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教育方法における受容的アプローチと発見的アプローチの比較に関する考察 : 小学校理科指導における選択の視点

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1 はじめに  小学校の学習指導要領理科の目標に問題解 決能力を育てることが示されているが、問題 解決を進める方法として、従来の発見的アプ ローチではなく、知識を「教えて考えさせる」 などの受容的アプローチが 2000 年頃に提案さ れ始めた1)。この新しい指導法の提案が算数 や理科だけでなく、他の教科にも適用されて 実践例が積み重ねられている。教科を超えて 文化伝承全体に広げようという傾向もみられ る2)  筆者自身は、現場の小学校教員として理科 を窓口に実践を行ってきたが、筆者の周りの 小学校現場で話題になったのは「教えて考え させる授業」(2004 年市川)と、その同系列と 考えられる「先行学習」(2003 年鏑木)、「知識 伝達・事例化モデル」(2001 年進藤・日高)の3 つであった。  受容的アプローチは 1989 年に新設された生 活科の「指導から支援に」といった指導方法 の提案が生活科の枠を超えて他教科の指導に も広く影響を与えたことに対して「知識軽視 ではないか」といった批判が中心となって表 面化してきたと考えられる。現行指導要領で も「習得・活用・探究」を文科省が言い始め たのは、中教審教育課程部会での市川の主張 が元になっていると言われており、その主張 は、探究型の学習ばかりで、知識を習得する学 習が軽視されすぎてはいないかということであ った。市川は知識を活用して探究をし、探究 によって改めて知識の必要性に気づくのだか ら、習得 7 ~8割、探究2~3割でよいこと、 そして、習得のためには「教える」だけでは だめで「教えて考えさせる授業」が必要だと も主張している3)。現在、「教えて考えさせる 授業」や「先行学習」など、初めに知識とし て教える方法を実践している学校や教員も少 なくない。  一方、「教えて考えさせる授業」についての 反論も多くあった。2004 年に、日本初等理科 教育研究会全国大会埼玉大会で鏑木が中心と なって提案した「先行学習」については、そ の後の「初等理科教育」誌で矢野らとの誌上 討論に発展し、話題の中心となった。

教育方法における受容的アプローチと発見的アプローチの

 比較に関する考察

―小学校理科指導における選択の視点―

沼倉 徹

A consideration on comparison between the receptive approach and heuristic approach in teaching methods —The point of view of choosing an elementary school science teaching from the two approaches—

Toru NUMAKURA

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 ここでは、具体的な試案につなげるために、 受容的アプローチとして「教えて考えさせる 授業」を、発見的アプローチとして小学校理 科の従来の発見的問題解決型学習を取り上げ、 論考を進めたい。なお、ここで「発見的」と 表現しているのは「ヒューリステック」の訳 語として用いていることを断っておく。  従来の問題解決を大切にしている教員から は、「教えて考えさせる授業」や「先行学習」 は知識偏重ではないか、初めに答えを教えて しまっては思考力が育たないのではないか、 もしくは自然から直接学ばなくなり、真の問 題解決にならないのではないか等々の批判が ある。「教えて考えさせる授業」や「先行学習」 側からは、従来の問題解決的な学習は子ども に困難すぎる発見を強いており、結局、中下 位の子どもは理解不十分になっているのでは ないか、もしくは、教科書を見れば答えがわ かるような問題では真の問題解決にならない のに、そうした学習を問題解決と呼ばないで ほしいとの批判が出されている。十数年たっ た現在、論争に決着がついていないのはもち ろん、積極的に互いの理論の改善に向けて論 争を続けようとする試みも残念ながら聞こえ てこない。 2 問題の所在と研究の目的  互いの批判がかみ合わないまま推移してい るのは理由がある。市川は臨床心理学と学習 相談活動の経験から「教えて考えさせる授業」 が習得に向いていることを主張するが、長年 の実践を積み重ねてきた日本初等理科教育研 究会のリーダーたちはそれに「違和感」を主 張している。違和感の根拠はそれぞれだが、 後者は問題把握の過程に問題解決の重点があ ると考えているのに対し、市川らは科学的知 識の習得がまず大切で、問題発見を含む問題 把握の能力を育てるには教科全体の2~3割 を探究学習で行えばよいと主張している4)  2004 年の「初等理科教育」の誌上討論での 平松の主張「予習が良い悪いといった議論で はなく、その実践によって子どもがどう変容し たのかをこそ議論すべきだ5)」という主張には 筆者も全く同感である。市川の主張するように 「習得と探求のバランス」が7~8割対2~3 割でよいのか、初等理科研究会のリーダーた ちのように可能な学習はすべて問題発見や発 見的な仮説設定を重視すべきか、ということ に対する検証は、子どもの変容を少なくとも 一年単位で見ていかなくてはならないために、 実践的な検証が難しくなっている。実践的な 検証なしで、互いに説得力を欠いたままであ ることが議論の空転につながっている。  こうした状況での最も大きな問題は、振り 子のように受容型のみになったり、従来の発 見型のみになったりすることであり、全体が 一方向に振れるときは根拠となる基本の考え 方が無視され、形だけ真似をしてよしとする 傾向が表れてくることである。これは、日本 の教員が流されやすいということではなくて、 学校現場での教員の多忙と多忙感が十分な教 育研究・研修を阻害していることと無関係で はないと思われる。市川や鏑木も提案時に「バ ランスが重要」だと繰り返し主張しているの は、こうした懸念を持っているからではない かと思われる。

