役割体験学習論に基づくアクティブラーニングの実践 ―教職大学院における理論と実践の統合―
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(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第6号. 役割体験学習論に基づくアクティブラーニングの実践 -教職大学院における理論と実践の統合- 井門 正美*1・武田 竜太*2. 概 要 本論稿では、今日話題となっているアクティブラーニング(Active Learning)に理論がないこと を指摘し、井門の提唱する役割体験学習論(Role Action Learning Methodology)がアクティブラー ニングの一連の教授学習方法を体系化する理論であることを論証した。その上で、本理論により本学 教職大学院の講義科目について6領域を踏まえながら関連付け体系化し、講義科目には、アクティブ ラーニングの教授学習方法が活用されていることを確認した。 最後に、武田による役割体験学習論に基づく中学校社会科授業実践を事例研究の一例として紹介し た。武田実践は、生徒に中学生が抱える携帯端末利用の問題を討論させ考えさせる点では、アクティ ブラーニングの一つではある。しかし、本実践は、さらに一歩踏み込んで、授業に役割体験(Role Action)という目的的学習活動を意図的に設定し、携帯端末利用をめぐる社会問題に対して、自分事・ 切実性のある社会事象として、生徒を真剣に向き合わせた協働的学習を達成している。ここに武田実 践の特色と意義がある。. 1.問題の所在 昨今、教育界においては「アクティブラーニング」 (Active Learning、必要に応じALと表記)が 喧しい。長期の出版不況の中で教育書の出版が困難な状況であるにも関わらず、ALに関する出版物 は多い。また、Web検索をしても大量にヒットする。ALが諸学校の研究テーマとして数多く取り上 げられてもいる。 こうしたAL活性化の要因は、言うまでもなく、中央教育審議会の「新たな未来を築くための大学 教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申) 」 (2012年8 月28日)と、文部科学大臣の「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問) 」 (2014 年11月20日)においてALが教授学習方法として明記されたからである。答申では、 「急速に進展する グローバル化、少子高齢化による人口構造の変化、エネルギーや資源、食料等の供給問題、地域間の 格差の広がりなどの問題が急速に浮上している」状況下で、わが国の社会構造が大きく変容し、価値 観の根本的見直しが問い正されており、求められる人材や人材育成を担う教育も変容・変革しなけれ ばならないことを訴えている。すなわち、想定外の事態にも即応できる問題発見・解決力や論理的思 考力を有する人材であり、教育はこうした人材育成のために、従来の知識伝達・注入型を脱して教師 ───────────────────── *1. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)札幌. *2. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)専門職学位課程(北海道滝川市立明苑中学校). 45.
(3) 井門 正美・武田 竜太. と学生による協働的学びの場を創出すること、そして、そのための教授学習方法としてAL(能動的 学修)を導入することが提起された1。 本答申は大学教育の質的転換(学士力の向上)のための方策や更なる課題を述べているが、検討の 基本的な視点の一つに 「初等中等教育から高等教育にかけて能力をいかに育むか」 が掲げられており、 先の諮問へと繋がり、ALが高等教育から初等中等教育までを範疇とした教授学習方法として注目さ れるに至っている。 ではALという教授学習方法はどのようなものなのか。前述した答申の用語集には、以下のような 説明がある。 「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた 教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、 知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含 まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアク ティブ・ラーニングの方法である」 この説明でALの目的は「学修者の認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用 的能力の育成を図る」ことであり、この目的達成のための方法が「能動的な学修への参加を取り入れ た教授・学習法(発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習、グループ・ディスカッション、ディ ベート、グループ・ワーク等) 」となる。答申が示したALについて分析考察すると、育成すべき資質・ 能力については「認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力」であり、そ のための方法が「能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法群」と捉えることができる。. 2.アクティブラーニングの理論としての役割体験学習論 冒頭でも述べたように教育分野においてALの話題には事欠かない。しかし、翻って考えると、AL の教授学習方法はこれまでに実践されてきたもので、殊更目新しくはない。むしろ総称としての「ア クティブラーニング」のほうが目新しく、答申や諮問に明示されたために話題になったと言える。そ もそも高等教育の講義一辺倒の授業スタイル、これは一般的に文系に多いが、そのことが批判されて 能動的学習を促すALが示されたのである。初等中等教育ではALとして掲げられた教授学習方法はこ れまでに頻繁に実践されてきたものである。にも関わらず、初等中等教育現場においても「アクティ ブラーニング、アクティブラーニング!!!」 と騒いでいるのは、 筆者らからすれば興ざめの感を否めない。 今、ALに求められているのは、能動的な学習参加を促進させ、学習者の認知的、倫理的、社会的 ・・. 能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力を培うための理論なのである。 ⑴ 役割体験学習論の提唱 実は、先の答申に例示されたようなAL(一連の教授学習方法)については、すでに1994(平成5) 年の文部省の『小学校社会指導資料』2で体験的学習もしくは体験的活動として紹介されている。すな わち、実体験、模倣、追体験、ごっこ、劇化、シミュレーション、調査、見学、観察、実験、製作、 発表、表現、討論等の教授学習方法である。これら一つ一つの実践事例は大変面白いものではあるが、 しかし、身体の動きが伴う学習活動が羅列されているだけで、各々の学習活動の特色や関連、相互の 相違点などが不明確であった。すなわち、各々の体験的学習活動を体系化する理論がない。このこと はALについても同様の指摘ができる。そこで、改めて執筆者の一人、井門の学位論文3で1999(平成 46.
