• 検索結果がありません。

確率的生産フロンティアと環境変数 : 技術効率性効果フロンティアモデルの上水道事業への適用

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "確率的生産フロンティアと環境変数 : 技術効率性効果フロンティアモデルの上水道事業への適用"

Copied!
39
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

59

確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ ア と環 境 変 数*

技 術 効 率 性 効 果 フ ロ ンテ ィ アモ デ ル の上 水 道 事 業 へ の 適 用

要 約 本 論 文 は,BattesandCoelli(1995)が 開発 した技 術 効 率性 効 果 フ ロ ンテ ィ アモ デ ル を 日本 の 上 水 道 事 業 の 生 産 フ ロ ン テ ィ ア分 析 に初 め て 適 用 す る。 そ の 目的 は,2007年 度 の1325の 末 端給 水 事業 者 を取 り巻 く取水 規模 ・受水 比 率 ・ 地 下 水 比 率 ・負 荷 率 ・顧 客 密 度 ・平 均 料 金 ・補 助 金 比 率 の7つ の 環 境 要 因 を 同時 に考 慮 して 計 測 した効 率 性 ラ ン キ ン グ と,こ れ らの 環 境 変 数 を考 慮 しな い 先 行 研 究 の ラ ン キ ン グ を比 較 検 討 す る こ とにあ る。 そ の 結 果 取 水 規 模 ・ 受 水 比 率 ・地 下 水 比 率 ・負 荷 率 ・顧 客 密 度 は技 術 効 率 性 に正 の 効 果 を,平 均 料 金 ・補 助 金 比 率 は負 の 効 果 を及 ぼす ため,と りわ け効 率 的 な事 業 者 グ ルー プ にお け る ラ ン キ ン グ は先 行 研 究 に基 づ くラ ン キ ン グ と大 幅 に異 な る こ とに な る。 この 事 実 は,事 業 者 の 効 率 的 な経 営 を 目指 す 公 共 政 策 を策 定 す る ため *)本 稿 の作 成 に あ た り,兵 庫 県 立 大 学 の 田平 正 典 教 授 ・神 戸基 好 氏 ・三 上和 彦 教 授 ・ 車井 浩 子教 授,名 古 屋 市 立 大 学 の 中 山 徳 良教 授 ・河 合 勝 彦 教 授,広 島 大 学 の 石 田 三樹 教 授,桃 山 学 院 大 学 の 荒 木 英 一 教授 ・藤 間 真 准 教 授 よ り,有 益 な ご教 示 を賜 り ま した 。 こ こに記 して 感 謝 申 し上 げ ます 。 もち ろん,あ りうべ き誤 謬 はす べ て 筆者 た ち の み の 責任 で す 。 キ ー ワ ー ド:確 率 的 フ ロ ンテ ィア 分 析(SFA),技 術 効 率 性,上 水 道 事 業,環 境 変 数 技 術 効 率性 効 果 フ ロ ンテ ィア モ デ ル

(2)

に は従 来 型 の ベ ンチ マ ー キ ン グ手 法 の 見 直 しが 必 要 な こ とを示 唆 して い る。 目次 1分 析 の 目的 と特 徴 2事 業 者 サ ン プ ルの 拡 大 と環 境 変 数 の重 要 性 2.1事 業 者 サ ン プ ルの 拡 大 と分 散 の 不 均 一 性 2.2.環 境 変 数 に よ る不 均 一 分 散 の 修 正 3.確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ アモ デ ル と環 境 変 数 3.1切 断 正 規 一正 規 フ ロ ン テ ィ アモ デ ル(Homoモ デ ル) 3.2技 術 効 率 性 効 果 フ ロ ン テ ィ アモ デ ル(Heteroモ デ ル) 4,環 境 変 数 と技 術 効 率 性 4.1環 境 変 数 と技 術 効 率 性 の 分 布 4.2環 境 変 数 とベ ンチ マ ー キ ン グ 5分 析 の 結 論 と課 題 参 考 文 献 Appendix第2節 ・3節 の モ デ ル にお け る環 境 変 数 の 係 数 と有 意 性 図表 目次 ∩ ) 1 2 りD 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ユ ユ ユ ユ 表 表 表 表 表 表 表 表 表 表 表 表 表 デ ー タの 基 本 統 計 量 取 水 量5分 位 にお け る事 業 者 数 と従 業 員 数 の 分 布 OLS・FGLSに よ る コ ブ ・ダ グ ラ ス型 生 産 関数 の推 定 結 果 全1325事 業 者 の 確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ アモ デ ルの 推 定 結 果 全1325事 業 者 の 技 術 効 率 性Eの 基 本統 計量 EhomoとEheteの 相 関 係 数 Homoモ デル の 技 術 効 率 性(Ehomo)上 位20ラ ン キ ン グ Homoモ デル の 技 術 効 率 性(Ehomo)下 位20ラ ン キ ン グ Heteroモ デ ル の技 術 効 率性(Ehete)上 位20ラ ンキ ング Heteroモ デ ル の技 術 効 率性(Ehete)下 位20ラ ンキ ング EhomoEhete上 位 ・下 位10%事 業 者 の環 境 変 数 の平 均 値 第2節 の 分 散 関 数 にお け る環 境 変 数 の 係 数 と有 意 性 第3節 のHeteroモ デ ル に お け る 環境 変 数 の係 数 と有 意性

(3)

ユ   りり     の だ   フ ヨ 図 図 図 図 図 図 図 確 率的生 産 フロ ンテ ィァ と環境 変 数 市 営 サ ン プ ルの 有 収 水 量Yの ヒス トグ ラ ム(%) OLSとFGLSの 推 定 誤 差 の 分 布:市 営 サ ン プル OLSとFGLSの 推 定 誤 差 の 分 布:全 サ ン フ゜ル EhomoとEheteの 分 布 の 比 較 EheteのEhomoに 対 す る散 布 図 Ehomoの 平 均 料 金(UPrice)に 対 す る散 布 図 Eheteの 平 均 料 金(UPrice)に 対 す る散 布 図 61 1分 析 の 目 的 と 特 徴 わ が 国 の 上 水 道 事 業 に 関 す る 経 済 学 的 な 効 率 的 フ ロ ン テ ィ ア 分 析(EFA: EfficientFrontierAnalysis)の 発 展 は,中 山(2003)に よ っ て 整 理 さ れ,今 日 へ の 基 本 的 な 方 向 づ け が な さ れ た とい え る 。 す な わ ち,田 平(1998)に 始 ま る 生 産 関 数 の 推 定 は確 率 的 フ ロ ンテ ィ ア 分 析(SFA:StochasticFrontierAnaly-sis)と い う形 に 定 式 化 さ れ,Aida,Cooper,PastorandSueyoshi(1998)に 始 ま る ノ ンパ ラ メ ト リ ッ ク な 包 絡 線 分 析(DEA:DataEnvelopmentAnalysis) も こ れ らの パ ラ メ トリ ッ ク な 経 済 学 的 な 分 析 の 枠 組 に 沿 う 形 で 適 用 さ れ る よ う に な っ た の で あ る 。 しか し,最 近 のSFAやDEAの 手 法 の 急 速 な 普 及 と発 展 に もか か わ らず,そ の 後 の 水 道 事 業 の 技 術 効 率 性 に 関 す る邦 語 の 分 析 は 活 発 で は な い1)。 た と え ば 第2節 で 詳 述 す る よ う に,本 稿 が 焦 点 を あ て る 水 道 事 業 の 確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ ア 分 析 は,594市 営 事 業 者 を対 象 と した 中 山(2002)の 研 究 以 降,サ ン プ ル を 全1900の 末 端 給 水 事 業 者 に 拡 大 した 原 田(2004)が あ る の み で あ る 。 原 田(2004)に よ る 分 析 対 象 とサ ン プ ル 数 の 拡 大 は,充 実 し た 実 証 研 究 へ の 自 然 な 一 歩 で あ る と 同 時 に,事 業 者 の 同 質 性 を 維 持 す る た め に 注 意 深 くサ ン プ ル を選 定 し て き た 中 山(2002,2003)で は 目立 た な か っ た 不 均 一 分 散(hetero一 1)最 近 のEFAの 発 展 に つ い て は,た と え ばFried,LovellandSchmidt(2008)を 参 照 。 最 近 の 英 語 文 献 に お け る 水 道 事 業 へ の 確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ ア 分 析 の 適 用 と して は,Zschile,andWalter(2012)お よ びYaneandBerg(2011a,b)が あ る 。

(4)

scedasticity)や 異 質 性(heterogeneity)の 問 題 を 深 刻 化 さ せ る 。 と こ ろ が, 原 田(2004)の 推 定 手 法 や 関 数 形 お よ び 変 数 は 中 山(2002)と ま っ た く 同 じ で あ る た め,分 析 対 象 の 拡 大 に よ っ て 増 し た 事 業 環 境 の 異 質 性 に 対 処 で きて い な い よ う に 思 わ れ る 。 そ こ で 本 稿 の 分 析 目的 は,中 山(2002,2003)お よ び 原 田(2004)の 先 行 研 究 を ふ ま え た う え で,近 年 のSFAの 発 展 を考 慮 し た 確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ ア の 推 定 を 通 じて,今 後 の 公 共 政 策 の 策 定 に,よ り適 切 な 効 率 性 ラ ン キ ン グ を 試 算 す る こ と に あ る 。 とい う の も,す で に 日本 の 水 道 イ ン フ ラ は 更 新 時 期 の ピ ー ク を 迎 え て お り,巨 額 の 更 新 投 資 を 賄 う た め に も事 業 経 営 の 効 率 化 が 重 要 か つ 喫 緊 の 政 策 課 題 だ か らで あ る2)。 本 稿 の 方 法 論 的 特 徴 の1つ は,末 端 給 水 事 業 者 を 取 り巻 く重 要 な 環 境 変 数 (外 生 変 数),い わ ゆ る 「Z変 数 」 と し て,取 水 規 模 ・受 水 比 率 ・地 下 水 比 率 ・ 負 荷 率 ・顧 客 密 度 ・平 均 料 金 ・補 助 金 比 率 の7要 因 を 同 時 に 考 慮 す る 点 で あ る 。 も ち ろ ん,こ れ ま で に も,た と え ば 平 均 料 金 が 効 率 性 と負 の 相 関 に あ る こ と な ど を 確 認 す る 先 行 研 究 は あ る もの の,そ れ ら は い ず れ も最 初 の 効 率 性 の 推 定 値 を 再 び 環 境 変 数 で 回 帰 す る と い う 「2ス テ ッ プ(2ス テ ー ジ)法 」 に 依 拠 して い る 。 しか し2ス テ ッ プ 法 は,そ もそ も効 率 性 の 説 明 変 数 と して 環 境 変 数 を 除 外 して い る た め,そ の 統 計 学 上 の 問 題 点 を 繰 り返 し批 判 さ れ て い る3)。 第2の 方 法 論 的 な 特 徴 と し て は,1ス テ ッ プ 法 を具 体 化 す る 枠 組 と して,Bat-tesandCoelli(1995)が 開 発 し た 技 術 効 率 性 効 果 フ ロ ン テ ィ ア モ デ ル(Tech-nologicalEfficiencyEffectsFrontierModel)を 日本 の 水 道 事 業 に 初 め て 適 用 す る こ とで あ る 。 環 境 変 数 を 考 慮 し た1ス テ ッ プ 法 と して 様 々 な モ デ ル が 開 発 さ れ て き た が,Coelliet.al。(2005)やCoelli(1996)も 強 調 す る よ う に,効 率 性 効 果 モ デ ル は 従 来 の 複 数 の モ デ ル を 特 殊 ケ ー ス と して 含 み,異 な る 環 境 2)日 本 の 水 道 イ ン フ ラ の 老 朽 化 に つ い て は,矢 根(2012)を 参 照 。 3)Friedet.al.(2008,p.39)は,「2ス テ ー ジSFAモ デ ル は も う見 た くな い 」 と述 べ て い る 。KumbhakarandLovell(2000)やGreene(2008)も 参 照 。

