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小学校環境教育実践の原理的考察(1)

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(1)Title. 小学校環境教育実践の原理的考察(1). Author(s). 大森, 享. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第39号: 67-72. Issue Date. 2007-11. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1091. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 脚l路論集 一北海ユ亘教育大字釧路校桝発赤己豊一 第39号(平成19年). KushiroRonshu,−JournalofHokkaidoUniversityofEducationat Kushiro−No.39(2007):67−72.. 小学校環境教育実践の原理的考察(1) 大 森 享 北海道教育大学釧路校環境教育第一研究室. Examination of environmentaleducationin elementary school(1) Susumu OlMoRl Hokkaido University of Education,Kushiro Campus. 要 旨 大森環境教育実践を主な事例として、小学校環境教育実践の原理的考察を行った。 環境教育を「価値観形成と価値実現の行動主体を育てる教育」(大森享2004年)「より良い環境を享受できる 主体の形成にかかわる教育」(大森享2006年)とし、その概念に基づいて論を展開した。 「より良い環境とは何か」を追究する5つの視点、「享受できる主体の形成」にかかわる「行動主体形成の 教育」について論じた。 次に、「環境観を豊かに育てる」ことを前提とし「行動計珂を含む環境計画を生み出す(公論の場を組織し、 意見表明・合意形成を通して社会参画を体験する)」「環境権の認識を促す原体験を組織する(環境を改変・ 維持管理しより良い環境を享受できる主体として行動を伴った学習をおこなう)」教育手法について提起した。 系統学習による人類の積み上げてきた科学・文化の基礎を学ぶ際に、現実世界で生じている環境問題(環 境と人間の応答問題)を契機とした近代の知のあり方の検討を前提として、これからの人間の生き方や社会 システムのあり方を持続可能性に向けて転換していく上で、主体的に行動できる知と力と技を子どもたちに 育てる課題があることを論じた。. その間題の解決のために人間のあり方に迫っていく」(田中. はじめに. 実1997年)。「環境問題に関心をもち、環境に対する人間の. 教育実践分析による教育目的・教育内容・教育方法にわ. 責任と役割を理解し、環境保全に参加する態度及び環境問. たる教育的価偶の考察により、教育実践分析視点も深化し、. 題解決のための能力を育成する」(『環境教育指導資料(小. 次の実践創造がなされていく。. 学校編)』(当時文部省1992年)等がある。. 小論では、第47回読売教育賞「生活科・総合学習部門」. 「地域住民の地域観を育てるとともに、分断された住民. 優秀賞などを受賞している大森環境教育実践(1)を主な事例と. の間に新たなコミュニティ意識を育てていく。そして、地. して小学校環境教育実践の原理的考察を行う。. 域の課題を自らの力で発見し、それを解決していくみちを. 環境教育の定義をめぐっては、「より良い環境の創造のた. 模索していく学習過程こそ、環境教育あるいは環境学習の. めに行動できる能力や態度を育成する教育活動である」(堀. 本質部分である」「『参加、実践』と自らの頭で考えて行動. 内一男1992年)。「子ども自ら環境へ積極的に対応し、社会. する過程が環境教育には不可欠である」「環境教育では、得. 参加と貢献の活動の学習を推し進めるような『環境形成者』. た知識の崇ではなく、自己の問題意識に基づいて行動する. の育成」(佐島群巳1993年)。「人間が、自然(地球・環境)と. こと」「反公害の諸活動は人間の生命と健康に最高の価値を. 末永く共生していくためにはどうすればいいか考え、話し. 置き、自然保護や住環境改善の諸活動は、いわば当たり前. 合い、そして実践する」(藤原彰1997年)。「人間・社会の活. に存在すべき線や空間の価値を再認識させるに至」り「環. 動度の飛躍的な発展によって、生態系における各種生物の. 境教育には、環境保全や人間環境のあり方、それを支える. 地位と役割が乱されたり、非循環物質の生成等により発生. 人格形成と社会的価値観の確立という明確な目標設定と、. した諸問題を、時間の流れ(歴史的視点)のなかで認識し、. それに至る道筋を示して、個別の活動を位置付ける、いわ. 一67−.

