• 検索結果がありません。

乳幼児および学童の身体発育並びに精神発達に関する逐年的研究 -第12報- (栄養法別に見た身長・体重・胸囲等の発育について)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "乳幼児および学童の身体発育並びに精神発達に関する逐年的研究 -第12報- (栄養法別に見た身長・体重・胸囲等の発育について)"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

乳幼児および学童の身体発育並びに精神発達

に関する逐年的研究 一第12報-(栄養法別に見た身長・体重・胸囲等の発育について)

斎  藤  マ  サ

Follow up Study on the Physical and the Mental Development of Infants and School Child Part 12

Mother's, Artはcial and Mixed Feeding, and each In且uence on the growth of Hight, Weight, Circumference

of the Chest, etc. Masa Saito ま  え  が  き 本研究は,乳汁を主な栄養とする乳児前半期における母乳・混合・人工等の栄養方法の相異が, 乳児期はもとより其の後の心身の発育にどのように影響を及ぼすものかを知るために,乳児期から 追跡研究を試みたものである。これまでに中間報告として,第1報から第6報1'までは,毎年その 結果をまとめて報告したものであり,第7報から第11報2'までは生後から滴5才までの発育の経過 についてまとめた報告である。以上の報告を概要すれば,男児においては母乳栄養群が,女児にお いてほ混合栄養群が,いずれの発育の項目についても,それぞれ他の二群を上回る経過を示した。 知能検査の結果においては,栄養群間に著しい特徴を見出すことはできなかった。しかし5年間を 通じて身体発育の上位の群は,下位の群より明らかに知能指数は高い結果を示した。 この間,研究の当初には計画していなかった事であったが,乳児期の末期頃から,特に就眠に際 して,その子独特の習癖を表現するようになり,混合栄養群と人工栄養群に著しく高率に出現した ので,興味ある問題として第5報に報告したが,これらの習癖と栄養群間の関係と子どもの性格に ついての調査も試みたので,整理した結果は後日報告する予定である。 今回は生後満6才より滴9才までの身体発育のうち,身長・体重・胸囲・胸前後径・胸左右径・ 胸示数について報告し,その他の発育はこれに引きつづいて第13報にまとめて報告する。 研  究  方  法 1.対象児について 対象児は第1報にのべた通り,研究の当初から一定の目標のもとに選出したものである。 5才ま

(2)

斎 藤  マ  サ      〔研究紀要 第22巻〕 91 での結果をまとめるまでに転居等で対象の人数は減少したが,今回9才までをまとめるに当り,更 に減少し,男児は母乳群21人,混合群17人,人工群15人計53人であり,女児は母乳群17人,渇 合群16人,人工群10人計43人である。 2.調査期日と調査方法 調査は昭和35年7月から始め,生後6ケ月前後で第1回の調査を開始し,その後5才までは各対 象児の誕生日を調査日とし半年毎に調査を行ったが, 6才から9才までは1年毎とした。 調査事項としてほ,身体各部の測定は毎回行い,必要に応じて精神発達検査や性格検査なども加 えた。 これらはすべて対象児の家庭で行い,其の他の参考事項については,主として面接時の母親から 聴取した。尚,生下時の身長・体重。胸囲。頭因の測定値は母子手帳から転記したものであるが, 其の他の発育については満1才或は座高のように座位が安定した滴2才から測定したものが多い。

研究結果 と 考察

今回は生後滴6才より9才までの身長。体重・胸囲・胸前後径・胸左右径・胸示数に重点をおく が,既報の滴5才までの経過と関連づけながら検討したい。今回は人数に多少の異動があったが5 才までの発育値は既報のままこれを使用することにした。 Ⅰ.身長と体重発育の経過■ 1.生後満6才より満9才までの身長と体重の発育の経過 生後満6才より9才までの身長および体重の発育の経過を栄養法別,男女別に示すと,身長は表 1で体重は表2の通りである。 表1 生後満6才より満9才までの身長      (単位 cm) 年 令 6 7 8 9 悼 栄 養 平均値 M S D M S D M S D M S D 人数

男冥 至再

11

11

11喜

■招 き

:

.§招 …

:

.冒招 …

:

.…4.

