自立と共生の教育社会学(その9) : 教師の体罰問
題と日本の伝統文化
著者
神田 嘉延
雑誌名
鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要
巻
24
ページ
287-334
別言語のタイトル
Educational sociology for personality
independence and humanity symbiosis : the
traditional culture of Japan and the corporal
punishment issue of teacher (PART 9)
BulletinoftheEducationalResearchandDevelopment,FacultyofEducation,KagoshimaUniversity 2015,Vbl24,287-334'
自立 と共 生 の 教 育 社 会 学(そ
の9)
一 教 師 の 体 罰 問 題 と 日 本 の 伝 統 文 化 一 神 田 嘉 延[鹿 児 島 大 学 名 誉 教 授] Educationalsociologyforpersonalityindependenceandhumanitysymbiosis: ThetraditionalcultureofJapanandthecorporalpunishmentissueofteacher(PART9) KANDAYoshinobu キ ー ワ ー ド:教 師 の 体 罰 の 社 会 的 背 景 、 体 罰 容 認 の 父 母 意 識 、 日 本 の 伝 統 的 な 人 間 尊 重 の 教 育 観 、 教 育 勅 語 体 制 の 体 罰 容 認 意 識 、 愛 の 鞭 論 の 批 判 序 章 課 題 と 方 法 (1)人 間 発 達 に お け る 自立 と 共 生 と の 関 係 (2)自 立 と 共 生 に お け る学 校 と地 域 (3)学 校 の 官 僚 制 化 と地 域 か らの 学 校 の 分 離 (4)基 本 的 な 人 権 と し て の 学 習 論 と 民 主 主 義 形 成 の た め の 公 教 育 の 原 理 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 教 育 実 践 セ ン タ ー 研 究 紀 要 第17巻(2007年11月)掲 載 第1章 自立 と コ ミ ュ ニ テ ィ ー マ ッ キ ー バ ー 、テ ンニ ース、マ ルクスか ら学ぶ一 (1)マ ッキ ー バ ー の コ ミ ュ ニ テ ィ 論 とパ ー ソ ナ リテ ィ ー の 発 達 (2)テ ンニ ー ス の ゲ マ イ ン シ ャ フ トとゲ ゼ ル シ ャ フ トか らみ る 人 々 の 結 合 論 (3)マ ル ク ス の 資 本 主 義 に 先 行 す る 諸 形 態 か ら み る 共 同 体 論 第1章 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 教 育 学 部 研 究 紀 要 第59巻 教 育 科 学 編(2008年3月)掲 載 第2章 競 争 に よ る 孤 立 化 と共 生 に よ る 連 帯 (1)デ ュ ル ケ ー ム の 社 会 的 分 業 に よ る ア ノ ミ ー 的 現 象 論 と市 民 的 連 帯 の 道 徳 教 育 論 1,共 同 的 人 格 か ら の 機 械 的 連 帯 と 分 業 の 発 展 に よ る 機 能 的 連 帯 と し て の 復 原 的 制 裁 の 役 割 2,愛 他 主 義 こそ 人 間 社 会 の 本 質 3,分 業 の 社 会 的 病 理 4,社 会 病 理 と 自 殺 問 題 (2)孤 独 な 群 衆 一 リ ー ス マ ン よ り 一 (3)現 代 日 本 の 孤 立 化 現 象 と社 会 病 理 一 現 代 日本 の 自殺 急 増 問 題 を 中 心 と して 一 第3章 分 業 の 発 展 に よ る 官 僚 制 と参 画 民 主 主 義 (1)現 代 社 会 と官 僚 制 1,現 代 的 視 点 か らの 資 本 主 義 発 展 と官 僚 制 の 分 析 2,官 僚 制 の 発 展 に よ る エ リ ー ト退 廃 一G.W.ミ ル ズ の パ ワ ー エ リ ー ト論 の 退 廃 論 の検 討 を と お し て 一 3,官 僚 制 の 逆 機 能 一 マ ー トン 理 論 の 検 討 一 4,日 本 の 官 僚 制 問 題 の 特 徴 (2)資 本 主 義 の 発 展 と官 僚 制 一 ウ ェ ー バ ー の 官 僚 制 論 の 検 討 か ら一 1,ウ ェ ー バ ー の 官 僚 制 論 の 特 徴 2,官 僚 制 的 装 置 の 永 続 的 性 格 3,指 導 人 物 と 官 僚 制 (3)学 校 教 育 の 官 僚 制 と 新 し い コ ミ ュ ニ テ ィ 形 成 1,教 育 行 政 の 特 殊 性 と 官 僚 制 2,学 校 経 営 と 官 僚 制 3,児 童 生 徒 へ の 教 育 活 動 と 官 僚 制 4,校 区 コ ミ ュ ニ テ ィ と 学 校 の 官 僚 制 の 克 服 第4章 資 本 主 義 と道 徳 教 育 の 課 題 一 稲 盛 和 夫 の 人 間 観 か ら一 (1)市 場 経 済 の 道 徳 問題 と稲 盛 和 夫 の 利 他 精 神 (2)稲 盛 和 夫 人 間 発 達 観 一 こ こ ろ を 磨 く 一 (3)21世 紀 の社 会 的 正 義 (4)稲 盛 経 営 哲 学 とモ ラル 問 題 第2章 か ら第4章 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 教 育 実践 研 究 紀 要 第18巻(2008年11月)掲 載 第5章 人 間 学 概 念 の 構 造 化 (1)自 立 的 人 間 性 と 正 義 精 神 (2)人 間 の 学 一 和 辻 哲 郎 か ら 一 (3)人 道 主 義 倫 理 の 問 題 と 道 徳 一 工 一 リ ッ ヒ ・ フ ロ ム か ら一 (4)日 本 的 ヒ ュ ー マ ニ ズ ム と人 間 カ ー 伊 藤 仁 斎 の 検 討 を 中 心 と し て (5)ア ジ ア 的 幸 福 観 と利 他 の 精 神 (6)人 間 論 の 生 物 学 的 ア プ ロ ー チ の 検 討 第6章 人 間 力 と 学 問 (1)人 間 知 と教 養 一 ヒル テ ィ の 幸福 論 の 検 討 よ り一 (2)生 き 方 と人 間 力 形 成 一 伊 藤 仁 斎 の 童 子 門 一 (3)学 問 と 人 間 力 形 成 一 石 田梅 岩 に 学 ぶ 一 (4)学 問 と仁 政(経 世 済 民)一 横 井 小 楠 か ら学 ぶ 一 第5章 か ら6章 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 教 育 実 践 研 究 紀 要 第19巻(2009年11月)掲 載 第7章 子 ど も の 発 達 と 自 立 (1)人 間 形 成 と し て の 子 ど も 自立 的 発 達 一 フ レー ベ ル の 「人 間 の 教 育 」 か ら学 ぶ 一 1,子 ど も ど も の 共 同 感 情 の 発 達 一 微 笑 と 安 心 の 共 同 感 情 一 2,子 ど も の 誕 生 と成 長 の 源 泉 3,学 校 は 子 ど も に と っ て 何 な の か 4,子 ど も の 遊 び の 場 を 提 供 す る 地 域 社 会 の 役 割 5,子 ど も の 好 奇 心 と 自然 環 境 の 役 割 6,フ レー ベ ル か ら学 ぶ 芸 術 教 育 7,読 み 書 き の 教 育 (2)地 域 と 学 校 一 デ ユ ー イ か ら学 ぶ 一 1,学 校 の 社 会 的 役 割 2,小 学 校 教 育 と 子 ど も の 生 活 3,子 ど も の 指 導 と カ リキ ュ ラ ム ー 子 ど も の 現 時 の 体 験 と 未 来 の 経 験 一 4,教 材 を 扱 う科 学 者 の 側 面 と 教 師 の 側 面 5,反 省 的 注 意 力 と子 ど も の 自 立 的 精 神 の 発 達 一 反 省 的 注 意 力 発 達 と 自然 教 育 一 以 上7章(1)(2)鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 教 育 実 践 研 究 紀 要 第20巻(2010年11月)掲 載 (3)人 間 の 発 達 課 題 と 教 育 一 ハ ヴ ィ ガ ー ス トか
ら学ぶ 一
1生
活 と学習
2幼
児期 の発 達課 題
3児
童期 の発 達課 題
4児
童 期 の発 達課 題 達成 にお ける仲 間集 団 と教
師 の役割
5児
童期 の知 的発 達
(4)子
どもの知的発達 と教育 の役割 一J・ ピアジェ
か ら学 ぶ一
1,子
どもの年 齢 に応 じた知 能 の発達 論
2,自
己 中心性 と論 理 的思考 の準 備
3,感
覚運 動 的知能 と感 情 の果 たす役 割
4,7歳
か ら12歳 まで の児 童期 の発 達論
(5)発
達 教 育 学 と人 間 的教 育 目標 一 ロー トか ら
学 ぶ
1,教 育学 的子 どもの発 達研 究 の基本 的視 点
2,子
どもの発 達 を促進 す る諸 力
3,問
題 解 決 のた めの 思考 能 力 と情意 的 ・感 情 的
生活
4,創
造 的達成 能 力 と自立 のた めの学 習過 程
(6)未 来 の発 達水準 と子 どもの自立一 ヴィゴッキー
の発達 の最 近接 領域 の理 論か ら学 ぶ
1、 ヴ ィゴ ツキ ー か らみ た従 前 の子 どもの発 達 と
教授 学習 の理 論
2、 発 達 の最近 接領 域論
3,子
どもの発 達 の最適 期上 限 と下 限
4,児
童期 にお け る二言 語併 用 問題
5,書
き ことばの教 授 ・学習
6,子
