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カラム吸着試験に基づく分配係数の取得方法が吸着層の性能評価に及ぼす影響の考察

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カラム吸着試験に基づく分配係数の取得方法が

吸着層の性能評価に及ぼす影響の考察

加藤智大

1

,井本由香利

2

,保高徹生

2

,勝見 武

1 1 京都大学大学院・地球環境学堂 / 地球環境学舎 2 産業技術総合研究所・地圏資源環境研究部門

カラム吸着試験に基づく分配係数の取得方法が

吸着層の性能評価に及ぼす影響の考察

加藤智大

1

,井本由香利

2

,保高徹生

2

,勝見

1 1 京都大学大学院・地球環境学堂/地球環境学舎 2 産業技術総合研究所・地圏資源環境研究部門

吸着層工法は,自然由来の重金属等を含む掘削土の底部に施工し,重金属等の周辺環境への流出を抑制す る工法として議論されている。本論文ではカラム吸着試験で得られる破過曲線が,Freundlich 型の移流分散 方程式の数値解に従うモデルをパラメトリック解析によって作成し,各モデルに対し異なる4 通りの取得 方法を適用した際に得られる分配係数の差異を調べた。さらに取得した分配係数を用いて,層厚30 cm の 吸着層に浸透した汚染物質が吸着層底部に到達するまでに要する時間をシミュレーションにより求めた。 その結果,本研究で扱った解析条件では,各モデルについて異なる4 手法によって得られた分配係数は最 大で40%程度の差異であった。また,Freundlich 型の係数に従う破過曲線が得られた場合には,Henry 型の 数値解をフィッティングして分配係数を取得すると,最も安全側の評価となる可能性が示された。 キーワード:移流分散解析,破過曲線,自然由来重金属等,吸着層工法 1. は じ め に 建設工事に伴い大量に発生する掘削土には,ヒ素やフッ 素などの自然由来重金属等が土壌汚染対策法(以下,土対 法)の指定基準を超えて含まれることがある。これら基準 不適合土を盛土構造物の路床等として使用する際には,周 辺環境に配慮した対策が求められる。近年,建設工事の集 中に伴って大量の掘削土が生じていること,日本では土砂 処分用地の確保が難しいことや,自然由来重金属等が土対 法の指定基準を数倍程度超えた濃度で溶出すると評価さ れる例が多いことを踏まえると,建設現場ごとに自然由来 重金属等が溶出しうる濃度レベルに応じて合理的に対処 することが望ましいと考えられる1) 自然由来の重金属等を含む掘削土への合理的な対策の 一つとして,図 1 に示すような吸着層工法が議論されて いる2)吸着層工法とは重金属等を含む土からの浸出水を, 重金属等を捕捉する能力を持つ吸着層に通過させ,環境負 荷を低減し地下水へ排出する工法である3)。非汚染土に吸 図 1 吸着層工法の概要 着材を添加し,吸着層として敷設する例が多い。吸着層工 法は締固めにより頑強な土構造物を構築でき,対策工を盛 土底部のみに設けるため,施工性・経済性に優れる工法と 期待されている。 吸着層の設計を行う際,吸着層に流入しうる重金属等に 対して,吸着層材料が発揮する吸着性能を評価する必要が ある。実務的には,吸着性能を定量的に評価するために, 吸着試験によって分配係数Kd(L/kg)を取得する場合が多 い3) 4) 5)。これまで吸着材の性能評価に限らず,原地盤の吸 着性能を評価する際にもKdを取得し,移流分散解析を行 うことでリスク評価がなされてきた。2019 年 3 月に改正 された土対法のガイドラインには,自然由来等土壌構造物 利用施設の設計に際して,バッチ吸着試験により取得した Kdを用いて移流分散解析を行い,汚染物質の到達度を評価 する手法が明記されている6)。 我が国で発行されたマニュアルやガイドライン,また既 往研究ではKdを算出する際には,試験の操作性や迅速さ の観点からバッチ吸着試験が採用されるケースがほとん どであった 7)8)。一方で,バッチ試験では,i) 評価対象の 現実地盤や吸着層における液固比(通常1 以下)よりも大 きな液固比(5〜数千)で試験が行われる,ii) 間隙水が地 盤内を浸透する状況を模擬できない 9)iii) カラムから流 出する物質の濃度変化を観察できないといった課題が指 摘されている。 これらの課題を克服するため,より現実に近い性能評価 ができる試験方法としてカラム吸着試験が実施されるこ 原地盤 覆土 掘削土 吸着層

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とがある。カラム吸着試験は,土壌等に溶液を連続的に通 過させて,浸出液中に含まれる汚染物質濃度の経時変化か ら,材料の吸着性能を評価する試験方法である。 カラム吸着試験で得られる破過曲線から Kdを取得する 方法は様々提案されているが10)11),その取得方法について 明確な整理や規定はなされていない。取得方法の違いがKd の値に及ぼす影響については,土壌を対象としたカラム吸 着試験によって評価された例がある。破過曲線の形状が対 称の形状をしている場合には得られる Kdの値に差異が無 い一方,非対称の形状をしている場合には差異が生じるこ とが報告されている12)。 カラム吸着試験では非対称の破過曲線が得られること が多い。非対称の破過曲線の中では,Freundlich 型の移流 分散方程式の数値解に従うモデルが得られる事例が多く 報告されている11)13)。しかしながら既往の研究では,実験 で 得 ら れ た 特 定 の 破 過 曲 線 を 中 心 に 検 討 を し て お り 11)12)13),様々な破過曲線の形状に対して,得られるKdの値 の違いについて,パラメトリックに比較した事例はない。 また,取得される Kdの値は破過曲線の非対称の程度によ っても異なることが予想される。実際のカラム試験では調 査できる試験数や範囲が限られるため,数値実験を用いて パラメトリックに非対称の破過曲線を作成し,Kdの取得方 法の違いごとに得られるKdの値の大小関係を調べること で,各取得方法の特徴や適用範囲を明らかにすることがで きる。 先に述べたとおり,近年我が国では,自然由来重金属等 を含んだ土壌や掘削ずり等に対して,自然地盤や吸着層の 分配係数を考慮した物質移動モデルによるリスク評価が 土対法ガイドラインやマニュアル等に導入されているこ とを踏まえると,より現実に近い吸着性能評価が可能なカ ラム吸着試験の重要性は今後高まることが想定される 6) また,土対法では解析手法としてFreundlich 式ではなく, Kdを用いた簡易なHenry 式が使用されることを踏まえる と,カラム試験によって得られた破過曲線からKdを得る 方法の標準化や各取得方法で得られる Kdの条件に応じた 特徴(大小関係)の把握は,リスク評価や物質移動予測の 安全性を担保するために極めて重要な情報となる。 本研究では,分配係数を得ることを目的としたカラム吸 着試験結果から非対称形状の破過曲線,特にFreundlich 型 の破過曲線が得られたことを想定し,1) 分配係数 Kdの取 得方法の違いが吸着性能評価結果に及ぼす影響,2) 得ら れた Kdの違いが吸着層での汚染物質の到達度の予測に与 える影響の評価を目的に,移流分散解析を行った。 2. 既往の研究 2.1 破過曲線から Kdを取得する方法 カラム吸着試験から得られる破過曲線を用いて Kdを算 出する方法については複数の研究例がある。一つは,破過 曲線に移流分散方程式の解析解や数値解をフィッティン グする方法10)14)15)である。例えば五十嵐・下垣は,カラム 試験の結果に Kdを含む移流分散方程式の解析解をフィッ ティングして,Kdの値を取得している10)。また,破過曲線 の面積を積分する面積法12)13)16)17)も行われている。さらに 破過曲線を無次元化し,比濃度C/C0 = 0.5 の点から遅延係 数R を算出することで,Kdを求める方法も提案されてい る11)12)13) 2.2 Henry 型と Freundlich 型の吸着モデル式 吸着モデルには,式(1)のような線形吸着を仮定した Henry 式や,式(2)のような非線形吸着モデルの Freundlich 式等がある。Henry 式は,砂質土やローム質土壌へのホウ 素吸脱着を表現するために用いられた事例10)や,低濃度域 での吸脱着を表現するために適用されることがある。一方 でFreundlich 式は,黒ボク土や粘性土への鉛・カドミウム・ フッ素の吸脱着や18),ローム質土壌へのフタル酸の吸脱着 を表現した事例がある17)。濃度域の違いだけでなく,土壌 表面が不均質である場合にはFreundlich 式が適用されやす いことが指摘されている11) d S K C= (1) f n S K C= (2) ここで S は液相から固相に取り込まれた汚染物質の量 (mg/kg),C は溶液中の汚染物質濃度(平衡濃度)(mg/L), Kf (mg/kg)/(mg/L)n,と n は Freundlich 型吸着モデルの係数で ある。KdとKfは汚染物質と土壌との親和性の指標であり, 値が大きいほど吸着能が高いことを示す。 2.3 非対称の破過曲線と取得される Kd値の差異 カラム吸着試験から得られる破過曲線は,非対称の形状 であった報告が多く,2.1 で示した様々な方法で Kdを取得 した例がある。Bouchard ら12)は,破過曲線の形状が対称に 近い場合には,面積法とC/C0 = 0.5 の点から R を算出する 方法では概ね同程度の Kdの値が得られるが,非対称の破 過曲線に対してC/C0 = 0.5 の点から R を算出する方法を適 用してKdを取得した場合は,面積法で求められたKdとは 値が30%程度異なることを報告した。同様の事例は Nkedi-Kizza ら11)によっても報告されている。カラム吸着試験の 破過曲線が非対称になる原因としては,カラム内の物質輸 送や吸脱着反応が非平衡になっていることの他に,吸着反 応の非線形性が挙げられる。実際に,Nkedi-Kizza ら13) 事例では,非対称のカラム破過曲線がFreundlich 型の吸着 を仮定した移流分散方程式の解析解とよく一致していた。 その他にもFreundlich 型の吸着モデルが適用された事例が 報告されている17) Freundlich 式以外に,破過曲線が非対称の形状となった 試験結果として,吸着材として酸化マグネシウム系材料を 用いてフッ素の収着を評価した例が報告されている19)。非 対称の形状となった理由として,移流分散方程式には考慮 されていない沈殿形成反応等の影響が指摘されている。

