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看護師の関わりから見える急性期失語症者の経験

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Academic year: 2021

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論文要旨

【背景】医療現場の失語症者を看護するとき、失語の状態を捉えるために、医学的な尺度を 用いての症状分析や重症度判定がなされるのが一般的である。一方で、看護を通して見え るその人の意思疎通能力の可能性との間にズレを感じていた。先行研究においても失語 症者は既存の理論に当てはめられ、要約され、失語をもつ人がどのような経験をしている のかが見えづらく、失語症看護が病態生理と理論のみで作られてしまう限界を感じた。以 上から、失語症者の経験そのものを記述し、経験を理解し失語症者の看護に活かす必要が あると考えた。 【目的】突然失語症となった人の急性期経験のうち、看護師との関り合いを通してみえる日 常を記述する。 【方法】研究デザインは、現象学を手がかりとした質的記述的研究である。失語症の A 氏 と看護師の関わり場面の参加観察、研究者との対話場面から得た質的データを現象学専 門家にスーパーバイズを得ながら分析・記述をおこなった。 【結果】全失語であり、発症後6日目にある A 氏の日常に同席した時、大部分を占めてい たのは“語らない日常”であった。殆ど語らない A 氏は、関わる看護師が受け取った意味 によって A 氏の意思が代弁されていき、思いを言葉にしようとするが言葉にならず、眉 間にしわを寄せ、ため息を吐いて途中で言うのを止めてしまう。あるいは、言葉が、完全 でなくとも自然に口から零れ、ただ看護師とのやり取りを楽しむ等の場面が見られた。重 度の理解障害があると病態分析されている一方で、看護師と関わり、やり取りを行う場面 では、A 氏は看護師の動きや視線の先を目で追い、看護師の意図を感じ取り、状況を判断 し、看護師の意図に応じて自らケアに参加する在り様が受け取られた。 【考察】言語的情報のやり取りによる意思疎通が困難とされる重度の失語症者である一方 で、多くの言葉を介さずとも、看護師のやり取りの場面が成立していく経験は、「文脈が あること」、文脈の中で「ふるまいから意味を感じ取る」こと、やり取りの相手のふるま いに向けられる「関心がある」ことによって成り立つと考えられた。 【結論】これまで理解することが困難とされてきた急性期失語症者の経験に接近できた。本 研究にて明らかとなった急性期失語症者の経験は、既存の理論や医学的枠組みに当ては めては決して見えない経験の側面であると考えられた。

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