フィンランドおよびスウェーデンの特別支援教育 : 普通学校における特別支援教育の取り組み 利用統計を見る
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(2) っている(石田,1998)。特別学校の数はインテグレーションの拡大に伴い減少し,2002 年には聴覚障害者の学校が5校,重複障害者等の国立の特別学校8校となっている(朝日新 聞記事)。 本稿では,視察で得られた情報をもとにフィンランド,スウェーデンにおける特別支援 教育の現状について,特に小学校や基礎教育学校,総合学校等での特別支援教育の取り組 みを紹介し,我が国の特別支援教育と対比させながら,両国の特別支援教育の特徴やすぐ れた点,等について考察していきたい。. Ⅱ. 視察校での特別支援教育の状況. 視察で得られた情報から,視察先の学校ごとに,(1)学校のタイプ,(2)学校の特徴,(3) 特別支援教育の方法,(4)支援スタッフの状況,(5)その他,の項目に内容を分類・整理す る。本研究の調査対象はフィンランドから3校(以下A校,B校,C校と記す ),スウェ ーデンから3校(以下D校,E校,F校と記す)の計6校とした。. 1.A校について (1). 学校のタイプ. 低学年対象の小学校。1年生(7歳児)から2年生までの児童が在籍。プリスクールとし て6歳児の就学前教育を実施。 (2). 学校の特徴. 全校児童数128人。職員数20人。多様なクラス編制をとっている。プリスクール,1年 生クラス,2年生クラスの他に,プリスクールと1年生の混合クラス,1年生と2年生の 混合クラス,7歳の就学時に1年生の教育内容が難しい児童のためのスタートクラス,移 民の児童のためのクラス,特別支援クラスが設けられていた。また,2年生の教育内容が 充分に習得できなかった場合には,更にもう1年間,2年生として学習することができる というシステムがとられていた。各クラスとも児童数は20人以下。約50人が放課後,校内 での学童保育(外部委託)を受けている。年度初めに読み書き,聞き取り,算数のテスト を実施し,その結果をもとにクラス編制を行っている。3年生からは近隣の2つの小学校 に編入する。 (3). 特別支援教育の方法. 特別支援教育専門の教員が配置されており,クラス担任は持たず,各クラスの支援が必 要な児童(各クラスに3~4人)への教育コーディネートを行っていた。各クラスには担任 とスクールヘルパーの2名が学級での指導,支援に携わっていた。クラス内で支援が必要 な児童にスクールヘルパーが個別に関わる,数人をパートタイムで抽出し小グループ編制 で学習支援を行う,特別支援クラスでの学習,等の方法がとられていた。また,在籍して いる知的障害のある自閉症の児童はスタートクラスの授業に参加し,スクールヘルパーの - 118 -.
(3) 支援を受けながら学習活動に取り組んでいた。 (4). 支援スタッフの状況. 特別支援教育専門教員,担任,スクールヘルパー。. 2.B校について (1). 学校のタイプ. 小学校。1年生(7歳児)から5年生までの児童が在籍(学校創立が2004年のため6年生の 在籍はない)。プリスクールとして6歳児の就学前教育を実施。 (2). 学校の特徴. 児童数266人。教師16人。普通クラス8学級(学級定員28人)のほか,3・4年複合クラ ス,4・5年複合クラスが設けられ,学習の到達度に対応したクラス編制を行っている。 特別支援クラス4学級(学級定員10人 ),障害児クラス2学級(学級定員8人 ),情緒障害や 精神疾患のある児童を対象としたエタッピクラス1学級(学級定員5人)を設置している。 スクールサイコロジスト,スクールカウンセラー,保健師による「生徒サービスチーム」 を編成している。校内での学童保育(外部委託)を実施。 (3). 特別支援教育の方法. 特別支援教育専門教員は1人で,各クラスを支援している。普通クラスや複合クラスの 児童で,学習のつまずきや遅れが見られた生徒に対しては,放課後に補習授業を実施して いる。特別支援クラスは授業についていけない児童やLD,ADHD等の軽度発達障害の 児童を主な対象とし,在籍にあたってはスクールサイコロジストの判断と保護者の同意が 必要である。最近では薬を服用している在籍児童が増えてきているとのことであった。特 別支援クラスではグループ学習の他,個別指導プログラムを作成して指導している。障害 児クラスは2学級あり,軽・中度知的障害の児童が在籍し,担任と2人のスクールヘルパ ーが指導にあたっていた。エタッピクラスは情緒障害や精神疾患のある児童を対象とした クラスで市内各地から通学してきており,担任と社会福祉アドバイザー,スクールヘルパ ーの3人のスタッフが支援にあたっていた。他の小学校に在籍し,期間を設けてエタッピ クラスで指導を受けている児童もいた。 (4). 支援スタッフの状況. 特別支援教育専門教員1人,スクールヘルパー7人,社会福祉アドバイザー1人,保健師 1人,スクールカウンセラーは週に一度,スクールサイコロジストは2週間に一度,学校 を訪れる。. 3.C校について (1). 学校のタイプ. 小中一貫教育の総合学校。プリスクール(6歳児)から9年生(15歳)までの児童生徒 が在籍。 - 119 -.
