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受け持ち患者とのコミュニケーションにおける看護学生の自己評価 -老年看護学実習でのアンケート調査結果より-

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受け持ち患者とのコミュニケーションにおける看護学生の自己評価

-老年看護学実習でのアンケート調査結果より-

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高橋 寿奈・瀬山 由美子

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現在の「ゆとり世代」と一般的にいわれる教育を受けた年代の看護学生は、核家族化、IT化がすすんだ社会の中 で育ち、異世代や実際の対面式の交流が少ない世代であるといえる。この「ゆとり世代」としての教育を受けてき た看護学生に、臨地実習での受け持ち患者とのコミュニケーション時に「コミュニケーションをとる時に気をつけ ていたこと」と、「コミュニケーション中に受け持ち患者が不快だと感じていると看護学生自身が感じたこと」の 調査を行った。その結果、その世代に特徴的な自己評価の高さと自己肯定感の低さが示された。 これより、看護学生のコミュニケーションにおける受け持ち患者と関わりについて、「ゆとり世代」の学生の特 徴に合わせ、個々の経験が増えるように「実践」する機会を増やしながら自信をもたせる指導方法を検討していく 必要がある。また、異世代との交流の機会を「実践の場」として増やせるようにすることも必要であり、それらを 課題とした。 キーワード:自己評価 コミュニケーション 看護教育 ゆとり世代

Self-assessment communication Nursingeducation Yutorigeneration

Ⅰ.序論

現在の大学生は、核家族化の中で育ち、異世代とのコミュニケーションをとることが大変少なくなっている世代 である。その反面、スマートフォンやパソコンなどのIT機器が幼少期から身近にあり、IT機器に慣れ親しんでいる ともいえる。対面式でコミュニケーションをとることがなくても、いわゆるラインやツイッターなどのSNSのコミュ ニティで声なき会話をしているという現状がある。そのうえ、インスタグラムなどの写真投稿で自己表現するとい う機会も増えている1)。しかし作田らは、“言語活動を充実させ、互いに認め合うことができ「自分らしさ」を構築 することができるコミュニケーション行為のあり方がよりよいコミュニケーションである。そして、納得のいくコ ミュニケーションのあり方により自分自身の思考にも自信がもてていく”としている2) また現在の看護学生はいわゆる「ゆとり世代」と一般的にひとくくりにされている世代であり、1977~2008年版 の学習指導要領での教育課程を受けている。学問中心の詰め込み教育の反省から、教科の統合や調べ学習、完全週

(2)

休2日制の導入などが実施された中で教育を受け、「個性」と一人一人の経験から培ってきた価値観を大切にして いこうとした年代でもある3)。ゆとり教育は、その教育方法について賛否両論ある中で、負の面がクローズアップ されがちになっているが、学生の特徴で好ましい点として、「素直でまじめ」「教えたことはまじめに取り組むので 指導次第で成長する」「チームワークがよい」というものがある。反対に懸念される点として、「おとなしい、積極 性や創造性が乏しい」「打たれ弱い」「ひとつのことに没頭しない」ということがあげられている4) これから専門職として看護職者になるには、IT機器を通しての対象ではなく目の前に対象者とコミュニケーショ ンをとることができ、なおかつ対象の反応を正確に判断する必要がある。実際の経験値が少ない看護学生が、実習 という慣れない環境やそれまで接することの少なかった異世代との交流の中で、その必要性を学び、専門職者とし てその能力獲得のために努力していかなければならない。 そこで看護学生が看護学実習で実際に担当した受け持ち患者に対してのコミュニケーションの成果の評価と受け 持ち患者の反応をどうとらえたのか把握する必要があると考え、今回調査を行った。