(4) 役割体験学習論に基づくアクティブラーニングの実践. ・・・・・・・. ・・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・・・. 11) 年 に 提 唱 し た 役 割 体 験 学 習 論(Role Action. ・・・・・ ・ ・・・ ・・ ・・・・・ ・ ・・・. Learning Methodology)がALを統括しうる理論で. あるので、以下に紹介する。 答申に示されている資質・能力、すなわち、認知 的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含め た汎用的能力は「社会的実践力」としてまとめられ る。社会的実践力とは 「実践主体 (生活者・学習者) が知識や技能を活かし、他者と協働して、自己実現 やより善い社会を築くための行動力」であり、この 社会的実践力を育成するための教授学習理論が役割 体験学習論である。役割体験学習とは、 「学習者が ある役割を担うことによって考察対象を理解し、問 題を解決する学習」であり、本理論では、これまで 個々ばらばらに実施されてきた体験的学習(ALと 総称される一連の教授学習方法を含んでいる)の理 論化(理論化第1段階、図1参照)を図り、その上 で「役割体験の4類型」で社会体験の理論化(理論 化の第2段階、表1参照)を図っている。 ⑵ 理論化の第1段階(体験的学習の体系化) 井門は、体験的学習の諸活動を体験の内容、学習. 図1 体験的学習の体系化. 者の学習対象への関わり、体験対象・体験場所・体 験手段等の観点から体系化した(図1)4。このように体系化するならば、これまでの体験的諸活動の 特色を把握して、現場や教室で、人や道具やモノと関わる多様な体験的学習を臨機応変に活用してい くことができる。加えて、井門は、特に、知識の獲得にとっては教室で教師が教えたり対話的に進め たりする講義型の授業の重要性も認めている。この講義型と体験型との連携を密にすることで、知識 と行為の統一的な学習が可能になり、学習者における社会的実践力を育成することが可能になる。 では、講義型(基盤)と体験型(AタイプからDタイプ)について説明する。 ①講義型 講義型は伝統的な教育方法であり、学校現場ではこのタイプが基盤となる。答申において教師が一 方的に知識を注入しようとする講義型は批判の対象となった。しかし、筆者らは講義型もその進め方 によっては効果的な教育方法であると考えている。単に、教師が一方的に知識を伝達したり、学習者 に暗記を強いたりするような授業ではなく、教師が教科書や教材等を基にした授業を行うが、教師を 含めた学習集団が、教科書や教材等から得た知識を獲得し、これに既有の知識も交えて思考し、議論 して、互いが学び合う授業を指向する。すなわち、一人で知っているだけでも、一人で思考している だけでもどうにもならないこと、 集団で思考し議論して初めて解決し達成しできることを大切にする。 例えば、給食の配膳の公平性を保つルールはどうあればよいのか、小学校の低学年の児童でも集団 で解決しなければならない課題であろう。このルールを教師が一方的に決めて児童に守らせるだけで は、児童の社会的実践力や生きる力は培われない。児童自らが、集団で考え議論しルールを決めるこ とが重要なのである。中学生ならば、 校則や生徒会の運営なども自主的に考えさせる場面が無ければ、 47.
(5) 井門 正美・武田 竜太. 彼らの社会的実践力は育成できない。 こうした講義型を構想すれば、すでにALの一つとして例示されたディスカッションやグループワー ク等が必然的に入っていることが理解できよう。 ②体験型 体験型は、図1の体験的学習の体系化の枠組でその実践を構想し展開することができる。 1)Aタイプ(現場における体験的学習) :まず、Aタイプは、学習者が学習対象となる現場に出か けて、そこにある役割を取得したり、その場を見学したりする体験的学習である。いわゆる現場体験 や実地体験に該当する学習活動と言える。例えば、教育実習や介護等体験、あるいは施設見学などが 挙げられる。 2)Bタイプ(抽出・移動による体験的学習):次にBタイプは、 現場から教室にモノを運んできたり、 エキスパートを招いたりして学習するものである。例えば、北海道の牧畜業を学習する際に牧畜農家 の方をゲストティーチャーとして教室に招き交流する学習 (交流体験学習) が一例として挙げられる。 3)Cタイプ(モデル化による体験的学習):三番目のCタイプは、ごっこ、劇、ゲーミング、シミュ レーション、ロールプレイング等を活用した擬似体験学習である。このタイプの事例としては、高齢 者体験や模擬裁判が挙げられる。 4)Dタイプ(媒体を活用した体験的学習):最後のDタイプは、メディアを媒介とした状況再現的 な体験的学習、対話的・交流的な体験的学習である。今日、ALと共に注目されているICT教育もこ のタイプに含まれるものが多い。学習事例としては、電話やインターネット、テレビ会議システムな どを活用して、遠隔地の学習者同士が話し合ったり、あるいは、ゲストティーチャーから話を聞いた りする交流的な学習が該当する。 ⑶ 理論化の第2段階(役割体験の4類型) 表1 役割体験の4類型. 以上のように、 第1段階で講義型と体験型を理論化した上で、 次の第2段階では、第1段階で体系化された様々な体験的学習 「学習の場」と「学習主体」という観点と、 「現実」と「仮想」 の次元とをクロスさせて役割体験の4類型から体験的学習を捉. 主体現実. を社会的役割からさらに捉え直す。すなわち、第2段階では、. 場現実. え直す(表1参照) 。. 場仮想. 第一類型. 第二類型. 農業実習. シミュレータ. 教育実習. 防災訓練. 介護体験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・. た一連の体験的学習を、役割を通した対象の理解や問題の解決 ・・・・・・. といった観点から関連付け、体系的に把握することが可能にな る。すなわち、個々ばらばらに採用される傾向にあった実地体. 主体仮想. この4類型を設定することで、これまで数多く実践されてき. 第三類型. 第四類型. 目隠し体験. 劇・劇化. 車いす体験. ロールプレイング. 高齢者体験. シミュレーション. 験、訓練、ゲーム、ロールプレイング、シミュレーション等の 教授学習方法を役割体験学習として関連付け体系化することができる。実地体験と擬似体験、直接体 験と間接体験とが「役割体験」という概念により連結されるのである。言うまでもないが、役割体験 は、現実世界でなされようと仮想世界でなされようと、 すべては現実世界における実践主体(生活者・ 学習者)の生活に役立てることを目的としている。学習者にある役割を担わせる役割体験学習によっ て、学習者は、社会や組織の仕組みや人々の関わりの理解を図り、また、役割の遂行により知識、技 能、態度などの統一的な学習も可能になる。さらには、役割視点を持つことで、学習者は多角的な見 方もできるようになる。 48.