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 筆者自身は従来の発見的問題解決型学習を 中心に実践をしてきており、その経験を踏ま えたうえで本論を進めているが、筆者も自然 事象を繰り返し見直す中で、ほとんどの子ど もが無理なく仮説を設定し、決まりを「発見」 していくことができた問題解決の事例を数多 く経験してきた。また、自然事象から直接、 これまでの見方では説明できない問題を発見 し、何とか新しい説明を作り上げ、吟味し合 って仮説設定を行うという過程、いわゆる問 題把握能力の育成に関しては従来の発見的問 題解決型に優位性があると考えている。  一方、小学校理科学習の内容には「発見さ せるべきこと」だけではなく、「教えるべきこ と」も多いと考えている。それは実験器具の 扱い方や科学的用語など誰でも「教えるべき」 であることに同意する内容だけではなく、「ヒ トの内臓の働き」「星座」「昆虫の体のつくり 共通点」「メダカの雌雄の見分け方」など、小 学生には「発見」させることが無理だったり 困難だったりする内容も少なくないからであ る。そうした学習内容では「教えて考えさせ る授業」のほうに優位性があると考えている。  学習内容は学習指導要領で大綱的に示され るが、具体的な教育方法は教材研究と目の前 の児童理解に努力している現場の教員自身が 創造的に工夫していくものであって、そのた めに教員の研修は義務とも権利ともなってい るはずである。今回の受容的アプローチか発 見的アプローチかという内容も、教員一人一 人が自主的にそれぞれの方法を学び、選択し、 実施・評価・改善するべきである。  本研究の目的は、学校現場の教員が、両ア プローチそれぞれの優位性と問題点、特徴等 を考慮し、自学級の児童の実態と学習内容に よって、合う方法を選択するための視点とし て試案を提示することにある。   3 小学校理科における「教えて考えさせる授 業」と従来の発見型問題解決的学習の比較 (1)「教えて考えさせる授業」について  「教えて考えさせる授業」では次のような指 導過程を提案している。 ①教える段階   ・(予習):教科書を通読し、わからないところ に付箋を貼るなどをする。 ・教師から説明(対話的な説明と演示実験を含 む)する。 ②考えさせる段階 ・理解確認課題:グループで実験して確かめる。 ・理解深化課題:教科書にはない挑戦的な課題 にグループで取り組む。 ・自己評価:「わかったこと」「わからないこと」 を表現する。  具体的には、次のように表現できる。 <授業例>6年理科「てこ」 ・(予習):家で予習して大事なところをノート に書いてくる。 ・教師からの説明:「重さ×支点からの距離」 が等しい時、てこは釣り合うことを説明・演示。 ・理解確認課題:てこ実験器で教師の説明内容 を実験し確かめる。(ここまで 15 分) ・ 理 解 深 化 課 題:「 支 点 の 両 脇 に、 そ れ ぞ れ 2 つ以上のおもりが下がっている場合は、         どのような決まりで釣り合うか」という課題 にグループで取り組む。グループで話し合い、

