 の原理 か ら,移転価格による極端 な課税所得 の減少を抑制しようとするのが移転価格 税制 の目的である。 しかし, 極端 な場合を除いて, 移転価格に税法上 の違 法性があるか否かを 認定す ることは極めて難かしい。 そ こで, 移転価格税制 において は,通常, 移転 価格設定 にあ たって脱 税 の意思 があ っ たかど うかを問 わない。 何故 な ら, 移転価格 は,多国籍企業 の全世界的資源配分,業績評価, 金融政策,投 資政 策等,種 々の政策的意思 決定により決定さ れているから, それらを個別 に脱税の意思 があったかどうかを判定 す るのは労多 くして効果がない。従 っ て,関連 企業間で設定さ れた移 転価格 は, 現実の取引価格であることを先づ 認識 しなければならない。 この現実 の取引 価格が移転価格なのでお る。現実 の取引価格を修正 して独立企業間価格 に置 き換え るのは, すぐれて課税上 の 問題であり, 現実 の取引価格 その ものを否定 するもので はない。 それで は, この現実の取引価格を事実 として認識し ながら, これを修正す る根拠 は何であろうか。 それは,実質課税 の要請 によ るといわなけ ればなら ない。 実質課税 とは,実質的 に担税力 のあ る所得 に対して課税す べしとする 租税 原理 であり, 同一 の経 済行 為 に対 して は同一 の担税力 で なければな ら ず,法的に異なる形式 がと られていて も経済的実質性が認 められるなら, そ れらは同一 の課税関係にあ るものと認識さ れる。従 って,実際の移転価格が 比較可能弁支配価格と異 なる場 合 には, その弁支配価格 によって取引 された ものとして課税関係が生ず る。 ここで比較可能非支配価格を もって課税関係 の認定価格 とす る根拠 は, 支配・被支配関係にあ る両者間 の取引において, もし両者 が独立した企業 間であ ったな らば成立す る現実的価格を適用す るこ とにある。
しかし な が ら, 実 際 に は両 者 と も独 立 し た企 業 で は な いか ら, そ れを 独立 し た 企業間 であ った な らば と い うの は あ く まで 仮 定 であ る。 し か し, 単 な る 仮 定 に立 っ た推 定 価 格を もっ て比 較 可 能 非 支 配 価格 とす るこ と は, もと より 実 質 課 税 の原 理 に反 する こ と は疑 い な い。 独 立 企業 間 価 格 と は, 独 立 し た企 業 間 で成 立 し たで あろ う価 格 で は あ る が, 単 な る推 定 価格 であ って は な ら な い。 何故 な ら, 独立 企業 間 価 格 と は, 独立 し た 企業 間 であ っ た な らば成 立 し た であ ろ う現 実的 価 格 でな け れば な ら な い か ら であ る。 こ の価 格 を実 質 価 格 と い う。 経 済的 実 質 性 か ら みて , 真 実 の価 格 を 実 質 価格 とい う ので あ って, 比 較 可能非 支配 価 格 と実 質 価 格 が 異 な る場 合 に は, そ の非 支 配 価格 を も って 独 立 企業間 価 格 と認定 す るこ と はで きな い。 先 の例 で,結果 的 に バ ッ テ リ ー価 格$17 は,比較 可 能 非 支 配 価格 で あ るが 独立 企業 間 価 格 で は な い。実 質 価 格 がS13 と な っ た ため に,移転 価 格 が そ の ま ま独立企 業 間 価格 とな っ た 例 で あ る。 と こ ろ が, 認 定プ ロ セ ス上, 最 初 に 支配 価格 が独 立 企業 間 価 格 と 異 な る と い う事 実 認 識 か ら出 発 し て い る筈で あ る。基 本的 に,特 殊 事 情 は内 部 事 情 であ り,課 税 庁 は支配 価格$13 と比 較 可 能 非 支配 価 格S17 を比 較 し て,独立 企業 間 価 格$17 と認 定 す る筈 で あ る。こ れ に対 して,移転 価 格113 が 独立 し た企 業 間 で あ って も成 立 す る価 格 であ る こ とを立 証 す る の は, 課 税 庁 で は な く当 該 関 連 企 業 自身 であ る。 