5.

4.喜

■平 均 ー 5 3 1 10 .9 4 .3 1 16 .3 4 .3 1 22 .2 4 .6 日 2 7 .7 4 .8 j^ = ^ ^ ^ ^ = ^ ^ ^ = = ^ ^ ^ ^ ^ ^ = = = ^ ^ = ^ ^ = ^ =g^ ^ = ^ = ^ = ^ g -i 女 母 乳 混 合 人 工 17 1 6 1 0 10 9 .5 3 .5 1 11 .5 3 .7 1 10 .9 3 .0 壬至芸.9.6.5 招 き.:昌 芸…喜 12 6.3 4 .5 12 8 .6 4 .2 12 7. 6 3 .3 児 平 均 L 4 3 1 10 .6 3 .6 日 15 .9 3 .9 12 1 .9 3 .9 12 7 .4 4 .2 註.いずれの年令においても男女児ともに,栄養群間に有意差を認めず。

(3)

表 2  生後満6才より満9才までの体重      (単位 kg) 年  令 平均値 男     児   二   女 児 母混入叫平 母混入 乳合工i均二乳合工 t-サl>-LOcMvHvH仙5 7 6 8 1 1   ユ M S D 19.9   2.1 18.6   2.2 18.4   2.2 7    1    8 M SD M SD 21.4   2.3 20.3   2.2 20.2   2.6 M S D 24.1   2.4 23.0   2.8 22.6   2.6 26.8   2.9 25.9   3.1 25.2   3.2 19.1  2.3  20.7   2.4  23.3   2.6  26.1  3.1 18.3  1.6 19.4   2.0 18.7  1.5 19.8   2.2 20.8   2.2 20.7   2.1 22.3   2.4 23.6   3.6 23.7   2.9 25.1  2.4 26.1  3.4 25.9   3.1 平  均   43  18.8  1.8  20.4  2.3  23.1  3.1 25.7  3.0 註.いずれの年令においても男女児ともに,栄養群間に有意差を認めず。 2.生下時より満9才までの身長と体重の発育曲線 生下時より満9才までの身長と体重の発育曲線を,栄養法則に示すと,男児は次の図1で,女児 は図2の通りである。 以上の表1によれば,母乳・混合・人工群別の身長平均値は,男児6才では111.5cm 110.6 cm 110.4cmであり, 7才では117.0cm 116.0cm 115.6cmであり, 8才では123.0cm 121.7cm 121.7cmであり, 9才では128.3cm 127.6cm 127.1cmである。したがって母乳 群はこの4年間を通じて混合群或は人工群に1.1cm-1.4cm上回った発育を示している。混合群 と人工群は比較的近い値を示している。 女児の6才では109.5cm 111.5cm 110.9cmであり, 7才では114.9cm 116.6cm 116.5 cmであり, 8才では121.1cm 122.6cm 121.8cmであり, 9才では126.3cm 128.6cm 127.6cmである。したがって女児においては混合群はこの4年間を通じて母乳群に2cm前後上 回った発育を示しており,.人工群とは比較的差は少い。 次の表2によれば,母乳。混合。人工群別の体重平均値は,男児の6才では19.9kg 18.6kg 18.4kgであり, 7才では21.4kg 20.3kg 20.2kgであり, 8才では24.1kg 23.0kg 22.6kgであり, 9才では26.8kg 25.9kg 25.2kgである。したがって母乳群はこの4年間 を通して,混合群或は人工群より1.0ノkg前後上回った発育を示している。混合群と人工群は比較 的近い値である。 女児の6才では18.3kg 19.4kg 18.7kgであり, 7才では19.8kg 20.8kg 20.7kgで あり, 8才では22.3kg 23.6kg 23.7kgであり, 9才では25.1kg 26.1kg 25.9kgであ る。したがって女児の混合群はこの4年間を通じて母乳群に1.0  前後上回った発育を示してい る。人工群と混合群は近い値である。 以上の身長および体重発育を図1や図2のように生下時からその発育曲線によって更に検討すれ ば,男児においては母乳群は体重・身長ともに,生下時より9才に至るまで混合・人工群を上回る