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試行錯誤も含めて実験を繰り返し、決まりを 発見する。児童は「重りごとに、『重さ×支点 からの距離』を求めて足せばよい。それが等 しければ釣り合う」ことを発見する。 ・自己評価:「わかったこと」「わからないこと」 を表現する。(以上 45 分) (市川伸一「『教えて考えさせる授業』の挑戦」を 基に筆者が作成) (2)従来の発見型問題解決的学習 ・問題発見:自然事象と出会い、矛盾を意識し たり、疑問を持ったりする。 ・問題把握:発見した問題を基にして、解決方 法につながる具体的・本質的問題に変換する。 ・仮説設定:模倣、類推、アブダクション(説 明は後述)、帰納及び演繹等によって仮説を吟 味・設定する。 ・仮説検証:実験・観察を計画的に実施する。 ・検証結果の吟味:結果を記述・処理して仮説 と照合・吟味する。 ・一般化:結論を単純化し、近接の部類に適用 し、一般化を図るとともに、生活の場で実践 する。 (赤松弥男「自然認識における能力の分類」 を基に筆者が作成) <授業例>4年理科「水・氷・水蒸気」 ①問題発見:フラスコに水を入れ熱し続けな がら観察し、気づいた変化を話し合う。 ・湯気が出た。 ・フラスコの内側に水滴がついた。 ・泡が出た。 ・水の量が減った。 ⇒それぞれが関係ありそうだけどよくわから ない。減った水はどこに行ったのかな? ②問題把握:変化したこと同士で関係があり そうなものを話し合う。 ・水が減ったことと湯気が出ていったことが関 係ありそうだ。 ・湯気は水の変化したものではないか。 ・湯気に下敷きを当てたら水滴がついた。 ・湯気が減った分の水に戻るかどうか確かめたい。 ③仮説設定:出た湯気を集めて水に戻ったら 重さを量ればいいのではないか。もし、水が 減った分と同じ重さになったら水が湯気に変 わったのだといえる。もし減った分の量にな らなかったら残りの分はどこにいったのか、 改めて考えよう。 ④仮説検証:フラスコの口に管をつけて別の フラスコに湯気を集め、水に戻ったところで 重さを量る。 ⑤検証結果の吟味:減った分の水と同じ重さ になった。やっぱり、水は湯気に姿を変えた だけだ。消えてはいない。 ⑥次の問題発見:でもよく見ると湯気はフラ スコの口から出ていて、水面から出ているわ けではないようだ。どうしてかな。水面とフ ラスコの口の間では湯気が透明になるのかな? (以上 45 分)*一般化は単元後半に行う。  (筆者の実践と参観した授業から作成) (3)共通点・差異点とそれぞれの優位性  ①共通点・差異点について  「教えて考えさせる授業」も従来の問題解決 型の授業も、両方とも問題解決であるといっ ており、「自然を読み解くよろこび」「知る喜び」 も共通である。仮説検証過程からはどちらも 演繹的な過程であり、違いがあるのは受容的 に教えてから課題を提示する形か、自然事象