裏 付 けと な る資 料を もっ て企業 が立 証 す る こ と に より , そ こ に合理 性 が 認 め ら れ れば, 独 立 企業 間 価格 は$13 と認 定 さ れ る。こ れ は,独 立企 業 間 価 格 が$13 に変更 さ れ たので は な く,実質 価格 が$13 と認 定 さ れた た め,実 際 の移転 価 格 が 独 立 企業 間 価格 と認定 さ れ たの で あ る。 独立 企業 間 価 格 は, 第 一 義 的 に比 較 可 能 な 価 格 と し て捉 え ら れ る ので, 認 定 プ ロ セス段 階 で は複数 の独 立企 業 間 価 格 が 存 在 す る。 複数 の 独立 企 業 間 価 ‘格 か らど れを 選択 す べ きか, 又 は ど の よ う に 調 整 す べ きか は, 実 質 価 格 を ど の よ うに認 識 す べきか に よ る。 独立 企業 間 価 格 で課 税 関 係 を認 定 す べ きであ る とい う基 本思 考 は, こ の 実質 価 格 に よ っ て課 税 所得 を 算定 しな け れば な ら な い とい う実質 課 税 の原理 的 要 請 に よ る。 多 国 籍 企業 が恣 意 的 に国 際 的 規模 で の所得 移 転 を図 り, 全 グル ープ と し て の税 引 後 純 利 益 を極 大 化 さ せ る こ と は, 明 らか に実 質 課 税 の原 理 か ら放 任 さ れ る べ きで はな く, 逆 に 課 税庁 が恣 意 的 に所 得 を配 分 し, 非 合 理 的 な課 税 を す る こ と もこ の実質 課 税 に反 す る も の とな る。 従 って, 実質 課 税 に基 づ く実 質 価 格 の認 定 こ そ移 転 価 格 税制 の根
幹 であり, 種々 の問題点 の多 くはここに存在す るといえ る。 アメリカの移転価格税制 において は, すでに述べた とおり,比較すべき独 立 企業 間 価格 は, 先づ第1 に比 較可能非支 配価格 で なけ れば ならないとす る。 こ の方 法 は, 理 論 的 に も実 務的 に も最 も秀 れ た方 法 であ ると さ れ,OECD も同 じ見解を とっているが,実質課税の観点 か らも合理的であるとい え る。 この点, 我が国 の移転価格 に対する規定 は,実質 課税 の原理的思考 が なんら考慮さ れていない。 比較可能非 支配価格基準法(CUPM )が適用 で きない場合 の第2 の独立企 業間価格認定方 法に,再販売価格基準法(RPM )があ る。 これ は,比較可能 な弁支配価格が内部に も外部にも存在しない場 合であ る。 あ るい は, 存在し たとして も,実 質的 に独立企業間価格として適切でない ことを当該企業 が合 理的証拠 資料に基づ き立証し た場合 も含まれよ う。再 販売価格基準法は, 再 販売価格 から通常のマ ークアップを差引くことにより独立企業間価格とする ところか ら,関 連販売 の時期と前後した合理的 期間内で の再販売価格の存在 が必要であり, 再販売者 は再販売 に先立ち,物 理的変 更若 しくは無形資産 の 付加により資産価値を実質的に増加させていないことが必要 とさ れる。 例えば,X 社 の関連法人 たるY 社が,X 社 から商品 を単位当 りS280 で購 入し,非関連者 たるA 社にS300 で販売する場合, もし比較可能非支配価格 が存在しなければ,Y 社の類似商品 のマークアップ率を 使ってX 社とY 社 の移 転価格を認 定 しようとするノY 社 の類似商品 のマ ー クア ップ率 が20 % とすると,$300 から$60 を差引いたS240 が独立企業 間価格となり,X 社 からY 社 に販売 された商品の移転価格S280 は, 独立 企業間 価格S240 に修 正さ れて所 得配分される。 再販売価格 基準法 は,比較可能非支配価格 が存在し ない場合 の第2 の方法 であり, この価格が独立企業間価格 に近似するとい う合理的 根拠 は,類似 の 商品における特定のマ ークアップ率 が使えて且つ物理的変更若 しくは無形資 産 の付加により資産価値を増加させていない ことに求 められる。 資産価値を 増加させて い る場合 には,第3 の適用順位にあ る原価加算法 が一般 に妥当す ると考えられてい る。 しかし,Regulations はRPM とCPM につ いて次 のように説明 する。「必 要条件の1 つ又 は両方を満 たさないという事実 があ って も,再販売価格基準 法が原価加算 法を適用するより実行可能であり且つ,独立 企業間価格のより