(6) 役割体験学習論に基づくアクティブラーニングの実践. 以下では、役割体験のそれぞれの類型について、井門の前任校・秋田大学での法教育実践例を紹介 しながら、その特色について述べたい。 ①役割体験の第1類型 第1類型の役割体験は主体現実・場現実型で、学習者が学習対象とする現場でそこにある役割を 担って直接体験をするタイプである。学習者は現場で本物の役割を体験できるのでリアルな体験がで きる。そのため事前学習や訓練、実践時における真剣さが学習者に求められることが多い。例えば、 裁判の傍聴は、学習者が現実にある「傍聴人」という役割を取得した実地体験となり、本物の裁判を 傍聴人として直接体験できる点がメリットである。しかし、その場の規則を遵守しなければ、当然処 罰の対象となる。この類型は、理論化の第1段階におけるAタイプと密接に関連する。 ②役割体験の第2類型 第2類型の役割体験は主体現実・場仮想型で、学習者がモデル化された環境(仮想的・仮設的な環 境)内で自分自身(本来の役割)として擬似体験をするタイプである。模擬的な環境での体験のため 一般的には失敗は許容され試行的で問題発見的な役割体験が可能になる。例えば、小学校の交通安全 教室のように、児童は模擬的に設置された交差点で「歩行者」という日頃経験している役割を体験す る。交通警察官の指導を受けて、信号の見方、横断歩道の渡り方など学習し、交通法規・ルールを理 解してより適切な役割遂行ができるようになる。信号の見誤り、安全確認の怠りがあっても、失敗は 反省材料として活かされる。この類型は、理論化の第1段階のCタイプとの関連が強い。 ③役割体験の第3類型 第3類型の役割体験は主体仮想・場現実型で、 学習者が仮装や変装等による身体への加工を施して、 実生活ではなかなか担うことのできない役割を担い、現場で実地体験するものである。例えば、健常 者が「身体障がい者」という役割を担って実施する車椅子体験では、健常者は役割体験を通して身体 障がい者を理解し、彼らを取り巻く社会環境の問題点も発見する。バリアフリー新法5と照らし合わ せて、建物や交通機関の改善案を提言することもできる。この類型は理論化の第1段階のAタイプ、 Cタイプと密接に関連する。 ④役割体験の第4類型 第4類型の役割体験は主体仮想・場仮想型で、学習者は日常で担うことが困難な役割を担い、同時 に、経験することが不可能であったり、困難であったりする場や状況において擬似体験をするタイプ である。この類型には劇、シミュレーション、ロールプレイング等が該当する。例えば、教室で行わ れる模擬裁判は、児童や生徒が裁判官、弁護人、検察官などの役割を担って模擬的に再現された法廷 で擬似体験をする。現実には担うことのできない役割、関わることのない法廷を擬似体験できる。学 習者はこうした役割体験を通して裁判という仕組みや、裁判官や弁護人等の法廷に関わる諸役割を実 感的に理解することができる。この類型は理論化第1段階のCタイプ、Dタイプと密接に関連する。 以上の理論化により、直接体験や模擬体験を対象の理解と問題の解決という観点から体系化し、多 様な学習を展開することができる。この学習の重要な点は、個人においては知識と行為の統一、集団 においては学びの共同性(協働性)が確立し、 「他者存在の意義」と「自己有用感」を実感できるこ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. とにある。このことは他者への信頼性を促し、社会の倫理的基盤を教室や学校という学びの場から築 ・. くことができる点である。. ・・・. 最後に、役割体験学習は、 役割を通した“Action” (目的的活動)を意図している点が、ALの“Active” (活動)とは大きく異なるということを記しておきたい。. 49.
