携帯電話アンテナの小型化と広帯域化に関する研究
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抵抗負荷逆
F
型アンテナの特性
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2005MT066三輪雄規
指導教員稲垣直樹
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はじめに
近年,非常に多くの人が携帯電話を所持するように なった.携帯電話の小型化に伴い,通信の出入り口であ るアンテナも小型化,省スペース化が必須となった.ア ンテナの小型化は,特性の悪化をもたらすのが普通なの で,その改善のために工夫が必要である.そこで本研究 では板状逆Fアンテナ(PIFA)に切り込みを加え,も う一つの工夫としてPIFAの短絡ポートに抵抗を付加す る.そして携帯電話に搭載が可能な大きさの小型アンテ ナに要求される特性を満たすアンテナを目指す.2
携帯電話アンテナ
2.1 携帯電話の小型化 移動通信としては1979年に自動車電話が誕生してい る.その6年後の1985年には3kgの肩掛けタイプの ショルダーホンが誕生.このあたりから携帯電話の小型 化が飛躍的に向上した.1987年には700ccのハンドヘ ルドタイプが誕生.2年後には約40%減の400cc,翌々 年の1991年には150cc,230gと,携帯するのに便利な 大きさとなり一般の人々にも広く普及した.現在重量は 120g程までになり,様々な機能も付随されている. 2.2 内蔵アンテナ 携帯電話にはアンテナが2つあり,多くは内蔵されて いる.内蔵アンテナは年々小型化される携帯機に合わせ て,薄型化,小面積化が求められる.しかし,アンテナを 小さくする為の誘電体や複雑なアンテナ形状は,損失の 増大や狭帯域化につながる.そのため,低損失な誘電体 や放射効率の良いアンテナ形状が開発されている.代表 的な内蔵アンテナに板状逆Fアンテナ(Planar Inverted F Antenna:PIFA)がある. 2.3 要求される特性 内蔵アンテナに関する技術課題には小型化,広帯域化, 多周波共用化,人体からの影響の抑制の4点が挙げられ る[1].携帯電話の多機能化により多くのシステムに対 応するため多周波化が要求される.多機能化のため様々 な回路が増加し,アンテナの小型化が要求される.さら に小型化によっても動作帯域を保証する広帯域化技術が 必要となる.そして人体に近接して使用されるため,そ の影響が大きく,抑制する技術も必要となる. アンテナの周波数帯としては主に810∼960MHzと, 1920∼2170MHzが使われている.第3世代,第4世代 では698∼806MHz,3.4∼3.6GHzの2つの周波数帯も 加わり,アンテナは多周波化が緊急の課題である.3
逆
F
アンテナ
3.1 線状逆Fアンテナ 線状逆Fアンテナとは,アンテナの基本でもあるモノ ポールアンテナを途中で90°折り曲げ,給電線付近に短 絡線を付加してインピーダンス特性を改善したアンテナ であり,F字形状をしていることからこの名がある. 3.2 板状逆Fアンテナ 板状逆Fアンテナ(PIFA)は線状逆Fアンテナの地板 に並行な部分を板状にしたものである.板状にしたこと によって給電線を様々な位置に置くことができる他,放 射板にスロット(切り込み)を入れることができるなど, 様々な工夫を凝らすことが可能となり,アンテナの自由 度が増した.PIFAの放射板を曲げ,短絡線にチップ抵 抗器を負荷することによってアンテナ長をλ/8,アンテ ナ高0.01λまで小型化し,帯域幅を基本的な形のPIFA の10倍以上にすることができる[2]. 図1 PIFA4
測定パラメータ
4.1 リターンロス リターンロスはS11で表される.信号源と負荷イン ピーダンスが不整合の場合,信号源のもっている電力 が負荷に十分に供給されない,このために生ずる.0dB の場合,アンテナに供給される電力が放射されずに全 て反射して電源へ戻る.アンテナで電波が放射される などして電力が消費され,反射して戻る電力が減少す るとリターンロスが減少.アンテナとして利用する場 合,-10dB以下にすることが目安.この-10dB以下が帯 域幅とされる[3]. 4.2 VSWR特性VSWRとはVoltage Standing Wave Ratioつまり電 圧定在波比のことで,進行波と反射波の関係を示す数 値である.伝送線路と負荷(アンテナ)にインピーダン スの不整合があると、その部分で反射波が発生する.そ のとき伝送線路には定在波が発生する.VSWRはある
程度高くても特に不都合は生じないが,空中へ放射され る電力が少なくなることや,電力効率,電波障害などの 点から,低い方が望ましい.VSWRが1ということは 定在波の最大値と最小値の比が1,つまり差が無いとい うことであり,反射波が無いということである.一般に VSWRは1.5以下が理想とされている.
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スロット装荷による多周波化
本研究ではS字状スロットを装荷した.図2はスロッ トなしの場合とスロットを装荷した場合とを比較した S11のグラフである.スロットの装荷によって多周波化 しているのがグラフから見て取れる.スロットを装荷す る程多周波化されるが今回の研究では最大5周波までで あった. スロットを縦に入れても横に入れても多周波化できる が,スロット長が短すぎると,迂回路が作れずスリット のない状態に近くなる.さらにスロットが給電線のある 側から始まるのか,逆から始まるのかでも電流の経路長 が変わるため特性にも違いが現れる. 図2 スロット装荷の有無によるS11特性の変化6
抵抗負荷による広帯域化
図3はスロットのみで抵抗を負荷していない状態と, 35Ωの抵抗を負荷した状態とを比較したS11のグラフ である.抵抗を負荷したことによって帯域幅が広くな り,広帯域化したのがよくわかる.抵抗を負荷するとリ ターンロスも改善される.負荷を大きくすれば広帯域化 されるが,負荷の大きさによっては目標の周波数帯から ずれてしまったり,リターンロスが改悪される. 図3 抵抗負荷の有無によるS11特性の変化7
直方体導体の上に設置したときの特性
アンテナ高6mm,20×40mmの平板に17×2mm のスロットを6つ装荷.35Ωの抵抗を負荷したアンテ ナを高さ13mm,100×40mmの直方体にアンテナを 設置.アンテナが直方体に収まるように直方体を変形. 図4はアンテナを直方体に設置した図である.直方体設 置前と設置後のS11とVSWRを図5と図6に示す. 図4 直方体導体の上に設置したPIFA 図5 直方体導体設置前後 のS11特性 図6 直方体導体設置前後 のVSWR特性 S11,VSWR両方とも設置後のほうが特性が良い.こ れは直方体にも電流が流れたため,直方体全体もアンテ ナとして機能したからである.8
おわりに
PIFAにスロットを装荷することによって多周波化さ れることが確認できた.さらに,抵抗負荷による広帯域 化についても確認.携帯電話で使用する周波数帯の各々 の一部しかカバーできず,第4世代の3.4∼3.6GHzの 周波数帯については全くカバーできなかった. 直方体部分には電流が流れるので,手で持った時や耳 に当てた時など,人体に近接した際に受けるであろう 多大な影響を考慮し,抑制する方法も考えなければなら ない.参考文献
[1] 関根 秀一:“携帯端末用内蔵アンテナ技術”,電子情 報通信学会誌,Vol.88, No.7, pp535-540(2005.7). [2] Kin-Lu Wong, Kai-Ping Yang:“Modified planarinverted F antenna”,Electronics Letters,Volume 34, Issue 1,pp. 7-8(1998.1).
[3] 桑山真一,長島圭樹:“非平面グラウンド上の逆F型 アンテナに関する研究”,南山大学数理情報学部情報 通信学科2006年度卒業論文