北海道の振興局別のコミュニティ・スクールの実態調査報告
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(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第9号. 自由投稿論文. 北海道の振興局別のコミュニティ・スクールの実態調査報告 栗田 芳樹*1・杉本 任士*2. 概 要 コミュニティ・スクールの持つスクール・ガバナンス(school governance)とソーシャル・キャピ タル(social capital)の機能に着目し、北海道の各市町村の学校運営協議会規則を調査した。学校運 営協議会規則の法定3権限(承認権限、運営意見権限、任用意見申出権限)の導入状況から、完全型、 制約型、欠損型(1欠) 、欠損型(2欠)の4つの権限規程タイプ(佐藤,2017)に分類した。また、 学校運営協議会委員の身分と義務等に関する規程について分類した。その結果、学校運営協議会には スクール・ガバナンスの機能が回避される傾向が見られた。そのため、ソーシャル・キャピタルの機 能が注目されがちになり、コミュニティ・スクールの効果が十分に発揮できていない可能性が推察さ れた。そこで、北海道の振興局別の学校運営協議会のガバナンスの機能を分析し、今後の北海道にお けるコミュニティ・スクールの活性化に向けて有効な学校運営協議会規則について考察を加えた。. 1 はじめに:コミュニティ・スクールの導入背景 1-1 コミュニティ・スクールの2つの機能 図1にコミュニティ・スクール(学校運営協議会)の仕組みを示した。学校運営協議会制度は、平 成16年(2004年)6月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」の公布 を受けて、同年9月9日に施行された制度である(文部科学省,2004) 。各地方公共団体がこの制度 で学校運営協議会規則を設置し、学校運営協議会制度を導入した学校のことをコミュニティ・スクー ルと呼ぶ。コミュニティ・スクールは、学校と保護者や地域の人々がともに知恵を出し合い、学校運 営に意見を反映させることで、学校と地域が協働して子どもたちの豊かな成長を支え、地域とともに ある学校づくりを進める仕組である。 「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連 携・協働の在り方と今後の推進方策について(答申) 」 (文部科学省,2015a)では、学校と地域の関 係において、コミュニティ・スクールの担う役割が大きく示されている。また、平成29年(2017年) に告示された学習指導要領(文部科学省,2017)では、 「社会に開かれた教育課程」や「カリキュラム・ マネジメント」など、地域とのつながりを持つ重要性が強調されている。 文部科学省(2018a)によると、コミュニティ・スクールは全国で5,432校である。この数は、全国 の公立学校(幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・中等教育学校・高等学校・特別支援学校)の 14.7%にあたる。 北海道の公立学校でコミュニティ・スクールを導入している学校は、1,973校のうち404校であり 20.5%で、全国の導入率を上回っているが半数に及んでいない(北海道教育委員会,2018) 。 ───────────────────── *1. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)専門職学位課程(現職派遣). *2. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)函館. 155.
(3) 栗田 芳樹・杉本 任士. 図1 コミュニティ・スクール(学校運営協議会)の仕組み (文部科学省,2017より作成). コミュニティ・スクールは、校長の学校経営方針に対する承認権限や教職員の任用意見申出権限な どのスクール・ガバナンスと、地域連携や学校支援ボランティア活動といったソーシャル・キャピタ ルの形成という2つの機能を持つ(図2)。佐藤(2016)は学校のガバナンスの機能とは、保護者、 地域住民が学校運営に参画し、学校のモ ニタリングと評価を通して自律的学校経 営を目指す考え方であると定義してい る。しかし、佐藤(2017)は、コミュニ ティ・スクールが導入されてもガバナン スの機能を欠くケースがあると指摘して いる。その理由は、学校支援人材等の ソーシャル・キャピタル形成の側面が過 度に注目される傾向があるためである。. 図2 スクール・ガバナンスとソーシャル・キャピタル. 1-2 学校運営協議会の法定3権限 学校運営協議会規則における法定3権限について表1に示した。法定3権限とは承認権限、運営権 限、任用意見権限の3つのことである。承認権限とは、当該指定学校の運営に関して、教育課程の編 成その他教育委員会規則で定める事項について校長が作成した基本的な方針を承認する権限である。 運営権限とは、当該指定学校の運営に関する事項について、教育委員会または校長に対して意見を述 べる権限である。任用意見権限とは、 当該指定学校の職員の採用その他の任用に関する事項について、 当該職員の任命権者に対して意見を述べる権限である。この場合において、当該職員が都道府県費負 担教職員である場合は、市町村委員会を経由するものとされる。佐藤(2017)は、学校運営協議会規 則の承認権限、運営権限、任用意見権限の3つの権限に着目し、各教育委員会の学校運営協議会規則 を4つのタイプに分類した。4つのタイプとは、完全型、制約型、欠損型(1欠) 、欠損型(2欠) のことである(以下、権限規程タイプ) 。 156.