(7) 井門 正美・武田 竜太. 3.役割体験学習論から捉えた本学教職大学院における教育実践 では、役割体験学習論から、本学教職大学院の講義科目を捉え、位置付けたい。本教職大学院教育 課程は、表2「講義科目一覧表」に示したように「共通科目」 「選択科目」 「学校における実習」「共 通演習(MOB作成) 」で構成されている。「共通科目」は「教育課程の編成・実施」 「教科等の実践的 指導方法」 「生徒指導・教育相談」 「学級経営・学校経営」 「学校教育と教員の在り方」 「特別支援教育」 の6領域で編成されている。これらの講義科目について、ピックアップしながら位置付けていく。 ⑴ 「理論化の第1段階」から捉えた講義科目 ①講義型 一般的に「共通科目」は講義型に該当する。共通科目では、各領域の基盤となる理論や知識を伝え ることが必要なため、講義型を主としている。しかしながら、講義の後半部分では、通常、院生同士 や教員を含めた討議を行っている。講義前半で学んだ内容についての質疑応答や学びをベースにした 議論を行うなど、発展的な学習内容となっている。 ②体験型. 表2 講義科目一覧表(H27). 1)Aタイプ:これは現場体験の 学習であるから、 「学校における 実習」に該当する学校課題俯瞰実 習、自己課題解決・検証実習(以 上、ストレートマスター対象) や、 リーダー力養成基礎実習Ⅰ・Ⅱ、 学校運営実習、学校課題解決・検 証実習(現職院生対象)がこれに 該当する。学校現場で実地体験を しながら学び、現場の問題を捉え、 その解決策を提案する等の学びが できる。 2)Bタイプ:このタイプの体験 的学習は、各講義科目の15コマの 中に組み込まれているケースが多 い。井門が関わっている学級経営・学校経営分野では、北海道教育委員会の課長や学校の校長等の教 育関係者、さらには書店や企業経営者等を招聘するなどしている。現場の第一線で仕事に携わってい る方々の講話は、これから教師になるストレートマスターにとっても、また、現職院生にとっても実 践的な内容となっている。 3)Cタイプ:このタイプでは、授業開発分野では、マイクロティーチングを取り入れた授業が実践 されている。大学院生の中で教師役と児童生徒役を決めて、模擬授業を行うのはモデル化による体験 的学習である。模擬授業を行った後に、教師を含めて受講者同士で議論し合い、より適切で効果的な 教育内容や教育方法を探究している。こうした学習では、失敗しても反省材料として活かされる。 4)Dタイプ:本学教職大学院では、札幌校、旭川校、釧路校の3地点を結んだ講義を行っており、 テレビ会議システムによる双方向遠隔授業(ICT教育)が基本である。正にこのスタイルが媒体を通 50.
(8) 役割体験学習論に基づくアクティブラーニングの実践. した体験的学習である。教員が研究室で個別に行っている事例研究、各校ごとに行う実習後の省察に 当たる授業以外は、このタイプに該当する。 ⑵ 「理論化の第2段階」 (役割体験の4類型)から捉た講義科目 では次に、第2段階の理論化から講義科目を捉え位置付ける。 ①第1類型 この類型は、第1段階の理論化のAタイプ(現場における体験的学習)において「役割」を担うも のである。単に見学や参観をするだけでなく、実際に学習対象となる現場で機能している役割を担っ て活動を行う。ストレートマスター対象の学校課題俯瞰実習では、院生は参観して学ぶことを主とす るものの、配属された学級で「教師」という役割を担って授業や生徒指導も行っている。こうした教 師としての一連の活動は役割体験の第1類型に当たる。現職の院生は、配属校や勤務校において、教 師としての役割体験を担っている。しかし、その一方で、研究的な視点から、自らの教育行為や当該 校の教育活動も考察する。この視点は自身の役割視点のみならず、管理職、児童生徒、保護者等の役 割視点からも捉えた多角的視点であり、メタ的・省察的視点とも言えるものである。 ②第2類型 この類型は、第1段階の理論化のCタイプ(モデル化による体験的学習)に該当し、学習者は自分 自身(現実の役割) として参加するものである。学習の場が仮想もしくは仮設的な場となる。例えば、 本年度から新設された講義科目「学校組織マネージメントの理論と実際」6では、学校現場の問題を取 り上げたケーススタディを実践している。この講義は現職の院生を対象としているが、受講者は現場 の教師という役割から、ケースに記述された学校現場の問題状況に身を置いて思考し議論する。討議 の過程では様々な見解が提示されるので、自分とは異なる視点や見解も糧としながら、望ましい解決 策を探究する。 ③第3類型 この類型は、Aタイプ(現場における体験的学習)とCタイプ(モデル化による体験的学習)とが 一体化した役割体験であり、自身の本来の役割とは異なる役割を体験する。例えば、健常者のアイマ スクや車椅子の体験、若者による高齢者体験等である。これらの役割体験により、ユニバーサルデザ インやバリアフリーの観点から学校経営を評価することが可能になろう。本学の講義では一部にこう した体験を取り入れて実施している講義もあると思われるが、現段階では確認できていない。 ④第4類型 この類型は、Cタイプ(モデル化による体験的学習)の中で役割を体験するものであり、その役割 の設定が仮想的な場においてなされているものである。井門は、いじめ問題に適切に対応できる教師 を養成するためにゲーミング・シミュレーション「学校-いじめ問題-」を開発している。ある中学 校でいじめ問題が発生したと仮定し、その問題に対応するための学年会議や職員会議を模擬体験させ るものである。この教材では、さらにその問題が拗れたケースとして民事裁判も模擬体験させてい る7。今後は、先の「学校組織マネジメントの理論と実際」のケースとして加えようと構想している。. 4.役割体験学習論に基づく授業-滝川市立明苑中学校における武田実践- 井門の役割体験学習論に基づき、共同執筆者の武田は、勤務校である滝川市立明苑中学校第3学年 (3組)において、社会科公民的分野の授業を実践した8。 51.