正 確 な把握 と な る場 合 に は利 用 で き るよ と い う の は, た とえ 必 要 条 件 の1 つ が 満 たさ れな い と し て も, 再 販 売 価 格 基 準 法 はや はり原 価加 算 法 よ り も正 確 な 方 法な ので あ る。 何 故 な ら, 前 者 の もと で必 要 と さ れ る計 算 お よ び評 価 は 後 者 の もとで な さ れ るよ り , 数 が 少 な く簡単 であ るか ら であ る。 一 般 に再 販 売 価格基 準 法 は, 売 手 に よ って な さ れ る諸 機能 が買 手 に よ って な さ れ る諸 機 能 より広 く且 つ 評価 が難 か しい 場 合 に より適 切 とな るご) 」 独立企 業 間 価 格 の認 定 にあ た って は, 実 際 の取引 価格 を 否 認 し, 独 立 企業 間 であ っ たな らば成 立 す るで あ ろ う価 格 に置 き換え て課 税 所 得 を 認 定 す る も の で あるか ら, そ の認 定 にあ た って は課 税庁 の恣 意的 , 独 善 的 判断 は極力 排 除 さ れなけ れば な ら な い。 こ の恣 意 的, 独善 的 判断 の余 地 の ない 独 立 企業 間 価 格 とは, 第一 義 的 に比 較 可 能 非 支 配 価 格 と い うこ と に な る。 比 較可 能 非 支 配価 格 が ど う して も見 出 すこ とが で きな い場 合 に は, 再 販売 価 格基準 法 若 し く は原 価 加 算 法 に よ らざ るを得 ない。 こ れ ら の う ちど ち らを 適 用 するか は√順 位 の問 題 で はな く適 用 業 種 の問 題 であ る と す る考え 方 が あ る。 すな わち, 再 販売 価 格 基 準 法 は商 業 取 引 に適 用 さ れ, 原 価 加 算 法 は製 造 業 者 に適 用 さ れる と い う も ので , 我 が国 の租 税特 別措 置法 は, こ の考 え方 に より 適用 順 位 を 決 めて い な い と解 さ れ る。Regulations は√ 独立 企業 間 価 格 の認 定 にあ たっ て かか る業 種適 用 思 考 を と らない。 必 要 とさ れ る配慮 は, 価 格 に 対 す る売手 と買 手 の機 能 が ど の よ う に反 映さ れて い るか を分 析 す るこ と に あ る。 その 結果 , 機 能 が 異 な れば 相応 の調 整 が必 要 と な るが, そ の 調 整 は 出 来 るだ け少 な い方 が真 実 の 価 格 に近 く な ると考 え て い る。 そ の 意 味 で, 適 用 順 位思 考 は重 要 であ ると い え る。 こ の 点 , 我 が国 の並 列 方式 と は大 い に 異 な る。Regulations は,CPM よ りRPM に よ る方 が よ り 適 切 で あ る と い う場 合 につ いて 例 を 挙 げて 説明 す る(Regs. §1482 −2(e)(3)Example(l)(2)) 。X 社 が 価 値 の高 い特 許 を開 発 し,特 許 製 品 た るM をY 社 に 支 配 価格 で販 売 す る。Y 社 は,この 製品M に部 品 を 付 加 し組 立 製 品 と して 再 販売 す る。部品 の 付加 と 組 立 は, 明 ら か に資産 価 値 増 加 を も た らし て い るが, こ の場 合 に は再 販売 価 格 基準 法 を適 珀 すべ きで あ る。 何 故 な ら,X 社 の 特許 権 を 評 価 し, 原 価 加 算 法 で の適正 総 利 益 率 を 決 定 す る こと は,再 販 売 価 格基 準 法 の もと で の適正 マ ー クア ップ 率 決 定 に お け るy 社 の組 立 機 能 を 評 価 す る よ り は るか に困 難 だ か らであ る。
