p. 1
超新星残骸カシオペア
A の
可視光による観測
p. 2
目次
要旨
第
1章
超新星残骸について
5
1,1 超新星残骸概要 5
1,2 超新星爆発 5
1,3 超新星残骸 6
1,4 観測に選んだカシオペアAについて 7
第
2章 観測手法と画像処理
8
2,1 使用した観測機材とソフトウェア 8
2,2 1回目の撮影と画像処理(10 月 27 日) 9
2,3 2回目の撮影と画像処理(11 月 17 日) 11
2,4
光量グラフ化してカシオペア
A の像を探す 12
2,5 階調補正と反転処理を行い、カシオペア A を探す 13
p. 3
第
3章 画像解析
14
3,1 カシオペア A のフィラメント構造の末端座標を求める
14
3,2 カシオペア A の中心座標を決定する 15
3,3 撮影した画像の 1 ピクセル当たりの画角を求める 15
3,4
カシオペア
A フィラメント構造から中心までの距離を
求める
16
3,5 カシオペアAの平均膨張速度 17
3,6 1980 年の観測結果との比較 17
3.7 カシオペア A の膨張エネルギー 22
第
4 章 まとめと考察
23
参考資料
24
p. 4
要旨
明星大学の天文台を利用して超新星残骸であるカシオペアAを捉え、冷却CCD カメラ BN82-L を用いて超新星残骸のカシオペア A を撮影した。その撮影したカシオペア A の像 からカシオペアA の大きさを得て、爆発した時期から現在の大きさに至るまでの平均膨張 速度を求め、5.0×10^3〔k ㎧〕という値が得られた。一方、1980 年の可視光によるカシオ ペアA の撮影画像と比較して膨張速度を求め、5.3×10^3〔k ㎧〕という値が得られた。こ れらは誤差の範囲で一致した。更にカシオペアA 全体の質量を太陽質量の 15 倍と仮定し、 カシオペアA が現在の大きさに至るまでのエネルギーを推定することでカシオペア A が超 新星爆発したときにカシオペアA に与えられたエネルギーを推定し、3.7×10^44J という値 が得られた。p. 5
第1章 超新星残骸について
1,1 超新星残骸概要
恒星の生涯の中で最後に起こる現象の超新星爆発後に残る構造体である。1,2 超新星爆発
超新星爆発には大まかに分けて二つのタイプが見られる。スペクトルに水素の輝線が存在 しないⅠ型と呼ばれる超新星とスペクトルに水素の輝線が現れるⅡ型の超新星である。そ れぞれ爆発機構が異なり、Ⅰ型は白色矮星に連星系からガスが降り注ぎチャンドラセガー ル限界を超えて収縮を起こし中心の炭素コアが不安定な状態になり、一気に核反応を起こ して燃焼しそのエネルギーが解放されることによって発生する。 一方でⅡ型は鉄の光分解である。太陽質量10 倍以上の星は核融合による元素合成により最 終的に恒星内部の中心に鉄のコアを形成するが核融合による元素合成で鉄以上の元素合成 は発生しない。恒星は核融合反応による熱エネルギーによって自身の重力を支えているの で、鉄のコアが形成された恒星は自身の重力を支え切れなくなりコアの質量が太陽質量の 1.4 倍以上になると鉄のコアが収縮を開始する。高温高圧になった鉄のコアでは鉄が光を吸 収し、ヘリウムと中性子に変化する。同時に電子捕獲も行われ陽子が中性子に変化し、中 心に中性子の塊ができる。恒星の中心部から外部へ向かう圧力が著しく低下し、外部の恒 星物質がなだれ込み中性子の塊と衝突することで外部に向かう衝撃波が発生する。このと きに恒星の外層が衝撃波として広がっていく。このとき超新星爆発に解放されるエネルギ ーを考える。太陽質量10 倍以上の恒星内部に半径 100km の 1.5 倍の太陽質量の鉄のコア が形成され、それが半径10km まで収縮してその位置エネルギーが解放されたとすると位 置エネルギーの差は以下の式で求められる。 E:位置エネルギーの差 G:重力定数 M:鉄のコアの質量 𝑅1:鉄のコア収縮後の半径 𝑅2:収縮前の半径p. 6
𝐸 =𝐺𝑀 2 R1 − 𝐺𝑀2 R2 太陽質量1.5 倍を 3×10^30 ㎏とし数値を代入した結果5.4 × 1046〔J〕という値が求まりこの エネルギーが超新星爆発時に解放されている。しかしこのエネルギーの99%はニュートリ ノが受け取って宇宙空間に放出される。残りの1%の 5.4×10^44〔J〕のエネルギーが恒星 の外層を吹き飛ばし超新星が光り輝くエネルギーとなる。 今回観測するカシオペアA は太陽質量 15 倍程度の星が爆発したとされている。1,3 超新星残骸