(5)

確 率的生 産 フロ ンテ ィア と環境 変 数63 の 異 質 性 を考 慮 で きる代 表 的 なモ デ ル の1つ で あ る。 ゆ え に本 稿 の ア プ ロ ーチ は,環 境 変 数 を考 慮 した効 率 性 を推 定 で きる と同 時 に,拡 大 され た事 業 者 サ ンプル に伴 う異 質 性 の 問 題 に も対 処 可 能 だ とい う 意 味 で,先 行 研 究 に は なか っ た利 点 を有 す る。 この利 点 の 活用 は,Yaneand Berg(2011a)も 指 摘 す る よ うに,事 業 者 数が 多 く変 数 の散度 もきわめ て大 き な 日本 の 上 水 道 事 業 にお い て は特 に重 要 で あ る。 確 か に一 般 的 には,Baltagi(2008,p87,121)やDavisandGarces(2009, p.82,87)も 指摘 す る よ う に,産 業 デ ー タに はつ き もの の不 均 一 分散 は,た と え均 一 分 散 を仮 定 した と して も不 偏 推 定 量 を得 られ るの で,内 生 性 の よ う な 問 題 ほ ど深 刻 視 され る こ とは稀 で あ る。 しか しSFAモ デ ル に お い て は,不 均 一 分 散 や 異 質 性 が 分 析 結 果 に深 刻 な影 響 を与 え る こ とは よ く知 られ た 事 実 で あ る4>。これ はSFAの 核 心 で あ る効 率 性 の推 定が 誤 差 項 の推 定 値 に依 存 してい るか らで あ る。 す な わ ち,市 営 サ ンプ ルか ら全 給 水 事 業 者 へ の サ ン プ ルの 拡 大 は,推 定 式 の 分 散 の 不 均 一 性 や 異 質 性 を高 め る ため,SFAモ デ ル に お け る 効 率 性 の 推 定 もそ の 分 だ け歪 め られ るの で あ る。 だか らこそ,特 に全 事 業 者 サ ン プル を用 い る場 合 に は,環 境 変 数 を考 慮 した1ス テ ップ法 に基 づ くSFA が 重 要 に な る。 事 実,第3節 で 推 定 す る環 境 の 異 質 性 を考 慮 した技 術 効 率 性 効 果 フ ロ ン テ ィ アモ デ ルか らは,取 水 規 模 ・受 水 比 率 ・地 下 水 比 率 ・負 荷 率 ・顧 客 密 度 が 高 い ほ ど,そ して 平 均 料 金 ・補 助 金 比 率 が 低 い ほ ど,水 道 事 業 の 効 率 性 が 高 い とい う結 果 を得 る。 この 事 実 か ら,た とえ ば用 水 供 給 事 業 者 か らの 受 水 に 頼 る給 水 事 業 者 はそ の 費 用 の 高 さか ら非 効 率 と決 め つ け られ る こ とが 多 い も の の,同 時 に平 均 費 用(料 金)を コ ン トロ ール して や れ ば,む しろ効 率 的 な 環 境 にあ る こ とが わか るの で あ る。 これ は第4節 で 詳 述 す る よ う に,確 か に受 水 比 率 が 高 い 事 業 はそ の 分 だ け 4)KumbhakarandLovell(2000),Coellietal.(2005)お よ びGreene(2008)を 参 照 。 Hadri(1999)お よ びHadriet.al.(2003),YaneandBerg(2011a,b)は,SFA に お け る 二 重 の 分 散 修 正 を 試 み た 例 で あ る 。

(6)

資 本 費 用 も高 い が,平 均 的 な減 価 償 却 費 は む しろ低 く,高 い 平均 費用(料 金) が 効 率 性 を損 な う影 響 を コ ン トロ ール して い る状 況 下 で は,受 水 事 業 者 の 効 率 性 を確 認 で きる ため で あ る。 ゆ え に,高 い 料 金 や 補 助 金 比 率 は技 術 効 率 性 を低 め る 「悪 」 環 境 要 因で あ る一 方,受 水 比 率 は地 下 水 比 率 等 と同様 の 効 率 的 な 「好 」 環 境 要 因 とみ なす こ とが で きる。 この よ う に環 境 変 数 を考 慮 して 推 定 した技 術 効 率 性 を用 い る と,環 境 要 因 を考 慮 せ ず に推 定 され た先 行 研 究 にお け る高 効 率 事 業 者 を よ り明 細 に識 別 す る こ とが で きる。 ゆ え に本 稿 の 事 業 者 の 効 率 性 ラ ン キ ン グ は,特 に効 率 的 な 事 業 者 グ ル ー プ にお い て,先 行 研 究 に基 づ くラ ン キ ン グ と大 幅 に異 な る こ と に な る。 この 事 実 は,事 業 者 の 効 率 的 な経 営 を 目指 す 公 共 政 策 を策 定 す る た め に は,従 来 の ベ ンチ マ ー キ ング手 法 の 再 考 が 必 要 な こ とを示 唆 して い る。 本稿 の構 成 は以下 の とお りであ る。 第2節 で は,『地 方公営 企業 年劃 の2007 年 度 の 末 端 給 水 事 業 者 デ ー タ を用 い,先 行 研 究 の フ ォ ロ ー ア ップ を行 う。 上 述 した よ う に,サ ン プル を全 給 水 事 業 者 に拡 大 す る と,分 散 の 不 均 一 性 が 非 常 に大 き くな る点 を実 証 す る ため で あ る。 第3節 で は,環 境 の 異 質 性 を考 慮

しないSFAモ デ ル(Homoモ デ ル)と,環 境 の異質i生を考 慮 した技術 効 率性 効

果 フ ロ ンテ ィ アモ デ ル(Heteroモ デ ル)の 双 方 を推 定 し,技 術 効 率性 を比 較 す る。 さ らに第4節 で は,両 モ デ ルで 推 定 され た効 率 性 の 分 布 を検 討 した う えで,そ れ ぞ れ の 上 位 ・下 位 事 業 者 の ラ ンキ ング を詳 細 に吟 味 す る。 最 後 の 第5節 は,本 稿 の 結 論 と課 題 の 要 約 で あ る。 2事 業 者 サ ン プ ル の 拡 大 と 環 境 変 数 の 重 要 性 本 節 で は,『 地 方公 営 企 業 年鑑 』 の2007年 度 の 末 端 給 水 事 業 者 の デ ー タ を 用 い て,先 行 研 究 の フ ォ ロ ー ア ップ を行 う。 先 行 研 究 で あ る 中 山(2002)と 原 田(2004)で は,対 象 とす るサ ンプ ル と分 析 時 期 は異 な る もの の,変 数 ・ 関 数 形 ・推 定 手 法 は 同一 で あ る ため,分 析 対 象 の 拡 大 に よ る分 散 の 不 均 一 性

(7)

確 率的生 産 フロ ンテ ィァ と環境 変 数 65 の 拡 大 とそ の 修 正 結 果 に焦 点 を あて る`〉。 す な わ ち,サ ンプ ル の拡 大 が分 散 の 不 均 一 性 を拡 大 させ,環 境 変 数 を用 い た分 散 修 正 に よ る係 数 推 定 値 や 残 差 の 分 布 も大 き く変 化 す る こ とを示 す こ とに よ り,環 境 変 数 導 入 の 重 要 性 を例 証 す る。 2.1事 業者 サ ン プル の拡 大 と分 散 の不 均 一 性 先 行 研 究 で あ る 中 山(2002)と 原 田(2004)の 主 た る相 違 は,前 者 が1999 年 度 の 政 令 指 定 都 市 と市 営 の 末 端 給 水 事 業 か ら成 る594事 業 を分 析 対 象 と し たの に対 し,後 者 は2001年 度 の都 道府 県 ・町村 ・企 業 団 も含 む全1900末 端 給 水 事 業 にサ ンプル を拡 大 した点 にあ る。 す な わ ち,前 者 の 分 析 対 象 を 「市 営 サ ン プ ル」,後 者 を 「全 サ ンプ ル」 と呼 ぶ こ とにす る と,こ のサ ンプ ル と時 期 の 違 い を別 にす れ ば,先 行 研 究 は以 下 の 関 数 ・変 数 ・推 定 モ デ ルの3点 に お い て ま っ た く同 じなの で あ る。 1)3つ の 生 産 要素 か ら成 る生 産 関数y'=F(K,L,O)は コブ ・ダ グ ラス 型 を仮 定 2)産 出量Yと 生 産 要 素K,五,0の4変 数 の定 義 とデ ー タ Y(産 出量):年 間総 有 収 水 量(千 ㎡) K(資 本):有 形 固定 資 産 額(千 円) 五(労 働):損 益 勘 定 所 属 職 員 数 と資 本 勘 定 所 属 職 員 数 の 合 計 人 数 0(そ の 他):動 力 費,光 熱 水 費,通 信 運 搬 費,修 繕 費,材 料 費, 薬 品 費,路 面 復 旧 費,委 託 費,資 本 相 当 分 を除 い た受 水 費 の 合 計 金 額(千 円) 3)「 半 正 規 一正 規 」 確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ アモ デ ル に よ る推 定6) 5)中 山(2002)の 本 来 の分 析 目的 は 配 分 効 率性 ・経 済 効 率 性 の 計 測 で あ り,技 術 効 率性 の 推 定 は む しろ 手段 に す ぎな い こ と に留 意す べ きで あ る。 また,原 田(2004) の 目的 に は,SFAとDEAの 結 果 の比 較 も含 ま れ てい る。 しか し本 稿 で は,確 率 的 生 産 フロ ンテ ィア と技 術 効 率性 の み に 焦 点 を合 わ せ て い る。 6)SFAモ デ ル は2つ の 誤 差 項 を持 つ ので,最 初 の 「半 正 規 」 は非 効 率 性 を表 す 非 負 の誤 差 項 の分 布 を,2番 目の 「正規 」 は ノ イズ を表 す 通 常 の誤 差 項 の 分 布 の仮 定 を 意 味 す る 。非 効 率 性 の分 布 に関 す る他 の仮 定 に つ い て は,Greene(2008)を 参 照 。

(8)