(4)

Ay 盲-司-刀U- 蛋h   -   hJ-一L・・¶-。 - LT∃Jコー山台・H星で一ココ一1J:・㌢ーロー一 貞男nHい剖召富川耶日常-崇朝-仰-いトロ爪<・-川-hnが-uHMり-朗=-⋮.I ---ハ-HHHHULハ山mHh小者州がい男HMH削り的仏門日田肖り. -り村ほ符ほ‖2-汁 斎  藤  マ  サ 〔研究紀要 第22巻〕  93 発育の経過を辿っており,混合群と人工群は相前後しながら母乳群に及ぶことはない。しかしこの 間,身長・体重ともに栄華群間に有意な差は見られなかった。 女児においてほ,母乳群は身長・体重ともに生下時は他の二群を上回っていたが,その後1年間 の増加が他の二群に及ばず,その後2才から9才に至るまで混合群はもとより人工群を凌ぐことは できなかった。混合群は生後1年間の増加が良好でその後の発育もきわめて好調であり,身長にお いては1才で,体重においてほ2才と5才で母乳群間に有意な差を以て優れた発育を示した。人工 群は生下時は他の二群に及ばなかったが,生後1年間の増加が混合群についで良好であって,その 後9才に至るまで,身長・体重ともに混合群に近い値の経過を辿っている。

(5)

図 2  生下時より満9才までの身長,体重発育曲線(女) ⅠⅠ.胸囲の発育の経過 1.満6才より満9才までの胸囲の発育の経過 生後潤6才より満9才までの胸囲の発育の経過を,栄養法別,男女別に示すと表3の通りである。 以上の表3によれば,母乳,混合,人工群別の胸囲平均値は,男児の6才では56.0cm 54.9 cm 55.1cmであり, 7才では57.4cm 56.2cm 56.5cmであり, 8才では58.8cm 57.8 cm。57.9cPであり, 9才では61.8cm 60.9cm 60.6cmである。したがって母乳群はこの 4年間を通じて混合群或は人工群に約1 cm上回った発育を示している。混合群と人工群は比較的 近い値である。

(6)

斎  藤  マ  サ 〔研究紀要 第22巻〕  95 表 3  生後満6才より満9才までの胸囲      (単位 cm) 年 令 6 7 8 9 性 栄 養 平 均値 M S D M S D M S D M S D 人数 男 母 乳 混 合 人 工 21 17 15 56.0 2 .4 54 .9 1.5 55.1 2.0 57.4 2.2 56.2 1.5 56.5 2.2 58.8 2.7 57.8 1.9 57.9 2.5 61.8 3.2 60.9 1.9 60.6 2.7 児 平 均 53 55.4 2.1 56.8 2 .1 58.2 2.5 61.2 2.8 女 諾 暮 人 コ二 17 16 10 53 .5 2.4 53○ 1.9 53 .9 2.1 54.5.5.… 糾 ……3日 .4.3 59.0 3.1 60.4 3.3 59.8 3.7 児 平 均 43 53.7 2.2 55.1 2 .6 56.8 3.2 59.7 3.3 註.いずれの年令においても男女児ともに,栄養郡問に有意差を認めず。 女児の6才では53.5cm 53.9cm 53.9cmであり, 7才では54.6cm 55.5cm 55.4cm であり, 8才では56.1cm。57.3cm 57.2cmであり, 9才では59.0cm 60.4cm 59.8cm である。したがって女児における母乳群は混合・人工群にくらべて約1cm前後下回っており,混 合群と人工群はきわめて近い値である。 2・生下時より満9才までの胸囲の発育曲線 生下時より滴9才までの胸囲の発育曲線を,栄養法別に示すと,男児は次の図3で,女児は図4 の通りである。 年令 年令 図3 生下時より滞9才までの胸囲発育曲線(男)   図4 生下時より満9才までの胸囲発育曲線(女)

(7)