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からの直接的な問題発見かということである。  そのあとの仮説設定のための発見的な推論 は「内容」は違うが、両方にある。  「教えて考えさせる授業」の理解深化課題で 設定する仮説は、一見、学んだ法則を問題場 面にどのように適用すれば解決につながるの かという仮説に見えるが、前述の6学年「て このつり合い」の授業例で示したように、単 純な適用では解決できない問題なので、ここ で子どもたちが出している「左右の腕に2つ 以上おもりをつるしたときに、それぞれで『重 さ×支点からの距離』の掛け算をして得た値 を足してはどうか」という仮説は、明らかに 発見的な仮説である。したがって「教えて考 えさせる授業」も発見的な仮説設定をしてい るのであって、演繹的な仮説設定で進めてい るのではないことがわかる。  一方、この発見的な推論の「内容」につい ては違いがある。「教えて考えさせる授業」で はすでに基本となる考え方があって、その上 でその考え方を新しい場面にどのように応用 するかが課題であり、応用の仕方が発見的な のである。しかし、従来の発見的な問題解決 では、これまでの考え方では説明のつかない 事象に対して、これまでの知識や考え方を組 み替えたり、関係づけをし直したりしてより 妥当な、新しい説明を発見的に作り出す「ア ブダクション」と呼ばれる推論が必要となる。 ここでいうアブダクションとは、「ある意外な 事実や変則性の観察から出発して、その事実 や変則性がなぜ起こったかについて説明を与 える『説明仮説』(explanatory hypothesis)を 形成する思惟または推論6)」のことであり、 創造的発見的な推論と、推論した仮説の熟考 吟味のことをいう。したがって、応用での発 見とはレベルを異にしており、それゆえ、子 どもにとって困難性も高い。  ②「教えて考えさせる授業」の優位性  短時間で効率的に知識を理解させることが でき、さらに、理解深化課題で構造化された 知識にしやすいという優位性がある。従来の 発見的問題解決型学習の場合、仮説設定まで に時間がかかり、発展的な問題に十分な時間 をかけられないことが多い。したがって、理 解の不十分な子どもには構造化された知識と して成立しきれないことがある。また、従来 の発見的問題解決型でも「教えるべきことは 教える」としているが、「教える」指導法開発 は軽視されがちである。  また、「教えて考えさせる授業」は必ず自己 評価の時間を設定しているが、これもメタ認 知能力を育む上で重要な学習活動だといえる。  ③従来の発見的問題解決型学習の優位性  自然の事象から直接問題を発見する能力と 態度を育むのに優位性があるといえよう。「教 えて考えさせる授業」の理解深化課題はあく まで教師が与えた課題であり、子どもが発見 した問題ではない。しかし、自然の事象の中 に違和感や疑問を感じ、それを解決すべき問 題にまで高めていくことは重要な学習経験で ある。自然の仕組みの巧みさ、素晴らしさに 驚嘆する感性はどちらの指導方法でも育つと 思われるが、自然事象から直接問題を発見し ていく時には「きれい・すごい・大事そう・ あれ?・不思議な感じ・変だぞ・なんだか気 になる…」などのプリミティブな感性が主と

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して使われることになる。自然からの直接の 問題発見はこうした感性を価値付け、いっそ う豊かにしていく活動だと言うことができる。 この過程はレイチェル・カーソンの「センス・ オブ・ワンダー」や、戦前に「自然の観察」 を著した岡源次郎の考え方と深くかかわる内 容であり、より豊かな自然認識を身につけさ せていく上で欠かせない内容でもある。  また、自然事象から直接問題発見をした場 合、その問題への興味・関心や、解決に対す る意欲を強め、発見的・創造的な思考を一層 活性化させる。このことは、脳科学の成果か らも言えることだと考えられる7)  ④考察と試案の方向性  筆者の結論は、それぞれの方法が優位性を 発揮するのは学習内容によって違うというこ とである。  従来の発見的な問題解決型学習では仮説発 見ができない子どもが多いということが「教 えて考えさせる授業」からの中心的な批判点 である。しかし、すべての学習内容で仮説発 見が困難なわけではないし、日常生活でも我々 は発見的な仮説設定は行っている。  そこで、従来の発見的問題解決型の優位性 を生かして、ほとんどの子に無理なく発見的な 仮説設定を行わせることが可能な内容では、従 来の方法で実施する。そして、子どもが発見的 な仮説設定ができない、もしくは多くの子に困 難性がある内容では「教えて考えさせる授業」 の学習を実施するという使い分けをしたい。  では、どの学習内容がどちらの型に向くと いえるのか。「教えて考えさせる授業」に賛同 し、「先行学習」を提案している鏑木は「教え て考えさせる」展開が適切と判断する基準と 具体的な単元を次のように述べている。  「先行知識・経験が乏しい、知識の系統が明 確ではない、生活経験がない、あるいは偏り がある、素朴概念が強固である。実験観察が 厳しい…などだ。8)」さらに、「わかる授業の 指導案55」(2012 年鏑木)「わかる授業の指導 案80」(2013 年鏑木)で、少なくない数の単 元の指導案を提案している。その中には、「メ ダカのオス・メスの見分け方」のように、従 来の発見的問題解決型を実施してきた教員も 当然のように「教えて、活用させる」ことで 定着を図っていた内容が含まれている。これ を見ても、総論的にどちらの型が良いかの検 討ではなく、どういう学習内容だったらどち らの方法が良いのかという視点で検討するべ きだと考えられる。ここで紹介した鏑木提案 も一つの試案としての意味はあるが、現場で 実践している教員に直接調査を実施した上で 検討していくことがより有意義な試案を作成 できるものと考えた。 4 調査方法と内容  巻末資料の内容で質問紙を作成し、C市の 理科研究会の現職教員に調査を依頼した。依 頼に当たっては口頭で趣旨の説明も行った。 5 調査結果 (1)回答者について

