子どもと生き物とのかかわりの観察から得られる学生の学び-幼稚園実習および保育所実習での学生の記述から-
12
0
0
全文
(2) 子どもと生き物とのかかわりの観察から得られる学生の学び 更に関心が高まり、次第に自然への愛情や畏敬の念をもつようになっていく」ことができると記述さ れている。 実際に園で飼育されている生き物について明らかにした井上・無藤(2009)の研究がある 15)。これ は、東京都と兵庫県の幼稚園や保育所においての動物飼育状況を分析したものである。この結果、哺乳 類では、ウサギが最も多く、次いでハムスター、爬虫類ではカメ、両生類ではカエル、魚類ではメダカ とキンギョ、その他にザリガニやチョウの幼虫が多く飼育されていた。昆虫類では、カブトムシ、クワ ガタ、スズムシが多くの園で飼育されていた。また、兵庫県の方が、東京都よりも、飼育率が高かった。 この要因として、その地域の自然環境や、園の飼育環境の質、保育者の意識も関係することを示唆して いる。しかし、生き物の飼育には、設置環境よりも保育者の意図が重要と述べている。つまりは、保育 者が意図的に園庭の自然環境を豊かにし、子どもが生き物との体験を多く実施できるようにしていく 姿勢が必要ということである。 伊藤(2017)は、幼稚園と保育所の保育者を対象としたアンケートにより、生き物飼育に関する保 育者の視点を調査した. 16)。この結果において、保育者が子どもの道徳的な姿勢を養うことや飼育する. こと自体が目的になり、問題点として子どもが生き物飼育を通して自然科学を学ぶという視点が弱い ことを指摘している。しかし、生き物の飼育により思いやりの気持ちや命の尊さを学ばせるというこ とは、幼稚園教育要領や保育所保育指針に則った教育・保育活動が行われていると述べている。そし て、保育者が生き物の特性を理解し、生き物を介して子どもと接することで、生き物の教材としての有 効性をより高めることができると示唆している。 これらのことから、保育者養成校の学生は、保育者になる前に、生き物の生態の知識と子どもと生き 物をつなぐ方法について理解しておく必要がある。百瀬(2016)は、現場の保育者と幼稚園実習終了 者 3 名と保育所実習終了者 3 名を対象にした聞き取り調査により、園における動物飼育活動の意義に ついて検討している. 17)。この中の学生の語りにおいて、保育者になる前に学びの必要性を感じている. 項目として、 「飼育動物に関する知識」と「道徳・責任感の指導」をあげている。子どもと生き物をつ なぐためには、やはり生き物についての知識と指導法を理解しておくことが大切であるということが わかる。保育者養成校の学生を対象にした子どもと虫をつなぐための指導法にかかわる研究は、永井・ 溝邊(2019)が行っている. 18)。この調査では、保育内容環境の演習授業の中で、虫に関する講義に加え. 虫にかかわる活動を取り入れ、学生の虫に対する苦手意識を変化させることが、その後の実習にどの 様に影響するのか分析している。この結果、授業後には虫を避けようとする傾向を持つ学生は少なく なり、虫を触ることができるようになった学生が増えた。個人差はあるものの、実習先で子どもと虫と のかかわりをつなぐ指導に向き合うという効果があった。学生は、実習前に虫に関する知識の獲得と 虫の直接体験の両方ができていれば、自信を持って子どもと虫を結ぶことができる実習生として現場 に赴くことができる。 実習では、子どもの活動の様子だけではなく、子どもに対する実際の保育者の援助を学ぶことがで きる。福山・永井(2015)の保育者養成校の学生の幼稚園実習の振り返りにおける記述において「今 回の実習で勉強になった点」として、 「保育者と子どもの関わり方を具体的に見て学ぶことができた」 「保育者の行動や声掛けを具体的に見て学ぶことができた」ことをあげている. 19)。つまり、生き物と. かかわっている子どもの姿だけではなく、これを援助している保育者を目の当たりにして、学生は実 践的な学びを得ることができるのである。百瀬(2018)は、幼稚園・保育所の実習を終えた学生 75 名 を対象に、学生の記述したエピソードから子どもと生き物のかかわりについて、年齢別に事例の内容 を集約し、子どもと小動物とのかかわりの様子を明らかにした. 20)。3. 歳児はダンゴムシ、ウサギ、ア. リ、4 歳児はダンゴムシ、アリ、カブトムシ幼虫、クワガタムシなどの虫が多く、5 歳児は、ウサギ、 カエル、カブトムシ幼虫、ニワトリなど、子どものふれあう小動物の種類に違いが見られた。また、発 達段階により、生き物とのかかわり方や命の存在の有無の認識の違いを明らかにしている。保育者が 意識して各年齢の子どもとかかわることや環境構成を行うことが、子どもが小動物を命ある生き物と 28.