ゆ え に,こ の3条 件 を満 たす モ デ ル を市 営 サ ン プ ル と全 サ ン プ ル に適 用 す れ ば,先 行 研 究 の 忠 実 な フ ォロ ー ア ップ とな る。 しか し,先 行 研 究 の 「半 正 規 一正規 」 確 率 的生 産 フ ロ ンテ ィアモ デ ル の推 定 値 は最小 二 乗 法(OLS:Ordi-naryLeastSquares)に よ る結 果 と大 差 は な く,本 稿 第3節 で は よ り一 般 的 な 「切 断正 規 一正 規 」 モ デ ル を推 定 す る ので,こ こで はむ しろOLSの 結 果 を検 討 した方 が 有 益 で あ る。 さ らに本 稿 で は,恣 意 的 な減価 償 却 費 の 影響 を配 慮 し, 有 形 固定 資 産 額 と減 価 償 却 累 計 額 の 和 か ら建 設 仮 勘 定 を差 し引 い た額 を資 本 Kと 定 義 す る7〕。 表1デ ータの 基 本 統 計 量 サ ンプル 市 営 サ ン プ ル(706事 業) 全 サ ン プル(1325事 業) 変数 Y K L 0 Y K L 0 歪度 8 7 10 9 23 24 18 30 尖度 88 64 117 100 682 704 409 981 標準偏差 31086 61060708 140 1877904 49484 1.05E+08 161 4456872 最小値 300 1330384 2 26352 74 225245 1 10098 中央 値 6994 16269203 21 388710 3348 8323318 11 171366 平均 値 14732 31172809 53 792776 10573 22965319 37 632276

最大値 416876 7.72E+08 2013 26920226 1529784 3.26E+09 4295 1.51E+08

出所:「 地 方 公 営 企 業 年 鑑 』(2007年 度 版)よ り作 成 表1は,サ ン プ ル 別 に 区 分 し た 産 出 量 と生 産 要 素 の 基 本 統 計 量 で あ り,全 般 的 に 非 常 に 大 き な 散 度 を 示 して い る 。 た と え ばHadriet.al(2003,p.259) は そ の 金 融 デ ー タ の 散 度 の 大 き さ か ら 分 散 修 正 モ デ ル の 必 要 性 を 強 調 し た が 7)Coelliet.al.(2003,2005)は 恣 意 的 な 減価 償 却 費 の 問 題 を指摘 して お り,実 際 に 石 原 ・菊 池(2011)は 定 額 法 主 体 の 日本 の 公 営 企 業 で は 「み な し償 却 」 も行 わ れ て い る と指摘 して い る 。 た だ し,本 稿 と先 行 研 究 のKの 相 関係 数 は0.99以 上 と非 常 に 高 い 。

(9)

確 率的生 産 フロ ンテ ィア と環境 変 数67 そ れ で も表1の よ う に標 準 偏 差 が 平 均 値 を超 えて い た わ けで は ない 。 ま して 水 道 事 業 に限 れ ば,こ の よ う な散 度 の 高 い 産 業 構造 は国 際 的 に も例 外 的 なケ ース だ とい え る8)。 しか も,全 般 的 に散 度 が 大 きい だ けで な く,市 営 サ ン プル か ら全 事 業 サ ン プ ルへ の 分 析 範 囲 の 拡 大 は全 変 数 の 歪 度 ・尖 度 ・標 準 偏 差 の す べ て を大 幅 に 引 き上 げ る。 これ は,新 た にサ ンプ ル に追 加 され る町 村 営 事 業 者 の 平 均 規 模 は小 さい の に,都 道 府 県 営 の 事 業 規 模 は大 きい か らで あ る。 こ う した大 きな歪 み の 存 在 は,た とえ ば 図1の 市 営 サ ン プ ル の 有 収 水 量Y の ヒス トグ ラ ム を観 察 す れ ば一 目瞭 然 で あ る。 構 成 比(%)を み れ ば大 多 数 が 小 規 模 で あ る こ とは明 白で あ り,そ れ ゆ え右 に長 い テ イル を有 す る。 これ を全 事 業 サ ンプ ル に拡 大 す る と,さ らに テ イル が 長 くな り,グ ラ フ に は表 し に くい ほ ど散 度 も高 ま るの で あ る。 図1市 営 サ ンプ ル の 有 収 水 量Yの ヒス トグ ラム(%) 8)国 際 的 に み れ ば,平 均 的 に 過 小 規 模 で あ る た め,事 業 数 が 過 多 な の で あ る 。 事 実 オ ー ス ト ラ リ ア や イ ギ リ ス の 水 道 の 効 率 性 分 析 の 対 象 企 業 数 は,CoelliandWald-ing(2007,p.44)で は18企 業SaalandParker(2007,p.308)で は30企 業 に す ぎ な い た め,散 度 は 比 較 に も な ら な い 。

(10)

表2取 水 量5分 位における事 業者 数と従業 員 数の分布 取 水規模 市営 サ ンプル 全 サ ン プ ル 事 業数 平均 標 準 偏差 最 小 最大 事業 数 平 均 標 準偏 差 最 小 最 大 1下 位 13 5 2 2 9 265 4 2 1 11 2中 下 位 59 8 4 3 27 265 7 3 1 27 3中 位 152 13 6 3 44 265 12 5 2 44 4中 上 位 234 22 io 8 66 265 22 io 4 66 5上 位 248 119 222 9 2013 265 138 341 9 4295 出所:「 地 方 公 営 企 業 年 鑑 』(2007年 度 版)よ り作 成 さ らに,表2の 全 事 業 者 の 取 水 量5分 位 にお け る事 業 者 数 と従 業 員 数 の 分 布 をみ れ ば 過 半 の 事 業者 が せ い ぜ い10人 余 り しか 雇 用 して い ない零 細 中小 事 業 者 で あ る こ とが わか る。 ま た,全 事 業 者 サ ンプ ルへ の 拡 大 は,多 数 の 零 細 事 業 者 を増 加 させ る と同時 に,大 規 模 事 業 者 間で の 散 度 も引 き上 げ る こ と も確 認 で きる。 表3は,こ れ ら市 営 サ ンプ ル と全 サ ンプ ル につ い て,先 行 研 究 と同様 の コ ブ ・ダ グ ラス 型 生 産 関 数 を推 定 した結 果 で あ る。 す な わ ち,(2)式 の 通 常 の ノ イズ を表 す 誤 差項U,を 仮 定 した う えで,(1)式 の よ うに有 収水 量Yの 自然 対 数 値 を資 本K,労 働 五,そ の他 の投 入 財0の 自然 対 数値 で 回帰 した結 果 であ る。 なお(2)式 は,誤 差 項 が平 均o・ 分 散6vを 持 ち,独 立 かつ 同一 の分布(i.i.d.) に従 う無 作 為 変 数 で あ る こ とを意 味 して い る。 (1)ln(L)=β 。+β 、ln(1島)+β21n(五 、)+β31n(0、)+v、 (2)zノ 、∼iidN(0,6Z)

(11)

確 率 的 生 産 フ ロ ンテ ィ ア と環 境 変 数 表30LS・FGLSに よるコブ ・ダ グラス型 生 産 関 数 の 推 定 結 果 69 市 営 サ ン プ ノレ 全 サ ンプル 中山 oLs FGLS 原 田 oLs FGLS 資 本K 0.1741 0.2227*** 0.2833*** 0.1918 0.2694*** 0.3417*** <0.0325> (6.73) (9.38) <0.0181> (11.63) (15.84) 労働L 0.4106 0.3113*** 0.2856*** 0.5014 0.2998*** 0.2588*** <0.0309> (11.79) (11.68) <0.0187> (14.79) (24.69) そ の他0 0.3923 0.4490*** 0.4188* 0.3062 0.4460* 0.3784*** <0.0251> (17.18) (17.10) <0.0137> (21.84) (22.49) 定数項 3,658 一1.5496*** 一2.0676*** 3.5315 一2.2864* 一2.4030*** <0.1823> (-4.04) (-5.96) <0.1086> (-8.62) (-10.94) サ ンプル数 594 XO6 706 1900 1325 1325 決 定係数 0.9206 0.9414 0.9325 0.9836 〈 〉 内 は 標 準 誤 差,O内 はt値 。 ・,**,***はそ れ ぞ れ10,5,1%の 有 意 水 準 を表 す 。 まず,本 稿 の 推 定 値 を先 行 研 究 の 推 定 結 果 と比 較 す る と,市 営 サ ンプル に お い て も全 サ ン プル にお い て も,労 働 五の係 数 値 が低 下す る一方,資 本Kと そ の 他 の 財0の 係 数 値 は上 昇 して い る。 こ れ は,上 述 した資 本 の定 義 の相 違 に 加 え,近 年 の ア ウ トソ ー シ ン グの 増 加 を反 映 して い る と思 われ る9>。 次 に,市 営 サ ンプ ル と全 サ ンプ ルの 推 定 結 果 に着 目す る と,原 田(2003) に よるKと 五の 係 数推 定 値 は中 山(2002)の そ れ よ り も高 く,0の 係 数 は低 く な って い る。 と ころが 本 稿 の フ ォロ ー ア ップ で は,全 サ ンプル の五 の係 数推 定 値 の 方 が 若 干 低 い 点 が 異 な って い る。 これ は減 価 償 却 費 を含 め た資 本 概 念 を 用 い た本 稿 の 方 が,サ ン プル 拡 大 に伴 うKの 係 数 値 の上 昇 が 大 きい た め であ ろ う。 い ず れ にせ よ,コ ブ ・ダ グ ラス 型 生 産 関 数 の フ ィ ッ トは良 好 にみ え るが, 9)事 実 先 行 研 究 と ま っ た く 同 じ 定 義 で2004年 度 の デ ー タ を用 い た 先 行 研 究 の フ ォ ロ ー ア ッ プ で は,そ の 他 の 投 入 財 の 係 数 値 の み が 上 昇 し て い る 。YaneandBerg (2011a)を 参 照 。

(12)

上 述 した よ う に各 変 数 の 散 度 は非 常 に大 きい こ とを忘 れ て は な らない 。 そ こ で,分 散 の 均 一 性 に関 してBreusch-Paganお よ びWhiteの テ ス トを試 み る と, 均 一 分 散 の 帰 無 仮 説 は両 サ ンプル 共 に0.1%水 準 で 棄 却 され る。 さ らに,規 模 や 地 域 とい っ た グル ー プ 問の 分 散 の 不 均 一 性 も顕 著 で あ る。 た とえ ば,上 記 の 取 水 量 や 人 口の 規 模 を5分 位 に分 けて 吟 味 す る と,や は り 両 サ ンプ ル共 に均 一 分 散 の 帰 無 仮 説 は0.1%水 準 で 棄 却 され る。 た だ し,47 の 都 道 府 県 別 に比 較 した場 合 に は,市 営 サ ン プ ル で は0.1%で は 棄 却 で き ず,1%で 棄 却 され る。 さ ら に,14地 域 に分 割 した場 合 に は,全 サ ン プル で も有 意 な棄 却 水 準 は1%に な り,市 営 サ ン プル で は10%に な る 。 ゆ え に,規 模 や 地 域 が 異 な る グル ー プ 問で も分 散 が 異 な って お り,と りわ け全 サ ン プ ルで は不 均 一 分 散 の 問 題 は顕 著 で あ る。 これ は,日 本 の 水 道 事 業 にお け る分 析 対 象 の 拡 大 が 同一 フ ロ ンテ ィ アの 同質 主 体 の 効 率 性 比 較 とい う EFAの 仮 定 に抵 触 す る可 能 性 を示 唆 す る。 次 項 で は,こ の 点 を よ り具 体 的 な 形 で 確 認 しよ う。 2.2.環 境 変 数 に よ る 不 均 一 分 散 の 修 正 本 項 で は,前 項 で 明 らか に し た 不 均 一 分 散 を修 正 す る た め に,2ス テ ッ プ FGLS(FeasibleGeneralLeastSquares)を 適 用 す る1°)。す な わ ち,ま ず(1) 式 か ら得 る 残 差 を 用 い て 分 散 の 予 測 値 ∂1を 求 め,次 に 予 測 値 を ウ ェ イ ト と し た 回 帰 分 析 を 行 う 。 分 散 の 予 測 値 を 求 め る 分 散 関 数 で は,予 測 値 が 必 ず 正 に な る よ う に,次 の よ う な 定 数 項 を 含 む 説 明 変 数 ベ ク トルZの 非 線 型 関 数 と して 定 式 化 し,係 数 ベ ク トルbを 推 定 す る 。 (3)62v=exp(Z;δ) 10)FGLSに よ る 誤 っ た 定 式 化 を 回 避 す る た め にWLS(WeightedLeastSquares)に よ る チ ェ ッ ク も 行 っ て い る 。 詳 細 は,た と え ばCameronandTrivedi(2010,pp.155 -62)を 参 照

