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インクジェット法を用いて作製した有機透明導電膜の均一性の改善

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(1)

インクジェット法を用いて作製した有機透明導電膜の均一性の改善

今村

優希

a)

武田

和大

新田

敦司

An Improvement of Homogeneity for Organic Transparent Conductive Film

Prepared by Inkjet Printing

Yuki IMAMURA

†a)

, Kazuhiro TAKEDA

, and Atsushi NITTA

あらまし 近年,フレキシブルデバイスの研究が活発に行われている.これに伴って構成要素である透明導電 膜にもフレキシブル性が求められている.一般的に使用されているITO 透明導電膜は柔軟性に乏しい.そこで高 い柔軟性と導電性を有するPEDOT:PSS に着目した.著者らはインクジェットプリンタを用いて PEN 基板上 に塗布することでフレキシブルな透明導電膜を作製している.現在,インクジェット法で透明導電膜を作製する うえで膜表面の凝集状態及び均一性が課題となっており,これらが薄膜の特性に影響を及ぼすため改善が必要で ある.本研究では印刷間の熱処理及びインクの添加剤について検討した.結果として印刷間の熱処理を行わない ことで薄膜の凝集状態を抑制させ均一性を改善できた.また,インクにDMSO を添加することで PEDOT:PSS 薄膜の抵抗率が減少したので報告する. キーワード PEDOT:PSS,透明導電膜,フレキシブルデバイス,インクジェット法

1.

ま え が き

近年,フレキシブルデバイスに関する研究が活発に

行われている

[1]

[3]

.これに伴ってデバイスの構成

要素である透明導電膜にもフレキシブル性が求められ

ている.一般的に使用されている酸化インジウムスズ

(ITO: Indium Tin Oxide)

透明導電膜は希少金属を

含むことから資源の枯渇や価格の急激な変動が問題視

されている.更に

ITO

薄膜は曲げの力に弱くフレキ

シブルデバイスには向かない

[4]

.そこで,

ITO

の代

替材料として有機材料やカーボンナノチューブ

(CNT:

Carbon nanotube)

など様々な材料で研究が行われて

いる

[5]

[7]

.特に有機材料は有機

EL

や有機薄膜太陽

電池などにおいて実用性が認識されつつある

[8], [9]

有機エレクトロニクスは低温プロセスでの製造が可

能であり,印刷や塗布によって低コストでデバイスを

作製できる.印刷技術を用いたデバイスの製造技術は

「プリンテッドエレクトロニクス」と呼ばれている.現

在,薄膜の製造方法はスパッタ法や真空蒸着法等の真

鹿児島工業高等専門学校,霧島市

National Institute of Technology, Kagoshima College, 1460– 1 Shinkou, Hayato-cho, Kirishima-shi, 899–5193 Japan a) E-mail: [email protected]

空成膜装置を用いることが一般的である.しかし真空

装置を用いた製造方法は設備の初期投資が高く,材料・

エネルギーの消費量が多い.印刷装置を用いた製造方

法はこれらを低減することができる.

このような背景から本研究では,

ITO

の代替材料と

して

PEDOT:PSS[

ポリ

(3

4 –

エチレンジオキシチ

オフェン

)/

ポリ

(4 –

スチレンスルホン酸

)]

に着目し

た.またインクジェットプリンタを用いてプラスチッ

ク基板上に材料を塗布することでフレキシブルな透明

導電膜を作製している.しかしながら,インクジェッ

ト法を用いて有機透明導電膜を作製するうえで膜表面

の均一性や薄膜の特性向上が課題となっている

[10]

これら課題を解決し実用的な透明導電膜を作製できれ

ば,電極だけでなく配線を含めたフレキシブルデバイ

スの製造が印刷技術のみで実現できる.これまでは,

極性溶媒を塗布することで薄膜の均一性や導電性を改

善してきた

[11]

.しかし不純物を薄膜中から取り除く

ために行っていた熱処理が薄膜の凝集を促進させ,均

一性が低下していた.また,

PEDOT:PSS

インクの粘

性調節や安定した塗布の実現が必要であった.そこで,

本研究では熱処理工程の省略と

PEDOT:PSS

に添加

する溶媒について検討し,薄膜の均一性向上と特性改

善を目的とする.