(4) (2). 学校の特徴. 児童生徒数873 人。教師74人。移民の子女約200 人(14カ国)が在籍する。フィンラン ド語習得の必要がある子女のためのクラスを2学級設置している。児童生徒数全体の20% が特別な支援を必要としている。特別支援クラス(各学年に1学級ずつの9学級,学級定 員10人)と障害児クラス(3クラス,最大10人)がある。校内に「生徒サービスチーム」 の組織がある。 (3). 特別支援教育の方法. 特別支援クラス,障害児クラスでの指導と普通クラスでの支援で対応していた。障害児 クラスは,個別指導,グループ指導を組み合わせながら,各自のレベルにあった個々の教 材で学習する等の取り組みが行われていた。普通クラスでは,授業に特別支援教育専門教 員やスクールヘルパーがついて教員の指導を補助し,支援の必要な2~3人の児童生徒を ピックアップして別室での指導や補習を行うこともある。特別支援クラスは担任1人で全 教科を指導していた。 (4). 支援スタッフの状況. 特別支援教育専門教員,担任,スクールヘルパー,保健師(常勤1人,非常勤1人 ),ス クールカウンセラー(常勤),スクールサイコロジスト(必要に応じて来校)。. 4.D校について (1). 学校のタイプ. 0歳から15歳までを対象とした乳幼児教育機関,プリスクール(6歳児教育),小学校, 中学校をもつ総合学校。 (2). 学校の特徴. 児童生徒数530人。2学期制。乳幼児クラスは教員1人あたり乳幼児数6.2人,プリスク ールでは教員1人あたり幼児数14人,小学校段階では教員1人あたり児童数21.5人,中学 校段階では教員1人あたり生徒数20人,となっている。学童保育(外部委託)を校内で実 施。スクールカウンセラー,スクールサイコロジスト,看護師による「いじめ対策グルー プ」がある。インターネットを利用し,学校,児童生徒,保護者が情報の交換,共有を図 るネットワークを構成。 (3). 特別支援教育の方法. 学習に遅れのある子どもには特別補助プログラムによる支援が行われる。1年生に肢体 不自由で車イスを利用している児童が在籍しており,スクールヘルパーが支援にあたって いた。毎年,5年生と9年生が国の統一テストを受けるが,それぞれの学年の目標に到達 できるように特別支援専門教員が,放課後,個別に支援したり,夏休みに指導するなどし て対応している。個々の児童生徒の学習到達度チェックリストを作成し,目標に到達でき なかった場合は対策プログラムが作成される。. - 120 -.
