漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義 ―ACP諸国との関係に着目して
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(2) 140. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). 条文定立,政策決定および文言の解釈が求められる理由が生じてくる5)。 海洋生物資源には,ひとり水産物のみならず混獲および廃棄種も含まれる。そ のため,水産物に限られない「生態系アプローチ」が唱えられようになっている。 このアプローチのもと,海洋生物資源の枯渇につき事前に決めた一定の漁業補助 金を国際社会の規律に服させる考え方が漁業補助金規律である。これが,本稿 4 (2)で述べるバックキャスト思考と結びつき,実施のための手続き規定が備えら れると,実効性は自ずと高まる。これは,WTO も TPP 第 20 章 16 条(海洋にお ける捕獲漁業)も同様である。こうして,国際貿易上, 海洋生物資源の枯渇問題は, 国際法上「環境」分野として扱われるようになり,かかる国際公益の規律に途 上国(Developing Countries)および後発開発途上国(Least Developed Countries: LDCs)を包摂する試みが続けられているのである。 本 稿 は,4(1) の「 共 通 だ が 差 異 あ る 責 任 」 (Common But Differentiated Responsibility: CBDR)同様,海洋生物資源という「環境」の保護および保全の ため,多様な途上国を取り込みつつ普遍性を確保する側面に着目する。漁業補助 金規律は,詰まるところ,自由貿易の例外措置から海洋環境の積極的保護にパラ ダイム・シフトする法制度である。それは,途上国への「特別かつ異なる待遇」 (Special and Differential treatment: S&D)のもと,アフリカ,カリブ海および太平洋 島嶼(African, Caribbean, and Pacific: ACP)諸国などを,漁業補助金規律の対象とす ることにみてとれる。本稿は,それら諸国が,なぜ規律対象の支柱に据えられるのか につき明らかにする。実際,ACP 諸国海域の漁業には,それら諸国の「国内産業の 発展」と「入漁料と燃油代」が密接に関係している6)。なお,本稿で漁業分野という 場合,水産企業,商社および加工団体を含める意味で使用することをお断りしておく。. 1.WTO 漁業補助金規律と S&D (1)WTO 閣僚宣言以降強調される S&D の背景 ドーハ・ラウンド第 4 回閣僚会合(2001 年)に始まる漁業補助金規律草案交渉 は,当初より S&D 規定を含んでいた7)。うち太平洋島嶼諸国は,世界のマグロ水 揚げの 45%を占めており,世界最小で最も脆弱な島嶼諸国で,漁業補助金規律に は死活的な経済的重要性があるとされた。とりわけ,キリバス(現在,海洋保護 区は大きいが,漁獲量も多い)およびツバルは,2010 年代初頭には持続不可能な 漁業政策がとられていた。そこで,それら政策に新たな入漁規律が求められるよ うになった8)。.
(3) 法政治研究 第 7 号(2021 年 3 月). 141. 元来,専門用語としての「途上国」は,Developing States または Less Developed Countries が互換的に使われる9)。たとえば,世界銀行は 2016 年の世界開発指標 データ上,Developed と Developing を分かつものは存しないとした10)。全ての国 は,何らかの形で世界に貢献しており,単純な 2 分法は各国の異なる可能性や達 成度を反映していないという考えからである11)。たとえば,韓国は 1995 年 1 月 1 日に途上国として WTO 加盟国となった。2019 年 7 月,トランプ大統領がこれを 批判してまもなく,10 月にその地位を放棄した。翌年 5 月には,同大統領は中国 が WTO で途上国として有利な条件を享受していると批判した12)。 歴史的には,技術協力を含む S&D 条項は,途上国を多国間貿易に包摂すべく, 「 関 税 お よ び 貿 易 に 関 す る 一 般 協 定 」(General Agreement on Tariffs and Trade: GATT)に導入された。しかし,最近,多国間貿易を統合体制にするための S&D が効果的に機能しているか疑義が呈されるようになった。途上国は,貿易上の相 殺措置を発動しようとする際,不測の事態に備え保護措置が発動されることを常 に警戒している。そのため,途上国は自国に有利な「異なる」 (differential)待遇 を維持しつつ,貿易制限と嫌がらせ(harassment)を防ぐべく GATT の規律を強 化し,無条件の最恵国待遇を維持してきた経緯がある13)。 ここで,S&D は元来,WTO における「持続可能な開発」概念に基づくことに 触れたい。持続可能な開発の達成は,加盟国の異なる状況と必要を考慮した多国 間貿易制度の基底的価値だからである。実際,「世界貿易機関を設立するマラケ シュ協定」(WTO 協定,1995 年 1 月発効)および同協定から派生した WTO 法文 書には,145 個の S&D の文言が含まれている。とはいえ,途上国は現実的にこれ ら規定から殆ど利益を得ることはなく,現在の S&D は,途上国の多国間貿易へ の関与を確保するため,途上国への援助という局面に焦点が移っている14)。途上 国も,WTO 協定前文で明記される開発の必要と懸念に合致するよう環境の保護 および保全を認めている。この点,WTO 設立趣旨に照らせば,①途上国の異なる 経済状況は,WTO ルールおよび義務につき,政策裁量および柔軟性を含む S&D を求める,②途上国の輸出に向けた市場アクセスの機会拡大を通じ,持続可能な開 発達成のため援助する,即ち,適切な技術的および財政援助があればこそ,途上国 の貿易関連の経済開発が環境上の持続可能性の文脈の下で考慮されるのである15)。 以上より,漁業の「持続可能な開発」を考える。漁業は,生計および雇用,外 貨,食の安全および社会統合とその向上に貢献しうる分野である。約 3,000 万人 が漁業活動から直接に収入を得ており,雇用者の約 95%が途上国で生活している。.
(4) 142. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). これら諸国は,世界全体の水産物輸出の約半分を占める。これは,漁業補助金規 律の実効性の確保には,S&D が小規模漁業(small-scale fisheries)とともに先進 国からの入漁料(access fees)も考慮に入れねばならないことを意味している16)。 (2)国際文書に繰り返し明記される S&D 「国連持続可能な開発会議(リオ+ 20)」(2012 年)の成果文書「我々の求める 未来 17)」(The Future We Want)は,持続可能な開発につき,途上国を取り込む意 義を繰り返し強調した18)。成果文書 245 項から 251 項までは, 「持続可能な開発目 標」 (Sustainable Development Goals: SDGs)に言及する。 とりわけ 173 項は,次のように明記する。すなわち,途上国にとって漁業 分 野 が 持 つ 重 要 性 を 考 慮 し, 違 法・ 無 報 告・ 無 規 制(Illegal, Unreported and Unregulated: IUU)漁業と過剰漁獲能力につながる補助金の廃止に関する「ヨハ ネスブルグ実施計画」(2002 年)の実施を再確認する。また,過剰漁獲および過 剰漁獲努力量につながる漁業形態を禁ずることなどを通じ,漁業補助金に関する 多国間ルールを進展および強化する。途上国,LDCs への効果的な S&D が WTO 漁業補助金規律交渉の中心部分となることを認め,開発,生計および食の安全な どの課題から漁業分野の意義を考慮する。各国には,WTO に漁業補助金プログ ラムを報告するよう求める。漁業資源の状態を勘案し,漁業補助金規律をめぐる 協議を終了する必要性にも影響することなく,各国に過剰漁獲および過剰漁獲に つながる漁業補助金を廃止し,新たな補助金を導入せず,既存の補助金を拡張し ないことを求める,というものである。 次いで,2015 年に国連サミットで採択された(17 の目標と 169 のターゲット) SDG10.a は, WTO 協定に従い, 途上国,特に LDCs の S&D を実施することを掲げた。 SDG14 は「持続可能な開発のために,海洋や海洋資源を保全し持続可能な形で 利用する19)」事項を扱う。まず,海洋健全性の改善と,途上国,特に小島嶼開発 途上国(Small Island Developing States: SIDS)および LDCs の開発における海洋 生物多様性への寄与向上のため,海洋技術の移転をめぐるユネスコ政府間海洋学 委員会のガイドラインを考慮する(SDG14.a) 。また,小規模・沿岸零細漁業者 (artisanal fisheries) に 対 し, 海 洋 資 源 お よ び 市 場 へ の ア ク セ ス を 提 供 す る (SGD14.b)。次いで,SDG14.6 は,途上国および LDCs に対する適切かつ効果的 な S&D が,WTO 漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識し,2020 年までに,過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁じ,IUU 漁業に.