ど もに と って生 活 的概 念 と科 学的 概念 の 発
達
以 上7章(3)∼(6)鹿
児 島大 学教 育 学部 教 育
実 践研 究紀 要第21巻(2011年12月)掲
載
第8章
現 代 の貧 困 と子 どもの発 達 問題
(1)貧
困論 と子 ど もの発 達 問題
(2)母
子 世帯 問題
(3)子
ど もの虐 待 問題
以 上
第8章
鹿 児 島大 学教 育 学部 教 育実 践研
究 紀要 第22巻(2012年12月)掲
載
第9章
現 代 の学校 にお け るい じめ 問題
(1)現
代 の学校 にお ける い じめ問題 の特徴
(2)学
校 にお ける い じめ の問題 論
(3)い
じめ と子 どもの遊 び意識 の 問題
(4)文
部 科 学省 の い じめ と人権 教 育 につ い て の
見方
(5)い
じめ を隠蔽 す る学校 の体 質
(6)反
社 会 的な 人格 形成 とい じめ 問題
以 上
第9章
鹿児 島 大学 教 育学 部 教育 実 践研
究紀 要第22巻(2013年12月)掲
載
第10章
教 師 の体罰 問題 と 日本 の伝統 文化
(1)教
師の体 罰 の構造 的要 因 とそ の克服
(2)学
校 の体 罰 の実態
(3)体
罰容 認 の父母 の意識
(4)文
部 科 学省 の体 罰禁止 を求 め る通達 指 導
(5)体
罰 禁 止 は江 戸 時 代 か ら 日本 の 伝 統 的 な教
師 の掟
(6)江
戸 時 代薩 摩 藩 の 体 罰肯 定 論 の 批 判 一 と く
に薩 摩 藩 の残 酷 な教 育実 態 を 問題提 起 す る江
森一 郎 ・教育 史家 の 問題点 一
(7)明
治 以 降 の権 力的 立 身 出世 主 義 と軍事 的絶
対服 従教 育 によ る体罰
(8)教
育 勅 語発 布 をめ ぐる対 抗 一 葬 られ た 中村
正直 案一
(9)教
育勅語 の教 育体 制 の精神 主 義
(10)愛 の鞭 とい う教 員文 化論 の批 判
以 上
本巻
第10章
教 師 の体罰 問題 と 日本 の伝統 文化
(1)教
師の体 罰 の構造 的要 因 とそ の克服
1.体 罰 を暴 力 と区別 す る教師 の会
現 代 の学 校 教育 にお いて は、 出世 のた めの 自己
利益 、権 力欲 ・支 配欲 によ って 、安 易 な 目先 の業
績評 価 を念 頭 に暴 力 を教 育実 践 の有 効 な手 段 と考
え る教 師が い る。 さ らに、 生徒 指導 や授 業 の なか
で悩 む なか で 、体 罰 の誘 惑 、体 罰 も とき には 必要
と考 える教 師 とが いる。 この二 つ の タイ プの体 罰
容認 教師 は 、次元 の異 な る問題 で ある。
と くに 、後 者 のタ イ プ につ いて は、 荒れ る 学校
の なか で いか に して 、体 罰 を しな いで も有 効 な生
徒指 導 や教 育 実践 が 可能 で あ るの か、 また 、子 ど
もの発 達観 、 教育 観 の見 直 しによ って子 ど もの学
習援 助 や指 導 を見 直 す こ とも求 め られ て いる 。そ
の 対 処 の 方 法 の 制 度 設 計 や 教 育 方 法 の 開 発 が 求 め られ て い る 。 そ れ は 、 個 々 の 教 師 の 教 育 実 践 ば か りで は な く、 学 校 全 体 と して の 教 育 の あ り方 が 求 め られ る と 同 時 に 、 学 校 教 育 の な か で は 、 処 理 で き な い 深 刻 な 問題 を も含 ん で い る 。 子 ども の 非行 問題 との 関 連 で 、 教 師 に よ る体 罰 を な く し て い く こ と は 、 学 校 教 育 だ け で は な く、 地 域 と 父 母 と 連 携 を して い く こ と は も ち ろ ん の こ と で あ る が 、 教 育 関 係 機 関 と児 童 福 祉 機 関 、 少 年 法 の 目 的 に よ る 関 連 機 関 と の 積 極 的 な 連 携 も 求 め られ て い る 。 さ ら に 、 個 々 の 子 ど も達 の 現 実 問 題 状 況 に 対 応 して 、 人 間 関 係 の 発 達 問 題 、 発 達 障 害 の 問 題 を も 含 め て 、 実 践 的 に対 処 し て い く こ と が 求 め られ て い る 。 こ こ に は 、 教 師 達 の 教 育 学 や 発 達 心 理 学 の 科 学 的 な 知 見 が 求 め られ て い る こ と は い う ま で も な い 。 体 験 主 義 的 な 問 題 の 処 理 で は 、 み え な い こ と が 多 々 あ る の で あ る 。 と ころ で 、 体 罰 を積 極 的 に教 育 とす る 「体 罰 の 会 」 は 、 趣 意 書 に お い て 、 次 の よ う に の べ て い る 。 「体 罰 は 、 礼儀 作 法 を身 につ け させ る た め の 躾 や 、 技 芸 、 武 術 、 学 問 を 向 上 さ せ て 心 身 を 鍛 練 す る こ とな ど と 同 時 に 、 教 育 上 の 進 歩 を 実 現 す る に つ い て 必 要 不 可 欠 な も の 」 と考 え て い る 。 こ こ で は 、 体 罰 を 暴 力 と 区 別 して い る 。 暴 力 と は 、 自 己 利 益 、 不 満 解 消 、 虐 待 を 目 的 と し て 弱 い者 を 傷 つ け る 行 為 と して い る 。 自 ら に 苦 痛 を 課 す 鍛 錬 か ら 逃 げ て 、 自 己 の 自 覚 と 努 力 だ け で は 進 歩 で き な い 人 が 多 い 。 進 歩 を 目 的 と し た 躾 や 鍛 錬 に は す く な か らず 不 快 感 を 伴 う。 不 快 な く し て 怠 惰 な 心 の ま ま に 身 を委 ね る と進 歩 は な い 。 理 性 の 未 熟 な 子 ど も に は 、 大 人 と 同 じ よ う に 自主 性 を 期 待 す る こ と は で き ず 、 教 育 的 矯 正 が 必 要 で 、 そ の 最 も 重 要 な も の が 体 罰 で あ る と い う の が 体 罰 の 会 の 考 え 方 で あ る 。 体 罰 は 教 育 を行 う者 に 認 め ら れ た 懲 戒 権 で あ り、 子 ど も は 体 罰 を含 む 教 育 を 受 け る 権 利 が あ り、 国 家 は体 罰 を含 む 教 育 を す べ き 義 務 が あ る と い う こ と か ら、 体 罰 の 会 は 、 学 校 教 育 法 第11条 の 児 童 ・ 生 徒 ・学 生 に 教 育 上 必 要 が あ る と き は 、 懲 戒 を 加 え る こ と が で き る と い う条 項 の 体 罰 を 加 え る こ と が で き な い とい う と い う条 項 の 削 除 を 要 求 して い る。体 罰 の 方 法 や 程 度 の 法 整 備 実 現 の 教 育 再 生 運 動 の た め に 、 平 成21年8月 に 「体 罰 の 会 」 を た ち あ げ て い る 。 教 師 が 体 罰 に つ い て 、 ノ ウ ハ ウ を 研 究 し 、 そ れ を 身 に つ け る機 会 が 全 く な い た め 、 悪 い 体 罰 が 後 を 絶 た な い と 考 え る 。 体 罰 の 一 律 禁 止 に よ っ て 、 よ い 体 罰 も 悪 い 体 罰 も 区 別 さ れ ず に 、 教 育 を め ぐ る トラ ブ ル は 後 を 絶 た な い と い う の が 体 罰 の 会 の 主 張 で あ る 。 体 罰 の 肯 定 論 か ら現 場 の 教 師 と して 、 そ の 必 要 性 を 書 い た も の と して 、 金 子 毅 著 の 「体 罰 教 師 」 が あ る 。 彼 自 身 、 体 罰 の 会 の メ ンバ ー で あ り、 中 学 校 の 現 場 の 熱 血 教 師 と して 自負 して い る 。 単 に 、 知 識 教 育 と い う こ と よ り、 教 師 と 生 徒 と い う 人 と 人 の 関 わ り に お け る 情 熱 を注 い で い る と著 書 で 自 己 紹 介 し て い る 。 2002年 に 発 刊 さ れ た も の で あ る が 、 体 罰 肯 定 の 現 場 教 師 の 教 育 観 が み られ る 。 体 罰 否 定 が 、 学 校 教 育 法 で も規 定 さ れ 、 そ して 、 マ ス コ ミ 等 に 報 道 さ れ て い る現 状 の な か で 、 生 徒 指 導 の 苦 悩 の な か で 、 体 罰 肯 定 観 の 真 相 が 覆 い 隠 さ れ て い る と し て い る 。 教 師 の 本 音 が み え に く い 側 面 も あ る 。 こ の 本 は 、 体 罰 の 肯 定 を 現 場 の 教 師 か ら 素 直 に 書 か れ て い る の で 、 そ の 見 方 を紹 介 し な が ら、 現 場 教 師 の 体 罰 肯 定 の 苦 悩 、 そ の 教 育 観 の 問 題 点 を 明 ら か に して い く 必 要 が あ る 。 金 子 は 、 体 罰 こ そ 有 効 な 教 育 方 法 で あ る と 次 の よ う に 著 書 の は じ め の 冒 頭 に の べ る 。 「教 育 現 場 に い て 、 体 罰 は 必 ず し も 否 定 す べ き 指 導 法 で あ る と思 っ て い な い 。 逆 に 、 体 罰 こ そ が 有 効 な 対 応 で あ る と考 え ら れ る 場 合 も あ る ぐ ら い で 、 そ の よ う な 時 に は 、 自 ら 、 生 徒 へ の 体 罰 を 実 践 し て い る 。 