(3) 大森 享 川潔は「生態学的自然観による自然の見方であり、自然を. ば体系化の作業が急務である」(小川潔2001年)。. つながりにおいて観ることによって、自然保護教育となる」. また「環境教育という言薬は、たんに問題解決の手段と. (2002年)と述べた。アメリカのアルド・レオポルド『野. しての教育を指すだけでなく」「それ以前の」「教育と呼ば れてきた事象に対して、根本的な異議申し立てを表明した. 生のうたが聞こえる』・クリストファーストーン「樹木の当. もの」。「18世紀末以降に西欧諸国を中心にして起こった産. 事者適格」など、アメリカでは、生態系の保護から自然の. 業革命によって工兼化・産業化をもたらした【F近代化』を. 権利訴訟が発展している。日本でも、奄美大島のクロウサ. 支えてきた教育」が「産業的・工業的な教育であ」り、「環. ギ、北海道のナキウサギ、茨城のオオヒシクイ、横浜のホ. 境教育は」「学校教育」の「支配的な社会パラダイム」を「新. ンドタヌキやギンヤンマなどが、自然の権利訴訟を起こし. しい環境パラダイム」に変革するという革命的な目的を持」. た。これらは、自然を保護するために人間社会の問題解決. つ「対抗ヘゲモニー」、「それが環境教育の本質である」(原. 制度の一つである裁判を利用することで、多くの人に問題. 子栄一郎1998年)。「学校教育システムをも内に含んだ、新. を知らせ解決を促すものであるだろう。 以上から、環境観を豊かに育てる視点として、生物多様. たな【F子どもと環境とのかかわり形成』システムの実現」、. 「子ども・若者と環境共生空間を育み、彼ら/彼女らと教. 性保全・自然の権利の考え・自然をつながり(物質循環・. 師をはじめとする大人たちがともに学び、環境とのかかわ. 食物連鎖・生態系)で担えるがあげられる。これらは、人. りを豊かにいていくビジョン」(安藤聡彦2005年)という子. と自然の関係から環境を観ることであろう。. どもと環境の応答関係の構築から環境教育を捉えようとす. 第三は、地球環境問題系からの視点である。ここでは、. る論議もある。. 環境問題がグローバル化し複雑化している現代をどのよう. 以上を踏まえ、雫者は「価値観形成と価値実現の行動主. に分析し子どもたちと共に環境観を探求し共有するのかが. 体を育てる教育」(2004年)と定義し、その後「より良い環. 問われる。「現象羅列説明でなく、典型的なものを扱う」「複. 境を 享受できる主体の形成にかかわる 教育」(2006年). 雑なものを極度に単純化(=横縮)して与える」(田中裕一. とした。. 1973年)という教育方法の原則から「複雑とはいえそれら は、水俣病を代表する産業公害型と根源は同じであり、7k 俣病問題を基礎基本として学習し、応用問題として取り上. 1 より良い環境とは?. げるべきだ」(岩淵孝2006年)という見解もある。また、南. 筆者の定義「より良い環境を享受できる主体の形成にか. 北の格差問題は、国内の格差問題に通じるものであり、「典. かわる教育」において、「より良い環境とは何であり、いか. 型の中で、地域、l]本、世界に共通する課題を追求する」. にそれを考えたらよいか」という、21世紀社会のあり方を. という「課題化的認識」(上原専禄)という視点も必要であ. 展望しつつ子どもたちと探求すべき環境観を豊かにとらえ. ろう。学習者である子どもたちの当事者性を呼び覚ます上. る課題が環境教育実践には求められる。. で課題化的認識は重要である。一人ひとりの心構えなど環 境マインド・道徳のレベルで問題を矯小化することなく、. 教師・大人が子どもたちと探究し共有する環境観につい. 社会システム・構造を捉える基礎学力が必要であろう。. ての視点をいくつか確認したい。 