小学校におけるアクティブ・ラーニングについての検討
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(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第10号. 自由投稿論文. 小学校におけるアクティブ・ラーニングについての検討 佐藤 秋杜*・阿部 二郎**. 概 要 本稿では、初等・中等教育課程に「アクティブ・ラーニング」概念が導入された経緯について、ア メリカ合衆国との概念比較を行いつつ、文部科学省の「アクティブ・ラーニング」に関わる一連の政 策と教育現場への周知・広報活動を調査した結果の詳細を述べる。概要は、①雑誌「初等教育資料」 「中等教育資料」 「教育委員会月報」を調査した結果、調査対象期間の36か月で197本の関連論文・記 事の掲載が認められ、文部科学省が積極的に「アクティブ・ラーニング」を周知しようとしていたと 言えそうであること、②「アクティブ・ラーニング」関連の論文・記事は、中央教育審議会(答申) の前後で特に多いことが確認できた。そうした調査結果を基に、小学校教諭の立場から、小学校教育 現場での「アクティブ・ラーニング」概念の扱われ方と、そこに内包される課題を探り、呼称への提 言と危惧される傾向に言及した。 〈キーワード〉 アクティブ・ラーニング 主体的・対話的で深い学び 小学校 学習指導要領. 1.はじめに(課題意識と研究目的) 令和2年(2020)に完全施行される「小学校学習指導要領(平成29年告示) 」の解説(平成29年7月) には、次のような記述がある。 「 『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善(アクティブ・ ラーニングの視点に立った授業改善)を推進することが求められる。 」1) 学習指導要領改訂に先立ち、文部科学大臣は中央教育審議会への諮問「初等中等教育における教育 課程の基準等の在り方について」で『アクティブ・ラーニング』についての考え方を示した。これを 受けて中央教育審議会は、 「授業を活性化していく視点」として『主体的・対話的で深い学び』を提 唱し2)、その実現に向けた授業改善(アクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善)を提言した。 つまり、「主体的・ 対話的で深い学び」は、アクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善で実 現化されるという論理である。 溝上慎一が、 「アクティブ・ラーニングの概念は米国発祥のものだから,最初の問いは,米国にお 3) と指 いてなぜ,アクティブ・ラーニングが求められるようになったのかとされなければならない。 」. 摘するように、日本の「アクティブ・ラーニング」概念は、 アメリカ合衆国で提唱されていた概念(以 下「AL」と表記し、日本の「アクティブ・ラーニング」概念と区別する。 )が移植され、そこから派 生(日本化)したものであると言えそうである。溝上は、 「AL」が提唱されるようになった要因を「高 等教育の大衆化,それによる学生の多様化,異なる動機,希薄な問題意識,結果としての教育の困難 ───────────────────── *. 函館市立八幡小学校教諭. **. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)函館. 121.