(4) 北海道の振興局別のコミュニティ・スクールの実態調査報告. 表1 学校運営協議会規則における法定3権限. (地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律 第47条の6より作成). 完全型とは、法定3権限の全てが条件なしに設定されているタイプのことである。制約型とは、運 営意見及び任用意見権限に校長の事前聴取などの制約が加えられるタイプのことである。欠損型(1 欠)とは、法定3権限のうち、どれか1つだけ除外されているタイプのことで、欠損型(2欠)は、 法定3権限のうち2権限が除外されているタイプのことである。 佐藤(2017)は、コミュニティ・スクール指定校の校長に対して、コミュニティ・スクールによっ て得られた成果認識についてアンケート調査を行った。その回答結果を数量化したものを「成果認識 スコア」とした。その結果、完全型の成果認識スコアが最も高かった。欠損型(2欠)は、権限規程 タイプの中ではスコアが最も低い結果であった。また、制約型については、欠損型(1欠)と欠損型 (2欠)の中間の結果であった。このことに関して佐藤(2017)は、完全型の成果認識スコアが最も 高かったのは、学校運営協議会委員が主体的に学校運営に関わり、当事者意識を強め、学校支援地域 本部ⅰなどでの活動につながったからではないかと指摘している。 このように、コミュニティ・スクール制度は法定権限を欠く事例があり、コミュニティ・スクール の持つべきスクール・ガバナンスの機能が避けられている状況が見られる。学校には、地域住民を学 校運営協議会委員として学校運営に関与させることを回避する傾向が見られる。しかし、佐藤(2017) は完全型の学校運営協議会規則の下で運営される学校は、多様な活動を展開しその活動が多様なほど 関係者の成果認識が高い傾向にあるとしている。つまり、スクール・ガバナンスの機能を持つことに よって、学校支援地域本部などのソーシャル・キャピタル形成を望める可能性が出てくる。. 2 方 法 2-1 収集方法 インターネットに公開されている北海道の全市町村の学校運営協議会規則を収集した。収集を行っ た期間は2018年9月10日(月)から13日(木)であった。 まず、北海道町村会の「法務支援室・例規集データベース」 (北海道町村会,2018)を用いて、各 市町村の例規集、例規類集内にある学校運営協議会規則もしくはコミュニティ・スクール協議会規則 をダウンロードした。2016年度よりも古いものに関しては、各市町村の公式ホームページ内にある例 規集、例規類集を確認し、最新のものをダウンロードした。次に、例規集、例規類集内に学校運営協 議会規則が存在しない場合は、Google(https://www.google.co.jp/)を用いて、例えば「A市学校運 営協議会規則」などとキーワードを入力し検索を行った。その結果、いくつかの市町村で例規集、例 規類集以外に学校運営協議会規則がPDFファイルとして存在したため、ダウンロードし入手した。 乙部町は例規集が存在しなかったため、乙部町教育委員会に確認したところ学校運営協議会規則は まだ策定していないという回答を得た。登別市については、例規集の中に学校運営協議会規則が存在 しなかった。登別市教育委員会に確認したところ、学校運営協議会設置要綱を学校運営協議会規則と 157.
