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第 666 回健康教育講座
「推理力で難問を解決する皮膚の病気」〜かぶれの話〜
開催日 平成19年9月15日(土) 講 師 藤田保健衛生大学医学部皮膚科講座 教授 松永佳世子 1.「かぶれ」ってなに? かぶれは,医学用語では接触皮膚炎(せっしょくひふえん)と呼ばれる皮膚の病気です.この 病気は「外来性の物質が皮膚に接触して生じた皮膚の炎症」と定義されています.つまり,化粧 品や,金属のネックレス,漆などに含まれる成分が,皮膚に塗ったり,付けたり,偶然付いたり すると,皮膚の角層から化学物質が吸収されて,表皮の中に入っていきますが,これらの物質が 皮膚にとって有害な物質だとからだが判断したとき,これをからだの外に出してしまおうとする 反応です. 2.「かぶれ」はどうして起きるの? かぶれは,皮膚に入ってきた化学物質を有害と判断すると起こる反応と説明しましたが,から だが有害と判断したときに,皮膚で起こる反応にはいろいろなものがあります.酸や,アルカリ など,強い刺激物質が皮膚に付くと,これは皮膚の細胞を傷めて付いた部分は細胞が死んでしま い,痛みを伴う紅斑,水疱,びらんになります.刺激性接触皮膚炎と呼ばれますが,これは,有 害な物質がからだのなかに入るのを皮膚が犠牲になって身を守っている反応と考えられます. 普通の人では,このような刺激に対する反応を起こさない物質も,ある特定の人では,痒みや 紅斑(こうはん:赤み),丘疹(きゅうしん,ぶつぶつ),小水疱(しょうすいほう:ちいさなみ ずぶくれ)を起こすアレルギー反応がでます.アレルギー性接触皮膚炎と呼ばれます.例えば, 化粧品の香料でかぶれる人,治療で用いている塗り薬にかぶれる人など,本来は,安全に嫌がら ずに使えるはずのものが,皮膚には有害と判断されて,例え少量であっても皮膚のなかを水浸し にして,早く剥離して,含まれている有害な成分を外にはき出す反応です.有害と感じるのも, 優れた能力といえますし,感じない能力も,最近はやりの「鈍感力」ともいえます.これらの反 応を決めているのは,みなさん一人一人が個性として持っている組織適合抗原といわれる蛋白質 の構造です. このような反応は皮膚では Langerhans 細胞という,見張り役の細胞が化学物質を食べて,よ く咬んで味を確かめ,おかしな味がした場合は,親分であるT細胞がいる所属リンパ節に遊走し て,そこで,感作Tリンパ球を作ることが最初のきっかけになります.一度,感作リンパ球がで きると,今度,もう一度皮膚にその物質が付くと,一気に細胞が増え血液にのって,現場に到着 し,悪い物質を残らず,皮膚もろとも外へはき出す湿疹反応を起こします.その時は,痒みが強 く,汁が出る反応が起こります.2
このような反応に光が必要な場合があります.光毒性接触皮膚炎と呼ばれる反応は,オキソラ レンのような光増感作用のある物質が皮膚に付いたあとに長波長の紫外線が照射されると,赤く なり痛く腫れて水疱を作ったり色素沈着を起こしたりします.また,化学物質が蛋白質と結合し て完全な抗原になる反応が紫外線照射によって起こる場合は,光アレルギー性接触皮膚炎になり ます.最近よく使われている痛み止めのテープで,光アレルギー性接触皮膚炎がしばしば起こり ますが,これは,組織に残っているケトプロフェンに長波長の紫外線が当たり,活性化されてか ぶれの症状を起こすのが原因です. かぶれには,実は蕁麻疹もあります.暑い夏に汗をかくとヒリヒリして痒くなりますね.これ もある意味,非免疫性接触蕁麻疹といえます.ラテックス蛋白質や,カニ,イカのような,蛋白 質は特異IgE 抗体持った人ではアレルギー性接触蕁麻疹を起こします. 3.「かぶれ」の原因はどうやってみつけるの? これが,今回のテーマとなった「推理力で難問を解決する皮膚の病気」としたところですが, かぶれの原因を確定する(きちんと決める)のは,パッチテストという皮膚のアレルギー検査で す.アレルギー性蕁麻疹の場合はプリックテスト,スクラッチテストも行います. この講演ではパッチテストの実際についてお話する予定です.パッチテストはふつう背中にち ょうどよい濃度と基剤(ワセリンや水など)に薄めたアレルゲンを48時間閉鎖貼布して,72 時間後,1週間後に皮膚の反応を紅斑と丘疹あるいは浮腫,小水疱などから判定します. このかぶれを診断するのは,私たち医師ですが,実は,みなさんもよく見て,よく考え推理し ていくなら,かぶれであること,原因物質はなにかが,わかってくるはずです.かぶれは,原因 の物質が濃い濃度で付いたところに,湿疹は強くでます.原因物質の種類で,皮膚炎の形にある 程度特徴があります.また,かぶれは原因物質によって,かぶれる程度が違います.そして,原 因物質は,含まれている製品がありますから,品物についての知識が必要です.あとは皮膚を通 りやすい物質と通りにくい物質があり,皮膚バリア機能によっても,経皮吸収は異なります.こ こも,かぶれの原因を考えるとても大切なポイントです. 4.「かぶれ」やすい化学物質はなに? ① 金属:コバルト,ニッケル,クロム,水銀,金のかぶれが多いです. ② 植物:ウルシ,マンゴー,サクラソウ,キク,ニンニクなど. ③ 外用薬:非ステロイド外用薬,抗菌薬,抗真菌薬,基剤のラノリン,防腐剤など. ④ 化粧品:ヘアダイ,クリーム,美白剤,サンスクリーン,口紅などが多く,成分ではパラフ ェニレンジアミン,パラベン,保湿剤,香料,色素などがあります. ⑤ ゴム製品:天然ゴム製品の硬化剤によるもの,ラテックス蛋白質による蕁麻疹反応などが起 こります. ⑥ 樹脂:エポキシ樹脂は工場のかぶれでは頻度の高い物質です. ⑦ 日用品:最近では抗菌マットの重度のかぶれが話題を集めました. ・・実は,かぶれないものはないといいのです.まだまだあります・・3
5.あなたは「シャーロック・ホームズ」それとも「刑事コロンボ」?
もしかすると,あなたの治りにくい湿疹は思わぬ原因の「かぶれ」かも知れません.この難問 を解決すれば,完全に治せるのも「かぶれ」の痛快なところです.