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大学初年次情報授業の実施前テストと実施後テスト 山梨大学全学実施を事例として

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【研究論文】

大学初年次情報授業の実施前テストと実施後テスト

山梨大学全学実施を事例として ―

Pre- and Post-Lecture Quizzes of First-Year College Informatics Lecture

― A Case Study of University of Yamanashi ―

小俣昌樹

†1

,吉川雅修

†1

OMATA Masaki

†1

YOSHIKAWA Masanobu

†1

要旨: 山梨大学において,2015年度と 2016年度の全新入生を対象として,初年次情報授業の実施の前後に, 高校普通教科「情報」の知識を問う 40 問の多肢選択問題のテストを実施した.その結果,両年度の学年とも,授 業実施後の方が授業実施前よりも全学の平均正答率が下がったことがわかった.この原因のひとつとして,山梨 大学の初年次情報授業では,オフィススイートや情報の受信・発信を中心とする情報活用を扱う学科が多く,高 校の普通教科「情報」の知識部分,特に「情報の科学的な理解」の観点に対応する復習が少ないことが考えられ る.本稿では,このテストの結果およびその分析について詳述し,山梨大学の事例から,高等学校での情報教育 についておよび大学の初年次情報教育について考察する. キーワード: 大学初年次情報教育,授業前テスト,授業後テスト

Keywords: First-Year College Informatics Education,Pre

-

Lecture Quiz,Post

-

Lecture Quiz

1 はじめに

本研究の目的は,山梨大学を一例として,大学入 学時と,その後の初年次情報授業実施後との間の, 学生の情報科の知識に関する変移を明確にすること である.これによって,高校で情報教育を受けた学生 に対して,大学でどのような情報教育を実施すべきか という課題を明確にする.この背景には,2003 年度に 高等学校において情報科が設置されたこと,その後 2013 年度に学習指導要領が改訂されたこと,さらに, 2016 年度からつぎの学習指導要領が議論されてい ることがある1),2)3) 初年次情報授業実施前後の変移を評価する場合 の課題として,入学時点での知識の程度を測定する 必要があること,学部に関わらず共通に評価するため のツールが少ないこと,また,短時間で実施しなけれ ばならないことなどが考えられる.入学時点での,学 部に関わらず,特に理系/文系に関わらず情報科の 知識を評価するためには,高校普通教科「情報」の内 容に基づいたテストが有用であると考える.そして,こ のテストを授業実施前後の 2 回に短時間で実施する ためには,問題数50 問程度の多肢選択式のテストが 妥当であると考える. このような課題に対して,山梨大学では,2015 年 度と2016 年度の学内全 4 学部の新入生(1 年次生, 800 人規模)を対象として,初年次情報授業実施の前 後に,20 分間程度で解答できる全 40 問の 5 肢選択 問題のテストを実施した.初年次情報授業前の入学 年度の4 月から 5 月に実施するテストを「授業前テス ト」とよび,このテストを受けた学生が初年次情報授業 を受けたあとの 2 年次 4 月に実施するテストを「授業 後テスト」とよぶ(以降,両者をあわせて「情報テスト」と よぶ).両者のテストは問題文も選択肢も全く同じであ る.このテストは,高校普通教科「情報」の範囲・程度 における用語や意味などの知識を問う40 個の問題文 と問ごとの 5 つの選択肢で構成される.これらの問題 情報教育 Vol. 2 2020 Research Report of Informatics Education Vol. 2 2020 pp.41-50

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文は,教育システム情報学会情報教育特別委員会が 作成した「情報診断評価テスト」4)などを参考に,平成 24 年度文部科学省大学間連携共同教育推進事業 「学士力養成のための共通基盤システムを活用した 主体的学びの促進」5)の一環として著者らを含めた情 報教科部会において作成された6) 山梨大学には,医学部・工学部・教育学部・生命環 境学部があり,その2015 年度と 2016 年度の全新入 生を対象とした.各学部内の学科やコースにおいて は,1 年次に,「情報処理及び実習」などの授業名の 情報教育が実施される.これらの授業の前後に,問題 文も選択肢も全く同じテストを実施することで,授業の 効果をはじめとする,学修状況を把握できるようになる. 本研究で使用した情報テストは,文部科学省が情 報教育の目標として示している「情報活用の実践力」, 「情報の科学的な理解」,「情報社会に参画する態度」 の観点に基づいている.それゆえ,理系の特に工学 系に特化した専門的な知識を問うのではなく,文系も 含めた基礎知識として知っておくべき内容で構成され ている.また,前述のとおりの高校の範囲・程度であっ ても,後述するテスト結果のとおり,高い正答率の問 題もあれば低い正答率の問題もあるため,テストを受 験した学生の情報の知識の程度を知ることができる. 本稿では,第2 章にて本研究と関連する先行研究 や取り組みを紹介する.そして,第3 章にて山梨大学 で実施した情報テストの実施内容とその結果を示し, 第 4 章でテスト結果を分析し,第 5 章にて結果や分 析に関する著者らの考察を示す.