(3) 幼年教育 WEB ジャーナル第 3 号 してかかわり、命の大切さへの気付きに繫がると述べている。実習先では、このような保育実践につな がる観察ができる。 しかし、幼稚園や保育所の実習を終えた学生が、保育者として、具体的にどのような学びを得たのか という視点での詳細な調査はない。学生は、子どもと生き物とのかかわりを観察したエピソードから、 具体的にどのような子どもの姿の学びがあったのか、このかかわりを援助する保育者を観察すること によりどのような理解が得られたのかという分析は行われていない。 多くの学生の幼稚園実習や保育所実習における子どもと生き物の観察から得られた学びを分析し、 学びの内容を検討することは、保育者養成校における今後の学習内容を検討する際にも役立つのでは ないだろうか。 そこで、本研究では、幼稚園実習および保育所実習での、子どもと生き物とのかかわりについての観 察の記述から、学生にどのような学びが得られたのか明らかにすることを目的とする。そして、これら の学びから得られた学生の保育者としての視点とはどのようなものかについて考察を行う。. 2.方法 (1)調査方法 研究協力者は、保育者養成校の短期大学 2 年生 90 名であった。これらの学生は、幼稚園実習および 保育所実習を経験している。表 1 は、調査対象学生の調査日までの実習状況である。1 年次の 10 月に 幼稚園実習(2 週間) 、2 月に保育所実習(10 日間)、2 年次の 6 月に幼稚園実習(2 週間)に参加して いる。なお、1 年次の 10 月と 2 年次の 6 月の幼稚園実習は、同じ実習園で行っている。同一園におい て複数で実習をした学生が、いずれの実習においても、30 名程度含まれている。 2 年次 6 月の幼稚園実習の前に、筆者が担当している保育内容総論の授業で、 「幼児期の終わりまで に育ってほしい 10 の姿」における「自然との関わり・生命尊重」についての講義を行った。ここで、 子どもが動植物とかかわることにより、命の大切さを学ぶ契機となることを話した。そして、実習で は、子どもと生き物とのかかわりについて観察してくるよう伝え、実習終了後に、子どもと生き物のか かわりに関する調査を行うことについて説明した。 調査は、2017 年 7 月 18 日から 7 月 24 日の保育内容総論の授業において実施した。自由記述によ る質問紙調査を行った。今までの幼稚園実習や保育所実習で観察した子どもと生き物とのかかわりに ついてのエピソードを記述するよう求めた。 表1 実習の流れ. 調査対象学生の調査日までの実習状況 1 園につき 1 園につき 1 園につき 1 名で実習 2 名で実習 3 名で実習. 1 年次 10 月 59 名 16 名 15 名 幼稚園実習 (59 園) (8 園) (5 園) (2 週間:観察・参加実習) 1 年次 2 月 61 名 26 名 3名 保育所実習 (61 園) (13 園) (1 園) (10 日間:観察・参加実習) 2 年次 6 月 59 名 16 名 15 名 幼稚園実習 (59 園) (8 園) (5 園) (2 週間:参加・責任実習) ※2 年次の幼稚園実習は、1 年次と同じ実習園で行う。 (2)倫理的配慮. 計 90 名 (72 園) 90 名 (75 園) 90 名 (72 園). 調査時、結果は統計的に処理され、個人を特定するような研究ではないことを口頭で伝えた。質問紙 にもこの旨を明記し、研究協力に賛同した学生のみを分析対象とした。 29.
(4) 子どもと生き物とのかかわりの観察から得られる学生の学び (3)分析方法 分析方法は以下のとおりである。学生の観察による子どもと生き物とのかかわりについての記述内 容から、観察者である実習生が子どもと生きもののかかわりから、どのような学びが得られたのか分 析を行った。そして、手続きは、次のように行った。 子どもと生き物とのかかわりに記述されている子どもの行為や、保育者等の子ども以外の行為も抽 出した。その後、次のようにして小カテゴリーを導き出した。生き物とかかわる子どもの姿や生き物と かかわることによって学びを得ている子どもの姿の共通性を見出し分類した。また、生き物と子ども のかかわりを支えている保育者の援助方法や環境構成に共通性を見出し分類した。 さらに、この小カテゴリーから、大カテゴリーを次のように導き出した。生き物とかかわっている子 どもの姿を観察し、それを支える保育者の援助を見て、学生にどのような学びがあったのか共通性を 見出し分類した。また、その際のカテゴリー分けについて教育学の研究者と一緒に検討した。不一致の 場合は、一致するまで協議を行った。そして、大カテゴリーを導き出し、子どもと生き物とのかかわり から得られる学生の学びの概念図を作成した。最後に、これらの学びから学生が獲得した保育者とし ての視点について考察を行った。. 3.結果と考察 90 名の学生の観察による子どもと生き物のかかわりの記述を分析した結果、231 の子どもと生き物 とのかかわりにおける学生の学びの内容を抽出した。学生一人あたりの抽出数の平均は、2.57(SD1.62) であった。 これを、10 の小カテゴリーに分類した。これらは、 「1、生き物の命を維持するための活動をする子 どもの姿(44) 」「2、生き物に自らかかわろうとする子どもの姿(54)」「3、生き物を観察したり調べ たりする子どもの姿(51) 」 「4、生き物に対して反応することができる子どもの姿(16) 」「5、生き物 の命に向き合う子どもの姿(10)」 「6、生き物を題材に表現遊びをする子どもの姿(5)」 「7、子どもが 生き物に触れるための保育者の手立て(24) 」 「8、生き物を飼育するにあたって保育者が準備しておく こと(16)」 「9、保護者や地域の人との生き物を通してのかかわり(8) 」「10、子どもに生き物の命と 向き合わせるための保育者のかかわり方(3)」であった。 これらの小カテゴリーから、3 つの大カテゴリーを導き出した。それは、大カテゴリーA「生き物に かかわる子どもの姿の理解ができるという学び(98) 」、大カテゴリーB「生き物とのかかわりから学ん でいる子どもの姿に関する学び(82)」、大カテゴリーC「子どもが生き物とかかわるための環境構成と 保育者の援助方法に関する学び(51)」であった。大カテゴリーA と大カテゴリーB は、子どもの姿に ついての学生の学びであり、大カテゴリーC は主に保育者についての学生の学びである。 表 2 は、子どもと生き物とのかかわりにおける各カテゴリーの「学生の学びの内容」を示したもの である。また、記述された内容については、大カテゴリーA「生き物にかかわる子どもの姿の理解がで きるという学び」に関するものは、90 名中 81 名の学生が記述していた。大カテゴリーB「生き物との かかわりから学んでいる子どもの姿に関する学び」については、54 名が記述しており、大カテゴリー C「子どもが生き物とかかわるための環境構成と保育者の援助方法に関する学び」は、34 名が記述し ていた。 しかし、子どもと生き物のかかわりから得られる学生の学びには、個人差があったことが示唆され た。33 名の学生が大カテゴリーA「生き物にかかわる子どもの姿の理解ができるという学び」のみの 記述であり、6 名の学生が B「生き物とのかかわりから学んでいる子どもの姿に関する学び」のみであ った。2 つの大カテゴリーにかかわる記述をしていたのは、23 名であった。内訳は、大カテゴリーAB にかかわる記述をしていたのは、17 名で、大カテゴリーAC にかかわる記述をしていたのは、3 名であ り、大カテゴリーBC にかかわる記述をしていた学生は、3 名であった。3 つの大カテゴリーABC すべ てにかかわる記述をしていた学生は、28 名であった。生き物とかかわることによる子どもの学びにつ 30.