体 罰 を して 、 自分 自 身 、 時 に は い く ら か 反 省 に 至 る こ と もな い で は な い が 、 そ れ 以 上 に 、 体 罰 した こ と に よ る 教 育 効 果 を 実 感 して い る 。 そ し て 、 生 徒 へ の体 罰 と い う 対 応 は 、 絶 対 的 に 否 定 す べ き こ とで は な い と い う 認 識 を 強 く し て い る 」。(1) 体 罰 し た こ と に よ り、 教 育 効 果 が あ っ た こ と を 実 感 して い る と い う ので あ る 。 生 徒 の体 罰 の対 応 は 、 教 育 実 践 上 、 絶 対 に 必 要 で あ る と い う の が 金 子 の 教 育 観 で あ る 。 こ こで 、 教 育 効 果 の 内 容 で あ る 。 金 子 も体 罰 の対 応 と い う表 現 を つ か って い る よ う に 、 あ る特 定 の 場 面 にお け る こ と を指 して い る 。 そ して 、 体 罰 をす る 側 と し て の ル ー ル や 体 罰 が な ぜ 有 効 で あ る か と教 育 現 場 に い る 者 と し て 問 題 提 起 して い る 。 そ れ は 痛 ま し い 体 罰 事 件 を容 認 す る こ と で は な い と も の べ る 。 「確 か に 、 無 能 な 体 罰 教 師 の 愚 か な 対 応 に よ り、 著 し い傷 を 負 っ た 生 徒 、 中 に は 命 ま で 落 と して し ま う 生 徒 も い て 、 そ う い う 痛 ま し い 体 罰 事 件 の 話 を 聞 く と 、 加 害 者 た る体 罰 教 師 に 、 怒 りや 憤 りを 感 じ な い こ と で は な い 。 そ う い う 何 と も 痛 ま し い 体 罰 事 件 な ど起 こ っ て ほ し くな い とい う の は誰 も皆 同 じ思 い で あ る と思 う」。 (2) 金 子 が 指 摘 す る 無 能 な 体 罰 教 師 の 愚 か な 対 応 こそ 、 今 日 、 学 校 教 育 の 現 場 で 最 も深 刻 に 受 け 止 め な け れ ば な らな い 問 題 で あ る 。 な ぜ 、 生 徒 に 命 ま で 落 と す 痛 ま し い 無 能 な 体 罰 教 師 が 生 ま れ る の か 。 こ こ に は 、 無 能 な 教 師 で は 済 ま さ れ な い 。 そ れ を 容 認 し て い く 学 校 教 育 現 場 の 管 理 運 営 の 深 刻 さ が あ る の で あ る 。 金 子 自身 も体 罰 す る 教 師 に もル ー ル が あ る と 認 め る よ う に 、 ま た 、 怒 り や 憤 り を 感 じ る よ う に 、 著 し い 傷 を 負 い 、 命 ま で も 落 とす 残 酷 な 教 師 に よ る 陰 惨 な 暴 力 的 体 罰 の 実 態 が あ る こ と も 指 摘 し て い る 。 教 育 実 践 に お け る 人 間 の 尊 重 、 人 権 感 覚 を も た な い特 定 の 暴 力 、 絶 対 服 従 に よ る 成 績 主 義 、 勝 利 主 義 、 命 令 主 義 の 規 範 ・秩 序 形 成 の 教 育 方 法 が 現 実 に あ る 。 そ れ は、 児 童 や 生徒 を操 り人 形 の ご と く、 集 団 操 作 し 、 個 々 の 子 ど も の 自主 性 、 主 体 性 を 尊 重 す る 教 育 方 法 で は な く 、 一 斉 に 集 団 的 な 行 動 を して 、 成 績 や 評 価 を あ げ る こ と に 必 死 に な っ て い く教 育 方 法 を一 部 に み る の で あ る 。 と こ ろ で 、 教 育 的 な 効 果 が あ る と い う こ と は 、 長 期 的 、 短 期 的 な 課 題 か ら、 ま た 、 子 ど も の 成 長 、 発 達 の 多 面 性 、 人 間 と し て 社 会 の な か で 生 き て い く確 か な 力 と し て 、 具 体 的 に み て い く視 点 が 必 要 で あ り 、 そ の な か で 何 を さ し て い る の か 。 くわ し くみ て い く こ と が 必 要 で あ る 。 金 子 は 、 授 業 中 、 よ け い な お し ゃ べ り を した 生 徒 に対 して 、 教 師 が 注 意 す る の は ご く 当 然 の 対 応 で あ る が 、 注 意 され た 生 徒 は 、 自分 に対 す るイ チ ャ モ ン と しか と らえ ず 、 不 満 顔 を し て 抵 抗 す る 生 徒 も い る 。 さ ら に 、 教 師 と 生 徒 の 関 係 は 、 極 め て 不
健 全 で あ り、 教 師 の 指 導 の 目線 が 難 し く、 対 等 に な って い る と のべ る。 教 師 は 体 罰 をす る こ と に よ り、 コ ワ イ 存 在 に な る と い う の で あ る 。 教 師 が 生 徒 を 指 導 す る 立 場 で あ る と い う 認 識 の 回 復 で あ る と 。 教 師 は 生 徒 に毅 然 と して ぶ つ か らな くて はな らな い 。 社 会 の 目 が こ わ く て も 、 生 徒 自体 が こ わ く て も 、 教 師 は 生 徒 に ぶ つ か る こ と に 目 を つ ぶ っ て は い け な い と い う の が 金 子 の 主 張 で あ る 。(3) 現 代 の 学 校 で は 、 生 徒 が 教 師 を敬 う関 係 が な く っ て い る 現 状 で あ る と す る 。 金 子 の 指 摘 す る よ う に 、 教 師 と 生 徒 と の 関 係 は 同 じ で は な い こ と は い う ま で もな い 。 教 師 は 親 か ら信 託 され て 、 親 の見 に な っ て 子 ど も を 愛 して 、 人 権 を尊 重 し 、 発 達 ・成 長 さ せ て い く義 務 が あ る 。 こ の こ と に対 して 、 生 徒 は 、 敬 い の 気 持 ち を 教 師 に も っ て い る こ と が 、 学 習 者 と して の 生 徒 と 、 学 び を 支 援 し 、 指 導 して い く教 師 の 教 育 的 な 人 間 関係 が な りた って い く も ので あ る 。 そ れ が 、 崩 壊 して い る 現 象 の な か で 教 師 は 、 ど う 対 応 す べ き で あ る の か 。 金 子 は 指 導 に お け る 人 間 関 係 の構 築 、 教 師 が 教 育 し て い く う え で の 権 威 の 確 立 の う え で 、 体 罰 も 必 要 と考 え る の で あ る 。 問 題 は 、 教 師 自 身 が 体 罰 に 依 存 し た 権 威 の 回 復 と い う こ と に慣 れ て 、 権 威 に 従 っ て い か な い 生 徒 に 対 し て 、 体 罰 の エ ス カ レ ー トに よ る痛 ま し い 悲 惨 な 暴 力 に発 展 しな いか と い う こ とで あ る 。 金 子 は 、 そ の 点 に 対 し て 、 教 師 の 体 罰 に もル ー ル が 必 要 と し て 、 そ の 歯 止 め を期 待 す る 。 さ ら に 、 最 も 重 大 な こ と は 、 生 徒 自 身 が 、 教 師 の 体 罰 に よ っ て 、 敬 う 関 係 に な っ て い く か と い う こ と で あ る 。 コ ワ イ 教 師 の 存 在 は 、 イ コ ー ル そ の 教 師 を 生 徒 が 尊 敬 し て い る こ と で は な い 。 コ ワ イ 存 在 で あ る か ら 、 従 う と い う こ と で 、 み せ か け の 権 威 で あ り、 あ る 意 味 で は 力 に よ る 支 配 で あ る 。 生 徒 の 心 の な か に 内 在 さ せ て い く 教 師 に対 す る権 威 の 関 係 は 、 尊 敬 す る 気 持 ち の 育 成 で あ る 。 金 子 は 体 罰 の 規 程 を 次 の よ う に の べ る 。 「体 罰 と は 生 徒 に 対 して 手 を 出 す こ と 、 つ ま り平 手 で 叩 い た りパ ン チ で 殴 っ た り、 あ る い は 蹴 っ た り と い う暴 力 的 な 対 応 で 考 え て い き た い 思 う 。 教 師 が 生 徒 に 対 す る 指 導 の 上 で 、 口頭 で 説 得 す る だ け で は 済 ま ず 、 暴 力 的 行 為 に 至 っ た 対 応 こそ 体 罰 と す る の が 、 最 も 焦 点 を 絞 っ た 象 徴 的 な と ら 方 で は な い か と思 う」。(4) 教 師 は 本 来 、 生 徒 に た い し て 強 者 の 立 場 に あ っ た は ず な の だ と い うの が 金 子 の 主 張 で あ る 。 教 師 は 生 徒 を 指 導 す る と い う認 識 が 教 師 が 強 者 で あ る と い う こ と で あ る 。 そ もそ も 教 師 は 教 え る 側 で 生 徒 は 教 え て も ら う側 で 、 そ の 立 場 の 区 別 、 対 等 で な い と い う 教 師 の 強 さが 必 要 で あ る と い う 。 「こ の 強 さ は 、 力 の 強 さ で あ り 、 説 得 力 の 強 さ で も あ り、 ま た 、 尊 ば れ る に 値 す るそ の 人 の 力 量 、 人 と し て の 強 さ を 有 す る こ と も で き る 。 