次に,Y 社がX 社の製品M にトレ ードマ ークをつけて再販売 する場合を 考え てみよ うよ 類似する他 の販売か ら, トレ ードマ ークを含むマ ークアップ 率が得 られ れば, たとえ無形資産 の付加があ って も,再 販売 価格基準法の適 用の方 がより適切である。 再販売 価格基準法は,原則として再 販売 に先立 って資産価値を増加させて いないことを必要要件とするが,こ れが第2 適 用順 位にあることは,必 らず し も資産 価値増加 の要件 に拘束さ れるものではないといえ る。 むしろ,適用 可能 な再 販売 価格と適正 なマ ークアップ率 の決定 が必 要要件 とな る。「適用 可能 な再販売 価格とは,支配価格で購入された資産 がその買手 により非支配 価格 で再販売 されることが予 期ざ れる当該 価格をいう。適 用可能再販売価格 は,一般 に,同 じ資産 の当期再販売 価格か関 連資産 の特定 商品 の再販売価格 かのどち らかに等しいことになる。16)」 再販売価格基準法は,非支配販売 価格から適正 なマ ークアップ額を差 し引 いた価格を もって独立企業 間価格とする ものであるから, 支配価格販売が連 続してい る場合 には,最終の非支配価格販売 に適 用し, 順次逆 に独立企業間 価格を決定 七ていくことになる。 その場合 のマ ークア ップ 率の決定が問題で あ る。「適正 なマ ークアップ率の決定 は,販売 及び再 販売 の連続取引に参加し て いるす べ七のグループ構成員 によ ってなされる機能又 は諸機能を考慮 に入 れなけ れば ならない。17)」 例えば,X 社がY 社に資産を支配価格で販売 し,Y 社 は同 資産をZ 社に支 配価格で販売 する。すなわち,X 社 とY 社およ びZ 社 は関 連会社であり,今X 社とY 社の取引における独立企業間価格を認定した い場合,z 社の非支配 価格販売 に再販売価格基準 法を適用 し, さ らにY 社 に再販売 価格基準法を 適用 して算定 する。 エ 再販売 価格基準法適用にあだって の最 も重 要な要件は適正 なマ ークアップ 率 の決定であ る。「適正 なマ ークアップ 率とは,買 手(再販売者)もしくは他 の人 が購入 し, それを非支配価格で再販売 す ると きに稼得さ れる総利益率 に 等 しい。18)」その場合,類似の再販売を決定 す るにあたって次 の4 点 が考慮さ れなけ れば ならない。 ① 販売 さ れる資産 のタイプ。例えば機械工 具, 装飾品, 家庭用品。 ② 資産 に対す る再販売 者の諸機能。 例えば, 包装, ラベル貼り,配送。 資産保全,軽微な組立, 広告,卸売,小売, 伝票送付,債権管理,用役
提供。 ③ 無形資産 の価格に対 する影響。 例えば特許権, 商標,商号。 ④ 再販売さ れる地理的市場。 このよ うな点 を考慮 して マークアップ率を決定することにな るが, で きれ ば このマ ークアップ率 は, 再販売者が井関連法人から購入し,非関 連者に販 売す るときのマークアップ 率を使うべ きであ る。「何故 なら, 類似 の性格 は, 他の再販売 者 によ るより も同一 の再販売者 による異な る資産販売 により多 く 見出されるか らである。19)」 同一 の再販売者 であ れば, 異 なる商品であって も,再販売 にあた って同 じ マークアップ率を適用す る場 合が多 いから,適正な独立企業 間価格が認定 さ れうる。 しか し,非関連者 からの購入 商品 がない場合に は,比較 すべきマ ー クアップ率を見出すことができない。 その場合は,同 様の市場 で販売 されて いる他の再販売業者 のマークアップ率か,同 じ機能を果 してい る資産所有権 を有しない販売代理人の マークアップ率が適用で きる。