2 関連研究

本章では,著者らが 3 つの視点でまとめた大学の 情報教育に関する先行研究を紹介し,それらにおけ る本研究の位置づけを示す.

2.1 情報知識の測定ツール

松本らは,e ラーニングシステム上に,情報処理科 目の授業内容を5 択の選択式問題で出題するシステ ムを構築した 7).そして,評価実験から,選択肢に複 数の正解があったり正解がなかったりする不適切な問 題において,正解率が低く思考時間が長くなることを 示し,これらが不適切な問題を発見する指標になるこ とを示した.また,西田らは,情報科における思考力・ 判断力・表現力を評価するために,過去の「情報入試 全国模試」を実施できるCBT システムを開発した8) このシステムは,作問機能部,試験機能部,採点・集 計機能部で構成されている. これらの先行研究と比較して,本研究では,情報知 識を問うテストを実施したこと,初年次情報授業の前 後の両方で実施したこと,および,同一大学内全学部 800 人規模で実施したことが異なる.

2.2 高等学校の「情報科」

萩原らは,文部科学省大学入学者選抜改革推進 委託事業として,高校共通教科「情報科」の入試問題 の検討,およびその作成方法を研究している 9),10) 具体的には,次期指導要領を加味した知識体系の整 理,理工系大学教育の分野別質保証および参照基 準を考慮した「情報科」入試評価項目の検討,情報科 での「思考力・判断力・表現力」評価方法の検討など である.あわせて,佐々木らの解説から,2020 年以降 の学習指導要領に向けた情報教育の実践研究が活 発になってきていること,情報セキュリティ教育・情報 倫理・情報モラル教育の重要性も増していること,これ までの学習指導要領と比較して情報教育がより重視 されていることがわかる11).一方,中山らの47 都道府 県の臨時免許状授与件数および免許外教科担任許 可件数の調査から,高校の情報科において,情報科 が設置された2003 年度に比べて 2013 年度には,臨 時免許状と免許外教科担任の件数が倍増している問 題が示された12).そして,情報科は一定の専門性をも つ教員が担当すべきと考察している. これらの調査・研究を受けて,本研究で実施した情 報テストは,入学時点での高校「情報科」における知 識の定着の程度も測定でき,高大接続における情報 科の内容や高校と大学における授業内容の割り振り などの検討のきっかけにできると考える.

2.3 大学における情報学

萩谷は,萩谷らが進めている大学教育における情 報学分野の参照基準の策定について述べ,その中で, 情報学の定義や情報学固有の知識を示している 13) この参照基準では,情報学を“情報によって世界に意 味・価値を与え秩序をもたらすことを目的に,情報の 創造・生成・収集・表現・記録・認識・分析・変換・伝達 にかかわる原理と技術を探求する学問”と定義してい る.また,情報学固有の知識の分野として,「情報一 般の原理」,「コンピュータで処理される機械情報の原

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理」,「情報を扱う機械および機構を設計し実現する ための技術」,「情報を扱う人間と社会に関する理解」, 「社会において情報を扱うシステムを構築し運用する ための技術・制度・組織」を体系付けている. 本研究の情報テストは,この知識の体系の中で, 「情報一般の原理」全般,「コンピュータで処理される 機械情報の原理」の一部,「情報を扱う機械および機 構を設計し実現するための技術」の一部,および「社 会において情報を扱うシステムを構築し運用するため の技術・制度・組織」の一部に関連している.