(5) (4). 支援スタッフの状況. 特別支援専門教員,スクールヘルパー,スクールカウンセラー,スクールサイコロジス ト,看護師,IT専門教員。. 5.E校について (1). 学校のタイプ. 0歳から15歳までを対象とした乳幼児教育機関,プリスクール(6歳児教育),小学校, 中学校をもつ総合学校(視察したのは5年生(11歳)から9年生(15歳)までが学習する校 舎)。 (2). 学校の特徴. 全校幼児児童生徒1200人。幼児児童生徒の年齢段階ごとに校舎(合計4校舎)が分散し て建てられている。それぞれの校舎には副校長が配置されている。地域に「生徒のための 健康チーム」があり,読み書き学習専門のスペシャルティーチャー2人,特別支援教育専 門教員1人,スクールサイコロジスト1人,スクールカウンセラー1人で構成され,1チーム が2つの学校の支援を行っている。校内には「生徒支援チーム」があり,校長,担任,保 健師で構成され,必要に応じてスクールカウンセラー,スクールサイコロジスト,特別支 援教育専門教員が加わる。 (3). 特別支援教育の方法. 自閉症クラス(1~9年生),学習遅滞(4年生以下)クラス,学習遅滞(5~9年生) クラスが設けられている。自閉症クラスは12人の児童生徒が更に3グループに分かれて学 習している。グループごとに教員1人とスクールヘルパー1人が支援にあたる。学習遅滞ク ラスには言語指導のスペシャルティーチャーが配属されている。障害児学級も設置され, ダウン症,知的障害の児童生徒が在籍している。学級への在籍にあたっては医師,スクー ルサイコロジスト,スクールカウンセラーの判定が必要となる。特別支援教育の学習プロ グロムは特別支援教育専門教員が作成する。 (4). 支援スタッフの状況. 特別支援教育専門教員,言語指導のスペシャルティーチャー,スクールヘルパー,スク ールカウンセラー,スクールサイコロジスト,保健師。. 6.F校について (1). 学校のタイプ. 1年生から6年生までの小学校。6歳児にはプリスクールを実施。 (2). 学校の特徴. 1クラスの学級定員は24人。更にクラスを2つのグループに分けて授業を行う。1年生 から6年生までの縦割り集団(スロット:城という意味)を構成している。学習面での遅 れに対応するための行動計画を作成,実践している。校長・特別支援教育専門教員・保健 - 121 -.
(6) 師・学校医・スクールサイコロジストによる生徒介護チームを組織。校内での学童保育(外 部委託)を実施。 (3). 特別支援教育の方法. 3名の特別支援教育専門教員が所属し,一人が約90人の児童生徒の支援を担当している。 特別支援学級の児童は実態に応じて通常学級の授業で一緒に授業を受ける。どの授業を一 緒に受けるのかは特別支援学級の担任が教育計画を作成して決めていく。自閉症の児童で 通常学級で1日一緒に学習する場合もある。全ての児童にテストを実施し,行動計画に基 づいて段階的な支援を実施している。特別な支援が必要な児童の課題を発見し,対処して いく。読み書きなどに対しての発達チェックを行っている。特別支援学級は普通学級と同 じ校舎にある。 自閉症児のためのトレーニングクラス(4学級)は独立した別校舎にある。このクラス には周辺地域からも通学してきている。トレーニングクラスの児童は周あたり数時間は普 通クラスで,音楽,体育,図画工作などの授業を一緒に受けている。教師と1対1での個 別指導を設定し,個別指導計画に基づいた,認知,コミュニケーション,ことば,文字, かず等,実態に応じた支援が行われていた。 特別支援学級やトレーニングクラスの児童が普通学級での授業に参加する場合はスクー ルヘルパーが付き添う。 (4). 支援スタッフの状況. 特別支援教育専門教員・保健師・学校医・スクールサイコロジスト,スクールヘルパー。. Ⅲ. 考察. 1.学校制度面から フィンランド,スウェーデンの義務教育は日本と同様に7歳から15歳までの9年間となっ ている。この9年間を基礎教育と位置づけ,総合学校(C校,D校,E校)として9年間の 一貫教育が行われている。また,9年間を前期の6年間と後期の3年間に分け小学校(B校, F校 ),中学校で教育を行っている地域もある。1・2年生のみを対象とした小学校も設置 されている(A校 )。このほかにも,中学校と高等学校を併設した学校なども設置されて おり,学校の規模や対象とする子どもの年齢(学年)は,学校や地域の実情などにより多 様な形態がとられていた。 視察した6校全てで6歳児への通年制のプリスクールが実施されていた。基本的には希望 制によりプリスクールで教育を受けることができる制度が確立されており,9割以上の子 どもが利用している状況である。また,学校(D校,E校)によっては0歳児からの乳幼 児教育も実施していた。このように,フィンランド,スウェーデンではプリスクールが一 般的にどこの総合学校,小学校においても実施され,また,乳幼児教育も含めた教育環境 が整備されている学校もあり,就学前教育への取り組みが進めら,充実・発展してきてい - 122 -.
