氏 生年月日
学位論文審査結果の報告書
名本籍(国籍)
学位の種類
山田英丙
四Ξ西)・平成印年11月
大阪府 学位記番号学位授与の条件
(博士の学位) 博 士(薬学)第 140 号
学位規程第5条該当
⑳ 論文題目 5日 学位論文受理日学位論文審査終了日
審査委員
医薬品の創出及び品質管理における質量分析を用いた 新規評価技術の構築 平成 平成 29年 29年 (主査) ⑳ (副主査) 22日 16日 (副主査)鈴木
(副査) (副査)城
仲西
茂生
正宏
功
餌鰯号
岩
明明
近年の多様な創薬モダリティの一角としてモノクローナル抗体を中心とするバイオ 医薬品が市場を席巻しており、2015年においては世界の医薬品別売り上げ上位30品 目のうち、バイオ医薬品がB 品目を占め、その半数以上は抗体医薬品である。バイオ 医薬品は低分子化合物と比較して優れた標的選択性を示し、高い薬効と安全性を有し ている。一方で化学合成により製造される低分子医薬品とは異なり、非ヒト生物によ り生産されるタンパク質であるため、複雑なドメイン構造とへテロジェネティを有し、 医薬品としての品質の評価と規格化に多くの技術と労力が費やされている。 また、アンメットメディカルニーズを満たす根本的治療法のひとつとして、細胞医 薬品が注目されており、ips(血ducedpludpotentstem泌剛包作製技術の確立から、細胞医 薬品の研究開発がさらに進展するものと考えられている。しかしながら、ipS細胞は その分化の過程で癌化するりスクが示唆されており、実用化における大きな課題と なっている。末分化及び癌化したipS細胞の混入は、細胞医薬品としての品質及び安 全性を大きく損なわせる要因となるため、厳密に管理されるべきであり、分化させた 逕S細胞が意図する機能を有することを、種々のイメージング技術の利用により評価 する手法についても研究が進められている。 上述の通り、医薬品のモダリティ及び創薬プラットフォームの多様化に伴い、創薬 から生産に至る過程で求められる分析技術についても、発展が求められている。中で も分子固有の物理量である質量を観測する質量分析法(MSMassspectrometw)は、 特異性と選択性に優れた分析手法のひとつであり、未知分子をマーカーとした分析を 行う目的にも利用できるため、医薬品開発の幅広いフェーズで活用されている。例え ばバイオ医薬品の品質管理においては、一次構造及びそのへテロジェネティの解析に MSが広く活用されている。創薬分野においても、タンパク質の翻訳後修飾や代謝の 解明においてMSが活用されており、ヒトのプロテオミクスに関する大規模解析デー タベースの創薬研究ヘの利用も期待される。さらに、細胞医薬品の機能や構造を直接 的に明ら力斗こする手法として、 massCⅥometW が近年注目されており、且OWCⅥometw と比較し、細胞の機能評価に要する時間を大幅に短縮できることが期待されている。 複雑な構造とへテロジェネティを有するバイオ医薬品や細胞医薬品の品質を評価し、 また、プロテオミクスやipS細胞技術を応用した創薬基盤を強固なものとするため、 今後MSが貢献できる領域はさらに拡大するものと考えられる。多様化する医薬品研 究に貢献する技術として、著者は、 MSを利用した新規評価技術の構築を目指し、開 発研究を進めた。 妾△ 文 す"→ の ヒニ」 第一章では高い選択性を有するMSと、電荷バリアントの分離に用いられる電気泳 動法の組み合わせから、複雑なへテロジェネティを有する抗体医薬品を、直接的かっ 6
-迅速に分離分析する技術について研究を進めた。 SDS・PAGE(sodium dodecylsulfate・
Poly、acwlamide gelelectrophoresis)において泳動した抗体医薬品に対して、 SDC を含む緩
律i液を用いた拡散抽出法により、高効率で抽出することができた。さらに抽出された抗体医 薬品に対してインタクトマス測定を行い、直接的にグライコフォームを解析し、糖鎖組成を明ら かにした。さらに、本手法が高い再現性を有することを示すとともに、ゲルからの抽出の前後 で、抗体分子が有するへテロジェネティのプロファイルが本質的に保持されていることを明ら 力斗こした。 第二章では、微小領域における生体高分子の可視化を目的とし、高速重イオンをプローブとするSNS(secondawionmassspectrometw)、Mev・SNS を用いた質量イメージング法によ
