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脊椎センターでの画像検査5,149例における他科疾患の検討―読影レポート未読問題に対する当院の対策―

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Academic year: 2021

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原 著

第 49 回日本脊椎脊髄病学会優秀論文 J. Spine Res. 12: 709-713, 2021

脊椎センターでの画像検査 5,149 例における

他科疾患の検討

―読影レポート未読問題に対する当院の対策―

内山田 修一 稻田 充 早川 高志 山中 真徳 要 旨 はじめに:近年,各科で撮影した画像から他科の疾患が発見され,その読影レポートの未読,確認漏れに よる治療の遅れが問題となっている.本研究の目的は,脊椎疾患を疑い撮影した画像検査における他科疾 患に関して調査することである. 対象と方法:2018 年 6 月から 2019 年 5 月までに脊椎疾患に対して撮影した画像検査 5,149 件(MRI 3,453 件,CT 1,696 件)を対象とした.放射線科医による読影レポートで他科疾患の有無を確認し,該当科への コンサルトの有無とその疾患に関して後ろ向きに調査した.既存疾患は除外し,新規疾患のみとした. 結果:読影レポートで 319 件の他科疾患が発見され,そのうち 103 件が他科へコンサルトされ 32 件に検 査・治療がされた. 考察:画像検査において当該疾患以外に発見される他科疾患を認識するのは困難で,読影レポートで指摘 されるもそのレポートが未読となることも少なくない.当科では(1)放射線(2)担当医師(3)看護師で 連携を取り,3 重の確認をすることで読影レポートの未読の対策を行っている.このシステムを導入後,未 読のレポートはなくなった.読影レポートの未読問題は整形外科医だけでなく,多職種での対策が有用で ある. キーワード:他科疾患,読影レポート未読,脊椎センター

はじめに

近年,各科で撮影した画像から他科の疾患が発見 され,その読影レポートの未読や確認漏れによる治 療の遅れが問題となっている.これらが原因で訴訟 になった症例も散見される.本研究の目的は,脊椎 センターである当科において,脊椎疾患を疑い撮影 した画像検査(脊椎 MRI CT)における他科疾患に関 して調査することである.また当院整形外科におけ る読影レポートの未読レポートは 2015 から 2018 年 までで各年約 3,000 件もあった.この問題に対する 当科の対策を紹介する.

対象と方法

2018 年 6 月から 2019 年 5 月までに脊椎疾患に対 し て 撮 影 し た 脊 椎 CT1,696 件 MRI3,453 件 計 5,149 件を対象とし放射線科医による読影レポート で他科疾患の有無を確認し,該当科へのコンサルト の有無とその結果に関して後ろ向きに調査した.既 存の疾患は除外し新規疾患のみとした. 連絡先:内山田 修一([email protected]) 名古屋市立西部医療センター脊椎センター・整形外科 受付日:2021 年 1 月 9 日,採用日:2021 年 1 月 24 日 Copyright Ⓒ Journal of Spine Research