(3) 佐藤 秋杜・阿部 二郎. 化」4)であると指摘した。つまり、 「AL」は「元来、高等教育課程において提唱された教育方法概念で ある」と指摘しているのである。 他方、近年になって日本で喧伝されている「アクティブ・ラーニング」に着目すると、高等教育課 程よりも初等・中等教育課程への導入が積極的に試みられている印象が強い。どのような経緯で日本 の初等・中等教育課程に「アクティブ・ラーニング」概念が導入されることになり、どのような経緯 で「主体的・対話的で深い学び」という概念に変貌・変質していったのか等、様々な疑問が生じてく る。 著者の佐藤は、卒業研究(2017年度)として「アクティブ・ラーニングに関する研究-日米での概 念比較と日本への導入経緯について-」をまとめた。しかし、現実の教育実践における「教育方法と しての価値や意義、内包される課題」についてまでは扱うことができなかった。卒業後、佐藤は正規 の小学校教諭として、ささやかではあるが指導経験を積んできた。本稿では、卒業研究での調査結果 の詳細に加え、教員としての指導経験を参考にしつつ、阿部の意見も加味して、小学校教育現場での 「アクティブ・ラーニング」概念の扱われ方と、内包される課題を明確にし、危惧される傾向の検討 を行う。. 2.アメリカ合衆国の「AL」概念とその背景 溝上慎一は、 『AL』がアメリカ合衆国において求められるようになった背景は“教授パラダイムの 転換”にあると指摘する5)。三浦真琴6)が“教授パラダイムの転換”という“ムーブメント”の起点と なった報告書や論文を挙げているので、佐藤は、それら原典(原文論文)を調査し、 「AL」に関わる 各種の提言内容やその背景について検討し直した。以下、その概要を述べる。 アメリカ合衆国では1980年代(昭和55年~昭和64・平成元年)から“教授パラダイムの転換”とい う“ムーブメント”が生じた。理由は、国力の著しい低下に対する危機意識にあった。レーガン政権 7) を提唱し(表2-1) 、国全体で教育 は「教育システムの刷新(reform of our educational system) 」. 制度の刷新を進めた。そして「国立教育研究所(National Institute of Education) 」はこれを受けて「学 習への関与(Involvement in learning) 」8)を提言し、高等教育課程の改善策を打ち出した。背景には、 高等教育課程の状況の多様化(diversity)があり、以下4つに集約・整理されている。①すべての学 部生の半分以上が女性(More than half of all undergraduates are women.) 。②6人に1人がマイノ リティー集団の出身(One out of every six is a member of a minority group.) 。③5人に2人は、25 歳以上(Two out of every five are over the age of 25.) 。④5人に3人以下しかフルタイムの学生で ない(Fewer than three in five are attending college full time.) 。こうした状況の打破策として、 「国 立教育研究所(National Institute of Education) 」は「学生を“学習へ関与”させる」ことを提言し たが(表2-2) 、その根拠は、 「もし彼らがそれ(学習)へ従事したら,学生は内容をより学びそう で あ る こ と を わ れ わ れ は 議 論 し た。 (our contention is that student are more apt to learn that 9) と述べている程度に過ぎない。その後、「米国高等教育学会 content if they are engaged with it) 」. (American Association for Higher Education) 」が 「学部教育における優れた授業実践のための7 10) を提唱したが(表2-3) 、その中で「無関 原則(Seven Principles in Undergraduate Education) 」. 心な学生(Apathetic student) 」 と「読み書きのできない卒業生(illiterate graduates) 」 の存在と「無 「大学(college、university)に 能な教え(incompetent teaching) 」11)が行われていることを指摘し、 おける良い教えと学びの研究に基づく7つの原則を提供する(We offer seven principles based on 122.