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 表1にあるように回答者は 36 人、平均経験 年数は 13.9 年。経験年数 10 年以下の教員が 44%と半数に近い。現在の都市部の教員の構 成を比較的よく反映しているといってよい。  調査を理科の研究会に参加している現職教 員とし、回答は担任経験がある学年のみとし たのは、実際に理科を研究対象と意識して、 授業を経験していないと、発見的アプローチ で進められるか、受容的アプローチで進めた ほうが良いか判断しにくいと考えたことによ る。そこで、担任経験も合わせて分類したと こ ろ、 表 2 の よ う に 各 学年の担任経験者が 30 人~ 33 人で、どの学年 も 30 人を超えている。 (2)全体傾向  調査内容は、それぞれの学習内容を ①発見的に進めるべきか、教えて(受容的に) 進めるべきか ②発見的に進めることが易か難か ③ほとんどの子に発見的に問題解決させるこ とができた授業経験があるか という内容で、①②を5段階で、③を経験の 有無で回答してもらったものである。     表3は全体の傾向 を示したものである が、①②は「3:ど ちらともいえない」よりも大きいか少ないか で判断する表としている。①の項目でいえば、 1が「発見させる」で5が「教える」②は 1 が「易」 で5が「難」、どちらも3が「どちらともいえ ない」である。③は経験有りの割合をそのま ま示してある。  図1は全体の傾向をわかりやすくするため に「発見」と「受容」どちらに傾いているか を示したものである。ここでは③の数値を、 0%を「5」、100%を「1」として①や②と 同様の 5 段階数値に換算して示した。  教員は発見的に授業を進めたいと考えてい るが、それは簡単ではない課題であり、実際 に学級のほとんどの子に発見的に問題解決さ せられた授業経験は 40%に満たない。 (3)教員の経験年数別傾向  表 4 の内容を図 2 にわかりやすく示した。   ①の、発見か教えるかということについて はほとんど差がないが、②の易か難かという ことでは差が広がっている。11 年以上の経験 者のほうが困難さを理解しているというべき かもしれない。にもかかわらず、③の授業経 験では 11 年以上の経験者が約9%も多く発見 的に問題解決できている。経験を積むにつれ て発見の困難さも理解しつつ、工夫すること によって学級のほとんどの児童に発見的な問

