164 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(65) カワ ナ マサ トシ川名正敏(昭和28
医学博士 乙第879号 昭和63年1月22日 学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者) 肥大心および不全心におけるヒト心筋ミオシン・アイソザイムの変化 (主査)教授 広沢弘七郎 (副査)教授 降矢 榮,教授 内山 竹彦論 文 内 容 の 要 旨
目的 心筋細胞の主な構造蛋白であるミオシンは重鎖にATPase活性を有し,このATPase活性の違いから2
種類のアイソザイム(HCα, HCβ)があることが知ら れている.すなわちHCαはATPase活性が高く,小 動物の心室筋及びヒトを含めた大動物の心房筋を構成 し,収縮速度は速いがエネルギー変換効率が悪く, HCβはATPase活性が低く,大動物の心室筋を構成 し収縮速度は遅いがエネルギー効率に優れている.実 験動物ではこのミオシン・アイソザイムが年齢,ホル モンレベル,血行動態変化などにより変換することが 電気泳動法による分離により示された.ヒト心筋にお いてはアイソザイムの存在やその変換については明か でなかったが,最近ヒト心筋ミオシンに対するモノク ローナル抗体を用いることにより,その存在が明かに され,さらに心房筋では圧負荷によりαからβへの変 換が起こっていることが示された,しかしヒト心室筋 においても同様の変化が起こり得るかどうかは明かで はない.そこで著者はヒト心室筋において,種々の負 荷が加わった際にミオシン・アイソザイムの変換が起 こるかどうか,またこれが病態とどのように関連する かをみる目的で,心筋ミオシンに対するモノクローナ ル抗体を用いて各種心疾患でのミオシン・アイソザイ ムの変化について検討して,若干の知見を得たので報 告する. 対象と方法 ヒト心筋標本は,剖検時(19例),開心術時(27例), 心臓カテーテル検査時(29例)に採取した.心筋標本 の凍結切片を作成し,HCαを認識するモノクローナ ル抗体としてCMA19, HCβを認識する抗体として HMC14を用いて間接蛍光染色を行った. 結果及び考案 正常心房筋では,ほとんどすべての細胞がCMA19 により染色されたが,HMC14には30~60%の細胞が 染色されるのみであった.これに対して正常心室筋で はすべての細胞がHMC14に反応を示し,一部の細胞 のみがCMA19に反応した. CMA19により染色される 細胞数は左室収縮期圧と負の相関を示し(F-0.67),左室収縮期圧が上昇するほどCMA19に反応する
HCαは減少して,左室収縮期圧が180mmHg以上の症例ではHCαはほとんど抑制されていた.しかし
CMA19に反応する細胞数と左室容積とは全く相関が 見られなかった,著明なミオシン・アイソザイムの変 化が心不全を合併した甲状腺機能充進症の症例でみら れ,心室筋にもかかわらずHCαがほとんどすべての 細胞で発現していた.さらにHCαの発現率は,治療に より甲状腺機能が正常化するにつれて減少した. 結語 1) HCαはヒト心室筋においては主に圧負荷によ りその発現が抑制された. 2)過剰な甲状腺ホルモンはヒト心室筋においても 著明なHCαの発現を引き起こした, 828165
論 文 審 査 の 要 旨
心筋ミオ・シソの構造については新しい知識が次々と得られつつある現状であるが,ヒトのそれにつ いては未だその緒についたばかりである. 本研究は種々の心疾患において,心房,心室の心筋ミオシンがどのように変貌していくかを多くの 実際症例について解説したもので,医学的に価値あるものと認める. 主論文公表誌 肥大心および不全心におけるヒト心筋ミオシン・ア イソザイムの変化 東京女子医科大学雑誌 第57巻 第11号 1280~1290頁(昭和62年11,月25日発行) 副論文公表誌1)Acase of isolated growth hormone deficiency associated with familial thyroxine binding
globulin deficiency(成長ホルモン単独欠損 症と家族性サイロシキン結合蛋白欠損症の合
併した1症例)
Endocrinol Jpn 28(1)83~85(198!) 2) Surgery in severe rheumatic mitral valve disease-recognition of severity and risk
factors(重症リウマチ性僧帽弁疾患の外科治 療一重上諭と危険因子の推定) Jpn Circ J 47 (9) 1112~1120 (1983) 3)圧負荷に伴う左室乳頭筋のミオシソアイソザイ ムの変化 心筋の構造と代謝 8337~345(1985) 4) 狭心症の病態と治療法の選択 治療学 15(1)55~59(1985) 5) PTCR 現代医療 18(6)30~35(1986) 6)急性心筋梗塞におけるMexiletineのPhar- macokineticsおよび血行動態への影響一1回 静注法による検討 基礎と臨床 20(2)575~579(1986) 7)肥大心および不全心にみられるヒト心筋ミオシ ソの変化一不安定狭心症一 Therapeutic Research 7(1)45~51(1987) 8)血管拡張薬について Therapeutic Research 7(1)79~82(1987) 9) 心筋肥大の悪化と改善 呼吸と循環 35、(7)723~733(1987) 一829一