以上の図3 ・図4によって,生下時より9才までの胸囲の発育を栄養法別に検討すれば,男児に おいては母乳群は生下時より9才に至るまで,混合。人工群を上回る経過である。混合群は,生下 時は母乳群と人工群の中間の値であったが,その後は9才に至るまで母乳群に及ばず,又,人工群 とは9才時を除けば両群は極めて接近した値である。人工群は生下時は混合群にも及ばなかったが 1才から8才までは,僅かに混合群を上回る経過である。 女児の母乳群は,生下時をのぞけば,他の二群に及ばず,混合群は1才頃から上位の経過を辿り 人工群はこれに次ぐ発育の経過である。 男女児ともに,いづれの年令においても,栄養群間に有意差はなかった。 ⅢⅠ.胸前後径,胸左右径の発育の経過 1.生後満6才より満9才までの胸前後径・胸左右径の発育の経過 生後満6才より滴9才までの胸前後径および胸左右径の発育の経過を栄養法別,男女別に示すと 次の表4と表5の通りである。 表 4  生後満6才より満9才までの胸前後径     (単位 cm) 悼 男     児 女  児 栄 秦 1 7 5 2 1 1 13.0   0.7 12.8   0.7 12.6   0.6 13.3   0.6 13.2   0.6 12.8   0.7 7 6 0 1 1 1 13.8   0.8 13.6   0.7 13.1   0.8 14.1  0.9 13.9   0.9 13.6   0.9 12.8   0.7  13.1  0.7  13.5   0.8  13.9   0.9 ll.9   0.5 12.3   0.6 12.0   0.5 12.4   0.5 12.7   0.8 12. 5  (U 12.7   0.7 13.2   0.9 12.8   1.0 13.1  0.6 13.5   0.9 13.1   0.9 43   12.1  0.6  12.5   0.7  12.9   0.8  13.3   0.8 註.男児は人工群と母乳群間に7才でT(0.05)-2.04<T-2.094, 才で2.04<2.284 を以て有意差をみとめた。 表 5  生後満6才より満9才までの胸左右径     (単位 cm) 託.いずれの年令においても男女児ともに,栄養群間に有意差を認めず。

(8)

斎  藤  マ  サ      〔研究紀要 第22巻〕  97 以上の表4によれば,母乳・混合・人工群別の胸前後径の平均値は,男児の6才では13.0cm \ 12.8cm\ 12.6cmであり, 7才では13.3cm 13.2cm 12.8cmであり, 8才では13.8.cm・ 13.6cm 13.1cmであり, 9才では14.1cm 13.9cm 13.6cmである。したがって母乳群は この4年間を通じて,混合・人工群を上回り,特に人工群間には0.5cm前後の差を示している。 混合群は比較的母乳群に近い値の経過である。特に7才と8才の母乳群は人工群間に有意な差で優 れている。 女児の6才では11.9cm 12.3cm 12.0cmであり, 7才では12.4cm 12.7cm 12.5cm であり, 8才では12.7cm 13.2cm 12.8cmであり, 9才では13.1cm 13.5cm 13.1cmで ある。これらの平均値によれば,母乳群と人工群は極めて近い値であり,この両群は混合群間に 約0.5cm近い差を示している。しかし,いずれの年令においても,栄養群間に有意な差は見られ なかった。 表5によれば,母乳・混合・人工群別の胸左右径の平均値は,男児の6才では18.0cm 17.8 cm 17.9cmであり, 7才では18.8cm 18.7cm 18.9cmであり, 8才では19.4cm 19.4 cm・19.5cmであり, 9才では20.1cm 20.1cm 20.3cmである。これらの平均値では三群 間は殆ど同じか或は極めて近い値である。 女児の6才では17.2cm 17.3cm 17.5cmであり, 7才では18.2cm 18.3cm 18.5cm であり, 8才では18.9cm 19.1cm 19.2cmであり, 9才では19.6cm 20.0cm 19.8cm である。これらの平均値によれば,三群間は比較的近い値を示しているが,その中でも母乳群は混 合・人工群に及ばず,又,混合群が人工群よりやや下回る傾向を示している。 しかし男女児ともにいづれの年令においても栄養群間に有意な差は見られなかった。 2.生後満1才より満9才までの胸前後径・胸左右径の発育曲線 浦1才より潤9才までの胸前後径および胸左右径の発育曲線を,栄養法別に示すと男児は次の図 5で,女児は図6の通りである。 以上の図5によって男児の胸前後径を1才より9才までの発育の経過を検討すれば,母乳群はそ ●) の平均値において,滴1才より9才に至るまで混合・人工群を上回る経過を辿っており,上述の通 り7才と8才では人工群間に 1.5才では混合・人工群間に有意な差を示している。混合群は1才 から9才に至るまで母乳群と人工群の中間の経過を辿っており,したがって人工群は最も劣る経過 である。 胸左右径においては, 1才から9才に至るまで三群間の平均値は極めて近い値の経過であるが, 強いて順位を示すと人工群が上位で,これに混合・母乳群が相前後して次ぐ傾向である。 次に図6によって女児の胸前後径を1才より9才までの発育の経過を検討すれば,混合群は1才 より9才に至るまで,その平均値は母乳・人工群を上回る経過を辿り,母乳群と人工群は近い値で 相前後した経過を辿っているO しかし,いづれの年令においても栄華群間に有意な差は見られなか った。