(5) 法政治研究 第 7 号(2021 年 3 月). 143. つながる補助金を撤廃し,同様の新たな補助金の導入を抑制すると明記する20)。 SDG14.7 は,2030 年までに漁業の持続可能な管理などを通じ,SIDS および LDCs の海洋資源の持続的利用による経済便益を高める。この他,貿易との関連では, 自由,無差別および多角的貿易体制の推進(SDG17.10)と,LDCs に留意した貿 易体制確立(SDG17.12)がある。 SDGs の中で,重点的に取り組まれる対象として目標 14 が選ばれ,2017 年 6 月 5 日から 9 日に「国連海洋会議」(The Ocean Conference)が開催された。同 会議の成果文書(Call for Action)では,「有害な漁業補助金」 (harmful fisheries subsidies)の根絶が取り上げられた。SDGs の本義は,国連の呼びかけで企業が 動いたというより,国連が企業の動きに触発されて採択されたことにある21)。. (3)遠洋漁業国に付与される漁業補助金と S&D こうして,WTO 協定には S&D が散見されることを確認した。1(1)で加盟国 の自己申請をみたが,先進国が技術援助を実施するよう求められるまで,途上国 に長い移行期間が与えられることに対しては,申請国の決定に異議を唱えること ができる。そのため,ある加盟国が途上国か否かは,WTO には決定的な問題と ならない 22)。実際,「補助金及び相殺措置に関する協定」 (Agreement on Subsidies and Countervailing Measures: SCM 協定)27 条は,途上国の S&D を詳述する。補 助金規律の拡大にあって,特に輸出補助金をめぐる規律が同協定の新規性の 1 つ となっている。S&D については,第一に禁止補助金をめぐっては,輸出補助金, 小規模貿易の途上国および輸出競争力,第二に提訴可能な補助金,第三に相殺関 税につき,それぞれ詳細な規定が用意されている23)。もっとも,SCM 協定は,そ れら規定を漁業補助金に対し直接 S&D を適用することは適切でないとされたの で,現在,同協定の附属書として漁業補助金規律協定草案が交渉されている。 当初,WTO における漁業補助金規律対象には,便宜置籍の漁船団による入漁 への補助金や一定種類の支払いは含まれていなかった。入漁に対し支援の形で支 払われる補助金は,現状の補助金の定義には入らないとされたからである。これ に対し,世界自然保護基金(World Wide Fund for Nature: WWF)およびグリーン ピースなどに非難された漁業補助金の主な形態は,SCM 協定でカバーされない漁 業補助金であった。すなわち,途上国にとって主な関心事は,遠洋漁業国による 国内産業の開発援助に漁業補助金規律のメスが入れられることであった24)。同協 定で主に懸念される 2 つの補助金は,禁止補助金と提訴可能な補助金である25)。.
(6) 144. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). SCM 協定における禁止補助金の列挙事項,および,それら補助金(subventions) に通常なされる広範な解釈に依拠すれば,途上国の沿岸漁船に適用される規定の 多くは, 禁止される輸出補助金とみなされうる。WTO における「魚の友」 (Friends of Fish)グループの主張によれば,補助金の通報に実効性がないのは,いずれの 魚種が対象とされているのか正確にわからないからだという。しかし,既存範囲 の補助金が,禁止補助金の範囲に含まれておらずとも,WTO 加盟国の国内産業に 悪影響を与えうる提訴可能な補助金が残されている。ここにいう悪影響とは,次 の状況が考えられる。すなわち,①他の加盟国の国内産業に損害をもたらす場合, ②GATT(1994 年)のもと,他の加盟国に直接または間接的に生ずる利益,特に 同 GATT2 条による利益の無効化または侵害が生じた場合,および③深刻な損害 が生じた場合,である26)。漁業に関連するのは,③である。SCM 協定では,5% を超える総製品価格に従った(ad valorem)補助金を与える場合,生じうる深刻な 損害を申し出ることとなっている。もっとも,深刻な損害については,これを審 査する国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations: FAO) ,世界銀行および他の機関による算定額が全くの誤りでない限り,提訴可能 な補助金として,その損害は一見して(prima facie)存するという判断に有利な 推定が働くと思われる。一方,SCM 協定は漁業分野の特異な貿易構造にはなじま ないので適用できないという加盟国の認識も依然として燻っている27)。 その理由は,先端技術の導入,急速な人口および経済成長は,いずれも漁業資 源量の枯渇に負荷をかける潜在性を持つからである。そこで,政策的には先進国 が新たな規律を主張するのであれば,かかる規律によって必然的に影響を受け る小規模で影響を受けやすい諸国を念頭に置かねばならなくなる28)。すなわち, ①キリバスおよびツバルの国内総生産(Gross Domestic Product)の主要部分の 潜在的損失,②入漁料協定(subsidized access agreements)に起因する ACP 諸 国の収益損失,③地域漁業への補助金を排除することによる国内産業発達の誘 因喪失,である。これら課題に対し ACP 諸国は次のように対応する。すなわち, ①持続可能な入漁協定,国内および零細漁業者への補助金からの収益を維持すべ く,途上国に補助金の必要を認めるよう漁業交渉で S&D を求める,②ACP 諸国 と日本の協定にみられる「入漁取極め」と「開発援助」を分離する入漁協定の締結, ③可能ならば遠洋漁業国に課す税を留保し,入漁料を収入と認めることである。 これら対策は,地域的および外国の漁業者に対し,入漁料や税などにつき,異な る(differential)比率を許容することにもなると捉えられる29)。.
(7) 法政治研究 第 7 号(2021 年 3 月). 145. 2.ACP 諸国と漁業補助金規律 (1)アフリカ諸国―モロッコの事例 EU の対外漁業政策は,漁業を対外的に行う協定を締結することに主眼を置く。そ の目的は,欧州の共通 EEZ の漁獲圧を下げつつ,欧州市場に水産物の供給を確保し, 漁業分野の雇用を向上させることにある。具体的には,欧州が外国と漁業協定を締 結し,外国に入漁する欧州諸国内競争を回避すること,いま 1 つは,欧州共通 EEZ の外側で漁業を続けるのと同程度の隻数の欧州漁船が漁業できるようにすることで ある。同政策は,1980 年代から 1990 年代までは成果を上げた。1997 年の欧州委員 会(European Commission)の概算によると,1,300 隻と約 4 万人の漁業分野の雇用 を創出した。反面,当該政策の対象とされたアフリカ諸国が濫獲の犠牲となった。そ こに批判が殺到したため,対外漁業政策は 2002 年に改訂された。その要諦は,EU 加盟国と途上国で二国間協定を締結することであった。同協定が基づくのは,対象 国の開発援助が持続可能性を確保する原則であった。また,協定は,開発協力,環 境および貿易の観点から,EU 政策と入漁協定に一貫性を持たせることとなった30)。 仏国海洋開発研究所(Institut français de recherche pour l’exploitation de la mer: IFREMER)などの研究(1999 年)によれば,EU の船舶は,ACP 諸国の海域に おける漁獲量の加工と市場のみでも,二国間漁業協定を通じて投入された 1 ユー ロごとに約 3 ユーロの収益があったという。西アフリカの EEZ の漁獲物は,現地 工場で加工すると EU の市場基準を満たせないので,それら工程は全て欧州企業 などに流れてしまう。漁業に関する諸協定は 4 万以上の雇用を創出したが,その 80%以上は協定に依存するものであった。また,第三国に入漁する際の競争的な 損失を補塡すべく,欧州企業が受け取る補助金もある。さらに,燃油,加工およ び水産物流通のための補助金として付与される数百万ドルは,EU 企業に莫大な 強みを与え,西アフリカ途上国につき欧州以外の国々には相当な参入障壁に転じ た。この補助金は,地元漁業者に対し EU 漁船を圧倒的に有利にしたのである31)。 その象徴的な例として,EC が 1988 年にモロッコと締結した漁業協定がある。 同協定は,1992 年(1993 年以降は EU)および 1995 年に新協定となったが,1999 年から 2006 年まで,協定は不在であった。2007 年 3 月,EU とモロッコは新協定 (2011 年 2 月まで)により,漁業協力に取り組んだ。そこでは,欧州船籍の漁船 約 100 隻のモロッコ海域における漁業を認める代わりに,年間 3,610 万ユーロの 補助金がモロッコに支払われた32)。.