(2)

2.

2. 1 PEDOT:PSS

と添加剤

PEDOT:PSS

には

Heraeus

社製の

CLEVIOS PH

500

を使用した.この

PEDOT:PSS

は優れた導電性

と,可視光領域での高い透過率を有する.また,機械

的柔軟性にも優れており注目されている導電性ポリ

マーである.図

1

PEDOT:PSS

の分子構造,表

1

PEDOT:PSS

の諸特性を示す.

PEDOT:PSS

は添加剤を加えることで薄膜の特性が

改善することが報告されている

[12], [13]

.例えば,エ

タノールを添加するとインクの表面張力が減少し基板

への濡れ性が向上する.また,エチレングリコールや

ジメチルスルホキシド

(DMSO: Dimethyl Sulfoxide)

を添加した場合

PEDOT

への二次ドーピング効果,導

電性領域の結合により導電性が向上する

[14], [15]

2. 2

インクジェット法

本研究ではインクジェット法を用いて成膜している.

インクジェット法とは,微小なノズルからインクを連

続的に滴下し,堆積固化させることで立体物を生成す

る方法である.材料を必要な個所にのみ塗布するため

省資源・省エネルギーにつながる.

インクジェット法はヘッドの動作原理からサーマル

方式とピエゾ方式に大きく分類される.サーマル方式

はヘッドに搭載した発熱素子によってインクを加熱し

発生した気泡でインクを吐出する.一方,ピエゾ方式

は圧電素子が変形することで生じる圧力によってイン

図 1 PEDOT:PSSの分子構造 表 1 PEDOT:PSS水溶液の諸特性

クを吐出する.プリンテッドエレクトロニクスにはイ

ンクに熱を加えることなくインクの成分が問題となら

ないピエゾ方式が多く採用される.

2. 3

成膜条件と使用機器

PEDOT:PSS

薄膜の成膜にはピエゾ方式の顔料用

インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製

PX-105

)を使用し,印刷パターンは縦

40 mm ×

15 mm

とした.基板には高い透明性と優れた耐熱性,耐薬

性を有する耐熱透明フィルム(帝人デュポンフィルム

社製テオネックス

Q65-FA

)を使用した.成膜前基板

の洗浄には

UV/O

3

洗浄改質装置(あずみ技研社製

ASM401N

)を使用した.

UV/O

3

洗浄を行うことで

基板上の有機汚染物質の減少と親水性の向上が可能で

ある.この処理により

PEDOT:PSS

薄膜の電気特性

が改善した

[15]

UV/O

3

洗浄の条件は紫外線照射距

30 mm

,低圧水銀ランプの出力

40 w

,洗浄時間

20

分とした.成膜は

2

回,

3

回,

4

回印刷でインクの複

数回塗布により行う.インクには粘性低下のためにエ

タノール,薄膜の導電性向上を促すためにエチレング

リコールを添加した.組成比はこれまでで最も良い特

性を示した

PEDOT:PSS :

エタノール

:

エチレングリ

コール

= 70 : 20 : 10 wt%

とした

[16]

.極性溶媒の塗布

はプリンタで薄膜の各層に行い,薬品にはエチレング

リコールを用いた.

PEDOT:PSS

薄膜の熱処理には

定温乾燥器(アズワン社製

EOP-300B

)を使用した.

熱処理温度は

90

C

とした.これは

PEDOT:PSS

溶液の沸点以下でエタノールを薄膜中から除去するた

めに最適な温度である.印刷間の熱処理時間を

30

分,

全ての印刷工程終了後の熱処理時間を

60

分とした.