(9) 井門 正美・武田 竜太. ⑴ 授業(本時)のねらい 本授業は、単元「現代社会をとらえる見方や考え方」 (全3時)の第2時に当たる。本単元は現代 社会をとらえる見方や考え方の基礎として、 「対立と合意」 「効率と公正」などについて理解させるこ とを目標としているが、本時においては、 「携帯電話・スマートフォンの使用ルール」を身近な問題 として取り上げ、生徒がこの具体的事例を議論し、解決策を模索していく中で、社会生活における対 立と合意、効率と公正という観点から社会事象を捉え、社会に対する見方・考え方を高めることをね らいとした。 ⑵ 生徒の実態と役割体験学習の設定 本学級の生徒は、社会的事象に対して興味や関心を持ち、課題に対して意欲的に取り組んでおり、 毎時行っている復習用5問テスト(小テスト)でも知識を問う問題に関しては、高い正答率を示して いる。しかし、「なぜ」 「どうして」という発問に答えることが不得手で、テストでは理由や原因・結 果を答える記述問題を苦手としている生徒が少なくない。 1学期末考査後に「授業アンケート」を行った(アンケート詳細は省略) 。これは生徒による授業 評価で、各設問4点満点で行った。評価点が高かった設問は「ウ.資料や映像、その他授業内容がわ かるように先生は工夫している」が平均3.8点、 「カ.ノートがとりやすいように先生は板書をわかりや すく丁寧に説明している」が平均3.7点であった。逆に、評価点が低かった設問は「ク.授業では自分 の考えを発表したり、話し合う時間が設定されている」が2.2点、 「ケ.班やまわりの人と話し合うこと で、より学習内容が理解できると感じる」が2.6点だった。 この結果を踏まえ、本時では自分の考えを発表させる場面や話し合いの時間を設け、生徒が主体的 に学習に取り組めるような工夫を行うこととした。 そこで、本時では、実際に愛知県刈谷市で定められた「小中学生を対象とした携帯・スマートフォ ンの午後9時以降の使用禁止のルール」を具体的事例として取り上げた。この刈谷市の事例を手がか りに、自分たちのルール(生徒の居住する北海道滝川市)を考えさせれば、ルール作りにおいては多 様な意見があることから「対立」が生じるが、 「効率」と「公正」という視点による話し合いを通し て「合意」が形成されることを実感的に理解させることができると考えた。 さて、携帯・スマートフォンについては、すでに保有している生徒が16名おり、まだ使っていない 生徒でも家族が使っていたり、携帯やスマホのコマーシャルによる情報を得ており、生徒の間では、 特に携帯端末の「利便性」については理解が進んでいる。しかし、 利便性や有用性の裏に隠された「問 題性」についての理解は進んでいない。現代の情報化時代を生きる中学生にとって、その「利便性」 と「問題性」のどちらも理解することが重要である。こうした問題を生徒に「他人事」ではなく「自 分事」として考えさせるには、正に現実の「中学生」という役割・立場から、さらには「携帯・スマ ホ利用者」という役割・立場から思考し議論させる学習が効果的であると考え、本授業に役割体験学 習を採用し、役割体験を組み込むこととした。本実践における役割体験の視点から分類すると、第2 9. 類型(「主体」現実・場「仮想」 )の実践事例の1つと位置付けられる 。 ⑶ 授業実践の様子 授業では、愛知県刈谷市のルール規制を取り上げたNHKクローズアップ現代「小中学校 スマホ“追 放”騒動-トラブル低年齢化の波-」 (2014年7月15日放送)の映像資料を活用した。はじめに「午 後9時以降に携帯・スマホの利用を禁止することについて、賛成か反対か」を問うた。クラス39名中 52.
