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中国の対外開放政策とアジアNICs (松尾 博教授退官記念論文集)

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71

中国の対外開放政策とアジアNIC、

小川雄平

1 は じ め に  1978年12月の中国共産党第11期3中全会で提起された対外開放の方針にした がって,中国は目下,対外開放を主柱とする近代化路線を直走っている。対外 経済関係を代表する貿易や外資導入に関する数値は,この路線の急速な展開を 物語っている。ちなみに,1984年の貿易総額はほぼ500億ドル,78年の2.4倍に 増大しているし,直接投資導入額も84年末累計で4,618件,!03億ドル(契約ベ ース)に達している。  このような対外開放政策についてはいうまでもなく様々な評価が可能であ る。小論ではこの点には触れず,対外開放政策の一環を形成しつつある国交未 樹立国との経済交流の問題,とりわけ経済的補完関係が大きいと思われるアジ アNICs(新興工業国・地域群)との経済交流をめぐる問題に焦点をあてるこ とにしたい。  韓国・台湾・香港・シンガポールのアジアNICsは,特殊な位置にある香港 を別とすれば,いずれも中国とは国交がない。なかでも韓国と台湾は反共を国 是とし,中国とは対立関係にある。ところが,そうした政治的対立の背後で, 香港を窓口とする経済的交流は急速に進んでいる。  香港統計によれば,1984年の香港経由中・韓貿易は27億HKドル(3億4,500 万ドル),中・台貿易は43億2,600万HKドル(5億5,300万ドル)でそれぞれ 80年のほぼ7倍と2倍に達している。85年に入ると,とりわけ韓国・台湾の対 中国輸出に拍車:がかかり,1∼5月の対中輸出額は韓国が14憶2,800万HKド ル(1億8,300万ドル),台湾が34億2,500万HKドル(4億3,800万ドル)で各

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 72 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号) 々対前年同期比4,3倍と3,9倍という著しい伸びを記録している。  さて,韓国と台湾は共に輸出指向工業化路線を採っており,経済の牽引車は 輸出である。結論を先取りしっついえば,世界的な石油需要の低迷により中東 産油国の輸入需要に多くを期待できなくなった韓国・台湾が,最後の潜在的輸 出市場である共産圏諸国,とりわけ中国に輸出先を求めざるをえなくなり,対 中接近を模索しつつあった段階で,対外開放政策を採る中国がこれに応じ香港 経由の間接貿易が始まったという訳である。双方が地理的にも隣接し,また経 済的補完関係も大きいことから,上に見たような急速な貿易拡大となって現わ れているのである。小論ではこの点を検証し,併せてこの経済交流の将来に若 干の展望を与えておくことにする。 皿 NICs経済と輸出市場  1. NICs経済の特質  韓国・台湾・香港・シンガポールがいずれも,いわゆる輸出指向工業化政策 を採り,輸出産業の発展を牽引力としつつ,70年代を通して高い経済成長を持 続したことは周知の通りである。これら4ヵ国がrNICs(Newly lndustrializing Countries)」,あるいは「中進国」と呼称されるのは製造工業品輸出の驚異的増 加と,それに基づく経済の高成長の持続とが,「発展途上国」のイメージから 大きく懸け離れたものだからである。とくに韓国と台湾では重化学工業化が進        み,産業構造の高度化が著しい。  このようにNIC8経済は輸出増大によって良好なパフォーマンスを持続して きたのであるが,他方で,輸出の増加が輸入の増加を誘発するという体質を組 み込んでしまうようになったことも指摘しておかねばならない。すな:わち,工 業製品の輸出増大が後方連関効果を通して国内の資本財・中間財の生産に充分 な波及効果を生じる前に,海外からの資本財・中間財の輸入需要を誘発してし まう,ということである。加えて,資本財・中間財の輸入先は日本に集中して 1)詳しくは,前田・小川共著『国際経済の新展開』 ぐ世界思想社,1982年)第5章を  参照されたい。

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      中国の対外開放政策とアジアNICs 73 いる。ちなみに,台湾の数値を掲げて治けば,資本財・中間財の対日輸入依存 度はほぼ50%である(第1表)。日本側統計によっても,対NICs輸出の実に 77%が資本財・中間財を中心とする重化学工業品で占められており,NICsの 資本財・中間財の対日依存は明らかであろう。  この結果は,巨額の対日貿易赤字の慢性化である。第2表に見られるように 赤字額は近年とみに増大し,1984年には140億ドルを超えた。この金額}tk NICs の対日輸出額100億ドルの1.4倍に相当する。貿易摩擦が問題となっている米 紙1表 (台湾)資本財・中間財の対日輸入 1984年 (100万ドル,%) 品 目 輸入総額 対日輸入額 対日輸入依存度       ラ        さ             りの

械品品鋼盛年ク口器計

     ツ

製学平金チ製機A.

 子 送鉄ス属気上

     ラ

機電化鉄輸非プ発電以

2,168.1 2, 427 4 2, 035. 6 1, 309. 0  640.5  693.!  209. 4  159. 5  617. 6 10, 260. 2 1, 272.9 1, 321.8  511.6  789.!  442.!  168.8  105.7  92.3  406.5 5,ユ10,8 58. 7 54.5 25. 1 60. 3 69. 0 24. 4 50. 5 57. 9 65.8 49.8 注 1) 時計・光学機器を除く,  2)医薬品・染料・入造繊維を除く,  3) 家電製品を除く。 (出所) 財政部統計処『中華民国進出口貿易統計月報』A’o.184(1984.12)。 第2表      アジアNICsの対日貿易赤字額       (100万ドル) 韓  一

台 湾 香 港 シンガポール NICs計

1981 2, 269.0  82 1, 627. 3  83 2, 638. 8  84 3, 014.1  85.1∼6    ユ,459.3 2,882.1 1, 812. 3 2, 463. 7 2, 792. 3  839. 4 4, 641.4 4, 095. 5 4.618.7 5, 717. 2 3, 016. 2 2, 524. 1 2, 547. 1 2, 980. 7 2, 834. 8 ユ,!28.9 12, 316. 6 10, 082. 9 !2, 701. 9 !4, 348. 4 6, 443. 8 注 日本側統計による赤字額。 (出所) 『外国貿易概況』1985年6月より算出。