(8) 146. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). この他,日本,モロッコおよびアフリカの関係は,主として漁港管理および漁 業などの分野で進められてきた33)。1985 年に署名された「日モロッコ漁業協定」 において,日本漁船はモロッコの関連法令に従い同国水域での漁獲を行った34)。 同協定は,「海洋漁業に関する日本国政府とモロッコ王国政府との間の協定の暫 定実施に関する交換公文」を通じ,同協定が発効するまで,両政府は双方の権限 の範囲内で協定を暫定的に履行する。このように,漁業協議はモロッコ水域内で 操業するマグロ延縄漁船の操業条件などにつき毎年,協議を重ねている。具体的 には,①許可隻数枠 15 隻,②ライセンス料 49,500 ディルハム/隻/年(約 55 万 円),③入漁料 2,000 米ドル/隻/年である35)。 (2)中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)の動向 初めて日本の管轄海域を対象とした,米国など 26 ヵ国・地域が加盟する「中西 部太平洋マグロ類委員会」(The Western and Central Pacific Fisheries Commission: WCPFC)は,2015 年に初めて漁獲規制を導入した。日本は,WCPFC 北小委員会 (10 ヵ国・地域)の一員である36)。WCPFC 加盟国たるパラオは, 「国家聖域法 37)」 (Palau National Marine Sanctuary Act, 18 OCT. 2015)に基づき海洋保護区を設定し た。パラオは,その後 20%ずつ段階的に操業海域を狭めていった。これを受け日 本は一時パラオと対立し,同国を援助しないと伝えたこともある。その後,2019 年 6 月には改正国家聖域法案が作成され,パラオは漁業漁獲許可証の発給を行う とともに,2020 年以降の外国の商業漁業を全面禁止する政策を打ち出した。パラ オでは,今後は,漁港も絞られ,同国の海洋法執行局が監視措置をとる。とはいえ, 日本は今後もパラオに入漁料を支払うとしている38)。 1973 年設立の (公財) 海外漁業協力財団(Overseas Fishery Cooperation Foundation of Japan: OFCF)は,これまで 140 以上の国・地域および国際機関で海外漁業協力 を実施してきた。南太平洋海域は,世界的にも重要なカツオ・マグロ類の漁場なの で,日本は,キリバス,ソロモン,ツバル,ナウル,パプアニューギニア(Papua New Guinea: PNG) ,パラオ,フィジー,マーシャル諸島およびミクロネシア連邦 (Federated States of Micronesia: FSM)の 9 ヵ国と漁業協定を締結した39)。OFCF の海外漁業に対する貸付の条件は,第一に貸付対象事業が日本の海外漁場の確 保に関わること,第二に対象事業が日本の食料の安定供給または日本漁業の国際 競争力強化に貢献すること,第三に当該事業に係るリスクの適切な評価が困難な 場合などに民間金融機関では貸付が困難なこと,である(2007 年 3 月 26 日策定.
(9) 法政治研究 第 7 号(2021 年 3 月). 147. ガイドライン) 。日本は,海外にある他国 EEZ 域内で操業するにあたって関係国 と入漁協定を締結する際,相手国からの漁業振興に関する多面的要請を考慮して いる40)。太平洋島嶼諸国の EEZ は日本の遠洋漁業にとって重要な漁場だが,最近 はカツオ・マグロ資源からの収益によって国家収益の増大および雇用拡大を推進す べく,入漁料の大幅な引上げ,現地加工場への投資などの要求が強まっている41)。. (3)ナウル協定における入漁料をめぐる課題 ナウル協定(Parties to the Nauru Agreement, 1982 年発効)は,FSM,キリバ ス,マーシャル諸島,ナウル,パラオ,PNG,ソロモン諸島およびツバルの 8 ヵ 国により締結された漁業協定である。加盟国各国の EEZ(上記順に,2,992,415 km2,3,437,132km2,1,992,022km2,308,506km2,604,253km2,2,396,575km2,1,596,464 km2,751,672km2)を合わせると,カツオ・マグロ資源を持つ広大な管轄海域 (14,079,039km2)を形成する42)。この海域の規模は,世界第 1 位の EEZ を持つを 持つ米国(11,661,064km2)よりも約 2,200,000km2 上回り,世界第 10 位のアルジェ リアの国土面積にほぼ匹敵する。 ナウル協定は,地域内のマグロ・カツオ巻網漁業の条件につき,共通利益を持 つ漁業管理をめぐる協力体制を構築した。それが,太平洋諸島フォーラム漁業機 関(Forum Fisheries Agency: FFA)である。FFA に依拠しつつ,加盟国の水産権 益を守る由である。具体的には,操業日数から入漁料を決める43)。これを具現化 したのが,後述の FSM 取極め(the Federated States of Micronesia Arrangement for Regional Fisheries Access)である。 EEZ にライセンス申請する漁船は,まず入漁料を交渉する。同時に,国内産業 への投資も行う。この「入漁料等」と「国内産業への投資」 が支柱となる。たとえば, PNG 海域において, EEZ 時代に入った 1978 年, 日本は入漁交渉を行った。その際, PNG は高額な入漁料の一括払込を主張した44)。PNG は,自国の海洋資源からい かに利益を得るかにつき戦略的だったが,交渉は成功しなかった。2007 年のナウ ル協定海域におけるマグロ漁獲高は,約 17 億 3,300 万米ドルとなった。他方,遠 洋漁業船団から得られる入漁料収益は約 7,700 万米ドルであった45)。 ナウル協定の隻日数制度(Vessel Day System: VDS)は,加盟国の EEZ に入漁す る外国巻網漁船に 1 隻 1 日当たりの入漁料を事前に課す仕組みである。こうして, 遠洋漁業国から高額の入漁料を得るのに成功し,VDS はナウル協定加盟国の経済 発展に貢献している46)。他方,2014 年に太平洋島嶼国の EEZ で日本の遠洋漁船が.
(10) 148. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). 漁獲したカツオ・マグロ類は約 18 万トンと,沿岸まで含めた日本のカツオ・マグ ロ類漁獲量全体の約 4 割を占めた。最近,これら国々への入漁状況は厳しくなって いる。ナウル協定は,島嶼国の利益最大化を目指し,2012 年漁期以降,VDS に最 低価格を導入した。そのため,2011 年まで約 1,200 ~ 2,500 米ドルだった 1 日当た りの入漁料が,2012 年には 5,000 米ドルを超え,2015 年以降は 8,000 米ドル以上に 引き上げられた。同協定は,将来的には延縄漁船にも VDS を導入するとしており, 一部の国では 2016 年から導入されている。漁業分野発展を目指す島嶼国は,入漁 条件として現地の加工場への投資や合弁会社の設立なども求めている47)。 キリバスは,「国家漁業政策 48)」(2013-2015 年)を策定した。2009 年公刊の Robert Gillett の『太平洋諸島諸国と領域の経済における漁業』によれば,2006 年 から翌年のキリバスの通常予算に占める入漁料の寄与分は約 43%であった 49)。ナ ウル協定加盟国の EEZs は互いに隣接しており,マグロには越境的習性があるの で,遠洋漁業国が安価な入漁料を求めて交渉しても,協定加盟国は入漁料の競争 入札をさせることができるので,入漁国にとって漁業交渉は容易ではない50)。 ナウル協定における入漁料は, 加盟国が設定した基準に従い算出される。漁船は, 漁獲量と努力データを提出するよう求められる。また,旗国は自国船舶がライセ ンス発給国の漁業法を遵守するよう求められる51)。こうしたなか,遠洋漁業国の船 舶操業者にかかる費用が,ナウル協定初回年次会合(1982 年)において問題にさ れた。この点,協定加盟国は入漁料の設定につき,協定諸国の脆弱性および依存 性を強調した。これら諸国は,遠洋漁業国が安価な入漁料を主張する根拠として, 船舶登録料を引き合いに出されるのではないかと警戒していた52)。 FFA は,巻網漁業を規制する海域管理には成功しているが,太平洋の人々の権利 を重視し,彼らにもたらされる経済的および社会的利益を高めるため,巻網よりも延 縄漁に多くの課題があると主張している53)。2015 年,ナウル協定にツバルが加盟した 際,協定加盟国議長は,延縄漁の VDS に言及し,海域管理が太平洋の漁業管理方 法であると認めた。加盟国は,遠洋漁業国に不満を抱いていたので,協定加盟国の EEZ における資源につき,自らを「資源所有者」 (2017 年加盟国首脳)と称し,それ ら資源を「所有権」 (協定戦略計画 2019-2025 年)の対策とした54)。また,海上で舶 から別の船に漁獲物を積み換える,いわゆる「瀬取り」 (transshipment)も,漁獲努 力と漁獲圧を高めている。さらに,漁獲高の無報告および過少報告も検証しづらい。 2010 年の巻網漁船の瀬取り料を含めた総収益は,約 145 万米ドルであった。その内 訳は,マーシャル諸島が収益の約 33%,ソロモン諸島が約 25%,キリバスが約 18%,.