(10) 役割体験学習論に基づくアクティブラーニングの実践. (1名欠席)、賛成10名、反対18名、その他11名であった。 「賛成」の理由としては「夜遅くまで携帯 を使うと、勉強をする時間もなくなり、成績も落ち、LINEなどでは相手に迷惑がかかり、目も悪く なる可能性が高くなったりと良いことがないから」 「自分で止めようと思ってもできないから、市が 取り組むべき」などの理由が挙げられた。 「反対」の理由としては「きちんと取り扱いできている人に は迷惑だし、 午後9時以前でも事件のきっかけになることもあるから」 「各家庭で買ったスマホだから、 各家庭が好きに使っていいと思う。市が決めたことを守る義務はないと思う」 などが挙がった。 「その他」 の理由としては「個人の自由である」 「最終的な結果は自分に降りかかるのだから、その人が思うとお りにすれば良い」 「規制があることは良いことかもしれないが、規制を守ることをチェックすることは 難しく、規制をする意味がない」 「規制には賛成だが、午後9時は早すぎる」などが挙げられた。 意見を出し合った後、先の映像資料を全員に視聴させた。番組では規制ルール実施2ヶ月後に刈谷 市で行った生徒アンケートが紹介された。この調査では、生徒の半数近くが規制に賛成し、反対は1 割だったという結果となった。この結果には意外な表情を見せる生徒も多かったが、番組で「グルー プでメッセージをやり取りする中で、自分だけ抜けると阻害される恐怖感などからやめると言い出す のが難しかったが、ルールを理由にやめやすくなった」という賛成理由が紹介されると、生徒はその 理由に納得したようだった。 さらに番組では、中1では規制に7割が賛成しているが中3では3割に減っていること、ルールに 強制力がなく守らない生徒もいること、9時以降に通信があった場合「既読」サインに縛られる生徒 もいること、刈谷市在住以外の友人とのやり取りはどうしたらよいのかという問題提起もされている こと、など紹介された。すると、視聴していた生徒の中には、どうしたらよいのか戸惑う表情も見ら れた。 その後「ルールをつくる上で必要と考えたこと」について話し合いを行った。生徒は自分たちの討 論や番組視聴を通して様々な見解を知った上での活動だったので、活発な議論を行っていた。討論の 中で生徒からは「多くの人の意見を聞いてルールを作ることが重要だ」 「守れないルールなら意味が ない。誰もが守れるルール作りをする必要がある。場合によっては、ルールが守れない場合にはペナ ルティが必要である」 「ルールはある程度広い範囲の人々に使う必要がある。一部だけでは守れない 場合があり、地域や対象を考えることが大事」といった意見が挙がった。 全体を通して、本時の目標の1つである「対立と合意」という観点でルールについて考えている生 徒の姿が確認できた。本時の目標は概ね達成されたと考える。 なお、次時の3時間目では前時を受けて「合意」に向けての「効率」 (合理的かつ効果的で大勢にとっ て快適であること)と「公正」 (大勢にとって適切で納得できるものであること)について話し合う ことができた。 ⑷ 生徒の感想の考察 単元終了後、生徒の感想を確認すると3つに大別された。1点目は自分の見方以外にも見方・考え 方があることを実感している様子がうかがえる。相手の立場や状況を考えた上で物事を判断すること や、多角的に物事を判断して自分の意見を持つことは、今後社会で生きていく生徒に必要な資質・能 力と考える。2点目は 「公正」 を重視する生徒の割合が多いことである。 「誰もが守ることができるルー ル作り」の必要性や多様な意見を聞くことに気づく意見が多かった。3点目は、意見交流を行ったこ とで自らの思考が深まったと考える生徒が多いことである。 授業を通して、生徒が討論の意義を実感できたと判断できる。 53.
(11) 井門 正美・武田 竜太. 最後に、生徒による授業の自己評価. 表3 単元終了後の生徒の感想(抜粋). を示しておきたい。評価点は4点満点で. A:みんなそれぞれの思いがあってどれも納得するもので、一番良い対応. あったが、 「ア.自分の考えをまとめ、発. を決めるのはどれだけ大変なことか実感し、日本の憲法を考えた人は頭 がよく、気の利く人だと思った。. 表できましたか」(平均3.7点)、「イ.話し. B:自分の観点以外にも色々な見方があるのだと思いました。やはりルー. 合いに積極的に参加できましたか」(平. ルを作る上では国民の声を聞かなければなりません。私ももう少し物事. 均3.7点)、「ウ.他の人の意見をよく聞く. C:3番に「みんなが守る(守れる)ルール」と書いたけど、ルールによっ. ことができましたか」(平均3.9点)とい う結果となった。この結果からすれば、 授業前の生徒による授業評価で浮かび上 がった授業の課題が大幅に改善されたこ とが確認できた。 授業に役割体験を組み込むことによっ て、各々の生徒が「主体的」に、そして 「他者の意見に耳を傾け」ることができ た点が、特に、本単元における大きな成 果であった。. を考えられれば…と思いました。 て「守ってもいい」 「守りたくない」と人によって考えることが違うから、 ルールは難しいと思った。ただルールをつくるだけだったら意味がない と思った。 D:便利なものは上手に使わないと、本当に大変なことになってしまうと 思いました。そして、その制限もしっかり行わないとだめだと改めて感 じました。ルールを決めることは、本当にむずかしいんだと思いました。 E:授業で学んだことは、自分を持つこと。まわりがやっているからといっ て自分も一緒にする必要はない。交流から感じたことは、このグループ はしっかり考えている人が多いと言うこと。ルールを作る上で必要なこ とは全国の人々の危険をきいて、しっかり考えて作ることだと思う。 Fみんなそれぞれの意見があるので、ルールを決めるのはとても大変だと 思いました。何か意見を言うと、必ず賛成と反対の人が出てきました。 意見をまとめることは大変でした。不満などをうまく解消し、みんなが 守れるものにしていくべきだと思いました。. 5.まとめ 本論稿では、今日話題となっているALに理論がないことを指摘し、井門の提唱する役割体験学習 論がALの教授学習方法として掲げられている一連の学習方法を体系化する理論であることを論証し た。その上で、本理論により本教職大学院の講義科目の6領域を踏まえながら関連付け体系化し、講 義科目には、ALとして掲げられていた教授学習方法が活用されていることを確認した。 最後に、役割体験学習論に基づく武田による授業実践を紹介したが、役割体験を設定することで、 討論を通した生徒の学び合いが可能になり、武田の日々の授業における課題、すなわち、 「授業では 自分の考えを発表したり、話し合う時間が設定されている(2.2点) 」や「班やまわりの人と話し合う ことで、より学習内容が理解できると感じる(2.6点) 」の評価点の低さを克服できたことを実証した。 役割体験学習論に基づく武田実践は、生徒に中学生が抱える携帯端末利用の問題を討論させ考えさ せるアクティブラーニングの一つではある。しかし、さらに一歩踏み込んで、役割体験という目的的 学習活動を意図的に組み込み、自分事として切実性のある社会事象として、生徒を携帯端末の問題と 真剣に向き合わせている点に実践の特色と意義がある。 【註】 1 中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育 成する大学へ~(答申) 」 (2012年8月28日) 、9頁。 (http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__ icsFiles/afieldfile/2012/10/04/1325048_1.pdf) 2 文部省『小学校社会指導資料-新しい学力観に立つ社会科の学習指導の創造-』 (東洋館出版社、平成5年)34 ~36頁。 3 井門正美著『社会科における役割体験学習論の構想』 (NSK出版、2002年)を参照のこと。 4 図の中には発表、表現、討論は含まれていない。これらの学習活動は、五感や身体を使うものの学習対象となる. 54.