(5) 幼年教育 WEB ジャーナル第 3 号 いての理解や、この場における環境構成・保育者の援助等、状況に付随する読み取りにも、個人差があ ったものと考えられる。また、実習先の自然環境や飼育環境に左右された可能性もある。 表2. 子どもと生き物のかかわりを通した学生の学び. 大カテゴ リー. 小カテゴリー. 学生が子どもと生き物のかかわりについて観察して記述 した内容. A、生き物 にかかわ る子ども の姿の理 解ができ るという 学び(98). 1 生き物の命を維持する ための活動をする子ど もの姿(44). 子どもが、生き物に餌を与える 子どもが、生き物が生きていくための環境を整える. 14. 2 生き物に自らかかわろ うとする子どもの姿 (54). 子どもが、生き物を捕まえて触る. 28. 子どもが、生き物を見つける 子どもが、生き物に話しかける 子どもが、生き物に名前をつけて呼ぶ 子どもが、生き物を踏んだり投げたり埋めたりする 子どもが、生き物と遊ぶ 子どもが、生き物を放つ. 7 7 4 3 2 2. B、生き物 とのかか わりから 学んでい る子ども の姿に関 する学び (82). 3 生き物を観察したり調 べたりする子どもの姿 (51). C、子ども が生き物 とかかわ るための 環境構成 と保育者 の援助方 法に関す る 学 び (51). 子どもが、生き物を助ける 子どもが、他の友だちと生き物の情報を共有する 子どもが、生き物を観察する 子どもが、生き物の本を見たり、図鑑で調べる 子どもが、生き物の特徴を捉える 4 生き物に対して反応す 子どもが、生き物の変化や成長を感じる る こ と が で き る 子 ど も 子どもが、生き物に対して驚きや怖さを感じる の姿(16) 子どもが、生き物に対して癒しを感じたり、元気をもらっ たりする 5 生き物の命に向き合う 子どもが、生き物の命の限界を感じる 子どもの姿(10) 子どもが、生き物の死に触れる 子どもが、生き物のお墓をつくる 6 生き物を題材に表現遊 子どもが、生き物の絵を描いたり、造形制作をする びをする子どもの姿(5) 子どもが、生き物の表現遊びをする 7 子どもが生き物に触れ 保育者が、子どもに生き物についての知識を教える る た め の 保 育 者 の 手 立 保育者が、子どもが生き物と触れ合う機会を作る て(24) 保育者が、子どもと一緒に生き物に触れる 8 生き物を飼育するにあ 保育者が、子どもが生き物を捕獲するための準備をする た っ て 保 育 者 が 準 備 し 保育者が、生き物が生きていける環境を整える ておくこと(16) 保育者が、生き物が入った水槽や虫かごを子どもが見えや すいところに置く 保育者が、生き物の名前を調べられる図鑑や本を用意して おく 9 保護者や地域の人との 保護者が、生き物の世話を協力する 生 き 物 を 通 し て の か か 地域の中学生が、生き物を捕まえて園に持ってくる わり(8) 10 子どもに生き物の命 保育者が、生き物の死に直面している子どもの心に寄り添 と向き合わせるための う 保育者のかかわり方(3) 保育者が、命の大切さについての話をする. 抽 出 数 30. 1 25 19 5 2 10 3 3 5 3 2 4 1 12 8 4 5 5 3 3 7 1 2 1. (1)大カテゴリーA「生き物にかかわる子どもの姿の理解ができるという学び」について 生き物の飼育活動や、直接生き物にかかわろうとしている子どもの姿について学生が学んだものを、 「生き物にかかわる子どもの姿の理解ができるという学び」という大カテゴリーA に分類した。この 大カテゴリーには、以下の 2 つの小カテゴリーが含まれていた。それは、「1、生き物の命を維持する ための活動をする子どもの姿」、 「2、生き物に自らかかわろうとする子どもの姿」であった。この 2 つ 31.