超新星爆発後、周りの星間物質を取り込みながら数十万年にわたり膨張していく。これが 超新星残骸である。最終的には衝撃波が弱まり、他の星間物質と混ざり、その星間物質か ら新たな恒星が生まれる。このように超新星残骸は恒星による宇宙の物質の輪廻を知る上 でも重要な天体である。超新星残骸はX 線による構造解析などの研究が盛んである。超新 星爆発によって飛び散った物質が周りの星間物質とぶつかり高温となってX 線を放ってい る。またその周りに飛び散った物質に押し広げられた星間物質が光を放っている。p. 7
1,4 観測に選んだカシオペアAについて
カシオペアA についての情報を以下の表にまとめた。 表1.カシオペア A 赤経 24h23.4m 赤緯 58°49′ 爆発時期 1658 年前後 分類 Ⅱ型b 距離 3.5k ㍶ 超新星残骸を観測する上でカシオペアA を選んだ一番の大きな理由は、可視光による撮影 が可能な点である。カシオペアA は可視光による撮影の前例があるので、その撮影像との 比較評価が行える。 カシオペアA は 1948 年に電波観測によって広がった電波源として発見された。その後 1954 年に可視光による観測によってフィラメント状に広がった天体として同定され、更に可視 光による観測によってこのフィラメント状の構造体はほぼ等速度に広がっていることが発 見された。そして、この運動速度と方向から、カシオペアA は、1658 年前後に起こった超 新星の残骸であるとされた。1980 年にはカシオペア A の X 線による撮像観測がアインシュ タイン衛星によってはじめて行われた。このX 線解析から X 線で光っている物質の量は少 なくとも太陽質量の15 倍はあるとされている。2006 年にはすばる望遠鏡を用いたカシオ ペアA の超新星爆発時に発せられた光のこだまの観測のスペクトル解析の結果、Ⅱ型 b の 分類であるとわかった。このⅡ型b(ヘリウム吸収線の視られる超新星にはbという小文字 がつけられる。)の超新星は比較的短期間に暗くなる傾向があり、他の有名なティコや、 ケプラーのような超新星と異なり、歴史文献にカシオペアA の記載がないのはこの暗くな る傾向と当時の数日の悪天候が作用し、歴史上では確認されなかったとされている。p. 8
第
2 章 観測手法と画像処理
2,1 使用した観測装置とソフトウェア
利用した機材とソフトウェアを以下の表にまとめた。 表2.1 リッチー・クレチアン式反射望遠鏡 口径 40cm 焦点距離 2800mm 集光力 3265 倍 分解能 0.29 秒 実現極限等級 14.78 等級 有効最高倍率 800 倍 表2.2 冷却 CCD カメラ BN-82L ビットラン社製 CCD 素子の型名 KAI-16070 画素数 1600 万画素 ピクセル数 4864×3232 ピクセルサイズ 7.4×7.4μm 表2.3 ソフトウェア ステライメージ7 画像処理ソフトマカリp. 9
2,2 1回目の撮影と観測画像の処理(10 月 27 日)
明星大学の天文台を利用してカシオペアA の座標に向けて撮影を行った。冷却 CCD カメラ を利用して露出時間30 秒、10 枚撮影した。同じ撮影条件で冷却 CCD カメラに蓋をし、ダ ークフレームを撮影して(日付)の観測は終了した。この観測では結果としてカシオペアA を捉えることに失敗したので後日、2 回目の撮影を行った。 10 月 27 日の観測後、ステライメージを利用して撮影した画像からダークフレームを除去し て10枚の画像を加算処理でコンポジットした。それが図2.1 の画像である。 (図2.1 10 月 27 日の天体写真)p. 10
(図2.2 参考にした過去の観測画像。青線で囲んだ部分にフィラメント状の構造が見えて いる) 図2.1 と過去の可視光による観測画像(図 2.2)と比較して星図があっているか評価した。 比較した星の配置が同じパターンが発見できた。星の配置が同じであれば撮影した位置に カシオペアA があるはずである。しかしこの状態では見つけられなかったので画像に階調 補正と反転の処理を施してカシオペアA を探した。その処理を行ったのが図 2.3 の画像で ある。 (図2.3 10 月 24 日の画像処理を行った天体画像)p. 11
過去の観測画像と星図の配置からこの位置にカシオペアA の像が映り込むはずである。し かし画像のように映り込んでおらず10 月 27 日の撮影では観測時間が不十分だったという 結論になった。2,3 2 回目の撮影と画像処理(11 月 17 日)
