72 氏名(生年月日)』
本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(23) ヤマ ノ ユウ コ山野優子(昭和3
医学博士 乙第1187号平成3年4月19日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
マウスにおける臭化メチル曝露の実験的研究 一急性毒性とグルタチオンの解毒効果一 (主査)教授 香川 順 (副査)教授 :丸山 勝一,野本 照子論 文 内 容 の 要 旨
目的 臭化メチル(MeBr)は,植物検疫用くん蒸剤や土壌 くん蒸剤として多用されているが,くん蒸作業老や農 業従事者などに災害性の中毒が散発し,死亡する例も あって注目されるようになった.特に死亡例の発生を 防止するために,確i定診断と救急治療対策が強く要望 され,人工透析などで以前よりは救命効果が上がるよ うになったが,解毒剤については,その治療効果や作 用機序について解明されていないのが実状である. そこで,ICR・SPF雄性マウスの, MeBrガスのLC50 値から推定した致死濃度以上の濃度への曝露におい て,還元型グルタチオシ(GSH)投与の有無による死 亡率への影響を検索し,MeBrの生体作用およびGSH の効果について考察した. 方法 1.LC5。値を算出する.ために,、異なった濃度の MeBr 4時間吸入曝露を行い, Litch丘eld-Wilcoxon 法によりしC5。値を求めた. 2.濃度を一定にした時の曝露時間の違いによる死 亡率を調べるために,LC5。値から推定した致死:量以上 の500ppm MeBrを各々105,120,130,140,150,180 分間曝露して,1週間後の死亡率を求めた. 3.GSH投与の有無による死亡率を比較するため に,あらかじめGSH 500mg/kgを腹腔投与した群 (GSH投与群)と,対照として蒸留水を10m1/kg投与 した群(非投与群)について,MeBr 500ppmを各々 105,130,140,150,180分間曝露して,1週間後の死 亡率を両野間で比較した. 4.GSHの作用機序を調べるために, GSH投与群, 非投与群についてMeBr 500ppmを各々130,140,150 分間曝露し,曝露直後の血液についてGSH, Br一, Me・GSH,ホルムアルデヒド,蟻酸,β・glucuronidase 濃度の測定と赤血球浸透圧抵抗試験を行い,両暫間で 比較した. 結果および考察 MeBr 4時間曝露のLC5。値は405ppmで,95%信頼 限界は386-425ppmとなり,最少致死濃度が312ppm, 100%致死濃度が464ppmであり,生存域と死亡域の両 濃度が近接していることが示された.さらに一定の曝 露濃度(500ppm)で,105,120,130,140,150,180 分間曝露した時の死亡率は,各々0,0,10.7,15.0, 85.0,90.0%となり,150分間曝露で死亡率が急激に増 加した. GSH投与の有無による死亡率を比較してみると, 140分曝露までは死亡率は両群とも約15.0%以下で差 はみられなかったが,150分曝露になると,非投与群の 死亡率が77.6%に対し,投与群の死亡率は5.3%に抑え られ,さらに180分曝露の死亡率は,非投与群が90.0% に対し,投与群では20.0%となり,あらかじめGSHを 投与しておくと死亡率がきわめて減少することが明ら かとなった. そこで,MeBr曝露時の血液中代謝産物およびライ ソゾーム酵素の遊離の程度や膜の安定性などについて GSH投与の有無で比較してみると,140分曝露までは 一676一73 両群間に顕著な差異はみられなかったが,死亡率に差 の出た150分曝露になるとホルムアルデヒド,蟻酸,r、 β一glucuronidase濃度が,非投与群に有意に高値を示 していた.また,赤血球浸透圧抵抗試験の結果も,非 投与群に有意な溶血傾向がみられたが,投与群には溶 血は観察されなかった.このようにGSHは,生体に とって有害なMeBrの代謝産物であるホルムアルデ ヒドや蟻酸の生成を抑制し,さらに,細胞膜を保護し 安定化することにより,死亡率を軽減させたものと思 われた. 結語 1.マウスに対するMeBrの毒性は,曝露濃度と曝 露時間の関係についてみると,曝露時間が一定の場合 はある濃度を超えると,また同様に,曝露濃度が一定 の場合はある時間を超えると死亡率が急激に増加する ことが明らかとなり,無影響量と致死量の幅が狭い, つまり安全幅が小さいことが示された. 2.GSHは, MeBrによって発現する生体にとって 不利な現象を抑制し,結果として死亡率を軽減させ, 予防効果のあることが示された.