(5) 栗田 芳樹・杉本 任士. 同じものとして施行しているという回答を得たため、 学校運営協議会規則として集計することにした。 2-2 分析方法 収集した学校運営協議会規則をもとに、以下の12項目について調査した。その12項目とは、⑴設置 校数、⑵公布・施行日、⑶協議会委員数、⑷協議会指定期日、⑸運営協議会の設置に関する記述、⑹ 委員の任期、⑺委員の立場に関わる記述、⑻守秘義務に関わる記述、⑼報酬規程、⑽法定3権限、⑾ 運営権限、任用意見権限の制約に関わる記述、⑿学校運営協議会規則が設置されている学校の運営の 点検及び評価に関わる記述、であった。 そして、⑽の法定3権限について、佐藤(2017)の分類方法に基づいて、学校運営協議会規則を権 限規程タイプに分類した。12項目のうち、公務員としての身分、報酬規程、守秘義務、学校運営の点 検及び評価の4つについて分析を行った。. 3 結果と考察 3-1 コミュニティ・スクールを導入している学校・園 コミュニティ・スクールを導入している学校・園の数を表2に示した。平成25年(2013年)に出さ れた閣議決定「第2期教育振興基本計画」では、コミュニティ・スクールを全公立小・中学校の1割 に拡大することが成果目標とされた. 表2 振興局内の全学校・園数とコミュニティ・スクールの数. (文部科学省,2013) 。 北海道全体では、 市町村立学校のコミュニティ・スクー ルの導入率は26.5%であり、全国平均 より高い。しかし、振興局別に見ると 導入率に差が見られる。例えば、渡島 振興局はコミュニティ・スクールの導 入率が65.7%で、14振興局中、最も導 入率が高く、オホーツク振興局は7.7% で最も導入率が低い。 その要因として、 渡島振興局では、コミュニティ・ス クールを導入するために必要な学校運 営協議会規則を設置している自治体が 全11市町中9市町(81.8%)であるの に対して、オホーツク振興局では全18 市町村中3市町村(16.7%)であるこ とが影響していると考えられる。 オホーツク振興局でコミュニティ・ スクールを導入している学校・園の割 合は、7.7%と最も低い割合を示して. 2018年9月現在. いるが、実数を見ると10学校・園であ. 国立大学法人の附属学校・園・道立の高等等学校・特別支援. り、日高振興局の5学校・園よりも多 い。また、釧路振興局と留萌振興局を 158. 学校・私立の小中高等学校・幼稚園を除く ( )内は市町村数.
(6) 北海道の振興局別のコミュニティ・スクールの実態調査報告. 比較すると留萌振興局は釧路振興局よりも32.3%高い割合を示しているが、実数は16学校・園で同じ であった。 3-2 振興局別における学校運営協議会規則の権限規程タイプの割合 各振興局別の学校運営協議会規則の権限規程タイプの割合を表3に示した。北海道全体では、制約 型の41.2%(35市町村)と欠損型(1欠)の41.2%(35市町村)が最も高い割合を示し、次に高い割 合を示していたのは完全型の16.5%(14市町村)で、最も低い割合を示したのは欠損型(2欠)の1.2% (1村)であった。欠損型(2欠)を有しているのは、十勝振興局の中札内村のみであった。北海道 では、制約型、欠損型(1欠)の割合が高く、このことからスクール・ガバナンスの機能を欠いた学 校運営協議会が多いのではないかと推察される。 表3 各振興局別における学校運営協議会規則の4つの型の割合. 2018年9月現在 ( )は市町村数. 3-3 各市町村の学校運営協議会規則の身分規程タイプ 各市町村の学校運営協議会規則には、学校運営協議会委員の身分と義務等に関する規程がある。そ の規程とは、⑴公務員としての身分に関する規程、⑵報酬規程、⑶守秘義務の規程、⑷学校運営の点 検及び評価に関する規程、である。公務員としての身分に関する規程とは、協議会規則の中に協議会 委員を非常勤もしくは特別職の公務員などとして位置付ける規程のことである。報酬規程とは、協議 会委員に対する報酬の内容及び有無に関する規程である。守秘義務の規程とは、協議会委員は職務上 知り得た秘密を漏らしてはならず、またその職を退いた後も同様とする規程である。学校運営の点検 及び評価に関する規程とは、学校運営協議会が学校の運営状況について、年に1回ないしは2回以上、 159.