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題解決をさせることができていると読み取る ことができよう。 (4)学年別傾向  表 5 で見ると「①発 見か教えるか」は、学 年が上がるにつれて教 えるべきだという回答 が増えている。しかし、 最も「教えるべき」が 多い 6 学年であっても 「どちらともいえない」 段階に達しておらず、 全体としては発見的に 問題解決を進めるべき だと考えている教員が 多いといえよう。  「②発見が易か難か」も、学年が上がるにつ れて①と同様の傾向を示すが、①よりさらに 受容型のポイントが多くなっている。発見的 に問題解決を進めたいが、学年が上がるにつ れて、発見させることが難しい学習内容が増 えることは多くの教員が感じていることであ る。特に6学年は「3」を超えて「難」のほ うに傾いている。  「③発見させられた授業経験」でも、学年が 上がるにつれてほとんどの子に発見的に問題 解決をさせられた授業経験が減っている。  ①~③全体として、明らかに学年が上にな るにつれて。受容的アプローチが適切で、発 見的な問題解決が難しく、かつほとんどの子 に発見的に問題解決させることが困難になっ てきている学習内容が増えているといえよう。  教員は発見的に授業を進めたいと考えてい るが、学年が上がるにつれてそれが困難にな り、実際に学級のほとんどの子に発見的に問 題解決させられた授業経験も学年が上がるに つれて減少してきているというのが実態のよ うだ。 (5)領域別傾向   上記の内容を物理・化学・生物・地学の 4分野に分けてみると、表6のようになる。 生物と地学が圧倒的に受容的に進めるべきだ とする学習内容が多い。化学は6年生の内容 2つだけなので、統計的な検討にはふさわし くないので、ここでは論及しない。 (6)学年と領域の両側面からの傾向  表7で明らかなように、全学年の生物分野 と4学年、6学年の地学分野において発見が 困難になっている。3学年の地学分野につい ては、むしろ、発見的アプローチに大きく傾 いている。 (7)個別の学習内容での結果  発見が困難で、受容的に進めたほうが良い

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と思われる学習内容(①~③平均で4ポイン ト以上)を抽出したところ、次の表8のよう に7項目があり、全体の 13.8%となった。  ほとんどの内容は、6学年の人体と5学年 の母体内の様子である。これらは少し考えた だけでも、発見的な問題解決に不向きな学習 内容であることがわかる。また、4学年の天 気も、大気の中での現象は気圧と断熱膨張の 問題があり、子どもだけでは発見がむずかし い。  逆に、発見させやすいと思われる学習内容 (①~③の平均で2ポイント以下)学習内容 を表9に挙げた。51 項目中 10 項目であり、 19.7%になる。やはり、物理領域が圧倒的に 多く、8項目を占めている。しかし、3学年の 内容が5項目で6学年の内容は一つも入って いない。学年が上がると発見させにくい内容が 増えてくるということがここでも言えよう。

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6 調査結果のまとめと考察 (1)調査結果のまとめ  調査結果から、次のようにまとめられる。 ・教員は全体に発見的アプローチを優先しよう とする傾向にあるが、発見が困難な学習内容 が少なくないことを意識している。 ・教員の経験年数が増えると、発見的な問題解 決が困難な学習内容をより強く意識するよう になる一方、そうした学習内容でも、工夫し て発見的な授業をより多く実現してきている。 ・学年が上がるにつれて発見が難しくなる学 習内容が増える。また、A分野(生物・地球) に発見的に進めることが難しい学習内容が多 い。 ・学年や領域よりも、個別の学習内容の特性と して発見が困難な内容がある。(人体関連等) (2)考察  発見が困難な学習内容、ひいては「教えて 考えさせる授業」に向く内容は、学習指導要 領のA分野(生命・地球)の内、繰り返しの 観察が困難な内容であったり、知識として教 えるべき内容が多かったりする学習内容だと いえる。繰り返して観察することが可能な内 容であれば、共変関係にも目が向きやすく、 発見的に仮説設定できる可能性も高くなるが、 何度も繰り返しての観察が困難な内容では、 発見的な仮説設定がしにくいといえよう。特 に、「人体」と「母体内の様子」は観察に困難 が多く、発見的な問題解決がしにくい学習内 容である。  さらに、平均のポイントが表8と9の中間 ではあったが、発見的に問題解決させること ができにくいと回答(発見させられた授業経 験有りの割合が 20%未満= 5 段階換算 4.21 ポ イント以上)があった学習内容が、下記表 10 の7項目である。  この7項目がなかなか発見的な問題解決に つながっていないのは次のような理由ではな いかと考えられる。 ・6年「生物と環境」では、説明と話し合いで 終わってしまうことが多い。 ・5年「動物の誕生」のメダカの雌雄の違いに ついても発見が無理なわけではないが、主要 な内容ではなく、教えるほうがよいと言わざ るを得ない。 ・4年「天気の様子」では、常温での気化につ いては、なかなか沸騰した時の気化と結びつ かない。