第一は、日本の環境教育は公害教育から始まった(招田. 以上から、環境観を育てる視点として、グローバル化さ れた社会の仕組みを捉える基礎学力が挙げられる。. 眞ら)と言われているように、公消散育系からの視点であ. 第四は、持続可能な社会・地域に向けての教育系からの. る。 田中裕一は、「正義・公平・人権・生命」に関わる教育で. 視点である。ここでは、環境を造り生み出しているのは人. あり、「社会を冷徹に見つめ差別を見抜く社会科学の力」(2). 間・社会であると言うことをあらためて自覚していきたい。. を強調した。公害教育を分析した藤岡貞彦は「環境権の認. 人間・社会が何を基準に豊かであると考えるかが出発点. 識」(3)を教育的価価として確定している。. となろう。豊かさのイメージにより環境観は変化し、それ. 以上から、環境観を豊かに育てる視点として、正義・公. により例えばエネルギーの使い方・ライフスタイル等も変. 平・人権・生命及び、差別を許さない・差別を見抜く社会. 化する。. 科学の知見、誰もがより良い環境を享受できる権利がある. また、「大橋採取、大量生産、大貴消費、大帝廃棄」(見. のだという観方(環境権認識)が上げられる。これらの視. 田宗介)の社会システムの問題点を見抜き、循環型社会シ. 点は、社会システムの問題を視野に人と人との関係から環. ステムの構築に向けて消費者の意識を高めること、政府・. 境を観ることであろう。. 自治体に諸施策を要求していくこと、循環型社会を生み出. 第二は、自然保護教育系からの視点である。金田平・柴. せる政月守をつくるなど、主権者として国・自治体を動かす. 田敏隆らによって行われた「三浦半島自然を守る会」は、. ことによる社会システム変革も念頭に入れる必要があるだ. 当時採集し模本を作るという自然との接し方に反対し、「自. ろう。. 然観察会」の手法を実践した。この手法は日本自然保護協. 以上から、人間にとっての豊かさとは何かを考える<人・. 会の自然観察会として発展していった。この運動に対し/ト. ヒト>理解(4)、オルターナブルな社会を展望できる対抗軸の. ー68−.

(4) 小学校環境教育実践の原理的考察(1) 学習(5)、自然エネルギーの学習などが挙げられる。. うな成長の筋道を保障していく教育として「行動主体形成. 第五は、上記までの視点と異なるが、より良い環境を読. の教育」を提起した(大森享2004年)。. 環境観を豊かに学ぶ時、学習者である子どもの授業参加・. み解く感性の問題が挙げられる。 「自然が不自然」な子どもたちの感性の都市化現象は、. 社会参画は重要な視点となる。 以上のような教授=学習過程におけるいくつかの原則と. 1980年代頃より顕著になっていった(6)。ここに原体験(7)や自. 然接触体験などの重視が挙げられる。. して、. 自然の厳しさ・怖さを含め自然を好ましいと思う心情の. (1)学習課題決定権を教師の独占として処理するのではな. 育成は、どのような環境を望ましいと考えるかという際の. く、学習者である子どもたちの異議申し立てや提案を取. 重要な判断基準となる。レイチェル・カーソン女史を例に. り入れる(吉田和子)(10). するまでもなく、感情・情動の教育は課題として挙げられ. (2)何気ない日常の事象から教育的価値を発見し教材とし. るようになってきている(8)。. て組織する(柴田義松)。. これにかかわり、「子どもと野生小動物とのコミュニケー. (3)「問いと答えの間」(大田尭)をどう組織するか、にか. ション的かかわりの重要性」(尾関周二)の提起がある。. かわり、. 以上五点にわたり述べた。