(13)

確 率的生 産 フロ ンテ ィァ と環境 変 数71 本 稿 で は生 産 関 数 を推 定 して い るの で,分 散 関 数 の 説 明 変 数 と して は事 業 経 営 者 が 直 接 制 御 で きる生 産 要 素 以 外 の 要 因,す な わ ち事 業 者 を取 り巻 く外 生 的 な環 境 変 数 が 適 当 で あ る。 そ こで,前 項 の グル ー プ 問の 分 散 の 不 均 一 性 や 従 来 の 水 道 事 業 の 分 析 をふ ま え,定 数 項 以 外 の 説 明 変 数 と して,以 下 の7 つ の 要 因 か ら成 る環 境 変 数 ベ ク トルZを 導 入 す る11)。た だ し 『地 方 公営 企 業 年 鑑 」 で は,取 水 量 で は な く取 水 能 力 の 構 成 の み が 利 用 可 能 な ため,受 水 比 率 は取 水 能 力 に 占め る受 水 能 力,地 下 水 比 率 は 自己 水 源 に 占め る ダ ム と非 ダ ム の 表 流 水 以 外 の 取 水 能 力 で あ る'2)。 dtype2-5:5分 位 取 水 量 に基 づ く2分 位 か ら5分 位 の規 模 を表 す ダ ミー 変 数 dtypews2:取 水 に 占め る受 水 比 率 が50%以 上 で あ る こ とを示 す ダ ミー 変 数 dtypewe2:自 己 水 源 か らの 取 水 の80%以 上 が 地 下水 で あ る こ と を示 す ダ ミー 変 数 load:1日 平均 給水 量 を1日 最 大 給水 量 で 除 した負 荷 率 の対 数値 cusden:給 水 人 口 を水 道 管総 延 長 距 離 で 除 した顧 客(給 水 人 口)密 度 uprice:給 水 収 益 を有 収 水 量 で 除 した 平 均 料 金(供 給 単 価) rsubp:給 水 収 益 に 占め る補 助 金 ・他 会 計 繰 入金 等 の損 益勘 定5項 目 の 総 額 の 比 率 (3)式 の 分 散 関 数 にお け る環 境 変 数 の有 意 性 等 につ い て はAppendixで 言 及 す る と して,そ の分 散 の予 測 値 を ウェ イ トと して用 い たFGLSに よ る推 定 結 果 は前 項 の表3に 要約 されて い る 。 そ の最 大 の特徴 は,OLSと の係 数値 の相 違 が 11)と り わ け 環 境 変 数 を 考 慮 し た 生 産 フ ロ ン テ ィ ア 分 析 で あ るYaneandBerg(2011 a,b)お よ びZschileandWalter(2012)を 参 考 に し た 。 12)こ れ ら の 比 率 は,「 水 道 統 計 』 の 取 水 量 の 構 成 比 と照 ら し 合 わ せ て も,一 定 の 確 度 を 有 し て い る 。 矢 根(2012)を 参 照 。

(14)

市 営 サ ン プ ル よ り全 サ ン プ ルの 方 が 大 きい 点 で あ る。 す な わ ち,両 サ ン プル 共 にKの 係 数 は上 昇 し,五 と0の 係 数値 は下落 す るが,そ の程 度 はいず れ の変 数 にお い て も全 サ ンプル にお け る方 が 大 きい の で あ る。 したが って,全 サ ンプル を用 い るの に分 散 の 修 正 を しない 場 合 に は,誤 っ た推 論 に 陥 る リス クが 高 くなる 。 た とえば 規 模 に関 す る収 穫 一 定(3生 産要 素 の 係 数 の合 計値 が1)と い う帰 無 仮 説 をテ ス トす る場 合,市 営 サ ンプル で は OLSで もFGLSで も棄 却 で きな い が,全 サ ンプ ルのOLSで は5%の 有 意水 準 で は棄 却 で きな い一 方 で,FGLSの 結 果 を用 い る と0.1%の 有 意 水 準 で も棄 却 さ れ て しま う。 ゆ え に分 散 の 不 均 一 性 を考 慮 しない 場 合 に は,実 際 に は市 営 事 業 は規 模 に関 して 収 穫 一 定 で 全 事 業 は収 穫 逓 減 で あ っ た と して も,双 方 共 に 収 穫 一 定 と判 断 して しま う危 険 性 が 高 い の で あ る。 図20LSとFGLSの 推 定 誤 差 の分 布:市 営 サ ンプ ル 睡Fgll R冊Ol巳

(15)

確 率 的 生 産 フ ロ ンテ ィ ァ と環 境 変 数 図30LSとFGLSの 推 定 誤 差 の分 布:全 サ ンプ ル 73 睡Fgll R冊o憾 さ らに,SFAに とっ て重 要 な 問題 は,環 境 変 数 の 考慮 の有 無 に よっ て,残 差 の 分 布 が どれ ほ ど変 化 す るか とい う点 で あ る。 なぜ な ら,SFAに よる技 術 効 率 性 の 推 定 は,誤 差 項 の 推 定 値 に依 存 して い るか らで あ る。 この 点 を確 か め る ため に,市 営 サ ンプ ル と全 サ ンプ ル のそ れ ぞ れ につ い て, OLSとFGLSの 残 差 の分 布 を比 較 した のが 図2と 図3で あ る 。 図2の 市 営 サ ン プ ルの 場 合 に比 べ る と,図3の 全 サ ンプ ルの 場 合 のOLSとFGLSの 残差 の分 布 に は よ り大 きな違 い が あ るの は明 らか で あ る。 この 事 実 は,環 境 変 数 を考 慮 しない 従 来 のSFAに よっ て推 定 され た効 率性 水 準 お よび そ の ラ ンキ ング は環 境 変 数 を考 慮 したそ れ ら と大 幅 に異 な る可 能 性 が あ る こ とを示 唆 して い る。 特 に,全 サ ンプ ルへ の 分 析 対 象 の 拡 大 が そ の 危 険 性 を高 め る こ とは以 上 の 分 析 か ら明 白で あ ろ う。

(16)

3.確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ ア モ デ ル と 環 境 変 数 前 節 で 明 らか に し た よ う に,生 産 関 数 と誤 差 項 の 推 定 は 環 境 変 数 導 入 の 有 無 に 大 き く依 存 し て い る 。 と りわ け 全 サ ン プ ル の 推 定 結 果 は,YaneandBerg (2011a,b)が 示 し た よ う に,不 均 一 分 散 へ の 対 応 の 有 無 に 大 き く依 存 す る 。 そ こ で 本 節 で は,環 境 変 数 の 有 無 に 着 目 し,2つ の 確 率 的 生 産 フ ロ ンテ ィ ア モ デ ル を 全 サ ン プ ル に 適 用 す る 。 ま ず,先 行 研 究 と 同 じ よ う に 環 境 変 数 を 考 慮 し な い ケ ー ス に つ い て,中 山(2002)や 原 田(2004)の よ う な 半 正 規 一正 規 モ デ ル で は な く,よ り柔 軟 な 切 断 正 規 一正 規 モ デ ル を 推 定 す る 。 次 に 事 業 者 が 直 接 左 右 で き な い 環 境 要 因 の 異 質 性 を考 慮 す る た め にBattesandCoelli (1995)の 技 術 効 率 性 効 果 フ ロ ン テ ィ ア モ デ ル を 適 用 す る 。 前 者 をHomoモ デ ル,後 者 をHeteroモ デ ル と略 称 す る と,Homoモ デ ル は 本 節 の 焦 点 と な るHet-eroモ デ ル の 特 殊 ケ ー ス と み な せ る 点 に 留 意 す べ き で あ る 。 3.1切 断 正 規 一 正 規 フ ロ ン テ ィ ア モ デ ル(Homoモ デ ル) 本 項 で は,先 行 研 究 で あ る 中 山(2002)・ 原 田(2004)と 同 様 に,環 境 変 数 を 考 慮 し な い 確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ ア モ デ ル を 推 定 す る 。 こ の 均 一 分 散 と 同 質 性 を仮 定 す る確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ ア モ デ ル を 本 稿 で は 「Homoモ デ ル 」 と 略 称 す る こ と に す る と,Homoモ デ ル は 次 の3要 素 に よ っ て 定 義 す る こ とが で き る 。 す な わ ち,2つ の 誤 差 項 罵 と ロを 伴 う コ ブ ・ダ グ ラ ス 型 生 産 フ ロ ン テ ィ ア を 推 定 す る(4)式 と,そ れ ぞ れ の 誤 差 項 の 確 率 分 布 を仮 定 す る(2)式 と (5)式 で あ る 。(5)式 の 誤 差 項u,は,(2)式 の 誤 差 項vと 同 様 に独 立 か つ 同 一 の 分 布(1.1.d.)に 従 う無 作 為 変 数 で あ る が,非 負 の 平 均 値 を 持 つ 切 断 正 規 分 布 に 従 う 。 そ れ ぞ れ の 誤 差 項 は 互 い に,そ して 他 の 説 明 変 数 と も独 立 で あ る と仮 定 さ れ る 。 (4)ln(y、)=βo+βlln(瓦)+β21n(L、)+β31n(0、)+zノ ∫-z4、 ・

(17)

確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ ァ と 環 境 変 数 (5)z均 ∼iid/V+(〃z,6u) 75 このHomoモ デ ル と先 行 研 究 で あ る 中 山(2002)・ 原 田(2004)と の仮 定 の 相 違 は,(5)式 の誤 差 項u;の 分 布 に関 す る仮 定 で あ る。 す なわ ち,先 行研 究 で は(5)式 でm=0に 特 定化 す る 半正 規 分 布 を仮 定 した 半正 規 一正 規 モ デ ル を 用 い るの に対 し,本 項 のHomoモ デ ル は よ り柔 軟 な(5)式 の切 断 正規 分 布 を 仮 定 す る切 断 正 規 一正 規 モ デ ル を用 い る13)。 表4は,こ のHomoモ デ ルの 推 定結 果 で あ る。(6)式 で定 義 され る γが ゼ ロ で あ る とい う帰 無仮 説 は棄 却 され る ので,非 効 率 性 を表す 誤差 項uを 導 入 した (4)式 の 確 率 的 生 産 フ ロ ンテ ィ アモ デ ル は有 意 味 で あ る。 ま た予 想 され た よ う に,各 生 産 要 素 の係 数 値 は,表3の 全サ ンプ ルのOLSに よる係 数値 とほぼ 同 様 で あ り,そ の大 小 の順 位 も同一 で あ る。 ただ し,OLSの よ うな平均 で はな く, フ ロ ンテ ィ ア を推 定 して い る ため に,定 数 項 の 推 定 値 は上 昇 して い る点 が 大 きな相 違 点 で あ る。 (6)γ=6u/σ2,whereσ2=6v+6u 技術 効 率 性Eは,そ の フ ロ ンテ ィ アか らの距 離 で定 義 され,(7)式 に基 づ い て 推 定 され る。 す な わ ち,誤 差 項 全 体 ε、を所 与 と した場 合 の非 効 率性 を表 す 誤 差 項u,の 条 件 付 き期 待 値 で あ る。 (7)Ei=exp(-E(脇1ε 、)),whereε ・=勿 一z4・ 13)邦 語 文 献 で も水 道事 業 以外 で は,筒 井 ・佐 竹 ・内 田(2006),富 田(2006),茶 野 (2010)が 切 断 正 規 分 布 を用 い て い る 。 またYaneandBerg(2011b)は,上 記 の 2つ の仮 定 を含 む4種 類 の分 布 の仮 定 に基 づ く確 率 的 生 産 フロ ン テ ィア モ デ ルの 整 合 性 を検 討 して い る 。