(7) る。 学校施設を利用した外部委託による学童保育も実施されていた(A校,B校,D校 )。 フィンランド,スウェーデンでは,両親共働きの世帯数が多く,更に離婚率が比較的高い という事情から母子家庭や父子家庭も多く,学童保育の充実は必要不可欠であり,学校施 設を学童保育に活用し,委託業者が運営するという取り組みが国の施策として実施されて いる。 基本的には義務教育は9年間となっているフィンランドでは,学業不振や長期欠席,障 害などの理由により義務教育の学習内容が十分に習得できなかった際には,更にもう1年 間,10年生として義務教育が受けられる特別な制度が設けられていた。フィンランドでは 高等学校に進学するための入学試験は実施されず,義務教育終了時に修了試験が実施され る。そして,修了試験の結果によって進学する高等学校が決まるというシステムとなって いる。このような修了試験の実施により,十分な結果が得られなかった場合は義務教育を 1年延長して確実に学力の定着をはかっていこうとする制度といえる。. 2.学級編制,学習集団 普通学級での1学級あたりの児童生徒数は,小学2年生以下の学級で20人以下(A校), 小学5年生以下の学級で28人(B校),乳幼児クラスは教員1人あたり乳幼児数6.2人,プ リスクールでは教員1人あたり幼児数14人,小学校段階では教員1人あたり児童数21.5人, 中学校段階では教員1人あたり生徒数20人(D校 ),小学校の学級定員は24人(F校)で あった。学校により1学級あたりの児童生徒数の定員は異なっていたが,20人前後の学級 がほとんどであった。日本でも小学校の低学年の学級を中心に35人学級,30人学級などの 取り組みが行われはじめているが,依然として公立学校の学級編制の基準は40人学級を上 限としている。この事実をフィンランドの教師に伝えたところ「フィンランドの100年前 の学級と同じだ」という皮肉混じりの答えが返ってきた。 フィンランド,スウェーデンの学級編制は学年を基本としている一方で,プリスクール と1年生の混合クラス,1年生と2年生の混合クラス(A校),3・4年混合クラス,4・ 5年混合クラス(B校)など,2つの学年の児童の学習の到達度に対応した2学年混合の 学級編制が行われていた。日本にも小規模校において複式学級が設置されているが,あく までもそれは児童数によるものであり,フィンランド,スウェーデンでは学習の到達度に よって混合クラスを編制するものであり,徹底した学力の定着を図ろうとする目的がうか がわれる。混合クラスの編制に当たっては,毎年実施される学力到達度テストの結果が反 映されているということであった。 更に,7歳の就学時に1年生の教育内容が難しい児童のためのスタートクラス(A校), 移民の子どものためのクラス(A校,C校 ),学習のつまずきや遅れ,軽度発達障害のあ る子どものための特別支援クラス(A校,B校,C校,E校,F校 ),知的障害などのあ る子どものための障害児クラス(B校,C校,E校 ),情緒障害や精神疾患のある子ども - 123 -.