Ⅱ.研究の目的と方法

調査の目的:老年看護学実習中に、実際に看護学生が対象患者と「コミュニケーションをとる時に気をつけていた 内容」と、気をつけているにもかかわらず、「受け持ち患者が不快と感じている、と感じた内容について」調査す る。そのことにより、看護学生が受け持ち患者との関わりで感じていることを考察し、今後の指導について方向性 と課題を検討する。 調査実施時期:平成27年4月一斉実施 調査対象と方法:奈良県のA短期大学看護学部在学中の3年生対象。110名配布し、107名分回収した。(回収率 97.2%) 倫理的配慮:大阪教育大学の倫理審査を受け、平成28年4月に承認を得た。任意での記入であること、個人につい て特定されることはないこと、看護学の教育方法についての検討のための資料であることなどを説明し、提出を もって同意とした。 アンケート内容:看護学生の基本的な属性と、看護学生が、「コミュニケーション時に受け持ち患者に対して気を つけたこと」について、次の問1と2を設定した。 問1 臨地実習中に担当患者とコミュニケーションをとるときに気をつけたことについて 1)丁寧な言葉使いで話すようにした 2)聞こえやすいように大きな声で話すようにした 3)笑顔で話すようにした 4)目線の高さを相手に合わせ話すようにした 5)受け持ち患者の話を最後まで聞くようにした 6)受け持ち患者との会話の内容が広がるようにした 回答を ①よくできた ②まあできた ③あまりできなかった ④できなかった とし、そのうち最も近いものひ とつを選択してもらった。回答の「よくできた」から「できなかった」までを〔4〕から〔1〕へと素点化し、集 計した。

(3)

問2 あなたが臨地実習中の受け持ち患者と実際にコミュニケーションをとった時に、「受け持ち患者が不快だ」 と感じていると、あなた自身が感じたことについて 1)丁寧な言葉使いで話せなかったとき 2)声が大きすぎたとき 3)笑顔で話せなかったとき 4)目線の高さを相手に合わせられなかったとき 5)受け持ち患者の話を最後まで聞けなかったとき 回答を ①とても不快に感じていたと思う ②不快に感じていたと思う ③少し不快に感じていたと思う ④不快には感じていないと思う とし、その中から最も近いものを選択してもらった。 そしてその回答の「不快には感じていないと思う」から「とても不快に感じていたと思う」を〔4〕から〔1〕へ と素点化し、集計した。

Ⅲ.対象看護学生の特色

アンケート調査を行った看護学生は、全員女性で、看護系短期大学在学中の3年生110名である。年齢構成は、30 歳以上が4名、22歳以上29歳が5名で、それ以外は20~21歳であった。これらは、看護学生が高校卒業後すぐの進 学がほとんどであるということを示している。学生の社会人経験はアルバイト程度のものが多かった。 レディネスとして、学生は2年次終了までに、選択した一般教養科目と必修科目である看護科目に対して履修を 終了していることを条件に進級している。老年看護学実習前に基礎看護学実習を終えており、担当高齢者の看護過 程の展開を学習している。すべての臨地実習では、4から5名ごとにグループ編成され、それぞれ割り当てられた 施設に1から3グループ程度配置され実習する。基礎看護学実習Ⅰ.Ⅱでは、全員が一斉に実習しているが、グ ループごとに、割り当てられた医療施設の病院の病棟で実習することになっている。基礎看護学実習Ⅱでは、受け 持ち患者が学生ごとに1名ずつ決められ、受け持ち患者に学生が考えた看護を展開することになっている。

Ⅳ.調査結果

「コミュニケーション時に受け持ち患者に対して気をつけたこと」の該当人数と割合を表1に、「コミュニケー ション中に受け持ち患者が不快だと感じていると看護学生自身が感じたこと」の該当の看護学生人数は表2に示 す。

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 表1 「コミュニケーション時に受け持ち患者に対して気をつけたこと」の該当人数と割合

(4)

1)「コミュニケーション時に受け持ち患者に対して気をつけたこと」について、受け持ち患者とのコミュニケー ションの調査結果は図1に示す。 内容は、『丁寧な言葉使いで話した』は、「あまりできなかった」も含め「できなかった」としたものはいなかっ た。 『笑顔で話すようにした』という項目は、「あまりできなかった」が1.9%で、『対象の話を最後まで聞くようにし た』でも「あまりできなかった」は0.9%のみ、『聞こえやすいように大きな声で話した』でも、4.7%のみで、「でき なかった」としたものはなかった。 『対象との会話の内容を広がるように話した』という項目のみ、「あまりできなかった」の13.1%に加えて「でき なかった」は、1.9%があった。 これらのことから、看護学生が受け持ち患者とコミュニケーションをとるときには、ほとんどの看護学生は、「受 表2 「コミュニケーション中に受け持ち患者が不快だと感じていると 看護学生自身が感じたこと」の該当人数と割合

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図1 看護学生がコミュニケーション時に受け持ち患者に対して気をつけたこと