3 山梨大学における情報テスト

本研究で使用した情報テストは,高校普通教科「情 報」の「情報活用の実践力」,「情報の科学的な理解」, 「情報社会に参画する態度」の観点(以降,それぞれ を「実践」「理解」「態度」と略す.)の知識部分に関す る合計 40 問の 5 肢選択問題である6),14)15)40 問 の各観点に関する内訳は,実践12 問,理解 15 問, 態度13 問であり,1問正解を 2.5 点として,計 100 点 満点とする.5 つの選択肢の内訳は,正答 1 つ,選択 肢用誤答 3 つ,および自信をもって解答できない場 合に選択するよう指示している「わからない」である.こ の「わからない」を設けた理由は,当て推量で選ぶこと を防ぐためである. 問題文および選択肢の一例を,後述する表 4 と表 5 に示す.ただし,表 4 および表 5 には,「わからない」 の選択肢を含めていない.表4 と表 5 のように,平均 40 字程度の問題文に,単文あるいは語句の選択肢 を示し,1 つを選択してもらう形式である.これらの問 題は,該当する観点の内の知識を問う問題である.し たがって,キーボードのブラインドタッチや文書作成 のための操作などの,情報活用スキルについては問 うていない. 情報テストは,全く同じ問題と選択肢で初年次情報 授業の前後に2 回実施することが想定されている.授 業前テストは,学生が入学時点での自身の状況を確 認するため,また,初年次情報授業の担当教員が新 入生の様子を把握するために実施する.一方,授業 後テストは,学生が初年次情報教育受講後の学修状 況を振り返るため,また,大学教員が初年次情報授業 の効果の一部を確認するために実施する.

3.1 テストの実施

山梨大学では,現在のところ,2015 年度以降,そ の年度の全入学学生を対象として情報テストを実施し ている.本稿では,その中の 2015 年度と 2016 年度 について詳説する.この2 か年の授業前テストについ ては全員を対象として実施したが,授業後テストにつ いては,一部の学科で実施できなかったため,3.2 節 に示すとおり受験者数が数十人から百人ほど減った. 2015 年度入学生の授業前テストは,前期の初年 次情報処理関連授業の前半の時期に,主には千歳 科学技術大学で開発された e-ラーニングシステムの Solomon16)上で実施した.一方,授業後テストは,4 月上旬の各学科のガイダンスで問題用紙と解答用マ ークシートを配布し,宿題として自宅等で解答すること を指示し,2・3 日後に回収する方法で実施した. 2016 年度入学生の授業前テストは,2015 年度と 異なり,入学手続き書類に問題用紙とマークシートを 同封して,自宅等で解答することを指示し,入学手続 き時に回収 する方法で実施 した .授業後 テス トは 2015 年度と同様である. なお,山梨大学においては,学生に,授業前テスト も授業後テストも大学の成績には一切関係ないことを 伝えた.また,自宅等で解答する場合,解答時間の 目安が 20 分間程度であること,解答がわからなけれ ば調べずに「わからない」を選択することを指示した.

3.2 テストの結果

図1 に,2015 年度入学生の全学および学部ごとの 授業前テスト(受験者数全 863 人)およびその後 2016 年度の授業後テスト(受験者数全 757 人)の結 果を示す.横軸は前述の 3 つの観点を示し,縦軸は その観点に対応する問題の平均正答率を示す.エラ ーバーは正答率の標準偏差である.あわせて,表 1 に,観点ごとの,全員および各学部の「わからない」と 回答した平均割合(つまり,各問において 100%から 正答率[%]と誤答率[%]を減算した数値)を示す. 図1 から,全学において,3 つの観点の中で「情報 の科学的な理解」が最も低く,授業前テストも授業後 テストも,正答率は全学で 64%程度である.学部ごと に見ると,教育学部の「理解」がどちらのテストにおい ても 57%・58%程度と低い.また,授業前テストから授 業後テストの変移を比較すると,全学において,「実 践」と「態度」の観点が下がっている.特に教育学部と

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生命環境学部において,「態度」が 5 ポイント以上下 がっている.一方,工学部においては,「実践」と「理 解」が,若干上がっている. 図2 に,2016 年度入学生の全学および学部ごとの 授業前テスト(受験者数全 852 人)と 2017 年度の授 業後テスト(受験者数全 776 人)の結果を示す.グラ フの見方については図 1 と同様である.あわせて, 2015 年度と同様,表 2 に,全員および各学部の「わ 図 1 2015 年度入学生の情報テストの結果 図 2 2016 年度入学生の情報テストの結果

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からない」と回答した平均を示す. 図2 から,2015 年度同様,全学において,3 つの 観点の中で「理解」が最も低く,両テストにおける正答 率は60%程度であった.特に,2015 年度同様,教育 学部は,授業前テストの「理解」が53%程度と低い.そ して,生命環境学部も,授業後テストの「理解」が55% と低い.また,授業前テストから授業後テストの変移を 比較すると,全学において,2015 年度同様,「実践」 と「態度」の観点が下がっている.特に,医学部の「実 践」と「態度」,そして生命環境学部の「実践」が5 ポイ ントほど下がっている.一方,工学部については,ど の観点も若干上がっている.