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とがある。カラム吸着試験は,土壌等に溶液を連続的に通 過させて,浸出液中に含まれる汚染物質濃度の経時変化か ら,材料の吸着性能を評価する試験方法である。 カラム吸着試験で得られる破過曲線からKdを取得する 方法は様々提案されているが10)11),その取得方法について 明確な整理や規定はなされていない。取得方法の違いがKd の値に及ぼす影響については,土壌を対象としたカラム吸 着試験によって評価された例がある。破過曲線の形状が対 称の形状をしている場合には得られるKdの値に差異が無 い一方,非対称の形状をしている場合には差異が生じるこ とが報告されている12)。 カラム吸着試験では非対称の破過曲線が得られること が多い。非対称の破過曲線の中では,Freundlich 型の移流 分散方程式の数値解に従うモデルが得られる事例が多く 報告されている11)13)。しかしながら既往の研究では,実験 で 得 ら れ た 特 定 の 破 過 曲 線 を 中 心 に 検 討 を し て お り 11)12)13),様々な破過曲線の形状に対して,得られるKdの値 の違いについて,パラメトリックに比較した事例はない。 また,取得される Kdの値は破過曲線の非対称の程度によ っても異なることが予想される。実際のカラム試験では調 査できる試験数や範囲が限られるため,数値実験を用いて パラメトリックに非対称の破過曲線を作成し,Kdの取得方 法の違いごとに得られるKdの値の大小関係を調べること で,各取得方法の特徴や適用範囲を明らかにすることがで きる。 先に述べたとおり,近年我が国では,自然由来重金属等 を含んだ土壌や掘削ずり等に対して,自然地盤や吸着層の 分配係数を考慮した物質移動モデルによるリスク評価が 土対法ガイドラインやマニュアル等に導入されているこ とを踏まえると,より現実に近い吸着性能評価が可能なカ ラム吸着試験の重要性は今後高まることが想定される 6) また,土対法では解析手法としてFreundlich 式ではなく, Kdを用いた簡易なHenry 式が使用されることを踏まえる と,カラム試験によって得られた破過曲線からKdを得る 方法の標準化や各取得方法で得られるKdの条件に応じた 特徴(大小関係)の把握は,リスク評価や物質移動予測の 安全性を担保するために極めて重要な情報となる。 本研究では,分配係数を得ることを目的としたカラム吸 着試験結果から非対称形状の破過曲線,特にFreundlich 型 の破過曲線が得られたことを想定し,1) 分配係数 Kdの取 得方法の違いが吸着性能評価結果に及ぼす影響,2) 得ら れた Kdの違いが吸着層での汚染物質の到達度の予測に与 える影響の評価を目的に,移流分散解析を行った。 2. 既往の研究 2.1 破過曲線から Kdを取得する方法 カラム吸着試験から得られる破過曲線を用いてKdを算 出する方法については複数の研究例がある。一つは,破過 曲線に移流分散方程式の解析解や数値解をフィッティン グする方法10)14)15)である。例えば五十嵐・下垣は,カラム 試験の結果に Kdを含む移流分散方程式の解析解をフィッ ティングして,Kdの値を取得している10)。また,破過曲線 の面積を積分する面積法12)13)16)17)も行われている。さらに 破過曲線を無次元化し,比濃度C/C0 = 0.5 の点から遅延係 数R を算出することで,Kdを求める方法も提案されてい る11)12)13) 2.2 Henry 型と Freundlich 型の吸着モデル式 吸着モデルには,式(1)のような線形吸着を仮定した Henry 式や,式(2)のような非線形吸着モデルの Freundlich 式等がある。Henry 式は,砂質土やローム質土壌へのホウ 素吸脱着を表現するために用いられた事例10)や,低濃度域 での吸脱着を表現するために適用されることがある。一方 でFreundlich 式は,黒ボク土や粘性土への鉛・カドミウム・ フッ素の吸脱着や18),ローム質土壌へのフタル酸の吸脱着 を表現した事例がある17)。濃度域の違いだけでなく,土壌 表面が不均質である場合にはFreundlich 式が適用されやす いことが指摘されている11) d S K C= (1) f n S K C= (2) ここで S は液相から固相に取り込まれた汚染物質の量 (mg/kg),C は溶液中の汚染物質濃度(平衡濃度)(mg/L), Kf (mg/kg)/(mg/L)n,と n は Freundlich 型吸着モデルの係数で ある。KdとKfは汚染物質と土壌との親和性の指標であり, 値が大きいほど吸着能が高いことを示す。 2.3 非対称の破過曲線と取得される Kd値の差異 カラム吸着試験から得られる破過曲線は,非対称の形状 であった報告が多く,2.1 で示した様々な方法で Kdを取得 した例がある。Bouchard ら12)は,破過曲線の形状が対称に 近い場合には,面積法とC/C0 = 0.5 の点から R を算出する 方法では概ね同程度の Kdの値が得られるが,非対称の破 過曲線に対してC/C0 = 0.5 の点から R を算出する方法を適 用してKdを取得した場合は,面積法で求められたKdとは 値が30%程度異なることを報告した。同様の事例は Nkedi-Kizza ら11)によっても報告されている。カラム吸着試験の 破過曲線が非対称になる原因としては,カラム内の物質輸 送や吸脱着反応が非平衡になっていることの他に,吸着反 応の非線形性が挙げられる。実際に,Nkedi-Kizza ら13) 事例では,非対称のカラム破過曲線がFreundlich 型の吸着 を仮定した移流分散方程式の解析解とよく一致していた。 その他にもFreundlich 型の吸着モデルが適用された事例が 報告されている17) Freundlich 式以外に,破過曲線が非対称の形状となった 試験結果として,吸着材として酸化マグネシウム系材料を 用いてフッ素の収着を評価した例が報告されている19)。非 対称の形状となった理由として,移流分散方程式には考慮 されていない沈殿形成反応等の影響が指摘されている。 3. 研究手法 3.1 研究方法の概要 本研究は図 2 に示す流れで実施した: (1) 移流分散解析によるカラム吸着試験結果の作成 Kf, n や C をパラメータとして,Freundlich 型の数値解 に従う破過曲線のプロットを作成する (2) 4 種類の方法による Kdの取得 a) 面積法 b) Henry 型の数値解をフィッティング c) C/C0 = 0.5 の点までフィッティング d) 破過曲線を無次元化し,C/C0 = 0.5 の点から推定 (3) (2)で取得した Kdを用いたリスク評価 層厚30 cm の吸着層を模擬し,移流分散解析を行うこ とで,汚染物質が吸着層の底部に到達するのに要する 時間を比較 3.2 数値解析方法 カラム吸着試験および吸着層における吸着反応を伴う 汚染物質の移動は,式(1)や式(2)に示す平衡吸着モデルと 移流分散方程式を用いて解析した。カラム吸着試験におけ る土壌間隙中の物質移動は,式(3)に示す一次元移流分散方 程式によって表される。式(3)中の遅延係数 R(-)には,線形 吸着を仮定する場合は式(4)を,非線形吸着を仮定する場合 は式(5)を使用した。 2 2 C C C R D v t x x= ∂ ∂ ∂ ∂ (3) d d 1 K R ρ θ = + (4) 1 d f 1 K nCn R= +ρ θ − (5) e D D= +λv (6) ここでt は時間(s),D は分散係数(cm2/s) ,x は深さ(cm) , v は間隙内流速(cm/s),θは体積含水率(-),ρdは土の乾燥密 度(g/cm3),De は分子拡散係数(cm2/s),λは分散長(cm)であ る。なお,式(6)は 式(3)中の分散係数 D が拡散項(式(6)の 第一項)と移流項(式(6)の第二項)によって表わせること を示している。本研究では,吸着層工法への使用が想定さ 図 2 本研究で実施した内容 れる砂質土地盤においては,拡散は移流に対して無視でき るほど小さいと考えD = λ |v|として扱った。 本研究では,物質移動に関する数値解析を行う際,以下 の式(7)に示す初期条件を,流入側の境界条件は式(8)に示 すフラックス一定境界を,流出側の境界条件は式(9)に示す 有限長の土に対して流出境界L (cm)での濃度勾配が 0 とな る条件を採用した20)21) ( ,0)x 0 C = (7) 0 C D vC vC x ∂ − + = ∂ (8) ( )L t, 0 C x ∂ = ∂ (9) ここでC0は流入する汚染物質の濃度(mg/L)である。 吸着層内の物質移動は,本来であれば三次元で解析すべ きであるが,本研究ではカラム吸着試験から取得された分 配係数の値の大小と,吸着層において汚染物質が吸着層底 部到達する時間の関係を簡潔に評価するため,カラム吸着 試験と同じく,より取り扱いやすい一次元の移流分散方程 式を用いて解析した。 本研究では吸着現象を含む物質移動解析について,一次 元の土中水分・熱・溶質移動予測プログラムHYDRUS-1D22) を用いて実施した。上述した順解析だけではなく,あるプ ロットに対し数値解をフィッティングすることでパラメ ータを推定できる機能も有しており,3.4 b), c)ではこの逆 解析機能を使用した。 3.3 パラメトリックに作成したカラム吸着試験データ 高さ10 cm,内径 5 cm の円筒カラムを用いたカラム吸 着試験を想定した。カラム試験には表 1 と表 2 に示すパ ラメータを設定した。吸着層材料には透水性を考慮して砂 質土が使用されることが考えられる。砂質土に対する分散 長は0.1~0.7 cm と報告されており5),本研究では0.5 cm と定めた。また,間隙率neは0.4(間隙比, e =0.67)と定め た。この値は,砂質土がISO 21268-3 のカラム試験手順に 従ってカラムに充填された場合に相当する23) 表 1 カラム試験に関する諸数値 パラメータ名 値 単位 d, カラム直径 5 cm h, カラム高さ 10 cm ρs, 土粒子密度 2.65 g/cm3 ρd, 乾燥密度 1.6 g/cm3 ne, 間隙率 0.40 - θs, 飽和体積含水率 0.40 - r, 通水速度 36 mL/h λ, 分散長 0.5 cm Ks, ダルシー流速(線速度) 44 cm/day 表 2 移流分散解析により破過曲線を作成する際のパラメータ パラメータ名 値 単位 Kf, Freundlich 型の係数 50, 100, 200 (mg/kg)/(mg/L)n n, Freundlich 型の係数 0.4, 0.6, 0.8, 1 - C, 汚染物質の平衡濃度 0.1, 1, 10 mg/L (2) 4種類の方法で分配係数を取得 a) 面積法 c) C/C0= 0.5の点までフィッティング d) C/C0= 0.5の点からRを推定 b) Henry型の数値解をフィッティング (3) リスク評価 (吸着層底部への汚染物質の 到達時間Tを推定) Freundlich式で 推定した際の TFと比較 T1年 T2年 T3年 T4年 Kd4 Kd3 Kd2 Kd1 (1) カラム吸着試験結果 (破過曲線をパラメトリックに作成) 各取得方法の特徴を踏まえた考察・推奨