各視点に基づき、教科教育内 容の見直し■検討が必要であるが、今回の小論では触れな. ①指導者の指導計画と学習者の学びの筋道を相対的に捉. い。五点は相互に関係しあうことであり厳密に分けられる. る。 ②人・モノ・自然という実在にいつ・どこで・どのよう. え、学びの筋道を予想しながら学習のゴールを想定す. ことではないが、小学生の発達段階を踏まえ(9)、環境観を豊. に出会わせるかというコーディネートをする。. かに育てる視点の相対的重点が異なるのは当然である。 ここでは、感情・情動に関する視点が土台となり、次に. ③問いを生み出し、問いを育て深化させ、問いを追究す. 公告教育・自然保護教育系、そして持続可能な教育・地球. る学習過程づくり。 ④所与の世界を課題としての世界に変える学習過程づく. 環境問題系という3層をなし、土台から3層へと学年をおっ て広がっていくと考える。. り。. また、環境科学・環境哲学・人間学の知見とその深まり、. ⑤直接体験から問いを生み出し探求し意見表明・表現活. 住民・市民運動の進展、国際的機関・政府機関などの施策. 動する学習過程づくり。 ⑥学習者である子どもたちが当事者として課題に立ち向 かう学習過程づくり。. の進展などから、今後環境観を支える視点が進化発展する ことは言うまでもない。. (∋現実世界を変革する主体として子どもが地域社会に立. ち現れる学習過程づくり。. 2 享受できる主体の形成とは?. などがあげられる。. 環境教育のゴールは、「問題を解決する適切な行動をとれ. 行動主体形成の教育に閲し、「1947年教育基本法」の人格. ることができる」主体を育てること(ベオグラード憲章1976. の完成と平和的国家・社会の形成者という二つの教育目的. 年)であり、そのためには学び続ける主体を育て、「できご. 理解での、人格の完成を土台とした国家・社会の形成者の. とのなすがままに動かされる客体から、自分たち自身の歴. 筋道において、話し合い・合意形成・民主主事の実現とい. 史を創造する主体」(ユネスコ学習権宣言1985年)として成. う言わば実践知の領域の教育論・実践が乏しかったのでは. 長する学習権が万人に保障されなければならない。環境教. ないか(11)と言う指摘がある。. 地域環境改変・維持管理に参画させる大人社会で合意さ. 育は、主体的に問題を捉え解決方法を探り、合意形成を促 し問題解決する当事者として行動できる学力が求められる。. れた地域教育計画の遅れ、それに伴う学校と地域・行政の. すなわち1章で論じた環境観を豊かに育てる環境教育実 践の視点とともに、学習者である子どもたちがどのように. 連携の遅れ、それらの実践を支える学力論・知の枠組み論 の検討など課題は多い。. 学ぶかが問われる。何故なら、自己肯定感・自尊感情の乏. 今ある現状に不満や違う事を構想した時、人は当事者と. しい子どもたちが、生き生きと社会に参画する教授=学習. なる(中西正司・上野千鶴子2003年)のであり、授業にお. 過程でエンパワーメントされ、次代の社会・国の主人公と. いて問題点がわかるような対抗軸の提出を教師がすること. して成長する教育が求められるからである。. は非常に大切であるだろう(子安 潤2001年)。. 「まわりの友達・教師を含めた大人・社会の指導・援助 を受け、試行錯誤しながら意見表明・社会参画し、判断力・. 3 小学校環境教育の手法. 行動力を身につけ自分の行動の主人公となる経験を続ける ことにより、子どもは自尊感情や自己肯定感・安心と居場. 小学校環境教育実践の原理的考察にあたり、その教育手 法について論じる。. 所が確保され、国の主人公としてより良い環境を享受でき. ただし、小論で論ずる教育手法は、「行動主体形成の教育」. る・生み出すことのできる主体に育つ」のであり、このよ. 一69−.