成膜した

PEDOT:PSS

薄膜は抵抗率と透過率,表

面観察の結果で評価した.デジタルマルチメータ(岩

波通信社製

VOAC7521H

)を使用し,印刷パターン

の縦を二端子法で

5

か所測定し抵抗値を求めた.多

入射角高速分光エリプソメータ

(J. A. Woollam

社製

M-2000V-Te)

で膜厚を測定し,抵抗値の平均と合わせ

て抵抗率を算出した.透過率は分光光度計(日立ハイテ

クノシリーズ社製

U3900

)を使用し波長

550 nm

を測

定した.薄膜の表面はマイクロスコープ(

KEYENCE

社製

VHX-1000

)で観察した.また,表面粗さの測定

には原子間力顕微鏡

(AFM: Atomic)

Nanosurf

社製

(3)

3.

結果と考察

3. 1

印刷間熱処理の検討

熱処理によって薄膜表面の凝集が促進されそれに伴

う均一性の低下が課題であった.そこで熱処理工程を

省略することで均一性の向上を行った.

2

に各処理による薄膜の抵抗率を示す.膜厚は印

刷回数に伴って増加し

3

回印刷で

200

220 nm

であっ

た.印刷間の熱処理を行わないことで抵抗率に大きな

変化は見られなかった.また,これまでで最も低い抵

抗率が得られている

(c)

印刷間熱処理及び極性溶媒有

りの薄膜と比較しても

(a)

3

回印刷で同等の抵抗率

であった.抵抗率は

PEDOT:PSS

が均等に分布する

ことで減少することが知られている

[17], [18]

1

回印

刷や

2

回印刷ではインクの分布が粗密である.複数回

印刷することでインクの分布は密になり均等になる.

そのため

2

回印刷に比べて

3

回印刷の抵抗率は低い.

しかし

4

回印刷では抵抗率が上昇する.これは複数回

印刷に伴う界面の増加によるものであると考えられる.

3

回印刷から

4

回印刷の抵抗率の上昇に注目すると,

(a)

は上昇率

7.1%

であったのに対し,

(c)

16.5%

昇した.この結果は印刷間の熱処理が抵抗率の上昇に

関与していると考えられる.

3

に薄膜の透過率を,図

4

にマイクロスコープ

で観察した薄膜の画像を示す.印刷間の熱処理を行わ

ないことで透過率が減少した.図

4

の画像から

(a)

薄膜は印刷間の熱処理を行っていないことで薄膜の凝

集状態を抑制し均一性が向上していることが観察でき

る.

PEDOT:PSS

は濃紺であるため均一な薄膜とな

ることで光が透過しにくくなる.対して印刷間の熱処

理を行った薄膜は透過率が高い.これは熱処理による

図 2 各処理方法による抵抗率の変化

凝集が影響を及ぼしていると考えられる.凝集間は光

を透過しやすいため高い透過率を示した.一方,極性

溶媒を塗布することで凝集状態が広がり光を透過しに

くくなったと考えられる.しかしながら,極性溶媒に

よる改善には限界があり,薄膜の凝集を抑制すること

が必要である.印刷間の熱処理を行わないことで薄膜

の凝集状態を抑制することが可能であった.したがっ

て,薄膜の特性に大きな影響を及ぼさないため印刷間

の熱処理工程は省略することができると考える.

5

AFM

で測定した

3

回印刷の薄膜の表面粗

さを示す.印刷間の熱処理を行わないことで表面粗さ

は低下した.

AFM

とマイクロスコープの画像から凝

集状態が抑えられて薄膜の均一性が向上していること

図 3 各処理方法による透過率の変化 図 4 マイクロスコープによる薄膜の観察(3 回印刷, × 100)

(4)

図 5 AFMで測定した薄膜の表面粗さ(3 回印刷, 25µm × 25 µm)

が明らかになった.印刷間の熱処理を行った薄膜は凝

集状態が原因となって表面が粗くなっている.一方,

極性溶媒を塗布することで表面粗さは改善した.しか

し,印刷間熱処理による凝集状態があるため印刷間熱

処理無しの薄膜より表面は粗い.表面の均一性は薄膜

の導電性に影響を及ぼすことが知られている

[19]

.ま

た,印刷間熱処理を行っていない薄膜は抵抗率の上昇

が抑えられていた.抵抗率の上昇は界面の状態が影響

を及ぼすが,薄膜の各層に熱処理による凝集が発生せ

表 2 インク添加剤の諸特性

ず界面の状態が改善されたからである.