(9)

図5 生後満1才より満9才までの 胸前後径・胸左右径(男) 発 図6 生後満1才より満9才までの 胸前後径・胸左右径(女) 年令 胸左右径においては, 1才と2才時に混合群は母乳群間に有意な差で優れていたが,その後は三 群間に有意な差は示さなかったが,母乳群ほいづれの年令においても混合・人工群を凌ぐことはな かった。 ⅠV.胸示数について 上述のように胸前後径や胸左右径を検討する中で,特に男児の母乳群が,胸左右径に示した結果 が,身長や体重や胸囲に示した結果と相反することに興味を感じたので,胸示数を以て更に検討す ることにした。胸示数は胸前後径/胸左右径×100の値であって,つまり胸郭の厚みを比率によって 群間の発育状況を究明しようとするものである。 1.生後満6才までの胸示数 生後満6才より滴9才までの胸示数を,栄養法別,男女別に示すと次の表6の通りである。 以上の表6によ.れぼ母乳・混合。人工群別の胸示数の平均値は,男児の6才では72.4 72.3 70.5であり, 7才では71.0 70.6 68.0, 8才では71.1 70.2 67.5であり, 9才では70.5 69.5 67.2である。これらの平均値によれば,母乳群と混合群は比較的近い値であるが,人工群と の間には7才以降3以上の差を示し,検定の結果においても7-才・ 8才・ 9才ともに有意な差を示 しているQ つまり母乳群の胸郭は最も厚く,混合群がこれに次ぎ,人工群の胸郭は他群に比して局

(10)