(6) 子どもと生き物とのかかわりの観察から得られる学生の学び の小カテゴリーには、次のような記述があった。 小カテゴリー「1、生き物の命を維持するための活動をする子どもの姿」 ① ウサギの世話を当番で交代して行っていた。いつもは、遊んでばかりの子も、ウサギの世話をする というと、当番の子どもは、うれしそうに飼育小屋に直行していた。 「わたしのやつ食べたよ!」 「ぼ くのやつも食べたよ!」というやりとりが見られた。 ② バケツにダンゴムシを 10 匹くらい集めて、落ち葉や石を入れて家を作っていた。 小カテゴリー「2、生き物に自らかかわろうとする子どもの姿」 ① プール遊びの時に、カエルが泳いでいて、夢中になって捕まえていた。 ② ウサギを一羽だけ飼っていた。大人気で、子どもが我先に競って、捕まえて抱っこしていた。 ③ 外遊びの時にアリを踏んでみたり、土をかけて埋めたりしていた。 ④ カエルを下に投げつけていた。. 小カテゴリー「1、生き物の命を維持するための活動をする子どもの姿」では、生き物の命を維持す るために、餌やりをして生きていくための環境を整えている子どもの姿の学びがあった。①は、園で飼 育しているウサギに、当番の子どもたちが、我先にと競い合って餌をやっている場面である。抽出数の 多さから、餌をやる場面は、学生が実習先で比較的見る機会が多いことが窺われる。特に飼育活動は、 生き物の世話をしている子どもの姿を継続的に見ることにより、子どもの生き物に対するおもいが理 解できる。②では、捕まえたダンゴムシに対して、落ち葉や石を入れることにより生きていくための環 境を整えるという子どもの姿を学び取ることができていた。 小カテゴリー「2、生き物に自らかかわろうとする子どもの姿」では、夢中になって生き物にかかわ ろうとする子どもの姿の学びが感じられる。①と②の事例は、目の前に生き物がいれば、夢中になって 触ってしまう子どもの姿を観察していた。 しかし、③と④の事例のように、子どもは、時として残酷な行為に及ぶことがある。アリを踏みつ け、土をかけるという惨い行為に及んでいる。カエルを、おもちゃのように投げて遊んでいる子どもの 姿もある。実習先で、学生は、生き物に対する子どもの残酷な場面を見ていることが窺える。このよう に生き物と直接かかわる子どもの姿の学びは、実習でしか得られないものである。 (2)大カテゴリーB「生き物とのかかわりから学んでいる子どもの姿に関する学び」について 子どもが生き物とかかわることにより、生態に興味を持って観察したり、調べたり、何らかの反応を 示している子どもの姿について学生が学んだものを「生き物とのかかわりから学んでいる子どもの姿 に関する学び」という大カテゴリーB に分類した。この大カテゴリーには、以下の4つの小カテゴリー が含まれている。 「3、生き物を観察したり調べたりする子どもの姿」、 「4、生き物に対して反応するこ とができる子どもの姿」、「5、生き物の命に向き合う子どもの姿」、「6、生き物を題材に表現遊びをす る子どもの姿」である。 この 4 つの小カテゴリーには、次のような記述があった。 小カテゴリー「3、生き物を観察したり調べたりする子どもの姿」 ① ダンゴムシを捕まえることが園で大ブームになり、外から部屋に帰るとダンゴムシの本をずっと読ん でいた。 ② チョウの幼虫を育てていた。幼虫の時は、どんな葉がよいのか、子ども自ら、図鑑で調べていた。 ③ ザリガニを見て、違う大きさがあることから、オスとメスの違いや気になるところをクラス全体で本 を持ってきて調べていた。 ④ 飼育ケースで飼っていたチョウの幼虫がサナギになる前に脱走し、みんなで一斉に部屋をくまなく探 して見つけた。 ⑤ 滑り台のところの大きなクモの巣を発見した子どもが、他の子どもに「すごい大きいクモの巣があ る!」といって大騒ぎしていた。その場にいた子どもは、全員そこに見に行った。この日のクラスの ビックニュースになっていた。子どもにとっての生き物の存在の大きさに驚いた。 ⑥ 幼稚園でアオムシを年長組が育てていて、朝園に来たら、必ずそれを見て「昨日より、ちょっと大き くなった!」といって教えてくれていた。幼虫からサナギになったときは、みんなすごく喜んだ。 「ど んなチョウチョになるんだろうね」と、目をキラキラさせながら、成長を楽しみにしていた。. 32.
