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炭酸ガスレーザー超音速延伸法によるナイロン66 ナノファイバーの作製と高次構造に関する研究 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 長谷川 利則 博士の専攻分野の名称 博士(工学) 学 位 記 番 号 医工博甲第330号 学 位 授 与 年 月 日 平成27年3月18日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1 項該当 専 攻 名 機能材料システム工学専攻 学 位 論 文 題 目 炭酸ガスレーザー超音速延伸法によるナイロン66 ナノファイバ ーの作製と高次構造に関する研究 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 鈴 木 章 泰 教 授 川 久 保 進 教 授 柴 田 正 実 教 授 奥 崎 秀 典 准教授 小 幡 誠 准教授 山 中 淳 二

学位論文内容の要旨

第1章 序論(研究の背景と目的) 炭酸ガスレーザー超音速延伸(CLSD)法は、真空チャンバーに設置したオリフィス直下で 発生する超音速の空気ジェットと炭酸ガスレーザーを利用して、原繊維を数万~数十万倍 に超延伸させ、ナノファイバーを作製する新しい延伸法である。ナノファイバーの作製に あたり、特別に材料を準備する必要はなく、環境や生体への影響が懸念される薬品類も一 切使用しない。また、CLSD 装置に複数のオリフィスとネットコンベアーを設置した炭酸 ガスレーザー超音速マルチ延伸(CLSMD)法は、ナノファイバーをシート状に巻き取ること が可能である。 CLSD 法で作製したナノファイバーは、低温結晶化温度の低下や融点の上昇など、通常 の延伸繊維ではあまりみられない高次構造の変化が認められる。融点が上昇する例として、 ポリエチレンテレフタレート(PET)ナノファイバーにおいて平衡融点(280 ℃)に近い高温 融点が観測されている。これはCLSD 法によって、材料固有の性質が引き出されたことを 示しており、注目すべき現象である。高温融点の構造を明かにすることは,PET やナイロ ンをはじめとする汎用高分子材料の基本性能を向上させる手段の手がかりになると考えら

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れる。 本研究の目的は、①CLSD 法をナイロン 66(Ny-66)に適用し、高温融点結晶を多く含 むナノファイバーおよびナノファイバーシートを作製すること、②作製したナノファイバ ーの高次構造を解析し、高温融点結晶の発現機構を明らかにすることである。 第2章 CLSD 法による Ny-66 ナノファイバーの作製 はじめにCLSD 装置のレーザー出力(PL)、レーザー照射位置(D)、真空チャンバー圧力(pch) を調整し、Ny-66 の原繊維(繊維径=182µm)が安定してナノファイバーになる条件を検討 した。つぎに、DSC、FT-IR、WAXD を用いて作製したナノファイバーの構造を解析し、 高温融点結晶が多く生成する条件を調べた。 検討の結果、PL =10 W、D = 1.0~2.0 mm、pch = 10~20 kPa のとき、平均繊維径 0.488~0.599 µm のナノファイバーを得た。このときの延伸速度は約 150~230 m· s-1、延 伸倍率は約92,000~139,000 倍であった。 作製したナノファイバーは、255 ℃と 275 ℃に 2 つの融点が検出され、高温側の融点は 一般に観測されるNy-66 の融点(Tm = 260 ℃)よりも最大 15 ℃高い温度を示した。また、 高温側の融点はPL = 10 W、D = 2.0 mm、pch = 20 kPa のとき最も多く生成した。こ のナノファイバーはtrans/gauche 比の上昇が認められ結晶化が進行しているとともに、結 晶および分子鎖の配向も増加する傾向を示した。 第3章 CLSMD 法による Ny-66 ナノファイバーシートの作製 CLSD 法は、1本の原繊維をナノファイバーにするため生産性が低い。本章では、CLSD 装置に原繊維を供給するオリフィスを増設し、さらにナノファイバーを巻取るスプールを とりつけた炭酸ガスレーザー超音速マルチ延伸(CLSMD)法を用いて Ny-66 ナノファイ バーシートの作製を検討した。 検討の結果、PL = 10 W、D = 2.0 mm、pch = 20 kPa のとき、平均繊維径 0.498 µm、縦 25 cm×幅 17 cm×厚さ 61.5 µm のナノファイバーシートを得た。このときの延伸速度は 223 m·s-1、延伸倍率は約130,000 倍であった。 作製したナノファイバーシートは259 ℃と 270 ℃に 2 つの融点が検出され、高温側の融 点は一般に観測されるNy-66 の融点(Tm = 260 ℃)よりも 10 ℃高い温度であった。この ナノファイバーシートは加熱時に繊維の急激な収縮は認められず、繊維形状は高温側の融 点付近まで維持されており、耐熱性の向上が認められた。