4 分析

前述した結果およびその詳細データについて,さま ざまな視点から分析する.

4.1 授業前後における正答率の変化

授業前テストから授業後テストへの全学平均正答 率について比率の差の検定(𝑝𝑝 < 0.05)をおこなった 結果として,表3 に,2015 年度および 2016 年度とも 上昇または下降した問題数を示す.表3 から,両年度 において,上昇数よりも下降数が上回っていることが わかる.上昇数が下降数を上回ったのは,2016 年度 入学生の「理解」の観点に関する問のみである. この変移をより具体的に分析するため,表 4 に, 2015 年度入学生も 2016 年度入学生も,共通して正 答率が有意に上昇した問とその選択肢を示す.反対 に,表5 には,共通して正答率が有意に下降した問と その選択肢を示す.有意に上昇した問においては, その選択肢が,他の問と比べて,授業や普段の生活 でも触れる機会が多く文字数の少ない単語で構成さ れている傾向があると考える.一方,有意に下降した 問においては,その反対に,選択肢が,授業や普段 の生活でなじみの少ない語句や比較的長めの文章 で構成されている傾向があると考える.

4.2 山梨大学の初年次情報教育授業

山梨大学の全学科(またはコース)の初年次情報 授業におけるシラバス 17)に記載されている概要,授 業目標,および全 15 回分の授業項目の語句をキー ワードとして,その出現頻度について,四隅の学部名 表 1 2015 年度入学生の授業前/後テストにおけ る「わからない」を選択した平均割合(%) 2015 年度授業前 2015 年度授業後 実 践 理 解 態 度 実 践 理 解 態 度 全体 7.5 10.9 8.3 6.5 8.7 8.1 医学部 3.7 6.1 3.9 6.8 8.6 7.1 教育学部 8.2 14.5 8.4 8.9 13.3 11.9 生命環境 学部 7.8 12.3 9.4 6.5 9.3 8.4 工学部 9.0 11.2 10.0 5.4 6.7 7.2 表 2 2016 年度入学生の授業前/後テストにおけ る「わからない」を選択した平均割合(%) 2016 年度授業前 2016 年度授業後 実 践 理 解 態 度 実 践 理 解 態 度 全体 13.6 20.4 16.1 5.5 7.7 7.0 医学部 12.5 20.4 15.6 7.3 11.0 9.7 教育学部 14.6 24.3 15.1 5.7 10.1 7.9 生命環境 学部 13.2 21.2 14.7 4.3 6.5 5.3 工学部 13.9 18.8 17.2 5.3 6.1 6.5 表 3 授業後テストの平均正答率が授業前テストよ りも有意に上昇または下降した問題数 2015 年入学生 2016 年度入学生 観点 実践 理解 態度 実践 理解 態度 上昇 1 3 0 1 7 1 下降 8 5 8 5 4 5 表 4 授業後テストで 2 年間とも平均正答率が上 昇した問題とその選択肢 観点 問題文 正答 誤答選択肢 理解 連続的に変化する量 を、離散的な量で表 すことを何というか。 ディジ タ ル 化 アナログ化, バ イ ト 化 , ビ ット化 理解 出力装置であるもの はどれか。 プリン タ CPU,キーボ ー ド ,ハ ー ド ディスク 理解 インターネット接続時 に、コンピュータや通 信機器 1 台 1 台に割 り振られる識別用の 番号を何というか。 IP アド レス TCP/IP , URL , ポ ー ト 番号