(11) 法政治研究 第 7 号(2021 年 3 月). 149. FSM が約 24%であった。その総額は,約 784 万米ドルから 1,265 万米ドルと試算さ れている55)。もっとも,全ての遠洋漁業国が瀬取りを行っているかについては, 「むす びにかえて」でも指摘するが,正確には把握できない。上述のように,国による正確 な情報報告の適否や IUU 漁業などが含まれるため,実態を解明するのは困難を極め るからである。その正確な監視には, 最近, 海洋宇宙連携が求められているほどである。 みてきたように,FFA に基づき 1995 年に発効した FSM 取極め56)の入漁料算定 基準は,附属書Ⅳおよび Schedule1 に明記された。それによれば,入漁料は平均 的な地域漁獲量,前年からのマグロの平均魚価および 5%の収益率から算定され る。地域漁獲量とは,同取極めの対象海域における漁船の漁獲高をいう。入漁料 が船舶規模により異なることを示すため,次の 3 類型が設定された。700GRT 以 下,700-1,000GRT,1,000GRT 以上の船舶である。GRT とは総登録トン数(Gross Register Tonnage)のことで,船の容積 100 立方フィート(米国を中心に使われる 単位系であるヤード・ポンド法にいう体積の単位)を 1 トンと定めた登録トンで 示したものである。各類型の漁獲量は,各等級の船舶平均値とみなされる57)。上 記取極めは,ナウル協定加盟国の国内および地域的な巻網漁船が 1 つのライセン ス料で EEZ に入漁できることを認める。その代わり,参入漁船と操業者は,国 内の乗組員を雇用し,地元企業を援助し,水産物を水揚げし,同協定加盟国の漁 港で燃油を補給し,税,義務および他の手数料(fees)の形で政府財源に貢献し, マグロ加工場のような国内産業に投資するよう求められるのである58)。. 3.太平洋島嶼諸国の EEZ 管理に対する政策 (1)漁業補助金の規律を推進する主体 2000 年に米国,OECD および APEC によって,3 つの個別の補助金という学術 用語(nomenclature)の類型化が議論された。それらは,途上国にとって貿易上 の重要性を持つ入漁料 , 入漁税(access fees and tax)および入漁料免除(access fee exemptions)の形で補助金が類型化された。そこには,入漁料を拠出する先進 国の能力,および漁業分野を発展させる途上国の能力を制約する事項も含まれた。 さらに,詳細な通報措置,援助措置の削減および一定の補助金を廃止することも 要請された59)。 ここで,WTO 漁業補助金規律交渉における途上国の懸念を概観したい。200 年 以上にわたり先進国は,漁業,海運,食の安全および国防の一環で,自国の漁業分 野に補助金を付与してきた。現在,一般に,補助金は漁業の持続可能性を損なって.
(12) 150. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). いると認識され,新たな規律に向かっている。とはいえ,2006 年頃,漁業補助金 規律の必要,また,かかる規律のために SCM 協定が適切か否かにつき,ルール 交渉グループ間には見解の一致がみられなかった60)。この点,ニュージーランド は,水産資源の雑多な性質に鑑みると,多くの補助金を与える加盟国であっても, SCM 協定を適用して異議を唱えるのは難しいと主張した61)。他方,米国は漁業補 助金規律につき積極的な案を提起してきた。米国の漁業利益が,ニュー・イング ランド,メキシコ湾,西部太平洋沿岸および遠洋漁業など,多彩であることに鑑 みれば,かかる規律を長期的に支持してきたこと,後にオバマ政権が多国間貿易 交渉にこの問題を強く主張したことは注目に値する。 「魚の友」のうち途上国は, 実際のところ,漁業補助金を積極的には付与できない。その結果,漁業補助金 規律交渉の原動力は,1(3)でみたように,グリーンピースおよび国連環境計画 (United Nations Environment Programme: UNEP)が支援した WWF となる62)。 (2)入漁料支払いをめぐる遠洋漁業国と島嶼国の関係 途上国が 2012 年頃の WTO 規律交渉で求めたのは,高度な予防的アプローチ (a highly precautionary approach)であった。途上国の多くは,漁業補助金を貿易 の利害に深い関連を持つと主張した63)。小規模で脆弱な途上国の漁業は,次の 3 つに大別される。①遠洋漁業国から入漁料を得る漁業者,②缶詰工場,生鮮施設 および加工場を建設するために,EEZ および領海で輸出用漁業を行う国内外の漁 業者,③国内および輸出市場のため領海で行われる零細漁業,である。多くの小 規模で脆弱な途上国の漁業分野では,遠洋漁業を特定漁場に限定しようとすると ともに,領海における沿岸漁業と沿岸のツーリズム,更には,水産物および輸入 水産物の消費者を含む他分野との関係を発展させようとしてきた64)。 太平洋島嶼諸国が交渉する入漁料は,政府間協定または国と民間企業の契約を 通して決められる。政府間協定では,2(3)でみたように,遠洋漁業国は大規模 な開発援助を行う。WTO「ルールに関する交渉グループ」の主張は,この分野 の交渉が小規模で脆弱な国の入漁料を規律する方に傾くのではとの懸念を抱かせ た。すなわち,漁業分野への補助金は,生産的な資源へのアクセスを歪曲しうる うえ,環境または開発の視点から,否定的な(negative)影響を及ぼしうるとい う認識である。ここから,入漁協定における補助金規律は,2(1)でみたように, 具体的に取り上げられるようになっていった65)。 入漁料は,海洋生物資源豊かな SIDS に重要である一方,LDCs および最も脆弱な.
