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奈良盆地におけるため池の機能再評価と新たな管理・利用形態の提案 学園前蒼池の都市型自然公園利用に向けた基礎的調査

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Academic year: 2021

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農学部特別研究費 平成24 年度 研究経過報告書 研究者名 森 美穂 研究課題名 奈良盆地におけるため池の機能再評価と新たな管理・利用形態の提案 学園前蒼池の都市型自然公園利用に向けた基礎的調査 研究目的・内容 本調査研究では、放置されて原野となっている奈良市学園朝日町の「蒼池」を生物多様性保 全、治水、景観、水質浄化の多面的な機能を備えた自然公園として復元する計画を策定する ための基礎調査として、物質循環機能調査、生物相調査、社会学的調査の3 分野の調査を実 施した。さらに、蒼池の多面的機能のポテンシャルを高めるために最適な水管理および整備 計画のモデル構築を試みた。 研究の経過 物質循環機能調査 水管理分野においては、蒼池の洪水制御機能を定量化するために、水収 支の構成要因である降雨量および池からの流出量のモニタリングを実施した。降雨量のモ ニタリングには転倒マス式雨量計を池内に設置、流出量のモニタリングは池の流出部に三 角堰を設置しその越流水深を自動水位計で測定することにより行った。結果として、積算で 約5 mm/hr 以上の降雨強度で流出が発生し、ピーク流出量は降雨ピークに対してタイムラ グをほとんど持たずに線形的な反応をすることが確認できた。これには、蒼池の貯留能力 (現況ではほとんど無い)および集水域の土地利用状況(ほぼ住宅地と舗装道路)が影響し ていると考えられる。 水質に関しては、蒼池の家庭排水流入場所3 箇所と流出場所 1 箇所、池中心部の水溜り 1 箇所の計5 箇所から 1 ヵ月に 1 回サンプリングを行い、水質を測定した。測定項目は、一 般的に水質汚濁の指標とされる水温、DO、pH、COD、全リン、全窒素、クロロフィル a、 濁度の 8 項目とした。測定期間を通して見られた大きな特徴として、水温の低下とともに DO が増加し、COD が減少する傾向が見られた。また、蒼池の家庭排水流入 2 箇所は、他 の採水場所と比較して全窒素量と全リン量が非常に高く、家庭排水中に多くの栄養塩類が 含まれていることが分かった。環境省の水質基準値と比較すると蒼池は富栄養化による水 質汚染が進行していることが明らかとなった。 生物相調査 本年度は水生生物調査と菌叢調査を行った。月一度実施した水生生物採集調 査では、年間を通じて6種の生物が確認出来たに過ぎず,いずれも中腐水性環境に出現する 環境指標生物種であった。菌叢調査では,蒼池から得た試料水を0.85%滅菌生理食塩水で適 宜希釈してLB 寒天培地に塗末後、25℃で 2 日間培養して菌の単離を行った。さらに、各月 における各採水箇所の優占種第3 位までの菌株を 16S rRNA 遺伝子配列に基づく相同性検 索の結果から同定した。菌叢に関しては、各月の各採水場所において優占菌種に違いが見ら

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れた。また水温と全リン、全窒素量が高いときに総菌数が多く、これらの環境要素が微生物 に影響を及ぼしている可能性が示唆された。測定期間を通して、水質の良好時に生息する微 生物と不良時に生息する微生物を明らかにしたことにより、これらの微生物の蒼池に対す る現地型バイオオーギュメンテーションへの応用につながると考えられる。 社会学的調査 これまで蒼池の保全活動に熱心に取り組んできた市民団体「蒼池を美しく する会」のこれまでの活動経緯について、関係者からの聞き取り調査ならびに会に保存され ていた文書資料を用いた調査を行った。その結果、これまでの蒼池保全活動がどのような 人々によって担われており、また同会が奈良市学園前近辺の他の市民団体(たとえば隣接す るあやめ池の保全を目的とした団体など)とどのようなネットワークをもってきたのか、と いった点が明らかになった。これらの調査結果については、鶴田と濱朝子(蒼池を美しくす る会元代表)との共著として、「都市化地域に残存する元農業用ため池保全の課題:奈良市 学園前の蒼池を事例として」という論文にまとめ、近畿大学農学部紀要第46 号(2013 年3 月刊行予定)に掲載される予定である。 本研究と関連した今後の研究計画 物質循環機能調査 • 水管理分野においては、降雨量と流出量のモニタリングを継続してゆく。さらに、 これらのデータを用いて流出解析を行うとともに蒼池の水文シュミレーションモデ ルを構築する。このモデルを用いて、貯留能力を人為的に向上させた場合の下流域 への流出パターンの変化を予測する。すなわち、蒼池の有する洪水制御機能を最適 化する貯留能力を算出することを目的とする。 • 水質調査に関しては、引き続き蒼池の化学分析による水質測定を行い、一年間のデ ータをそろえる。 生物相調査 • 人為的に、恒久的水域を創出し、出現生物の変化を調べる。 • 将来的な水生生物相の復元に向けた、下流域の水生生物調査を実施する。 • 単離・保存した菌株を用いてin vitro でのバイオレメディエーション実験を実施す る予定である。 社会学的調査 • 引き続きこれまでの「蒼池を美しくする会」による蒼池保全活動に関する社会学的 調査を継続するとともに、蒼池を今後誰がどういう方法で管理していくか、という 点に焦点をあてたアンケート調査を、周辺住民を対象として実施する予定である。 (平成25 年 3 月 31 日現在)

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