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を起点する 2 次元座標上に引っ張り合いレイアウトで マッピングしたコンセプトマップを図3 に示す.具体的 に,この図は,キーワード間の出現頻度や出現場所 の近さを表している.すなわち,山梨大学の初年次情 報授業では,中心に,オフィススイート(文書作成,表 計算,プレゼンテーション)の使い方,e-ラーニングシ ステムの使い方,電子メールの使い方,コンピュータ の基本操作が位置づいている. 表6 は,図 3 で示した山梨大学における全 19 の 学科(またはコース)のシラバスにおける全 15 回分の 授業項目と,情報テストの各問に対応した指導要領 の項目との関係について,その対応を著者らが集計 して学科(またはコース)の数で表したものである.し たがって,各問の最小値は0,最大値は 19 となる.こ の表のとおり,また,図3 について述べたとおり,山梨 大学においては,「ワープロソフトの利用」,「表計算ソ フトの利用」,「プレゼンテーションソフトの利用」,「情 報の受信・発信」に多くの学科が対応している.また, 多くの項目が0 となっている.ただし,表 6 の分析は, シラバスの項目の語句のみから著者らが判断して集 計したため,シラバスには明示されていなくても実際 の授業においては表 6 で 0 とした内容を扱っている 可能性もあること,また,シラバスの項目名だけでは判 断できなかったものはこの表に含めていないことを断 っておく.

5 考察

本章では前章までに示した山梨大学での情報テス 表 5 授業後テストで 2 年間とも平均正答率が下降した問題とその選択肢 観点 問題文 正答 誤答選択肢 実践 明朝体やゴシック体など、文字の書体の ことを何というか。 フォント ポイント,レイアウト,文字飾り 実践 スポーツなどの状況を伝えるとき、一般 に、最もわかりやすく伝えることのできる 表現メディアはどれか。 映像 画像,文字,音声 実践 効果的なプレゼンテーションを行う工夫 として、最も適切なものはどれか。 聞き手の年齢や 立場を考慮する スライドの音や背景を派手にする,全て明るい色で 表示させる,身振り手振りを使わない 実践 不特定多数に公開する Web サイトを作 成する際に注意する点として、最も適切 でないものはどれか。 作成者の個人情 報を明示する 更新年月日を明示する,定期的に更新する,目的 に合った Web サイトを作成する 理解 記憶媒体の容量を表す単位はどれか。 GB dpi,GHz,Mbps 理解 パスワードの設定や管理に関する記述 のうち、最も適切なものはどれか。 管理者か ら 要求 があっても教えな い 氏名や生年月日をパスワードにする,文字数はなる べく少なくする,忘れないようにメモしてパソコンの モニタに貼っておく 理解 不正アクセスに当たる行為でないもの、 または、不正アクセスによる被害とは考 えられないものはどれか。 フィルタリング データの改ざん,なりすまし,個人情報の流出 態度 コンピュータを使いこなせる人と使いこな せない人の間で生じる経済的、社会的 な格差のことを何というか。 デ ィ ジ タ ル ・ デ ィ バイド ダウンサイジング,テクノストレス,フィッシング 態度 待ち合わせ場所を案内するために、友 人に地図情報を伝えたい。その際利用 するものとして、最も適切でないものはど れか。 音声電話 FAX,SNS,電子メール

態度 SNS(Social Networking Service)の一般 的な特徴として、当てはまらないものはど れか。 一 度 発 信 し た 情 報 で あ っ て も 完 全に削除できる 現在の自分の行動や考えを簡単に発信できる,常 に正しい情報を入手できるとは限らない,人と人との つながりをオンラインでサポート・促進する 態度 Web サイトから信憑(しんぴょう)性のより 高い情報を得るための工夫として、最も 適切なものはどれか。 複数のWebサイ トからの情報を比 較・照合する 検索エンジンが最初に見つけたWebサイトから情 報を得る,人気の高いWeb掲示板から情報を得る, 訪問回数の多いWebサイトから情報を得る 態度 コンピュータウイルスの感染経路に関す る説明として、適切でないものはどれか。 Web サイトを閲覧 す る だ け で は 感 染しない USB メモリをコンピュータに差し込むだけで感染す ることがある,映像端子を用いてプロジェクタに接続 するだけでは感染しない,添付ファイルがついてい ない電子メールでも閲覧するだけで感染することが ある

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トの結果およびその分析を一側面として,その理由や 問題点を考察し,高校および大学の情報教育および 情報知識を問うテストシステムに関する一提案につい て述べる.