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 74 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号) 国の対日赤字330億ドルには及ばないものの,ECの対日赤字100億ドルを凌駕 している。  このように輸出の増加が経済成長を牽引するものの,同時に,資本財・中間 財の対日輸入を誘発してしまうとすれば,:NICsの貿易収支は常に逼迫し,結 果として輸出に一層のドライブがかかることになる。輸出が輸入を誘発し,そ れがまた更に大きな輸出へと駆り立てるという訳である。韓国の統計に依りな がら,今少しこの点に触れておこう。  第3表は,輸出・投資・消費の各項目別の最終需要の輸入誘発係数を日・韓両 国について求め,5年毎に比較したものである。これによれば,韓国の輸入誘  第3表         輸入誘発係数の日・韓比較 日 本 韓 国 1970 !975 1980 エ970 1975 1980 最終需要総額   O.12  0.10  0.10 輸   出   0.16 投   資   0.13 消   費   0.11 O.15 O.12 0.10 O.10 0. 09 O. 10 O.20 O.29 0. 26 O. 36 0.39 O.48 0. 13 O. !9 e. 30 0. 38 0.42 0.23  (出所) 日本銀行「調査月報』1984,10。 発係数は日本の3倍にも達し,とくに輸出需  第4表        韓国の輸出商品別輸入 要や投資需要の輸入誘発係数が高いこと,ま   誘発係数(1980年) たその数値が年を追って大きくなっているこ  重化学工業品  O.・50 と,が窺われる。つまり,韓国経済は,輸出  軽工業品  Q・29        工業品平均  O.・38 や投資が輸入を誘発しやすいという体質を持       (出所)韓国銀行『調査統計月 っており,近年ますますその傾向を強めてい     報』!984.11。 るという訳である。近年の重化学工業化も,重化学工業部門の輸入誘発体質 (第4表)の故に,日本への依存を一層強めるという結果を招いている。  このような韓国の輸入誘発体質は,輸出増加が経済成長を牽引する一方で, これを上まわる資本財・中間財の輸入増加を誘発し,大幅な貿易収支赤字を顕 現する。収支のインバランスが対外借款で補唄されると,今度は債務返済のた めに輸出に一層のドライブがかかる。輸出増は輸入増を結果し,対外借款での

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       中国の対外開放政策とアジアNICs 75 補説が債務を累積させるという次第である。この結果韓国は,一方で急速な重 化学工業化を実現させながら,もう一方で対外債務453億ドルを抱える世界第        3位の大回藩命となっている。程度の差こそあれ,他のNICsの経済体質も基 本的には同じである。  2. 中東市場の消長  前項で見たように,経済成長の牽引車である輸出が輸入を誘発し,貿易収支 の逼迫から輸出に一層拍車がかかるというのがNICs経済の共通の体質だとす れば,輸出市場の開拓の如何が経済パフォーマンスを大ぎく左右することにな ろう。結論からいえば,2度にわたる「オイル・ショック」,長引く世界不況, 先進工業国の保護主義化,といった悪条件にもかかわらず,NICsは「オイル ・マネー」lc潤う中東産油国を開拓することによって,70年代を通じて,良好 な経済パフtrマンスを持続させることができたのである。とくに韓国と台湾 では,この間に重化学工業化が展開され,産業構造は著しい高度化をみた。し かし,「第2次オイル・ショヅク」後の世界的な石油需要の減退は産油国の台 所を直撃し,中東市場に依存するNICsに大きな打撃を与えることになるので ある。こうしてNICsは,今度は共産圏市場,とりわけ中国市場へのアプロー チを開始するに至る。いま少し敷術しておこう。  1973年末から74年目かけての原油価格の高騰,いわゆるオイル・ショック は,原油を輸入に依存するNICs経済を直撃し,不況・インフレ・国際収支悪 化というトリレンマを引き起した。これに追い討ちをかけるように,先進工業 国が保護主義を採用し,NICsの主要輸出品である繊維品・ぱきものを中心に 輸入規制を強化しはじめた(第5表)。  こうしてNICsは,輸入規制の対象である軽工業品から重化学工業品へと輸 出商品の高度化を図り,なおかつ新たな輸出市場を開拓することを焦眉の課題 とするに至った。とりわけ韓国や台湾では,比較的大きな人口と面積を考慮し て,いわゆる重化学工業化路線を採り,豊富な「オイル・マネー」を資金源に  2)ユ985年7月末の数字(『日本経済新聞』85年8月30日)。

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76  松尾博教授退官記念論文集(第234・235号)  第5表      韓国における先進国の輸入規制の影響 (100万ドノレ) 1973年 74 75 76 77

    輸出額(a)1,4461,7192,0672.4602,579

繊維うち輸入規制対象分(b) 423 7!6 9451,2791,474

    ( (b>/(a) 29.3% 41.7 45.7 52.0 57.2 はき、の!    ( (a> (b) (b)/(a)

106 !80 191 4!3 515

 38 71 88 26! 327

35.8% 39.4 46.1 63.2 63.5     1 金  急

冷食器

(a) (b) {b}/(a)

 24 34 40 52 117

 ユ3971923

54.2% 26.5 17.5 36.5 19.7 鉄  鋼 (a) (b) (b)/(a) 2/6 52!

299 372

 0     9  0% 2.4 573  5 0.9

その他

とも計 (a) (b) Cb)/(a) 3, 225 4, 460 5, 081 7, 715 IO, 047  487 818 969 1, 667 2, 440 15.1% 18.3 19.1 21.6 24.3  (出所) 「アジア諸国における直接投資の導入動向」 (日銀『調査月報』1980.12.) 意欲的な経済開発に乗り出した中東産油国市場に照準を合わせることで,上の 課題を追求しようとしたのであるσそうしてこの方策は成功したといえよう。  第6表は,NICsの対中東地域輸出依存度を示したものである。これによれ ば,1973年には僅々2%にすぎなかったNICsの中東向け輸出構成比は,その 後急速に上昇し,80年には7%になっている。なかでも韓国の数値は劇的で, !.4%から!1,3%に上昇している。これは,この国の重化学工業化が,中東地 域の経済開発の進行にいかにうまく便乗したかを示している。  重化学工業化は,その進展の結果として,素材部門から最終組立部門に至る までの一貫した自己完結型工業社会の出現を約束するはずであった。しかし実 際には,産業の高度化を実現しつつも,他方では資本財・中子財の対日輸入依 存を強化するという,きわめて歪なものとなっている。これは,韓国や台湾が 重化学工業を輸出産業として育成せざるをえなかったことによるものである。

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第6表       中国の対外開放政策とアジアNICs 77 NICsの対中東地域輸出依存度 (%) 韓 仙 台 湾

香港 シンガポールNICs計

!973  74  75  76  77  78  79 80 81  82  83 84 1.4 2.6 5.7 9.5 !1.2 1!.0

99

11.3 11.5 9.5 11 2 7.0

759839875004

12345455571ε4

854244690760234444445443

382642548069235556666766

128077702123234666677775

 (出所)IMF, Z)zreetion o∫Tノーade Statistics Yearboofe 1980,!984,『中華民国進出口     貿易統計月報』19854より算出。 すなわち,技術力の劣るNICsが国際競争力ある製品を作り出す重化学工業と して設置しうるものは,技術がある程度体化しているプラントを導入し,それ に低賃金労働を組合せることで最終製品が作り出される装置産業か,あるいは 中間素材や重要部品を先進工業国から輸入し,これを低賃金労働で組立て加工 する加工工業ということになる。こうして選択された重化学工業は鉄鋼・石油 化学・造船・自動車の各工業であり,プラント導入,中間素材・重要部品の輸 入という.`.で対日依存は深化していくのである。  さて,上に見たような重化学工業化を最も強力に推進したのは韓国である。 第7表は,韓国の代表的輸出重化学工業品について,各々の輸出地域別構成を 示している。重化学工業化の進展に伴い発展途上国の比重が増大していくこ と,とりわけ中東地域の重要性が飛躍的に増大していくことが看取されるであ ろう。韓国は中東地域の開発需要にうまく応える形で「ナイル・マネー」の還       3) 流を実現し,自国の「重化学工業化」を展開したという訳である。 3)拙稿「『中進国』の重化学工業化と貿易構造」(『西南学院大学商学論集』29巻3・    4号)も併せて参照されたい。