(4) 小学校におけるアクティブ・ラーニングについての検討. research on good teaching and learning in colleges and universities.) 」12)と述べた。 その1つに 「Active 13) が挙げられている。このことからも、 「AL」は高等教育課程(college、university) の学習・ Learning」. 指導方法(概念)であるということがわかる。1995年(平成7年)に、Robert B.BarrとJohn Tagg は『教えるから学ぶへ(From Teaching to Learning) 』において、 当時の高等教育課程の動向を 「我々 は新しいパラダイムに移行しつつある。 (We are shifting to a new paradigm.) 」14)と指摘した。更に 「我々(教授者)は今,我々の目的が,教授ではなく最もよいあらゆる手段によって学生と学びを産 出することであるとわかった。(We now see that our mission is not instruction but rather that of 15) と述べているが、それが producing learning with every student by whatever means work best.) 」. 即ち「“学習パラダイム”への移行(The shift to a ”Learning Paradigm”) 」ということであり、溝 上の指摘はこのことである。原典(原文)の調査をした結果、以下のことが明らかになった。 「AL」は、1980年代のアメリカ合衆国内で問題視されていた国力の低下と、高等教育課程におけ る学生の多様化、学習に対して無関心な学生の存在に対処方法として具体的に提唱された、 「高等教 育のための教授=学習方法概念」である。 表2-1 「危機に立つアメリカ(A Nation At Risk)」,1983年(昭和58年) 提言内容. 「教育システムの刷新(reform of our educational system)」. 背景. いわゆる「双子の赤字」など、国力の著しい低下に対する危機意識から地方自治権の強い アメリカ合衆国では異例ともいえる「国全体で教育制度の見直しを進める」事になった。 表2-2 「学習への関与(Involvement in learning)」,1984(昭和59). 提言内容. 高等教育課程の現状として多様化(diversity)が起きており、学生をより“学習へ関与” (Involvement in learning)させることが重要である。. 背景. 前掲の「危機に立つアメリカ」を受けて「高等教育課程が他の教育段階に影響すること〈佐 藤が翻訳〉 (it underscored the ways in which higher education influences the other levels 16) of education.)」 を強調し、高等教育課程の現状と改善策を打ち出した。. 表2-3 「学部教育における優れた授業実践のための7つの原則(Seven Principles in Undergraduate Education)」,1987(昭和62)年 提言内容. 「大学(college,university)における良い教えと学びの研究に基づく7つの原則を提供す る(We offer seven principles based on research on good teaching and learning in colleges and universities.)」. 背景. 当時の高等教育課程の現状について。「無関心な学生(Apathetic student) 」 と「読み書き のできない卒業生(illiterate graduates) 」 の存在と「無能な教え(incompetent teaching) 」 が行われていることを指摘した。. 3.日本における「アクティブ・ラーニング」概念の導入経緯 アメリカ合衆国における「AL」は、高等教育課程における学習方法概念であったことを確認した。 しかし、前述したように、近年になって日本で喧伝されるようになった「アクティブ・ラーニング」 概念は高等教育課程よりも、むしろ初等・中等教育課程のための概念であるという印象が強い。どう してそのような相違が生じたのかを明らかにするために本章では、以下2つの調査結果を述べる。 123.
(5) 佐藤 秋杜・阿部 二郎. 3-1 教育政策としての「アクティブ・ラーニング」概念の導入経緯 日本の初等・中等教育課程における「アクティブ・ラーニング」は、平成29年告示の学習指導要領 からその概念導入が図られた。学習指導要領改訂に向けて開催された審議は、以下のような経過で行 われた。①文部科学大臣が中央教育審議会に諮問をする。②中央教育審議会は、諮問された内容につ いて有識者で構成された部会で審議を重ねる。③審議を重ねた内容を中央教育審議会は文部科学大臣 に答申をする。④文部科学省が答申を基に学習指導要領の内容を決定する。 「アクティブ・ラーニング」の文言は審議経過①にあたる平成26(2014) 佐藤が調査したところ17)、 年11月20日の下村博文文部科学大臣(当時)による「基準等の在り方についての諮問」から使用され ている。そこでは、育成すべき資質・能力を確実に育むための学習・指導方法がどうあるべきかにつ いて「今後の『アクティブ・ラーニング』 〔注: 『』は佐藤が改変〕の具体的な在り方についてどう考 えるか」「『アクティブ・ラーニング』 〔注: 『』は佐藤が改変〕などの新たな学習・指導方法や,この ような新しい学びに対応した教材や評価手法の在り方についてどう考えるか。 