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COVID-19 蔓延前後の母子留学で考えたこと
持丸華子
夫婦それぞれが仕事を持ってキャリアを積むこと が珍しくない昨今,女性でも男性でも単身子連れ留 学を考える機会はあると思う。海外留学を諦める理 由を子供のせいにすることなく,親子でチャレンジ するチャンスとなることを願って,一つの個人的な 考え方を示してみたい。私は現在,海洋の未培養 細菌の分離培養に力を入れているハワイ大学ハワ イ海洋生物研究所(HIMB)の Rappé 教授の研究室 に2020 年 1 月中旬(息子 6 歳)から滞在している。 COVID-19 が蔓延していても,私は母子留学をして 大変良かったと思っている。それは,以下の点につ いて念入りに考えたからだと思うので,その内容に ついて紹介したい。 1)いつ留学するか 子供が4 歳までは手がかかって留学どころではな かった。渡航時期としては,親に何かがあったとき に子供が電話で助けを呼べて,金銭的にも負担が少 ないキンダー以降が理想的だと考えた。おそらく同 じような理由からだと想像するが,2014 年に実施 された微生物生態学会・土壌微生物学会・環境バイ オテクノロジー学会を対象にした「国際的な研究 キャリアパスの実態と意識調査」のアンケートで は,女性の留学希望者数は40 代が最も多い。しかし, 40 代の留学経験者は無く,20 代が最多であった(学 会HP 参照)。渡航費の多くが若手育成用であるこ とが,女性の海外留学を阻んでいると考えられる。 学生で留学しない限り,学位を取り,ポストを確保 し,子供を海外に連れていかれるくらいまで育てる と,あっという間に若手ではなくなってしまう。私 は研究所予算では年齢制限を超えていたが,説得し てなんとか許可を得た。科研費もギリギリセーフで あった。女性のキャリア育成のためには,留学費用 の年齢制限を外すことが必須である。この認識を是 非多くの人に持ってもらいたい。 2)住居選びは子供の学校を決めてから 経験しないと思いもよらないことだが,子供が保 育園や一時保育,学校に行きたがらないと仕事どこ ろではない。保育園で大変苦労した経験から,小学 校は慎重に選んだ。教授からのオススメ学校情報は 学校の成績ランキングとほぼ同じであった。知人か ら事前情報が得られなくても,学校の成績ランキン グと生活のしやすさのバランスの取れるところを選 ぶのは一つの策と言える。ランキングの高い学校は 良い住宅街とニアリーイコールにあるようであった。 ショッピングモールに近く,賃料も比較的安く様々 な人が居住していて人数の多い小学校は成績ランキ ングが低く,小学校のホームページを見ると人間不 信になりそうなほど厳しい校則だった。散々迷った 結果,住居費は完全に予算オーバとなったが,教授 のお子さんも通っている少人数の小学校に決め,そ の学区内で住居を探すことにした。後から思うと安 全面でも,良い住宅街を選んでおいて良かった。 3)借りる部屋を選ぶ ハワイでは不動産会社が仲介することは少なく, 大家さんがcraigslist というサイトに物件情報を乗 せて,借りたい人はそれを見て大家さんと直接連絡 を取ることがほとんどであった。一軒家が貸し出さ れていることもあれば,大家さんの母屋の一部がア パートになっている場合もある。その場合,洗濯機, 乾燥機については大家さんと共用の物件が大半であ る。私は自分専用の洗濯機,乾燥機があり,家具付 きで水道光熱通信費込みのワンルームを選んだので, 入居したその日から生活を開始できた。水道・ガス・ 電気・インターネットの契約の時にはソーシャルセ キュリティナンバー(SSN)という,アメリカ版マ イナンバーが必要なので,部屋選びを工夫すると時 間と手間を節約できる。それと,アパートの水漏れ などのトラブルが起きたときにすぐに対処してくれ そうな細やかな大家さんであるかということも重要 である。実際に色々なものが壊れて,頻繁に大家さ んと連絡を取っている。26 4)家事の工夫 仕事も家事も子育てもすべて一人で行うと,とに かく時間がない。そこで買い物と料理をする頻度を できるだけ少なくする工夫をした。週に一回買い物 をし,具沢山カレーと具沢山ミートソースをそれぞ れ5–6 食分まとめて作って冷凍した。ひき肉にみじ ん切りした様々な種類の野菜等(ニンニク,ニンジ ン,タマネギ,ズッキーニ,パプリカ,ナス,ごぼ う,インゲン,サツマイモ,キノコ)を入れ,味付 けはカレーのルーかマリナラソースである。いつで もレンジでチンしてチーズをかけて,10 分で体に 染み渡る食事ができるという安心感は,あらゆるス トレスを緩和した。 おわりに: 世界的にCOVID-19 による生活の変化で失業者の 数が増えており,治安も確実に悪くなっている。今 の家に40 年住んでいるという大家さんは,私が入 居した1 月には,この地域は大変安全で,今まで家 に鍵をかけたことがないと言っていた。しかし,先 日のアメリカ大統領選挙以降,防犯カメラをつけ, 出入り口には厳重に鍵をかけるようになり,裏庭で 射撃の練習をするようになった。最近はハワイ大学 に入った強盗・強盗未遂事件のアラートメールも頻 繁に届くようになった。子連れであればなおさらだ が,そうでなくても治安には十分注意すべき状況に なっているということは強調しておきたい。 (執筆者自己紹介) 持丸華子:産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 主任研究員。油田ガス田における嫌気微生物によるメタ ン生成機構の解明を行っている。メタン生成アーキアを 中心として,嫌気性の新規微生物分離同定も行っている。 留学事前準備の記事(GSJ 地質ニュース Vol. 8 No. 7(2019 年7 月))と COVID-19 によるロックダウン中の生活の様 子と研究内容の記事(Green News 71 号)も有り。