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第4章 CLSD 法で作製した Ny-66 ナノファイバーの融点、微細形態、結晶構造、分子鎖 長の解析 Ny-66 の平衡融点(Tm0)は280 ℃とされ、一般に観測される Ny-66 の融点(Tm = 260 ℃) に比べ20 ℃ほど高い。CLSD 法で作製した Ny-66 ナノファイバーの高温側の融点は 270 ~275 ℃であり、Tm0 = 280 ℃に接近している。Tm0は分子鎖が伸びきった完全結晶の融点 と定義され、ナノファイバーの中には伸びきり鎖に近い結晶の存在が予想される。 279 ℃×10 min 熱処理したナノファイバーの高次構造を詳細に解析した結果、①259 ℃ と279 ℃に 2 つの融点が検出され、高温側の融点は Ny-66 のTm0 = 280 ℃直近まで上昇し た。②TEM 観察からナノファイバー中には平均結晶厚が 140 nm になる結晶構造が確認さ れた。③融点付近の結晶構造は一般に観測されるNy-66 と同じβ晶であり、ナノファイバ ーに固有の結晶構造は認められなかった。④平均結晶厚はナノファイバーの平均分子量か ら求めた平均分子鎖長の212 nm に近い値であった。以上の結果、ナノファイバー中には、 伸びきり鎖に近い結晶あるいは平均分子鎖長に相当する厚い結晶の存在が確認された。 第5章 CLSD 法で作製した Ny-66 ナノファイバーの分子配向解析 第4章では、ナノファイバーに存在する結晶の厚さに着目し解析を行った。しかし、ナ ノファイバーは延伸されているため、融点(Tm)はTm = ΔHm / ΔSm に示されるように、分 子配向の影響をうけるΔSmを考慮した解析も必要である。また、配向には結晶と非晶の両 方がある。配向による融点の上昇は、結晶間を連結するタイ分子鎖が影響を与えるとされ、 ナノファイバーの中にはタイ分子鎖など非晶鎖の配向が増加していると予想される。本章 では、CLSD 法で作製した Ny-66 ナノファイバーと、各種方法で作製した Ny-66 延伸繊維 について分子配向の比較を試みた。さらに、ナノファイバーの高温融点の発現機構を明ら かにするため、熱処理過程における分子配向の挙動を調べた。なお、分子配向の評価は加

熱セルを装着した偏光FT-IR を用い、結晶および非晶に帰属される trans と gauche の赤外

二色比を解析した。

この結果、①CLSD 法で作製した Ny-66 ナノファイバーは、その他の Ny-66 延伸繊維に

比べてtrans と gauche の赤外二色比が上昇し、高い配向性を示した。とくに gauche の赤

外二色比は約 3 倍以上あり、ナノファイバー中にはタイ分子鎖が多く生成していることが

示唆された。②trans と gauche の分子配向は高温側の結晶が融解する温度まで観測された。 以上の結果、ナノファイバー中の高温融点の発現には、4章で述べた結晶の厚さ以外に、 タイ分子鎖を含む非晶鎖の分子配向も関与していることが確認された。

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第6章 総括 CLSD 法および CLSMD 法を Ny-66 に適用し、高温融点を多く含むナノファイバーおよ びナノファイバーシートの作製に成功した。ナノファイバー中の高温融点は、伸びきり鎖 に近い結晶あるいは平均分子鎖長に相当する厚い結晶の存在と、結晶鎖および非晶鎖の分 子配向によって発現していることを明らかにした。さらにCLSD 法で作製した Ny-66 ナノ ファイバーは、他の手法で作製したNy-66 延伸繊維に比べ、配向したタイ分子鎖が多く生 成していることを明らかにした。

論文審査結果の要旨

本論文は「炭酸ガスレーザー超音速延伸法によるナイロン 66 ナノファイバーの作製と高 次構造に関する研究」と題する。本論文の第一章では「緒言」、第二章では「CLSD 法による Ny-66 ナノファイバーの作製」,第三章では「CLSMD 法による Ny-66 ナノファイバーシート の作製」、第四章では「CLSD 法で作製した Ny-66 ナノファイバーの融点、微細形態、結晶構 造、分子鎖長の解析」、第五章では「CLSD 法で作製した Ny-66 ナノファイバーの分子配向解 析」、第六章では「総括」について記述されている。 第二章では、炭酸ガスレーザー超音速延伸装置のレーザー出力、レーザー照射位置、真 空チャンバー圧力を調整し、最適延伸条件を検討した。得られたナノファイバーの高次構 造を DSC、FT-IR、WAXD を用いて解析した。その結果、255 ℃と 275 ℃に 2 つの融点が検出 され、高温側の融点は一般に観測される Ny-66 の融点(Tm = 260 ℃)よりも最大 15 ℃高い 温度を示した。このナノファイバーは trans/gauche 比の上昇が認められ結晶化が進行して いるとともに、結晶および分子鎖の配向も増加する傾向を示した。 第三章では、マルチ延伸用装置(CLSMD)を用いて縦 25 cm×幅 17 cm×厚さ 61.5 µm の Ny-66 ナノファイバーシートを作製し、ナノファイバーシートの作製条件の最適化およびそ のシート特性について検討した。 第四章では、TEM 観察からナノファイバー中には平均結晶厚が 140 nm になる結晶構造が 存在していることを確認し、平均分子量から求めた平均分子鎖長の 212 nm に近い値であり、 伸びきり鎖に近い結晶あるいは平均分子鎖長に相当する厚い結晶の存在が確認された。

第五章では、Ny-66 ナノファイバーは、その他の Ny-66 延伸繊維に比べて trans と gauche の赤外二色比が上昇し、高い配向性を示すことを明らかにした。特に、gauche の赤外二色 比は約 3 倍以上あり、ナノファイバー中にはタイ分子鎖が多く生成していることが示唆さ れた。第6章では以上の結果を総括した。

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以上のように、本論文は、炭酸ガスレーザー超音速延伸法で作製したナイロン 66 ナノフ ァイバーおよびシートの作製条件と高次構造との関係を明らかにし、さらに、ナイロン 66 ナノファイバーに特有な高融点結晶の発現機構について、詳細に検討した。本論文の一部 は、3 編の論文として学術雑誌に記載された。

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