(7) 栗田 芳樹・杉本 任士. 学校運営協議会が学校運営の点検及び評価をすることを定めた規程である。 各市町村における、この4つの規程の設置状況を分析し、7つの身分規程タイプに分類した。その 結果を表4に示した。完全規程タイプとは、公務員としての身分に関する規程、報酬規程、守秘義務 の規程、学校運営の点検及び評価に関する規程が全て設置されているタイプのことである。このタイ プに該当しているのは、北海道で学校運営協議会規則を設置している全85市町村のうち42市町村 (49.4%)であった。オホーツク振興局は学校運営協議会規則を設置している3市町村全てが完全規 程タイプであった。守秘義務・運営評価点検規程タイプは、守秘義務の規程、学校運営の点検及び評 価に関する規程の2つが設置されており、公務員としての身分に関する規程、報酬規程が設置されて いないタイプのことである。このタイプは学校運営協議会規則を設置している全85市町村のうち18市 町村が該当し、全体の21.2%であった。非報酬規程タイプは、公務員としての身分に関する規程、守 秘義務の規程、学校運営の点検及び評価に関する規程が設置されており、報酬規程のみ設置されてい ないタイプのことである。このタイプは学校運営協議会規則を設置している全85市町村のうち15市町 村が該当し全体の17.6%であった。非公務員タイプは、報酬規程、守秘義務の規程、学校運営の点検 及び評価に関する規程が設置されており、公務員としての身分に関する規程のみ設置されていないタ イプのことである。このタイプは学校運営協議会規則を設置している全85市町村のうち7市町が該当 表4 学校運営協議会規則における身分規程タイプ. 160.
(8) 北海道の振興局別のコミュニティ・スクールの実態調査報告. し、全体の8.2%であった。報酬・守秘義務規程タイプ、非運営評価点検規程タイプ、公務員の身分・ 守秘義務規程タイプの3つのタイプは、それぞれ1市町が該当し、学校運営協議会規則を設置してい る全85市町村の1.2%であった。報酬・守秘義務規程タイプは、報酬規程と守秘義務の規程の2つが 設置されており、公務員としての身分に関する規程、学校運営の点検及び評価に関する規程が設置さ れていないタイプのことである。非運営評価点検規程タイプは、公務員としての身分に関する規程、 報酬規程、守秘義務の規程の3つが設置されており、学校運営の点検及び評価に関する規程のみ設置 されていないタイプのことである。公務員の身分・守秘義務規程タイプは、公務員としての身分に関 する規程、守秘義務の規程の2つが設置されており、報酬規程、学校運営の点検及び評価に関する規 程が設置されていないタイプのことである。 7つの身分規程タイプの全てに共通していることは、守秘義務の規程が課されていることである。 学校運営協議会で扱われる協議内容の中には、個人のプライバシーに関わる内容が含まれることを考 えると、守秘義務の規程は設定される必要がある。完全規程タイプ、守秘義務・運営評価点検規程タ イプ、非報酬規程タイプ、非公務員タイプの4つのタイプに共通することは、学校運営の点検及び評 価に関する規程を課していることである。このタイプに該当するのは、学校運営協議会規則のある全 85市町村中82市町村で全体の96.5%であった。該当しないのは登別市、伊達市、標津町の3市町であっ た。登別市では、登別版コミュニティ・スクールを推進している。登別市のコミュニティ・スクール の中に学校運営協議会と学校関係者評価委員会が存在し、学校運営の点検及び評価は学校関係者評価 委員会が行う。そのため、学校運営協議会規則には学校運営の点検及び評価に関する規程が存在しな いと考えられる。伊達市では、全ての学校で学校評議員制度が設定されているため、学校運営協議会 では学校運営の点検及び評価を行わない。そのため、学校運営協議会規則の中に学校運営の点検及び 評価に関する規程が存在しないと考えられる。標津町では、例規集内に学校評議員設置要綱が存在す るため、学校運営協議会では学校運営の点検及び評価を行わない。そのため、学校運営協議会規則の 中に学校運営の点検及び評価に関する規程が存在しないと考えられる。. 4 総合考察 4-1 コミュニティ・スクールの導入について コミュニティ・スクールの導入が進まない要因として、佐藤(2017)は、コミュニティ・スクール の導入について4つの感情があると指摘している。その4つとは、不能感、不安感、不要感、不信感 である。不能感はコミュニティ・スクール制度の意義を認め、その導入には賛同するが、教職員の負 担増や学校運営協議会委員を引き受ける人材の不足など前提条件に関わる課題を重く見る感情であ る。不安感は制度に賛同して導入したいが、教職員人事に関する問題をはじめとするさまざまな支障 が生起することを懸念する感情である。不要感は、現行の状況で十分だと考え、新たな制度の導入を 不要視する感情である。不信感は、 そもそも外部の者が学校運営に関与することに抵抗感を持ったり、 その成果に不信を抱いたりする感情である。例えばオホーツク振興局では、平成29年度の紋別市の第 1回総合教育会議録によると、コミュニティ・スクールの導入に関して、学校評議委員会との関係に よる不要感や、人材難を懸念する不能感が記されている(紋別市,2017) 。 この4つの要因以外として、小・中学校の統廃合が進む状況から、学校運営協議会の設置を控えて いるケースがある。例えば、檜山振興局の乙部町では、著者が問い合わせた際、小・中学校の統廃合 が進む状況から、学校運営協議会の設置を控えているとのことであった。全道的に、乙部町のように 161.