(13) 法政治研究 第 7 号(2021 年 3 月). 151. 国には,なお重要である。WTO 規律交渉(2012 年)で共有された認識は,かか る規律が国内の加工および輸出の漁業活動に及ぼす潜在的な影響であった。この ことは,遠洋漁業国に入漁を認めない筈の SIDS の多くが,自国産業発展のため 海洋資源を利用しようとしていたことを意味する66)。これら国内施設は,SIDS の EEZ から漁獲を行い水揚げするため,遠洋漁業国からの船団と戦略的な連携関係 を築いてきた。漁業において地域および外国の投資を誘致するには,多くの途上 国,LDCs および脆弱国は,国内の加工場を建設するため,2(3)後段および上述 したように,地域および外国の漁業者に誘因を持たせてきたのである67)。. (3)島嶼国による入漁料収益の使途 遠洋漁業および地元船団に新たな漁業補助金規律を課せば,SIDS には多大な影 響が及ぶと思われる。しかし,零細漁業者の置かれている事情に理解や考慮を示 さずにかかる規律が定立されれば,漁業補助金規律は,SIDS の発展にまで影響 を及ぼしかねない。島嶼国の多くは零細漁業であるから,特に小規模で脆弱な島 嶼国では,沿岸住民の生活の糧と生存漁業(subsistence fisheries)のための収入 は死活的である。零細漁業従事者は,通常,低収入である68)。小規模で脆弱な国 には,女性を含む漁業関係者を援助するプログラムがある69)。かかる人々の収入 を上げるには,高度な漁具を使用しない漁業者に政府援助をするなどの措置が求 められる。そう考えれば,新たな漁業補助金規律は,零細漁業者の収入水準を上 げるため政府プログラムを適用除外とすべきであろう70)。こうして,S&D の適正 な運用は,十分に発展しうる余地を残しているといえる。しかし,現状の WTO 規律交渉では,入漁料からの収益および開発援助に強く依存した途上国および太 平洋島嶼諸国の立場を危うくする危惧が拭えないことに留意せねばならない71)。 日本,韓国,中国および台湾などの東アジア遠洋漁業国との協定は,かなり不 透明なものであった。なぜなら,それらに民間の商業的性質も介在してくるから である。日本の場合,南太平洋諸国との覚書(Head Agreement)はあるが,入 漁については個々の政府と民間企業が交渉した。入漁料は,操業ごとに付随協定 (subsidiary agreement)の形で交渉される。1(3)でみたように,日本は,入漁取 極めと開発援助を峻別してきた。入漁には補助金が付与されないが,太平洋島嶼 諸国からすれば,漁業分野への開発援助が入漁への不可欠な条件であった。たと えば,FFA では,太平洋島嶼諸国が使う入漁算定式は次のものである72)。FFA 海 域では,入漁料は主として遠洋漁業国,市場価格および収益率の設定によって.
(14) 152. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). 供給される前年の漁獲量および努力データから算出される。標準的な入漁料算定 式は,「入漁=マグロの平均価格 × 船舶ごとの平均漁獲量 × 最小収益率」であ る。概算では,日本,韓国および台湾が支払う入漁料 25 万米ドルに比して,米 国の巻網漁船の所有者は 12 万米ドルである。また,EU の巻網漁船は,入漁料と して 6 万 5 千ユーロ(7 万米ドル)の割増料金が支払われる。しかし,実際に太 平洋島嶼諸国が受け取るのは,1961 年設立の米国国務省所管・国際開発庁(United States Agency for International Development : USAID)の拠出金があるために,米 国の船舶所有者が支払う額の約 5 倍である73)。 ACP 諸国の入漁協定につき,WTO 漁業補助金規律は,依然として入漁料から の収益および開発援助に依存する太平洋島嶼諸国の立場を危機に晒しうると議論 されている。これまで,太平洋島嶼諸国における入漁料の経済的意義や規模のデー タは入手しえなかった。政府や地域漁業管理機関(Regional Fishery Management Organization: RFMOs)は加盟国の管理下にあるので,それらデータは入漁料およ び漁業から生ずる収益に関する「商業的な観点から取り扱いに慎重を要する」情 報として厳重に保護されてきたからである。太平洋の全入漁料の 4 分の 1 は,米 国との条約に従った USAID による支払いによるものである74)。GDP 割合による 入漁料は,LDCs で漁業分野を持つ国が高く,発達した水産輸出部門を持つ国が 低い傾向にある。このことは,太平洋島嶼諸国を含む途上国が,代理開発の徴収 または輸出税として入漁料を利用してきたことを裏づけるものである75)。. (4)遠洋漁業国の漁獲高が正確に把握できない理由 キリバス,マーシャル諸島,ナウル,FSM およびツバルのように豊富な海洋資 源を持つ国々は,それら海域を通じ,殆ど何らの水産物輸出許可証(fish export pass)も発給していない。他方,フィジー,ソロモン諸島および PNG のような先 進的な水産物輸出国は,開発政策の一環として,現地に基盤を置く漁業者が入漁 料を全く支払わないか,殆ど支払わないという状況にあって,漁業分野を発達さ せてきた。この発達は, 漁業分野への巨額の補助金により達せられてきた。フィジー のように,政府が実質的に入漁料を徴収しない国は,輸出部門に対する税優遇措 置からの税収入がなくなり,経済状況が悪化する76)。地元漁業者に入漁料が払わ れない状況は,フィジーおよび PNG にみられる比較的低い割合の入漁料ゆえであ ると推測される。南太平洋で最も資源豊富で,殆ど輸出部門を持たない FSM およ びキリバスの入漁料の概算は, 世界銀行の概算の 2 倍から 3 倍である。この乖離は,.
(15) 法政治研究 第 7 号(2021 年 3 月). 153. 統計上の欠陥ではなく,太平洋のマグロ漁で観察される背景を説明するのに有益 である。すなわち,この概算は,既知の入漁料を漁獲高の概算価格で割って求め られる。分子の入漁料は政府収入の一部で,政府の予算見積もりの際,議会に提 出されるので必然的に正確な値となる。見積価格によって掛けられる報告済みの 漁獲量から分母が算出されるので,証明が難しいのは分母となる漁獲量とその単 価である。ゆえに,遠洋漁業国の漁獲高の概算は,正確なものにはならない77)。. 4.「共通だが差異ある責任」と S&D―海洋生物資源という「環境」 (1) 「共通だが差異ある責任」の基盤にあるもの 「持続可能な開発のための 2030 年アジェンダ 78)」12 項は,環境と開発に関する リオ宣言の,なかんずく,同宣言の原則 7 に明記される CBDR を含むあらゆる原 則を再確認するとしている。 CBDR の起源は,国際環境法の萌芽に遡ることができる。ストックホルム宣言 の原則 12 は,途上国の状態と特別の必要を考慮することを認め,環境を保全し 改善するために資源が利用可能とされるよう確保すべく,技術ならびに財政援助 を明記した79)。とはいえ,同宣言は途上国が置かれる「異なる状況」を考慮する 必要こそ認めたが,相互主義の義務を適用除外にするところまではいかなかった。 同宣言は,開発と環境の保護の間にはバランスがあるべきとも認めた。すなわち, 原則 11 は,途上国の現在および将来の可能性は,環境政策によって阻止される べきでないとされたのである。このことは,1980 年代の持続可能な開発の観念の 発達につながる源流を示唆している。CBDR を考案したブルントラント報告に含 められたのが「持続可能な開発」である(「はじめに」冒頭参照) 。同報告書は, 世界の貧困に対し最優先される開発という意味で,環境政策をいかに考えるかの 基盤を示した。さながら現代にいう「世代間衡平」(inter-generational equity)で ある。持続可能な開発は,法的定義としては受け入れられてこなかったが,国際 環境政策の中核をなす地位は,ブルントラント報告以来,一度も疑問視されたこ とはない。この報告書は,初の地球環境レジームとなったオゾン層破壊の交渉と 並行して審議された。そこでは,「共通だが差異ある責任」には触れられていな いが,モントリオール議定書 5 条によれば,規制物質の 1 人あたりの消費量が少 ない途上国は,議定書の下で講じられるコミットメントを実施するのに 10 年の 猶予が与えられた。これは,正に実質的な CBDR といえる80)。 次いで,「リオ+ 20」(2012 年)は,CBDR の中心的役割を再確認した。また,.