5.1 テストの結果と高校普通教科情報

山梨大学の情報授業前テストの成績において,2 年度に渡って「情報の科学的な理解」が他の観点より も低くなった理由として,高校の情報授業での「情報 手段の特性の理解18)」が不十分であったことが考えら れる.「情報手段の特性の理解」は,コンピュータの構 成要素の名称や情報処理における役割,情報通信 ネットワークの仕組みや特性について理解する部分 である.したがって,全体的に専門的な用語が多いこ ともさることながら,他の観点に比べて,普段目にしな い用語や目に見えない仕組みを理解する部分が多く, 教科書や教材における文章や模式図を中心とする学 習では知識が定着しにくい部分があると考える.また, 「情報活用の実践力」や「情報社会に参画する態度」 の観点から見ると,このような目にしない/見えない部 分の知識がなくても活用したり参画したりできることは 多いため,科学的な理解が進まないことも考えられる. これらの問題点に対して著者らの提案する改善策 は,高校の情報教育において,情報活用から導入し てトップダウンの構造での教育することである.つまり, はじめにコンピュータやネットワークの名称・仕組みな どから導入せず,身近なスマートフォンやタブレットを 調査・記録・共有に活用することから導入し,そのあと で,それらの機器や通信の仕組みならびにそのため の基礎的な数学や物理部分へと進めていく過程であ る.高校普通教科情報の科学部分に使用されている 教科書では,はじめにコンピュータの仕組みや数理 的な部分が示されていることが多く,多くの高校生に とって,この部分から理解することは難しいと考える. この提案の根拠として,3.2 節で示したテスト結果に おける「理解」の正答率が低いことと,平成 30 年に告 示された新しい高等学校学習指導要領(情報編)19) を挙げる.テストの正答率が低かったことから,その部 分を高等学校で重点的に学習して改善するというボト ムアップ型のアプローチも十分に考えられる一方で, 正答率が低かったからこそ,その前段階で活用部分 からはじめて,その後に理解部分を学習して改善する というアプローチも考えられる 20).また,新しい学習指 導要領においては,情報の科学的な理解に関する指 導が十分ではなかったことが課題として指摘されたう えで,情報活用能力を充実させて科学的な理解を充 実させる方針が示されている.そして,情報技術を適 切かつ効果的に活用する力を育む共通科目として 「情報 I」が,また,情報システムや多様なデータを適 切かつ効果的に活用する力やコンテンツを想像する 力を育む選択科目として「情報II」が,設けられている. 図 3 山梨大学の初年次情報授業のシラバスのコンセプトマップ

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5.2 授業後テストの結果と山梨大学初年次情

報授業の内容

山梨大学における初年次情報授業実施後のテスト の正答率が授業前テストの正答率よりも全体的に下 がった理由として,4.2 節で示したとおり,山梨大学の 初年次情報授業がこのテストの範囲にほとんど対応し ていないこと,あわせて,授業前テストの上位成績学 生の成績が下がったことが考えられる.山梨大学の初 年次情報授業では,4.2 節で示したとおり,オフィスス イートや情報の発信・受信を中心とする情報活用部分 を中心に実施されている.これは,高校における情報 教育によって基本的な知識は身についていることを 前提とし,その後の大学入学直後から,さまざまな授 業でのコミュニケーション・調査・文書作成・プレゼン テーションなどで情報機器やソフトウェアを利活用して いくことが背景にある.これとは別に,授業後テストで 成績が下がった学生について,その明確な理由や原 因は不明である. これらの問題点に対して著者らの提案する改善策 は,大学においても,高校普通教科情報の「情報の 科学的な理解」の範囲に対応する教育を実施して,こ れらの知識のさらなる定着を図ることである.前述のと おり,情報テストは高校の情報の範囲と内容に基づい ているため,大学の初年次情報授業においてそれと 全く重複する範囲や内容を扱う必要はないと考えるが, 理系/文系などの学部にかかわらず,高校普通教科 情報の復習もある程度は授業に含めておくことが望ま しいと考える.特に,新指導要領 19)では選択となって いる「情報 II」の内容を中心に学修することで,「情報 I」および大学初年次の情報活用とその基盤となる情 報技術とが,より具体的かつ密接に関連していくと考 える.あわせて,授業では時間的に扱いきれない場 合に備えて,e-ラーニングなどで自主学修できる仕組 みを用意しておくことが望ましいと考える.