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表 1 治療が行われた 32 症例の詳細 症例 年齢 性別 検査方法 部位 読影病名 主病名 治療担当科 治療 1 90 女性 MRI(単純) 腰椎 転移性脊椎腫瘍 肺癌 呼吸器内科 化学療法 2 55 女性 CT(単純) 胸腰椎 転移性脊椎腫瘍 多発性骨髄腫 血液内科 化学療法 3 73 男性 MRI(単純) 胸腰椎 肝転移 多発性骨髄腫 消化器内科 化学療法 4 70 男性 MRI(単純) 胸椎 転移性脊椎腫瘍 前立腺癌 泌尿器科 化学療法 5 70 男性 MRI(単純) 腰椎 転移性脊椎腫瘍 肺癌 呼吸器内科 化学療法 6 65 男性 MRI(造影) 頚椎 転移性脊椎腫瘍 骨髄異形成症候群 血液内科 化学療法 7 68 男性 MRI(単純) 頚椎 肺癌 肺癌 呼吸器内科 化学療法 8 90 女性 CT(造影) 頚椎 気胸 気胸 呼吸器内科 手術 9 64 女性 MRI(単純) 頚椎 甲状腺腫瘍 甲状腺腫瘍 呼吸器外科 手術 10 72 女性 CT(単純) 腰椎 卵巣囊腫 卵巣囊腫 産婦人科 手術 11 75 女性 MRI(単純) 腰椎 卵巣腫瘍 卵巣腫瘍 産婦人科 手術 12 79 女性 ミエロ後 CT 胸椎 過敏性肺臓炎 過敏性肺臓炎 呼吸器内科 生検 13 85 女性 ミエロ後 CT 頚胸椎 甲状腺腫瘍 甲状腺腫瘍 内分泌内科 生検 14 47 男性 CT(単純) 腰椎 転移性脊椎腫瘍 食道癌 消化器内科 生検 15 77 男性 ミエロ後 CT 頚椎 耳下腺腫瘍 ワルチン腫瘍 耳鼻科 生検 16 71 男性 CT(単純) 頚胸腰椎 転移性脊椎腫瘍 骨髄増殖性疾患 血液内科 生検 17 77 男性 MRI(単純) 頚椎 耳下腺腫瘍 ワルチン腫瘍 耳鼻科 生検 18 71 女性 MRI(単純) 胸腰椎 抗酸菌性肺炎 抗酸菌性肺炎 呼吸器内科 生検 19 6 女性 CT(単純) 頚椎 咽後膿瘍 環軸椎回旋固定 小児科 抗生剤治療 20 75 男性 MRI(単純) 腰椎 転移性脊椎腫瘍 肺癌 呼吸器内科 転院 21 75 男性 MRI(単純) 腰椎 腎癌 腎癌 泌尿器科 転院 22 49 男性 MRI(単純) 腰椎 転移性脊椎腫瘍 胃癌 消化器内科 転院 23 51 女性 MRI(単純) 胸椎 転移性脊椎腫瘍 膵癌 消化器内科 放射線治療 24 73 女性 MRI(単純) 胸椎 転移性脊椎腫瘍 肺癌 呼吸器内科 放射線治療 25 61 女性 MRI(単純) 胸椎 転移性脊椎腫瘍 肺癌 呼吸器内科 放射線治療 26 61 男性 MRI(単純) 全脊椎 肝転移 膵癌 消化器内科 放射線治療 27 71 男性 CT(単純) 頚椎 転移性脊椎腫瘍 前立腺癌 泌尿器科 放射線治療 28 64 男性 MRI(単純) 全脊椎 転移性脊椎腫瘍 胃癌 消化器内科 放射線治療 29 71 男性 MRI(単純) 腰椎 転移性脊椎腫瘍 肝細胞癌 消化器内科 放射線治療 30 73 男性 CT(単純) 頚胸腰椎 転移性脊椎腫瘍 肺癌 呼吸器内科 放射線治療 31 63 男性 CT(単純) 頚椎 転移性脊椎腫瘍 肺癌 呼吸器内科 放射線治療 32 59 男性 CT(単純) 胸腰椎 転移性脊椎腫瘍 肺癌 呼吸器内科 放射線治療

結 果

5,149 件中 6.2% の 319 件の他科の疾患 が 指 摘 さ れ,そのうち全体の 2% にあたる 103 件が該当科に コンサルトされた.該当科と疾患は,呼吸器内科 27 件(転移性脊椎腫瘍 10 件,肺癌 9 件,過敏性肺臓炎 2 件,肺炎 2 件,アスベスト肺 1 件,気胸 1 件,胸水 貯留 1 件,胸膜炎 1 件),消化器内科 17 件(転移性 脊椎腫瘍 6 件,膵癌 5 件,胃癌 3 件,肝細胞癌 1 件, 膵囊胞 1 件,骨盤内転移 1 件),血液内科 12 件(転 移性脊椎腫瘍 8 件,多発性骨髄腫 2 件,骨髄繊維症 1 件,急性骨髄性白血病 1 件),産婦人科 10 件(子宮 筋腫 5 件,卵巣腫瘍 4 件,腹水貯留 1 件),内分泌内 科 10 件(甲状腺腫瘍 9 件,副腎腫瘍 1 件),泌尿器 科 7 件(転移性脊椎腫瘍 4 件,腎癌 1 件,前立腺癌 1 件,尿路癌 1 件),循環器内科 6 件(腹部大動脈瘤 5 件,僧帽弁狭窄症 1 件),耳鼻科 4 件(耳下腺腫瘍 3 件,副鼻腔炎 1 件),脳神経内外科 4 件(脳梗塞 2 件,硬膜動静脈瘻 1 件,椎骨動脈瘤 1 件),乳腺外科 2 件(乳癌 2 件),総合内科 2 件(転移性脊椎腫瘍 2 件),小児科 1 件(咽後膿瘍)であった.コンサルト された 103 件のうち,71 件は,経過観察され,32 件に治療が施行された(10 件に放射線治療,7 件に 生検,7 件に化学療法,4 件に手術,3 件は専門施設 へ転院,1 件に抗生剤投与が行われた.)(表 1).