10 月 27 日の経験からその日の観測では暗い天体でも撮影できるように30秒の露出時間 で100枚のカシオペアA の画像を撮影して加算処理でコンポジットを行った。露出時間 を増やすことでも暗い天体を映りやすくすることが可能であるが、30秒以上の露出時間 を増やすと天体の像が横にずれた画像になってしまうため撮影枚数を増やすことで対応し た。その日は露出時間30秒で100枚の画像を明星大学天文台で冷却CCD カメラを利用 してカシオペアA の座標に向けて撮影した。その後冷却 CCD カメラに蓋をして同じ露出時 間で15枚のダークフレームを撮影してその日の観測は終了した。 2 回目の撮影後、ステライメージを利用して100枚の画像からダークフレームを除去の処 理を行った。露出時間30秒。100枚の長時間の撮影を行ったので天球の動きから撮影 した写真にズレが生じるがステライメージで位置合わせを行い修正後、加算処理でコンポ ジットを行った。これが図2.4 の画像である。p. 12
(図2.4 11 月 17 日の撮影の天体写真) 10 月 27 日の撮影画像と同じように(図 2.2)の星図の確認を行い一致していることから撮 影した座標が正しいことを確認した。2,4 光量グラフ化してカシオペア A の像を探す
この2回目の画像でも見つけることが難しいと考えたためマカリを利用してカシオペアA が映り込んでいるはずの位置の光量をグラフ化した。その位置を示したのが図2.5 である。 (図2.5 光量を確認した範囲、長方形の範囲内の光量を測定している画像) しかし周りの宙域とカシオペアA があると予想される位置の光量の違いがなかったためこ の手法では確認できなかった。p. 13
2,5 階調補正と反転処理を行い、カシオペア A を探す
次に階調補正と反転処理を行ってカシオペアA を探した。 (図2.6 階調補正反転処理を施した2回目の天体画像、赤線で囲んだ部分にフィラメント 状の構造が見えている。) 図2.6 と図 2.2 の 1980 年の天体画像を比較してみると同じような位置にフィラメント状の 構造が見えていることがわかる。うっすらとした像ではあるが過去の可視光の観測画像(図 2.2)と比較すると配置が同じであることからこれはカシオペア A の像であるという結論に 至った。p. 14
第
3 章 画像解析
11 月 17 日に撮影されたカシオペア A の像のピクセル数からカシオペア A の半径の画角を 求めてカシオペアA の実際の距離を求めた。3,1 カシオペア A のフィラメント構造の末端座標を求める
マカリを利用してカシオペアA のフィラメント構造がどこまで広がっているかを見るため 図3.1 の長方形の範囲の可視光量のグラフ図を作成した。白黒を反転した画像なのでグラフ の小さいほうが光量の多いことを示している。グラフにピンクの線を引いたところがフィ ラメント構造の中でカシオペアA の中心から一番遠い末端であると認定した。 (図 3.1 撮影した画像に青線の長方形の範囲を指定してその部分の光量を測定している。 グラフの横軸は天体画像上のX 軸方向のピクセル数、縦軸はそのピクセルの光量を示して いる。)p. 15
3,2 カシオペア A の中心座標を決定する
図3.1 上でのカシオペア A の像の中心のピクセル座標を過去の論文 (1980 年の可視光観測の論文)カシオペア A のフィラメント構造の広がっていく方向を参 考に中心座標を決定した。 中心座標 X:2335 Y:1159 このピクセルの座標(X:2335 Y:1159)からこの画像上のカシオペア A の像の中心か らフィラメント構造までのピクセル数を求めた。 x=2334 − 2335= −1 y=1357 − 1159=198 カシオペアA の像の中心から端までのピクセル数=198.013,3 撮影した画像の 1 ピクセル当たりの画角を求める
1ピクセル当たりの画角を求めることができればカシオペアA の像の半径のピクセル数か らカシオペアA の半径の画角が求まる。 𝜃0:1 ピクセルの画角 𝑑:ピクセルの大きさ 𝑓:焦点距離 𝜃0= tan−1 (𝑑𝑓) 今回使用した冷却CCD カメラのビットラン社製 BN-82L のピクセルの大きさ d は 7.4µm 明星大学天文台望遠鏡の焦点距離f は 2800mm なので 1 ピクセル当たりの画角は tan−1(7.4×10−6[𝑚] 2800×10−3[𝑚]) = 1.51 × 10 −4[°] となる。p. 16