斎  藤  マ  サ      〔研究紀要 第22巻〕  99 表 6  生後満6才より満9才までの胸示数 年 令 6 7 8 9 性 栄 養 平 均値 M S D M S D M S D M S D 人数 男 冥 登 再 凍 4 .44 .62.6 71.70.呂 招 …喜 3f :≡ 70.5 4 .4 69.5 5 .4 67.2 4 .8 児 平 均 53 71.8 4 .1 70.0 4.0 ー 69.8 可 69.2 5 .0 女 母 乳 混 合 人 工 頼 3.2.9.5 2.64 .03.6 68.69.67.蓋 3f :… 喜喜.1.0.5 3.4 .3.雄 3 .3 .3 .≡ 児 平 均 43 69.7 3 .5 68.7 4 .0 67.7 4.0 67.0 3 .6 註.男子は人工群と母乳群間に7才でT(0.05)-2.04<T-2.295, 8才で2.04<2.553, 9才で2.04<2.110を以て有意差をみとめた。 平の経過を示している。 女児においてほ, 6才では66-2 79.9 68.5であり, 7才では68.1 69.8 67.8であり, 8 才では67.1 69.0詛66.5であり, 9才では66.9 67.9 66.0である。これらの平均値によれば, 混合群はこの4年間を通じて母乳群との間に1-2近い差で上回り,更に人工群との間では2前後 の差で上回っている。つまり混合群の胸郭は最も厚く,次いで母乳群となり,人工群は男児と同じ く他二群にくらべて属平の傾向を示している。しかし三群間に有意な差は見られなかた。 2.生後満1才より満9才までの胸示数曲線 生後満1才より滴9才までの胸示数を栄養法別に示すと,男児は次の図7で,女児は図8である。 以上の図7により生後1才から9才までの男児の胸示数を検討すれば,母乳群は1才より9才に 至るまで混合。人工群をはるかに上回り,その間, 1才と6才時を除けばその他の年令では,人工 群との間に有意な差で優れている。混合群は1才時は人工群と殆ど同じであったが,その後上昇 し,幼児後期以降は母乳群にやや近い経過を辿っている。したがって人工群は最も低い値の経過で ある。以上の結果から,母乳群は乳児期はもとより学童期に至るまで最も胸郭が厚いと言えるし, これは反して人工群の胸郭には属平の傾向が見られる。混合群は両群の中間である。 女児の胸示数を図8によって検討すれば,生後1才から2才頃までほ母乳群は他の二群を上回っ ていたが, 3才頃から混合群が上昇しはじめ,その後9才まで混合群が上位を辿り,これに次いで 母乳群となり,人工群は最も劣る経過を辿っている。人工群が他の二群に劣ることは男児と同じ傾 向であるが,女児には栄養群間に有意な差は見られなかった。 以上の図7 ・図8の胸示数曲線に見られるように,男女児間に曲線の型に多少の相異は見られる が,総体的に年令が進むにつれて曲線は下降している。このことは胸前後径の増加率よりも左右径 の増加率が大であることを示すものであり,胸郭が円型から楕円形に移行する過程であって,体型 が乳児型から幼児型へ,更に学童型-と次第に正常の均衡のもとに成育しつつあることを意味する

(11)

年令 2  3  4  5  6  7  8  9 図7 生後満1才より清9才までの 胸示数曲線(演) 図8 生後満1才より満9才までの 胸示数曲線(女) ものである。この点から考えても,人工群の胸郭の成長過程が,他の二群にくらべてより早く経過 している点は注目すべきことと思われる。 以上は出生以降の身長・体重・胸囲等について,栄養群間の発育の比叡を行ってきたが,総括し て見るに,出生後乳児期の栄養法の相異による影響は,生後1年或は2年程度は関係するものと思 われる。既報の第7・8報に見られるように,出生後1年間の増加率は,身長・体重・胸囲ともに人 工群が男女児ともに多く,次いで混合群であり,母乳群は男女児ともに最も少い。しかし生後2才 頃から増加の傾向も一定せず,年令によって三群の増加は上下しながら,それぞれに成長の過程を 辿った結果,これまで詳細に述べた様に,男児の発育は母乳群・人工群・混合群の順を示し,女児 の発育はこれと相異し混合群・人工群・母乳群の順を示した。これらの結果から言えることは,乳 児期における乳汁栄養で,牛乳或は乳製品を添加することは,育児法の向上と相まって,乳児の発 育に良好な結果をもたらすものと考えられる。しかしその後は食生活の相異はもとより,個々の遺 伝・素質・生活環境の相異などの複雑な要因が乳児期の栄養法の相異より優先して,個々のこども の発育を形成すると考えるべきであろう。 秋山等は1963年3'に宮崎県下の10才児1,300人余を,又, 1964年4'に宮大附中生540人余を, 又, 1965年5)に官大附小生450人余を研究対象として,栄養法と身長・体重発育の結果を報告して いるが,これらによれば, 10才児の身長の平均値では男女児とも人工群・母乳群・混合群の順とな り,体重平均値では男児は混合群・母乳群・人工群の順で,女児は母乳群・混合群・人工群の順で, いづれにも有意な差は認めていない。附中生の身長平均値では男子は人工群・混合群・母乳群の順

(12)