(16) 154. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). 現在の社会経済的文脈からすれば,CBDR の本質は,先進国と途上国の構造的な 格差への是正取組みである。この挑戦は,少なくも途上国の環境と開発の関心を 考慮するレジームを交渉する最貧国の交渉力に影響を及ぼす G77 の断片化につな がることなく,変革の可能性を維持するよう洗練化されてゆくと思われる81)。 (2)パリ協定とバックキャスト思考 ①途上国を取り込んだパリ協定の「国際公益」 パリ協定は,京都議定書(1997 年採択)に代わる地球温暖化対策の条約で, 2016 年 11 月 4 日に発効した。同協定は,2020 年 1 月から本格稼働した。その目標は, 今世紀後半に世界の温室効果ガスの排出を「実質」ゼロにし,産業革命前からの 世界の平均気温の上昇を 2℃未満,できれば 1.5℃に抑えることである。パリ協定 では,各国が温室効果ガスの削減目標を自主的に決めて持ち帰り,取組み状況と 目標の引き上げが可能かにつき検証する仕組みを持つ。温室効果ガス全排出の約 8 割は 20 ヵ国・地域によるものである。京都議定書は先進国のみに削減数値を振 り分けたが,パリ協定は途上国にも自主的な削減目標を促す体制をとった。 「気候変動に関する政府間パネル」 (Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCC)は,1988 年に世界気象機関および UNEP によって設立された。各国政府か ら科学者が参加し,地球温暖化に関する科学的・技術的・社会経済的な評価を公 表する。2013 年に IPCC は, 「温暖化は疑う余地なし」と断じた。IPCC が公表した 『海洋・雪氷圏特別報告書』 (2019 年 9 月 25 日)では,今世紀末までに世界の海洋 生物が最大 20%減り,漁獲可能な魚の量も 1986 年から 2005 年比で最大 24%減少 する可能性があるとして,気候変動が海洋生物資源に与える影響が予測された82)。 かかる状況に対し,高村ゆかり教授(国際法)は, 「今日の延長線上で明日を 考える」積み上げ型の発想では,社会の大規模な変革が必要な問題を解決するこ とは困難で,未来への目標を掲げるか,今は何をすべきかを考えるバックキャス トの思考が必要と唱える83)。この認識に立脚し,国連は 2019 年に『グローバル持 続可能な開発報告書』(GLOBAL SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2019)を公 表した。これは,独立委員会が,SDGs 達成の評価を行う報告書で,4 年に 1 度 公表されることが 2016 年のハイレベル政治フォーラムで決定された84)。 ②バックキャスト思考と故ボルゲーゼ教授の共通性 バックキャスト思考の端緒は,1997 年にスウェーデンの環境保護省が作成した.
(17) 法政治研究 第 7 号(2021 年 3 月). 155. 報告書『2021 年の持続可能性目標』(Sustainable Sweden 2021)である。これは, 先に理想とする将来像を描くことから始めるが,理論的には 25 年から 75 年とい う期間を想定するのが有効という。対象は,①複雑で,長期的な社会動向や外部 的な要因に左右される問題,②現在の延長線上ではなく,解決のためには大きな 変化が必要な問題である85)。この発想は,故ボルゲーゼ教授(国際海洋法)の主 張と軌を一にしている。すなわち,国が策定する地球規模の計画は,生態系の諸 条件に準拠し長期的である必要があり,当該計画は,50 年先,100 年先を見据え た計画となるというものである86)。 ③ IPBES 報告書と SDG14 「生 気 候 変 動 に つ き 科 学 者 に よ る 評 価 組 織 が 存 在 す る 一 方,2012 年 4 月, 物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム」 (Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services: IPBES)が,科学ベース議論の基盤として設立された。IPBES は,『生物多様性 と生態系サービスに関する地球規模アセスメント』という初の地球規模の総合評 価を公表した(2019 年 5 月 6 日)。そこでは,海洋の 66%が人為的活動の影響を 強く受けており,絶滅の速度は過去 1 千万年の平均と比して数十から数百倍と推 定され,評価対象の 4 分の 1 にあたる百万種が絶滅の危機にあるとされた。また, パリ協定の目標を達成し,産業革命前に比して気温上昇を 2℃に抑えても,サン ゴ礁の面積は 1%未満まで縮小すると予測した87)。 かかる状況にあって,2015 年 9 月,SDGs が採択された。パリ協定も SDGs も バックキャスト思考に基づく国際文書である。SDGs の関連で, 「国連海洋会議」 (the Ocean Conference)の成果文書は,「行動の要請」 (Call for Action)として採 択された。そこでは,持続可能な漁業のため,漁業補助金の適正化(l-p)ととも に, SIDS,LDCs などを中心とする海洋産業および経済の振興(q-r)が明示された。 また,SDGs の達成には持続可能な漁業の実現が重要として,濫獲,IUU 漁業お よび「有害な漁業補助金の撤廃」などが取り上げられた(強調筆者) 。. (3)Our Ocean と 14 ヵ国による国際約束の革新性 2020 年 10 月,パラオで「我々の海」 (Our Ocean)という国際会議 88)において公 表される予定であった国際文書がある(COVID-19 のため,来年に延期) 。同会 議は,2004 年に米国大統領候補となり,2013 年から 2017 年に国務長官を務めた.
(18) 156. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). ジョン・ケリー(John Forbes Kerry)が牽引した。2020 年,彼が気候変動問題の 新たな大統領特使に指名されたことは,今後,「海洋と気候変動」の関係に世界 の注目を集めることは想像に難くない。 世界の沿岸の 40%を占める 14 ヵ国政府(豪州,カナダ,チリ,フィジー,ガー ナ,インドネシア,ジャマイカ,日本,ケニア,メキシコ,ナミビア,ノルウェー, パラオおよびポルトガル)が,今後 10 年で過剰漁獲を終わらせ,魚の個体数を 回復させることに合意した。それら諸国は,世界最大の海洋持続可能性イニシ アチブを特徴づける一連のコミットメントを行った。これら諸国の管轄海域はア フリカとほぼ同規模の面積で,世界の漁業における 20%,世界の海運の 20%を 占める。このコミットメントは,他国も参加するよう開放されているが,目下, 仏国,ロシア,中国および米国などは不参加である89)。 上記 14 ヵ国は,「過剰漁獲につながる有害な補助金を終わらせる」としている (強調筆者)。また,より良い執行および管理によって違法漁業を排除し,混獲お よび廃棄を最小限にし,科学的勧告に基づく国内漁業計画を実施するよう目指す。 各国は,持続可能な海洋経済のハイレベルパネルの構成国である。諸国は,EEZ という国家管轄権の及ぶ海洋域が 2025 年までに持続可能な形で管理されるよう 確保すると宣言した。首脳らとともに,2025 年までに 14 ヵ国の海域を「100%持 続可能な形で」管理し,その行動に他国も参加するよう促した(強調筆者) 。また, コミットメントが局地的な持続可能性を確保する国内計画を 2025 年までに設定 するとともに,2030 年までに世界の海洋の 30%を保護するための世界的なター ゲットを掲げた90)。その内容は, 「漁業の監視を改善する技術の利用」 ( 「むすびに かえて」に後述)および漁網廃棄の排除なども含んでいる。 こうして, 「持続可能な海洋経済のための変革―保護,生産及び反映に関するビ ジョン91)」(14 ヵ国ビジョン)には,全ての海盆および世界の約 40%の海岸線と 30%の EEZ を有する人々を代表する国家および政府の首脳が関与することとなっ た。そのうち本稿に特に関連するのは,途上国,特に SIDS や LDCs への資金援助, 技術および能力構築の必要が,それら諸国の状況および脆弱性を考慮して認識 されたことである。このビジョンは,持続可能な海洋計画が SDGs に沿ったもの であり,予測される気候変動の影響が考慮される。また,同計画は包括的,参加 型,透明性および説明責任が確保された過程を通じ策定および実施される(p. 4) 。 また,海洋は毎年 2.5 兆米ドルの財と役務を提供しており,海洋の総資産価値は, 24 兆米ドルと推定される。2030 年の成果として,過剰漁獲能力,過剰漁獲および.
