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ソーラー式長いもプランター

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Academic year: 2021

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1.は じ め に 十勝産業振興センターは,知の地域づくり推進事業(北 海道立総合研究機構)において,これまで流通していた ソーラー式長いもプランターの動力性能の向上と放射電 磁ノイズの低減により良好な作業環境を実現した高性能 新型機種を,フクザワ・オーダー農機(北海道河西郡芽 室町)と共同開発した。 2.開発の背景と経緯 北海道十勝地方では 1965 年頃から長いもの生産が開 始され,種子供給体制の整備や土地改良,輪作体系への 組込みによる安定生産体制の確立,長いもプランターや 畝切りトレンチャーなどを軸とした機械化作業体系の構 築,地域団体商標の登録によるブランド化,台湾や北米 等への輸出など販売活動の促進により,年間約 2 万トン が生産されるまでに至っている。 機械化作業体系の一翼を担う長いもプランター(エン ジン式)が開発され,1970 年代より普及が進み,2000 年 頃までに約 800 台が十勝の農業生産者に導入された。し かし,農業生産現場の作業環境が改善されるに伴い,動 力源のエンジンから発生する排気ガスや騒音が播種作業 者の負担となり,改善の要望が多く寄せられるように なった。この要望に応えるべく動力源を電動化したソー ラー式長いもプランターが開発され,2008 年に初期モデ ルが商品化された。このモデルは作業環境の改善の点に おいて農業生産者から高い評価を受け,また太陽電池パ ネルを搭載したことから 2009 年には北海道の「省エネ ルギー・新エネルギー促進大賞」を受賞するなど市場の 反響は大きなものであったが,同時に動力性能の向上や 放射電磁ノイズの低減など,作業性や快適性改善のため の更なる要望が寄せられるようにもなった。そこで,初 期モデルにおける課題を解決し,製品の完成度を高めた, 高性能新型機種の開発に取り組んだものである。 3.開発機の概要 開発機の外観を図 1 に,システム構成を図 2 に示す。 開発機は 800 W の電動モータを動力源とし,太陽電池パ ネルで発電した電力を使用して走行する乗用型の播種機 である。予め畝切りトレンチャー等の農作業機により深 掘りされた圃場に種いもを播種するため使用する。機体 には多くの場合 2∼4 名の人員が搭乗し,種いもを手作 業で播種する。機体後部には培土器(図 3)を装備して おり,播種から培土までの作業を一度に行う事ができる。 農業機械学会誌 75(6):358∼360,2013 358( 24 )

田村知久

(たむら ともひさ) 1967 年 2 月生 1989 年三菱自動車工業(株)入社,乗用 車技術センター,オムロン(株)車載電 装事業部を経て, 現在,(公財)とかち財団 十勝産業振興 センター研究主任 農業食料工学会正会員 E-mail:[email protected]

Solar Powered Yam Planting Machine

ソーラー式長いもプランター

図 1 ソーラー式長いもプランター

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播種作業時の走行速度は 10∼25 m/min 程度である。晴 天日(昼間)には太陽電池パネルにより発電された電力 がバッテリーに蓄電され,また走行用モータに直接供給 される。曇天時や朝夕夜など太陽電池パネルによる発電 が不足する状況下では,バッテリーからもモータに電力 供給しながら走行する。 開発機は,動力性能の向上と放射電磁ノイズの低減を, コスト増加を伴わずに実現する事を目標として開発した ものである。開発機の特徴は次のとおりである。また, 開発機の主要諸元は表 1 に示す。 1)太陽光エネルギーのみで連続稼働が可能 開発機の晴天日(6 月)における 1 日あたりの発電可 能電力量は約 4.8 kWh である(太陽電池パネル水平設置 状態での屋外実機試験結果より)。一方,標準的な使わ れ方の生産者が播種作業に要する 1 日あたりの電力量は 1.5∼3 kWh 程度であり,晴天日であれば無充電で連続稼 働が可能である。バッテリー容量の公称値が 4.8 kWh で あることから悪天候時にも 1 日間無充電で連続稼働する 事が可能である。悪天候日が連続する場合には,夜間充 電など電力補充を行う事により,生産に支障を生じない 運用が可能である。 2)良好な作業環境を実現 長いもの播種作業は女性が担う場合が多く,近年では 排気ガスの発生やエンジン由来の騒音などの悪い作業環 境は敬遠される傾向にある。開発機は電動農業機械であ り,静かで排気ガス発生の無い良好な作業環境を実現し た点について生産者から特に高い評価を得ている。ま た,開発機は種いもコンテナ積み下ろし時の作業性向上 のため,太陽電池パネル支持用の後方支柱を従来の機体 中央部から機体側端部に変更し,十分な作業空間を確保 している。 3)ラジオも聴ける低騒音,低ノイズ環境を実現 電動化により静かな作業環境が実現された事から,ラ ジオ放送を聴きながら播種作業を行うという新たなニー ズが生じた。初期モデルでは,特定の周波数のラジオ放 送(AM 帯)にモータドライバ由来のラジオノイズが混 入する現象についてユーザーから指摘を受けていたた め,開発機についてはこの対策も実施した。 4.開発機の性能 十勝地方の複数の長いも生産者に開発機を供して,使 われ方の異なる播種作業における消費電力等を測定し, また生産者の官能的な評価を収集し,実用性を評価した。 動力性能の観点においては,走行用モータの定格出力 を従来比 1.6 倍まで高める事により,勾配の大きな圃場 や積載量が大きな播種作業においても,初期モデルのよ うな動力性能の不足は無いとの評価を得た(官能評価)。 また,走行時のモータ消費電力データからも,動力性能 に不足のない事が確認された。 充放電バランスの観点においては,表 2 に消費電力測 定結果の概要を示したが,生産者毎の作業条件の違いに より消費電力量に大きな差を生じている事が確認でき る。勾配が大きく初期モデルの導入を控えていた圃場 (生産者 C)や,搭乗人数や種いもの積載量が多く高負荷 が想定される生産者(生産者 B)などについては当初想 定通り大きな消費電力量が測定されたが,消費電力と発 電(蓄電)可能電力量がほぼ同程度であり,概ね充放電 バランスが取れているものと判断される。また,今回の 評価試験実施時には AM ラジオを搭載し,ラジオノイ ズの発生状況についても確認を行ったが,聴感上問題と なるようなノイズの発生は確認されなかった。 以上,動力性能の向上と放射電磁ノイズの低減という テクノトピックス:ソーラー式長いもプランター 359( 25 ) 表 1 開発機の主要諸元 表 2 消費電力測定結果の概要 図 3 機体後部の培土器

(3)

開発目的が達成され,動力性能の向上に伴う消費電力増 にも対応できている事が確認された。 5.お わ り に 開発機は 2012 年 12 月より受注を開始し,2013 年の播 種作業時期(5 月頃)までに 12 台を販売・納入している。 メーカーによると,これは前年比 3 割増の台数との事で ある。以降も 2014 年の播種作業時期に向けた受注が続 いている。 消費電力よりも発電能力(あるいは蓄電能力)が大き い場合,実用性に問題がないと考えられることから,開 発機は電力消費が大きな部類に属すると想定される生産 者への普及も見込まれる。 本機の開発にあたっては,北海道立総合研究機構工業 試験場に技術協力を頂いた。ここに記し,感謝の意を表 する。 農 業 機 械 学 会 誌 第 75 巻 第 6 号(2013) 360( 26 )

図 1 ソーラー式長いもプランター

参照

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