5.3 情報テストシステム

授業後テストの全体的な正答率が授業前テストに 比べて下がった問題について,学生の両テストにお ける取り組みの様子の違いも懸念される.授業中に実 施した場合を除くと,学生は,宿題としてこのテストを 持ち帰って自宅等で解答して後日提出する.このよう な方法では,学生がどのように解答しているのかわか らない.それゆえ,解答時間の目安を 20 分間と示し たうえで,わからない場合には調べたり根拠無く選択 したりするのではなく「わからない」を選択することを指 示していたとしても,熟考しながら時間をかけて解答し た学生もいれば,時間を掛けずに解答した学生もい れば,また,わからなくても「わからない」を選択せず 表 6 情報テストの出題項目と対応学科数 問番号 指導要領項目名 対応 学科数 1 情報の特質と情報手段 0 2 情報機器 1 3 情報社会の問題点 4 4 情報の発信と評価 4 5 情報のディジタル表現 17 6 情報の収集と整理 17 7 コミュニケーションの拡大 0 8 情報の定式的処理 3 9 情報社会における個人の役割 17 10 情報のディジタル表現 4 11 セキュリティ技術 3 12 情報機器 2 13 情報ネットワーク 0 14 情報の表現 1 15 セキュリティ技術 2 16 情報ネットワーク 0 17 コミュニケーションの拡大 2 18 情報社会の進展 2 19 情報の収集と整理 1 20 コミュニケーションの拡大 4 21 情報の加工 0 22 情報機器 1 23 情報社会の問題点 0 24 情報社会における個人の役割 6 25 情報のディジタル表現 4 26 コミュニケーションの拡大 0 27 情報の表現 0 28 情報社会における個人の役割 0 29 情報の加工 6 30 情報機器 0 31 情報ネットワーク 0 32 情報の表現 0 33 セキュリティ技術 0 34 情報の表現 6 35 情報の発信と評価 16 36 情報のディジタル表現 0 37 コミュニケーションの拡大 0 38 情報の収集と整理 7 39 情報社会の進展 2 40 情報社会における個人の役割 5

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に自信のない選択肢を解答した学生もいるのではな いかと推察される. このような懸念に対して,山梨大学では,情報テスト を e-ラーニングシステムを使用して実施することを検 討している.e-ラーニングシステムを利用することで, 全体の解答時間および個々の問の解答時間を制限 できること,また,誤答をあまりに早く解答した問を抽 出することなどが可能になると考える.これによって, どのような経緯でその解答に至ったのかを検討できる ようになり,授業前テストの上位層の中で授業後テスト の成績が下がった原因の検討ができるようになること を期待している. あわせて,山梨大学では,ただテストを実施するだ けでなく,授業前テストと授業後テストとの橋渡しとな る位置づけとして,テスト内容を自主学修することので きるe-ラーニング学修材の導入を計画している.

6.おわりに

本研究では,山梨大学の全4 学部の新入生を対象 とする,初年次情報授業実施前後の情報知識に関す るテストを実施した.このテストは,全40 問の 20 分間 程度で解答できる5 肢(含む「わからない」)選択問題 であったが,大学入学時および大学初年次情報授業 実施後の学生の情報科の知識に関する状況を把握 することのできるツールであることがわかった. 山梨大学においては,授業前テストより初年次情報 授業実施後のテストの方が全体的には成績が低くな った.この理由として,山梨大学の初年次情報授業に おいては高校普通教科情報の範囲の復習部分が少 なく情報活用部分を中心に授業を実施していること, テストを宿題として課した場合の学生の解答の様子が わからないことが挙げられる.これらに対し,著者らが 考える解決案として,理系/文系に関係なく,大学の 情報教育においても,高校情報科の内容を一部含め て取り扱うこと,そして,テスト解答の様子を電子的に 記録できる e-ラーニングシステムを利用することを提 案する. 一方で,情報に関してより高度で専門的な教育を 受ける工学部については,授業後テストでの若干の 成績向上が見られたので,初年次情報授業だけでな く,大学における他の授業と情報学との関係も分析し ていく必要があると考える. 今後,数年間は,e-ラーニングでの実施も検討しつ つ,同じ問題・選択肢のままこれらの情報テストを継続 して実施していき,高校の学習要領の改訂との関係も 分析する計画である.そして,情報教育における高大 接続の課題を分析し,山梨大学をはじめとする大学 の情報教育の改善について提案・検証していく. 謝辞 本 研 究 の 一 部 は JSPS 科研費 JP17K00480 の助成を受けたものである. 【参考文献】 1) 中央教育審議会,初等中等教育分科会教育課 程 部 会 教 育 課 程 企 画 特 別 部 会 配 布 資 料 , http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuky o/chukyo3/053/ (2019 年 9 月 10 日参照). 2) 中央教育審議会,次期学習指導要領等に向けた こ れ ま で の 審 議 の ま と め に つ い て ( 報 告 ) , http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuky o/chukyo3/004/gaiyou/1377051.htm (2019 年 9 月 10 日参照). 3) 鹿野 利春 (2017),学習指導要領の改訂と共通 教科情報科,情報処理,58 巻,7 号,626-629. 4) 西野 和典,香山 瑞恵,布施 泉,高橋 参吉 (2006),大学新入生の教科「情報」に関する知識 の調査と考察,電子情報通信学会技術研究報告 ET,教育工学,106 巻,249 号,29-34. 5) 学士力養成のための共通基盤システムを活用し た 主 体 的 学 び の 促 進 , https://eight-univ.spub.chitose.ac.jp/ (2019 年 9 月 10 日参 照). 6) 小俣 昌樹,吉川 雅修,金子 大輔,石田雪也, 西端律子 (2017),8 大学共通の情報教科プレイ スメントテストにおける出題範囲の検証,日本情 報科教育学会(JAEIS)第 7 回全国大会講演論 文集,95-96. 7) 松本 陽平,藤原 敬介,村川 猛彦 (2017),情 報処理教育を対象とした e ラーニングシステムの 構築,情報知識学会誌,27 巻,2 号,155-160. 8) 西 田 知 博 , 植 原 啓 介 , 角 谷 良 彦 ほ か (2017),「情報科」大学入学者選抜における CBT システムの研究開発,情報教育シンポジウム論文 集,2017 巻,28 号,182-187. 9) 角田 博保 (2017),ぺた語義:大学入試改革事