(8) のためのエタッピクラス(B校 ),自閉症児のための自閉症クラス(E校,F校 ),など の特別な支援が必要な子どものための学級が設けられている。. 3.学習のつまずきや遅れ,軽度発達障害のある子どもへの支援 フィンランド及びスウェーデンでの視察校の多くが,学習のつまずきや遅れ,学習障害 などの児童生徒のための特別支援教育を実践していた。フィンランドのC校では児童生徒 数全体(873名)の約20%に特別な支援が必要であるということであった。各学校には特 別支援教育専門教員が1人から数名配置され,クラス担任は持たず,普通学級への支援及 び支援が必要な児童生徒へのグループ指導,個別の支援,更に放課後の補習指導などを担 当していた。この特別支援教育専門教員は,日本でも小・中学校に置かれることになった 特別支援教育コーディネーターと同様の役割を担っている専門職と考えられる。現在,日 本では文部科学省及び都道府県教育委員会において特別支援教育コーディネーターを養成 する研修会を開催し,各学校に1名の配置を目指した取り組みが進められている。フィン ランド,スウェーデンの学校における特別支援教育専門教員の役割や実践内容は,今後の 日本の,特に小学校や中学校での軽度発達障害等の児童生徒への支援の参考になるもので あった。 学習のつまずきや遅れ,軽度発達障害のある子どもへの支援として,各校ではチェック リストを活用していた。実態の把握から支援のニーズを探り,特別支援教育専門教員を中 心に支援の具体策を検討し,ニーズに応じた支援を実施していた。支援の段階としては, (1)普通学級での支援(担任による配慮的支援,スクールヘルパーによる個別の対応 ),(2) グループ学習での支援(国語や算数などの時間に学級を離れ,支援が必要な子どもを5か ら10人程度の集団で学習支援を行う ),(3)普通学級に在籍しながら,一定の時間あるい は放課後などに個別での支援,(4)特別支援学級での支援(特別支援学級に在籍しての支 援 ),などの方法がとられ,一定期間に学習の到達度が評価され,支援方法が再検討され ていた。フィンランドでは特に,ことば,文字,かずの習得が重要視され,学習について いけない等の状況が確認された時点で,特別支援教育専門教員が支援計画を作成し,早速 支援が開始されるという体制がとられていた 。「わかるまで丁寧に教える 」「どの子にも 基礎教育の理解を 」(フィンランド教師の言葉)という方針は,学力の底上げに徹底して 取り組んでいこうという姿勢が感じられるものであった。また,これらの取り組みはPISA (OECD生徒の学習到達度調査)2003年調査の国際的な学力比較において世界トップレベル の学力を示す結果とも関連していると思われた。. 4.障害のある子どもへの支援 フィンランドのB校は普通クラスの他に,特別支援クラス,障害児クラス,エピッタク ラスを設置している。障害児クラス(学級定員8人)は中,軽度知的障害の児童が在籍し, 担任と2人のスクールヘルパーが指導にあたっていた。エピッタクラス(学級定員5人) - 124 -.
(9) は情緒障害や精神疾患のある児童のクラスで市内各地から通学してきており,担任と社会 福祉アドバイザー,スクールヘルパーの3名のスタッフが支援にあたっていた。両クラス とも複数の支援者ががおり,特にスクールヘルパーはB校以外の視察校においても,子ど もの学校における身近な支援者として活躍していた。また,エピッタクラスには社会福祉 アドバイザーという職種の支援者が,担任,スクールヘルパーと共同で学校での生活支援 にあたっており,子どもの障害や病状に対応した特別な人的配置がなされており,特徴的 であった。 スウェーデンのE校には自閉症クラス,障害児クラス,学習遅滞(4年生以下)クラス, 学習遅滞(5~9年生以下)クラスが設置されており,自閉症クラスは12人の児童生徒が 更に3グループに分かれて学習していた。障害児クラスにはダウン症,知的障害の児童生 徒が在籍していた。スウェーデンのF校では,障害児クラスの児童は実態に応じて通常学 級の授業を一緒に受け,通常学級の児童との交流が図られていた。障害児クラスは通常学 級と同じ校舎に教室があり,自閉症児のためのトレーニングクラスは別校舎に設置されて いた。E校,F校とも自閉症児のための特別なクラスが,障害児クラスとは別に設置され 特別な教育計画のもとに学習支援が行われていた。