支配関 連 にあ る販売 者が外国に在住 し, 他の再販売者 の情報入手 が困難 な場合には,同 様の機能 を果 してい る自国の再販売者 によ るマ ークアップ率が適用できる。特定 の販 売 におけ るマ ークアップ率 に関 する資料 がない場合には,産業 界 で広 く使 わ れているマ ークアップ率が適用可能 であ る。 い ずれに して も,最 も適 正 な マ ークアップ 率を見出 す ことが緊 要であ る が, そのマ ークアップ率 がそのま ま使えない場合 もあ る。機能 とか条件が異 なれば, 差異調整の必要性 が生 じるからであ る。差異調整 にあ たって は,(価 格 に対して明確 で確認で きるほど の影響を有する20)」 かどうかを認識 しなけ ればならない。例えば,X 社 とY 社 は関連会社からト ースターを購入 する。Y 社 の機能 は両製品 に関 して同 じであるが, ミキサーに対 して は90 日間の 保証をするが, ト ースタ ーには保証 をしていない。Y 社 のト ースターに対す るマ ークアップ率は20 % であ る。 この場合, マークアップ率20 % をそのま ま ミキサーに適用出来 ない。 何故 なら,保証という条件が異 なり, そ れが明 確 窓確認で きるほど価格 に影響を与えていると認識されるからであ る。 原価加算法(CPM )は,比 較可能 非支配価格基準 法や再販売 価格基準法が 適 用出来な い場 合 の第3 の方 法 であ る。 こ の方法 は,原 価 に適 正 な マ ーク アップ額を加算して独立企業間価格 を認定 する。 マ ークアップ 額は,原 価に マークアップ 率を掛け たものであ るが,マークアップ率とは,「売手又 は他 の
者 が,問題 となっている支配価格販売 に最 も類似す る資産 の非支配価格販売 にお いて 稼得 す る総利益率 (原価 に対 する割 合 として 表現 され る) に等 し い。21)」 例えば,X 社 とA 社が関連法人 で,X 社 がA 社 に製品 をS130 で販売 す る。X 社 は, 他の製品を非関連法人 たるB 社 に1100 で販売 しその製造原価 が$80 とす る。 適正なマークアップ率 は,B 社への売 上利益 から0.25 とな り,仮にA 社への販売製品原 価がS100 とすれば,独立 企業間価格 は¥S125 となる。 原価加算法 は,原 価を基礎とするところから,原 価範囲(直接原価,製造 原 価,総原価等)の同質性が要求 されるが,資産 の類似性 は必 要とされない。 「 なぜなら,厳密 な物理的類似性の欠如 は,必 らずし も利益率 の違いをもたら すもので はないからであ る。22)」適正なマ ークア ップ 率の決定 は,資産の厳密 な類似性 で はなく類似の機能性に基づ かなけ ればな らない。 類 似の機能性 が端的 に見 られるのは,当該 法人 が非関連法人 とも取引をし ている場合 であ る。 しかし,当該販売 者が非関連 法人 と取引してい ない場合 には,他 の販売者による類 似の非支配販売価格 から適正 な利益率を見出さな ければ ならない。 その場合,他の販売者 が関連支配 グループ の一 員であ る必 要 はない。関 連企業 の販売者の機能 が, 販売代 理人 の機能と類似 していれば, その販売 代理人の利益率 が利用可能 となる。さ らに,「支 配価格販売 に類似す る特定 の販売 に関する資料がない場合 には, 関連業界で現 に使 われている利 益率 が適用 されよ う。23)」 原価加算法(CPM )は,第2 の適用基準 たる再販売価格基準法(RPM )が 適用で きない場合の第3 の方 法であり, その適用根拠 は,再 販売者が再販売 に先立 って資産に物理的変更を加えたり無形 資産を 付加 することにより,実 質的に資産価値を増加させた場合の価値増加部 分を単独 で評価す ることの困 難性から, こ れを原価に対す るマー クアップ率 に吸収 させて認識しようとす るところにある。 しかし, この前提 が保証さ れるためには,比較されるべき 原 価の質 が同 じであることを必要 とす る。 従 って, 関連販売 者が類似条件で 他の第三者 に非支配価格で販売 してい る場合に は, 原価 の質が同 じであるか らそ のマー クアップ率 が適用可能であるが,他 の独立 し た第三者間取引か ら 類 似の マ ー クア ップ率を適 用す る場 合 には, 原価 の質的 分析 が不可欠とな る。