教 師 に 、 個 人 と し て の 力 量 が あ る な ら ば 、 教 師 と 生 徒 が あ え て 区 別 さ れ な く て も 何 ら問 題 は な い が 、 そ う で な か っ た ら 、 学 校 と い う シ ス テ ム は 教 師 と 生 徒 の 区 別 無 く し て 機 能 しな い 。 教 師 は 学 校 で 生 徒 を 管 理 し な け れ ば な ら な い し 、 ま た 、 教 師 は 生 徒 に 対 し て 強 者 と して 君 臨 しな け れ ば な ら な い 。 生 徒 を 指 導 す る 教 師 が 強 い 立 場 に あ り、 そ う で あ りな が ら も 、 生 徒 に 対 し て 目線 を下 げ て 対 等 な 立 場 に 立 っ て 優 し く指 導 す る い う の が 理 想 で あ り、 ま た これ が 基 本 で あ る 。 し か し、 現 実 の 学 校 の 状 況 を 見 る と 、 ど う も教 師 は 生徒 と対 等 に 成 り下 が っ て い る よ う な 傾 向 に あ る 。 一 応 、 イ ニ シ ア チ ブ を と っ て い る だ け で 、 父 兄 や 社 会 に は ど う も教 師 も 生 徒 も 対 等 に扱 わ れ る 傾 向 に あ る 」。(5) こ の よ う に 、 金 子 は 、 教 師 は 生 徒 に 対 し て 強 さ を も つ 関 係 が 必 要 で あ る と す る 。 教 師 は 生 徒 を 管 理 し な け れ ば な ら な い し 、 生 徒 と 対 等 な 立 場 で は 現 代 の 学 校 教 育 の 状 況 で は 指 導 で き な い とす る 。 そ し て 、 体 罰 は 非 常 に 有 効 な 手 段 で あ る と次 の よ う に の べ る 。 「時 に は 、 体 罰 は 否 定 さ れ る ど こ ろ か 、 む し ろ 非 常 に 有 効 で あ り 、 学 校 教 育 を ス ム ー ズ に展 開 す る た め の 最 善 の 手 段 に な る 事 さ え あ る と お も っ て い る 。 逆 に 、 体 罰 絶 対 否 定 の 考 え 方 に 縛 られ 、 そ の 固 定 観 念 の 為 に ス ム ー ズ に 教 育 が で き ず に 、 学 校 と い う シ ス テ ム が 機 能 し な い 状 態 に 陥 る こ と が 実 に よ くあ る 。 … … 教 育 に お い て は 、 暴 力 で さ え も 全 面 的 に 否 定 し て し ま う こ と の 方 が む し ろ 問 題 で あ る と 私 は あ え て 言 い た い 。 勿 論 、 私 も基 本 的 に は 暴 力 を 決 し て い い こ と で あ る と思 っ て い な い し暴 力 に は 反 対 で あ る 。 暴 力 を よ し と し な い 人 間 に 暴 力 を ふ る う つ も りな ど な い 。 暴 力 で 自分 自 身
教 化 さ せ る つ も り も な い 。 しか し で あ る 。 子 供 や 生 徒 を 取 り巻 く環 境 に 暴 力 は 全 く皆 無 な の で あ ろ うか 。 実 は そ う で は な い 」。(6) 金 子 は 、 体 罰 の 必 要 性 と して 、 教 師 の 指 導 に お け る 権 威 や 管 理 を 不 可 欠 に して い る こ とか ら 、 そ れ が 機 能 しな い場 合 に 、 力 の 強 さ を あ げ る ので あ る 。 生 徒 が 教 師 に 授 業 を 受 け 入 れ る と い う 敬 う 気 持 ち が な け れ ば 、 教 師 は 、 生 徒 に 対 し て 強 者 と し て 君 臨 しな け れ ば 教 育 的 指 導 は 無 理 で あ る と い う見 方 で あ る 。 教 師 が 説 得 力 が あ り、 敬 ば れ る 人 と して の 力 量 を も っ て い る な らば 、 教 師 と生 徒 の 区別 を 意 識 し な くて も 問 題 な く 教 育 的 指 導 は で き る が 、 そ うで な か っ た ら、 強 者 と して の 力 に よ る 君 臨 が 必 要 と して い る の で あ る。 現 場 の 教 師 と して 、 金 子 自身 、 教 師 と して の 説 得 力 の 力 量 、 教 師 と し て 生 徒 か ら 尊 敬 さ せ る 人 と し て の 力 量 を 大 切 に し て い る とみ ら れ る が 、 そ れ が 、 存 在 し え な い 生 徒 と教 師 の 人 間 関 係 が 現 存 す る な か で 、 強 者 と して 君 臨 す る 教 師 の 演 出 が 教 育 的 指 導 と し て 必 要 で あ る と い う見 方 で あ る 。 と こ ろ で 、 教 育 的 指 導 と い う 生 徒 と 教 師 の 人 間 関 係 の 条 件 に 、 生 徒 自 身 、 そ の 教 師 か ら学 び た い と い う 敬 う 気 持 ち が な け れ ば 、 そ の 生 徒 が 授 業 に 心 か ら対 応 し て い く こ と は 不 可 能 で あ る 。 生 徒 の 学 び た い と い う 基 本 的 な 要 求 が ど こ に あ る の か 。 そ の 授 業 と の 現 実 的 乖 離 を じ っ く りみ つ め て い く こ と も必 要 で は な い か 。 学 び た くな い 生 徒 を 無 理 や りに 教 室 と い う授 業 の な か に 座 ら せ て 、 一 方 的 に 聞 か せ て も 、 生 徒 は 堪 え 忍 ぶ つ ら さ を 味 わ う だ け で あ る 。 教 師 は 、 楽 し い 授 業 作 りや 、 児 童 ・生 徒 の 興 味 の わ く授 業 の 工 夫 、 学 校 行 事 や ク ラ ス 活 動 、 部 活 動 に お け る 学 校 生 活 で の 人 間 的 な 喜 び を児 童 ・生 徒 自身 に体 験 さ せ て い く工 夫 が 求 め られ て い る の で あ る 。 こ の た め に は 、 安 易 に 差 別 観 を 生 む よ う な 過 度 な 学 力 競 争 、 子 ど も の 個 性 を い び つ に して い く コ ン ク ー ル 主 義 、 勝 利 至 上 主 義 の ス ポ ー ツ 活 動 な ど は あ ら た め る べ き で あ る 。 子 ど も を 弱 肉 強 食 の 競 争 主 義 か ら守 り、 学 校 生 活 の な か で 、 喜 び や 感 動 を 共 に 共 有 し 、 共 に 未 来 に む か って 、 切 磋 琢 磨 し 、 創 造 的 に 、 楽 し く 生 き て い け る 能 力 、 確 か な 学 力 を 共 に 協 働 の な か で 身 に つ け さ せ て い く こ とが 学 校 教 育 の 教 育 指 導 の 使 命 で あ る 。 現 代 の 子 ど も の な か に は 、 暴 力 的 虐 待 を 受 け 、 無 責 任 に 養 育 放 棄 さ れ て 育 っ て い る 事 例 も あ る 。 ま た 、 大 人 自 身 を信 頼 で き て い な い 子 ど も も 少 な くな い 。 そ れ が 、 反 抗 期 と い う発 達 段 階 の な か で 複 雑 に あ ら わ れ て 、 学 校 で の 問 題 行 動 の 対 応 で も、 か つ て の 育 ち の な か で 孝 の 精 神 が 身 に つ け られ て い く 時 代 で も な い 。 地 域 や 家 庭 の 教 育 力 が 大 き く 低 下 し て い る な か で 子 ど も が 育 っ て い る の で あ る 。 こ の基 本 的 な 社 会 的 状 況 を お さ え て 教 師 は 、 生 徒 と の 関 係 を み な け れ ば な ら な い 。 そ こ に は 、 従 前 に 比 べ て 、 特 別 の 配 慮 が 学 校 の 教 師 ば か りで は な く、 教 育 の 関 連 機 関 が も っ て い る こ と を 認 識 し な け れ ば な ら な い 。 体 罰 と い う 教 師 の 絶 対 的 な 力 に よ る 君 臨 と い う 方 法 で は 、 問 題 の 根 本 的 な 解 決 に な らな い 。 む し ろ 、 体 罰 は 人 間 の 尊 厳 、 人 権 と い う 民 主 主 義 的 な 人 間 の 形 成 に とっ て 大 き な 課 題 を 失 っ て い く 。 こ の こ と の 方 が 学 校 の 秩 序 回 復 と い う以 上 に 、 重 大 な 問 題 で あ る こ と を 自覚 す べ き で あ る 。 金 子 も 指 摘 す る よ う に 、 教 師 と し て の 説 得 力 の 力 量 、 教 師 と し て 生 徒 か ら人 と し て 尊 敬 させ る 人 間 的 力 量 あ れ ば と い う こ と で は な く 、 そ の 力 量 形 成 に全 力 を あ げ て い く こ と で は な い か 。 この 際 に 、 説 得 力 の 力 量 、 尊 敬 さ せ る 力 量 の な か に 懲 戒 の 行 使 を ど の よ う に し て 有 効 に 使 っ て い く の か と い う こ と も重 要 な 課 題 で あ る 。 生 徒 指 導 に お け る 教 師 の 教 育 的 な 指 導 に懲 戒 の 行 使 は 、 子 ど も の 人 間 的 な発 達 に お け る 教 育 的 援 助 して 不 可 欠 な こ とで あ る。 金 子 の 教 育 論 の な か に 、 教 育 は バ ー チ ャル で は な く 、 身 を も っ て 実 感 す る こ とが 必 要 で あ る と い う 見 方 か ら 、 暴 力 を否 定 し 、 暴 力 を抑 制 す る 力 は 、 自 ら が 痛 み を 体 験 す る こ と で あ る と して い る 。 暴 力 の痛 み を感 じ た こ と の な い 生 徒 に は 、 教 育 指 導 上 に 体 罰 は 必 要 で あ る と い う 考 え を も っ て い る 。 そ の こ と に つ い て 金 子 は 次 の よ う に の べ る 。 「理 性 の 確 立 し て い な い 子 供 の 世 界 で は 、 力 関 係 そ の も の の 根 本 が 暴 力 が 支 配 して い る の で あ る 。 大 人 が い く ら暴 力 を 否 定 し て も、 子 供 の 世 界 に は 暴 力 は 存 在 す る 。 子 供 の 中 に は そ ん な 暴 力 に 屈 し つ つ 成 長 す る 子 、 暴 力 に 物 を 言 わ せ て 成 長 す る子 、