斎  藤  マ  サ 〔研究紀要 第22巻〕 101 であり,女児は混合群・母乳群・人工群の順であるがそのうち混合群は有意な差で母・人に優れて いるとしている。体重平均値では男子は人工群・母乳群。混合群の順で人工群は母・混に有意な差 で優れているとし,女子は混合群・母乳群・人工群の順と報告し,又,附小生は身長・体重ともに 混合群・母乳群・人工群の順であると報告している。 以上三回にわたる調査結果のうち,女子の人工群の体重が最も小である点は三回とも一致してい るが,その他の栄養群間は,対象によって相互の関係を異にし,同時に男女間の様子は必ずしも一 致していない。又,本資料の結果と比較すれば官大附小・附中の女子の混合群の発育が優れている 点とは一致するが,その他は殆ど異った結果である。本資料の対象児が今後どの様な発育の過程を 辿るかはわからないが,以上の資料を総合すれば,やはり乳児期前半の栄養法の相異と,幼児期以 後の成長との間には決定的な関係はないと考えるべきであろう。 しかし,胸示数の項で触れたように,人工群の男女児の胸郭が母乳・混合群に比して明らかに属 平である点は残された課題である。栄養上の問題なのか,保育上の問題なのか又は資料の偶然性な のか,今回まではこの疑問を究明することは出来なかった。 尚,対象児の生育歴や生活環境を推察する資料として追記しておきたい。 もともと本資料の対象児は,表題の研究目的のために,なるべく他の要因を少くする必要から, 第一子であること,市在住で家庭に母親の居るサラリーマン家庭等,一定の条件で選定したが,当 初から満足な条件のみではなかった。そのうちに母親が働きに出たり,店を開いたり,対象児に弟 妹が生れたり或はひとりっ子のままだったり,この10年の間にかなり変動している。 しかし生活程度や育児態度,特に母親が子供を可愛がっている様子などは,どの家庭もよく似通 っていると感じた。又,離乳後の食生活の中で1日1本或はそれ以上の牛乳は全員摂取していたし, 学令前は1-2年の幼稚園保育を全員経験している。又,乳児期からの疾病状況の記録によれば, ㌔ 乳児期は軽い風邪や下痢程度が多く,幼児期は小児特有の伝染病の曜恩も見うけられたが,入院す る程の大病人も見ず,学童期は全員健康で現在に至っている。 更に本資料の対象児全員の発育状況を全国6'・鹿児島県・鹿児島市7'。厚生省8'値等の統計資料と 比較したが,滴4才以上の対象児の身長・体重の平均値は,男女児ともにいづれの対照値よりも上 回っているが,胸囲の平均値は男女児ともに全国値より狭い傾向にあり,鹿児島県値と比較すれ ば 男児は年令によって一定ではないが,女児は殆どこれを上回っている。鹿児島市債と比戟して ち,ほぼ同じ傾向である。これらの統計資料と比較する場合に考慮しなければならないことは,人 数の相異はもとより,測定条件が興っていることである。即ち,厚生省値を除けば,他の資料は入 園或は入学当初の4月∼5月の一斉身体検査時の測定の平均値であるが,対象児の場合は本人の誕 生日の測定の平均値であるので,参考程度の比較にした。 3才以下は厚生省値と比較したが,更定 諸条件が異っているので,その結果については省略する。 以上の追記を総合すれば 本資料の対象児は比較的恵まれた生育歴或は生活環境と言えよう。

(13)