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・6年「土地のつくりと変化」もフィールドワー ク抜きでは時間的空間的スケール感を感じさ せること自体困難だし、地層が火山灰ででき ていることも難しい。 ・5年「植物の発芽、成長、結実」については、 そもそも柱頭に花粉がつくのに子房が膨らむ ことの不思議さに児童が戸惑う。ある程度教 えないと理解にたどり着かない。 ・4年「人の体のつくりと運動」も自分の体を 触ることはできるが、筋肉が骨にどのように ついているかということなどは、発見が困難 である。 ・3年「昆虫と植物」の完全変態と不完全変態 も8歳の子どもに発見させるのは困難である。 (3)全体のまとめと選択の視点  これまでに述べたように、「教えて考えさせ る授業」も理解深化課題では発見的な仮説設 定も行っているし、従来の問題解決型の授業 でも教えるべきところは教えてきている。ま た、それぞれの優位点もある。それらを理解 した上で、どちらのアプローチを行うか選択 するための視点として、以下の5点を提案し たい。 ①学年が上がるにつれて、発見させることが 困難な学習内容が増える。しかし、発達段階 で発見させることが困難になっていくわけで はないので、学習内容で判断するべきだと考 える。 ②生物、地学領域で発見させることが困難な 学習内容が多い。特に、「人体」「ヒトの誕生」 「天気」は発見的に進めることに多くの教員が 難しさを感じており、受容的に進めることを 優先的に検討するべきだと考える。 ③物理領域の学習内容は、比較的発見的な問 題解決ができやすい。例外はあるが、系統性 を考慮しつつ発見的に進めることを検討する べきだと考える。 ④個別の学習内容で判断していくことが最も 重要だと思われる。その資料として表8,9, 10 を参考にしてほしい。 ⑤表8,9,10 に挙げなかった「発見か受容か 意見の分かれる学習内容」を表 11 として載せ てある。これらについては、どちらが良いか は今後の課題とする。  以上が今回の調査から導き出されたまとめ であり、両アプローチの選択の視点であるが、 ⑤の内容については筆者の経験と考えをいく つか記しておきたい。 ・3年「昆虫と植物」の「頭・胸・腹に分かれる」 ことや「胸から6本の足が出ている」ことも、 いくら多くの昆虫を観察させても、子どもか ら共通点として出てくることはなかった。(筆 者の経験から) ・4年「月と星の動き」についても星座の並び や名前は当然教えるべきことだと考える。 ・6年「月と太陽」では、月の満ち欠けの理由 を観察から発見させようとすると、よほど天 候に恵まれない限り、2~3か月間の長期観 察を要する。また、月と太陽との位置関係に ついて調べようとする視点は、子どもからは 出てきにくい。  B分野(物質・エネルギー)の学習内容の うち、子どもの発達段階では仮説発見が困難 だと思われる内容もある。 ・6年「電気の利用」での「電気は、つくりだ したり蓄えたりすることができること」は電

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磁誘導を持ち込まないとすれば、手回し発電 機を教えなくてはならないし、コンデンサで の蓄電は発見しようがないのではないだろう か。 ・6年「てこの規則性」では、左右の腕が釣り 合うときの決まりを、「支点からの距離×重さ」 という乗法で表せることについては、発見が 困難で、すでに教科書等で知っている児童に リードされることが多い。体感から導入する ことは良しとして、数式で表す段階は教える ことも含めて再検討が必要なのではないだろ うか。 ・6学年「水溶液の性質」の酸、アルカリなど は中和を扱わない以上、意味を教えることも 考えさせることも難しいと言わざるを得ない。 アルミが塩酸と反応して塩化アルミになる反