(18)

表4全1325事 業 者の確 率的 生産フロンティアモデ ルの推 定結 果 Homoモ デ1レ Heteroモ デ1レ 0.282729*** 0.350*** 資本K (12.1361) (27.352) 0.288455*** 0.167*** 労働L (14.3047) (15.4462) 0.436223*** 0.342*** その他0 (21.5595) (27.9362) 一2.090925*** 一1 .37*** 定数 項 (-7.9449) (-8.5841) 0.624755*** 0.00462*** y (9.7367) (13868.27) LogLikelihood 一370 .9132 613.4241 O内 はZ値 。 ・,**,***はそ れ ぞ れ10,5,1%の 有 意 水 準 を表 す 。 表5全1325事 業 者の技術 効 率性Eの 基本 統 計量 平 均 標 準偏 差 最 小 値 25% 中央 値 75% 最 大値 Ehomo 0.7850 0.0877 0.3148 0.7382 0.8033 1.,.. 0.9452 Ehete 0.5742 0.1828 0.0854 0.4343 0.5574 0.6991 1 Homoモ デ ル に よ って 推 定 され た技 術 効 率 性 は,表5のEhomoの 欄 に示 さ れ て い る。 全 サ ンプル1325の 末端 給 水 事 業者 の技 術 効 率性Eの 平均 値 は 中央 値0.803よ り低 い0.785だ か ら,そ の 中央 値 を下 回 り最 も非 効 率 な事 業 者 の 0.315に 至 る広 い 範 囲 にわ た って 非 効 率 な事 業 者 が 存 在 して い る。 表4お よび表5に 要 約 され たHomoモ デル とそ の効 率性 の推 定 結 果 は,先 行 研 究 とは資 本 の 定 義 や 誤 誤 差 項 の 仮 定 が 異 な る もの の,同 じ全 サ ンプ ル を用 い た原 田(2004)の 結 果 と大 き く異 なる もので はな い。 ま さ に本稿 の 関心 は, この 種 の 環 境 要 因 を考 慮 しない 確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ ア とそ の 効 率 性 を,次

(19)

確 率的生 産 フロ ンテ ィァ と環境 変 数 項 の 環 境 変 数 を考 慮 した推 定 結 果 と比 較 検 討 す る点 にあ る。 77 3.2技 術 効 率 性 効 果 フ ロ ン テ ィ ア モ デ ル(Heteroモ デ ル) 本 項 で は,す で に(2-2)で 説 明 した7つ の 環 境 変 数 を 使 っ て,Battesand Coelli(1995)が 開 発 した 技 術 効 率 性 効 果 フ ロ ン テ ィ ア モ デ ル(Technological EfficiencyEffectsFrontierModel)を 日本 の 水 道 事 業 に初 め て 適 用 す る14)。こ の 環 境 要 因 に 起 因 す る 異 質 性 を 考 慮 し た モ デ ル をHeteroモ デ ル と略 称 す れ ば こ のHeteroモ デ ル が 前 項 のHomoモ デ ル と 異 な る 点 は,前 項 の よ う に 平 均 値 mを 定 数 と仮 定 す る の で は な く,(8)式 の よ う に 環 境 変 数Zの 関 数 と み な す 点 に あ る 。 こ れ は,Coelli(1996)やCoelliet.al.(2003,2005)が 繰 り返 し説 明 して い る よ う に,た と え ば 中 山(2002)・ 原 田(2004)は 本 稿 のHomoモ デ ル の,そ し てHomoモ デ ル は 本 項 のHeteroモ デ ル の 特 殊 ケ ー ス と な る よ う に, 非 効 率 性 を 表 す 誤 差 項 の 平 均 値 に 関 す る 一 般 的 な 仮 定 とみ な し う る 。 (8)〃z、=Z;δ ゆ え に,こ のHeteroモ デ ル は,前 項 のHomoモ デ ル で は 一 定 と仮 定 され た 非 効 率 性 の 誤 差 項 の 平 均 値 を 事 業 者 問 で 異 な り う る こ と を 許 容 で き る た め, 環 境 要 因 の 相 違 に よ る 事 業 者 間 の 異 質 性 を 考 慮 で き る 。 す な わ ち,も は や(5) 式 の よ う に 同 一 の 分 布 で は な い 。 しか し(5)式 の 分 散 は 一 定 の ま ま で あ る と い う意 味 で は,誤 差 項 の 不 均 一 分 散 を 直 接 修 正 し よ う とす るHadri(1999)お よ びHadriet.al.(2003)に よ る 不 均 一 分 散 修 正 ア プ ロ ー チ,そ れ を 日本 の 水 道 事 業 に 適 用 したYaneandBerg (2011a,b)と も異 な る 点 に 留 意 す べ きで あ る 。 と い う の も,こ れ ら の不 均 一 分 散 を 直 接 修 正 し た 確 率 的 フ ロ ン テ ィ ア の 係 数 推 定 値 は,同 じ環 境 変 数 を 用 14)BattesandCoelli(1995)の 貢 献 と し て パ ネ ル 分 析 へ の 拡 張 を重 視 す る な ら,こ の 種 の ク ロ ス セ ク シ ョ ン モ デ ル の 起 源 は さ ら に さ か の ぼ る こ と が で き る 。Coelliet. al.(2005,p.282)お よ びKumbhakarandLovell(2000,pp.266-71)を 参 照 。

(20)

い たFGLSの 推 定 結 果 と大 き く は 変 わ ら な い か ら で あ る'5)。 事 実,表4のHeteroモ デ ル の 労 働 の 係 数 推 定 値 は 表3のFGLSの 結 果 と大 き く異 な っ て お り,上 述 し たHomoモ デ ル とOLSの 推 定 結 果 の 類 似 性 と対 照 的 で あ る 。 そ の 結 果,係 数 の 大 小 の 順 位 も ま っ た く異 な る こ と に な る 。 こ れ は, Appendixで 示 さ れ て い る よ う に,7つ の 環 境 変 数 が す べ て 有 意 に作 用 し て い る 結 果 で あ る 。 ま た,テ ス トす る 必 要 も な い ほ ど十 分 に 尤 度 も大 き く な っ て い る 。 特 に 注 目す べ き点 は,表4のHeteroモ デ ル の 推 定 結 果 がHomoモ デ ル と大 き く相 違 す る 事 実 で あ る 。Kの 係 数 が 大 き く上 昇 す る 一 方,五 と0の 係 数 は 非 常 に 低 く な る 。 ゆ え に,推 定 さ れ る フ ロ ン テ ィ ア の 形 状 も変 化 して お り,実 際 に 定 数 項 の 推 定 値 は フ ロ ン テ ィ ア の 上 方 シ フ トを 示 唆 して い る 。 換 言 す れ ば,平 均 的 な 技 術 効 率 性 は 低 下 す る こ と に な る 。 そ の 結 果,表5のHeteroモ デ ル か ら推 定 さ れ た 技 術 的 効 率 性Eheteの 平 均 値 は0.574に 大 き く低 下 して い る 。 こ の 平 均 値 が 中央 値 よ り も低 い 点 も,Ehomo と対 照 的 で あ る 。 表6EhomoとEheteの 相 関 係 数 Ehomo Ehete Ehomo 1 0.7059 Ehete 0.7034 1 対 角 線 より下 はピアソンの相 関係 数 上 は スピアマンの順 位 相 関係 数 し た が っ て,表6に 示 さ れ て い る 両 モ デ ル の 効 率 性 の 相 関 係 数 は,水 準 で も ラ ン キ ン グ で も0.7程 度 に す ぎ な い 。 こ れ は,図4に 描 か れ て い る よ う に, 15)YaneandBerg(2011b)で は,こ れ ら分 散 修正 モ デル 間 の整 合 性 と共 に,平 均 値 が 異 な り うる モ デ ル の推 定 結 果 との 相 違 も指 摘 され て い る。

(21)

確 率的生 産 フロ ンテ ィア と環境 変 数79 効 率性 の分 布 が 大 き く変 化 す る か らであ る。 す な わ ち,Homoモ デ ルで推 定 し た効 率 性Ehomoは 効 率 性 の高 い水 準 に集 中 して い たの に対 し,Heteroモ デ ル で 推 定 した効 率 性Ehheteは ず っ と低 い水 準 で最 頻値 を持 つ勾 配 の 緩 や か な 曲 線 を描 く。 こ の効 率 性 の分 布 の相 違 は,環 境 変 数 導 入 の 重 要 性 を物 語 る。 と りわ け Ehomoの 高 効 率 事 業者 に対 して は,特 に重 要 で あ る。 事 実,Appendixに 示 さ れ て い る よ う に,取 水 規 模 ・受 水 比 率 ・地 下 水 比 率 ・負 荷 率 ・顧 客 密 度 が 高 い ほ ど,そ して平均料金 ・補助金比率が低い ほ ど,技 術効率性 は高 まる。 ゆ え に図4のEhomoの 高 効 率 事 業 者 の 中 に は,前 者 の好 環 境 に恵 まれ ず,後 者 の 悪 環 境 に直 面 した事 業 者 が 大 半 を 占め る と思 われ る。 図4EhomoとEheteの 分 布 の 比 較 Eh・t・1 Ehomo したが って,生 産 フ ロ ンテ ィ アの 係 数 値 お よ び効 率 性 の 相 関 係 数 や 分 布 を み る限 り,環 境 要 因 を考 慮 しない 確 率 的 生 産 フ ロ ン テ ィ アお よ びそ れ に基 づ

(22)