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78 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号)  第7表   (韓国)重化学工業品の輸出地域別構成 1975,77,80年 品 目 相手先(、。謙ル)%(、。議ル)%(1。勝,レ)% 化 鉄 金 属 電気・電子機器 自 船 虫 上 学  品 先進工業国     発展途上国       中 東    鋼 先進工業国     発展途上国       中 東  製 品 先進工業国     発展途上国       中 東     先進工業国     発展途上国       中 東 動  車 先進工業国     発展途上国       中 東    舶 先進工業国     発展途上国       中 東  合 計 先進工業国     発展途上国       中 東 52.7 70.6 114.9 21.7 29.1 104.7  2.3 3.1 24.2 131.7 56.9 249.7 98.3 42.5 142.1 50.0 21.6 53,7 97.7 82.1 244.4 2L 2 17.8 328,6  9.0 7.6 296.8 385.4 87.4 871,3 55.1 12.5 153.7 12.4 2.8 25.0  1.8 52.9 2.9

 L5 44.1 22.5

 0.7 20.6 5.6 37.3 27.1 177.6 100.5 72.9 346.2  0.4 O.3 202.0 706.6 70.2 !,660.8 298.3 29.6 1,097.8 74.8 7.4 751.5 52.0 275.6 36.5 47.4 295.9 39.2 10.9 50.7 6.7 63.7 818.7 49.6 36.3 770.5 46.7 13.7 296.1 18.0 42.6 421.5 55.1 57.3 321.3 42.0 51.8 177.8 23.3 85.0 1,443.8 72.0 15.0 525.1 26.2 2.4 113.6 5.7 11.1 /8.6 15.7 86.2 93.9 79.5 21.5 33.2 28.1 33.9 287.6 46.8 66.1 327.3 53.2

38.6 7.2 L2

60.1 3,265.8 55.3 39.8 2,334.0 39.5 27.2 678.6 11.5  (注)80年の化学品には23%以上の輸出先不明がある。  (出所)U・N・,Commodity Trade Statisties,1975,77,80年版より作成。  韓国の中東市場把握は輸出重化学工業だけに止まらない。中東地域のインフ ラストラクチェア部門の整備は,韓国に建設輸出という一大外貨稼得源を提供 している。その推移は第8表の通りである。海外建設の国際収支改善に対する 寄与を見ると,その本格化した74年から83年までの10年間に,建設企業の稼得 外貨(ネット)107億ドル,建設工事に伴うセメント・鉄鋼・建設重装備等の       の 輸出32億2,600万ドル,合計138億8,500万ドルに上る。この金額は,同期間の 4) 日本貿易振興会『通商弘報』85年1月23日。

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第8表       中国の対外開放政策とアジアNICs 79 韓国の海外建設受注実績の推移 (100万ドル,%) 中 東 地 域

東南アジア

その他とも 計 金 額  構成比 金 額  構成比 金 額  構成比 1966−78 14, 662

1979 5, 958

1980 7, 821

1981 12, 674

1982 11, 392

1983 9. 023

1984. !一一一6. 2, 850 93.6 93.8 94. 8 92.6 85.1 86, 4 89.4  733 4.7  378 6.0  409 5.0  838 6.1 1, 920 14. 3  979 9.4  324 10.2 !5. 66! 100. 0 6, 35! 100. 0 8, 259 100. 0 13, 681 100. 0 13, 383 100. 0 10, 444 100. 0 3, 162 100. 0  (出所) 『通商弘報』1985.1.23。 原油輸入額348億ドルの40%に相当する。また,派遣労働者も累計で500万人を 超える。国民経済への寄与はきわめて重大である。  さて,「第2次オイル・ショソク」を経て世界経済は不況長期化の様相を呈 し,各国の「深山ネ」の徹底化と石油代替エネルギーの開発も相馬って石油需 要は世界的に減退,石油価格も低迷を続けるようになった。石油収入に依存す る産油国の台所は当然苦しくなる。各国で緊縮財政・輸入抑制措置・経済開発 計画の見直しが行われる。打撃を受けるのはNICsである。中東市場への依存 が大きかった国ほど影響も大きい。石油の需給緩和が続き,中東地域の輸入需 要に好転が望めないとすれぽ,NICεはこれに代る新たな市場開拓に迫られる。 クローズ・アップされたのは共産圏市場,とりわけ10億の人口を抱えて近代化 の途を湛進ずる中国市場である。  共産圏市場へのアプローチが早かったのは韓国で,1973年,「6・23平和統 一宣言」を発表して共産圏諸国への門戸開放の方針を表明し,貿易取引法の改 正と韓国船・共産国船の相互入港の承認を行い,74年目は共産圏諸国バイヤー の入札参加を認めている。しかしながら,その後の中東市場への急傾斜が共産 圏との貿易の意味を著しく減じることになり,取引は本格化しなかった。  中東市場からの転換を余儀なくされ,共産圏市場への再接近を意図した韓国 は,1981年に障害となる「反共法」の撤廃に踏み切り,翌82年6月には中国・

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 80 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号) ソ連・ベトナムや東欧諸国等18力国に対する「便益関税」の適用を決め,関税 面の最恵国待遇を共産圏にも拡大した。台湾もまた,79年11月,対共産圏貿易 政策を転換し,ソ連・東欧との貿易を解禁する措置を採っている。こうして韓 国・台湾は共産圏,とりわけ中国へのアプロ ・一チを開始するのである。 II[中国の対外開放政策  1,開放政策下の対外貿易  「文革」を終嬉させた中国が社会主義的近代化の達成のために対外開放の方 針を明確に提起したは,1978年の中国共産党第11期3中全会においてである。 対外開放の目的は,いうまでもなく,①中国品の国際市場進出による対外貿易 の拡大,②外資の有効な導入・利用,③先進技術の消化・発展,といった諸点 を通して近代化に資することにある。 第9表

対外開放政策の歩み

1978. 12  79. 7 80. 4

916103

19日QJ  4 ∩○∩◎8   8 5 ρ00◎   !2 85. 3 中共第11期3中全会で対外開放の方針提起。 中外合資経営企業法公布。 福建省慶門,広東省深釧・珠海・汕頭に経済特区建設。 外貨見換券発行。 この年,宝山製鉄所第2期工事延期 「プラント問題」発生。 3,000億円の円借款合意。 陳雲,計画経済を主とすべきと主張。 「利改税」 (利潤上納制から法人税への切換え)実施。 中外合資経営企業法実施条例公布。 専利法(特許法)公布。 大連・天津・上海・福州など/4沿岸都市を経済開発区に指定。 北京t/CIOO%外資企業の設立を認可。 合弁企業が輸入する機械・部品・原材料の関税免除。 厘門・深馴両特区で関税撤廃の:方針発表。 合弁期間(原則10∼30年)の延長に同意,製品の一部国内販売許可。 経済開発区(沿岸!4都市)の合弁企業の所得税率を15%(特区並み)に 引下げ。 上海を「準経済特区」に認定。 揚子江・珠江両デルタ地帯と福建省南部を「沿海開放区」に指定。 ノqリ条約力口裂発効。