」18)を審議することを求 めていた。つまり、初等・中等教育課程への「アクティブ・ラーニング」概念の導入の是非判断を求 めておらず、概念導入は既定方針であり、 「その具体的な在り方についてどう考えるか」を諮問して いたのである。従って「アクティブ・ラーニング」が、これからの時代に必要な資質・能力を育むの に有効な学習・指導方法であるという前提で諮問していたことになる。この諮問の後、 平成27(2015) 年8月26日に中央教育審議会初等中等教育課程分科会教育課程企画特別部会から「論点整理」が示さ れた。この内容から、審議経過②を見て取ることができる。 「論点整理」では、 「知っていること・で きることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等) 」19)が重要であると指摘している。そして、「学 びの量とともに、質や深まりが重要であり、子供たちが『どのように学ぶか』について光を当てる必 要があるとし「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び(いわゆる『アクティブ・ラーニン 20) について検討を重ねてきたと述べている。また、 「指導法を一定の型 グ』) 〔注:『』は佐藤が改変〕」. にはめ,教育の質の改善のための取り組みが, 狭い意味での授業の方法や技術の改善に終始するといっ 「アクティブ・ た懸念」21)が審議の中で示されたとしている。そして、その懸念を払拭するかのように、 ラーニング」に取り組む際の視点を以下のように示した22)。①習得・活用・探求という学習プロセス の中で、問題発見・解決を念頭に置いた“深い学び”の過程が実現できているかどうか。②他者との 協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを拡げ深める、 “対話的な学び”の実現ができている かどうか。③子供たちが見通しをもって粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげ る、主体的な学びの過程が実現できているかどうか。つまり、審議過程の中で「アクティブ・ラーニ ング」によって指導法が一定の型にはめられる懸念が呈され、それを払拭するためにわざわざ留意点 (以後、これを「3つの視点」と表現する。 )を明らかにしたのである。審議過程③にあたる、平成 28年(2016)年12月21日の中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校,及び特別支援の学 習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申) 」では 「 『主体的・対話的で深い学び』の実現 に向けて,日々の授業を改善していくための『視点』を共有し,授業改善に向けた取組を活性化して 23) を目指すべきとしている。つまり、 「論点整理」で示された「3 いくこと〔注:『』は佐藤が改変〕」. つの視点」が「主体的・対話的な深い学び」という表現に集約され、 「アクティブ・ラーニング」は 取り組みを活性化させる概念であると説明したのである。 「論点整理」の時点で「アクティブ・ラー ニング」の留意点とされた「3つの視点」が、答申の時点では前面に押し出され、 「アクティブ・ラー ニング」そのものはむしろ付随する概念であるかのように「主客転倒」的に扱われているのであるが、 「主体的・対話的で深い学び」は、中央教育審議会の審議過程の中で呈された概念であることに留意 124.
(6) 小学校におけるアクティブ・ラーニングについての検討. する必要がある。 3-2 教育現場への周知・広報活動の内容と経緯 文部科学省編集の雑誌、 「初等教育資料」 「中等教育資料」および「教育委員会月報」ではどのよう に「アクティブ・ラーニング」が扱われてきたのかを探るため、 論文・記事数の量的変化を調査した。 調査対象(範囲)は、下村博文文部科学大臣(当時)の諮問が成された平成26年(2014)11月を起点 とし、3年後の平成29年(2017)10月号までの各雑誌53冊、合計159冊を調査した結果を表3-1に 示す。調査手順としては、①「アクティブ・ラーニング」 「Active Learning」という表現が使われて いる論文や記事が何本収録されているかを調査した。 (該当する表現が1つでも使用された論文や記 事を「1(本)」として集計した。同様に、該当する表現が2つ以上あった場合でも「1(本) 」とし て集計した。)②縦軸に「文部科学省が公表した「諮問」や「答申」等」 「公表した文章での『アクティ ブ・ラーニング』の定義や説明箇所の抜粋」 「中等教育資料」 「初等教育資料」 「教育委員会月報」を 配置し、横軸を1カ月ごとの時系列とした。それぞれの論文名は誌面の関係上、簡素化しており、そ れぞれの論文が表3-2と対応するようにした。③月毎の論文や記事数の合計をグラフ化した。 調査の結果、 「中等教育資料」で92本。