鰭 萱:氏 Plコ 今回は対象の男児53人,女児43人について,生後6才より9才までの身長・体重・胸囲等の発 育を乳児期の栄養法別に検討し,合せて既報の結果により生下時より9才までの追跡調査の結果を 総括したものである。乳児期の発育の増加が,母乳群より人工群或は混合群の方が大であることか ら,牛乳等の人工栄養は乳児の発育に良好な影響を及ぼすもののようであるが,その後の発育は, 男児は母乳群>人工群>混合群の傾向であり,これに反して女児は混合群>人工群>母乳群の傾向 を辿ったことからしても,幼児以後の発育は乳児期の栄拳法の影響よりもその他諸要因によって左 右されるものと思われる。ただし人工群の胸郭が他二群にくらべて属平の経過を示したことは注目 すべきことであり,今後の研究でその原因を明らかに出来たら幸である。 この調査結果をまとめるにあたり, ましたことを厚く感謝いたします。 1)斉藤マサ 家政学会誌 2)斉藤マサ 家政学雑誌 3)秋山露子 4)秋山露子 5)秋山露子 6)文部省 7)鹿児島市 家政学雑誌 64 1963, 1965,同1966 家政学雑誌 89 1968, 91 1968 宮大学芸学部研究紀要 宮大学芸学部研究紀要 官大教育学部研究紀要 学校保健統計調査報告書 鹿児島市学枚保健資料 統計その他で魔大の電子計算室の皆様の御指導や御協力を得 参  考  文  献 同66 1964,九州家政学会誌1964,鹿大数研究紀要1964,九州 鹿大数研究紀要1966,九州家政学会誌,鹿大数研究紀要1968, 20 1966 20 1966 22 1967 1965-1968 1964-・1968 8)厚生省 昭和35年厚生省乳幼児身体検査値 Conclusion

I studied the hight, the weight, and circumference of the chest, etc, of丘fty-three boys and forty-of丘fty-three girls. They are from six to nine years old infants. I thought how the nourishment was, and more, concluded the result of the foト low up study from丘rst life to nine years old, by synthesizing the previous re-port and the study of present time.

As a result of this study, I found that have tendency of looking to predomi-nance of development of male, mother's milk, mix`山re and arti丘cial milk in order. Such as order, of female, mixture milk, arti丘cial and mother's milk. In this data

recognized the de任erence of all the development among the nutritional methode between male and female, then, by synthesizing this result, I think that the

(14)

斎  藤  マ  サ 〔研究紀要 第22巻〕 103

other elements are in且uenced of all the development than the nutritical are. It is intellested in the development of thorax of mix milk group has a tend-ency 丘at than the other two groups, and I will study this problem more and more and want to do plainly it.

表 2  生後満6才より満9才までの体重      (単位 kg) 年  令 平均値 男     児   二   女 児 母混入叫平 母混入 乳合工i均二乳合工 t‑サl&gt;‑LOcMvHvH仙5 76811 ユ M S D19.9   2.118.6   2.218.4   2.2 7    1    8 M SD M SD21.4   2.320.3   2.220.2   2.6 M S D24.1   2.423.0   2.822.6   2.626.8   2.925.9   3.125.2
図 2  生下時より満9才までの身長,体重発育曲線(女) ⅠⅠ.胸囲の発育の経過 1.満6才より満9才までの胸囲の発育の経過 生後潤6才より満9才までの胸囲の発育の経過を,栄養法別,男女別に示すと表3の通りである。 以上の表3によれば,母乳,混合,人工群別の胸囲平均値は,男児の6才では56.0cm 54.9 cm 55.1cmであり, 7才では57.4cm 56.2cm 56.5cmであり, 8才では58.8cm 57.8 cm。57.9cPであり, 9才では61.8cm 60.9cm 60.6cmである。

参照

関連したドキュメント

焼却炉で発生する余熱を利用して,複合体に外

保育所保育指針解説第⚒章保育の内容-⚑ 乳児保育に関わるねらい及び内容-⑵ねら

○  発生状況及び原因に関する調査、民間の団体等との緊密な連携の確保等、環境教育 の推進、普及啓発、海岸漂着物対策の推進に関する施策を講じるよう努める(同法第 22

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”

自由報告(4) 発達障害児の母親の生活困難に関する考察 ―1 年間の調査に基づいて―

児童生徒の長期的な体力低下が指摘されてから 久しい。 文部科学省の調査結果からも 1985 年前 後の体力ピーク時から

さらに体育・スポーツ政策の研究と実践に寄与 することを目的として、研究者を中心に運営され る日本体育・ スポーツ政策学会は、2007 年 12 月

On the other hand, the so‒called mixed state is designated as the“with mixed features”specifier in DSM‒5, while in ICD‒11, it serves as an independent component of a