(19) 法政治研究 第 7 号(2021 年 3 月). 157. IUU 漁業につながる有害な漁業補助金を禁止し,更に,気候変動および変化する 海洋生態系の不確実性に対応すべく,順応的管理および FAO の「持続可能な小規 模漁業を確保するための自主的ガイドライン」実施を確保する(p. 6) 。また,予 防的アプローチの実施などにより RFMOs の機能も強化する(p. 7) 。この他,再 利用,回収,漁具のマーキングの促進,損失の報告および環境に優しく費用対効 果の高い漁具開発を援助する手段を通じて幽霊漁具(ghost fishing)を廃絶する(p. 13) 。そして,海洋の公平性に鑑み,途上国,特に SIDS および LDCs 固有の気候 の脆弱性および資金・能力の制約につき認識することが求められる(p. 15) 。. むすびにかえて 以上から明らかにされたのは,次の 4 点である。第一に,S&D が―ソフト・ロー も含めて―繰り返し国際文書で触れられているのは,気候変動か海洋生物資源か を問わず,地球規模の「環境」悪化への対処を「国際公益」とみなすため,様々 な事情を持つ途上国も取り込むことが不可欠という認識であった。実際,京都議 定書からパリ協定への途上国取組みへの変化は,そのことをいみじくも表してい る。漁業補助金規律における思想基盤も,その例外ではない。 第二に,とりわけ SIDS および LDCs にあっては,広大な EEZ を有するがゆえ, 遠洋漁業国との関係で,「入漁料」および「国内産業の発達」が不可分に結びつ いている例が多いため,日本を含め,多国間協定,二国間協定および民間協定な ど,多くの態様を通じ,それらの関係が途上国との間で真摯に交渉が続けられて いる事実である。その際,上述した「国際公益」の観点からは,広大な途上国の EEZs(FFA 取極めおよびナウル協定)の海洋生物資源の「持続可能な開発」に は,ひとり EEZs を持つ諸国が科学的に算定した漁獲量を無批判に受け入れるの ではなく,その科学性を客観化する手続きに透明性を持たせることが必要な時代 に入ったことを意味している。このことは,2021 年から始まる「国連海洋科学の 10 年」で積極的に取り上げられる中で精緻化されてゆくだろう。その前提に立っ て,諸国間の経済的格差を実質的に是正しようと国際社会全体で取り組むことが, SDG14 および SDG 関連事項が目指す 2030 年の世界である。 第三に,今後の WTO 漁業補助金規律交渉において,上記「国際公益」の視座 からは,安易に S&D の下で途上国にかかる規律の免除を認めてしまうことには 慎重でなければならない。その理由は,EEZ の漁獲の実態を知りうる術がないの で,むしろ入漁国に対する補助金規律を検討すべきだからである92)。反面,SIDS.
(20) 158. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). および LDCs にあって,漁港の造成および漁業分野の各段階における―加工場や 流通ルートを含む施設や制度の向上―投資の受け入れのために自国の小規模漁業 者,零細漁業者および生存漁業者を圧迫していないかにつき細心の注意を払いつ つ,自国の産業発展を進めるとともに,自国海域の漁業管理措置を諸外国の援助 を受けて高めてゆく必要がある。 第四に,14 ヵ国ビジョンは,有害な漁業補助金を排除,2030 年までに世界の 海域の 30%を保護するためのターゲット,加盟国 EEZ における海洋生物資源の 100%持続可能な形による管理など,本稿で取り上げたバックキャスト思考と予 防的アプローチの組み合わせを以って課題に挑戦する意思が明示された。この ビジョンには,本稿との関係では,フィジー,ガーナ,ジャマイカ,ケニア,ナ ミビア,メキシコおよびパラオの ACP 諸国が含まれている。それら諸国に環境 先進国たる豪州,カナダおよびノルウェー,また,漁業国たるチリ,ポルトガル およびジャマイカが含まれている。そして,世界の大規模な殆ど全ての RFMOs に加盟している日本が参加していることが極めて重要な意味を持っている。日本 が従来培ってきた海洋生物資源に関する管理の経験は,14 ヵ国ビジョンの牽引に 資するところ大であろう。 日本は,2020 年 10 月 26 日の臨時国会で,地球温暖化対策のため,2050 年ま でに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を表明し,その後,法案作成に入っ た。同様に,海洋環境の保護および保全に向けて公表した 14 ヵ国ビジョンも同 様のインパクトを有している。とりわけ,海洋管理については,漁業を監視する 国際非営利組織「グローバル・フィッシング・ウォッチ」 (GFW)の機能を更に 向上させるべく,船舶自動識別装置(Automatic Identification System: AIS)のみ ならず,次世代型 AIS とされる衛星 VDES(Very High Frequency Data Exchange System)によって,海の Society5.0 93)を日本が牽引できる技術的素地は十分にあ る(渡辺忠一・笹川平和財団海洋政策研究所特別研究員) 。キーワードは,違法 漁業の可視化である。これは,SCM 協定 25 条でなしえなかった多くの通報され るべき情報を根本から現実のものに代えてゆくからである。 2021 年には「国連の海洋科学の 10 年」,「国連気候変動枠組み条約」 (COP26) , 「生物多様性条約」(COP15),「Our Ocean」(於パラオ)などが開催される予定で ある。また,2022 年には「リオ+ 30」が開催される。日本は,そうした国際社 会の動向を 2023 年に公表予定の「第 4 期海洋基本計画」に S&D の視座も積極的 に取り込むことが望まれる。日本の遠洋漁業は,OFCF などを通じて太平洋島嶼.
(21) 法政治研究 第 7 号(2021 年 3 月). 159. 諸国などの EEZ で漁獲を継続しているからである。その漁獲高も世界の漁獲高の 内訳に確実に含まれていることを忘れてはならない。 1) ピーター・ディアマンディス他著,土方奈美訳『2030 年:すべてが「加速する 世界に備えよ」[kindle 版]』(ニューズピックス,2020 年)位置 No. 4975。 2) ジャック・アタリ(林昌宏訳)『海の歴史』(プレジデント社,2018 年)255 頁。 3) Giggs, D., Stafford-Smith, M., Gaffney, O., Rockstrom, J., Ohman, M. C., Shyamsundar, P., W., Glaser, G., Kanie, N. and Noble, I., Sustainable Development Goals for People and Planet, 495 NATURE, at 305-307(2013). 4) ポール・ケドロスキー「なぜ人は枯渇するまで資源を使うのかーシフティング・ ベースライン症候群」ジョン・ブロックマン編(夏目大・花塚恵訳)『天才科学者 はこう考える』(ダイヤモンド社,2020 年)133-135 頁所収。 5) 奥脇直也・日本海洋政策学会会長「【基調講演】新たな海洋法の科学的基礎」(於 笹川平和財団ビル国際会議場,2020 年 12 月 3 日(木) )における発言。 6) 末永芳美編著『二〇〇海里漁業戦争をいかに戦ったか―30 人の証言。その時に』 (農林統計出版株式会社,2020 年)239-240 頁。 7) WTO Ministerial Declaration, WT/MIN(01)/DEC/1, 20 November 2001, para 28: In the context of these negotiations, participants shall also aim to clarify and improve WTO disciplines on fisheries subsidies, taking into account the importance of this sector to developing states. 8) Roman Grynberg, WTO Fisheries Subsidies Negotiations: Implications for ACP Fisheries Arrangements and Sustainable Management, in Roman Grynberg ed., WTO AT THE. MARGINS: SMALL STATES AND THE MULTILATERAL TRADING SYSTEM(Cambridge. University Press, 2012)608. 9) Shoji Matsumoto, The Concept of Developing Country from International Legal Perspectives in Post NIEO / UNCTAD World: From Solidarity to Complementarity, Policy Center for the New South: Policy Paper, Sep. 2019(PP-19/15), at 8. 10) N. Fantom, T. Khokhar and E, Purdie, The 2016 Edition of World Development Indicators Is Out: Three Features You Won’t Want to Miss, World Bank Blogs, 2016, Available at https://blogs.worldbank.org/opendata/2016-edition-world-developmentindicators-out-three-features-you-won-t-want-miss(3 JAN. 2021). 11) Matsumoto, supra note(9), at 9. 12) 米国は,中国が途上国として扱われていることなど,富裕国が途上国扱いされ, WTO の貿易ルールから免れているとして,2019 年 12 月,紛争解決機関(Dispute Settlement Body)の最終審にあたる上級委員会の委員選考に反対した。読売新聞 2020 年 5 月 16 日(土) 。 13) George A. Bermann & Petros C. Mavroidis, WTO LAW AND DEVELOPING COUNTIRES.