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4ρ08

9        中国の対外開放政策とアジアNICs 81  3特区の規模拡大(六六6,7→15.16ha,台頭1.67→52,6履,言口2.5→  131舗)。  経済特区外資銀行中外合資銀行条例公布。 厘門の自由港化決定.対台湾直接貿易港に指定。 陵門に株式市場設立。 西部地区の対外開方決定。 アラブ系銀行の深別特区進出認可。  (出所) 新聞報道等による。  対外開放政策の歩みは第9表の通りである。当初は路線の対立等紆余曲折も あったようだが,83年あたりから軌道に乗り,次々と大胆な政策が打ち出され るようになってきた。このような政策遂行の下で,対外経済関係の主柱たる貿 易はどのような動向を示しているであろうか。まず,対外貿易から見てみよ う。  第10表に示されるように,78年以降,中国の貿易は着実に拡大を続け,84年 の貿易額はほぼ500億ドル(対外経済貿易省発表数値,海関総署の統計では536 億3,000万ドル),78年の2.4倍に達している。貿易額を国民総生産(GNP) で除した値は,1国の貿易への依存状況を示す数値であるが,GNP概念に近 いといわれる「社会総生産」値で除した貿易依存度を求めてみると,78年の 5,2%から84年には9.4%にまで上昇している。開放政策実施以来,貿易の重要   第!0表         中国の対外貿易・貿易依存度        (億ドル,%) 輸出入額

輸出額

輸入額

収  支  貿易依存度 1978  79  80  8!  82  83  84 85.1一一6 206.4 293.3 378. 2 403.7 393. 0 407.3 499.7 256.8 97.5 !36.6 !82.7 208. 9 2/8.2 222. 0 244.4 1/2.6 108.9 156.7 !95.5 194.8 174.8 185.3 255.3 144.2 All.4 A20.1 A!2.8  14.1  43.4  36.7 AIO.9 A31.6  5.2  5,9  6.6  7.9  7.6  7.8  9.4 N. A. (出所) 『中国総計年鑑』1984,    算出。 『人民日報』1985.1.23,『通商弘報』1985,8.3より

(12)

 82 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号) 性がとみに増大していることの証左である。  貿易額の増大とともに貿易相手国も拡大している。84年現在,中国が貿易取 引きを行っている相手国・地域は170余に上る。その90%までが非共産圏諸国 である。また中国は,これら以外にも,韓国・台湾・インドネシア等国交未樹 立国とも香港経由による貿易取引きを行っている。84年の主要20力国との輸出 入額および構成比は第11表の通りである。  中国はいわゆる南・南協力の名の下に,第三世界を中心とした諸国に建設輸 出を行っているが,近年は進展めざましい。主として土木・建設工事の請負で あるが,6,000名の建築士・技士と15万人の労働者を擁iする中国建築工程公司 第11表 貿易相手国構成(1984年) (!00万元,%) 輸出入額 構成比 輸出額 構成比 輸入額 構成比  レ 一 シ   リ  ル ギ インドネシア

計量本オ国ツルダ連アスルアアス鮮ダイアア[

国効ゑナ甲ジ・∵朝・↓リギ

カ瀞ド幼 で千・ブタ㌃フ・フレル

総20日香米西シカソオイブイルフ北面タマシベ

120, 102 100, 856 31, 364 22. 944 14, 549 4, 764 3, 263 3, 08! 2, 976 2, 635  1, 962 1, 899 1, 758 1, 718 !, 378 1, 176 1,133 1, 007

 927

 829

 806

 687

 011107652665410988776

00 W4 Q6 P9 P2

S2222111L−。LO。α0.位αα

1 FD4℃よ一

S716512 1

鰯號朧鑑百選撒罵濃謝課鵬㎜

00

 467310049352299308463

t蹴皿93aL二位LLLLααLLαLαα

1 ρOFO−

239692 2121111

號慧誘端麗謬錯翻濫餐姻謝

1。・

E器籠繋胴穏琵M認目撃肥㏄

(出所)対外経済貿易部『国際貿易』1985,5。

(13)

       中国の対外開放政策とアジアNICs 83 をはじめ,総計54社の対外請負公司が,52力国・地域との経済互恵協力契約の 下に,工事請負・労務提供・技術サービスを行っている。84年の契約件数600 件,契約金額16億8,000万ドル,派遣技術者・労働者数は4万7,000人に上って いる(第12表)。  最近になって,中国人民銀行は国際収支を初めて公表した。その全容は第13

 第12表     海外建設工事受注状況

企業数

契約件数   契約金額(億ドル) 派遣者数(人) 1981 82 83 84

︻082・4

124﹁0

370 310 460 600 5.2 5.0 9.2 16.8 17, OOO 31, OOO 30, OOO 47, OOO (出所) 『北京周報』1985.1,29。 第13表        中 国 の 国

際収支

(億ドル) 1982年 83年 84年

支支出入ス入出支間府支期入出期入出漏支却

収収  ビ  収  収     

回収峰

愉∵響∴議流流蕪

1      2      34外

 Jr6.74  42.49 211.25 A168.76  9.39  36.04 A26. 65  4.86  5. 30 A O. 44  3.38  3.89  33.12 A29. 23 A O. 51  2. 44 A 2. 95  2.79  62.91 111.30  42.40  19.90 207.07 A187.17  17.39  40.28 A22.89  5.!1  4.36  0.75 A 2. 26  0.49  27.02 A26. 53 A 2. 75  0.59 A 3. 34 A 3.66  36.48 143.42  20. 30  0.14 239.05 A238.91  15.74  48.19 A32.45  4. 42  3.05  1.37 AIO. 03 A 1.13  41. 28 A42.41 A 8. 90  2.23 All.13 A 9. 32  0.95 144. 20 (出所) 『通商弘報』1985.9.4。

(14)