あ る い は 大 人 が 暴 力 否 定 に敏 感 な た め 、 そ こ か ら あ る 程 度 隔 離 さ れ て 成 長 す る子 が 出 て く る だ ろ う 。 多 く の子 供 は 、 暴 力 に 触 れ て 痛 い 目 に あ い 、 痛 い と い う感 覚 か ら 自 制 心 を 身 に つ け る 。 い ろ い ろ な 機 会 で 自制 心 は 育 ま れ る で あ ろ う が 、 痛 み と い う こ と か ら育 ま れ る 自 制 心 も一 つ の 健 全 な 自 制 心 の 獲 得 法 で あ る と い え る 。 私 は 、 こ う い う場 合 、 親 や 教 師 が 余 計 な 痛 み を 与 え な くて よ い と 考 え る 。 … … 暴 力 で ぶ つ か っ て 勝 ち 抜 い て き た 子 供 は 、 自分 こ そ が 天 下 を と っ て い る と い う 自 尊 心 が 芽 ば え る 可 能 性 が 高 い。 潜 在 的 に そ う い う意 識 を持 ち 、 自 制 心 は そ れ に 反 比 例 し て 、 腕 力 を 糧 に 自 我 を む さ ぼ る こ と が 起 き る だ ろ う 。 そ う い う子 供 に 何 よ り も 必 要 な 処 方 箋 は 痛 み で あ る 。 子 供 は 、 自 ら痛 み を感 じな くて 他 人 の痛 み な どわ か らな い ので あ る 。 痛 み に よ り、 ふ く れ あ が っ た 自 尊 心 を あ る 程 度 抑 え て お く こ と は必 要 な こ とで あ る と私 は 考 えて い る 。 そ う で な くて は 、 暴 力 は 何 故 い け な い こ と か と い う本 質 的 な 理 由 を 実 感 で き な く な っ て し ま い か ね な い 。 暴 力 が い け な い こ と で あ る こ と を 子 供 が 分 か る こ とが 重 要 な の で あ っ て 、 大 人 が 暴 力 を 禁 じ て し ま う こ と が 重 要 で あ る と い う と い う考 え 方 は 、 教 育 の 本 質 の 見 誤 っ た 考 え 方 で あ る 」。(7) 現 代 の 学 校 で の 生 徒 は 弱 者 で は な い と い う の が 金 子 の見 方 で あ る 。 教 育 を受 け る 権 利 の 拡 大 解 釈 や 個 性 尊 重 と い う こ とで 、 責 任 放 棄 と子 供 に甘 い 学 校 社 会 に な っ て い る と い う の で あ る 。 中 学 生 に な る と体 力 も 増 し て 、 甘 や か さ れ て 自尊 心 ば か り 高 ま っ て い く と 、 思 い と お り に な らな い こ と に 攻 撃 性 を もつ 。 大 人 に よ っ て 甘 や か さ れ て 育 っ た 生 徒 が 歯 止 め が き か な くな っ て い く 。 教 師 は 、 生 徒 の 増 長 し た 自 我 と の 闘 い に勝 た ね ば な らな い 。 そ れ に は 、 教 師 は 気 力 を も っ て 立 ち 向 か う こ と が 必 要 で あ る と す る 。 未 成 年 の 子 供 や 生 徒 に 対 し て 、 体 罰 絶 対 否 定 と い う こ と で 、 生 徒 は 安 心 と い う こ とで は な く、 む しろ 自我 を 増 長 し て 、 気 ま ま に な っ て 、 自 分 の 思 い 通 り に な ら な い こ と に 攻 撃 し て く る と い う の で あ る 。 「教 師 と 生 徒 が ぶ つ か っ た 時 、 教 師 は 絶 対 に 甘 ん じて 引 い て し ま っ て は な らな い 。 自 尊 心 を ふ り か ざ し、 強 硬 に 闘 い を 挑 ん で き た 場 合 に 、 教 師 は 、 必 ず そ の 闘 い に勝 た ね ば な らな い 。 引 いて 甘 ん じ て 、 他 の 生 徒 の 信 頼 を失 う ぐ ら い な ら、 そ れ よ り も体 罰 を して で も 生 徒 の 無 用 な ま で に 膨 れ あ が っ た 自 尊 心 を取 り払 っ て お か ね ば な らな い 。 鼻 をへ し折 っ て お くの は 早 け れ ば 早 い ほ ど よ い の だ 。 逆 に 、 教 師 が 気 で 敗 れ て 引 い て し ま う な ら、 そ の 経 験 を 重 ね る ご と に 、 そ の 生 徒 は 無 用 な 自尊 心 を 高 め て い く の だ 。 理 性 や 自 制 心 を育 ま れ な い う ち に 、 この 無 用 な 自尊 心 を高 め させ て しま う こ とが 、 教 師 が 気 で 闘 わ な か っ た り負 け て し ま う も う一 つ の 責 め られ る べ き 罪 で あ る 。 こ う し た こ と が 重 な る と 生 徒 は 、 わ が ま ま を 増 長 さ せ ど ん ど ん 身 勝 手 で 理 不 尽 に な っ て い く の だ 。 我 慢 や 忍 耐 も で きず 、 秩 序 も乱 す 一 方 に な る 。 大 人 と し て の 教 師 が 、 生 徒 の わ が ま ま の 前 に 立 ち は だ か る の な ら、 そ こ ま で 含 め た 責 任 を 持 っ て 対 応 し な け れ ば な らな い 。 ぶ つ か っ て 、 た と え 殴 り合 い に な っ た と し て も 気 と して は 引 い て甘 ん じて は な らな い のだ 。 そ もそ も、 教 師 側 に 気 が 充 実 して い た な ら、 こ こ ま で 緊 迫 し た 対 立 や ぶ つ か り あ い は 滅 多 にな ら な い 」。(8) 以 上 の よ う に 、 教 師 は 生 徒 の 無 用 の 自 尊 心 と 身 勝 手 な 理 不 尽 に 対 して 、 気 力 を も っ て 闘 っ て い く こ と が 大 切 で あ る と し て い る 。 理 性 や 自 制 心 を 育 ま れ な い 生 徒 に 、 我 慢 や 忍 耐 を 育 て い く こ と は 、 教 師 の気 力 を もて の 闘 いが 必 要 と して い る の で あ る。 む し ろ 、 こ れ と 闘 わ な い 教 師 が 無 用 な 自 尊 心 を 増 長 さ せ て 、 生 徒 を放 置 さ せ て い る 無 責 任 さ こそ が 問 題 で あ る と い う の が 金 子 の 認 識 で あ る 。 現 代 の 学 校 の 理 不 尽 な 生 徒 の 荒 れ に対 す る気 力 を振 り絞 っ て 闘 っ て い る な か で の 金 子 の 体 罰 肯 定 論 で あ る 。 こ こで は 、 学 校 の 荒 れ の 現 状 に つ い て 、 ど う 学 校 や 学 級 の 秩 序 、 規 範 を 維 持 して い く の か と い う こ と が 大 き な 教 師 の 実 践 的 な 意 識 に な っ て い る 。 問 題 は 、 な ぜ そ の 子 ど も た ち は 荒 れ て い る の か 、 ど う して 教 師 に は む か っ て く る の か 。 学 校 の 規 範 を 無 視 し て 、 自 由 に 自 分 の 思 い 通 り に 我 が 儘 な 生 徒 が な ぜ そ うな っ て い る の か 。 つ ま り、 理 性 や 自 制 心 が 育 ま れ な い 生 徒 達 が い る 。 彼 ら に は 、 我 慢 や 忍 耐 の 教 育 が 必 要 と い う こ とで あ る 。 体 罰 否 定 で は 、 か た づ け られ な い 深 刻 な 問 題 が 子 ど も の 現 状 の 発 達 問 題 に あ る と い う教 師 達 の 認 識 で あ る 。 か れ らの 自尊 心 や 誇 り を ど の よ う に 認 め 、 教 師 や 学 校 の な か で 、 そ れ を ど う 育 て て い る の か 。 そ
して、 かれ らの いい とこ ろを見 つ け 出 して 、 み ん
な のな かで の 役割 を発揮 させ て い る のか。 この よ
うな 問題提 起 で は、現 実 の荒 れ た学 校 をみ て いな
い と とるで あ ろ う。 荒れ る子 ど もたち は、 偏差 値
教育 や コ ン クール 主 義、 勝利 主 義 の競 争教 育 のな
かで かれ が排 除の論 理 のなか に いるので はな いか 。
現 代社 会 の 貧 困化 は、 子 どもの成 長過 程 にも大
き な歪 み をつ く りだ して い る。 それ ぞ れ の子 ども
の育 ち も格 差 社会 と弱 肉強食 社 会 のな かで 、排 除
さ れ、精 神 的 、文 化 的な 貧 困状 況 に突 き落 とされ