(22) 160. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). (Cambridge University Press, 2007)12-20. 14) Che-Ju Chen, FISHERIES SUBSIDIES UNDER INTERNATIONAL LAW(Springer, 2010) 123-124. 15) Anja von Moltke, FISHERIES SUBSIDIES, SUSTAINABLE DEVELOPMENT AND THE WTO (Earthscan, UNEP, 2011)187-188. 16) Chen, supra note(14), at 122-123. 17) Available at http://earthsummit2012.jp/zerodraft_jp.pdf(3 JAN. 2021). 18) Paras. 11, 19, 20, 32, 48, 68, 74, 76, 95 および 282。とくに,76 項は,後の SDGs (paras. 245-251)にもつながる「経済的,社会的,環境的側面」を統合して考慮 し,途上国を含めることを強調している。とりわけ小島嶼国に大きく関連するのは, paras. 16, 33, 92, 160, 165, 174, 175, 178, 179, 180 および 279 である。 19) 蟹江憲史『SDGs』 (中公新書,2020 年)267-268 頁の訳語を採用した。 20) 外務省仮訳『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ』 (2015 年 9 月 25 日第 70 回国連総会採択)24 頁。A/RES/70/1 and fn. 16. 21) 夫馬賢治『ESG 思考』(講談社α新書,2020 年)168 頁;北川哲雄『バックキャ スト思考と SDGs / ESG 投資』 (同文舘出版,2019 年)73,219 頁。 22) Matsumoto, supra note(9), at 11-12. 23) For further details, see Dominic Coppens, WTO DISCIPLINES ON SUBSIDIES AND COUNTERVAILING MEASURES: BALANACING POLICY SPACE AND LEGAL CONSTRAINTS (Cambridge University Press, 2014)253-277. 24) 各国は,漁獲枠を設けるべきである。また,産業型の遠洋漁業への補助金を漸 次削減して,転職を余儀なくされる漁業者には支援策を講じる。アタリ・前掲注(2) 372-374 頁。 25) Grynberg, supra note(8), at 611. 26) Id., at 611-612. 27) Id., at 612-613. 28) See, e.g., Id., at 631. 29) Id., at 631-632. 30) Katherine Seto, West Africa & the New European Common Fisheries Policy: Impacts & Implications, in Harry N. Scheiber, Carlos Esposito, James Kraska and Moon-Sang Kwon eds., OCEAN LAW AND POLICY: 20 YEARS UNDER UNCLOS(Brill, 2016)80-82. 31) Id., at 86-88. 32) 日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部中東アフリカ課『モロッコの通商関係』 (2013 年)3 頁。 33) Morocco Embassy in Japan, Investment Opportunities and Offer of Morocco, Invest in Morocco, 2014, at 3, Available at http://www.morocco-emba.jp/news/2014/JABF_AMDI. pdf(3 JAN. 2021)..
(23) 法政治研究 第 7 号(2021 年 3 月). 161. 34) 中谷和弘「西サハラにおける鉱物・漁業資源と国際法」江藤淳一編『国際法学 の諸相―到達点と展望―』(信山社,2015 年)第 7 章所収,199-200 頁。 35) 同書,200 頁。 36) 委員会のうち,島嶼諸国には,クック諸島,FSM,フィジー,キリバス,マー シャル諸島,ナウル,ニウエ,パラオ,PNG,サモア,ソロモン諸島,トンガ王国, ツバル,バヌアツなどが含まれる。読売新聞,2020 年 8 月 21 日(金) 。 37) Palau National Marine Sanctuary Act, RPPL No. 9-49 2015. Available at http://www. paclii.org/pw/legis/num_act/msrn9492015252.pdf(3 JAN. 2021). 38) 2020 年 8 月 19 日(水) ,海洋政策研究所主任研究員・小林正典氏からの聴き取り (ウェブ会議)。 39) Available at http://www.ofcf.or.jp/activities/exchange.html(3 JAN. 2021). 40) Available at http://www.ofcf.or.jp/activities/development.html(3 JAN. 2021). 41) Available at https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h29_h/trend/1/t1_2_3_6.html (3 JAN 2021). 藤原俊司「トケラウの漁業」海外漁業協力 79 号(2017 年)1 頁。 42) EEZ の面積は,The Sea Around Us, the Sea Around Us: Indian Ocean, the University of British Columbia or the University of Western Australia(http://www.seaaroundus.org/ data/#/eez)に依拠した。 43) 小林正典「公海における生物資源保護のための戦略と実効性確保を巡る課題 ―OSPAR 条約とナウル協定の比較考察」第 9 回海洋政策学会年次大会発表資料。 Available at https://www.pnatuna.com/node/349(3 JAN. 2021). 44) 末永編・前掲注(6)217 頁。 45) Tamate, Josie Malamahetoa Mata Molesi, BALANCING THE SCALES: THE EXPERIENCE OF THE. PARTIES TO NAURU AGREEMENT, Doctor of Philosophy Thesis, Australian. National Centre for Ocean Resources and Security, University of Wollong,(2013)21-23. Available at http://ro.uow.edu.au/theses/4078(3 JAN. 2021). 46) Id., at 33. 47) Available at https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h28_h/trend/1/t1_1_2_1.html (3 JAN. 2021). 48) Available at https://www.pacificclimatechange.net/sites/default/files/documents/Anon_ 12_Kiribati_National_Fisheries_Policy.pdf(3 JAN. 2021). 49) Tamate, supra note(45)at 45, fn 172. 50) Id., at 61. 51) Id., at 75. 52) Id., at 79-80, 99 fn. 388. 53) 佐々木浩子「太平洋島嶼国における海洋の管理に関する一考察―水域に基づく 管理とは何か」島嶼研究ジャーナル 10 巻 1 号(2020 年)113 頁。 54) 同書,118-121 頁。.
(24) 162. 漁業補助金規律における「特別かつ異なる待遇」の意義―ACP 諸国との関係に着目して(中田達也). 55) Tamate, supra note(45)at 88, 96. 56) FFA 加盟国海域では,外国漁船がマグロの漁獲量の 90%を占めていた。本取極 めは,短期的には外国漁船管理を,長期的には国内マグロ産業の発展を目的とす る。同取極めは,パラオで 2008 年 5 月 9 日に改訂された FSM 取極め 13 である。 FFA 条約(1979 年)に基づくナウル協定(1982 年)第 13 回加盟国年次会合(1994 年 4 月 29 日)で採択された。For further details, see Transform Aqorau and Anthony Bergin, The Federated States of Micronesia Arrangement for Regional Fisheries Access, 12 INT’L L. MARINE & COASTAL L. 37, 37-80(1997). 57) Tamate, supra note(45)at 180. 58) Id., at 188-189. 59) Grynberg, supra note(8), at 616. 60) Id., at 613-614, 616. 61) Id., at 614. 62) Id., at 615. 63) Id., at 617. 64) Id., at 618. 65) Id., at 619. 66) Id. 67) Id., at 619-620. 68) Id., at 620. 69) 詳細については,Vina Ram-Bidesi 著,村松紀子訳「持続可能な自給に向けて― 南太平洋における女性と漁業に関する考察」小柏葉子編『太平洋島嶼と環境・資 源』所収,127-159 頁(国際書院,1999 年),特に 120-147 頁「南太平洋における 女性と漁業」を参照。この他,「南太平洋における漁村開発に女性を活用するため の戦略とガイドライン(案)」の中で,「収穫技術や収穫物の処理,資源の活用と 管理,漁業の科学的知識,経営管理など漁業全般に関する教育と技術訓練の機会 を与えることは,女性に力を付け,また支援することになる。」という指摘は強く 首肯しうるものである(151 頁)。この点につき,Vina Ram-Bidesi 著,池田知世訳 「太平洋諸島の漁村における海洋管理責任と女性の役割―原点からの再考―」藤田 陽子他編『諸島地域の新たな展望―自然・文化・社会の融合体としての島々―』 (九州大学出版会,2014 年)第 5 章所収,99-123 頁は示唆に富んでいる。この他, Vina Ram-Bidesi, Recognizing the role of women in supporting marine stewardship in the Pacific Islands, 59 MARINE POL’Y 1, 1-8. も参照。 70) See, Grynberg, supra note(8), at 620-621. 71) Id., at 621. 72) Id., at 624-625. 73) Id., at 625..
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