 84 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号) 表の通りである。これによれぽ,貿易収支の黒字(84年も国際収支ベースでは 黒字)と貿易外収支・移転収支の黒字とが経常収支の大幅黒字を招来し,これ が資本収支の赤字を補って,総合収支の黒字を計上するというパターンが窺わ れる。この結果,外貨準備は年々増加し,84年末現在144億ドルを数えている。 これに金保有量1,267万オンス(約50億ドル)を加えた金・外貨準備高はおよ そ200億ドル,輸入額の10ヵ月分に上っており,発展途上国としては例外的に 豊かな外貨ポジションを維持している。  中国の対外貿易の発展に問題があるとすれば,それは港湾の機能の問題であ る。85年に入って,自動車・家電製品・コソピュター一等の輸入が急増したが, この結果全国各地の港湾機能が麻痺状態に陥り,鋼材等の基礎資材の輸入の遅       ら  れや,配船の不足による輸出品の滞貨が生じているという。政府は港湾建設を 重点プロジェクトに挙げているがその効果が現れるまでかなりの時間が必要で あろう。とすれば,’s急の消費財の輸入は抑制されざるをえない。輸入調整税    ち  の徴収は,この点からも止むをえない措置であろう。 2.外 資 導:入 外資導入に踏み切った1979年以来,84年末までに導入された外資は173億ド ルに上る。内133億ドルが借款である。借款は当初,利率の高い一般商業借款 が中心であったが,83年置らは外国政府や国際金融機関の低利・中長期借款へ の切換えが進んでいる。.84年には外債の発行が試みられ,積極的な外資調達が 行われるようになった。85年に入ると,4月に特区外資合資銀行条例を公布し,        マ 香港上海銀行とアラブ系国際商業信貸銀行の深洲支店設立を認可(8月),ま       た慶門特区に株式・債券市場の設立を許可する等,資金調達の方法も多様化し つつある。 5) 『日本経済新聞』85年7月24日。 6) 7月16日より,乗用車・家電製品の輸入に対して賦課される(『通商弘報』85年7  月18日)。 7) 『日本経済新聞』85年9月1日,「通商弘報』85年9月2日。 8) 『日本経済新聞』85年8月3日。

(15)

第14表        中国の対外開放政策とアジアNICs 85 直接投資導入状況(契約ベース) (億ドル) 1979一一83年累計 1984年実績 1984年累計

額弁営発他易

資経開三野

搬合鋼曲

直 2,311件 66。8

 190 3.4

1, 047 29.5

 23 20.4

 53 4,2

 998 9.3 2,308件  741 1, 165

 8

 21  373 28,74 10,67 14.84 3.9 4,・・9件(103 X5. 54)  931 (14.07)

関一

1, 371 ( 13. 2)  (注) カッコ数字は83年累計に84年実績を加算した数値,他は中国公表数値。  (出所)83年末までは『中国年鑑』85年版より引用,ただし83年累計の共同開発件数     は23と訂正(原表では31),他は『通商弘報』1985.8.13,『経済導報』/923     期および『人民中国』85年7月号による。  一方,直接投資は,84年末累計で40億ドルが導入された。これを契約ベース で見たのが第14表である。これによれば,84年の投資件数は2,308件に達し, 83年までの累計契約件数2,311件に匹敵する。84年の飛躍的な発展が窺われる のである。ただし1件あたり投資金額は124.5万ドルと小さい。ちなみに,84 年目韓国・台湾の1件あたり投資額は406.8万ドルと519万ドルであり,中国 のそれがいかに小さいかが理解されよう。  1件あたり投資額がこのように小さいのは,導入外資のほとんどが香港から の中小資本であるという事情による。合弁企業931社(84年末累計)の内,香 港系は741社(79.6%)を占め,葦葺(61社)・日系(57社)・西欧系(33社)は 151社(16,2%)にすぎない。投資金額比で見ても,米・日・西欧は35%であ る。それでも84年は,IBMの投資に象徴されるように,先進国の大型投資が 緒に着いた年であった。中国側も投資保護協定の締結,合弁期間の延長提案, 国内市場の一部開放等外資への「呼びかけ」を行っている(第9表)が,これ に応えて大型投資が本格化するかどうかは,いま少し推移を見守る必要があり そうである。外資導入による技術移転や輸出促進を狙う中国側と,10億の市場 を狙う先進国巨大資本側との懸隔はまだ大きいようである。 外資導入で特記すべきは「経済特区」の存在である。特区は対外開放政策の

(16)

86 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号) 主要な柱の一つで,当初は発展途上国に一般的な「輸出加工区」に近いものと 位置づけられ,広東省の溢血・帰館・汕頭と福建省の心門に設けられている。 香港に隣接した深別が規模も大きく,整備も進んでいる。したがって投資も下 馴特区に集中しており,84年末累計で,4特区への投資件数4,000道面の内お よそ3,400件を占めている。総別特区への投資状況は第15表の通りである。

  第15表     深馴特区外資導入状況

1979年  80 81 82 83 84

基本建設投資(万元)

工業生産総額(万元)

外資導入状況

契約額(万香港ドル) 既導入額(億香港ドル)

契約件数(件)

 (工      業)  (商業サービス)  (交 通 運 輸)  (不   動   産)  (観光サー ビス)  (農・牧・漁業,その他)      

件件件

︵︵  ︵

悪作資

  投

  独

聯合単

投資形態 4, 988 6, 061 23, 498  1.2  !70  112   5   3   2   2   46

70

 3

12, 487 8. 444 213, 557 2.5 303 243 10  4  9  5 32 4轟4﹁D

 2

27, 039 24, 282 680, OOO 5.9 578 321  5  5 25  3 219 OQqゾ8

1∩01

63, 265 36, 212 141, 949 8.8 583 457 25  1  6  2 92*

178

14凸 88, 593 72, 041 263, 394 11.3 878 714  87  15  17

 4

 41 92 149 13 150, 962 160, 075 512, 715

28580ん八八八八

17

W6瓦凡NNN

182  (出所) 1983年までは『人民申国』1984.ユ2,84年は唐火照「1984年深別経済特区引     進外資的回顧」(『国際貿易』1985.3)による。  特区の外資優遇措置の主なものは,①生産に必要な部品・原材料や設備の輸 入税免除,②利潤の送金,③合弁企業所得税15%(特区外eJ 33%),等である。 所得税15%は香港の所得税18%より安く,合弁企業の労働者1人あたり費用負 担800香港ドルは香港の平均賃金2,340香港ドルの%にすぎず,香港資本にとつ        9) ては大きなメリットがある。深安特区進出外資の90%以上が香港資本であり, かつまた60%以上が低賃金利用の委託加工であるという事実も肯諭しえよう。 9) 「蛇口工業区工資制度改革的有益嘗試」 (谷野堂上「深別経済特区調査和経済開発  区研究』南開大学出版社,1984)および中国研究所編『中国年鑑』1985年版を参照。

(17)

中国の対外開放政策とアジアNICs 87 「技術,経営管理,知識,対外政策の窓口」 (登阿・平)となるのは,まだまだ先のようで ある。  次に,技術導入の状況は第16表の通りであ   第16表

技術導入状況

    (件,100万ドル)   件 数  金 断 る。導入相手先は西ドイツが最大で,85年上 半期の数字では69件(22%),6億ドル(29 %)である。  最後に,中国からの対外投資を見ておこ う。中国は1984年末現在,香港・米国・日本・ 西ドイツ・パキスタン・ギニア・ブラジル等 30力国・地域の113件の合弁事業に投資して    10) 1979  80  8!  82  83  84 85. 1”一6. 95 1!5 73 102 212 336 318 2, 484 1, 980  107  362  570 1, OOO 2, 047        (出所)1984年目ではr北京周報』       1985.2.5,85年は『通商弘       報』1985.8.12による。 いるという。事業内容は資源開発を中心に,製造業・海運・金融保険・コンサ ルティング・建設・中華料理店等多岐に及んでいる。113件の中国側投資は1 億5,000万ドルで,丁度台湾の対外投資規模(196件,1億7,000万ドル)に匹 敵する。この面でも中国の政策は積極的であるといえよう。        IV 中国とNICsの経済交流