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本研究では,破過曲線がFreundlich 型の数値解に従う場 合を想定しパラメトリック解析を行った。解析は,Kf = 100 (mg/kg)/(mg/L)nn = 1 を基本に,表 2 に示すケースにつ いて行った。対象汚染物質には,自然由来の重金属等のう ち報告件数の多いヒ素(As)を想定した。なお Kf = 100 (mg/kg)/(mg/L)nn = 1 の値は,3.5 で示す解析条件で, 層厚30 cm の吸着層底部における濃度 C が,100 年後に土 対法の指定基準値C = 0.01 mg/L 程度となるような条件で あることを事前に予備解析によって確認し,決定した。n の値については,龍原ら2),中村ら18)Mo ら24)が行った バッチ吸着試験の研究を参考に,取得される吸着モデルの 係数が取りうる値が概ね 0.4~1 の範囲であることから, n = 0.4, 0.6, 0.8, 1 として解析を行った。カラム試験におい て,汚染物質の流入濃度C0を変化させることで,破過の 起こる時間を早めて試験期間の短縮が図られる場合も考 えられるため,本研究では汚染物質の濃度C もパラメータ として取り扱った。カラム試験では,試験を行うにつれカ ラム端から採取される分画の平衡濃度C が,流入濃度 C0 に近づき,最終的にC = C0となることから,本研究ではカ ラム試験における流入濃度C0を平衡濃度C として取り扱 った。C の値は C = 1 mg/L を境に,n の値について吸着等 温線の大小が逆転するため,C = 0.1, 1, 10 mg/L とした。 カラム吸着試験では通常,採水は任意の液固比もしくは 時間間隔で行われ,破過曲線のデータ総数は試験毎に様々 である。本研究では,数値解析で得られた破過曲線から, 比濃度C/C0が0.01 から 1 に上昇する区間において等間隔 で抽出した20 点をカラム試験結果として扱い,3.4 以降でKdの算出に用いた。なお比濃度C/C0の評価は,カラム 上端,つまりx = 10 cm における値を表している。 3.4 カラム吸着試験から分配係数 Kdを取得する方法 3.3 の数値解析より得られた破過曲線から, 4 通りの方 法でKdを取得し,得られた値を比較した(図 3)。 a) 面積法により求めた分配係数(Kd1) 面積法はMaraqa ら13)Chotpantarat ら16)等で行われて おり,破過曲線で囲まれる部分の面積を求めて分配係数を 図 3 本研究で比較した4通りの分配係数取得方法 得る方法である。既往の研究では破過曲線と Y 軸,及び C/C0 = 1 で囲まれた部分の面積を求めて遅延係数 R を推定 し,式(4)から Kdを求めている。本研究ではこの方法を参 考にして,Kdの取得を行った。カラム吸着試験では,固相 に取り込まれた汚染物質の量S (mg/kg)は,図 3 に示すよ うに破過曲線とY 軸,及び C/C0 = 1 で囲まれた部分の面 積を求める方法で取得できる。破過曲線とY 軸,及び C/C0 = 1 で囲まれた部分の面積は,厳密には積分によって求め られるべきであるが,本研究では簡単のために移流分散解 析の順解析によって抽出された20 点について,式(10)のよ うに区分求積法によってS を算出した。