(5) 大森 享 なるだろう。. (前出)としての環境教育を念頭とした教育手法であり、. 感情・情動における教育手法や自然を豊かに感じる教育手. 以上の研究及び大森環境教育事例分析から「より良い環. 法などについては触れない。. 境を享受できる主体の形成にかかわる教育」の教育手法と. 最初に、教育手法を支える教育思想について論じる。. して、「環境観を豊かに育てる/行動計画を含む環境計画を. イギリスでは、若者の政治離れや引きこもり現象に対す. 生み出す(公論の場を組織し、意見表明・合意形成を通し. る危機感から、クリック・レポート(1998年)が提出され、. て社会参画を体験する)/環境権の認識を促す原体験を組. セカンダリースクールでシティズンシップ教育が義務化(2002. 織する(環境を改変・維持・管理しより良い環境を享受で. 年)されている。シティズンシップ教育とは「市民を育て. きる主体として行動を伴った学習を行う)」という教育実践. る民主主義と政治の教育」(佐貫浩2002年)というイメージ に近い。イギリスの小学校のシティズンシップ教育の実践. 創造の視点を筆者は提案した(2004年に加筆)。. 事例として、「地域の公園が非常に汚くて、落書きやゴミが. 場を組織し、意見表明・合意形成を通して社会参画を体験. いっぱいあり、市の委員会に申し出て、市の委員会と一緒. する)」「環境権の認識を促す原体験を組織する(環境を改. ここでは、「行動計画を含む環境計画を生み出す(公論の. になって公圃のあり方を考え、それを美しく、自分たちが. 変・維持・管理しより良い環境を享受できる主体として行. 生活していくアメニティの問題として展開していく」こと. 動を伴った学習を行う)」教育手法について実践事例に即し. や小学校の委員会活動で学校新聞を6000部作り、コミュニ. て論じたい。. ティに全戸配布し、広告を取って収入にし、社会問題や学 校の問題について論説を告いて訴えるような実践事例など. 大森環境教育実践は、子どもが持ち込んできた問いの解 決に学級集団が立ち上がり、討論を経て実際に解決した子 どもたちのパワーに圧倒された「ぼくの木を切ったのはだ. が紹介されている(12)。. このような「社会的、政治的に論争がある現実の係争問. れか」(生活科2年生1992年)から始まる。それ以前は、野. 題を学校の中で積極的に論議する」(佐貫浩2005年)ことは. 外活動(登山・カヌー・スノーケリング・山スキーなど). 「各人が自分のバイアス(偏り)をどうやって認識するか、. や日本自然保護協会自然観察会などを、子ども組織(13)や学. 校宿泊行事で実践していた。. そして証拠に基づいて判断すること、多様な解釈や視点を 発見したり認識したりすること、証拠を発見し、自分の主. 上記実践を経て、子どものエンパワーメントに着目し、. 張にきちんとした説明を与え、他者の主弓長もその理由や説. 問いを生み出し・問いを育て・深化させ・解決する授業「音. 明を尊重して聞く態度を育てる」貢要な教育と言えるだろ. 無川をどうするのか」(生活科2年生1992年)を行った。