(12) 役割体験学習論に基づくアクティブラーニングの実践. 現場や人、実物との関わりを体験の内容とするものではなく、その活動自体を体験の対象または内容としない限り 体験とは言えず、体験的学習から外した方が適切である。 5 バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 平成18年法律第91号)として、平成 18年12月20日に施行された。 6 本講義は、主担当の森省造教授が発案し開設した。この講義の副担当は井門・梅村武仁特任教授(札幌校) 、笠 井稔雄教授(旭川校) 、近藤逸郎特任教授(釧路校)が担当している。森教授をファシリテイターとして3校を結ん で議論している。 7 すでに科学研究費補助金新学術領域研究「法と人間科学」の2012年度企画として秋田大学で本ゲーミング・シミュ レーションを実施した(井門正美研究室ホームページ“http://www.ido-labo.com/”を参照のこと) 。また、2015年 度の教員免許状更新講習「学校文化と教師」でも実施している。 8 本単元や本時の授業については、巻末「資料1」 「資料2」を参照いただきたい。なお、本実践は本教職大学院 の「事例研究Ⅰ」として実施したものでもある。 9 生徒は全員「中学生」という現実に担っている役割であるから「主体現実」である。滝川市という地域は現実の 場ではあるが、当市で「ルールによる規制」はされていないため仮想的状況、すなわち「場仮想」と捉える。なお、 刈谷市の中学生の立場で考えさせれば、第3類型の役割体験ともなる。. 55.
(13) 井門 正美・武田 竜太. 資料 1 第3学年社会科学習指導案 日 生. 時 徒. 指導者 1. 2. 単元名 「現代社会をとらえる見方、考え方」 (第1章 わたしたちの暮らしと現代社会、第3節. 平成 27 年 7 月 14 日(水)第 5 校時 滝川市立明苑中学校 3 年 3 組 40 名 教諭. 武. 田. 竜. 太. わたしたちがつくる社会). 研究主題との関わり (1)単元について 本単元は、学習指導要領「公民的分野2内容(1)私たちの現代社会」の「イ現代社会をとらえる見方や考え方」 を扱っている。学習指導要領では、社会生活における物事の決定の仕方、きまりの意義について考えさせ、現代 社会をとらえる見方、考え方の基礎として、「対立と合意」「効率と公正」などについて理解させることが示され ている。 身近な問題を解決していく中で、社会生活における「対立」とそれが話し合いにより「合意」に至ることの重 要性、さらにその合意が妥当なものであるかを「効率」や「公正」という視点から判断することを通して、社会 の枠組みをとらえ、社会に対する見方・考え方を高めることをねらいとしている。また、それらの概念を活用し て、政治・経済・国際社会に関するさまざまな事柄や課題等を理解し、考え、判断することも求めている。 (2)生徒の実態と授業アンケートの結果 本学級の生徒は、社会的事象に対して興味や関心を持ち、課題に対して意欲的に取り組んでいる。毎時行って いる復習用5問テスト(小テスト)において知識を問う問題に関しては、高い正答率である。しかし、 「なぜ」 「ど うして」という発問に答えることができる生徒が少なく、ワークや定期テストにおいても、理由や原因・結果を 答える記述の問題を苦手にしている生徒も少なくない。 1学 期末 考査後に「授業 アンケート」を行った(アンケー ト詳細は省略)。これは生徒による教員への授業評 価で、各設問4点満点で行ったものである。評価が高かった設問は「ウ資料や映像、その他授業内容がわかるよ うに先生は工夫している」という設問で平均 3.8 点、「カノートがとりやすいように先生は板書をわかりやすく 丁寧に説明している」という設問で平均 3.7 点であった。評価が低かった設問は「ク授業では自分の考えを発表 したり、話し合う時間が設定されている」という設問が 2.2 点、「ケ班やまわりの人と話し合うことで、より学 習内容が理解できると感じる」という設問が 2.6 点となった。この結果を踏まえ、本時では自分の考えを発表さ せる場面や話し合いの時間を設け、生徒が主体的に学習に取り組めるように努めることとする。. 3. 単元の目標および評価基準 (1)目標 現代社会をとらえる見方や考え方の基礎として、対立と合意、効率と公正などについて理解することができる。 (2)評価規準 評価規準 社会的事象への 関心 ・意 欲・ 態 度 家族、学校などさまざ まな集団における物事の 決定の仕方、決まりを守 ることの意味に対する関 心を高め、身のまわりの 生活と関連づけながら、 意欲的に追究しようとし ている。. 社会的な 思考・判断・表現 社会集団の一員として 所属する集団や所属員に 関わる問題を解決する 際、どのような決定の仕 方が望ましいかについ て、現代社会をとらえる 見方や考え方の基礎とし ての対立と合意、効率と 公正などの視点から多面 的・多角的に考察し、さ らに決定したことを「き まり」として守ることに どのような意味があるの かについて考察し、その 過程や結果を適切に表現 している。. 資料活用の技能 社会生活における物事 の決定の仕方、きまりの 意義に関する資料をさま ざまな情報手段を活用し て収集し、収集した資料 の中から、現代社会をと らえる見方や考え方の基 礎としての対立と合意、 効率と公正などを理解す るために役立つ情報を適 切に選択して、読み取っ たり図表などにまとめた りしている。. - 11 -. 56. 社会的事象につ いての知 識・理解 人間は社会的な存在で あり、よりよい社会生活 を営んでいくためには決 まりや取り決めが必要で あることや、社会生活に おいて対立が生じた場 合、互いの利益が得られ るよう、何らかの決定を 行 い 、「 合 意 」 に 至 る 努 力がなされていること と、さらに、合意の妥当 性を判断する際、無駄を 省く効率と決定の手続き や内容についての公正が 必要であることを理解 し、それらの知識を身に つけている。.
