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運送取扱人ないし運送人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権の競合 利用統計を見る

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(1)

運送取扱人ないし運送人に対する債務不履行に基づ

く損害賠償請求権の競合

著者

森 達

雑誌名

東洋法学

8

1

ページ

85-89

発行年

1964-07

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00007869/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

運 送 取 扱 人 な い し 運 送 人 に 対 す る 債 務 不 履 行 に 基 づ く 損 害 賠 償 請 求 権 の 競 合 /ーー--.. 一 一 損 審 四 害 東五賠 京 六 償 地 号 請 裁 同 求 、三事 二十件 審八最 東 年 高 京十裁 高一昭 裁 月 和 五 三 日五 二二r

小 オ 法〉 廷 判 決

.

、、ーー__.. ︻事実︼原審判定の事実関係によれば、上告会社(日本通運株式会社)呉支屈の係員は、本件貨物を預け入れた破産会社の指 示、承諾がないのにかかわらず、何ら先に破産会社に宛てて発行交付した受取証を回収するとか、破産会社の承諾を確認するに足 る取引上相当の処置を誇ずるとかすることなく、原判示の如く、漫然電話による同意ありと誤信して、原判示民団に対して本件貨 物を引渡し、よってこれを滅失したのと同一の結果を生ぜしめたというものである。 ︹上告論旨︺て上告人は先ず商法第一条の規定を論拠として、運送取扱又は運送につき、運送品が滅失致損した場合に民法の 不法行為の規定を適用する余地がないと主張し、これを前提として原判決の違法をいう。 すなわち、運送取扱営業及び運送営業に関する規定をみると、その中に民法第七

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九条、第七一五条の不法行為に関する規定が もれなく内在し、かっ、運送等の事業の特殊性に基づき商法が特に不法行為の法規を変更した規定も齢なからずあって、和極的、 消極的に何らあますところがないのであるから、運送等で運送品の滅失又は致損した場合に関し、民法の不法行為の適用の余地は ないという。 二、次に、前記の場合債務不履行に基づく賠償請求権に不法行為に基づく賠償詰求権が競合することを認めうるとしても、これ が認めうるのは、運送取扱人ないし運送人の側に故意又は重過失の存する場合に限られるべきであるのに、原判決は、故意にあら ざることを判示しながら右過失の軽重につき何ら判示することなく、たやすく不法行為に基づく賠償請求権の成立を認めたのは違 法であると主援する。 民 事 判 例 研 究 八 五

(3)

東 洋 法 学 /¥. ノ、 ︹ 判 決 要 旨 J 原判決が上告会社呉支庖係員に過失の責があるとし、これによって生じたかかる事態は運送品の取扱上通常予想さ れる事態ではなく、かつ契約本来の目的を逸脱するものであるから、債務不履行に止まらず右係員の過失に基づく不法行為上の損 害賠償請求権の発生をも認めうる。 上告理由第一点につき、論旨は、商法第一条を論拠として、運送取扱又は運送につき、運送品が滅失又は段損した場合に民法の 不法行為の規定を適用する余地がないと主張し、これを前提として原判決の違法をいうのであるが、運送取扱人ないし運送人の責 任に関し、運送取扱契約上の債務不履行に基づく賠償請求権と不法行為に基づく賠償請求権の競合を認めうることは、大審院判例 (大正十四年(オ)第九五四号、同十五年二月二十三日判決民集五巻一

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八頁)の趣旨とする通りであって、当裁判所もこれを認 容 す る も の で あ る 。 同第二点について論旨は、前記の場合両請求権の競合が認められるのは、運送取扱人ないし運送人の側に故意文は重過失の存す る場合に限られるべきであり、右過失の軽重につき何ら判示することなく、不法行為に基づく賠償請求権の成立を認めたのは違法 であるとするものであるが、右請求権の競合が認められるには、運送取扱人ないし運送人の側に過失あるをもって足り、必ずしも 故意又は重過失の存することを要するものではない。 ︹ 研 究 ︺ 一、運送品が運送取扱人の責に帰すべき事由によって滅失又は致損した場合には、商法第五六

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条 の 規 定 によって、運送取扱人は、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うのであるが、その滅失致損は、運送品の所有権の 侵害という事実を伴うために、それとは別に民法七

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九条、第七一五条の不法行為を構成すべき事実が存在する。こ の場合、委託者は債務不履行を理由とするこつの請求権を有するか︿詰求権競合説﹀、 または一つの詰求権を行使し うるだけか法規競合説につき学説の争がある。 従来の通説、判例によれば一個の事実が債務不履行と不法行為との二つの法律関係を発生せしめたのであるから、 二つの請求権を有し、 委託者はそのいづれをも選択して行使できると解し、 詰求権競合説をとっているハ家屋賃借入

(4)