(

)

(

)

(

)

(

)

20 20 input 1 1 input 1 1 1 1 i i i i i i i i S C C V V C C r t t M − − M − − =

− − =

− − (10) ここで,S は吸着量(mg/kg),M はカラムに充填した吸着層 材料の質量(kg),Cii 番目に採水した分画の濃度(mg/L)i = 1~20,ただし Ci = 0 = 0),Cinputはカラムへの流入濃 度(mg/L),Vii 番目の採水した分画の体積(L)(ただし V i = 0 = 0, ti = 0 = 0),r は通水速度(L/h)である。区分求積を行 う際のi 番目の面積は,各破過曲線のプロット間の中点 ti を計算し,中点ti-1から次の中点tiまでの長さが幅となる ように計算した。また,カラム試験が間隙を水で飽和させ てから行われた場合には,1 間隙体積分だけ吸着量が大き く見積もられてしまうことから,破過曲線からS を求める 際にはtiから1 間隙体積分の時間(本研究では 2.2 h)を差 し引く補正を行う必要がある。 2.2 で述べたように Kdは S とその時の液相の濃度 C (mg/L)の線形関係を表す係数であり,分配係数は式(1)に示 したようにS を C で除して求めるとされている。ここで, カラム吸着試験では,試験終了時の濃度がC となる。そこ で本研究では,この方法により決定された分配係数をKd1 と定義し,他の方法で決定された分配係数と比較すること で,得られたKd1を用いた吸着層の性能評価は安全側の評 価となりうるか検討した。 b) Henry 型のフィッティングにより求めた分配係数(Kd2) 非線形吸着を仮定したFreundlich 型の破過曲線に対して, 線形吸着を仮定した Henry 型の数値解をフィッティング することで分配係数を求めた 25)。本研究では,Freundlich 型破過曲線の比濃度と,Henry 型の数値解の比濃度の残差 二乗和が最小になるようにフィッティングを行った。この 方法により得られた分配係数をKd2と定義した。なお,フ ィッティングには表 1 に示した諸数値と同じ値を使用し た。フィッティングの適合度を示す決定係数(R2)を,式 (11)のように算出した。R2の値が1 に近づくほど, Henry 型の数値解はFreundlich 型の破過曲線と適合したことを示 している。

(

)(

)

(

)

(

)

2 1 2 2 2 1 1 = = =  − −    = − −

n i i i n n i i i i x x y y R x x y y (11) ここでi は観測数,xi(-)は Freundlich 型破過曲線の比濃度, yi(-)は Henry 型の数値解をフィッティングすることによっ a) 面積法 b) フィッティング c) C/C0= 0.5までフィッティング d) C/C0= 0.5の点から推定 C/ C0 t C/ C0 t C/ C0 t C/ C0 PVF 1 1 1 1

(5)

本研究では,破過曲線がFreundlich 型の数値解に従う場 合を想定しパラメトリック解析を行った。解析は,Kf = 100 (mg/kg)/(mg/L)nn = 1 を基本に,表 2 に示すケースにつ いて行った。対象汚染物質には,自然由来の重金属等のう ち報告件数の多いヒ素(As)を想定した。なお Kf = 100 (mg/kg)/(mg/L)nn = 1 の値は,3.5 で示す解析条件で, 層厚30 cm の吸着層底部における濃度 C が,100 年後に土 対法の指定基準値C = 0.01 mg/L 程度となるような条件で あることを事前に予備解析によって確認し,決定した。n の値については,龍原ら2),中村ら18)Mo ら24)が行った バッチ吸着試験の研究を参考に,取得される吸着モデルの 係数が取りうる値が概ね 0.4~1 の範囲であることから, n = 0.4, 0.6, 0.8, 1 として解析を行った。カラム試験におい て,汚染物質の流入濃度C0を変化させることで,破過の 起こる時間を早めて試験期間の短縮が図られる場合も考 えられるため,本研究では汚染物質の濃度C もパラメータ として取り扱った。カラム試験では,試験を行うにつれカ ラム端から採取される分画の平衡濃度C が,流入濃度 C0 に近づき,最終的にC = C0となることから,本研究ではカ ラム試験における流入濃度C0を平衡濃度C として取り扱 った。C の値は C = 1 mg/L を境に,n の値について吸着等 温線の大小が逆転するため,C = 0.1, 1, 10 mg/L とした。 カラム吸着試験では通常,採水は任意の液固比もしくは 時間間隔で行われ,破過曲線のデータ総数は試験毎に様々 である。本研究では,数値解析で得られた破過曲線から, 比濃度C/C0が0.01 から 1 に上昇する区間において等間隔 で抽出した20 点をカラム試験結果として扱い,3.4 以降でKdの算出に用いた。なお比濃度C/C0の評価は,カラム 上端,つまりx = 10 cm における値を表している。 3.4 カラム吸着試験から分配係数 Kdを取得する方法 3.3 の数値解析より得られた破過曲線から, 4 通りの方 法でKdを取得し,得られた値を比較した(図 3)。 a) 面積法により求めた分配係数(Kd1) 面積法はMaraqa ら13)Chotpantarat ら16)等で行われて おり,破過曲線で囲まれる部分の面積を求めて分配係数を 図 3 本研究で比較した4通りの分配係数取得方法 得る方法である。既往の研究では破過曲線と Y 軸,及び C/C0 = 1 で囲まれた部分の面積を求めて遅延係数 R を推定 し,式(4)から Kdを求めている。本研究ではこの方法を参 考にして,Kdの取得を行った。カラム吸着試験では,固相 に取り込まれた汚染物質の量S (mg/kg)は,図 3 に示すよ うに破過曲線とY 軸,及び C/C0 = 1 で囲まれた部分の面 積を求める方法で取得できる。破過曲線とY 軸,及び C/C0 = 1 で囲まれた部分の面積は,厳密には積分によって求め られるべきであるが,本研究では簡単のために移流分散解 析の順解析によって抽出された20 点について,式(10)のよ うに区分求積法によってS を算出した。