特にF校は自閉症児のトレーニングク ラスとして位置づけ,別校舎での独自の教育が行われ,教師とのマンツーマンの授業で個 々の実態に応じたコミュニケーション能力を育むことを中心とした支援が実践されてい た。 フィンランド,スウェーデン両国とも,障害児への教育は可能な限り地域の学校で行っ ていくことが基本理念であり,同じ学校の敷地内で学んでいくという場の統合が進められ ていた。そして,児童生徒の実態に応じた支援(普通学級での支援,グループ学習での支 援,特殊学級での支援,個別の支援,など)が実践されていた。日本においても地域の学 校の敷地内に養護学校の分校を設置したり,障害のある児童が地域の学校に就学を希望す る場合は特殊学級を設置したりするなどの方法により場の統合が模索されてきている。更 に,教育の場の統合を推進していくのであれば,フィンランドやスウェーデンのような教 員及びスクールヘルパーなどの人的配置と地域の学校での障害児教育の実践力や支援体制 を整えていかなければならないと思われる。. 5.教員及び支援スタッフについて 教員,支援スタッフに関しては,コーディネーター役の特別支援専門教員をはじめ,特 殊学級等の担任やスクールヘルパーによる複数のスタッフでの支援がほとんどの学校で実 践されていた。教員は教員養成課程の大学において教員免許を取得し,特別支援教育専門 教員になるためには更に大学において専門の課程を修了しなければならない。一方,スク ールヘルパーは職業学校(日本における職業高校)の養成課程を卒業し資格を得ることが できるシステムとなっている。フィンランド,スウェーデンの学校においてスクールヘル パーは欠かせない支援スタッフとして位置づけられていた。 - 125 -.
(10) そのほかの学校での支援スタッフとしてはスクールサイコロジスト,スクールカウンセ ラーが週1~2日定期的に勤務し,教員と連携を図りながら支援が必要な児童生徒に対応 していく体制が多くの学校でとられていた。日本でもスクールヘルパーやスクールカウン セラーなどの導入が進んではきているが,一般の多くの学校は教員主体の体制ほとんどで ある。学校教育の中で,どのような支援スタッフが必要であり,教員とどのように役割分 担をしていくのか。両国の取り組みを参考に,日本での有り様を検討していく必要がある と思われた。. Ⅳ. おわりに. フィンランド,スウェーデンでの視察をとおして,両国とも教育への関心の高さと,こ れからの国を担っていく子ども一人ひとりを大切に育んでいこうという思想が感じられ た。基本的に大学までの教育費が無償であり,教員を含めた専門スタッフの充実した配置 など教育にかける予算も大きいものであった。特別支援教育のあり方についても学ぶべき 点は多く,今後の我の国の特別支援教育の充実に向けて多くの示唆が得られると思われた。 一方,我が国の障害児教育が育んできた教員の実践力,授業の方法や内容,教材教具の 工夫などは,大切にしていきたい財産であるということも再確認できるよい機会となった。 視察に際して支援していただいた関係者の方々,視察を受け入れていただいたフィンラ ンド,スウェーデンの学校関係者の方々に感謝を申し上げるとともに,視察での経験で得 られたものを,これからの実践に活かしていきたい。. 文献 1) 森 博俊(2005)すべての子どもに基礎教育を保障.フィンランドに学ぶ教育と学力. 未来への学力と日本の教育3.明石書店,260-276. 2) 石田祥代(1998)スウェーデンにおけるインテグレーションの展開過程.SENジャー ナル3.文理閣,54-74. 3) 山口 薫・金子 健(1993)特殊教育の展望-21世紀に向けて-.日本文化科学社. 4) 朝日新聞記事(2002.5.1)学びの場個別に対応-スウェーデンに見る統合教育. 5) 福田誠治(2005)いま「学力問題」を問う.山梨県特別支援教育研究連盟夏期研修会 講演会資料. 6)河本佳子(2004)障害児教育-障害児と健常児,互いのための統合教育-.HYGGE Vol3. スカンジナビア政府観光局,8 7)平成17年度教職員派遣研修. 国立大学法人附属学校B団報告書(2006,1). - 126 -.
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