「所. う。. 与の世界を課題としての世界に変える」授業、すなわち子. 学校教育を「知識の熱心な教え込みとスキルの伝達に閉. どもが抽出した3つの視点(=音無川はどこにあったのか・. じ込めること」は「学校の企てをただ訓練のための計画に. タヌキはどうしていなくなったのか・昔ここは海だったの. 制限してしまう。教育とは単なる訓練とは逆に、グループ. か)から現在の地域を観ることによって過去を知り、未来. による決定への積極的な参加、記憶の保持を超えた精神の. の地域を展望する授業をおこなった。 以上、子どものエンパワーメントに着目し、問いを生み. より高い質の開発、などの経験に遭遇することを求めるも. 出し発展させる授業論を土台に、次の実践「ばくらはトン. のである」(クリック・レポート1998年)。. 以上のような教育は、子どもの成長発達にとって社会参. ボ探検隊」(理科・社会5年生1995年・第47回読売教育貰). 画する意味を問うものであり、公と私、「人格の完成と平和. では、住民運動の自己教育過程に学び、環境観を豊かに学. 的国家社会の形成者」(1947年教育基本法)という二つの教. ぶこと(都立尾久ノ原公国をトンボの楽園として生み出し. 育目的理解にも関わるものであろう。. た住民運動から抽出した「自然が自然をつくった」「下町の. 金泰昌の「括私闘公」(国民一人一人がより積極的に、多. 原風景を蘇らせる」「いらないコンクリートははがす」「ト. 元的・重層的公共空間への主体的参加を引き受け、「公私」. ンボにはトンボの生き方ある」など)・主権者として地域環. の理念形成への機会と通路がより幅広く設けられるような. 境に物申す環境権の行使を学ぶことを教育目標に、子ども. 社会風土を建設してゆくことこそが、国家のためにも国民. 自身が問いを生み出し深め追究する学習過程を生み出した。. のためにも必要なことではないか。それは、みなで一緒に. プールのヤゴ採取・飼育・観察から始まり、「私のトンボは. 創りあげる「公」であり、「私」を活かしながら開いて行く. どこに飛んでいくのだろう」「そもそも屋上プールのヤゴは どこから来たのだろう」の問いを生みだし、子どもたちが. 「公」である。2002年)は、「より良い環境を享受できる主. 体の形成にかかわる教育」としての環境教育実践が地域公. 「トンボ探検隊」を作り保護者と一緒に区内中の水辺探し・ 公開探しを行った結果、探し出した「原っぱと水槽りの広. 共空間に関わる重要性を促しているだろう。 日本の環境教育の源流である公害教育実践を分析し、公. 場」こそ住民運動を経て出来上がった都立尾久ノ原公園だっ. 害・環境教育の教育的価値は「環境権の認識」(藤岡貞彦1975. た。子どもたちの問いは飛躍し「区立自然公園はコンクリー トだらけで自然らしくないけど、この原っぱと水沼りの広. 年)であり、その後「抵抗する環境権から参加と自治の環. 場は本当に自然がいっぱいで、私たちが住んでいる区内に. 境権」(関礼子2001年)へと発展したことも、重要な視点と. −70−.