「初等教育資料」で79本。 「教育委員会月報」で26本の「ア クティブ・ラーニング」関連の論文や記事が確認できた。調査対象期間の36か月で197本の論文・記 事の掲載は決して少ない数ではなく、文部科学省が積極的に「アクティブ・ラーニング」を周知しよ うとしていた証と言えそうである。事実、 「アクティブ・ラーニング」関連の論文・記事は、平成28 年(2016)年12月21日の中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、及び特別支援の学習 指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申) 」の前後で特に多いことが表3-1から確認で きる。また、調査で明らかになったのは、 「AL」が高等教育課程のための教育方法概念なのに、日本 では初等教育課程から「導入のための解説」が行われ始めていたことである。. 4.呼称についての提言 「論点整理」の時点で「アクティブ・ラーニング」の留意点とされた「3つの視点」が、中央教育 審議会の答申では前面に押し出され、 「アクティブ・ラーニング」そのものはむしろ付随する概念で あるかのように「主客転倒」的に扱われるようになったことは前述した。これは明らかに「AL」と は異なる解釈である。その上、 学習指導要領の「中間発表」直前までは、 括弧付きながらも「アクティ ブ・ラーニング」という表現が使われていたにも関わらず、 「中間発表」 ・ 「告示」では完全に削除さ れている。教育実践現場での戸惑いを払拭するかのように、学習指導要領解説では括弧付きで「アク ティブ・ラーニング」の文言が復活しているが、法的拘束力を有する告示文に含まれていない以上、 その扱いは軽くならざるをえない。文部科学省は 「AL」 という既存概念の移植を主導したからには、 「元の呼び名」を残したままで「概念内容を変える」に至った経緯や理由を詳しく説明する必要があ る。換骨奪胎であるなら、 「新たな呼び名」を付与し、 旧来のものと区別する必要が出てくる。その「新 たな呼び名」が「主体的・対話的で深い学び」なのであろう。ところが、 換骨奪胎した結果として「新 たに生み出した概念」であるのに、その解説において括弧付の旧概念の名称を付記するという行為は 「正確な概念理解(主体的・対話的な深い学び≠AL) 」をする上での混乱を引き起こしかねないミス リードである。従って、 今後は初等教育課程・中等教育課程の教育方法名称として 「アクティブ・ラー ニング」は併記・並記するべきではない。. 125.
(7) 佐藤 秋杜・阿部 二郎. 表3ー1 文部科学省編集著作物「中等教育資料」「初等教育資料」「教育委員会月報」. 126.
(8) 小学校におけるアクティブ・ラーニングについての検討. での「アクティブ・ラーニング」の使用頻度の量的変遷. 127.
(9) 表3ー2 表3-1との対応表. 佐藤 秋杜・阿部 二郎. 128.
(10) (佐藤秋杜 作成). 小学校におけるアクティブ・ラーニングについての検討. 129.
(11) 佐藤 秋杜・阿部 二郎. 5.小学校における「アクティブ・ラーニング」の現状と課題(結論に代えて) 佐藤は、平成30年度(2018)から小学校教諭として函館市の小学校に勤務している。実感としては 「アクティブ・ラーニング」より「主体的・対話的で深い学び」という概念呼称の方を見聞きするこ とが多い。そのため、授業実践の際も、 「アクティブ・ラーニング」というよりも「主体的・対話的 で深い学び」が「教育方法として実現できていたか」と言う観点で省察することの方が多い。その際、 佐藤は以下の観点で「主体的・対話的で深い学び」が「教育方法として実現できた授業だったか」を 反省・評価している。①主体的…既習との比較や関係づけを行い、児童自らで学習課題を作れていた かどうか。②対話的…児童が相互にface to faceで、自分の考えを話したり、話している児童を見て、 聞けていたか、反応(頷く、声を出す等)していたかどうか。③深い学び…「振り返り」で自己変容 が実感されていたかどうか。対話により、異なる立場の意見や考え方を理解していたかどうか。 それぞれを行動目標として設定することで教師側でも見取ること(評価)ができ、不足があれば方 法改善で補うことができると考える。しかし、 これはあくまで佐藤個人の解釈である。即ち、 「主体的・ 対話的で深い学び」という「新しい概念」が教育実践現場に導入された際、 前述したように「幅をもっ た説明」(曖昧な説明として、 「アクティブ・ラーニング」≒「主体的・対話的で深い学び」 )が成さ れたことによって、教員個々人によって様々に解釈できる状況が生じているのである。教育方法とし ての解釈に幅が生じるのは必然だが、 「主体的・対話的で深い学び」を「教育目的」化した授業が行 われかねないことに筆者らは自身への戒めも込めて大きな懸念を抱いている。 「アクティブ・ラーニ ング」や「主体的・対話的で深い学び」はあくまで「教育方法」であって「教育目的」ではない。対 話的であるからと言って、全ての教科の全ての単元で「話し合い」をさせれば良いということにはな らない。