て いる現 実 を決 して 見逃 して はな らな いので あ る。
荒 れた 子 ど も達 は、 大人 に対 して 、思 春期 の発 達
段 階 にお け る反抗 期 とい う枠 を超 えた特 殊 な 貧 困
化状 況 のな か で の問 題 の状況 が あ る ので ある 。 こ
の 問題 に真 正 面か ら向 き合 って の子 ど もに対 す る
愛情 を もって の信 頼 関係 を教 師 は まず築 いて い く
ことで はな いか。
日本 生徒 指 導学 会 の機 関誌 第12号
は 体 罰 問題
を考 える特 集 を組 ん で い るが、 そ こで 、生 徒指 導
の ネ ッ トワー クを築 いて いる 吉 田順 は、 「
中学 校
教 師 の苦悩 と生徒 指 導」 の論 孜 で 、 メデ ィア の体
罰批 判 に は違 和感 を感 じ る として い る。荒 れ て い
る学 校 で苦 悩 して いる現 場教 師 た ち の現 実 をみな
い で、 批判 が され て い る とい うの で ある。 生徒 達
の荒 れ を直 視 し、 体 罰 を必要 と しな い生徒 指 導 を
追求 して いくことに とって、 このメデ ィアの批判 は、
教 師達 の生 徒 指導 の 意欲 をそ ぐ こと にな って い る
ので はな いか として いる。
生徒 か ら憂 さ晴 ら しと遊 び の対象 にされ 、 理不
尽 な 冒涜 に絶 え られ な い教 師、 生徒 にな め られた
ら終 わ りとい う生 徒指 導 の最 前 線 のな かで 、 暴 力
だ けが 上下 関 係 の基 準 にな って い る。 荒れ た 生徒
達 の世 界 と同 じく、腕 力で彼 らを屈 服 させ る しか
な い と本気 で 思 う こ とが あ る とい う教 師 も少 な く
な い。 荒れ た 生徒 の い る学級 で は 、生 徒 はや りた
い放 題 、 教室 の出 入 りは 自由 、注 意 すれ ば暴 言 ・
暴 力 とい う現 実 のな かで の 生徒 指導 を しな け れ ば
な らな い教師 の苦 悩が あ る。
一 般 企業 を辞 めて 夢や 希望 を抱 いて 教師 にな っ
た が、 学校 現 場 の現 実 は違 いす ぎ た。絶 望 して退
職 して い く女 教師 もい る。そ して 、学校 の荒 れ と
い う不 安 と責任 とい う精 神 的な 負担 を抱 えな が ら
頑 張 っ て い る 教 師 達 、 授 業 中 の 私 語 、 立 ち 歩 き 、 手 紙 の や り と り、 ケ ー タ イ の 使 用 な ど注 意 して も や め ず に 授 業 が な りた た な い と 悩 む 教 師 が い る 。 60分 の 説 教 よ り も 一 発 の ビ ン タ と い う か つ て の 先 輩 の こ と ば が 今 は 理 解 で き る と い う教 師 の 姿 を ど う み る の か 。 中 学 校 教 師 の 苦 悩 と 生 徒 指 導 を 書 い た 吉 田 順 は 、6つ の 事 例 を あ げ な が ら荒 れ た 学 校 の な か で の 中学 校 教 師 た ち の 苦 悩 を あ げ て い る 。 こ の 荒 れ た 学 校 の 現 実 の な か で 悩 み な が ら 生 徒 指 導 に 頑 張 っ て い る多 くの 教 師達 が い る こ と を メ デ ィ ア は も っ と 報 道 し て い くべ き で あ る と す る 。 ま た 、 吉 田 順 は 説 得 と納 得 に よ る 教 育 に は 限 界 が あ る こ と を 認 め る べ き で あ る と し て い る 。 一 人 二 人 の 名 人 芸 が で き た と し て も多 く の 普 通 の 教 師 は で き な い 。 荒 れ た 学 校 で は 限 界 を超 え て い るか ら、 何 ら か の 強 制 力 を学 校 側 に 認 め る べ き で あ る 。 体 罰 は して は な らな い 。 体 罰 に代 わ る 強 制 力 は な い か 。 そ れ は 、 法 的 な 対 応 し か な い と い う 。 学 校 の 荒 れ か ら教 師 や 生 徒 を 防 御 す る の は 、 壁 で あ る と い う。 そ し て 、 具 体 的 に5つ の壁 を 吉 田順 は 提 言 す る 。 教 師 の 壁 は 、 毅 然 と し て 教 師 集 団 が 一 致 し て 荒 れ に 立 ち 向 か う。 生 徒 の 壁 は 、 乱 れ の 影 響 を受 け な い 健 全 な 生 徒 集 団 を つ く る こ と、 親 の 壁 は 問 題 行 動 を 、 家 庭 や 親 子 関 係 、 夫 婦 関 係 な ど と 無 縁 で は な い と す る 。 親 が 学 校 と一 緒 に な っ て 壁 を つ く る 。 世 論 の 壁 は 、 地 域 の 教 育 力 も 借 りる こ と だ 。 人 的 資 源 や 文 化 資 源 の 活 用 で あ る 。 法 律 の 壁 は 、 最 後 の 手 段 で あ る が 、 出 席 停 止 を含 む 厳 し い 処 置 や 関 係 機 関 と連 携 し て 法 的 に 対 応 す べ き こ と と 考 え る 。 (9)この5つ の壁 は深 刻 な 生徒指 導 を必要 とす る生
徒達 か らの防御 として吉 田順 の提起 も理解 できるが、
最 も難 しい 問題 は 、荒 れ た生徒 達 の 学習権 や 同級
生や 学 校 の仲 間 と共 に生活 して い く問題 で あ る。
壁 は排 除 の 論理 にな りかね な い。 どんな 子 どもで
も共 にそ だ って 、協 働 して、新 しい社 会 をつ くっ
て い くには 、 だれ とも協 同 し、仲 間 と共 有 して い
く生活 が必 要で あ る。
壁 が 固定化 して排 除 の論 理 にな って いけ ば、 よ
り一 層 に特殊 な 非社 会 的 な集 団 をつ くって い く可
能 性 が あ る。少 年 の健 全育 成 を期 し、非 行 あ る少
年 にに対 して性 格 の矯 正 お よび環 境 の調 整 に関 す
る 保 護 処 分 を行 う と い う 少 年 法 の 目 的 は 、 決 して 非 行 少 年 に 対 し て 壁 を 固 定 さ せ る も の で は な く 、 常 に 社 会 的 更 正 を 目 的 と し て い る 。 非 行 少 年 に 対 し て の 多 くの 保 護 処 分 は 、 保 護 観 察 と して 地 域 で の 生 活 が 保 障 され て の 更 正 処 置 で あ る 。 吉 田 準 の 荒 れ た 中 学 校 で 悩 む 教 師 達 の 悩 み と生 徒 指 導 の あ り方 の 問 題 提 起 は 、 現 場 の 教 師 達 の 状 況 と し て 理 解 す る こ とが で き る が 、 も っ と も 大 切 な こ と は 、 子 ど も 達 が な ぜ 学 校 の な か で 荒 れ て い る の か 、 個 々 に 即 し て 、 具 体 的 に 問 題 を み つ め て い く こ とで は な い か 。 そ の 生 徒 の 荒 れ た 原 因 の 探 求 と 生 徒 指 導 の 関 係 が み え て こな い 。 少 な く と も 荒 れ た 子 ど も た ち は 、 自 分 た ち は 個 の な か に 閉 じ こ も っ て い な い の で あ る 。 な ん らか の 集 団 を つ く り 、 自分 た ち の 感 情 を 学 校 、 学 級 、 教 師 た ち 、 大 人 た ち に ぶ つ け て い る の で あ る 。 個 人 的 な 利 己 主 義 、 自 由 気 ま ま な ふ る ま い と い うな か に 未 熟 で あ る が 共 同 の 不 満 の 感 情 が あ る の で は な い か 。 自 己 の 利 己 的 な ふ る ま い は 、 仲 間 と して の 共 同 の 感 情 の な か で 行 わ れ て い る の で は な い か 。 自己 の 利 己 意 識 と共 同 の 感 情 へ の 発 展 を さ ぐ りな が ら 、 か れ が 学 校 の な か で 荒 れ て い る 行 動 の 奥 に 潜 ん で い る 共 同 感 情 の 目 を ど う 育 て て い く の か と い う視 点 を も つ こ と が 必 要 で あ る 。 子 ど も 達 の 怒 り を 怒 り の ま ま に 自 由 放 任 状 態 に して お け ば社 会 的 に 暴 力 を 生 む 要 因 に な って い く 。 教 師 が 体 罰 を 加 え 、 暴 力 に よ っ て 、 力 で 子 ど も を お さ え つ け れ ば 、 子 ど も は 暴 力 を 肯 定 し 、 そ の 怒 り の仕 返 し を 暴 力 で 訴 え る こ と を 考 え る よ う に な る 。 教 師 が 体 罰 を ふ る う こ と は 、 教 師 自 身 の 指 導 と は 全 く反 対 の 行 動 を と る 。 そ こ に は 、 児 童 ・ 生 徒 へ の 怒 りが あ る 。 教 師 は 、 ま ず 子 ど も の 行 動 に 対 し て 、 怒 り を 暴 力 に 転 化 す る 前 に 、 深 く深 呼 吸 して 、 子 ど も の 行 動 に な ぜ 、 そ の よ うな こ と を す るの か と い うみ つ め る余 裕 が 求 め られ る ので あ る 。 そ し て 、 子 ど も に 慈 愛 の 気 持 ち を な げ か け 、 怒 り を ど う社 会 的 な 共 同 の 感 情 、 さ ら に 、 社 会 的 な 規 範 に 育 て て い く の か と い う こ と を 心 の な か で 繰 り返 し 叫 ぶ の で あ る 。 