くベ ン チ マ ー キ ン グ の 推 定 結 果 は ミス リ ー デ ィ ン グ で あ る 。 次 節 で は,特 に 効 率 性 ラ ン キ ン グ の 具 体 的 な バ イ ア ス に つ い て,さ ら に 検 討 し よ う 。 4.環 境 変 数 と 技 術 効 率 性 前 節 で は,環 境 変 数 を考 慮 せ ず に推 定 され た技 術 効 率性Ehomoは,環 境 の 異 質性 を考 慮 した技 術 効 率 性Eheteと 大 幅 に異 な り,ミ ス リー デ ィ ン グな指 標 とな る危 険 性 を示 唆 した。 そ こで 本 節 で は,ま ず 環 境 変 数 との 関 係 を含 め た 両 効 率 性 の 分 布 の 吟 味 を通 じて,複 数 の 環 境 変 数 を 同時 に考 慮 す る重 要 性 を 確 認 す る。 次 に,実 際 にそ れ ぞ れ の 指 標 の 上 位 お よ び下 位 に ラ ン ク イ ンす る 事 業 者 を取 り上 げ,環 境 変 数 との 関 連 性 とそ の 特 徴 を詳 細 に検 討 す る。 4.1環 境 変 数 と技 術 効 率 性 の分 布 図4で 描 か れ た よ う に,技 術 効 率 性 の 分 布 は環 境 変 数 を考 慮 す る こ とに よ って 大 き く変 化 す る。 そ こで,実 際 に両 モ デ ル の 効 率 性 を さ らに比 較 ・検 討 して み よ う。 図5は,環 境 要 因 を考 慮 しないHomoモ デ ル の 技術 効 率 性(Ehomo)を 横 軸 に,環 境 変 数 に よ る異 質性 を考 慮 したHeteroモ デ ル の技 術 効 率性(Ehete) を縦 軸 に と っ た散 布 図 で あ る。45度 線 は両 者 の値 が 等 しい 点 を表 す の で, Ehomoの 水 準 で は効 率 性 を全 体 と して過 大 評 価 して きた こ とが わ か る。 特 に Ehomoの 値 が 高 い場 合 には,必 ず しもEheteの 値 が 高 い とは限 らない点 に注 目 す べ きで あ る。 ま た,比 較 的 高 い 効 率 性 水 準 に事 業 者 が 数 多 く集 中す る一 方 で,効 率 性 の 低 い 事 業 者 は比 較 的 少 数 で 散 らば って い る。 これ らの 事 実 は, 前 節 で の 観 察 結 果 と整 合 的 で あ る う え,次 項 で 説 明 す る ラ ン キ ン グ結 果 の 比 較 に も影 響 を与 えて い る。

(23)

確 率 的 生 産 フ ロ ンテ ィ ァ と環 境 変 数 図5EheteのEhomoに 対 す る散 布 図 81 次 に,先 行 研 究 で も繰 り返 し言 及 され て きた環 境 要 因の1つ で あ る平 均 料 金 と効 率 性 の 関 係 を例 に して,環 境 の 異 質 性 の 考 慮 が 効 率 性 の 推 定 に及 ぼす 影 響 を検 討 しよ う。平 均料 金(UPrice)と 効 率性Ehomoと の散 布 図 が 図6,効 率 性Eheteと の散 布 図 が 図7で あ る 。横 軸 に平均 料 金,縦 軸 に効 率 性 の値 を と って い るの で,平 均 料 金 が 高 け れ ば効 率 性 は低 くな る。 す な わ ち,Appendix に示 され て い る よ う に,平 均 料 金 は補 助 金 比 率 と同様 効 率 性 と負 の 相 関 に あ る悪 環 境 なの で あ る。

(24)
(25)

確 率 的 生 産 フ ロ ンテ ィ ア と環 境 変 数83 さ ら に,7つ の 環 境 変 数 を 同 時 に 考 慮 し て 推 定 さ れ た 図7は,図6に 比 べ て 散 度 が 高 ま っ て い る 。 事 実,順 位 相 関 係 数(相 関 係 数)を 調 べ る と,Ehomo が 一〇.8(-0.76)で あ る の に 対 し,Eheteは 一 〇.72(-0.72)と 若 干 低 下 し て い る 。 こ れ はEheteに は 環 境 の 異 質 性 が 考 慮 さ れ た た め で あ る 。 さ ら に,直 線 の フ ィ ッ トが 示 す よ う に,Eheteに お け る勾 配 の 絶 対 値 は 約2 倍 に 高 ま り,時 計 ま わ り に 回 転 して い る 。 す な わ ち,低 料 金 の 事 業 者 の 効 率 性 は 上 昇 し,高 料 金 の 事 業 者 の 効 率 性 は 下 落 して い る 。 ゆ え に 環 境 要 因 に よ る 効 率 性 の 修 正 は,平 均 料 金 と効 率 性 の 相 関 を 若 干 低 下 さ せ る もの の,有 利 な 環 境(低 料 金)に あ れ ば 効 率 性 を 引 き上 げ,不 利 な 環 境(高 料 金)に あ れ ば 効 率 性 を 引 き下 げ る 傾 向 に あ る 。 た だ し,Eheteは7つ の 環 境 変 数 を 同 時 に考 慮 した 結 果 な の で,効 率 性 水 準 は 全 般 的 に 大 き く低 下 して い る 。 そ れ ゆ え,EheteをEhomoと 比 較 し検 討 す る 場 合 に は,両 者 の 水 準 自 体 よ り も順 位 の 方 が 有 益 で あ ろ う 。 4.2環 境 変 数 とベ ン チ マ ー キ ン グ 本 項 で は,ま ず 両 モ デ ル に よ る効 率性 の上 位 お よび下 位20位 の 具体 的 な ラ ンキ ング を比 較 検 討 す る。 表7・8は,環 境 要 因 を考慮 してい ないHomoモ デ ルの技 術 効 率 性Ehomoを 順位 づ け た もの で あ り,表7が 上 位20位,表8が 下 位20位 の ラ ンキ ングで あ る。 表9・10は,環 境 の異 質性 を考慮 したHeteroモ デ ルの 技 術 効 率 性Eheteの 順 位 を表 した もの で あ り,表9が 上 位20位,表10 が 下 位20位 の ラ ンキ ングで あ る 。 そ れぞ れ の表 の特 徴 は 以下 の よ うに要 約 で きよ う。 第1に,環 境 要 因 を考 慮 しな いEhomoが 高 い 事 業者(表7)を 検討 して み る と,東 海 地 方 の 事 業 者 が45%と 半分 近 く 占め る こ とが わか る 。5分 位 の取 水 量 で 表 され た規 模 の 変 数 は,下 位 ラ ンキ ング と比 べ て相 対 的 に大規 模 であ る。 受 水 比 が す べ て0%と な って お り,地 下 水 比 が100%と い う事 業 者 が 多 数 を 占め る。 平 均 料 金 は全4表 の 中で 最 も低 く,補 助 金 比 率 も低 い 。 顧 客 密 度 お よ び給 水 人 口の 数 値 は下 位20位 と比 較 して 高 い こ とが特 徴 で あ る 。

(26)

第2に,Ehomoが 低 い事 業 者(表8)を み る と,半 数が 北 海道 ・東 北 地方 で あ る。 また,取 水 規 模 も人 口規模 もそれ ぞ れ0,す なわ ち最 小 規模 グ ルー プが 目立 つ 。 平 均 料 金 は上 位 ラ ンキ ング と比 べ1桁 大 き く,補 助 金 比 も同様 に高 い 。 さ らに,表 中55%の 事 業 者 の地 下水 比 が5割 以 下 とい う事 実 も注 目に値 す る。 表7Homoモ デ ル の技 術 効 率 性(Ehomo)上 位20ラ ンキング 縣 霞嘗主体1唖Ehete 琳 ⊥口 湘 獅 壁 ■員 豊 躰 此 幽下 *比 融 密度 平均 軒壷 楓抽 蹴 劇也 圏 2 国 4 3Q 上富田町 4.45 0.98 ヨ 1 4 , Q 1QQ 191測 63.14 a 11 30 t6 0.94 U.za i i 4 3 0 1㎝ 113.27 7T.95 1.i7 帥門 富土国口湖町 zaO.9ヨ 嗣 廟 軋9ヨ t 4 1 4 i$ 0 1㎝ 89.58 55.94 4 0.93 a.田 3 1 4 A 0 100 14三.16 ヨ71 11.85 5 f 4 ヨ 3 29 a 34 15L9乱 sa.zz 9.2d 6 fi 0.9ヨ o」1ヨ , 2 4 日 0 田 15463 且乱忠ヨ 0 7 ユ1 輌定楠 o,9ヨ x.67 4 Q 4 i 9 140 13三,97 呂乱55 1.06 22 4山陶 4.9ヨ o.田 t 1 4 6 0 Ioo 184.15 53.57 4 8 ■   10 35 董住融 o.9ヨ x.79 t 2 4 S 0 1㎝ zヨa.az 14.43 a 21 0.92 o.日7 3 ヨ 3 30 4 1㎝ト 115.44 72.13 日,15 11 羽肺 22iI°,92 350.92 匪飾 k 4 ヨ 3 9 Q 10U 17ε.了6 73.55 4 12 x.99 4 ヨ 1 29 0 5 1a4,石 74.fi1 巳,35 1ヨ t9 o」i2 0.61 3 3 3 巳 4 100 11419 弱,93 o,石〒 14 麗 長紬 O.9z 廿.日5 2 2 4 9 0 i zas.T 呂2.田 a 15 is 冨士百師 622 o.9a 3 ヨ 3 16 0 1㎝ 136.83 57.#1 自.75 1fi 21 妨 睡 0.92 0.75 1 1 4 ヨ 0 1加 163.ア聾 7乱71 1.85 17 39 帖2 o.7 2 z 3 3 4 loo 105.57 114.4 a 18 踊 市 ヱ2-"』2 鷺■市 t 4 a 3 71 0 1〔皿 ヨ11」as 5ア,冊 1.25 19 za 0.9] o一ヨ9 d ヨ 3 20 4 1㎝ 1田 」11 3t-26 0 20 且1 笠期 o』1 p.72 1 1 4 4 0 i 1}日.57 昌o.75 p.46

(27)

表8

確 率 的 生 産 フ ロ ンテ ィ ァ と環 境 変 数 Homoモ デ ル の技 術 効 率 性(Ehomo)下 位20ラ ンキング

85

(28)

表10Heteroモ デ ル の技 術 効 率 性(Ehete)下 位20ラ ンキング 第3に,Eheteの 高 い事 業 者(表9)の うち,表7の 事 業 者 と重複 す る事 業 主 体 は5事 業 者 の み で あ る(表7と 重 複 す る事 業 者 は経 営 主 体 名 に網 掛 け を して 示 して い る)。 重 複 せ ず 新 た に ラ ン ク イ ン した事 業 者 は表7の 事 業 者 とは 異 な っ た特 徴 を持 ち,受 水 比 率 が 高 い 。 これ らの 重 複 して い ない 事 業 者 の う ち53%は 受水 比 率 が50%以 上 で あ る。 上 位2事 業 者 の 地 下 水 比 率 は0%で あ るが,首 位 で あ る聖 籠 町 と第2位 の 鳥 栖 市 は顧 客 密 度 が サ ンプ ルの 中で も 異 常 に高 く,デ ー タの 信 頼 性 に問 題 が あ る16)。 第4に,Eheteが 低 い事 業 者(表10)の 特徴 は,Ehomoの 下 位 ラ ンキ ン グ (表8)と の 問 に60%(12事 業)も の 事 業 者 が重 複 す る点 で あ る。 したが っ て 表8と 同様 に,上 位 ラ ン キ ン グ と比 べ る と,取 水 規 模 ・人 口規 模 ・職 員 数 は 16)聖 籠 町 の 前 後 の 年 度 の給 水 人 ロ デ ー タは,大 き く変 動 して い ない し,水 道 管 延 長 距離(1,000rn)も2007年 の 前 後 を含 む3年 間 は1.21と 全 く変 化 して い な い。 し か し,2005年,2008年 の水 道 管延 長 デ ー タは,そ れ ぞれ120.83,121.62と2桁 も 大 き くな っ て い る た め,こ の 数値 を信 頼 す れ ば2006-2008年 度 の 顧 客 密度 は異 常 に 高 い 。 鳥栖 市 に つ い て も同 様 で,2007年 度 の 前 後1年 を含 む3年 間 の水 道 管 延 長距 離 は ほ ぼ 同 じだ が,2005・2008年 度 の値 は そ れ ぞ れ8倍 前 後 と非 常 に 高 い 。

