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OSの最新動向

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Academic year: 2021

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第169回 月例発表会(2016年4月) 知的システムデザイン研究室

OS

の最新動向

本田 雄亮,山下 大輔

Yusuke HONDA

Daisuke YAMASHITA

1

はじめに

OSとは基本ソフトウェアとも呼ばれ,ハードウェアの 管理・制御を行う.OSが持つ最も重要な役割は「ハード ウェアの抽象化」であり,全てのハードウェア上で同じ基 本機能を提供する仕組みである.これにより,ハードウェ アとアプリケーションソフトの開発が容易になる. 現在,OSはパソコンやスマートフォン,タブレットな ど様々な端末に搭載されている.その中でも近年,特に注 目を集めているのがIoT向けOSである.IoT向けOSは 「スマートウォッチ」や「スマートホーム」など,IoTへ の関心の向上を背景に注目されている.GoogleやApple, Microsoftなどの大手IT企業もIoT向けOSの開発を発 表している.

2

IoT

向け

OS

2.1 IoT向けOSの概要 IoT向けOSとはIoT端末に組み込まれるOSである. 既に多くのIoT端末が存在しているが,それらの機能は各 社独自のシステムで開発されており,他社製品との互換性 は無い.今後,他社製品も巻き込む大きなネットワークを 構築するには,IoT対応端末開発と他社端末間通信の容易 化が必要である.これらの課題を解決するためにIoT向け OSの開発が進んでいる1)IoTOSを搭載するメリッ トは以下の3つである. 様々なハードウェアの基本機能を一様に実装 他社端末間通信の容易化 アプリケーションソフト開発の簡素化 IoT向けOSでは,ハードウェアに依存せずに,通信や 制御などの基本的かつ汎用的な機能を提供する.よって, IoT端末を開発する際,それら基本機能を実装したプログ ラムを作成する手間を省き,開発コスト削減に繋がる. IoTでは,複数の端末同士が通信を行い情報共有・制御 を行う.OSを搭載することで制御・通信機能の実装が可 能であり,規格を統一できる.すなわち,メーカが異なる ハードウェア同士でもスムーズな制御・通信が容易となる. アプリケーションソフト開発においても,OSの提供す る基本機能を利用することで開発工程を簡素化できる.さ らに,ハードウェアの差異にとらわれないソフトウェア開 発が可能である.家具や電化製品,自動車など多種多様な ハードウェアに搭載されるIoT向けOSでは,ハードウェ アに依存しない性質が重要である. 現在使われているIoT端末はOSを搭載しておらず, メーカ独自のシステムを開発している.よって,端末ごと に一から専用のソフトウェアを開発する必要があり,開発 コストが高くなる.さらに,端末によってシステムの仕様 に差異があるため,他社端末間での通信が容易ではなく, 専用のアプリケーションソフト開発が必要である.した がって,これら既存問題の解決が可能なIoT向けOSの 開発が進んでいる.OSとIoT端末の関係性をFig. 1に 示す. A 社 独自 システム OS OS OS OS A 社 独自 システム Fig.1 OSとIoT端末の関係性 2.2 IoT向けOSの課題と動向

IntelやMicrosoftなど大手企業は,今後IoT端末の数 は増加し続け,2020年には500億台を突破すると予想す る.しかし,IoT端末の中には,電池駆動の製品のように, 消費電力を抑えるために高機能な処理機能を搭載していな い端末も多い.よって,低機能な端末でも正常に動作する 軽量なIoT向けOSが必要である. 低性能端末向けの軽量なOSの実現に向けて,OSに搭 載する機能を限定する方法がある.例えば,GoogleのIoT 向けOS「Brillo」は,Android OSの端末管理や通信接続 の機能を抜き出したような構成である.カーネルや端末抽 象化機能,コネクティビティ機能など必要最小限の機能を 提供する.通信規格には,同社が開発している「Weave」 を採用している.「Weave」はBrillo端末だけでなく,ス マートフォンやパソコン,クラウドなどとの通信もサポー トしている.このように,GoogleはOSに搭載する機能 を限定することで軽量なIoT向けOSの開発を目指してい る2) 機能限定以外にもOSに搭載された各機能の軽量化とい うアプローチもある.