(6) 小学校環境教育実践の原理的考察(1) あったなんて信じられません」「この広場はどうやってでき. 荒川下流工事事務所の許可を得、子ども・保護者・町内有. たのか知りたい」となり、この地平に来て子どもたちは住. 志はトンボ池を掘った. 民運動を学ぶ「構え」(ビゴツキー1926年)ができ、当事者. 大森小学校環境教育実践の最後となる「隅田公園再生プ. 野村圭介さんと出会い、公開作りの歴史を学んでいった。. ロジェクト」(2004年・2005年 5・6年生 総合・理科・. この実践で、子どもたちは住民運動とその当事者と出会. 社会・図工・道徳)(15)は、子どもの社会参画と人格形成の. い、その運動から環境観を豊かに学び・環境権の行使につ. 問題を追究した。学校横の公園に子ども自身の要求として 「ブランコの高さをあげて欲しい」「ジャングルジムを設置. いて学んだ。. して欲しい」「ゴミが汚いので、区民に呼びかけて毎月1回. 次の実践「川に池を掘った子どもたち」(理科・社会・道. 徳3年生1999年・東京都環境メッセージ優良校貰)では、. のゴミ拾いをしたい。看板設置」「烏の巣箱作りと設置」「実. 子ども自身が当事者として地域社会の環境を改変し維持管. のなる木を植えて欲しい」「ホームレス問題を考える」「ひょ. 理する行動計画を含む環境計画を生み出し、荒川河川敷に トンボ池を掘った。. うたん池の水累を雨水利用で増やす」を、教師が組織した 公論の場(町会長5名・住民ボラインテア3名・区職員3 名参加)で、意見表明・合意形成し公園の改変・維持・管. 学区域すぐ横の人工河川荒川は、高水敷(河川敷)・干潟. という都市部では貴重なまとまった自然環境を持っている。. 理を行った実践である。. ところが、当時の保護者・子どもたちや教職員も含めた荒. 「従来、公園の要望は、区役所公国緑地課で検討して決. 川観は言わば「きたない・あぶない・ちかよらない」であっ. めていました。まして、子どもの要望について、町会長・. た。. 地域ボランティアのみなさんと話し合うということはやっ. 実践が進むにつれてわかったのだが、その荒川観は直接. たことがありません」と担当職員は話していた。. 体験からのものでなく、間接体験によるものであった(例 えば「長年ここに住んでいますが、こんなにカニがいたな. ここで、埼玉県鶴ヶ島市教育委員会教育スローガン「子 どもは小さなまちづくり人(びと)」を確認したい。. んて知りませんでした。日曜日家族で来るようになりまし. 鶴ヶ島市では子どもの意見表明・参画を認め、市内小中 学校に対し児童・生徒の参加を決めた「学校協議会」設置. た」保護者)。. 地域住民の直接体験によらない合意された地域環墳観は、. を決めた。この制度によって、例えば制服や体育着の変更. 間接的な他者からのメッセージに支配される。そこでは、. などが実施された。校庭や公園改修にも子どもたちの意見. 環境を保全する当事者は育たない。「主体論的環境世界の構. が取り入れられている。「教師の指導力量としてファシリテ一. 造(認識・作用・社会性)」(嘉田由紀子1993年)による主. 夕ー、インストラクター、インタープリター、コーディネー. 体と環境との応答関係の構築が急務だろう。荒川に棲息す. ターの使い分けができるといいです」(2003年間き取り・社. る様々な小動物との接触体験やヤゴの採取・飼育・観察・. 会教育課主幹)と子どもから引き出す(エンパワーメント). 学習から「こんなに生き物がいたなんて荒川はばくらの自. 指導を強調していた。. 慢です」「私たちにとってクーラーの部屋が良いように、泥. 「参加とは、子ども・若者が、学習・文化的な実践や市. だらけでジャングルのようなとんでもない所(=ヨシ原) がヒヌマイトトンボのヤゴにとってはいい所」「コンクリー. 民的な活動を通し、学校や地域社会の変革をめざして主体 的にかかわることをいう。参加の実践や活動によって、学. トにしないで、この泥とヨシ原のジャングルのようなとこ. 校や地域社会が変革されると同時に、子ども・若者たち自. ろを残して欲しい」と言うような環境観の転換が生じ、「僕. 身が成長や発達を遂げていく。今の教育を改革していくう. たちも、五色池(=江戸川区民の作った池)のようにヤゴ. えで、参加という視点から、子ども・若者の人格発達の可. がいるトンボ池を掘りたい」となっていった。. 能性をとらえ、その制度・システムをつくることが大切に なっている」(太田政男1999年)と言う指摘は重要だろう‖6)。. 野生小動物との関わり(採取・飼育・観察・学習)(14)を. 学校と地域の教育計画が合意され、学校環境教育が地域. 経て、子どもが地域環境をその生物から眺めるという体験 は、環境観を豊かに育てる有効な教育手法となる。. 環境保全にかかわる地平(既に述べた実践事例以外に例え. 人は生物進化を経て、労働とコミュニケーションによる. ば「ぼくらは春別川調査探検隊」境智洋1997年など)に来. 社会的進化を遂げ、高度の文明化・情報化された人工空間. た時、子どもが行動主体として、環境観を豊かに学び・行. で快適に暮らし始めることによって、「自然が不自然」な感. 動計画を含む環境計画を生み出し・公論の場で意見表明し. 性が育ち、. 合意形成することを経て、現実世界を変革し維持管理する. 人間にとっての自然さ<ナチュラルさ>とは何かという. という環境権認識を促す原体験を組織する教授=学習過程. 問いが生じている。. が、子どもの環境教育実践の1つの教育手法としてより豊 かに発展するであろう。. 前工業化社会の子どもと環境との応答関係に戻るのでは. 最後に、子どもが行動主体として成長する戦後教育実践. なく、脱工業化社会に向けて子どもと環境との応答関係の. の典型として/小論が依拠した実践例を紹介したい。1969年. 構築と言う課題は環境教育学が引き取る諌題であるだろう。. 東京都小学校教師若狭蔵之助「公園をつくらせたせっちゃ. 野生小動物から観た環境観の獲得を経て、建設省(当時). ー71−.