怒 り を 私 憤 か ら公 憤 に転 化 さ せ 、 新 た な エ ネ ル ギ ー と して 、 子 ど も に 立 ち 向 か う の で あ る 。 人 間 は 親 切 に さ れ 、 愛 さ れ る こ と を 感 じ る と き は 、 誰 で も喜 び を 感 じ る 。 そ の 心 が 通 じ る か ど うか は 、 そ れ ぞ れ の 場 面 に よ っ て 、 や り方 は 異 な る が 、 そ の 精 神 が 教 師 に と っ て 求 め ら れ て い る の で あ る 。 教 師 は ま さ に 聖 職 者 と 同 様 な 職 業 的 性 格 を 本 来 も っ て い る も の で あ る 。 天 か ら、 子 ど も を あ た り ま え の 人 間 と して 生 き る 力 を 授 け て や る と い う気 持 ち が 大 切 で あ る 。 怒 り を も ち 、 荒 れ た 学 校 の 張 本 人 に な っ て い る 自 由気 ま ま に み え る 子 ど も た ち に 親 切 に 関 係 し て あ げ る 大 人 達 が どれ ほ ど い た の で あ ろ う か 。 か れ ら の 役 割 を見 い だ し、 誇 り を もて る 場 を ど の よ う に 与 え て き た の か 。 荒 れ た 生 徒 達 は 、 学 校 の 規 範 、 ま た は 社 会 の 規 範 か ら大 き く は ず れ て い る が 、 自 分 た ち な りに 、 そ の 役 割 を つ く りだ して い る の で あ る。 と こ ろ で 、 吉 田 準 の 荒 れ た 中 学 校 で 悩 む 教 師 達 の議 論 と 正 反 対 と し て 、 体 罰 は 教 師 に よ る ひ と つ の快 楽 で あ る と い う の は 、 園 田 雅 春 で あ る 。 か れ は 、 教 育 指 導 の デ ザ イ ン の な か で 「こ こ で 体 罰 を 行 う 」 「こ こ で 愛 の ム チ を 三 回 振 る う 」 な ど あ らか じ準 備 して い る 教 員 な ど い な い 。 体 罰 は 教 師 の 快 楽 で あ り、 教 師 の 生 徒 へ の 支 配 、 教 師 の 利 害 関 係 か ら で あ る 指 摘 す る 。 教 員 は 「デ ザ イ ン や シ ナ リ オ の 枠 外 に お い て 、 体 罰 が 行 使 さ れ る わ け で あ る 。 そ れ は 教 育 指 導 の 範 疇 か ら外 れ た も の で あ り、 理 性 を 失 い 、 瞬 間 的 な 感 情 の 赴 く ま ま に 手 や 足 を 出 し て し ま う。 ま さ に 私 憤 と い う も の で で あ る 。 と こ ろ が 、 体 罰 を 行 使 す る と 、 教 員 の 内 面 に 高 揚 して い た 苛 立 ち や 憤 り は 急 激 に解 消 の 方 向 へ 向 か う 」 「そ の 結 果 に お い て 、 他 者 で あ る 子 ど も が 服 従 し 、 自分 の コ ン ト ロ ー ル 下 に置 く こ と が で き た と 思 い 込 ん だ 瞬 間 、 体 罰 の 正 当 性 と 有 効 性 が そ の 教 員 に は 意 識 さ れ 始 め る 。 そ し て 、 子 ど も へ の 支 配 欲 が 満 た され 、 自 己 効 力 感 が 増 す に つ れ て 、 体 罰 依 存 症 へ と止 め ど も な く 傾 い て い く の で あ る 」。 さ ら に 、 子 ど も の な か に体 罰 を 増 幅 す る 意 識 構 造 が あ る と のべ る 。 「あ の 先 生 の 厳 し い 指 導 の お か げ で 、 自 分 た ち は 向 上 で きた 」 「切 れ か けて いた 集 中力 が 維持 で き た」 「チ ー ム が ま と ま り、 根 性 も つ い て き た 」 と い う部 活 動 の な か で の 体 罰 教 師 に た い す る 子 ど も た ち の 声 が 聞 か れ る 。 閉 鎖 的 な 集 団 内 で 指 導 者 の み な らず 、
被指 導者 の内 面 にも体罰依 存症 が浸 透 して い くと。
(lo> 2.教 師 の 閉 鎖 性 と体 罰 問 題 学 校 の な か で 体 罰 が 起 こ る 心 理 ・構 造 的 な メ カ ニ ズ ム に つ い て 指 摘 す る 浜 田 寿 美 男 は 、 教 員 個 人 の 心 理 と して は 解 け な い と 力 説 す る 。 そ れ は 、 閉 鎖 的 な 集 団 の な か で 起 き る も の で あ る と して い る 。 学 校 の体 罰 は 相 手 が 集 団 を抜 け られ な い な か で 起 き て い る と 言 う の で あ る 。 これ は 、 軍 隊 の な か で 体 罰 が 横 行 し た こと に典 型 的 に み る こ とが で き る と 。 軍 隊 は脱 走 兵 に で も な らな い か ぎ り、 そ の 場 で の 体 罰 は 回 避 で き な い 。 兵 士 た ち は ど ん な に 理 不 尽 で も 体 罰 を 甘 受 す る ほ か は な か っ た 。 生 徒 自 身 は 部 活 か ら逃 れ られ な い 閉 鎖 的 な 現 実 が あ る 。 さ らに 、 閉鎖 的 な 集 団 の な か で 、 一 方 的 な 支 配 一 服 従 の 関 係 が あ る こ と で あ る と浜 田 は 指 摘 す る 。 「お と な と子 ど も 、 指 導 す る 者 と指 導 さ れ る 者 と い う 関 係 が 、 非 対 等 な 一 方 的 関 係 と し て 固 定 して い る と き 、 教 員 の 側 の 暴 力 に対 し て 生 徒 は 逆 らえ な い 。 逆 に 生 徒 が 逆 ら っ て 教 員 の 暴 力 に 対 抗 し、 自 ら も 暴 力 を 振 る う こ と に な れ ば 、 も は や 体 罰 は 成 り立 た ず 、 そ こ に は 校 内 暴 力 と か 学 級 崩 壊 と呼 ば れ る 状 況 が あ ら た に現 出 す る こ と に な る 」。(11) そ し て 、 集 団 成 員 問 で 固 定 し た 価 値 ・規 範 意 識 が 疑 わ れ る こ とな く 共 有 され 、 そ れ が 深 く集 団 内 に 浸 透 す れ ば 、 絶 対 的 な 支 配 一 服 従 関 係 が つ く り だ さ れ る と浜 田 は 強 調 す る 。 「も っ と も 分 か りや す い の は 、 ス ポ ー ツ 系 の 部 活 動 に 深 く浸 透 し て い る 勝 利 至 上 主 義 的 価 値 観 で あ る 。 ス ポ ー ツ に 勝 負 は つ き も だ が 、 これ が 個 人 的 な レ ベ ル で あ れ ば 、 勝 負 の つ い た 後 は 、 そ れ こ そ ノ ー サ イ ドで 、 勝 者 を 祝 して 敗 者 を 宥 め て 終 わ る こ と が で き る が 、 そ こ に は し ば し ば こ の 個 人 的 な 意 識 を 超 え た 構 造 上 の 問 題 が か ぶ さ っ て く る 。 た と え ば 、 試 合 が メ デ ィ ア で 大 き く 取 り上 げ ら れ る 野 球 や サ ー カ ー 、駅 伝 な ど、 人 気 ス ポ ー ツで は 、 成 果 が 大 学 や 高 校 に と っ て 大 き な 宣 伝 効 果 を も つ 。 そ の た め に 試 合 に 勝 ち 残 る こ と が 学 校 に と っ て 重 要 な 関 心 事 に な っ て 、 結 果 と し て ス ポ ー ツ 推 薦 制 度 が い ま や 全 国 に 一 般 化 し て い る し、 そ の 制 度 に 乗 っ た 生 徒 や 保 護 者 の 期 待 をそ れ だ け 大 き い 。 そ う し た な か で は指 導 す る立 場 の教 員 た ち に とっ て 、 お の ず と試 合 の 勝 ち 負 け が 自 ら の 評 価 に つ な が る わ け で 、 これ を 強 く意 識 せ ざ る を えな い。 また 、 指 導 を 受 け る 生 徒 や そ の 保 護 者 た ち に と っ て も 、 部 活 で 実 績 を あ げ る こ と が 大 き な 意 味 を もつ し 、 同 時 に 指 導 者 に 従 順 で あ る こ とで 自 ら の 評 価 を 高 く認 め て も ら う こ と も 重 要 に な っ て く る 。 そ う し た状 況 が あ る か らこそ 、 部 活 の チ ー ム と して の(閉 鎖 性)が 求 め られ 、 成 員 間 の 指 導(支 配)一 服 従 の 絶 対 的 関 係 が 強 化 され る こ と に な る 」。(12) 3.デ ュ ル ケ ー ム の み る 教 師 の 体 罰 の 構 造 性 加 野 芳 正 は 、 「近 代 の 学 校 教 育 制 度 と 暴 力 」 と い う 論 孜 の な か で 、 デ ュ ル ケ ー ム の 道 徳 教 育 論 か ら近 代 の 学 校 教 育 の な か で 、 教 師 の 体 罰 が な ぜ 起 こ る の か の 検 討 を行 っ て い る 。 デ ュ ル ケ ー ム は い か な る 理 由 が あ る と も 体 罰 は 人 間 尊 重 と い う道 徳 の 基 底 か ら 学 校 で の 体 罰 は 排 除 さ れ な け れ ば な ら な い と い う 基 本 的 な 立 場 で あ る 。 文 明 の 進 歩 に 応 じ て 、 子 ど もの 社 会 化 が 著 し く な る に した が っ て 、 罰 や 非 難 を う け る と い う厳 し さ が ふ え て い く と い う 見 方 を デ ュ ル ケ ー ム は も っ て い る 。 