(10)

業関連の概要,情報処理,58 巻,5 号,155-160. 10) 萩原 兼一 (2017),ぺた語義:大学入試におけ る高校共通教科「情報科」の評価方法改革に関 する研究プロジェクト -「思考力・判断力・表現力」 を評価する問題の作成方法とCBT による試験実 施,情報処理,58 巻,9 号,840-843. 11) 佐々木 整,東原 義訓 (2016),特集号「新時代 の情報教育」刊行にあたって,日本教育工学会 論文誌,40 巻,3 号,127-130. 12) 中 山 泰 一 , 中 野 由 章 , 角 田 博 保 ほ か (2017),高等学校情報科における教科担任の現 状 ,情 報 処 理 学 会 論 文誌 教 育 と コ ン ピュ ー タ (TCE),3 巻, 2 号,41-51. 13) 萩谷 昌己 (2014),情報学を定義する-情報学 分野の参照基準,情報処理,55 巻,7 号,734-743. 14) 金子 大輔,石田 雪也,小俣 昌樹,吉川 雅修, 古賀 崇朗 (2016),大学の初年次学生を対象と した情報に関する基礎知識調査の開発と調査結 果の分析,日本教育工学会論文誌,40 巻,201-204. 15) 吉 川 雅 修 , 小 俣 昌 樹 , 石 田 雪 也 ほ か (2014),新入生に対する情報教科プレイスメント テスト結果における学部間の傾向分析,日本情 報科教育学会(JAEIS)第 7 回全国大会講演論 文集,93-94. 16) CIST-Solomon 千歳科学技術大学 e-ラーニン グシステム, https://solomon.mc.chitose.ac.jp/CIST-Shiva/Index (2019 年 9 月 10 日参照). 17) 山梨大学電子シラバス, https://syllabus.yamanashi.ac.jp/ (2020 年 1 月20 日参照). 18) 永井 克昇 (2014),高等学校における情報科の 位置付け,情報処理,55 巻,4 号,316-320. 19) 【情報編】高等学校学習指導要領(平成 30 年告 示)解説, https://www.mext.go.jp/con-tent/1407073_11_1_2.pdf (2020 年 1 月 20 日 参照). 20) 中野 靖夫 (2007),情報教育を推進するための 検討課題,上越教育大学研究紀要,26 巻,273-286. 受付: 2019 年 10 月 2 日 採録: 2020 年 2 月 22 日 ――― 著者略歴 ――― 小俣 昌樹 山梨大学大学院総合研究部工学域 准教授.2003 年 山梨大学大学院工学研究科博 士後期課程修了.博士(工学).主として知覚ユー ザインタフェースおよびe-ラーニングのインタフェー スに関する研究に従事.本研究では,情報テストの 設計・実施を担当. E-mail: [email protected] 吉川 雅修 山梨大学大学院総合研究部助教. 1987 年,東京大学大学院工学研究科修士課程修 了.品質機能展開を用いたシステムの設計構築と 利用者分析の研究,特に学習・教育システムへの 応用に従事.本研究では,情報テストの設計・実 施・分析を担当. E-mail: [email protected]

参照

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