(

)

(

)

(

)

(

)

20 20 input 1 1 input 1 1 1 1 i i i i i i i i S C C V V C C r t t M − − M − − =

− − =

− − (10) ここで,S は吸着量(mg/kg),M はカラムに充填した吸着層 材料の質量(kg),Cii 番目に採水した分画の濃度(mg/L)i = 1~20,ただし Ci = 0 = 0),Cinputはカラムへの流入濃 度(mg/L),Vii 番目の採水した分画の体積(L)(ただし V i = 0 = 0, ti = 0 = 0),r は通水速度(L/h)である。区分求積を行 う際のi 番目の面積は,各破過曲線のプロット間の中点 ti を計算し,中点ti-1から次の中点tiまでの長さが幅となる ように計算した。また,カラム試験が間隙を水で飽和させ てから行われた場合には,1 間隙体積分だけ吸着量が大き く見積もられてしまうことから,破過曲線からS を求める 際にはtiから1 間隙体積分の時間(本研究では 2.2 h)を差 し引く補正を行う必要がある。 2.2 で述べたように Kdは S とその時の液相の濃度 C (mg/L)の線形関係を表す係数であり,分配係数は式(1)に示 したようにS を C で除して求めるとされている。ここで, カラム吸着試験では,試験終了時の濃度がC となる。そこ で本研究では,この方法により決定された分配係数をKd1 と定義し,他の方法で決定された分配係数と比較すること で,得られたKd1を用いた吸着層の性能評価は安全側の評 価となりうるか検討した。 b) Henry 型のフィッティングにより求めた分配係数(Kd2) 非線形吸着を仮定したFreundlich 型の破過曲線に対して, 線形吸着を仮定した Henry 型の数値解をフィッティング することで分配係数を求めた 25)。本研究では,Freundlich 型破過曲線の比濃度と,Henry 型の数値解の比濃度の残差 二乗和が最小になるようにフィッティングを行った。この 方法により得られた分配係数をKd2と定義した。なお,フ ィッティングには表 1 に示した諸数値と同じ値を使用し た。フィッティングの適合度を示す決定係数(R2)を,式 (11)のように算出した。R2の値が1 に近づくほど, Henry 型の数値解はFreundlich 型の破過曲線と適合したことを示 している。

(

)(

)

(

)

(

)

2 1 2 2 2 1 1 = = =  − −    = − −

n i i i n n i i i i x x y y R x x y y (11) ここでi は観測数,xi(-)は Freundlich 型破過曲線の比濃度, yi(-)は Henry 型の数値解をフィッティングすることによっ a) 面積法 b) フィッティング c) C/C0= 0.5までフィッティング d) C/C0= 0.5の点から推定 C/ C0 t C/ C0 t C/ C0 t C/ C0 PVF 1 1 1 1 て得た比濃度,x_とy_はxi, yiそれぞれの相加平均である。 c) Henry 型のフィッティング(C/C0 = 0.5 まで)より求 めた分配係数(Kd3) 3.4 b)では破過曲線のプロットが C/C0 = 1 となる点まで 得られている場合を対象にフィッティングを行った。一方 で実務上,カラム吸着試験の試験期間が限られる場合,破 過曲線がC/C0 = 1 に至る前に試験を終了し,フィッティン グを行って分配係数を推定する可能性が考えられる。そこ で本研究では,3.4 b)と同様の操作を,C/C0 が0.5 より大 きな値となる点まで破過曲線のプロットを抽出し,逆解析 を行った。破過曲線のプロットは等間隔で14 点抽出し, Kd3の算出に用いた。Kd3の算出に際しても,フィッティン グの適合度を示すR2を算出した。 d) C/C0 = 0.5 の点を用いて推定した分配係数(Kd4) カラム吸着試験から得た破過曲線では,比濃度0.5 の時

Number of pore volumes of flow (PVF)が R に相当する(図 3)13)。式(4)より,R から分配係数を算出できる。本研究で はこの方法により決定された分配係数を Kd4と定義した。 PVF とは供試体中を通過した水の体積を供試体の間隙体 積で除した値であり,式(12)で表される。 v = rt PVF V (12) ここで,r (mL/h)はカラム吸着試験における溶液の通水速 度,t (h)は試験時間,Vv (cm3)は間隙体積である。例えば 1 PVF は,供試体の間隙と同じ量の水が供試体中を通過した ことを意味している。なお,C/C0 = 0.5 における PVF の値 は,C/C0 = 0.5 の前後 2 点を直線近似し,内挿して求めた。 この方法は簡便であり,カラム試験により得られた破過 曲線がC/C0 = 0.5 となる点まで到達していれば Kdを算出 できるため,試験期間を短縮できる利点がある。一方で Nkedi-Kizaa ら11)はこの方法を適用する場合,破過曲線の 形状は点対称である必要があることを指摘しており,非対 称の形状であるFreundlich 型の破過曲線についてこの方法 を適用した場合には,現実的ではないKdが取得される可 能性がある。 3.5 得られた分配係数を用いた吸着層における破過時 間T の比較 3.4 で取得された分配係数の差異が汚染物質の移行特性 評価に及ぼす影響を調べることを目的として,得られた4 つの分配係数Kd1~Kd4を用いて,図 4 に示す一次元吸着 層モデルについて順解析を行い,汚染物質が吸着層下端に 到達するのに要する時間を比較した。吸着層厚は施工事例 を踏まえて30 cm とした3)。なお,吸着層は地下水位より も高い位置で施工され,厳密には不飽和条件下での浸透流 や移流分散解析を行う必要があるが,飽和・不飽和条件が 影響を及ぼす間隙内流速や有効間隙率等の違いは,本研究 で着目する分配係数の取得方法に直接は影響しないこと が考えられるため,本研究では飽和条件下で解析を行った。 解析の条件を表 3 及び表 4 に示す。 溶出する自然由来重金属等の濃度が,概ね土対法の指定 基準値の数倍程度である例が報告されている26)。そこで汚 染物質,特に本研究で想定しているヒ素の流入濃度C は, 基準値の10 倍の C = 0.1 mg/L として解析を行った。なお, 中村ら27)Naka ら28)は,掘削土から溶出する自然由来重 金属等の挙動についてカラム試験を用いて評価している が,自然由来重金属等の溶出濃度は試験の液固比が大きく なるほど,つまり評価期間が長くなるほど溶出量は減少す る傾向が報告されている。自然由来重金属等の溶出特性を 鑑みると,C = 0.1 mg/L という一定濃度を与え続ける本研 究の解析条件は安全側の評価となる可能性が高いと言え る。降雨浸透量I は,年間降雨強度 1500 mm のうち,3 割 程度が吸着層を含む盛土に浸透することを想定し,I = 450 mm/year とした。 分配係数には,3.4 で各 Kf, n, C 毎に取得された Kd1~Kd4 の値を用いた。本研究では,吸着層底部での濃度が土対法 の指基準値であるC = 0.01 mg/L となった時間を破過時間 T (year)として定め,破過に至るまでの時間を比較した。n = 1 のケースでは,Kfの値がKdの値に概ね一致して差異は 生じないため,本節では検討しなかった。4 つの Kdについ て,Kd1を用いた解析が破過時間T1,Kd2がT2,Kd3がT3, Kd4がT4に相当するように解析を行い,算定された破過時 間の範囲を比較した。破過時間T を比較する際は,非線形 吸着を仮定した順解析(Kfとn を含む数値解)より得られ 図 4 一次元吸着層の数値解析モデル 表 3 吸着層のモデルに関する諸数値 パラメータ名 値 単位 H, 吸着層厚 30 cm C, 汚染物質の流入濃度 0.1 mg/L λ, 分散長 0.5 cm P, 降雨強度 1500 mm/year I, 浸透量 450 mm/year ρs, 土粒子密度 2.65 g/cm3 ρd, 乾燥密度 1.6 g/cm3 ne, 間隙率 0.40 - θs, 飽和体積含水率 0.40 - Ks, ダルシー流速(線速度) 0.123 cm/day 表 4 吸着層のモデルについて移流分散解析を行う際のパラメータ パラメータ名 値 単位 Kf, Freundlich 型の係数 50, 100, 200 (mg/kg)/(mg/L)n n, Freundlich 型の係数 0.4, 0.6, 0.8 - C0, 汚染物質の流入濃度 0.1 mg/L 吸着層厚 H = 30 cm 流入濃度 C0= 0.1 mg/L ρd= 1.6 g/cm3 ρ s= 2.65 g/cm3 I = 450 mm/year モデルにおける評価地点(x = 30 cm) x = 0 cm