(9) 栗田 芳樹・杉本 任士. 学校の統廃合が予定されているため、コミュニティ・スクールの導入を見合わせるケースが多いと考 えられる。 「コミュニティ・スクールの導入・推進状況(2018年4月1日現在) 《教育委員会別》 」 (文部科学省, 2018b)によれば、札幌市は、札幌市立大通高等学校の1校(全323校中)のみコミュニティ・スクー ルを導入している。全国的な政令指定都市でコミュニティ・スクールの導入が進んでいるのは、京都 市の237校と岡山市の160校である(文部科学省,2018b) 。他の政令指定都市では、川崎市の10校(全 189校中) 、静岡市の3校(全137校中) 、神戸市の7校(全310校中)である(文部科学省,2018b) 。 他の政令指定都市と比較して、札幌市はコミュニティ・スクールの指定数が少ないと言える。 「新し い時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について (答申)」(文部科学省,2015a)では、教育委員会が、積極的にコミュニティ・スクールの推進に努 めていくよう制度的位置付けを検討している。平成31年度に北海道では12市町村が学校運営協議会規 則を設定するため、さらに、小中学校園でコミュニティ・スクールの導入が進むことが予想される。 4-2 学校運営協議会の権限規程タイプについて 北海道の学校運営協議会の権限規程タイプは、制約型と欠損型(1欠)が41.2%で高い割合を示し ていた(表3) 。制約型が高い割合を示した理由として考えられるのは、平成24年(2012年)に施行 された北海道教育委員会の学校運営協議会規則(北海道教育委員会,2012)が制約型であり、道内の 各市町村教育委員会が、北海道教育委員会の学校運営協議会規則に倣って制約型にした可能性があ る。北海道における制約型の学校運営協議会規則は、学校運営協議会委員が学校運営協議会で運営意 見と任用意見を出す場合、あらかじめ学校長の意見を聞くことが条件となっている。そのため学校運 営協議会委員の意見が反映されにくく、スクール・ガバナンスの要素が弱くなってしまうことが懸念 される。 北海道の欠損型(1欠)は、全て任用意見権限を欠く。これまでの学校は、学校の人事に対して外 部の意見を取り入れることに関して、教職員への厳しい評価につながるのではないかという「不安感」 があった(佐藤,2017) 。また、教育委員会も任用意見権限があると保護者や地域から学校に対して 人事に関するクレームが来ると誤解している面がある(文部科学省,2015b) 。しかしながら、実際 に任用意見権限を導入しているコミュニティ・スクールでは、例えば、臨時任用職員が多いので正規 職員を配置してほしいという意見、引き続き主幹教諭を配置してほしいという意見など、学校が組織 として機能するという観点のポジティブな意見が出されている(文部科学省,2015b) 。このように 学校運営協議会委員に任用意見権限を付与することにより、特色ある学校づくりに対する活発な意見 交流が期待でき、そのことによってスクール・ガバナンスが発揮される可能性がある。 十勝振興局の中札内村は、承認権限しか課していない欠損型(2欠)であった。佐藤(2017)によ れば、欠損型(2欠)は校長の成果認識スコアが最も低い。なぜなら、学校運営協議会規則の持つガ バナンスの機能を2つ欠くことになり、学校運営協議会委員の意見が反映されにくいからである。そ のため、地域の資源であるソーシャル・キャピタルの機能が有効に働かない可能性が出てくる。した がって、可能な限り、学校運営協議会にガバナンスの機能を持たせることが、今後のコミュニティ・ スクールを活性化させるためには必要だと考えられる。 4-3 各規程項目の有無から 北海道は全ての市町村の学校運営協議会規則で守秘義務の規程が設定されている。守秘義務の規程 162.