(29)

確 率的生 産 フロ ンテ ィア と環境 変 数87 少 な く,顧 客 密 度 も低 い 。 平 均 料 金 や 補 助 金 比 率 は上 位 ラ ン キ ン グ に比 べ て 高 くな る傾 向 が あ る。 結 局,事 業 者 の 数 が 多 く集 中 して い る効 率 的 な グル ー プで は,上 位 ラ ン キ ングの 入 れ 替 わ りが 激 し く,逆 に事 業 者 数 が 少 ない 非 効 率 な グル ー プで は, 下 位 ラ ンキ ングの 顔 ぶ れ はあ ま り変 化 しない 。 これ は,す で に検 討 した 図4・ 5の 結 果 と整 合 的 で あ る。 また,Ehomoの 上 位 とEheteの 上位 ラ ンキ ング(表7・9)の 事 業者 の効率 性 の 値 を比 べ る と,Eheteの 方 が 比較 的高 い 。 同様 に下 位 ラ ンキ ン グ を比 較 す る と,逆 にEheteの 方 が低 い。 これ も また 図4・5お よび 図6・7と 整合 的 な結 果 で あ る。 さ らに,EhomoとEheteの そ れ ぞ れ 上位 ・下位10%の 事 業 者 に まで分 析 範 囲 を拡大 し,こ れ ら事 業 者 の 環境 変 数 の 平均 値 を比 較 した表11を 吟 味 して も, 上 記 の 傾 向 を裏 付 け る こ とが で きる。 網 掛 けで 示 した環 境 変 数 の 平 均 値 の 最 高 値 と最 低 値 をみ れ ば,取 水 量 ・給 水 人 口 ・職 員 数 ・顧 客 密 度 ・補 助 金 比 の 最 高 値 と最 低 値 は,い ず れ も環 境 変 数 を導 入 したHeteroモ デ ル の 値 で あ る 。 最 高 値 と最 低 値 の 両 方 がHomoモ デ ル で あ る環 境 変 数 は地 下水 比 の みで あ る。

(30)

表11Ehomo・Ehete上 位 ・下 位10%事 業 者 の環 境 変 数 の 平 均 値 EhomoIEhete 取 水 量 給 水 人 ロ 職 員 数 Ehomo上 位10%平 均 ■0,77 Ehomo下 位10%平 均 ■0.32 22295 51574 13.68 Ehe†e上 位10%平 均 0.86 8180124172 0,780.573342090658 14.00 36.58 Ehe†e下 位10%平 均 0.63 全 サンプル平均 顧 客 密 度 補 助 金 比 受 水 比 地 下 水 比 Ehomo上 位10%平 均169.792.86 Ehomo下 位10%平 均28.0585.94 Ehe†e上 位10%平 均70.95131.48 29.06 平 均 料 金 247.21 29.97 .: Ehe†e下 位10%平 均 43.90 全 サンプル平均 z8.〉 〉 62.24 156.03 177.96 Ehomoの 上位10%が 最 も低 い 受水 比 の平均 値 を示 し,Eheteの 上位10%が 最 も高 い受 水 比 の平 均 値 を有 す る点 は注 目に値 す る。す なわ ち,Homoモ デル の 下 で は,受 水 比 が 低 い 事 業 者 が 上 位 を占 め,こ れ とは対 照 的 にHeteroモ デ ル を用 い る と受 水 比 が 高 い 事 業 者 が 上 位 を 占め るの で あ る。 受 水 比 が 高 い 事 業 者 は平 均 料 金 が 高 い 傾 向 にあ るが,高 い 平 均 料 金 に よ る効 率 性 へ の 影 響 を 考 慮 したモ デ ルで は,受 水 比 が 高 くて も必 ず し も効 率 性 が 低 くな る とは限 ら ない 。 これ は,平 均 料 金 の 平 均 値 が,Ehomoの 上位10%で 最 も低 く,Ehete の 上 位10%の 平 均 値 とあ ま り差 が な い こ とか ら も確 認 で きる 。 さ らに,Ehomoと 比 べ てEheteで は,取 水 や 人 口の規 模 の大 きさ と効 率性 と の 関 係 が い っそ う鮮 明 に な る。 しか し経 営 者 が コ ン トロー ル しえ ない 環 境 要 因 を考 慮 した場 合 で も,平 均 料 金 が 安 く,地 下 水 へ の 依 存 度 が 高 く,受 水 比 率 が 低 い 小 規 模 事 業 者 は効 率 性 が 高 い こ とはす で にみ た とお りで あ る。 た だ し,こ う した環 境 変 数 を 同時 に考 慮 す れ ば,地 下 水 に必 ず し も依 存 せ ず,受 水 比 も低 い 事 業 で もラ ン ク入 り し,平 均 的 な事 業 規 模 も大 き くな る点 に注 目

(31)

確 率的生 産 フロ ンテ ィァ と環境 変 数 89 す べ き な の で あ る 。 こ う し た 特 徴 は,環 境 要 因 を 考 慮 して い な い 原 田(2004)が 示 し た 上 位 お よ び 下 位10位 の ラ ン キ ン グ 表 と も整 合 的 で あ る(重 複 し て い る 事 業 者 は 順 位 に 網 掛 け を して 示 して い る)。 特 に,原 田(2004)の 下 位10事 業 の 半 数 が 本 稿 の 表8に ラ ン ク イ ン して い る 点 は 注 目 に 値 す る 。 逆 に,原 田(2004)の 上 位10事 業 の う ち,本 稿 の 表7に ラ ン ク イ ン し て い る の は3事 業 の み で,表9 で は わ ず か1事 業 に す ぎ な い 。 こ れ らの 事 実 は,下 位 の 事 業 者 の 効 率 性 は 年 数 を 経 て も ほ と ん ど向 上 して い な い だ け で な く,本 稿 の 環 境 変 数 の 考 慮 が 効 率 性 の 低 い 事 業 者 よ り も,効 率 性 の 高 い 事 業 者 の ラ ン キ ン グ に 大 き な 影 響 を 与 え る こ と を 示 唆 して い る 。 事 実,上 位 ・下 位,そ れ ぞ れ10%の 事 業 者 数 に 比 較 対 象 を 拡 大 し,Ehomo とEheteの 問 で 同 じ よ う な 重 複 の 有 無 を 検 証 し て も 同 様 な結 果 を 得 る 。 す な わ ち,上 位10%(133事 業)で は33%(44事 業)し か 重 複 し て ラ ン ク イ ン し な い の に 対 し,下 位10%(132事 業)で は62%(82事 業)も 重 複 す る 。 しか も 実 際 に,上 位 ・下 位 で 重 複 す る 事 業 者 の 効 率 性 の 相 関 係 数(順 位 相 関 係 数) も,上 位10%で は0.Ol(0.Ol),下 位10%で は0.67(0.54)と 大 差 が あ る 。 つ ま り,環 境 変 数 を 導 入 し た 効 率 性 ラ ン キ ン グ の 修 正 は,下 位 よ り も上 位 事 業 に 大 き な 影 響 を 与 え る 。 最 後 に,表7お よ び 表9の い ず れ の 上 位20位 リス トの 中 に も,所 有 型5で 示 さ れ る 企 業 団 は 含 ま れ て い な い17)。 と こ ろ が,表8お よ び 表10の 下 位 リス トの 中 に は,3事 業 が 含 ま れ て い る 。 事 実,企 業 団 の 効 率 性 は,全 事 業 者 の 平 均 を 下 回 っ て い る 。 し た が っ て,企 業 団 の 効 率 性 は 効 率 的 で あ る よ り も,平 均 的 に は む し ろ 非 効 率 に み え る 。 た だ し,企 業 団 のEhomoの 平 均 値(0.73) は 町 村 事 業 者 の そ れ(0.77)を 下 回 る もの の,Eheteの 平 均 値(0.55)は 町 村 事 業 者 の 平 均 値(0.48)を 上 回 る こ と に 留 意 す べ きで あ る 。 な ぜ な ら,町 村 17)表7-10の 所 有 型1は 都 道 府 県,2は 政令 指 定都 市,3は 市,4は 町 村 が事 業 主 体 で あ る こ と を示 して い る 。

(32)

営 か ら企 業 団 へ の 移 行 が 効 率 性 を促 進 す る根 拠 は,環 境 の 異 質 性の 考 慮 な し に は見 出 し難 い よ う にみ え るか らで あ る。 5分 析 の 結 論 と 課 題 本 稿 で は,取 水 規 模 ・受 水 比 率 ・地 下 水 比 率 ・負 荷 率 ・顧 客 密 度 ・平 均 料 金 ・補 助 金 比 率 の7つ の 環 境 要 因の 相 違 に よ る事 業 者 の 異 質 性 を考 慮 して, BattesandCoelli(1995)が 開発 した技 術 効 率性 効 果 フロ ンテ ィア モ デ ル (TechnologicalEfficiencyEffectsFrontierModel)を 日本 の 水 道 事 業 に初 め て 適 用 した。 そ の 結 果,本 稿 の 事 業 者 の 効 率 性 ラ ン キ ン グ は,特 に効 率 的 な 事 業 者 グ ル ー プ にお い て,先 行 研 究 に基 づ くラ ンキ ング と大 幅 に異 な る こ と が 明 らか に され た。 す な わ ち,環 境 要 因の 相 違 を考 慮 しない 従 来 の ラ ン キ ン グ は事 業 者 の 相 対 評 価 を ミス リー ドしか ね ない の で あ る。 これ は,取 水 規模 ・ 受 水 比 率 ・地 下 水 比 率 ・負 荷 率 ・顧 客 密 度 が 高 い ほ ど,そ して 平 均 料 金 ・補 助 金 比 率 が 低 い ほ ど,水 道 事 業 の 効 率 性 が 高 い か らで あ る。 ゆ え に,事 業 者 の 効 率 的 な経 営 を 目指 す 公 共 政 策 を策 定 す る ため に は,従 来 の ベ ンチ マ ー キ ン グ手 法 の 再 考 が 必 要 で あ ろ う。 そ の ため に は,確 率 的 生 産 フ ロ ンテ ィ ア分 析 に範 囲 を限 定 した と して も, 中 山(2003)に よ って 方 向 づ け られ た基 本 的 な変 数 ・関 数 型 ・推 定 手 法 の 更 な る展 開が 必 要 で あ る。 まず,変 数 に関 して い え ば 取 水 や 配 水 の 水 質 お よ び水 道 管 や 施 設 の 老 朽 問 題 を考 慮 す る必 要 が あ ろ う。 矢 根(2012)が 明 らか に して い る よ う に,大 半 の 末 端 給 水 事 業 者 が 依 存 して い る地 下 水 の 水 質 保 全 が きわめ て 重 要 で あ る と同時 に,配 水 管 を は じめ とす る水 道 施 設 が 今 日ま さ に更 新 時 期 の ピ ー ク を迎 えて い るか らで あ る。 関 数 型 につ い て も,そ の 選択 が 効 率性 の推 定 に直結 してい るだ け に,コ ブ ・ ダ グ ラス 型 以外 の関 数 の吟 味 も重 要 で あ る。YaneandBerg(2011b)は トラ ンス ロ グ型 生 産 関 数 を推 定 して い るが,本 稿 の 生 産 要 素 の 組 み 合 わせ で は ト ラ ン ス ロ グ型 生 産 関 数 は う ま くフ ィ ッ トしない 。 ゆ え に,ト ラ ンス ロ グ型 生 産 関 数 を適 用 す る に は,上 記 の変 数 選択 の 問題 に戻 っ て再 考 す る必 要 が あ る。