考 察

当該疾患以外に発見される他科の疾患を認識する のは困難なことが多く,読影レポートで指摘される もそのレポートが未読や確認漏れによる治療の遅れ が問題となっている. 読影レポートに関して松村らの報告では 500 件に 1 件(0.2%)に重篤なレポートの報告があり1),整形 外科領域の報告としては,中山らは,整形外科の画

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表 2 2018 年度の当院と名古屋市立東部医療センターとの CT,MRI の画像件数 CT MRI 2018.1.1 ∼ 12.31 総数(件) 整形外科(件) 割合 総数(件) 整形外科(件) 割合 当院 38,050 3,326 9% 12,207 4,004 33% 名古屋市立東部医療センター 32,245 2,087 6% 10,426 1,421 14% 表 3 年度別の当院整形外科における 未読レポート件数(CT,MRI) 2015 年 2016 年 2017 年 3,098 件 3,044 件 3,035 件 像報告書 569 件中 38 件(6.6%)に未把握の病変を指 摘し,股関節領域での婦人科疾患,脊椎領域での大 動脈瘤と部位ごとにチェックポイントがあると報告 している2) 今回の研究にて,脊椎に現局した画像検査 5,149 件のうち,6.2% の 349 件の他科疾患が指摘され,2% の 103 件が該当科にコンサルトされ,0.6% の 32 件 に治療がされた.脊椎の画像検査にて偶発的に転移 性骨腫瘍の他に,甲状腺,肺,腹部(胃,肝臓,膵 臓,腎臓,直腸,前立腺,子宮,卵巣等)の腫瘍性 病変,大動脈瘤といった患者に影響が少なくないも のもあった.特に脊椎は頸椎から腰椎まで広範囲に わたり撮影範囲があるため全身の疾患に注意が必要 である.整形外科医が読影レポートを見落とす背景 には,整形外科領域以外の画像の知識不足,腫瘍な どの悪性疾患を扱う事が少ないこと,外来にて読影 レポートの完成前に検査当日に結果説明をすること が多いことが考えられる. 対策としては①レポートの複数人による確認②レ ポート確認のために画像検査日と患者説明日を分け る③読影レポートの未読・既読の明確化④放射線科 医から主治医へ直接連絡⑤電子カルテ上のシステム の構築(未読抽出,未読の通知,異常所見発見時の 警告,至急報告書発行システム)⑥医療安全管理部 門の介入(第三者機関の介入,医師事務作業補助者 等)などの報告もある3),4) 我々の名古屋市立西部医療センターは,2015 年に 脊椎センターが設立されて,脊椎に特化した医療を 展開し年間 450 件以上の手術をしている.それに伴 い,外来入院時に施行する画像検査も増加し,2018 年のデータであるが当科での CT,MRI の検査数は 3,326 件,40,004 件であり,同系列の名古屋市立東部 医療センターと比較しても CT と MRI 検査数が病 院の全体の検査数を占める割合が高いことが分かる (表 2).それに伴い,当科の画像検査に対する読影レ ポート(CT,MRI)の未読レポートは 2015 から 2018 年までで各年で約 3,000 件もあった(表 3).当科の対 策としては,まず①放射線技師が,読影レポートを 確認し,他科疾患を指摘されたレポートのリストを 作成する.②そのリストを医師が確認し,該当科に コンサルトする.医師は対応後にリストにチェック し,③最後に看護師が確認するというように他職種 により 3 重チェックをしている.この 3 重チェック により 2019 年は整形外科の画像検査の未読レポー トが 0 件になった.また最近,新たな取り組みとし て電子カルテの承認システムの導入で,各曜日に担 当医師を振り分けレポートを翌日までに確認するこ とで,早期発見,早期対応を心掛けている.当院病 院全体の取り組みとしては,外来では読影レポート が完成後に診察をするように徹底し,救急外来で画 像撮影後の患者は原則翌日の予約を取り帰宅させる 方針としている.当該科疾患以外に発見される他科 の疾患を認識するのは困難なことが多く整形外科の 主治医のみでの対応は困難であり,医療安全部門, 他職種と連携して対応していく必要がある.