原価計算 そのものの同一性は, いうまで もなく必 要であ るが, それに加え て原価機能 の分析が必要 となる。原材料 の品質, 製造技 術,労働 の質,機械 の効率,地理的条件などの要因が,原価の質 に多 大の影響を与え るからであ る。これらの質的差異が,価格にどれはど の影響を与え て いるかを分析し, 明確で確認で きるほどの影響が認識さ れれば, なんらか の基準 で調整しなけ ればならない。 調整数が多 くな ればなるほど, 認定価格 が真 の独立企業間価 格から遊離 すること にもなる。実際の適用にあ たって,RPM よりCPM の方 が難かしいと いわれるのはかかる理由による。Regulations によれば, 独立企業間価格認定 は, 比較可能非 支配価格基準 法(CUPM ),再販売価格基準法(RPM )又 は原価加算法(CPM ) の3 つ の 方 法を原則と して適用することにより行われるが, 納税者 が上記 の原則的方 法によって は正 しい独立 企業間価格の認定 が出来 ない ことを立証 した場合 に は,その他 の方法 によ ることも妨 げない。 その他 の方法 につ いては特に規定 はないが, 例えば投資利益率法(rateofreturnoninvestmentmethod ), 最終販売 価格法 (ultimatesalespricesmethod ), 機能法 (functionalmethod ),又 は利益 配分法(proportionateprofitmethod ) などがあ る。 多国籍企業 による支配価格販売取引が, 他国 において 否認 され独立企業間 価格によ って認定さ れると,通常経済的二重課税 が生ず る。 例えば,A 国 の 親会社X がB 国 の子会社Y に対 して 商品をS1,000 で販売 し た取引 につ い て,B 国 の課税庁 が独立企業間価格S900 と認定 す ると,Y の仕入価格がS100 減少 するた めにY の課税所得がその分加算さ れる。しかし,X 社はA 国 の課税庁 によりS900 ではなく$1,000 に対して課税 さ れる。従 っT, グルー プ全体からみれば,S100 について二重 課税になってい るといえ る。この国 際 的二重課税を排除す るためには,A 国の課税庁 もまたS900 と認定 しなけ れ ばな らない。 この ような対 応的調 整 は, 通常租税 条約 に基 づ く相互協議 に よって行 なう。IRS のRevenueprocedure82 −29 の第3 条は,「合意達成 にあ たっては, 独立企業 の原則及び独立企業間 の取 きめ,条件等 に関 す る同等 の基準を指針 とし,あ らゆる事実関 係, 周囲 の状況及 び二重課税を回避 す るための租税条 約 の目的を考慮 にい れる24)」 とし, 最 も適切 な独立企業間 価格の設定 につい て,権限あ る当 局間ど うしの相互協議 により 合意 に達 す るよう努力 し,合意 が成立す ると それに基づ き対応的調整 が図られるとす る。
相互協議 申請書 は, 相手 国 の認 定 内容 が関 係者に正 式 に通知 さ れた後90 日以 内に提出しなければ ならず, 独立 企業間価格 に不服のあ る納税者 は, 租 税裁判所 への提訴 と相互協議 の申請を同時に行なうこと も可能であ る。 ま た 相互協議の結果に不服のあ る納 税者 は, 国内の行政又は司法 のどちらの手 続 によって も審査請求がで きる。 独立企業間価格の認定に際して,IRS が要求した資料又 は情報を当該法人 が提出しない場合には,IRS は推 定課税 に基づく独立企業間 価格を認定す る ことができる。 課税当局 によ る資料収集及び情報収集の権限 は,IRC982 条 により大 幅に強化 されてい る。 