(33)

確 率的生 産 フロ ンテ ィァ と環境 変 数 91 本 稿 で も強 調 した よ う に推 定 手 法 につ い て は,散 度 の きわめ て 高 い 日本 の 水 道 事 業 の ベ ンチ マ ー キ ン グ に は環 境 変 数 の 導 入 が 不 可 欠 で あ る。 そ の 導 入 の 方法 も,本 稿 の よ うに非 効率 性 を表 す誤 差 項 の平均 値 を説 明す る のか,Yane andBerg(2011b)の よ うに分 散 を修 正 す る のか,あ る い は双 方 を併 用 す るの か 多 様 で あ ろ う。 た だ し,い ず れ の ア プ ロ ーチ もク ロス セ ク シ ョ ン分 析 で は そ の 誤 差 項 の 分 布 に特 定 の 仮 定 を要 す るの で,今 後 の 異 質 性 の 十 分 な分 析 に はパ ネ ルデ ー タの 整 備 が 必 要 に な る。 ま た(4-2)で 指 摘 した よ う に,異 常 値 が 効 率 性 に影 響 して い る可 能 性 が 高 い の で,パ ラ メ トリ ック な分 析 にお い て もア ウ トラ イヤ ーの 除 去 が 必 要 か も しれ ない 。 最 後 に,EFAの 信 頼1生を高 め るた め に も,こ う した パ ラメ トリ ッ クな分 析 結 果 を環 境 要 因 を考 慮 した ノ ンパ ラ メ トリ ック な分 析 結 果 と比 較 す る こ と も 重 要 で あ ろ う。 批 判 の 多 い2ス テ ップ ア プ ロー チ を 除 けば,DEAに お い て も 環 境 変 数 の 導 入 は遅 れ て お り,環 境 要 因 を考 慮 した両 ア プ ロー チ の 整 合 性の 吟 味 は未 だ試 み られ て い ない か らで あ る。 参 考 文 献 Aida,K.,W.W.Cooper,J.T.Pastor,andT.Sueyoshi(1998),"Evaluatingwatersupply servicesinJapanwithRAM:Arange-adjustedmeasureofinefficiency,"Omega, 26,207-232. Baltagi,B.(2008),EconometricAnalysisofPanelData,4`hed.,Wiley. Battese,G.E.,andT.J.Coelli.(1995),"AModelforTechnicalInefficiencyEffectsina StochasticFrontierProductionFunctionforPanelData,"EmpiricalEconomics, 20,325-332. Cameron,A.C.andP.K.Trivedi(2010),MicroeconometricsUsingStata(RevisedEdi-tion),STATAPress. Coelli,T.J.(1996),"AGuidetoFRONTIERVersion4.1:AComputerProgramforSto- drasticFrontierProductionandCostFunctionEstimation,"CEPAWorkingPa-pers,DepartmentofEconometrics,UniversityofNewEngland,No.7/96. Coelli,T.,Estuche,A.andPerelman,S.(2003),APrimerforEfficiencyMeasurement

(34)

forUtllitisandTransportRegulators,WorldBankPublications. Coel!i,T.J.,Rao,D.S.P.,O'Donnell,C.J.andBattese,G.E.(2005),AnIntroductiontoEffi-ciencyandProductivityAnalysis,2ndEdition,Springer,NewYork. Coelli,T.andS.Walding(2007),"PerformanceMeasurementintheAustralianWater SupplyIndustry:APreliminaryAnalysis,"inCoelli,T.andD.Lawrence(Eds.)(200'x, PerformanceMeasurementandRegu!ationNetworkUtllltles,EdwardElgar. Davis,PeterandElianaGarces(2009),QuantitativeTechniquesforCompetitionand AntitrustAnalysis.Princeton:PrincetonUniversityPress.

Fried,H.;Lovell,K;Schmidt,S.(eds.)(2008),乃 θル た ∂sαrθmθn亡o∫Pωdロc加 θ 脳 『αbηcy『

andProductivityChange.OxfordUniversityPress,NewYork Greene,W.H.(2008)."TheEconometricApproachtoEfficiencyAnalysis."InH.O.Fried, C.A.K.Lovell,andS.S.Schmidt,eds.TheMeasurementofProductiveEfficiency andProductivityChange.NewYork:OxfordUniversityPress,pp.92-250. Hadri,K(1999),"Estimationofadoublyheteroscedasticstochasticfrontiercostfunction," ノournalofProductivityAnalysis,7,161-76。 Hadri,K,Guermat,C.andWhittaker,J.(2003),"Estimatingfarmefficiencyinthepres-enceofdoubleheteroscedasticityusingpaneldata,"JournalofAppliedEconomics, 6255-68. 原 田 禎 夫(2004)「 水 道 事 業 の 効 率 性 分 析 」 「経 濟 學 論 叢 』55(4),101-134, 石 原 俊 彦 ・菊 池 明 敏(2011)「 地 方 公 営 企 業 経 営 論 』 関 西 学 院 大 学 出 版 会 KumbhakarS.C.andLovell,C.A.K.(2000),StochasticFrontierAnalysis,Cambridge UniversityPress. 中 山 徳 良(2002)「 水 道 事 業 の 経 済 効 率 性 の 計 測 」 『日 本 経 済 研 究 』4,23-40。 中 山 徳 良(2003)『 日 本 の 水 道 事 業 の 効 率 性 分 析 』 多 賀 出 版 Saal,D.S.&D.Parker(2007),"AssessingthePerformanceofWaterOperationsinthe EnglishandWelshWaterIndustry:ALessonofImplicationsintheInappropriately AssumingaCommonFrontier."pp.297-328,inE.Coelli,T.&Lawrence,D.,2007. PerformanceMeasurementAndRegulationofNetworkUtilities,EdwardElgar Publishing. 田 平 正 則(1998)「 滋 賀 県 下 市 町 村 の 上 ・下 水 道 事 業 の 費 用 分 析:生 産 関 数 に よ る 接 近 」 「彦 根 論 叢 』,第311号,pp.95-116 富 田 輝 博(2002)「 企 業 の 経 営 効 率 」 『経 済 学 研 究 』 第68巻 第4・5号,pp.27-45. 筒 井 義 郎 ・佐 竹 光 彦 ・ 内 田 浩 史(2005)「 都 市 銀 行 に お け る 効 率 性 仮 説 」 『RIETIDiscus一

(35)

確 率的生 産 フロ ンテ ィァ と環境 変 数 93 sionPaperSeriesO5-jO27』pp.1-31. 茶 野 努(2010)「 消 費 者 金 融 会 社 の 市 場 競 争 お よ び 効 率 性 」 『武 蔵 大 学 論 集 』 第57巻 第 3・4号,pp335-339. Yane,Shinji,andSanfordV.Berg.(2011a),"ADominantEffectofCorrectingHeterosce- dasticityonPerformanceMeasures:ADoublyHeteroscedasticProduction-Fron-tierModelofJapaneseWaterUtilities."MomoyamaGakuinUniversity,Working Paper,No.38. Yane,Shinji,andSanfordV.Berg.(2011b),"SensitivityAnalysisofEfficiencyRankings toDistributionalAssumptions:ApplicationstoJapaneseWaterUtilities."University ofFlorida,DepartmentofEconomics,PURCWorkingPaper. 矢 根 眞 二(2012)「 朽 ち る 水 道 イ ン フ ラ:老 朽 管 の 更 新 投 資 必 要 額 と 水 道 料 金 」 「総 合 研 究 所 紀 要 』(桃 山 学 院 大 学)第37巻 第3号,pp.1-21. Zschile,MicheaelandMatthiasWalter(2012),"TheperformanceofGermanwaterutili-ties:a(semi)-paramaetricanalysis,"AppliedEconomics,44,3749-3764. Appendix第2節 ・3節 の モ デ ル に お け る 環 境 変 数 の 係 数 と 有 意 性 本 稿 の(2-2)のFGLSお よ び(3-2)の 技 術 効 率 性 効 果(Hetero)モ デ ル の 推 定 に 用 い た7つ の 環 境 変 数 の 影 響 に 関 す る 補 足 で あ る 。 す な わ ち,(2-2)のFGLSの ウ ェ イ トを 求 め る た め に用 い た 分 散 関 数 式(3)の 推 定 結 果 は 表 12に,(3-2)のHeteroモ デ ル に お け る 非 効 率 性 を 表 す 誤 差 項 の 平 均 値 の 推 定 式(8)に つ い て は 表13に 要 約 さ れ て い る 。 ま ず,表12の 分 散 関 数 の 推 定 結 果 を み る と,市 営 サ ン プ ル と全 サ ン プ ル 共 に 共 通 し て 有 意 で あ る 環 境 変 数 は 取 水 規 模(diwv)・ 地 下 水 比 率(dtypewe 2)・ 補 助 金 比 率(rsubp)の3変 数 の み で あ る 。 しか も,取 水 規 模 の き き か た は 両 サ ン プ ル で 異 な っ て お り,と り わ け 符 号 は 反 対 で あ る 。 さ ら に,全 サ ン プ ル で 有 意 な 受 水 比 率(dtypewe2)・ 顧 客 密 度(cusden)・ 平 均 料 金(uprice) は 市 営 サ ン プ ル で は 有 意 で は な く,逆 に 市 営 サ ン プ ル で 有 意 な 負 荷 率(load)・ 第3分 位 以 上 の 規 模 変 数 は 全 サ ン プ ル で は 有 意 で は な い 。 そ の 結 果 定 数 項 の 値 に も大 き な 差 が 表 れ て い る 。

参照

関連したドキュメント

現状と課題.. 3R・適正処理の促進と「持続可能な資源利用」の推進 自然豊かで多様な生きものと 共生できる都市環境の継承 快適な大気環境、良質な土壌と 水循環の確保 環 境 施 策 の 横

高効率熱源機器の導入(1.1) 高効率照明器具の導入(3.1) 高効率冷却塔の導入(1.2) 高輝度型誘導灯の導入(3.2)

運輸部門では 2020 年までに 2000 年比 40%程度の削減を目指します。.  東京都では、 「東京都環境基本計画」 (平成 20 年

メーカー 部品の注文 代理店 修理依頼 顧 客.

3R・適正処理の促進と「持続可能な資源利用」の推進 自然豊かで多様な生きものと 共生できる都市環境の継承 快適な大気環境、良質な土壌と 水循環の確保 環 境 施 策 の 横 断 的 ・ 総

3R・適正処理の促進と「持続可能な資源利用」の推進 自然豊かで多様な生きものと 共生できる都市環境の継承 快適な大気環境、良質な土壌と 水循環の確保 環 境 施 策 の 横 断 的 ・ 総

会におけるイノベーション創出環境を確立し,わが国産業の国際競争力の向

3R・適正処理の促進と「持続可能な資源利用」の推進 自然豊かで多様な生きものと 共生できる都市環境の継承 快適な大気環境、良質な土壌と 水循環の確保 環 境 施 策 の 横 断 的 ・ 総