(7) 幼年教育 WEB ジャーナル第 3 号 小カテゴリー「4、生き物に対して反応することができる子どもの姿」 ① 池にいたカメが、カエルを食べていたところをみて、子どもが驚いていた。 ② 保育園の 0、1 歳児クラスで落ち着きがないときに、先生が「友だちに会いにいこうか」といって、 子どもをザリガニがいるところに連れて行った。ザリガニを見にいくことで、子どもの心の癒しにな っていたようだ。 ③ 普段、友だちと話さない子どもが、コイやニワトリを目の前にすれば、笑顔になり、口数が増え、元 気になっていた。 小カテゴリー「5、生き物の命に向き合う子どもの姿」 ① 保育室で飼っていたザリガニが、だんだん弱ってきた。子どもが、「先生、かわいそうだよ。助けて あげて」と言っていた。 ② 一羽の鳥が勢いよく飛んできて、保育室の窓にぶつかり、保育者と子どもの目の前で亡くなった。 ③ 飼っていた金魚が亡くなり、クラスのみんなで、園の裏庭の隅にお墓を作り、お花を供えて、手を合 わせていた。 ④ ダンゴムシが亡くなっているのを見て、みんなでお墓を作ってあげていた。 小カテゴリー「6、生き物を題材に表現遊びをする子どもの姿」 ① 水槽にあるザリガニを触った後、ザリガニのはさみを大きく描いた絵をかいていた。 ② 園で飼っている羊の毛で、ボンボリを作っていた。 ③ カメがのそのそ動くところを見て、それを真似して遊んでいた。こうやって、生き物について知って いくんだと思った。. 小カテゴリー「3、生き物を観察したり調べたりする子どもの姿」では、生き物の観察をしたり、興 味のあることを調べたり、生態の変化に気付いたり、友だち同士で情報を伝え合ったりして、生き物と かかわることにより、子どもが学びにつながっていた場面について、学生は学ぶことができていた。 ここにあがっている子どもの姿は、五感を使って生き物とかかわったことによる二次的な活動であ る。つまり、生き物にかかわったことから、子どもは、興味を持った生き物について本や図鑑で調べる という行為に至っている。また、友だち同士で情報を共有し、学ぶ子どもの姿を見ることができてい る。①②③の事例のように、生き物のかかわりから学びに向かう子どもの姿を学生は学んでいる。ま た、④⑤の事例のように、友だち同士で情報を共有して、探していた生き物が見つかれば、ともに喜 び、驚くような生き物の生態に出くわせば、その情報を友だちに知らせ相互に学び合う子どもの姿を 観察することができている。また、⑥の事例のように、飼育しているアオムシを日々継続して観察し、 成長の喜びを感じている子どもの姿を学んでいる。学生は、実習先でこのような子どもの姿を観察す ることにより、生き物とのかかわりから学びへとつながる過程や、情報共有しながら生き物の学びを 得ている子どもの姿を観察することができている。 小カテゴリー「4、生き物に対して反応することができる子どもの姿」では、生き物に対して驚きや 癒しを感じている子どもの姿を読み取っていた。①の事例では、カメが、カエルを食べてしまう場面を みて衝撃を受けている子どもの姿を学んでいた。また、②③の事例のように、愛着を感じている生き物 に対して反応を示す子どもの姿を学んだ学生もいた。 小カテゴリー「5、生き物の命に向き合う子どもの姿」では、生き物の死を予感したり、生き物の死 に直面し、生き物の死を悼み、お墓をつくっている子どもの姿を学んでいた。①の事例では、ザリガニ の死が近いことを予感して子どもは実習生に助けを求めている。ここに、命に対して真摯に向き合っ ている子どもの姿の学びがある。②③④の事例のように、死を迎えた生き物に対しての子どものおも いや、子どもがどのように反応するのかという子どもの姿についての学生の学びがある。 小カテゴリー「6、生き物を題材に表現遊びをする子どもの姿」では、生き物とのかかわりから、子 どもは、造形表現へと遊びが展開していた。また、生き物を模倣し遊びに取り入れている子どもの姿を 学んでいた。①②③ともに、子どもの活動においての環境領域から表現領域へのつながりがみられた 場面である。 「こうやって、生き物について知っていくんだと思った」という学生のつぶやきから、子 どもは、遊びから学びへ発展することを理解できたことが窺える。. 33.
(8) 子どもと生き物とのかかわりの観察から得られる学生の学び (3)大カテゴリーC「子どもが生き物とかかわるための環境構成と保育者の援助方法に関する学び」 について 子どもと生き物をどのようにつないでいくのか、環境構成の在り方や保育者の援助方法について、 学生が学んだものを「子どもが生き物とかかわるための環境構成と保育者の援助方法に関する学び」 という大カテゴリーC に分類した。この大カテゴリーには、以下の 4 つの小カテゴリーが含まれてい る。 「7、子どもが生き物に触れるための保育者の手立て」 、 「8、生き物を飼育するにあたって保育者が 準備しておくこと」 、 「9、保護者や地域の人との生き物を通してのかかわり」、 「10、子どもに生き物の 命と向き合わせるための保育者のかかわり方」である。この 4 つの小カテゴリーには、次のような記 述があった。 小カテゴリー「7、子どもが生き物に触れるための保育者の手立て」 ① クラスのみんなが、飼育している生き物や昆虫と触れ合えるように、当番を決め、掃除や餌やりをし ていた。全員が、生き物の世話をするよう配慮されていた。 ② 保育者が、アオムシの時から飼育し、子どもにたくさん触れ合わせていた。チョウになったら、クラ スみんなで放していた。命の大切さを理解でき、子どもにとってすごく良い経験になっていると思う。 ③ ザリガニが触れない 5 歳児の女の子がいた。けれども、触りたいという気持ちは持っていた。周りの 子が触っているのを見て「先生と一緒に触ってみよう」といって、保育者と一緒なら触れるようにな った。 小カテゴリー「8、生き物を飼育するにあたって保育者が準備しておくこと」 ① 外遊びの時、網と虫かごが用意されていた。子どもが虫を捕まえたら、虫かごに入れられるようにし ていた。 ② 季節の図鑑を用意し、それを子どもが首から、ぶら下げられるようにしていた。子どもは、その図鑑 を見ながら、一生懸命バッタやカマキリを探していた。 ③ 園の玄関に生き物が入った飼育ケースが置いてあり、子どもが観察しやすい環境にしていた。子ども が生き物の成長を感じることができる配慮が大事であることが分かった。 小カテゴリー「9、保護者や地域の人との生き物を通してのかかわり」 ① 子どもがカブトムシに餌をやっていた。お母さんも、カブトムシ用のゼリーを園に持ってきて、飼育 に協力していた。 ② 家庭から、野菜の皮をむいたものを持ってきて、ウサギに食べさせていた。 ③ 地域に住んでいる中学生が、ザリガニを捕まえて園に持ってきた。それを園で飼うことになった。 小カテゴリー「10、子どもに生き物の命と向き合わせるための保育者のかかわり方」 ① 小鳥が、保育室の窓にぶつかって、突然亡くなった。保育者は、子どもの悲しみに気付き「小鳥さん が、天国にいけるように合掌しようね」と言葉をかけていた。死を目の前にしたとき、その子どもの 気持ちに寄り添うことは大事だと思った。 ② 保育室で飼っていた金魚が死んでしまった。保育者は、クラスの子どもと一緒にお墓を作った。花を 供え、1 人ずつお墓に手を合わせていた。保育者は、命には必ず終わりがあることを話していた。子 どもが金魚の死を理解できるような言葉かけが大切だと思った。. 小カテゴリー「7、子どもが生き物に触れるための保育者の手立て」においては、子どもと生き物が かかわるためには、どのような配慮が必要なのか保育者の援助方法について、学生は学ぶことができ ていた。 ①では、生き物に全員がかかわれるような配慮の方法について理解していることが窺われる。②で は、継続的な飼育活動の中で、生き物の成長や変化が感じられるよう、子どもが生き物にしっかり触れ る機会を意図してつくることの大切さについて理解していた。③では、なかなかザリガニに触れなか った子どもが、 「先生と一緒に触ってみよう」と言葉をかけるという方法で、保育者が、生き物と子ど もとの橋渡しをしている場面である。躊躇している子どもと一緒に保育者が生き物を触ることにより、 子どもは生き物に触れるようになった。子どもと生き物を繋ぐ援助方法についての学びがあった。 小カテゴリー「8、生き物を飼育するにあたって保育者が準備しておくこと」では、生き物と子ども がかかわるための事前準備や環境構成についての学びとなっているところである。①②の事例では、 実際にどのようなものが準備されていたのか、子どもと生き物のかかわりにおける保育者の視点に立 34.
(9) 幼年教育 WEB ジャーナル第 3 号 った物的環境についての学びとなっている。③の事例においては、生き物を飼育するとき、子どもが観 察しやすい配慮が必要であるという学生の学びが得られている。 小カテゴリー「9、保護者や地域の人との生き物を通してのかかわり」では、保護者や地域の人が子 どもと生き物のかかわりを支援しているという学びを得ている。①②では、保護者に生き物の飼育を 協力していただいているということに学生は気付かされる。 近年、中学生も職業体験で幼稚園や保育所で子どもに触れ合う機会がある. 21)。③の記述のように地. 域の中学生も、園での職業体験から、子どもがどのような生き物に興味を持っているのか知っていた。 ザリガニを持って来ることにより、中学生は、職業体験した園で再び子どもの笑顔に会うことができ た。生き物が、これらの出会いをつなげている。園で飼育されている生き物は、地域の様々な人に見守 られ、生かされているという学生の学びがある。 小カテゴリー「10、子どもに生き物の命と向き合わせるための保育者のかかわり方」では、生き物 の死にかかわる時の保育者の在り方を学びとっていた。また、子どもに気持ちに寄り添う大切さの気 付きが得られた。①では、子どもが、小鳥の偶然の死に出くわす。ここでの学生の学びは、子どもに対 する保育者の言葉がけである。この場面では、動かないところをみて小鳥が死を迎えたことを子ども は理解していた。子どもが悲しんでいる様子から、保育者から「小鳥さんが、天国にいけるように合掌 しようね」という自然な言葉かけが、学生にとって印象に残っていた。子どもに生き物の命と向き合わ せるための保育者のかかわり方についての学びが得られていた。 ③では、クラスで飼っていた子どもにとって愛着のある金魚が死んでしまった。保育者は、生き物に はいつか必ず命の終わりがくるという話をして、子どもと一緒にお墓を作っていた。飼育をしていた 生き物が死を迎えたとき、保育者としてどのような態度で、その死に向き合うべきか、学生は、保育者 の援助の一端を垣間見ることができていた。 (4)子どもと生き物とのかかわりから得られる学生の学びの概念図について 図 1 は、子どもと生き物とのかかわりから得られる学生の学びの概念図である。まず、子どもと生 き物のかかわりについて観察することで、餌やりなど生き物の命を維持するための活動や、捕まえた り、一緒に遊んだりして主体的に生き物にかかろうとする子どもの姿の理解することができる。そし て、生き物とかかわることにより、生き物から学びを得ている子どもの姿を理解することが可能とな る。それは、生き物を観察したり調べたり、生き物を見ることにより感情を揺さぶられ何らかの反応を 示したり、限りある命に向き合い時には生き物の死に直面したり、生き物とのかかわりから表現遊び へと活動が発展している場面の学びがあった。 同時に、実習では子どもと生き物についての環境構成や保育者の援助についての観察をすることが できる。子どもが生き物に触れるための手立て、飼育するために準備しておくこと、園外の人的環境と 生き物をつなぐこと、また限りある生き物の命に向き合わせるための方法など、保育者の姿も観察し ていた。これらの保育者の支えがあって、子どもが生き物とのかかわりから学びへとつなぐことが理 解できる。学生が、この過程を把握することにより、保育者としての視点を獲得できる。. 35.
