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炭酸ガスレーザー超音速延伸法で作製したポリフェニレンサルファイドナノファイバーの高次構造解析に関する研究 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 小山 博之 博士の専攻分野の名称 博士(工学) 学 位 記 番 号 医工博第382号 学 位 授 与 年 月 日 平成28年9月27日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 機能材料システム工学専攻 学 位 論 文 題 目 炭酸ガスレーザー超音速延伸法で作製したポリフェニレンサル ファイドナノファイバーの高次構造解析に関する研究 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 鈴 木 章 泰 教 授 川 久 保 進 教 授 和 田 智 志 教 授 奥 崎 秀 典 教 授 柴 田 正 実 准教授 山 中 淳 二

学位論文内容の要旨

ポリフェニレンサルファイド(以下、PPS)は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気特性に 優れたスーパーエンジニアリングプラスチックであり、自動動車部品や電子部品など、様々 な工業分野の樹脂材料として使用されている。また、繊維材料としては、電池セパレータ ーやモーター結束糸など耐熱性や耐薬品性および電気特性を活かした電気絶縁材料用途へ の展開が期待されている。しかし、PPS は耐熱性が高く、溶融時の粘度が低いことから、 ナノファイバーの作製には、瞬時の溶融延伸・固化を必要とする。このため、従来法では 連続的にナノファイバーを作製することは困難であった。 そこで、本研究では、PPS のナノファイバー作製のための課題を解決すべく、炭酸ガス レーザー超音速延伸法(以下CLSD 法)により PPS のナノファイバーの作製を検討し、そ の高次構造の解析を行った。 ナノファイバーは、高比表面積効果、スリップフロー効果、超分子配列効果など他の材 料にはない特性を有している。そのため、エネルギー分野、ヘルスケア分野、医療機器な ど、多くの領域で幅広いアプリケーションへの応用が期待されている。 そこで、PPS ナノファイバーを作製し、その高次構造や力学特性を知ることは、今後の

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PPS の用途拡大に、大いに寄与できるものと考えられる。 本研究では、CLSD 法による PPS ナノファイバーの作製条件として、チャンバー圧力 10kPa およびレーザー出力 30W とし、この延伸条件で平均繊維径 600nm の PPS ナノファ イバーを作製できた。また、得られたPPS ナノファイバーの延伸倍率は、約 112000 倍お よび延伸速度は191ms-1であることを明らかにした。 次に、作製したPPS ナノファイバーの高次構造を解析した結果、結晶化度は 10%以下と 低く、FT-IR による二色比の測定結果から、延伸方向に高い配向性を有することがわかった。 これは、レーザー照射により部分的に溶融した繊維が、オリフィスからのジェット気流に より超延伸され、その後、急冷されたため、非晶鎖が高度に配向したためであると考えら れる。 また、DSC 測定の結果から、約 316℃に高融点結晶の発現が確認された。これは、PPS の一般的な融点である270℃より高いことから、DSC 測定の昇温過程で、延伸過程で発現 した完全度の高い結晶核が成長し、完全度の高い結晶が生成したことに起因すると考えた。 これは、CLSD で得られるナノファイバーに発現する特有な高次構造である。 そこで、発現メカニズムを解明するために、PPS ナノファイバーに 220℃で 15 分間の加 熱処理を実施し、結晶を顕在化させた試料を作製し、結晶領域に着目して、その高次構造 を解析した。 その結果、熱処理により高融点結晶を発現するチャンバー圧力10kPa における PPS ナノ ファイバーの結晶化度は26.3%に上昇した。また、XRD の測定結果から、結晶の配向度が 87%に達し、高度な配向性を有することがわかった。これは、熱処理前の PPS ナノファイ バーでは、非晶鎖が高い配向性を有していることに加え、配向による結晶核の生成を伴っ ているため、熱処理により、結晶核が結晶成長を促進し、結果として延伸方向へ高度に配 向した結晶が生成したものと考えられる。 次に熱処理を実施したナノファイバーに特徴的に発現する高融点結晶について、さらに 結晶領域のモルフォロジー解析および結晶内の分子鎖のパッキング状態を評価した。 その結果、熱処理を実施した PPS ナノファイバーで、結晶部が幅約 100nm の連続体を 形成し、延伸方向へ約 500nm の大きさで網目状に成長していることがわかった。これは、 熱処理前のPPS ナノファイバーで非晶鎖の配向性が高く、熱処理により延伸方向へ結晶の 連続体が形成されたものと考えられる。さらに、XRD により測定した結晶の面間隔は、高 融点結晶を発現するPPS ナノファイバーで、明確に低下する傾向が見られたことから、パ ッキングの良い状態で結晶化していることがわかった。なお、熱処理を実施したPPS ナノ ファイバーの結晶連続体は、分子長オーダーの分子鎖を含むことから、束状晶の形成が考