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応も発見はかなり困難だと思われる。  どちらにしろ、冒頭で紹介した平松の「予 習が良い悪いといった議論ではなく、その実 践によって子どもがどう変容したのかをこそ 議論すべきだ」という姿勢こそ現場教員が大 切にするべきことであり、その意味で授業に 学び、子どもに学ぶことこそが最良の研究・ 研修だと考える。本論がその実践の資料とな ればこれに越した喜びはない。 7 課題  本来の次の課題は、もちろんここで提案さ れた学習内容をそれぞれの学級で「教えて考 えさせる授業」が良いのか、従来の発見的な 問題解決型の授業が良いのか試行してみるこ とである。しかし、それ以外にも実践で両方 の比較をしていくときには、さらに次の内容 が課題としてあがってくる。 (1)発見的な問題解決で進めた時の仮説設定 が困難な時、困難だからすぐ受容的なアプロ ーチがいいといってよいのかどうかという問 題も残る。受容的な方法を取らなくても、事 前に学習した枠組みで新しい内容を見ると仮 説の発見が容易になることもあるからである。  どのような視点、枠組みを先行経験として 持つ必要があるのか検討することを上記の試 行と並行して考えなければならない。 (2)小学校理科の教材配列をより系統立てる ように組みなおす検討を進めることである。  発見的に進められないのは、系統性が不十 分であることによる場合も少なくない。特に、 物理領域で発見が困難な内容は、系統性を再 検討する必要があるのではないだろうか。 (3)「教えて考えさせる授業」の良い点に学び、 知識の一般化を図る学習をより充実させる必 要があろう。個々の子どもが新しい知識をそ れまでの知識体系に組み込む作業は一般化の 段階を抜きには実現できないと思われるから である。「教えて考えさせる授業」は理解深化 課題でその構造化を図っている。また、メタ 認知を育てる工夫もここから学ぶべきことだ と考える。 (4)「教えて考えさせる授業」を実践してい く中では、自然事象からの直接の問題発見の 経験をどのように補償していくかを検討しな ければならない。 (5)受容的アプローチとして、今回は「教え て考えさせる授業」を取り上げたが、「知識伝 達・事例化モデル」の授業はそれと大きな違 いがある。科学の枠組みそのものを抽出し、 それ自体を「教える」ことから始めるという 立場だからである。この方法との比較・検討 は容易ではない。  本論文は、受容か発見か、もしくは問題解 決とは何かという認知心理学上の議論ではな く、あくまでも学校現場の感覚を大切にし、 実践的な内容にしていくことをねらいとして 進めてきた。論文の意図を組んで、快く調査 に協力していただいた理科研究会の先生方に 心から感謝する。   註・引用文献 1)正確に初めて提案したのはもっと前にな ると思われるが、本や論文として確認できる

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ものが 2001 ~ 2004 年頃に数多く出された。「教 えて考えさせる授業」市川伸一 2004 年「先行 学習」鏑木良夫 2003 年「知識伝達・事例化モ デル」進藤公夫・日高晃昭 2001 年「有意味受 容学習」川上昭吾 2003 年「理論依存型授業」 池田幸夫 2004 年など認知心理学者を中心に受 容型の教育方法が提案された。 2)2010 日 本 科 学 教 育 学 会 研 究 報 告Vol.24 No.5「知識伝達‐事例化モデル」の 10 年(Ⅲ) 進藤、石田、今林 3)市川伸一「『教えて考えさせる授業』の挑戦」 2013 年 4)同上 5)初等理科教育 2005 年 7 月号「先行学習の 問題点」平松不二夫 6)「アブダクション 仮説と発見の論理」米 盛裕二 2007 年 7)北鹿度の論説によれば、外界からの情報 はまず、扁桃体の『価値の情動経路』に入力 され、情報に価値があるかどうかを瞬時に大 雑把に判断され、そこで価値があると判断さ れると、大脳皮質の認知系の活性を高める活 性化物質が放出される。また、大脳新皮質の『感 覚認知経路』へ入力された情報は膨大な記憶 庫の中から必要とする情報を『価値の情動経 路』のインデックス効果により、必要な情報 を素早く検索するとのことである。さらに、北 鹿度は、この「『価値の情動経路』による判断 が大脳新皮質の『感覚認知経路』の判断に先 立って行われることが分かった。」とも述べて いる。「初等理科教育」2004 年 8 月号「『脳の 情報処理』を生かす問題解決を」北鹿渡庸子 8)「具体的な単元例は以下の通り。3 年『光』 『月と太陽』、4 年『乾電池のつなぎ方』、5 年『物 の溶け方』『左右のつり合い』、6 年『人の体』『水 溶液』『電流の働き』などである。」「初等理科 教育」2006 年 11 月号「教えて考えさせる授業 と問題解決」鏑木良夫

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参照

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