リ、動物細胞の分子イメージング取得に成功し、細胞レベルの生体情報の可視化に有効な手 法となりうることを示した。Mev、SNSにより、従来のSNSでは困難であった、細胞膜を構成 するコレステロールや70ODaを超えるりン脂質などの生体高分子の検出に成功した。さらに 洗浄及び凍結割断処理を施した動物細胞に対して、5μmの空間分解能で質量イメージング に成功した。さらに一般的に高真空環境が求められるSNSに対して、20paの低真空下で Mev、SNSを行い、細胞膜を構成するりン脂質やコレステロールの検出に成功した。以上の 結果は、高速重イオンをプローブとすることで、高真空下だけでなく、低真空下でも動物細胞 を構成する生体高分子が検出可能であることを示している。 第三章ではガスクラスターイオンを用いたナノスケールの低損傷の表面加工技術に着目し、 細胞レベルでの質量イメージングにおける試料調製に応用することで、質量イメージの精度 及び感度を向上させた。細胞膜の構成成分であるコレステロールやりン脂質に対して、Arク ラスターイオンの照射により、試料に与える損傷を抑えた上で、エッチング処理が可能である ことを示した。さらにArクラスターイオンでエッチング処理された動物細胞に対して、Mev・ SNSで質量イメージングを行い、高感度で細胞及びその内部構造を可視化することに成功 し、Arクラスターイオンが細胞表面や基板部分の汚染の除去にも有効であることも明らかにし た。これらの結果から、ガスクラスターイオン照射によるエッチング技術は、細胞レベルでの質 量イメージングの感度向上や、立体構造の可視化を実現する上で、有効なで手法であること が明らかとなった。 本研究を通じて開発した、MSを用いる新規評価技術により、バイオ医薬品を始めとする新 しいモダリティの医薬品に対して、創薬から品質評価の段階に至るまで、複雑な分子プロファ イル及ぴ位置情報の可視化が可能であることを示した。これらの技術は創薬や生産の場にお いて重要な情報を与え得るものであり、医薬品としての効果と安全性の向上及び効率的な研 究開発に大きく貢献し得るものである。 本研究の発展と応用が、未だ多く存在するアンメットメディカルニーズを満たす画期的な医 薬品研究の一助となることを期待する。医薬品業界では、従来の低分子医薬品に加えてモノクローナル抗体を中心とするバ イオ医薬品が数多く上市され、2015年においては世界の医薬品別売り上げ上位30品 目のうち、バイオ医薬品がB品目を占めている。バイオ医薬品は低分子化合物と比較 して優れた標的選択性を示し、高い薬効と安全性を有している。しかしその一方で化 学合成により製造される低分子医薬品とは異なり、非ヒト生物により生産されるタン パク質であるため、複雑なドメイン構造とへテロジェネティを有し、従来とは異なる 高度な設備や技術が要求され、医薬品としての品質の評価と規格化に多くの技術と労 力が費やされている。 また、中枢神経などの細胞損傷を修復するための新たな医療として細胞医薬品が注 目を集め、 ips(inducedpludpotentstem泌剛包作製技術の確立によって、この分野の研究 開発がさらに進展すると期待されている。しかし、ipS細胞は、その分化の過程で癌 化するりスクが示唆されており、実用化における大きな課題となっている。未分化及 び癌化したipS細胞の混入は、細胞医薬品としての品質及び安全性を大きく損なわせ る要因となるため、厳密な品質管理が必要となる。本目的に種々のイメージング技術 を応用した評価法について研究が進められている。 申請者は大学院および製薬企業の研究所で一貫して質量分析法の医療分野ヘの応用 を企図した研究を行っており、従来とは全く異なるアプローチでこれらの問題を解決 した。 言△ 文 の ヒ尋 ところで近年の質量分析装置の進歩は著しく、タンパク質の様な高分子に対しても、 高感度で高分解能な解析が可能となった。申請者はタンパク質の質量に基づく構造情 報を与える質量分析法NS)と、電荷バリアントの分離に用いられる電気泳動法を組み 合わせるととで、複雑なへテロジェネティを有する抗体医薬品を、直接的かつ迅速に 分籬・解析する技術になり得ることを示した。タンパク質の分籬にSDS、PAGE
(sodium dodecylsulfate - poly・acrylamide gelelectrophoresis)は欠力)せなし\手段となっ ているが、タンパク質バンドの固定化と染色の過程で、タンパク質は変性し、特に分 子サイズの大きな抗体医薬品などではゲルからの回収が困難であった。申請者はSDS、 PAGEで分離した抗体を染色・固定化する際の溶媒や抽出用界面活性剤の組成に工夫 を加えるととで、高効率でタンパク質を抽出できることを示した。さらに抽出された 抗体医薬品を1四LCで精製すればインタクトマス測定が可能になることを示した。本 法は特に、抗体医薬品の製造管理などで威力を発揮することが予想される。 細胞生物学の分野ではGFPなどの様々な蛍光色素を解析対象に結合させることで、 細胞内におけるタンパク質の挙動や特定の遺伝子の発現などを蛍光顕微鏡を使って解 8 Jノ
析してきた。しかし得られる情報は蛍光色素の種類に制約され、同時に検出できる色素にも 制限がある。この細胞内で起こる様々な変化を詳細に捉える上で、質量情報は極めて有益と 考えられるが、MSは原興ルして試料を真空条件下に曝す必要があり、水分の多い細胞を分 析対象とすることは困難と考えられてきた。申請者は高速粒子のもつ特性に着目し、高速加 速器を用いて生成した高速重イオンをプローブとするSNS(secondawionmass