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日本にとって、いちばん危険な戦争 (巻頭エッセイ)

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Academic year: 2021

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日本にとって、いちばん危険な戦争 (巻頭エッセイ

)

著者

高橋 和夫

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

248

ページ

1-1

発行年

2016-05

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00002941

(2)

1

アジ研ワールド・トレンド No.248(2016. 6)   現在の中東ではいくつもの戦争が同時に戦わ れている。いわゆる﹁イスラーム国﹂と各国の 戦争、トルコとクルド人の戦争、リビア人とリ ビア人の内戦、そしてイエメンでの戦争である。 そのなかで比較的に注目度が低いのが、イエメ ンでの戦争だろうか。ヨーロッパから遠く、難 民が押し寄せる心配がないからだろうか、欧米 や日本のメディアは、この問題に関して多くを 語らない。   この戦争は、イエメン人同士が戦っている内 戦である。しかし、同時にサウジアラビアなど が介入しており、単なる内戦ではない。いずれ にしろアラブ世界の最貧国であるイエメンを豊 かな産油諸国が爆撃している。その混乱のなか でアルカーイダ系の組織が増殖している。もと もと貧しかったイエメンの民衆の生活はさらに 悪くなった。戦火のなかで多くの人々が苦しん でいる。国際機関の援助も滞りがちである。シ リアの情勢にも比べられる程の地獄絵ではない だろうか。   この地獄絵の背景となった﹁アラブの春﹂と はイエメンにとっては何だったのか。そもそも、 それ以前のサーレハ大統領の長期支配とは何だ ったのか。どのようなメカニズムが長期支配を 可能にし、アラブの春以降の情勢は、そのメカ ニズムを、どのように破壊したのか。そして内 戦に至る経緯の詳細は、どうだったのか。イラ ンの介入は本当にあったのか。あったとすれば、 どの程度なのか。サウジアラビアの介入の決断 の裏には何があったのか。多くの疑問がわいて くる。   し か も 問 題 は イ エ メ ン の 悲 劇 に 止 ま ら な い。 この戦争での出費と犠牲が、サウジアラビアや アラブ首長国連邦の政権の正統性を脅かしかね ないからである。イエメンはサウジ王家にとっ て の ベ ト ナ ム 戦 争 に な り つ つ あ る。 か つ て 一九六〇年代にイエメンの内戦に介入したエジ プトは、この国の山岳地形のなかでの出口のな い戦いで消耗した。イエメンはナセリズムの墓 場の入り口になった。イエメンの悲惨な戦争の 風景のなかにサウジアラビアなどの産油国の安 定が吸い込まれて行くのではないか。黒い雲の よ う な 懸 念 が わ く。 サ ウ ジ 王 家 の 不 安 定 化 は、 石油供給の混乱を通じて世界経済を動揺させる だろう。そして中東原油への依存度の高い日本 経済を直撃するだろう。日本にとって、いちば ん 危 険 な 戦 争 と タ イ ト ル を つ け た 所 以 で あ る。 イエメンをめぐるみえない未来が暗く立ちはだ かっている。   問題の重要性にもかかわらずメディアに流れ る情報はあまりにも断片的であり分析は極めて 皮相的である。単にサウジアラビアとイランの 代理戦争と一刀両断に語るだけで良いものであ ろうか。   必 要 な の は、 混 沌 と し た 現 状 ば か り で な く、 イ エ メ ン の 歴 史 を も 射 程 に 収 め る 分 析 で あ る。 サウジアラビア、イランなど地域諸国の視点か らも光を当てたい。包括的、多面的、重層的な アプローチが不可欠である。今こそ、各分野の 研究者たちの力の結集が求められている。この 特集号は、その結集の場である。

エ ッ セ イ

アジ研ワールド・トレンド 2016 6

高 橋 和 夫

日本にとって、いちばん危険な戦争

たかはし かずお 福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部卒。 コロンビア大学修士、クウェート大学客員研究員などを経て、1985年から放送 大学の教員。 01_巻頭エッセイ_高橋和夫.indd 1 2016/04/21 12:36

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1 Library, Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization (3-2-2 Wakaba Mihama-ku Chiba-shi, Chiba 261-8545). 情報管理 56(1), 043-048,

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