(6)

5 4通りの方法で算出された分配係数 Kd1, Kd2, Kd3, Kd4 Case Kf n C mg/L Kd1 L/kg Kd2 L/kg R2 Kd3 L/kg R2 Kd4 L/kg 1 50 0.4 0.1 316 288 0.775 395 0.871 309 2 0.6 152 143 0.875 181 0.888 148 3 0.8 84.9 81.0 0.982 89.7 0.935 81.6 4 1.0 52.8 50.0 1.000 50.0 1.000 50.3 5 0.4 1 79.9 72.5 0.776 100 0.887 78.2 6 0.6 59.6 55.9 0.879 71.1 0.891 57.9 7 0.8 53.6 51.2 0.982 56.4 0.934 51.4 8 1.0 52.8 50.0 1.000 50.0 1.000 50.2 9 0.4 10 20.7 18.6 0.775 25.6 0.891 20.1 10 0.6 23.4 21.8 0.885 27.5 0.895 22.5 11 0.8 34.0 32.3 0.983 35.5 0.937 32.5 12 1.0 52.8 50.0 1.000 50.0 1.000 50.2 13 100 0.4 0.1 643 584 0.772 812 0.866 632 14 0.6 304 287 0.875 366 0.886 297 15 0.8 168 162 0.982 177 0.937 163 16 1.0 105 100 1.000 100 1.000 100 17 0.4 1 161 147 0.771 201 0.895 158 18 0.6 119 112 0.879 142 0.911 116 19 0.8 106 102 0.982 112 0.936 102 20 1.0 105 100 1.000 100 1.000 100 21 0.4 10 40.4 37.3 0.816 51.7 0.876 40.0 22 0.6 46.1 43.8 0.901 54.9 0.919 45.3 23 0.8 66.8 64.4 0.984 70.7 0.936 64.7 24 1.0 105 100 1.000 100 1.000 100 25 200 0.4 0.1 1303 1185 0.769 1651 0.877 1280 26 0.6 607 570 0.876 726 0.896 592 27 0.8 338 323 0.982 356 0.935 325 28 1.0 210 200 1.000 200 1.000 201 29 0.4 1 327 296 0.772 411 0.887 321 30 0.6 238 223 0.879 279 0.912 232 31 0.8 213 204 0.983 225 0.934 205 32 1.0 210 200 1.000 200 1.000 201 33 0.4 10 80.7 73.0 0.773 101 0.893 79.1 34 0.6 92.8 87.4 0.883 110 0.906 90.2 35 0.8 135 129 0.983 142 0.935 129 36 1.0 210 200 1.000 200 1.000 201 * Kfの単位は(mg/kg)/(mg/L)nである る破過時間を基準 TFとした。本研究では吸着層モデルに おいて,順解析を行った際のKfとn の組み合わせに従う 破過曲線が真値として考えられることになる。例えば, T2/TF < 1 となれば,フィッティングにより取得した分配係 数Kd2を用いた吸着層の性能評価は,安全側の評価になり えることを示している。 4. 解析結果 4.1 取得方法の違いが得られる Kdの値に与える影響 3.4 a)~d)の方法による分配係数の取得結果を表 5 に示 す。表 5 における Kd2とKd3はFreundlich 型の破過曲線に 対して線形吸着モデル(Henry 型の数値解)をフィッティ ングして得られた分配係数で,R2はそれらのフィッティン グの程度を表す決定係数である。 各 手 法 で 求 め ら れ た 分 配 係 数 に つ い て ,Kf = 100 (mg/kg)/(mg/L)nの時の,Kd1に対するKd2Kd3Kd4の比を 5 に示す。図 5 a)のように n = 0.4 の時には取得された Kd2やKd3,Kd4はKd1と比べて0.91~1.28 倍の範囲,図 5 b)のように n = 0.6 の時は 0.94~1.20 倍の範囲,図 5 c)の a) n = 0.4の条件における分配係数の比 b) n = 0.6の条件における分配係数の比 c) n = 0.8の条件における分配係数の比 d) n = 1の条件における分配係数の比 図 5 Kf = 100 (mg/kg)/(mg/L)nの時に取得された分配係数の比 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 C = 0.1 mg/L C = 1 mg/L C = 10 mg/L 取得された分配係数、及び濃度C (mg/L) K d1 との 比 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 C = 0.1 mg/L C = 1 mg/L C = 10 mg/L 取得された分配係数、及び濃度C (mg/L) K d1 との 比 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 C = 0.1 mg/L C = 1 mg/L C = 10 mg/L 取得された分配係数、及び濃度C (mg/L) K d1 との 比 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 C = 0.1 mg/L C = 1 mg/L C = 10 mg/L 取得された分配係数、及び濃度C (mg/L) K d1 との 比 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4

(7)