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えられる。また、このような結晶の連続体や束状晶の形成には、熱処理による分子の緩和 を拘束する必要があり、熱処理前のファイバーにみられる結晶核間をつなぐ非晶鎖に、緊 張したタイ分子が多く存在するものと考えられる。 上記より、高い配向性を有する非晶鎖と結晶核から、熱処理により高度な配向を有する 結晶の連続体と束状晶の形成が、高融点結晶となり発現したものと考えられる。 次に上記で得られたPPS ナノファイバーの作製条件を炭酸ガスレーザー超音速マルチ延 伸法(CLSMD 法)に適用し、PPS ナノファイバーシートの作製を検討した。また、作製 したシートの力学特性について、巻き取り速度の依存性を、引張試験により延伸方向(MD) および直交方向(TD)で検討した。さらに、熱処理による力学特性への影響も解析した。 その結果、巻き取り速度50m min-1および捕集時間10min で、縦 18cm、横 17cm の不 織物状のPPS ナノファイバーシートを作製することができた。この PPS ナノファイバーシ ートの繊維径は約700nm であった。なお、シートの力学特性は巻き取り速度に依存し、ヤ ング率および引張強度とも、巻き取り速度が速くなると力学特性の向上がみられた。また、 TD 方向にくらべ MD 方向で力学特性は高く、明確な異方性がみられた。これは、巻き取り 速度が速くなると、MD 方向への繊維配列が高くなることに加え、断面密度も高くなること から、力学特性も向上するものと考えられる。なお、TD 方向では、絡み合った繊維や融着 した繊維同士を引き剥がす方向に力が働き、ファイバーの強度を直接反映していないため、 MD 方向にくらべ力学特性は低くなるものと考えられる。 次に、同様の条件で作製したPPS ナノファイバーシートに 220℃で 15 分間の加熱処理を 実施し、力学特性を解析した。その結果、ヤング率および引張強度ともMD 方向で、顕著 な向上がみられ、巻き取り速度50m min-1で、ヤング率は、熱処理前に比べ熱処理後で、 約4 倍に向上し、引張強度は約 1.5 倍に向上することがわかった。これは、熱処理によりシ ートを構成するPPS ナノファイバーの結晶化と結晶が延伸方向に連続体を形勢することに より、シートの力学特性を向上したものと考えられる。一方、TD 方向では、上述の理由か ら熱処理による力学特性の向上は、僅かであった。以上より、PPS ナノファイバーシート の熱処理は力学特性の向上に有効であり、特にMD 方向でその効果が顕著であることがわ かった。 以上、炭酸ガスレーザー超音速延伸法よりPPS ナノファイバーの作製を可能にし、得ら れたナノファイバーの高次構造に関する基礎的な知見を得ることができた。

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論文審査結果の要旨

本論文は、炭酸ガスレーザー超音速延伸(CLSD)法をポリフェニレンサルファイド(PPS) に適用し、PPS のナノファイバー化に関するものである。CLSD 法は当研究室で独自に開 発されたトップダウンタイプのナノファイバー作製法であり、無溶剤で幅広い熱可塑性高 分子材料に適用できる方法である。CLSD 法による PPS ナノファイバーの作製条件として、 チャンバー圧力10kPa およびレーザー出力 30W で、平均繊維径 600nm の PPS ナノファ イバーを作製できることを明らかにした。また、この延伸条件で得られたナノファイバー の延伸倍率は、約112000、および延伸速度は 191ms-1であった。 次に、作製したPPS ナノファイバーの高次構造を解析した結果、結晶化度は 10%以下と 低く、FT-IR による二色比の測定結果から、分子鎖が延伸方向に高度に配向していることが わかった。また、DSC 測定の結果からも、108℃に発熱ピークが観察されたことから、延 伸過程で非晶鎖が高度に配向していることが明らかとなった。 さらに、約 316℃に高融点結晶の発現が観察された。これは、PPS の一般的な融点であ る270℃より高いことから、DSC 測定の昇温加熱により生成した完全性の高い結晶の融解 によるものと考えられ、PPS ナノファイバーに特有の高次構造である。高融点結晶の発現 メカニズムを解明するために、PPS ナノファイバーを 220℃で 15 分間の定長下熱処理し、 結晶を顕在化させた試料を作製し、結晶領域に着目して、その高次構造を解析した。 その結果、熱処理により高融点結晶を有するPPS ナノファイバーの結晶化度は 26.3%に 上昇した。また、XRD の測定結果から、結晶の配向度が 87%に達し、高度な配向性を有す ることがわかった。以上のように、熱処理により特徴的に発現する高融点結晶の生成メカ ニズムも明らかにすることができた。 次に、炭酸ガスレーザー超音マルチ速延伸法にPPS を適用することにより、PPS ナノフ ァイバーシートの作製を可能した。また、その力学特性を明らかにするとともに熱処理に よる効果についても明らかにすることができた。 以上、CLSD 法で PPS ナノファイバーを作製することに成功し、ナノファイバーの高次 構造を明らかにすることができた。また、本方法で生成する高融点結晶の発現メカニズム を明らかにした。これらの結果は、学術的にも極めて重要な結果である。さらに、炭酸ガ スレーザー超音マルチ速延伸法をPPS に適用することにより、PPS ナノファイバーシート の作製を可能にし、その力学特性を明らかにするとともに熱処理によるシートの高強度化 についても明らかにすることができた。これらの結果は、学会発表 4 件およびの学術雑誌 掲載2 報により公表された。

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以上、本論文は博士論文として十分に価値あるものと認め、博士論文審査委員会の全委 員の総意により、論文審査を合格とした。

参照

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