(7) 大森 享 旗信一・朝岡幸彦編著『自然体験学習論』高文堂所収. んのおばさんたち」、1973年から1978年に実践された茨城県. (7)今泉みね子2003年『森の幼稚園』合同出版.ドイツ. 小学校教師鈴木生気による実践記録のひとつ「久慈の漁業」、 1992年大阪府/ト学校教師河崎かよ子「ボンボン山がたいへ. 「森の幼稚園」の活動がまとめられている.子どもの. ん」である。1960年代から1990年代の教育実践から、所与. 原体験を耕す教育が活写されている.. の世界を課題としての世界へと認識する子どもたちの環境. (8)坂元忠芳2000年『情動と感情の教育学』大月書店,. 観を愚かに育て、子どもたちの構想をふくらませ、明日の. アントニオ・R・ダマシオ2003年『無意識の脳自己意. 世界を生み出す環境計画について公論の場で意見表明・合. 識の脳』講談社,テンプル・グランデイン2006年『動. 意形成し現実世界の変革・維持管理というより良い環境を. 物感覚』NHK出版,ジョセフ・チャロキー+ジョセ. 享受できる主体の形成にかかわる教育実践の萌芽を抽出し. フP.フォーカス+ジョンD.メイヤー2005年『エモー. たく17)。. ショナル・インテリジェンス』ナカニシヤ出版. 以上のような教育手法は、「行動主体形成の教育」を念頭. (9)三石初雄2004年「小学校環境教育力リキュラムの編. に提起している。. 成原理の考察」東京学芸大学環境教育実践施設『環境. 人類の積み上げてきた科学・技術・文化の基礎を学ぶ際. 教育学研究 第14号』,阿部治1993年「生涯学習として. に、現実世界で生じている環境問題(環境と人間の応答問. の環境教育」阿部治編『子どもと環境教育』東海大学. 題)を契機とした近代の知のあり方の検討を前提として、. 出版会所収. これからの人間の生き方や社会システムのあり方を持続可. (10)吉田和子1997年『フェミニズム教育実践の創造』青. 能性に向け転換していく主体的に行動できる知と力と技を. 木書店. 子どもたちに育てる課題があるだろう。. (11)山田康彦2002年「求められる『社会形成と教育』の. 「主体的に行動できる知と力と技」の形成という枠組み. 研究−【F教育実践と教育科学』に寄せて」『教育10月号』. から、学校知のあり方を捉え直し、脱工業化社会の学校教. 所収. 育を展望する課題は、「/ト学校環境教育実践の原理的考察(2)」. (12)佐貫浩2005年『学校と人間形成』法政大学出版局・. で展開したい。. 2002年『イギリスの教育改革と日本』高文研 (13)岩橋能二1978年「地域子ども組織」日本社会教育学. 会年報『地域の子どもと学校外教育』東洋館出版所収 [注]. (14)大森享2003年「子どもと自然・生物を考える」日本. (1)大森享の環境教育実践については,大森享2004年『小. 理科教育学会編『理科の教育』608号東洋館出版所収,. 学枚環境教育実践試論一子どもを行動主体に育てる. 2002年「中学年理科の『基礎・基本』とその学び方」. ために』創風社,大森事編著2005年『環境学習をはじ. 柴田義松編『理科の基礎・基本の学び方』明治図書所. めよう』ルック,三石初雄・大森享編著1998年『小学. 収. 校の環境教育実践シリーズ仝4巻』旬報杜,安藤聡彦. (15)大森享■伊藤幸男編著2006年『21仲紀の環境教育』. ルック. 「自然観察から環境計画へ一大森享の教育実践をめぐ る考察」藤岡貞彦編著1998年『〈環境と開発〉の教育学』. (16)太田政男1999年「こども・若者の学校参加と社会参. 同時代社所収,鈴木敏正2003年『教育学をひらく』(青. 加」『教育4月号』国土社所収 (17)大森享2005年「序説 戦後教育における“行動主体. 木書店). 形成の教育”の系譜一維持可能な地域社会のための. (2)田中裕一1990年『石の叫ぶとき』(復刻版)未来を創. 教育を射程に」『ESD環境史研究』通巻4号 東京農. る会出版局. 工大学農学部. (3)藤岡貞彦1975年「環境権と教育権」『国民教育』23号 など (4)小原秀雄1985年『人〔ヒト〕に成る』大月書店・1984 年『自己家畜化論』群羊社■1989年『教育はヒトをつ くれるか』農文協,尾関周二1983年『言語と人間』大 月書店・1995年『現代コミュニケーションと共生・共 同』青木書店・2000年『環境と情報の人間学』再木書 店・2007年【F環境思想と人間学の革新』市木書店など (5)子安潤2006年『反・教育入門』白澤社・2001年「総 合学習と新学習指導要領の政治的実践」『教育2月号』. 国土社所収 (6)大森享2006年「自然体験と人格形成一子どもと野生 動物とのコミュニケーション的かかわりから−」降. −72−.

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参照

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