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け持ち患者が不快にならないように気をつけることができている」という結果となった。 2)「コミュニケーション中に受け持ち患者が不快だと感じていると看護学生自身が感じたこと」について 「コミュニケーション中に受け持ち患者が不快だと感じていると看護学生自身が感じたこと」について、調査した 結果は下記の図2に示す。 すべての項目において受け持ち患者が「不快に感じていた」と感じた看護学生を認めた。それらは、一番多いも ので『対象の話を最後まで聞かなったとき』が86.9%、一番少ないもので『声が大きすぎたとき』の64.5%だった。 これらの内容と看護学生が『受け持ち患者と言語的コミュニケーションで気をつけた内容』の調査結果と比較す ると、看護学生は、《受け持ち患者とコミュニケーションをとるときは様々なことに気をつけることはできている。 しかし、受け持ち患者の反応をみると不快に感じているようだ》としており、整合していないといえる。

Ⅴ.考察と今後の課題

今回の調査で看護学生は、受け持ち患者に対して、既習した内容などをもとに、注意しながら受け持ち患者とコ ミュニケーションをとることが出来たとしていた。しかしその反面、看護学生は、自分の行ったコミュニケ―ショ ンの方法では受け持ち患者は不快であると感じている、としており、その乖離は大きかった。これは、受け持ち患 者とのコミュニケーション時には、既習内容を忠実に実践しようとした看護学生の真面目さが見て取れる。そして、 自分自身に対する評価として、できた時は評価してほしいという承認欲求の充足に対する期待も感じる事ができる。 異世代との交流を含む対人関係の少なさから、はっきりとした承認の言葉や笑顔などがない限り、どちらともとれ る反応は「不快に感じてしまっている」とし、自信をもって自己肯定できないのではないかとも考えられる。これ らのことから、受け持ち患者とのコミュニケーションは、納得のいくコミュニケーションのあり方であったとはい

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図2 コミュニケーション中に受け持ち患者が不快だと感じている、と学生自身が感じたこと

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いがたい。特に、「積極性や創造性が乏しい」とされる世代の看護学生にとって、どんな答えが返ってくるかわか らないコミュニケーションの場面で、創意工夫をしながらコミュニケーションを取り、よかったのかどうかを自己 考察するだけでも困難が伴うであろう。 看護学生は自分の行動をリフレクションし、フィードバックすることで自分の行動への気づきを学びとする。こ れは行動を振り返ることでよりよい看護技術を習得する学習方法であるが、学んだことを具体的に〈どのタイミン グ〉で〈どのような行動〉として実践してみるか、また行動するタイミングにおいて、〈学んだ内容〉を〈思い出 す〉ための工夫をどのようにするかを具体的に考える事をしにくくなっているからではないか、と考えられる。そ のため、具体的な実践内容がわからないまま行動を起こすと、自信がもてず自己肯定感を低下させる恐れがあり、 さらに学習意欲や目的意識の低下につながる恐れがあるのではないかと考えた。 これらのことから、この世代の看護学生の特徴である、指導されたことは「真面目に取り組むような素直さ」を 活かして、コミュニケーションをとるときの準備として、コミュニケーション対象の反応を見逃さないようにする ポイントや、対象の生活背景等を踏まえたコミュニケーションの方法、授業で既習したコミュニケーションスキル などを繰り返し練習させ、授業や演習等の実践の中で習得できるように支援していく必要がある。また、自己評価 だけでなく、他者評価としての第三者の評価が得られるような場面設定も行えるようにしていく必要があると考え る。出来ている内容と出来ていない内容それぞれを加味しながら、看護学生に期待していることを伝えていく工夫 が必要である。そして、学生がコミュニケーション時に意図しようとしたことを充分にくみ取りながら出来るよう に、学生の自信や成長に合わせて、学生と対話しながらの指導を行えるようにしていくことが大切であると考える。 それらを実践していく方法として、臨地実習以外の場面でも出来るだけ異世代の方と関わる機会を設け、ゲスト スピーカーとのセッションや地域活動、ボランティア等も十分に活用していけるようにしていきたいと考える。 参考文献:

1)http://www.tokyo-ad.or.jp 大学生意識調査プロジェクト(FUTURE2013) 公益社団法人東京広告協会結果報 告書「大学生と友人関係に関する意識調査」2012年 「SNS時代を生きる大学生の行動モデルに関する意識調 査」2015年 2)作田 澄泰・中山 芳一 コミュニケーション行為による自己肯定感向上に関する研究-キャリア教育の視点か らみた道徳授業実践を通じて-『岡山大学教師教育開発センター紀要』第2号(2012)pp.14-23 3)芝垣正光 教育課程(カリキュラム)削減によるゆとり教育とその影響 『環境経営研究所年報』 13(2014) pp.28-31. 4)三菱UFJリーサーチ&コンサルティング調べ2011年

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