 1.中国と香港

 前節で見たように,「近代化」の旗の下,中国の対外開放政策は急ピッチで 展開されている。「1国家2制度」にも表われているように,近代化遂行に利 用できるものは何でも利用したい,というのが中国当局者の姿勢である。国交 未樹立国であっても例外ではない。先進国との経済交流が必ずしも期待通りに は進展していないとすれば,尚更である。都合の良いことには格好の接触の場 である香港がある。こうして,香港を窓口に,中国と韓国・台湾との経済交流 が密かに始まるのである。その具体的な叙述に入るまえに,中国と香港との経 済関係を明確にしておこう。  香港は香港島および深今川以南の録画半島と付属島喚部分(新界地域)より 10) 『北京周報』85年7月19日。

(18)

 88 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号) 成る。南京条約(1842年)により香港島が永久割譲,香港地域拡張に関する条 約により四界地域が租借(99力年)されて英領香港が成立,以後中継加工貿易 都市ならびに国際金融センターとして発展,繁栄を見るようになることは周知 の通りである。租借期限切れ(1997年6月)まで15年となった82年から返還交 渉が始まり,香港の繁栄を共通利害とする中・英両国の間で交渉が進展,中国 が「1国家2制度」という形で香港の現状維持を保証するに至り,84年9月, 香港(割譲地も含む)の中国返還が決定した。  中国が大幅に譲歩したのは,次に控える「台湾復帰問題」を睨んでのことだ といわれている。確かにその点は無視できないが,台湾復帰問題とは無関係 に,中国が香港の繁栄に大きな利害を有していることも事実である。それは, 香港が中国の「窓口機能」を果たしていることを見れば明らかとなる。  香港が中継貿易都市であり,国際金融センターであることによって,「窓口 機能」も二つの側面に分けることができる。一つは,香港が中国の対外貿易の 窓口の役割を果たしていることである。第17表は中国・香港貿易を香港側から 見たものである。この表から窺われることは,まず,中国・香港貿易は一貫し て中国側の大幅黒字で,中国が香港貿易を通して大量の外貨を稼得しているこ とである。ピークとなった83年の黒字額244億HKドルは米ドル換算で約31億 ドルになるが,これは同年の中国の貿易黒字額36.7億ドルの85%を占める計算 になる。外貨稼得源としての香港貿易の重要性は明白であろう。

 第17表   中国・香港貿易

       (!00万HKドル)

藷三軸随場蔽再輸出藷鷲[醐轍再輸出・・ランス

!978  79  80  81  82  83  84 10, 550 !5, 130 21, 948 29, 509 32, 934 42, 821 55, 753 6, 891 9, 466 13, 554 16, 675 18, 300 23, 140 27, 646 3, 659 5, 664 8, 394 12, 834 !4, 634 19, 681 28, 107  295 1, 918 6, 247 10, 968 !1, 798 !8, 407 39, 347  8!  603 1, 605 2, 924 3, 806 6, 224 11, 283  214 1, 31 or 4, 642 8, 044 7, 992 12, 183 28, 064 AIO, 254 A13, 212 A15, 70! A18, 541 A21, 136 A24, 415 A16, 406 (出所) Hong Kong External Trαde越年12月号より算出。

(19)

       中国の対外開放政策とアジアNICs 89  第17表を今少し細かく見てみよう。香港の輸入(つまり,中国の輸出)は, 香港で消費される部分(地場消費)と第三国に輸出される部分(再輸出)とに区 分される。この地場消費と再輸出とを比較すると,興味ある事実に気付かされ る。それは再輸出の割合が年毎に上昇し,84年には地場消費を凌駕するに至っ たことである。換言すれば,香港を経由して第三国に輸出される中国品が急増 し,輸出窓口としての香港の役割が増大していることである。ちな:みに84年の 数字を掲げておけば,香港経由で第三国に輸出された中国品は中国の総輸出額 の15%に相当する。また,中国の輸入窓口としての香港の役割も同様に重要で, 中国の香港経由対第三国輸入は対香港輸入の70%,総輸入の14%を占めてい る。  もう一つの窓口,つまり国際金融面での窓口について,次に見ておこう。そ れは,具体的には,香港が中国の近代化のための資金導入の窓口となっている ということである。例えば,香港に進出した中国銀行とその姉妹行13行は店舗 数を216に拡大し(83年),香港の預金総額の30%を吸収しているといわれてい    る。銀行以外にも証券会社や保険会社が設立され,これを通じても資金導入が 図られている。最近は外債発行による資金調達も行われるようになり,85年7        ユ  月には中国国際信託投資公司による起債が香港で行われた。  以上のように香港の窓口機能は重要である。中国はこのため,香港に50億ド         ユお  ルの直接投資を行い,窓口機能強化に努めている。

 2.中国と韓国

 香港の窓口機能としての今一つ重要な役割は,国交未樹立国との貿易の仲介 者としての役割である。中国が香港経由で取引きしている主要相手先は,日・ 米両国を別とすれば,いずれも国交未樹立国である。そうして,それはまたア ジアNICsでもある。まず,韓国との貿易動向.を見ておこう。 11) 『日本経済新聞』85年5月8日付夕刊。 12)同,85年9月4日。 !3) 同,85年6月4日。

(20)

 90 松尾博教授退官記念論評集(第234・235号)  中・韓の香港経由間接貿易は1979年から開始され,韓国の中国向け輸出が 2,900万HKドル(約550万ドル),中国の韓国向け輸出はごく僅かであった。 以降は,第19表に見られるように著しい増加を示し,81年には中国側輸出4億 1,300万HKドル韓国側輸出8億1,100万HKドルに達した。とくに韓国からの 輸出急増は際立っており,前年の3.6倍,79年の実に28倍を数えている。81年 の韓国の輸出総額は212億5,400万ドルであったから,対中輸出8億1,100万H Kドル(1億4,300万ドル)はその0,7%に相等する。 第18表 中国の香港経由間接貿易の主要相手先 (100万HKドル,%) 輸 出 輸 入 1981年 1985. 1一一5 1981年 1985. 1−5 米    国 日    前 平    国 インドネシア シンガポール 台    湾 その他とも計 2,8!4( 21.9) 1,136( 8.9)  413( 3.2) 1, 277( 10.0)  820( 6.4)  427( 3.3) 12, 834(100. 0) 4, 004( 30.5) 1, 332( 10.1)  680( 5.2)  614( 4.7)  422( 3.2)  471( 3.6) 13, 147(!00. 0)  567( 7.0) 1, 471( 18.3)  811( 10.1) ・186( 2,3)  !43( 1.8) 2,182( 27.1) 8, 044(100. 0) 1,855( 8.9) 7,635( 36.8) 1,428( 6,9)  一一一一一一( 一一一一一一)  .”..( ..h“) 3, 425( 16,0r) 20, 747(100. 0) (出所)Hong Kong External Trade 1981.12および1985.5より作成。  第19表        香港経由中・韓貿易の推移        (100万HKドル,%) 中 国 一→ 韓 国 韓 国 一→ 中 国 1979  80  81  82  83  84 85.1一一5  165. 8  413.2  569.0  839.2 1, 444. 7  679.9 (前年同期比伸び)   N. A.   149. 2    37. 7    47.5    72.2    13.8  28,9  225. 2  81!,0  338.2  327,3 1,254.1 !, 428. 2 (前年同期比伸び)   679.2   260.1   A58.3   A 3,2   283.2   333.2  (出所) Jfong Kong External Trade三年12月号,および1985年5月号より作成。  次に,中・韓の主要輸出入品目を見ておこう。81年の統計によれば,中国側 輸出商品構成は繊維糸・織物1億9,100万HKドル(構成比46%),原料用クズ