そ し て 、 体 罰 は も っ ぱ ら学 校 に 源 が あ る とみ て い る 。 加 野 は デ ュ ル ケ ー ム の 道 徳 教 育 論 の 検 討 か ら近 代 社 会 に お け る 学 校 で の 体 罰 が 起 き る理 由 を2つ の 点 に 求 め た の で あ る。 そ の ひ と つ は 自 然 成 長 か ら短 期 に 人 為 的 、 強 制 的 に介 入 す る 必 要 性 に 求 め た の で あ る 。 「精 神 的 、 道 徳 的 に 文 化 が 複 雑 化 す る に つ れ て 、 こ れ を 一 つ の 世 代 か ら 次 の 世 代 に 伝 達 す る に も 、 も は や 自 然 の 成 り行 き に ま か せ て い く訳 に は い か な くな る 。 そ れ は 短 期 間 に 急 い で な さ れ な け れ ば な らず 、 し た が っ て 人 為 的 な 介 入 が ど う し て も不 可 欠 とな る 。 そ し て 、 こ の よ う な や り方 は あ る 一 定 の 段 階 に ま で 子 ど も の 成 長 を強 制 的 、 積 極 的 に促 進 す る こ と を 目指 し て い る か ら、 必 然 的 に 子 ど も の 自然 の 上 に 暴 力 を加 え る こ と にな る 」。 「自 己 の 優 越 を 誇 示 し よ う と し て 、 と も か く 彼 は 目 的 も 理 由 も な し に 、 た だ そ れ が 面 白 い ば か り に 凶 暴 な ま で に これ を 振 り ま わ す の だ 。 教 師 と 生 徒 と の 関 係 も 同 様 で あ り 、 し か も 、 他 に 例 を み な い ほ ど の 距 離 が あ る 。 な ぜ な ら、 一 方 の 生 徒 が 文明 に 未 知 で あ る の に た い し て 、 他 方 の 教 師 は 文 明 に 精 通 して い る の で あ る 。 加 う る に 、 そ も そ も 学 校 と は 、 教 師 と生 徒 と の 緊 密 に 結 び つ き 、 恒 常 に 的 に 話 し合 う 場 所 だ か らで あ る 。 そ う した な か で 教 師 は 知 らず 知 らず の う ち に 誇 大 感 情 を 抱 い て し ま い 、 これ を お の ず か ら素 振 りや 態 度 、 言 葉 使 い な ど に 示 して し ま う の で あ る が 、 こ の感 情 は た ち ど こ ろ に 暴 力 とな っ て 外 に現 れ る 。 こ れ が 体 罰 に ほ か な らな い が 、 こ の よ う に 考 え れ ば 、 悪 の 源 は じつ は 学 校 の 組 織 自体 と い う こ と に な る 」。 こ の デ ュ ル ケ ー ム 見 解 に対 し て 、 加 野 は 、 百 年 前 に 論 じ た こ と と 現 代 は 、 人 権 意 識 も 高 ま り、 暴 力 を 許 容 す る こ と は 正 当 性 を 失 い 、 ま た 、 生 徒 に よ る 教 師 へ の 暴 力 も発 生 し て 、 近 代 学 校 教 育 の も つ 強 制 的 性 格 、 教 師 の 誇 大 妄 想 で は 説 明 で き な と して い る 。(13) 加 野 が の べ る よ う に 学 校 の も つ 強 制 的 性 格 は な く な っ た の で あ ろ う か 。 教 師 と 生 徒 の 人 間 関 係 に お け る 誇 大 妄 想 感 情 は な く な っ た の で あ ろ う か 。 近 代 学 校 が も っ て い る 強 制 的 性 格 や 誇 大 妄 想 の 感 情 は 、 一 面 で は 強 ま っ て い る の で は な い か 。 教 師 の 誇 大 妄 想 感 情 は 、 優 位 な る 知 識 を も っ た 教 え る 側 と い う こ と が 学 校 の 評 価 制 度 の な か で 権 力 化 し て い る と い う 妄 想 を も っ て る 。 子 ど も は 学 校 の し くみ か らぬ け る こ とが で き な い 閉 鎖 社 会 に 閉 じ 込 め られ て い る な か で の 教 師 に 対 す る 反 抗 的 な 暴 力 行 為 の 側 面 も見 逃 して は な ら な い 。 決 して 教 師 に 代 わ っ て 学 級 を 教 え る 側 と し て の 支 配 で き る 立 場 で も な く、 文 明 化 した 側 に な る こ と は な い 。 子 ど もが 偏 差 値 教 育 や コ ン ク ー ル や 勝 利 至 上 主 義 の な か で 、 教 師 に よ る誇 大 妄 想 感 情 は 強 化 さ れ て い る の で は な い か 。 デ ュ ル ケ ー ム が 指 摘 す る とお り 、 学 校 の も つ 強 制 的 性 格 と教 師 の もつ 誇 大 妄 想 感 情 は 、 学 校 の も っ て い る 組 織 的 に 諸 悪 の 根 源 が あ る の で あ り、 そ の 学 校 の 組 織 体 を ど う 民 主 化 して い く の か と い う課 題 が あ る 。 脱 学 校 と して 、 学 校 そ れ 自 身 を 否 定 し て い く こ と は 簡 単 で あ る が 、 社 会 の 文 明 の 発 展 に お い て 学 校 の 存 在 は 不 可 欠 で あ り 、 子 ど も の 未 来 の 多 様 な 道 は 、 学 校 の 存 在 に よ っ て 、 学 習 権 、 発 達 権 が 保 障 され て い く ので あ る 。 複 雑 な 状 況 を も っ て 、 科 学 の進 歩 の著 しい現 代 社 会 は 、 学 校 で 自立 し 、 共 生 して い く 力 を 身 につ け て い く も の で あ る。 現 代 の 子 ど も の 成 長 に は 、 資 本 主 義 的 な 目的 合 理 的 な効 用 主 義 の 利 己 主 義 の論 理 で は解 決 で き な い。 ア ノ ミー の 論 理 だ け を お っ て も子 ど も の 問 題 の 解 決 に は な ら な い 。 ま ず 、 教 師 は 、 学 校 の 強 制 的 性 格 と 誇 大 妄 想 感 情 か ら解 放 さ れ る に は 、 教 師 自 身 が 集 団 と し て 自 治 的 に な り、 自主 的 、 自 発 的 、 創 造 的 に 学 び 、 研 究 し、 子 ど も の 発 達 の 教 育 実 践 の 前 提 を つ く って い く こ と で あ る 。 加 野 の 指 摘 し て い な か っ た 学 校 の も つ 強 制 的 性 格 や 教 師 の 誇 大 妄 想 感 情 の 克 服 に つ い て 、 デ ュ ル ケ ー ム は 重 要 な 問 題 提 起 を し て い る 。 加 野 は 、 現 代 社 会 を 個 人 主 義 の 自 由 な 社 会 か ら の 利 己 を 基 本 に し た 秩 序 の な い と い う意 味 で の ア ノ ミ ー 論 に ひ き ず られ て 、 な ぜ か 、 こ の 問 題 提 起 を して い な い 。 デ ュ ル ケ ー ム は 近 代 社 会 を ど の よ う に 捉 え て い る の で あ る の か と い う基 本 認 識 が 必 要 で あ る 。 デ ュ ル ケ ー ム の 近 代 観 は 、 分 業 社 会 が 一 層 に 進 行 す る こ と に よ っ て 、 職 業 の 専 門 化 が 起 き て 、 そ れ ぞ れ の 愛 他 的 な 共 有 意 識 が 希 薄 に な っ て い く と い う 見 方 で あ る 。 近 代 化 は 、 人 間 に と っ て 大 切 な 社 会 に 愛 着 す る こ と の み を も っ て 、 自分 ら し く 生 き られ る と い う 人 間 の 本 性 を 失 い 、 自殺 の 危 険 に さ らさ れ る と い う 認 識 で あ る 。 「人 間 は 集 団 か ら離 れ れ ば 離 れ る ほ ど、 す な わ ち 利 己 的 な 生 き 方 をす れ ば す る ほ ど 、 ま す ま す 自 殺 の 危 険 に さ ら さ れ る 」。 (14) デ ュ ル ケ ー ム は 、 理 性 ・科 学 教 育 に よ る 意 志 の 自 律 性 と い う こ と か ら現 代 的 に 新 た な 社 会 集 団 の 愛 着 、 規 律 の 精 神 が 生 ま れ る と考 え 、 そ の 道 徳 教 育 に よ っ て 、 分 業 社 会 で の 孤 立 し て い く 精 神 的 病 理 を 克 服 で き る と分 析 し た の で あ る 。 そ れ は 、 孤 立 化 に よ る 自殺 の 精 神 構 造 で あ る ア ノ ミ ー 的 現 象 を 科 学 教 育 に よ っ て 、 克 服 し て い こ う と す る の で あ る。 と こ ろ で 、 人 間 的 陶 冶 の 中 心 た る 学 校 が 、 複 雑 化 し 、 組 織 化 さ れ る こ と に よ っ て 、 体 罰 が ま す ま す は げ し く用 い られ る よ う に な る が 、 そ れ は 、 近 代 学 校 が 生 ま れ る 夜 明 け で 出現 した こ と で あ る と す る 。 道 徳 世 論 の 力 と人 々 の道 徳 意 識 の 高 揚 に よ っ て 、 そ れ は 克 服 さ れ る と し て い る 。 「人 々 の 道 徳 意 識 が 次 第 に 高 ま り、 品 性 が 洗 練 さ れ て い く に つ