(10) 子どもと生き物とのかかわりの観察から得られる学生の学び 子どもと生き物とのかかわりについての観察. 大カテゴリーA、生き物にかかわる子どもの 姿の理解ができるという学び 1、生き物の命を維 持するための活動を する子どもの姿. 子ども の学び の生成. 大カテゴリーB、生き物とのかかわりから学んでい る子どもの姿に関する学び. 2、生き物に自らかか わろうとする子ども の姿. 3、生き物を観察したり調 べたりする子どもの姿. 4、生き物に対して反応する. 5、生き物の命に向き合う 子どもの姿. 6、生き物を題材に表現遊 びをする子どもの姿. ことができる子どもの姿. 保育者の支援. 環境構成や保育者の援助についての観察. 大カテゴリーC、子どもが生き物とかかわるための環境構成と保育者の援助方法に関する学び 7、子どもが生き物に触れる ための保育者の手立て. 8、生き物を飼育するに あたって保育者が準備 しておくこと. 9、保護者や地域の人との 生き物を通してのかかわり. 10、子どもに生き物の命と向き合 わせるための保育者のかかわり方. 学生の学びの生成. 保育者としての視点 図1. 子どもと生き物とのかかわりから得られる学生の学びの概念図. 4.総合考察―保育者としての視点の学び― 本稿では、幼稚園実習および保育所実習を経験した学生が、子どもと生き物とのかかわりを観察す ることにより、どのような学びが得られたのか検討を行った。学生は、生き物にかかわる子どもの姿の 理解ができるという学び、生き物とのかかわりから学んでいる子どもの姿に関する理解をしていた。 また、子どもが生き物とかかわるための環境構成と保育者の援助方法に関する学びを得ていた。そし て、これらの過程を把握することにより保育者としての視点を獲得することが可能となる。ここでは、 この保育者の視点について考えていきたい。 学生は、子どもが、生き物を捕まえたり、命を育んでいくなど、多様な直接体験の場面を学生が観察 することにより、大カテゴリーA「生き物にかかわる子どもの姿の理解ができるという学び」があった。 そして、これが大カテゴリーB「生き物とのかかわりから学んでいる子どもの姿に関する学び」へつな がる場面も理解していた。学生は、子どもが五感を使って生き物とかかわっていることから、様々な学 びへと展開している場面を見ている。カメの動きを模倣していた子どもを観察し「こうやって、生き物 について知っていくんだと思った」という学生の記述があった。このように、子どもが生き物とのかか わりから学びへと発展している過程を観察していたということから、保育者の視点として、直接体験 による子どもの生き物についての学びの過程の理解が得られたと考えられる。 次に、環境構成や保育者の援助についての観察による学生の学びについてである。大カテゴリーC 「子どもが生き物とかかわるための環境構成と保育者の援助方法に関する学び」は、実習先の生き物 と触れ合う子どもに対しての保育者のかかわりを間近で観察するということが、学生の大きな学びと なっていた。それは、子どもと生き物のかかわりは、保育者の支援があって成立するものであるという 学びである。 この保育者の支援の場面を見ることで得られる保育者の視点として、一つ目は、生き物と子どもの かかわりを支援するための方法を理解できるという点である。捕まえた昆虫が、どのような虫なのか 36.
(11) 幼年教育 WEB ジャーナル第 3 号 疑問に思ったとき、図鑑で調べることがある。みんなで観察をしたり、大きさを比べたり、昆虫とかか わることで、友だちと一緒に楽しさを共有することができる。この時、保育者がどのような環境設定に しているのか、学生にとっても視覚的に理解することが可能となる。また、学生自身も、環境構成はど のようにするべきか検討する契機にもなる。飼育は、当番活動として行われているところが多い。生き 物とかかわるとき、クラスに当番活動という方法を取り入れることにより、全員が生き物にかかわれ るという方法の学びがあった。そこには、友だち同士の交流が生まれるということも理解していた。間 近で保育者と子どものかかわりを観察することは、このような具体的な保育の方法としての学びが得 られる。 保育者の支援の場面を見ることで得られる保育者の視点として、二つ目にあげられるのは、命の大 切さを伝えるための方法の理解である。事例の中で、動かなくなった生き物を見て初めて死というも のを感じた子どもの姿があった。そこに、静かに寄り添いながら、子どもの悲しみを受け止める保育者 の姿があった。命には、限りがあるからこそ、保育者は、生き抜くことの大切さを子どもに伝えていく 必要がある。その場限りの言葉では命の大切さは伝わらない。生き物の命に向き合う様々な場面を子 どもと一緒に共有する時間の積み重ねが子どもの学びにつながる。間近でこれらの子どもの様子や保 育者の援助を観察してきた学生は、生命尊重の精神をいかにして育むかということに対する理解が得 られたのではないだろうか。実習先で子どもと生き物のかかわりを支える保育者を観察するというこ とから、多様な援助の学びが得られることが明らかとなった。 ただし、学生の学びには、個人差があった。一つのカテゴリーのみの記述も多くあり、平面的に場面 を切り取っただけの観察にとどまっている学生もいたことになる。これは、それぞれの実習園におけ る生き物についての環境や生き物に対する園の方針が影響したことが窺える。また、学生自身の生き 物と子どものかかわりについての関心の度合いも個人差がある。 しかし、学生への指導として、保育者の視点を持って、全体を見ることへの意識づけに課題があった ことは否めない。その背景にあるものを学生自身が読み取る意識を持つことにより、保育者としての 深い学びが得られる。