(14) 役割体験学習論に基づくアクティブラーニングの実践. 4. 指導計画および評価計画. 時. 学習活動. 関 ・ 意 ・ 態. 1 2本時. ・人と人がつながる社 会. ○. ・ルールのあり方と考 え方. ○. 観 思 ・ 判 ・ 表. 点 技 能. 知 識 ・ 理 解 ○. ○. 3 ・ ルールをつくること. 5. ○. ○. 評価規準. ・ルールが持つ意味や、効率と公正、対立と合意の意 味について、自分なりに考えたことを整理し、まと めることができる ・ルールに込められた意味と、ルールの必要性につい て理解している ・効 率 と 公 正 の 観 点 か ら 、 ル ー ル の あ り 方 に つ い て 考 えることができる ・ルールを考える際の見方や考え方を、自分なりに把 握する ・効率と公正の観点から、さまざまなルールの意味や 目的について追究しようとしている・効率と公正の 観点から、さまざまな人の立場に立って公平なルー ルについて考え、自分なりに表現している。. 本時の指導. (1)本時の目標 ①効率と公正の観点から、さまざまな人の立場に立って公平なルールについて考え、自分なりに表現している(思 考・判断・表現) ②効率と公正の観点から、さまざまなルールの意味や目的について追究しようとしている(関心・意欲・態度) (2)指導の工夫 ①映像資料を用い、中学生、保護者、学校(教員)など、さまざまな人の立場や考えが理解できるように努める。 ②グループの考えを画用紙に書かせ、黒板に貼り出すことで、他者の意見を理解しやすくすると共に、自らの考え にフィードバックできるよう努める。 (3)本時の展開(2/3時間) 生徒の学習活動. 教師の手立て ★指導の工夫. ●支援. 形. 評価の規準・方法. 態. 留意点. ○映像資料「NHKクローズア ★映像のあと、内容の整理をし、 一 導 入. ップ現代 を 見せ る. スマホ規制」の一部 課題を把握しやすくする(ポイン 斉 トを 黒板 に貼 り出す ) ●資料の場所の提示、個別の支援. 10 分. を行う スマホの午後9時以降の使用禁止のルールについて考えよう. 展. ○個人で自分の考えを理由も含 ★理由も含め、ワークシートにま 個 自分 なりの考えをワークシートにまと. 開. めワークシートにまとめ、賛成 とめ、理由も含め書かせる。また、 人 め、発表することができる【思・判・表】 ・反対・その他にまとめる。 理由も含め発表する。. 5. ○まとめたものを意見発表する. 分. ●自らの考えをうまく表現できな い生徒に、既習事項を踏まえて支. 積極的に発表することができる【関・意 ・態】. 援する ○グループで個人の意見を出し ★グループで司会をたて、意見交 グ 積極的に話し合いに参加することができ 合い、意見の交流をさせる(グ 流をさせる(賛成・反対の理由、 ル る【関・意・態】 ー. 10 分. ループで賛成・反対の理由を画 自分の気づかなかった点などを出 用 紙に 書 かせ、 掲示 させる ) し合 わせ る) プ ●意見交流が進むよう、机間巡視 を行う. - 12 -. 57.
(15) 井門 正美・武田 竜太. ○ルールをつくる上で必要と考 ★グループで司会をたて、意見交 グ えたことの交流をさせる 流をさせる(賛成・反対の理由、 ル ー. 15. 分. ルールに必要な観点 《対立と合意》 《効率と公正》. 自分の気づかなかった点などを出 し合う プ ●意見交流が進むよう、机間巡視 を行う. ま と. ○個人に戻り、本時の振り返り ★考えが変わった、変わらなかっ 個 を行い、ワークシートにまとめ た、気づいた点などをワークシー 人. め. させる. トにまとめさせる. ・今日の授業で学んだこと・交 ●自らの考えをうまく表現できな 10 分. 流から感じたこと い生徒に、本時の学習内容を踏ま ・ルールをつくる上で必要なこ えて支援する と. (4)本時の評価 ①効率と公正の観点から、さまざまな人の立場に立って公平なルールについて考え、自分なりに表現していたか。 ②効率と公正の観点から、さまざまなルールの意味や目的について追究しようとしたか。. 資料 2 授業風景. - 13 -. 58.
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