また納税者 に対するペナルティとして, もし 納税者が当局か ら要請 され た資料を90 日以内 に提出し ないと きは,後 に裁 判 でその資料を使用で きないとい う不利益を課 している。 3. 国際租税における実質課税 多国籍企業 が, 移転価格を決定 す る方法として,一般 に市場 価格を基準 と するか又 は原 価を基準 とす るかの2 つ の方法があ る。「移転価格 の決定 方法 に市場を基礎にするか原 価を基礎 にするかは,当該企業 の組 織理念,規模, 国 際的状況の程度,文化的環境 によって異なる625)」Choi とMueller によれば, もし高度に分権化された経営 が行 われている 場合 には,各々の子 会社に自由裁量権 があり,profitcenter としての相互 依 存性 が最小 になるので, 市場 価格 ベースの移転価格決定 が行 われやすい。逆 に積 み上げ方式によ って移転価格が設定される場合 は,原価ベ ースによ る26)。 大規模 企業 は,ど ちらか というと原 価ベースによる傾向が強い。何故 なら, 大企業 は概 して売手市場で あり, その結果価格政策 に競争的圧力 がさほど入 り込 まない傾向 にあ るからであ る。 加えて,大 企業 は利益を巧みに捻出す る ために移 転価格を設 定 す る傾向 にあ る。 その場 合使 わ れるのは, 通常原 価 ベ ースである27)。 どちらの方 法を使 って, 移転価格を いくらにす べきかという価格政策 は, 外国での環境的諸条 件の影響によ って異 なって くる。環 境的諸条件と は, 外 国での市場条件,他 社との競合, 外国子会社の合理的利益配分,経済状況, 輸入規制,関税,価格統 制など種々の ものがあ る。 かっては,租税情報 が最 も重 要な移転価格決定 の要因 であ っ たが, しだいに進出国での環境条件に応 じて決定す る方向 へと変 って きた28)。 これは, 各国 が移転価格税制を強化す
るにお よ ん で, 移転 価格 に よ る租 税回 避 は ほと ん ど 不可 能 に な った こ と によ る。 なお,Choi とMueller によ れば ,統 計 的 に アメ リカ,フ ラ ンス, イギ リ ス お よ び日 本 の 経営者 達 は, 原 価 ベ ー ス の移転 価 格 設定 を 好 み, 他 方 カ ナダ, イ タリ ーお よ び北欧 は, 市 場 価格 ベ ース の移 転 価 格 設 定 を 好 む と い う29)。 し か し, 移 転 価 格 の設 定 は, こ の よ う な文 化 的 好 み と い う より はむ し ろ多 国籍 企 業 の戦 略 的 意 思決 定 に より 行 わ れ る。 ど ち ら を基 礎 に す べ きか は, ど ち ら が 価 格政 策 に 合致 す るか の問題 と な る。 ま た, 市 場 価 格 を ベ ー スに しよ う と し て も, 媒 介 とな る市場 が存 在 し な け れば 原 価を ベ ース に 設定 す る以 外 に な い。 原 価 を ベ ー スにす るとし て も, そ の基 礎 を 直接 原 価 に求 め るの か製造 原 価 に求 め る のか, はた ま た総原 価 に求 め る の か と い う問 題 があ る。 い ず れに し て も, 移 転 価格 の 設定 は, 多 国 籍 企 業 に と って 国 際 的 経営 戦 略を 展 開 す る うえ で, 極 め て重 要 な フ ァ ク タ ーの一 つ で あ る。 一 般 に, 移転 価 格 に よ る戦 略 的 効 果 とし て 次 のこ と が 指 摘 さ れ る30)。 ① 税 率 の高 い国 か ら低 い国 へ所 得 を 移 転 さ せ るこ と が で き る。 ② 地理 的 条 件 の如 何 に かか わ らず, 企業 グ ル ープ 全 体 とし て統 一 価格 を 制定 し う る利 益を 享受 で き る。 ③ 企業 間 の ト ラ ンスフ ァ・ プ ラ イ シ ン グを そ れぞ れ の市場 条件 の違 い に より 個別 に設定 す るこ と によ り, 個 々 の 企業 利益 と 損失 とを 相 殺 し, グ ル ープ 全 体 として の利 益 を 増 大 し うる。 ④ 特 定 地 域 内 にお け る市場 競 争 を排 除 し う る。 ⑤ 新 設 企 業 の開 業当 初 の損失 を 親 会 社 ま た は関 連 会 社 が負 担 もし く は吸 収 す るこ と に より, 新 設 企業 の 財務 運 営 を 容 易 な ら し め世 界市場 を 制覇 し う る。 こ のよ うに, 移転 価 格 の設定 は, 多 国 籍 企 業 グル ープ に とり 極 め て重要 な 戦 略的手 法 を提 供 す る ものと な る。 税 率 の高 い国 か ら低 い国 へ所 得を 移転 さ せ る ため に は, 税 率 の 高 い国 に 存 す る企 業 の売 上 を減 少 さ せ, 低 い国 に存 す る企 業 の利 益 を 増 大 さ せ るこ と に より 達 成 さ れ る。 従 って , 資 産 が税 率 の高 い国 か ら 低 い国 へ と移転 す る場 合 に は, こ の 移転 価 格 は低 け れば 低 い ほど多 く の所得 移転 が可 能 に なり, 逆 に税 率 の低 い 国 か ら高 い国 へ資 産 が移 転 す る 場 合 に は, そ の 移転 価 格 は高 け れ ば高 い ほど 税 率 の低 い国 に所 得 は留 保 さ れ る。
移転価格設定 の最大 の決定因は, 税率 の高い国から低 い国 へ所得を移転 す ること にあ ったか ら,税 率 の高い国 の税収入 が必然 的 に減少 す ること にな る。こ れに対 し,財政難 に苦 しむ各国 がかかる移転価格 に独立企業 間価格を 適用し課税を 強化す るに至 った。 問題 は,独立企業間価格を もって移転価格を否認 し課税 する理論的根拠 で あ る。移転価格と は,多 国籍企業 グループ の企業間同士 で取引 される内部移 転振替価格のことであ る。 ただし,法形式上 各々独立 した企業形態を とり, 世界各国 にまたがって存在しているので,支配 従属関 係を把握 するのが困難 な場合 もある。 しかしながら,表見上 独立企業 の形をとっていて も,一方 的 に移転価格 が設定 されている場合には,明らかに経済上 実質 支配関 係が存在 すると言 わなけ ればならない。 独立企業間で の売買 取引 は,通常相互 の交渉 のもとで 価格 が決定 されるか ら,多国籍企業 グル ープ間 での移転価格は,通常 の取引を仮装 した取引 価格 ともいうことがで きる。 そこで,恣意的に設定された移転価格 を,通常 の独 立企業間価格に置 き換えて課税関 係を把握 し, もって他 の納税者 との間 に課 税の公平性 を実現 しようとす るのが,移転価格税制 の本質的意義であ る。 こ こに,形式 ではなく実質 に即 して課税すべしとする実質 課税 の原理が作用 し ている。 実質課税 の原理 と は, 経済的実質所得 に対して課税す べしとす る租 税法 の原理 で, 独立 した非関連企業間の課税所得算定は, 独立企業 間価格と して成立 した実際取引価格 に基づいて行 われるから,多国籍 企業 グループ の 恣意的移転価格 に対 して, これを独立企業間価格に置き換え て課 税すべきは 当然のことといえ る。 しかし,問題 は「独立企業 間価格」と は何かということであ る。 独立企業 間価格 (arm'slengthprice ) とは, 独立企業間取引 (arm'slengthtrans-action )においで成立 す る売買 価格であり,arm'slengthtransaction とは, 「各々が各自 の利 害で行動 す る非関 連者 によって行 われ る取引を い う。 こ の 種の取引で使 われ る価格は,当該取引で移転される資産又は用役 の公正な市 場 価値(thefairmarketvalues )であると考えられる31)」公正 な市場価値と は,「自発的で資金能力 のあ る買 手と売手 が存在 し,且つ清算,欠乏,緊急事 態 とい う異 常 な状 況 を 伴 わな いで, 資産売 却 に より受 領 さ れ る金 額 を い う。32)」 この定義によ ると,独立企業間価格とは, 独立した企業間 で公正 な市場価