(21)

      中国の対外開放政策とアジアNICs 91 綿3,600万HKドル(同9%),野菜・果物1,400万HKドル(同3%),である。 これに対して,韓国側の構成は合成繊維糸・織物3億9,400万HKドル(同49 %),カセット付ラジオ・テープレコーダー等通信機器3億4, 900万HKドル  (同43%)となっている。  中・韓の取引きには,さらに日本経由のものが僅かながら存在する。1つは 中国からの石炭である。これは韓国の鉄鋼業の発展による原料炭需要によるも ので,79年4万トン,80年15万1・ン,81年100万トンの中国炭が日本経由で輸      ラ 入されている。今一つは日本の商社が介在するもので韓国製の白黒テレビ・カ        ユの セット付ラジナ・テープレコーダーの中国への輸出である。  以上のように,中・韓の取り引きでは,中国側から石炭,天然・人造繊維, 原料用クズ綿が,韓国側からはアクリル等合成繊維,白黒テレビ・カセット付 ラジオ・テープレコーダー等電気機器が各々提供されているようである。別言 すれば,中国が原料や軽工業品を提供しているのに対して韓国は重化学工業品 を提供しており,両国の安定的な分業関係が指摘されるのである。  こうして,中・韓の間接貿易は一層の発展が約束され,韓国経済に一大市場 を提供することになるはずであった。ところが,82年の/1月,韓国の輸出が事 実上ストップしてしまう。原因は朝鮮民主主義人民共和国(以下,共和国と略 記)が韓国との交流拡大を懸念して中国に対韓貿易の中止を要請,共和国との 関係を考慮した中国がこれを受け容れたからだといわれている。この結果,82 年の韓国の対中輸出は3億3,800万HKドルまで激減,翌83年はさらに減少し て3億2,700万HKドルとなった。  こうした異常な事態も84年に入ると改善される。「中国民航機ハイジャック       ユの 事件」(83年5月)による直接接触を契機に,両国の関係は徐々に改善され,ス ポーツ交流から経済人の交流へと進展を見たが,これを反映して84年の貿易も 14)U,N, Commodity Trade Statistics,1979,!980,および『日本経済新聞』84年4  月15日。 15) 『日本経済新聞』8!年!月12日。 16) ハイジャック事件のもつ意味については,拙稿「進展する中・韓の経済交流」(『経  済評論』85年8月号)を参照されたい。

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 92 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号) 急増した。すなわち,中国再輸出は前年同期比72%増の14億4,500万HKドル (1億8,500万ドル),韓国側輸出は283%増の12億5,400万HKドル(1億6,100 万ドル)である。  主要取引品目を見ておくと,第20表の通り,中国からの原料・軽工業品対韓 国からの重化学工業品という,両国の補完関係をよく表現したものとなってい る。中・韓間接貿易は軌道に乗ったと解すべきであろう。85年に入ると,中国 の旺盛な輸入需要に支えられて韓国の対中輸出は急増した。1∼5月の統計で は前年同期比333%増の14億2,800万HKドル(1億8,300万ドル)に達し,韓 国の総輸出106億3,300万ドルの1.7%を占めた計算になる。  第20表     香港経由申・韓貿易の主要輸出品(1984年) (100万HKドル,%) 中 国 一→ 韓 馬 韓 国 一〉 中 国 品 目 金額 構成比 品 目 金額 構成比 原綿・生糸・羊毛   602.2  41.7

織物491.834.0

動・植物原料   56.7  3,9 その他とも計 1,444,7 100.・0 合成繊維織物  776.4 61.9

電気機器 162.8 13.0

その他とも計 1, 254. 1 !00.0 (出所)Hong KOng External Trade 1984.12および「日本経済新聞」85年6月6    日による。

 3.中国と台湾

 共和国への配慮から「及び腰」を見せる対日接近とは対照的に,中国の台湾 アプローチは積極的である。対米関係が正常化した1979年1月1日,全国人民 代表大会常務委員会名で「台湾同胞に告ぐる書」を発表し,台湾側に祖国復帰 と経済交流拡大を訴えた中国は,その後も「直接貿易の拡大は双方ともに利益 である」として,機会ある毎に台湾への働きかけを強めている。  80年に入ると,直接貿易促進の具体的措置として,直接台湾から積出した か,あるいは梱包したまま香港・マカオ・その他第三国の港湾を経由してきた 台湾品には輸入税を課さないこと,また台湾向け輸出品はすべて輸出税を免除 し,通関手続きを簡素化することを決定している。台湾は中国の一つの省であ

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      中国の対外開放政策とアジアNICs 93 るから,国内の物資交流に税を課すのはおかしいという訳である。  台湾に対する経済交流拡大の呼びかけは地方レベルにおいても積極的に行わ れている。台湾と隣接する福建省が台湾からの投資に対する優遇措置や民間人 の往来の自由化を決定した(81年10月)のに続いて,広東省も広州交易会への 参加や経済特区への投資などを提案している。  以上のように,中国の台湾アプローチは積極的かつ具体的である。これに対 して台湾当局は一切無視の態度を採っているが,民間レベルでは,台湾の利益 に結びつくのであれば政治問題を度外視しても交流を深めるべきだとの認識が 強くなってきている。このような情況下で,台湾当局の姿勢にも大きな変化が 現われ,ソ連・東欧との貿易解禁に続いて,中国との聞接貿易も輸出に限って は黙認されるようになった。  この結果,第21表に示されるように,台湾の香港経由対中輸出は79年の1億 700万}{Klドルから80年12億500万HK:ドル,8!年21億8,200万HKドルと急増 している。81年の台湾の総輸出額は226億1,100万ドルであるから,対中輸出を ドル換算して構成比を求めてみると,1.7%と算出される。続く82・83年は低 迷するも,84年は対前年比42%増の33億2,800万HKドル(4億2,500万ドル), 85年1∼5月は同287%増の34億2,500万HKドル(4億3,800万ドル),同期総  第21表         香港経由中・台貿易の推移       (100万HKドル,%) 中 国 一→ 台 良 民 湾 一→ 中 国 1976  77  78  79  80  81  82  83  84 85.1一一5 192.1 142.8 218. 9 279.2 390. 5 426. 6 546. 1 698.3 998.7 471.0 (対前年同期比伸び)   A25,7    0r 3. 3    27. 5    39.9     9.2    28. 0    27.9    14.8   A 2.3  106.5 1, 205 4 2,ユ82.3 1, 263. 9 1, 226. 5 3, 327. 5 3, 425.0 (対前年同期比伸び)    N. A.    N. A    N. A,   1,031.8     81. O    A42.1    A 3.0     4L 8    287. 3 (出所) 第19表に同じ。