5 4通りの方法で算出された分配係数 Kd1, Kd2, Kd3, Kd4 Case Kf n C mg/L Kd1 L/kg Kd2 L/kg R2 Kd3 L/kg R2 Kd4 L/kg 1 50 0.4 0.1 316 288 0.775 395 0.871 309 2 0.6 152 143 0.875 181 0.888 148 3 0.8 84.9 81.0 0.982 89.7 0.935 81.6 4 1.0 52.8 50.0 1.000 50.0 1.000 50.3 5 0.4 1 79.9 72.5 0.776 100 0.887 78.2 6 0.6 59.6 55.9 0.879 71.1 0.891 57.9 7 0.8 53.6 51.2 0.982 56.4 0.934 51.4 8 1.0 52.8 50.0 1.000 50.0 1.000 50.2 9 0.4 10 20.7 18.6 0.775 25.6 0.891 20.1 10 0.6 23.4 21.8 0.885 27.5 0.895 22.5 11 0.8 34.0 32.3 0.983 35.5 0.937 32.5 12 1.0 52.8 50.0 1.000 50.0 1.000 50.2 13 100 0.4 0.1 643 584 0.772 812 0.866 632 14 0.6 304 287 0.875 366 0.886 297 15 0.8 168 162 0.982 177 0.937 163 16 1.0 105 100 1.000 100 1.000 100 17 0.4 1 161 147 0.771 201 0.895 158 18 0.6 119 112 0.879 142 0.911 116 19 0.8 106 102 0.982 112 0.936 102 20 1.0 105 100 1.000 100 1.000 100 21 0.4 10 40.4 37.3 0.816 51.7 0.876 40.0 22 0.6 46.1 43.8 0.901 54.9 0.919 45.3 23 0.8 66.8 64.4 0.984 70.7 0.936 64.7 24 1.0 105 100 1.000 100 1.000 100 25 200 0.4 0.1 1303 1185 0.769 1651 0.877 1280 26 0.6 607 570 0.876 726 0.896 592 27 0.8 338 323 0.982 356 0.935 325 28 1.0 210 200 1.000 200 1.000 201 29 0.4 1 327 296 0.772 411 0.887 321 30 0.6 238 223 0.879 279 0.912 232 31 0.8 213 204 0.983 225 0.934 205 32 1.0 210 200 1.000 200 1.000 201 33 0.4 10 80.7 73.0 0.773 101 0.893 79.1 34 0.6 92.8 87.4 0.883 110 0.906 90.2 35 0.8 135 129 0.983 142 0.935 129 36 1.0 210 200 1.000 200 1.000 201 * Kfの単位は(mg/kg)/(mg/L)nである る破過時間を基準 TFとした。本研究では吸着層モデルに おいて,順解析を行った際のKfとn の組み合わせに従う 破過曲線が真値として考えられることになる。例えば, T2/TF < 1 となれば,フィッティングにより取得した分配係 数Kd2を用いた吸着層の性能評価は,安全側の評価になり えることを示している。 4. 解析結果 4.1 取得方法の違いが得られる Kdの値に与える影響 3.4 a)~d)の方法による分配係数の取得結果を表 5 に示 す。表 5 における Kd2とKd3はFreundlich 型の破過曲線に 対して線形吸着モデル(Henry 型の数値解)をフィッティ ングして得られた分配係数で,R2はそれらのフィッティン グの程度を表す決定係数である。 各 手 法 で 求 め ら れ た 分 配 係 数 に つ い て ,Kf = 100 (mg/kg)/(mg/L)nの時の,Kd1に対するKd2Kd3Kd4の比を 5 に示す。図 5 a)のように n = 0.4 の時には取得された Kd2やKd3,Kd4はKd1と比べて0.91~1.28 倍の範囲,図 5 b)のように n = 0.6 の時は 0.94~1.20 倍の範囲,図 5 c)の a) n = 0.4の条件における分配係数の比 b) n = 0.6の条件における分配係数の比 c) n = 0.8の条件における分配係数の比 d) n = 1の条件における分配係数の比 図 5 Kf = 100 (mg/kg)/(mg/L)nの時に取得された分配係数の比 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 C = 0.1 mg/L C = 1 mg/L C = 10 mg/L 取得された分配係数、及び濃度C (mg/L) K d1 との 比 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 C = 0.1 mg/L C = 1 mg/L C = 10 mg/L 取得された分配係数、及び濃度C (mg/L) K d1 との 比 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 C = 0.1 mg/L C = 1 mg/L C = 10 mg/L 取得された分配係数、及び濃度C (mg/L) K d1 との 比 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 C = 0.1 mg/L C = 1 mg/L C = 10 mg/L 取得された分配係数、及び濃度C (mg/L) K d1 との 比 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 Kd2 Kd3 Kd4 ように,n = 0.8 の時は 0.96~1.06 倍の範囲の値であった。 Bouchard ら 12)は有機化合物を溶質としてカラム吸着試験 から3 種類の破過曲線を得ており,得られた R2が0.99 程 度と線形吸着モデルと同等の破過曲線の場合には,Kd4/Kd1 の値が1.06~1.10 程度の値になったと報告している。一方 で,R2が0.70 程度と線形吸着モデルとは異なる場合には Kd4/Kd1の値が0.69 となり,Kd4はKd1と比べて30%程度小 さな値が取得されることも報告している。n の値が大きく なり,非線形性が大きくなるほどKd1とKd4の差異が大き くなる傾向は,表 5 のように本研究からも見て取れた。 図 5 d)に示すように,n =1 の時には取得された分配係数Kd1のみ大きく,他の手法で取得したKdは等しく0.95 倍小さい結果となった。Henry 型となる n = 1 の時であっ ても,手法間の数値が一致しない結果となった理由は,分 散によって数値解には非対称性が生じるためと考えられ る。これは先行研究の結果と矛盾しない結果である12) 本研究で検討したパラメータの範囲内では,n = 0.4, 0.6, 0.8 の時はフィッティングによって取得された Kd2が,他 の手法で取得されたKdと比べ最小の値となり得ることが わかった。一方でKd3はKd1と比べて大きな値となり,比 濃度が0 から 0.5 となる点まで用いてフィッティングを行 う場合,危険側の評価となりうる可能性が示唆された。ま たn = 1 の場合を除いて Kd3 > Kd4となることが判明した。 4.2 破過曲線の形状(Kfやn)が Kd取得に及ぼす影響 カラム吸着試験で得られる破過曲線の形状(Freundlich 型の係数であるKfやn)が,4 手法で得られる分配係数に 与える影響を比較する。分配係数の比は,Kf = 50, 100, 200 (mg/kg)/(mg/L)nについて,いずれもn = 0.4 の時に 0.90~ 1.28 倍の範囲,n = 0.6 の時は 0.93~1.20 倍の範囲,n = 0.8 の時は0.95~1.06 倍の範囲の値が取得され,Kfの違いには 依拠しないことが確認された(表 5)。 Kfの大小によっては,取得される分配係数の比に影響が なかった一方で,図 5 に示すように n の値が小さくなれ ばなるほど,取得されるKdの差異は大きくなり,差異は 主にn の値に依拠することが明らかになった。これは,n の値が1 であれば算出される分配係数は概ね一致するが, n の値が 1 から 0.8, 0.6, 0.4 と順に小さくなることで,カラ ム試験から得られる破過曲線の形状がKdを含むHenry 型 の移流分散方程式の数値解の形状から徐々に異なってい くことが原因と考えられる。これはBouchard らが Kd1と Kd4を比較し報告した傾向と同様であり12),フィッティン グにより取得したKd2とKd3についても同様に,n の値が 小さくなるほど両者の差異は大きくなることが確認され た(図 5)。 4.3 汚染物質の平衡濃度(C)が Kd算定に及ぼす影響 カラム吸着試験から Kdを取得する際,試験期間の制約 により,汚染物質の流入濃度 C0の値を大きくすることで 破過の起こる時間を早め,試験期間の短縮を図る場合が考 えられるため,C と得られる Kdの傾向について整理する。 表 5 の Case13~16 に着目する。同一の Kd取得方法,及 び同一のKfやn について,C の値が 0.1 mg/L と比較的小 さい場合には,n の値が小さい時ほど大きな分配係数が取 得された。一方で表 5 の Case21~24 に着目すると,C の 値が10 mg/L の場合には,n の値が小さい時ほど小さな Kd が取得された。例えばKf = 100 (mg/kg)/(mg/L)n, n = 0.4 の 場合,C = 0.1 mg/L の時には Kd2 = 584 L/kg が取得された 一方で,C = 10 mg/L の時には Kd2 = 37.3 L/kg が取得され, Kdの値が16 倍程度異なる結果が得られた。Freundlich 型 の吸着モデルでは,C の値が大きくなるほど取得される Kd の値が小さくなる傾向が見られるため,得られる Kdの大 きさは流入濃度に依存する。一方,Kdの取得手法に関わら ず,流入濃度を大きくすることで得られる分配係数の値は 小さくなることから,本研究で検討したFreundlich 型の係 数に従う破過曲線では,吸着試験を行う際の流入濃度が大 きくなるにつれて,安全側の評価を与えるKdが取得され ると言える。 4.4 取得した分配係数 Kdを用いた吸着層の性能評価 取得されたKdの値が,各n の値に対して,図 5 に示し た値の範囲で異なる場合について,汚染物質が吸着層底部 に到達する時間の違いを比較した。3.5 に示した一次元吸 着層のモデルに対し,表 5 に列挙した Kd1~Kd4を用いて 移流分散解析を行った。表 5 に示したように 4.1 で取得さ れた分配係数は常にKd2が最小でKd3が最大であり,Kd2及 びKd3を用いて算定した破過時間はT2が常に最小で,T3が 常に最大となった。 破過時間の具体的な値に関して,Kf = 50 (mg/kg)/(mg/L)n かつn = 0.4 の時には,Freundlich 型の数値解を用いて算定 した破過時間TFが314 年で,T2とT3はそれぞれ245, 336 年となった。また,Kf = 50 (mg/kg)/(mg/L)nかつn = 0.6 の 時には,TF, T2, T3はそれぞれ140, 122, 154 年となった。こ こで,Kfの値が2 倍の Kf = 100 (mg/kg)/(mg/L)nかつn = 0.6 となると,TF, T2, T3はそれぞれ283, 244, 311 年となり,破 過時間T の値は Kfの値に概ね比例し,Kfが大きくなると T の値も大きくなった。なお,今回実施した解析ケースの うち,最小のT が得られたケースは Kf = 50 (mg/kg)/(mg/L)n かつn の値が 0.8 の時で,TF, T2, T3はそれぞれ78.8, 69.2, 76.5 年であった。 Mo ら24)によると,炭酸カルシウムと酸化マグネシウム の複合材料である吸着材を,マサ土に乾燥質量比5%添加 してヒ素に対するバッチ吸着試験を実施したところ,Kfの 値は430 (mg/kg)/(mg/L)nn は 0.6 程度となった。本研究で 考慮した Kfの範囲は,吸着材に対する吸着試験で得られ る値の範囲よりも小さく,吸着材を添加した吸着層ではKf の値はさらに大きい可能性が高い。吸着材を用いたカラム 吸着試験の知見は不足しているものの,一次元移流分散解 析を行った場合,T1~T4はおおよそ500~1000 年程度の値 が算定されることが推察される。