3

ID

ベース暗号方式

東京大学では,IoT向けの軽量なHTTPS通信の開発 に取り組み,実証に成功した.東京大学の発表では,現在 よく使われているRSA暗号方式を用いたHTTPSと比べ て,通信データ量は16 %,通信時間は22 %の削減に成功 13

(2)

している.この軽量版HTTPSは,IDベース暗号方式で 実現した. HTTPSはやり取りするメッセージを暗号化すること で,第三者による盗聴を防ぐ通信方法である.この暗号化 にIDベース暗号方式を用いる.この方式は公開鍵暗号方 式の一種で,公開鍵を受信者の個人識別子で作成できると いう特徴がある.公開鍵は送信メッセージの暗号化に用い る.現在主流のRSA暗号方式では,多く存在する公開鍵 の内,この鍵が自分のものであることを示す証明書が必要 である.しかし,IDベース暗号方式では送信者が受信者 のIDから公開鍵を作成するため,証明書を必要としない. 例として,IDに受信者のメールアドレスを使用する場合 を考える.送信者は受信者のメールアドレスと鍵生成セン タが公開しているパラメータで公開鍵を作成し,暗号化を 行う.公開鍵は受信者のメールアドレスから作成している ので証明書は不要である.このように,IDベース暗号方 式の採用は,鍵の証明書を不要として情報量の削減を実現 する3)IDベース暗号方式のイメージをFig. 2に示す. 送信者 受信者

ID

[email protected]

Alice

Bob

メッセージ 暗号化 ID 公開 パラメータ 発行センタ ID 秘密 秘密 復号 ① ② ③ ④ ⑤ 証明書 不要 ID Fig.2 IDベース暗号方式のイメージ 軽量版HTTPS通信は,低性能な端末で動作するだけで なく,安全性の向上にも繋がる.IoTでは全端末が通信を 行うため,通信機能の性能向上と共に,セキュリティ性能 の向上も必要である.したがって,軽量版HTTPS通信の 採用は,IoT向けOSの軽量化だけでなく,IoT端末間の 安全な通信を実現するためにも重要となる.

4

IoT

向け

OS

の活用例

IoTサービス提供会社OPTiMはIoT向けクラウドOS

「OPTiM CLOUD IoT OS」を開発した.このクラウド

OSに対応したアプリケーションソフトは,ハードウェア 上の仕様にとらわれずに各IoT端末を利用したサービス を実装できる.さらに,それらサービスはスマートフォン やパソコンなど様々な端末から使用可能である.アプリ ケーションソフトには,IoT端末の管理・制御や集められ たデータの分析,地理情報に結びつけてのデータ閲覧・分 析などがある.クラウド上のシステムのため,サーバやス トレージなどは拡張が自由であり,ハードウェア上の物理 的制約が無い.よって,IoTシステムが容易に実装・管理 でき,導入のきっかけになるOS提供サービスである. 今後,さらなる進展が期待されるIoT向けOSとして IoT向けの車載OSがある.トヨタや日産,Googleなど も開発に取り組んでおり,自動運転の実現に向けて大きく 期待されている.自動車にIoT向けOSが搭載されると, ハードウェアの仕様にとらわれないスムーズな通信が可能 となる.つまり,街中の防犯カメラや歩行者の持つスマー トフォン,自動車など他のIoT端末と情報を共有できる. 運転者による確認や車載センサでは,これまで確認できな かった情報を発見可能であり,死角情報の取得に役立つ. したがって,IoT向けOSを搭載することで,より安全な 自動運転が可能となる.IoT向けOS搭載車の通信イメー ジをFig. 3に示す. ! 歩行者用端末 レーダ カメラ レーザ レーダ 各種 ECU OS 歩車間通信 車車間通信 路車間通信 Fig.3 IoT向けOS搭載車の通信イメージ

5

今後の展望

IoT向けOSの開発は企業だけでなく,国家規模で進め られる.日本国内では2016年度内に「スマート工場」の 実証試験が始まる.IoTにより,製造現場の情報をデジタ ル化し,製造ラインの自動化や工場間での連携など行える 日本独自のOS開発を国のサポートのもとに進める. このように,国家主導でIoT向けOSの開発が進められ ることで,企業の関心もさらに高まり,より一層IoT向け OSの開発は加速する.OSに低性能端末でも動作する軽 量さが備われば,OSを搭載できる端末が増える.そのう え,「Brillo」や「OPTiM CLOUD IoT OS」では,既に対 応アプリケーションソフトの開発環境を提供している.し たがって,アプリケーションソフトの開発は容易かつ活発 になると予想される.今後,IoT端末・サービスの数は増 加し,新たなサービスの登場も期待できる.

参考文献

1) 野 田 勝: IoT 時 代 を 制 す る の は 誰 だ ? IoT プ ラ ッ ト フ ォ ー ム を 開 発 す る 巨 大 グ ロ ー バ ル 企 業 に せ ま る, http://o2o.abeja.asia/product/post-9890/

2) Google: Brillo と Weave に つ い て の ア ッ プ デ ー ト, http://googledevjp.blogspot.jp/2015/12/brillo-weave.html 3) レスアンヒウ,井手口哲夫,奥田隆史,田学軍: 高速道路に おける車々間通信システムへのIDベース暗号の適用とその 評価. 14

参照

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