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 94 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号) 輸出額の3.5%を占めている。台湾にとってはきわめて大きな輸出市場を構成 するものといえよう。  一方,中国品の台湾向け輸出はどうであろうか。台湾品の中国向け輸出ほど は多くなく,84年の数値でほぼ10億HKドル(1億2,800万ドル)である。台湾 当局が「大陸から輸出された可能性をもつ商品」の香港からの輸入を禁止して いるにもかかわらず,香港経由の中国品輸入は着実に増加を示している(第21 表)。 ということは,この禁止規定が有名無実化していることを示している。 台湾当局もこの点を認め,84年3月,これまで香港・マカオ地区からの輸入を 禁止してきた「大陸から輸出された可能性をもつ商品」1,157品目に対する輸入 地域規制を解除する,との方針を決定した。これにより,中国品の香港経由輸 入が認められることとなった。ただし「中共物品取締り弁法」は生きており, 表向きは中国品の輸入はありえない。黙認しようという訳である。  最後に主要輸出品目を掲げておけぽ,台湾が繊維品や電気機器,中国が植物 性原料であり,中・韓関係同様に補完関係が大きい。  4.中国とシンガポール  ASEAN諸国の中では一番最後に対中国交樹立に踏み切るというのがシンガ ポールの方針である。したがって,中国とシンガポールの間には未だ正式国交 はない。しかし,政経分離の方針から,貿易協定が締結され,直接貿易が行わ れている点は韓国や台湾とは決定的に異なる。香港経由の問接取引きもある が,直接貿易に比べると規模は小さい。また,直接貿易・間接貿易ともに輸出 に比べ対中輸入が大きい(第22表)。輸入された中国品の多くが他のASEAN 諸国に再輸出されるからである。  中国からの輸入品で特記すべきは原油である。84年の中国原油輸入量は308       17) 万トソで,サウジアラビア・クウェートに次ぐ水準だという。これに対して中 国は海底油田用オイル・リグを輸入している。世界第3位の石油精製基地シン ガポールと産油国中国との補完関係は大きい。 17) 『日本経済薪聞』85年5月8日付夕刊。

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第22表      中国の対外開放政策とアジアNICs 95 シンガポールの対中輸出入 直接貿易(100万ドル) 間接貿易(100万HKドル) 対中輸入 対中輸出 対中輸入 対中輸出 1978  79  80  81  82  83  84  342  411  629  772  881  827 1, 347 58 170 307 179 240 213 243  343.4  502. 5  596.0  819.9  946.1 1, 184. 0 1, 182. 1  9.5 80.6 143.3 160.7 254. 6 NA.  (出所)直接貿易はIMF, Z)irection of Trade Statistics Yearboofl,1985,間接貿易     はHong Kong External Trαde各年12月号による。  シンガポールの対中経済関係が韓国や台湾のそれと異っている点は,シンガ ポールが中国に直接投資を行っていることである。79∼84年の対中投資累積額 は4億5,000万ドル,投資対象はホテル・倉庫建設・石油開発関連サービス・       ラ 労働集約型軽工業に集中しているという。 V 経済交流の行方 前節では中国とNIC,各国との経済交流の実情を見てきた。その形態は様々 であるが補完関係の大きいことはいずれも共通している。補完関係が大きけれ ば,政治的要因による一時的停滞はあるにせよ,経済交流のパイプは太くなっ て行くに違いない。それでは,経済交流は今後どのような方向に進展するであ ろうか。この点に触れて結びとしよう。  貿易関係から見ておこう。まず考えられるのは取引品目の拡大である。可能 性ある品目としては,中国の石炭・石油・穀物に対してNICsの鉄鋼・セメン ト・化学肥料が挙げられよう。石炭は韓国へ,石油はシンガポールへ既に輸出       ラされたことがある。韓国製のセメントが深別特区で使われているとの情報や, 85年の1∼4月に韓国が中国産のトウモロコシ96万6,000トンを購入したとの 18) 『日本経済新聞』85年2月7日, 19) 『中国年鑑』85年版,81頁。 『通商弘報』85年2月21日。

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 96 松尾博教授退官記念諦卒集(第234・235号)  20) 情報もある。また,深馴特区の日中合弁鋼管加工工場(中日鋼管有限公司)が        21) 韓国製鋼材を加工する計画もあるようである。  取引品目が拡大すれば,直接貿易への移行も考えられよう。もっとも,韓国 や台湾の場合,政治的要因もあり,貿易協定を結んで直接貿易に移行するイン ドネシア方式は当面不可能であろう。  中国側報導によれば,中国は台湾から直接入港した船の積荷に限り免税措置 を採っているが,これを利用した小規模民間交易が増加しており,中国側はこ       22) れに対応するため新たに福二と門門で5港を開放したという。これに対して台 湾当局は,輸出振興の立場から黙認しているようである。中国政府は最:近に なって,門門特区を自由貿易港とし,台湾との直接貿易に利用する考えを明ら       き  かにしている。中・台直接貿易は,台湾当局が黙認する形で進展するようであ る。  これに対して中・韓の場合は,かつて韓国がベトナムにミッションを派遣し てホンゲイ炭を直接購入したように,特定の品目についてミッションを派遣す るか,香港に現地法人の商社を設立し,これを通じて直接取引きするという方 式が現実的であろう。  次に直接投資面での交流の可能性を見てみよう。中国は韓国や台湾に経済特 区への進出を呼びかけている。とくに韓国には投資の業種リストが提示され, 韓国の財閥首脳の訪中(84年12月∼85年1月)も確認されている。現実的な 途としては,まず香港に現地法人を設立し,この現地法人を通じて中国に直接 投資をすることになろう。シンガポールは既に.対中投資を行っているが,85 年目入って,連合産業公社(UIT)が中国の投資会社である国際信託投資公司 (CITC)と合弁で投資会社(CIT・UIC)を北京に設立している。同社は中       24) 国内外に総額3,000万元の投資を予定しているとのことである。国交のない両 20) 『通商弘報』85年5月22日。 21) 『日本経済新聞』85年7月6日。 22) 同,84年10月13日。 23)同,85年7月31日。 24)同,85年4月9日。

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       中国の対外開放政策とアジアNICs 97

国の新しい経済交流方式として注目されよう。

 問題は,これまで先進国資本が充分に応えてこなかった,技術移転や輸出拡

大という中国の期待にNICs資本がどこまで応えられるか,であろう。これが

参照

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