(10) 北海道の振興局別のコミュニティ・スクールの実態調査報告. は、学校に対して運営意見や任用意見を言い、学校の情報をオープンにし、学校の課題や困難な状況 を話題として熟議を重ねるために必要な規程である。守秘義務の規程が存在することによって、学校 運営協議会の議論の活性化が期待できる。 文部科学省は学校評議員制度の仕組みを見直し、学校評議委員会を評価から熟議する組織に転換し 活性化することで、学校運営協議会へと組織を一元化する方向性を示している(文部科学省, 2015b)。北海道の市町村にある学校運営協議会で学校運営の点検及び評価を課している割合は全体 で96.5%であった。そして文部科学省(2015b)は、学校運営協議会の持つ評価機能から、学校運営 の改善を進めることを方策として掲げている。ガバナンスの機能の面からも、学校運営協議会の点検 及び評価が実際の学校運営に反映されることが望ましく、そのためには学校運営の点検及び評価の規 程の設置が望まれる。. 5 おわりに 以上のように、学校運営協議会規則を4つの権限規程タイプ(佐藤,2017)と学校運営協議会委員 の身分と義務等に関する規程について考察してきた。 地域と学校が目標やビジョンを共有するためには、地域と学校がパートナーシップを築くことが重 要である。そのために、コミュニティ・スクールは有効な仕組みである。コミュニティ・スクールの 効果を最大限に発揮するためには、地域住民や保護者が学校運営協議会委員として権限と責任を持 ち、これまで以上に学校運営に関わることが重要である。 今後も、学校と地域が一体となって学校運営を行えるようなコミュニティ・スクールの在り方につ いて研究を進めていきたい。 註 ⅰ 文部科学省が2008年からスタートさせた事業。2006年に改正された教育基本法には、 「学校、家庭及び地域住民 等の相互の連携協力」の規程が新設された。これを具体化する方策の柱であり、学校・家庭・地域が一体となって 地域ぐるみで子供を育てる体制を整え、学校教育の充実、生涯学習社会の実現、地域の教育力の向上をねらいとし ている。. 引用文献 北海道町村会(2018) .法務支援室「例規集データベース」http://houmu.h-chosonkai.gr.jp/~reikidb/(2018年9月13 日アクセス) 北海道教育委員会(2012) .北海道教育委員会公報 http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/sum/grp/23_6066.pdf (2018年11月13日アクセス) 北海道教育委員会(2018) .コミュニティ・スクールについて(義務教育課)「道内公立学校の導入状況」(平成30年 4月1日現在)http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/gky/kcs/cs/30CSdo-nyu.pdf(2018年9月13日アクセ ス) 紋 別 市(2017) . 平 成29年 度 第 1 回 紋 別 市 総 合 教 育 会 議 録 https://mombetsu.jp/soshiki/kyouiku/gakumu/news/ files/h29kaigiroku.pdf(2018年11月13日アクセス) 文部科学省(2004) .地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知) http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/suishin/detail/1313082.htm(2018年9月10日アクセス). 163.
(11) 栗田 芳樹・杉本 任士. 文部科学省(2013) .教育振興基本計画(閣議決定)http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/detail/__icsFiles/afiel dfile/2013/06/14/1336379_02_1.pdf(2018年11月13日アクセス) 文部科学省(2015a).新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進 方策について(答申)平成27年12月21日 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__ icsFiles/afieldfile/2016/01/05/1365791_1.pdf(2018年9月26日アクセス) 文部科学省(2015b) .今後の学校運営協議会制度等の在り方(論点メモ)資料3 http://www.mext.go.jp/b_menu/ shingi/chousa/shotou/103/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/02/03/1354763_1.pdf(2018年11月13日アクセス) 文部科学省(2017) .コミュニティ・スクール2017―地域とともにある学校づくりを目指して― http://www. mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/03/1408715_03.pdf(2018 年9月26日アクセス) 文部科学省(2018a) .コミュニティ・スクールの導入・推進状況(2018年4月1日現在) 《都道府県別》http://www. mext.go.jp/a_menu/shotou/community/shitei/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/08/1405722_02.pdf(2018年 9月26日アクセス) 文部科学省(2018b) .コミュニティ・スクールの導入・推進状況(2018年4月1日現在) 《教育委員会別》http:// www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/shitei/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/08/1405722_03.pdf (2018年9月26日アクセス) 佐藤 晴雄(2016) .コミュニティ・スクール「地域とともにある学校づくり」の実現のために エイデル研究所 佐藤 晴雄(2017) .コミュニティ・スクールの成果と展望―スクール・ガバナンスとソーシャル・キャピタルとし ての役割― ミネルヴァ書房. 164.
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