子どもと生き物のかかわりについて、表面的な観察をすることだけに注視する のではなく、これに対して、子どもにはどのような学びがあるのか、保育者が子どもにどのような援助 しているのか、また環境構成はどのようにしているのか、これらをたくさん学び取ろうという認識を もって学生が実習に臨めるよう指導していく必要性がある。 そのためには、子どもと生き物のかかわりを支えるための保育者の援助や環境構成についての理論 だけではなく、様々な事例について検討を行うことが必要である。保育者として、どのように援助する のかという視点を常に意識することが重要である。生命尊重の精神を子どもに育むために、生き物の 死を目の前にしている子どもに対してどのような言葉をかけ、子どもの心に寄り添うのか学生自身で 考える機会を持っておくことが必要である。 また、実習は、保育者養成校と保育現場が協働することで、学生は多くの学びが得られる。実習園に おいても、保育者が学生に子どもと生き物のかかわりに対しての援助や環境構成などの配慮について の指導や振り返りの機会を持っておくことにより、学生の大きな学びの効果があるのではないだろう か。実習園に対して、このような指導をしていただくよう啓発していくことも必要と考える。. 5.本研究における今後の課題 今後の課題として 3 点をあげる。 1 点目は、実習園の生き物の飼育環境の違いによる調査である。今回は、実習園ごと分けて調査を行 っていない。実習園の飼育環境が異なれば、生き物と子どもとのかかわりは変化することが考えられ る。したがって、飼育環境の違いから、学生の学びにも差異が生じる。学びの差異は、どのようなもの があり、学びの差異を埋めるには、どのような方法があるのか検討したい。 2 点目は、現場の保育者が、子どもと生き物のかかわりを援助するために、具体的にどのような援助 37.
(12) 子どもと生き物とのかかわりの観察から得られる学生の学び をしているのか、また、その援助を行うために、保育者養成校において何を学んでおくべきか保育者を 対象にした調査を行いたい。 3 点目は、実際の保育現場における子どもと生き物とのかかわりを調査することである。保育者養成 の視点から、フィールドワークを用いた研究も必要と考える。これらの調査結果から保育者養成校で 学生が学ぶべき内容を精査し、子どもと生き物のかかわりについて、保育者養成校の教育課程の中で、 多様な保育者の視点を養うには何が必要かを検討していきたい。. 引用文献 (1). 文部科学省(2017)幼稚園教育要領.. フレーベル館. (2). 厚生労働省(2017)保育所保育指針.. フレーベル館. (3). 内閣府(2017)幼保連携型認定こども園教育・保育要領.. (4). 前掲 1. (5). 前掲 2. (6). 前掲 3. (7). 前掲 2. (8). 前掲 3. (9). 文部科学省(2017)幼稚園教育要領解説.. フレーベル館. (10). 厚生労働省(2017)保育所保育指針解説.. フレーベル館. (11). 内閣府(2017)幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説.. (12). 前掲 9. (13). 前掲 10. (14). 前掲 11. フレーベル館. フレーベル館. (15) 井上美智子・無藤隆(2009)幼稚園・保育所における自然体験活動の実施実態(2) 動物飼育の 実態.. 教育福祉研究 35.. 1-7.. (16) 伊藤哲章(2017)幼稚園・保育所における生き物飼育に関する保育者の視点.. 教材学研究 28.. 135-142. (17) 百瀬ユカリ(2016)幼稚園及び保育所における動物飼育活動の意義 : 実習生の体験から. 東文化大学紀要社会科学 54. (18). 大. 47-57.. 永井 毅・溝邊和成(2019)子どもの自然遊びを豊かにする保育実習前授業の改善:―保育に かかわる「虫」を題材とした演習授業に見る学生の意識変化―.. 保育学研究 57(1).. 90-101.. (19) 福山多江子・永井優美(2015)保育者養成における実習の意義― 実習の振り返りから見る学 生の成長(1).. 東京成徳短期大学紀要 48. 55-70.. (20) 百瀬ユカリ(2018)幼稚園および保育所における子どもと小動物とのかかわり : 教育・保育 実習中の事例からの考察. (21). 日本女子体育大学紀要 48.. 文部科学省(2005)中学校職業体験ガイド.. 163-169.. 1-43.. 謝辞 本研究に快くご協力いただきました学生のみなさんに御礼申し上げます。分析にご協力いただき、 助言をいただきました神戸教育短期大学准教授の林幹士先生に心より感謝申し上げます。また、お忙 しい中、査読をしていただいた先生方に心より御礼申し上げます。. 38.
(13)
関連したドキュメント
英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき
本計画では、子どもの頃から食に関する正確な知識を提供することで、健全な食生活
学部生の頃、教育実習で当時東京で唯一手話を幼児期から用いていたろう学校に配
HACCP とは、食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのあ る微生物汚染等の 危害をあらかじめ分析( Hazard Analysis )
学部生の頃、教育実習で当時東京で唯一手話を幼児期から用いていたろう学校に配
就学前の子どもの保護者 小学校 1 年生から 6 年生までの子どもの保護者 世帯主と子のみで構成されている世帯の 18 歳以下のお子さんの保護者 12 歳~18 歳の区民 25
自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から
・私は小さい頃は人見知りの激しい子どもでした。しかし、当時の担任の先生が遊びを