(8)

a) n = 0.4の条件における破過時間 T の比 b) n = 0.6の条件における破過時間 T の比 c) n = 0.8の条件における破過時間 T の比 6 破過時間の比 T1/TF, T2/TF, T3/TF, T4/TFを計算した結果 汚染物質が吸着層底部に到達する時間の違いを,図 6 に 示すように比較した。図 6 には,各 Case につき TF/ TF, T2/TF, T3/TFを計算した結果が示す。図 6 a) b)には Freundlich 型 の係数n が 0.4, 0.6 である場合の結果を示す。4 通りの方 法で算定されたKdを用いて破過時間T を推定すると,n = 0.4 の場合には TFに対して0.78~1.2 倍の範囲で,n = 0.6 の場合にはTFに対して0.85~1.1 倍の範囲で T が推定され た。この時Kfの値に関わらずT2/TF < 1, T3/TF > 1 となり, 今回想定した解析条件のもとでは,破過曲線の全てのプロ ットに対しHenry 型の数値解をフィッティングして Kd2を 取得する方法が最も安全側の評価になる可能性が示され た。一方で,比濃度が0.5 までのプロットしか得られずフ ィッティングを行った場合は危険側の評価になる可能性 が示された。また,図 6 c)に示すように,n = 0.8 の場合にTFに対して0.88~0.97 倍の範囲の T が推定された。n = 0.8 の場合には,常に T2/TF, T3/TF < 1 という結果が得られ た。n = 0.8 の場合は,破過曲線に対していずれの手法を用 いても安全側の評価となることがわかった。 5. 考察 5.1 取得方法が Kdに与える影響 本研究で検討したパラメータの範囲では,Freundlich 型 の破過曲線から4 通りの方法で Kdを取得した場合,0.91 ~1.27 倍の範囲で Kdが得られ,差異は40%以内であった (図 5)。最も小さな Kdを取得する方法はフィッティング によって求められる Kd2であり,カラム吸着試験から Freundlich 型の数値解に適合する破過曲線が得られた場合 には,Henry 型の数値解をフィッティングして算出した Kd2 を吸着層の評価に用いることが望ましい。 一方で,破過曲線が比濃度0.5 の点までのみ得られてい る場合には,Kd3がKd1やKd4と比べて30%程度大きな値が 得られたように,フィッティングによりKd3を算出すると 大きな値の分配係数が取得されるため,危険側の評価にな りえる。この場合には,比濃度0.5 の点から遅延係数を取 得するKd4を吸着層の評価に使用することが簡便であり望 ましいと言える。面積法では計算の取り扱いに影響を受け る可能性もあるが,面積法で求めたKd1と破過曲線の比濃 度0.5 の点から遅延係数を求めた Kd4は,10%以内の差異 にとどまっており,Kd1と Kd4についてはどちらの方法を 用いても大きな差異は生じないことが推察される。 5.2 Kd値の取得方法が破過時間T に与える影響 カラム吸着試験から得られた破過曲線がFreundlich 型の 数値解に適合し,n の値が 0.4, 0.6 の場合には,Kd2用いて 評価すると安全側となった一方で,Kd3用いた評価は危険 側となった。よって,n の値が 0.6 よりも小さい場合には カラム吸着試験を比濃度が1 になるまで実施し,フィッテ ィングによってKdを取得しなければならない。一方で,n の値が0.8 以上の場合には,カラム吸着試験を比濃度 0.5 の点で終了し,Kd4を取得すれば安全側の評価になりえる ことが推察される。n の値が 0.8 以上の場合については, 試験の実施状況に応じてKdの取得方法を選ぶ余地が大き いと言える。 今回の解析条件において,n の値が 0.4, 0.6 である場合0.8 である場合とで T2/TF, T3/TFと1 との大小関係が異な る結果が得られた理由としては,Freundlich 型の係数を含 む移流分散方程式の数値解と,Henry 型の係数を含む移流 分散方程式の数値解の形状の違いにあると考えられる。 Henry 型のモデルは点対称の形状である一方で,Freundlich 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 n = 0.4の時の破過時間T T1 T2 T3 T4 T1 T2 T3 T4 T1 T2 T3 T4 TF との 比 Kf = 50 Kf = 100 Kf = 200 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 n = 0.6の時の破過時間T T1 T2 T3 T4 T1 T2 T3 T4 T1 T2 T3 T4 TF との 比 Kf = 50 Kf = 100 Kf = 200 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 n = 0.8の時の破過時間T T1 T2 T3 T4 T1 T2 T3 T4 T1 T2 T3 T4 TF との 比 Kf = 50 Kf = 100 Kf = 200

表  5 4 通りの方法で算出された分配係数 K d1 , K d2 , K d3 , K d4 Case  K f n  C  mg/L  K d1  L/kg  K d2  L/kg  R 2  K d3  L/kg  R 2 K d4  L/kg  1  50  0.4  0.1  316  288  0.775  395  0.871  309 2 0.6 152 143 0.875 181 0.888 148 3 0.8 84.9 81.0 0.982 89.7 0.935  81.6 4 1.0

参照

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