3,4 カシオペア A フィラメント構造から中心までの距離を求める
カシオペアA の像の半径の画角は以下の式で求められる。 θ:天体の画角 n:ピクセル数 𝜃0:1 ピクセル当たりの画角 𝜃 = 𝑛 × 𝜃0 それぞれの数値を入れて計算すると、カシオペアA の中心からフィラメント構造までの画 角は以下のような値になった。 198.01×1.5142×10^-4=0.029982674〔°〕 画像の天体の画角から地球から天体までの距離を利用することで実際の天体の大きさを求 める。天体を求める式は以下の式である。 𝐷:天体の大きさ 𝜃 :天体の画角(°) 𝑅 :天体までの距離 𝐷=𝑅 ×𝜃 (θにはラジアン補正) カシオペアA までの距離 R を 3.5kpc(1.078×10^20m)としてそれぞれの数値を入れた式 は以下になる 2 × 𝜋 × 1.078 × 1020[𝑚] × (2.99×10−2[°] 360[°] ) = 5.6 × 1016〔𝑚〕 これが今回観測したカシオペアAの像から求められたカシオペアAのフィラメント構造の 末端から中心までの距離である。p. 17
3,5 カシオペアAの平均膨張速度
カシオペアA の中心からフィラメント末端までの距離、5.64×10^16m という値を求めた。 この距の値からカシオペアA が現在に至るまでの時間を求めて、その値からカシオペア A の平均膨張速度を求めた。 カシオペアAの爆発時期は1658 年前後とされている。カシオペアAが現在に至るまでの時 間を358 年(1.13×10^10 秒)とすると、現在の大きさになるまでの平均膨張速度は 5.64 × 10^16〔𝑚〕 1.13 × 10^10〔𝑠〕 = 5.00 × 10^3〔𝑘㎧〕 となった。なお、カシオペアA の中心の位置には曖昧さがあり、フィラメント末端までの 距離には5%程度の誤差があると考えられ、上の膨張速度には±0.25〔k ㎧〕程度の誤差があ ると考えられる。3,6 1980 年の観測結果との比較
1980 年の可視光によるカシオペア A の観測と今回観測したカシオペア A の像を比較し、そ の像がどの程度の距離で動いたかを算出し、そこから膨張速度を求める。 まず過去の画像と今回の画像を星図の位置と照らし合わせ、画像のスケールと角度を合わ せた。そして照らし合わせた像の比較を行い今回得られた観測画像上に1980 年のカシオペ アA の像がどこに存在したかを調べた。1980 年のカシオペア A 末端位置を今回得られた観 測画像上の座標で決定、今回のカシオペアA の末端位置とのピクセル数の差を求めたp. 18
(図3.2 1980 年カシオペア A の画像)
(図3.3 今回得られた画像上で 1980 年にカシオペア A の末端が存在した位置を示してい る。青の長方形の中の青い線がその位置である。この長方形内の光量をグラフ化しており それが図3.4 の画像である。)
p. 19
(図3.4 ピンクの線が 1980 年時のカシオペア A の末端座標。このグラフは図 3.3 の長方 形内の光量をグラフ化している。横軸が図3.3 の画像の X 軸方向のピクセル数を示し、縦 軸がそのピクセルごとに含まれる光量) この図3.3 は図 3.2 の画像に長方形の範囲の光量を測定したグラフを表示した。そして 1980 年の観測画像を読み取り図3.3 の座標上のどこに 1980 年時の末端のフィラメントが存在し たかをピンクの線で示したのが図3.4 である。以下の図では現在のフィラメント構造の上で 位置を決めている。 (図3.5 今回得られたカシオペア A の像の末端座標)p. 20
(図3.6 今回得られたカシオペア A の末端座標がピンクの線である。このグラフは図 3.3 の長方形内の光量をグラフ化している横軸が図3.3 の画像の X 軸方向のピクセル数を示し、 縦軸がそのピクセルごとに含まれる光量) 得られたピクセル座標は以下のようにまとめられた。 1980 年のカシオペア A の末端ピクセル座標 X:2335 Y:1338 今回得られたカシオペアA の末端ピクセル座標 X:2335 Y:1359 1980 年の末端座標と今回の末端座標のピクセル差= 21 カシオペアA の末端のピクセル座標の差から画角を求め、そこから実際の距離を導く。 今回得られた観測画像の1 ピクセル当たりの画角 𝜃0=1.5142×10^-4° 1980 年の末端座標と今回の末端座標のピクセル差 n=21p. 21