小学生の場合は、 「話し合い」をさせると教師の想定より長く時間がかかってしまうという 実感がある。何を達成目的として教育方法としての「話し合い」を選択するのか、まず教育目的が先 に定められなければならない。 「アクティブ・ラーニング」は「方法」として解釈しやすい語感があるが、 「主体的・対話的で深 い学び」は「文」であり、 「方法」というより「訓育としての上位達成目標」としての解釈を招きか ねない語感があり、危惧されることでもある。このことは、日々、子どもたちと向き合っている我々 教員は忘れてはならないだろう。 註 1)http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017 _001.pdf〉 ,p.3(2019.9.22 最終アクセス) 。 2)前掲⑴。 3)溝上慎一, 「アクティブラーニングと教授パラダイムの変換」,(東信堂,2014),p.25。 4)前掲⑶,p.28。 5)前掲⑶,p.26。 6)三浦真琴,「Active Learningの理論と実践に関する―考察 LAを活用した授業実践報告⑴」,関東大学教育開発 センター,関西大学高等教育研究⑴,23-35,2010,p.27。 7)<https://www2.ed.gov/pubs/NatAtRisk/risk.html>(2019.9.22 最終アクセス)。 8)National Institute of Education,“Involvement in Learning : Realizing the Potential of American Higher Education.” , ( Washington ,D.C., National Institute of Education,1984)。 9)前掲⑻。. 130.
(12) 小学校におけるアクティブ・ラーニングについての検討. 10) 〈http://www.lonestar.edu/multimedia/SevenPrinciples.pdf〉(2019.9.22 最終アクセス)。 11)前掲⑽。 12)前掲⑽。 13)前掲⑽。 14)Barr,R.B. & Tagg , J.“FROM TEACHING to LEARNING-A New Paradigm for Undergraduate Education” , Change,27⑹,1995,p.13。 15)前掲⑸,p.13。 16)前掲⑻。 17) 〈http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1353440.htm〉 (2019.9.22 最終アクセス) 。 18)前掲⒄。 19)〈http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/_toushin/_icsFiles/ahieldFiles/2015/12/11/1361110.pdf〉 (2019.9.22 最終アクセス) 。 20)前掲⒆。 21)前掲⒆。 22)前掲⒆。 23)〈http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/_icsFiles/ahieldfile//2009/05/12/1216828_1. pdf〉 (2019.9.22 最終アクセス) 。. 参考文献 1)Barr,R.B.,& Tagg , J.,”FROM TEACHING to LEARNING-A New Paradigm for Undergraduate Education”,Change,27⑹,1995。 〈http://www.lonestar.edu/multimedia/SevenPrinciples.pdf〉 2)Chickering, A. and Gamson, Z.,“Seven Principles for Good Practice in Undergraduate Education”, a publication of the American Association of Higher Education,1987。 3)National Commission on Excellence in Education,U.S.Department of Education,“A Nation At Risk:The Imperative for Educational Reform ”1983。 <https://www2.ed.gov/pubs/NatAtRisk/risk.html> 4)National Institute of Education,“Involvement in Learning : Realizing the Potential of American Higher Education.”,Washington ,D.C., National Institute of Education,1984。. 131.
(13)
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