まとめ

当院の脊椎の画像検査(CT,MRI)により,6.2% の 319 例に他科疾患の指摘があり,2% の 103 例が 該当科にコンサルトされ,そのうちの 0.6% の 32 例 に治療が行われた.脊椎の画像検査において偶発的 に悪性疾患が含まれることがあるので注意が必要で ある.読影レポートの未読に対する当科の対策によ る年間の未読レポートも 0 件になり防止効果も確認 できた.当該科疾患以外に発見される他科の疾患を 認識するのは困難なことが多く,整形外科医だけで なく,多職種での確認体制の構築が有用である. 利益相反 本論文に関連し開示すべき利益相反はなし.

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文 献 1)平成 30 年度地域医療基盤開発推進研究事業「医療安全に資 する病院情報システムの機能を普及させるための施策に関 する研究」報告書資料 2)中山惠介,中村哲郎,中尾侑貴,他:画像診断報告書の見落 としに対する取り組み.整形外科と災害外科.2020;69 (4):953-955 3)井上雅子:医師事務作業補助者(医療秘書)による「未読報 告書」等の確認作業への対応について.医師事務作業補助者 研究会.27(1) 4)黒崎敦子,大沢文子,竹内 均,他:画像診断報告書の既読 管理および至急報告書発行のシステム構築について 画像 診断報告書を正しく利用するために.臨床放射線.2018;63 (9):1041-1044

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Original Article

J. Spine Res. 12: 709-713, 2021

Consideration of Diseases that Require Treatment by Other Departments

Regarding 5,149 Imaging Tests at the Spine Center

∼Measures Taken by our Hospital against Unread Interpretation Reports∼

Shuichi Uchiyamada Atsushi Inada Takashi Hayakawa Masanori Yamanaka

Department of Orthopedic Surgery, Nagoya City West Medical Center

Abstract

Introduction: In recent years, diseases of other departments have been discovered from images taken in each department, and their interpretation reports.

This leads to delay in treatment due to unread and omission of confirmation.

The problem is the delay in treatment due to unread and omission of confirmation. This study aimed to investigate other dis-eases in imaging tests that are suspected to be spinal disorders.

Methods: From June 2018 to May 2019, 5,149 imaging tests (MRI 3,453, CT 1,696) performed for spinal disorders were tar-geted. The presence or absence of diseases of other departments was confirmed by a radiologist’s interpretation report, and the presence or absence of consultation with the relevant department and the disease were retrospectively investigated. Exist-ing diseases were excluded and only new diseases were included.

Results: 319 cases of other diseases were found in the interpretation report, of which 103 cases were consulted with other de-partments and 32 cases were examined and treated.

Conclusions: It is often difficult to recognize diseases of other departments found other than the disease. In our department, a radiologist confirms the report of our department, extracts a report with a description of a disease of another department and creates a list and then distributes it to the doctor in charge and gets a confirmation. Next a nurse gives the final confirmation. We have confirmed the above triples. After introducing this system in our department, there are no unread reports. Measures are useful not only for orthopedists but also for multiple occupations.

表 1 治療が行われた 32 症例の詳細 症例 年齢 性別 検査方法 部位 読影病名 主病名 治療担当科 治療 1 90 女性 MRI(単純) 腰椎 転移性脊椎腫瘍 肺癌 呼吸器内科 化学療法 2 55 女性 CT(単純) 胸腰椎 転移性脊椎腫瘍 多発性骨髄腫 血液内科 化学療法 3 73 男性 MRI(単純) 胸腰椎 肝転移 多発性骨髄腫 消化器内科 化学療法 4 70 男性 MRI(単純) 胸椎 転移性脊椎腫瘍 前立腺癌 泌尿器科 化学療法 5 70 男性 MRI(単純) 腰椎 転移性脊椎腫瘍 肺癌 呼
表 2 2018 年度の当院と名古屋市立東部医療センターとの CT,MRI の画像件数 CT MRI 2018.1.1 〜 12.31 総数(件) 整形外科(件) 割合 総数(件) 整形外科(件) 割合 当院 38,050 3,326 9% 12,207 4,004 33% 名古屋市立東部医療センター 32,245 2,087 6% 10,426 1,421 14% 表 3 年度別の当院整形外科における 未読レポート件数(CT,MRI) 2015 年 2016 年 2017 年 3,098 件 3,044

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