1980 年の末端位置と今回の末端位置の差の画角を求める式は 𝜃 = 𝑛 × 𝜃0 それぞれ数値をいれたのが以下の式である 1.5142×10^-4×21=0.00317982〔°〕 これから1980 年の末端位置と今回の末端位置の差の距離は、天体の画角から天体の大きさ を求める式 𝐷:天体の大きさ 𝜃 :天体の画角(°) 𝑅 :天体までの距離 𝐷=𝑅 ×𝜃 (θにはラジアン補正) を利用して以下の式で距離を求めた。 2 × 𝜋 × 1.078 × 1020[𝑚] × (3.17 × 10−3[°] 360[°] ) = 5.98 × 10 15〔𝑚〕 1980 年から現在まで動いた距離はこのようになり、 この距離により 1980 年から現在までの時間を 36 年(1.13×10^9〔s〕)とすると膨張速度は以下のような 数値になった。 5.98 × 10^15〔𝑚〕 1.13 × 109〔𝑠〕 = 5.27 × 103〔𝑘㎧〕 1980 年と今回とのフィラメント構造のピクセル差には 1 ピクセル程度の誤差はあり得るだ ろう。すると今求めた膨張速度にはやはり±0.25〔k ㎧〕程度の誤差があり得る。 その誤差を考慮すると1980 年から 2016 年までの膨張速度と爆発時からの平均膨張速度と は誤差の範囲で一致していると言える。p. 22
3.7 カシオペア A の膨張エネルギー
カシオペアA の可視光観測で得られたフィラメント構造の物質はおよそ 5.0×10^3〔k ㎧〕 で膨張していることが分かった。今、この速度がカシオペアA で膨張している物質全体の 平均速度であると仮定すると、カシオペアA が膨張している運動エネルギーを求めること が出来る。カシオペアA全体の質量を太陽質量の15 倍(2.98×10^31 ㎏)とすると 運動エネルギーを求める式 v:速度 m:質量 E:運動エネルギー 1 2m𝑣2= 𝐸 これを利用してそれぞれ数値をいれたのが以下の式である。 1 2× 2.98 × 10^31〔㎏〕(5.0 × 10^3〔k ㎧〕) 2=3.72×10^44〔J〕 結果この数値が求まった。p. 23
第
4 章まとめと考察
明星大学天文台40cm 可視光望遠鏡を用いて超新星残骸カシオペア A の観測を行った。そ の結果、1980 年の可視光観測増とほぼ同じ位置にフィラメント状の構造を撮像することが 出来た。このフィラメント構造の末端の位置と過去の可視光観測から求められているカシ オペアA の中心との位置からフィラメント構造末端位置の中心からの距離を求めて、1658 年の爆発から観測時までの時間358 年を用いてフィラメント末端位置での膨張速度 5.00± 0.25k ㎧を求めた。一方、今回のフィラメント末端位置を 1980 年の末端位置と比較するこ とで1980 年から 2016 年の間の膨張速度は 5.27±0.25k ㎧と求められた。両者は誤差の範 囲で一致し、1980 年から 2016 年の間に有意な減速は観測されなかった。 X 線によるカシオペア A の解析により膨張速度は 4000~5000〔k ㎧〕とされており今回の 結果はそれと矛盾しない。またこのフィラメントの膨張速度は5.0×10^3〔k ㎧〕が超新星 残骸全体の平均膨張速度と仮定し、超新星残骸全体の質量を太陽質量の15 倍と仮定すると 超新星残骸全体の運動エネルギーは3.7×10^44〔J〕と計算された。これは第 1 章の超新 星爆発で吹き飛ばされる外層に与えられるエネルギーがおよそ5.4×10^44〔J〕とした推 定値に近い数値になっている。p. 24
参考文献
シリーズ現代の天文学7 恒星 平成26 年度 理科年表参考サイト
すばる望遠鏡 観測成果 http://subarutelescope.org/Pressrelease/2008/05/29/j_index.html#n3 ビットラン社 製品カタログ http://www.bitran.co.jp/ccd/astro/bn80.html 戸塚洋二の科学入門 http://kenbunden.net/totsuka/02/06.html参考論文
Optical studies of Cassiopeia a.Ⅳ.Observations during the period 1976-1980
AP.J.268 P129-133 SIDNEY VAN DEN BERGH and KARL W.KAMPER(1980 年の観測結 果として利用した論文)