の失火事件で請求権の競合が認められた例としては、大審院明治四十五年三月二十三日民事聯合部判例、 民 抄 録 一

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一 一 一 具 、 及 び民事部周年同月同日、民抄録一

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二 四 頁 。 ) 。 これに対し、不法行為責任には制裁的な意味がなくなりつつあり、その 責任も債務履行に比して必ずしも霊くなく、かっ、時効も短い現在の法制の下にあっては、不法行為責任は、損害発 生の場合における一般的な賠償関係であり、それは無関係な一般の第三者が損害を生ぜしめた場合であって、契約関 係の存在は、むしろ契約上の重い義務を前提としての関係であるから、その義務履行過程における故意過失による損 害については、 一般的義務違反ともいうべき不法行為が成立する余地はないとする法規競合説が有力となりつつある (石井、商行為海商昭二八・第八刷・六一頁。吾妻、法律学講座債権法昭三

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・ 六 版 三 六 頁 。 鈴木、法律学諮座商行為海商保険四 一一良。中川、法律学演習詩座中巻九一一貝。加藤、法律学全集 9 不 法 行 為 法 五 二 一 良 。 石田、昭三二版債権各論二九五頁。小町谷、連 送法の理論と実際五四頁。松本、増訂十六版商行為法二

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六 頁 。 ) 二、契約により相手方の所有物を占有する者(賃借入、運送人、受寄者等﹀が、相手方に損害を加える芯図をもっ てその物を滅失致損した場合には、これらの行為は重大な契約違反であるのみならず、契約との関係が単なる不履行 に比して稀薄となる。かかる場合に対する学者の結論は分れているが、やはり、契約責任のみを認める説、不法行為 責任のみを認める説、両者の競合を認める説が存する。この問題の回答をなすに当って興味あるものとして明治四十 五年の判例(大審院長事判決抄録一

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二 六 頁 ) が 、 場合を三つに分ち、﹁第一の場合は行為と契約関係との聞に内面的 の関係が全く存在せず、契約関係は単に不法行為の成立に機会を与うるに過ぎない場合は、不法行為による詰求権の み生ずるとし、第二の場合は、行為は契約関係の範囲を脱せず、ただ契約上の義務の履行又は権利の行使につき注意 民 事 判 例 研 究 八 七

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京 洋 法 学 /¥. /¥. の責を尽さざるにより損害を加えた場合、例えば破壊し易い物の売主が適当な装置をなさず送付したような場合には 契約違反による請求権のみを生ずるに止まり、第三の場合は、行為が主観的若しくは客観的に契約により達しようと する目的を超過する場合で、例えば受寄者が故意に寄託物を破設し、若しくは馬の借主が過重に馬を使用し死に至ら しめたような場合がこれに属し、この場合には二個の請求権が競合する﹂と説示している。 契約法と不法行為法との関係について、法規競合を原則としつつ、或る場合に契約法と不法行為法との競合的支配 を認める理論は、近時次第に支持者の数を増加して来たが、その内容は多岐に亘り、その抽象的理論構成が種々存す るのみならず、その具体的な事例の解決については更に結論が分れている。 そこで、不法行為法は何人の間にも適用せられる一般法であるのに対し、契約法は契約により結合せられている当 事者聞にのみ適用せられるものであるから、固有の契約関係の範囲において契約法規のみが支配し、不法行為法の適 用 は な い と し ( 前 掲 石 田 そ の 他 ﹀ 、 或いは不法行為たるには違法性を有することを必要とするが、契約不履行の場合に は、通常違法性を阻却するという理由で不法行為の不成立、すなわち詰求権の競合を否定する(前掲松本・石井)。 と ころで、後説において、通常違法性を阻却するというのは、﹁故意(又は重過失)﹂の場合を除くという意味であろう から、この説(折衷的法規競合説)に基づく限り不法行為成立の場合もあることは否定しえないものとなる。従って 原ケ

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λ

における適用としては、上告人の主張する如く、過失の軽重ないしその性格を問題とするべきであって、運 送人が電話による承諾ありと誤信したという事実が、故意と同視すべき過失と見られるかの問題に帰する。原判決は 大正十五年の大審院判例の趣旨を参照しているが、該判例の事案は運送取扱人の使用人が高価品たる貨物を路上に放

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置したまま他ヘ配達にゆき、その聞に該貨物を盗取されたという事実であって、重過失のあることは明白である。 三、結局、通常の場合、契約の存在は行為の違法性を阻却するものであるから、運送口聞の滅失致拐、或いは現ケ! 九の如くこれを同視すべき事実があった場合にも、常に必ずしも所有権侵害に基づく不法行為上の請求権が発生する とはいいえない。扶一一一目すれば、運送品の滅失致損は運送に際して起こり易いから、委託者はこのことを予期して取扱 契約を締結する。従って、運送口聞の取扱に通常随伴するが如き原因による滅失段損については、委託者が運送取扱人 の不法行為上の責任を黙示的に免除していると解することができるから、不法行為上の武任は、通常契約に予想せら れた程度を逸脱する行為があったとき、すなわち、故意又はこれと同祝しうるような丞大なる過火の認められるよう な場合にのみ発生するものと解する(戸田、商法(総則、商行為﹀一九八頁。我妻、 コンメンタ l ル 一 同 程 伝 五 四 四 民 姿 照 ) 。 かように解すれば、現ケ

l

λ

の如く、運送取扱人ないし運送人の側に過失あるをもって足り、必ずしも故意又は主過 失のあることを要せずとして直ちに不法行為上の請求権を認めるという立場には賛し難い。 森 連(本学諮師﹀ 民 事 判 例 研 究 )¥ 九

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