PEDOT:PSS

薄膜は不純物の減少による抵抗率低

下には熱処理が必要である.そのため,印刷間熱処理

無しの薄膜も全印刷工程終了後に熱処理を行っている.

しかし,凝集状態はほとんど見られなかった.これは

複数回印刷を行った膜は

PEDOT:PSS

インクが均等

に分布しており,凝集しにくかったためと考えられる.

対して印刷間の熱処理は膜表面が粗密な状態で行うた

め凝集を引き起こしていた.

印刷間熱処理を行わないことで,薄膜の凝集状態の

改善及び成膜工程の簡略化が可能となった.

3. 2

インク添加剤の検討

これまで

PEDOT:PSS

インクの粘性を調整するた

めに低沸点溶媒であるエタノールを添加してきた.し

かしエタノールは常温でも気化するほど揮発性が高い.

そのため成膜中にインクのエタノール含有量が減少し,

粘性の変化や凝固を引き起こしていた.インクの凝固

はプリンタの根詰まりを引き起こす.そこで,インク

の添加剤をエタノールから

DMSO

に変更して成膜を

行った.

DMSO

は高沸点溶媒であるとともに粘性が低

い.インクの粘性を調整しつつ凝固を抑制することを

目的に添加する.表

2

にエタノールと

DMSO

の諸特性

を示す.インクの組成比は

PEDOT:PSS : DMSO :

チレングリコール

= 70 : 20 : 10 wt%

とした.

DMSO

含有インクを用いて印刷間の熱処理無しの薄膜を作製

した.成膜時,

DMSO

含有インクは安定した塗布が

可能であった.またインクの凝固が起こりにくくプリ

ンタの根詰まりを抑制できた.

6

に薄膜の抵抗率を示す.

(a)

エタノール含有

インクで作製した薄膜が

3

回印刷で抵抗率

2.52 ×

10

−3

Ω · cm

に対し,

(d) DMSO

含有インクで作製し

た薄膜は

3

回印刷で抵抗率

2.00 × 10

−3

Ω · cm

であっ

た.

DMSO

を添加することによって

PEDOT:PSS

膜の導電性が向上するという報告がある

[20]

[22]

DMSO

は絶縁性の

PSS

を除去させる働きがある.こ

れにより

PEDOT

分子が再配列し導電性が向上す

(5)

図 6 インクの添加剤が異なる薄膜の抵抗率比較 (印刷間 熱処理無し) 図 7 インクの添加剤が異なる薄膜の透過率比較 (印刷間 熱処理無し) 図 8 インクの添加剤が異なる薄膜の比較 (印刷間熱処理 無,3 回印刷,× 100)

[22]

.インクに

DMSO

を添加することで薄膜の抵

抗率は減少したが,その変化は小さかった.また,

3

回印刷から

4

回印刷の抵抗率の上昇はエタノール含有

インクの薄膜が

7.1%

であったのに対して

DMSO

含有

インクで作製した薄膜は

45%

であった.

7

に薄膜の透過率,図

8

にマイクロスコープで観

察した薄膜の画像を示す.透過率は

DMSO

含有イン

図 9 インクの添加剤が異なる薄膜の表面粗さ比較 (印刷 間熱処理無,3 回印刷,25µm × 25 µm) 図 10 各処理方法による抵抗率の変化

クで作製した薄膜が高かった.マイクロスコープの画

像から表面に白い部分が多数あり,インクが均等に分

布していないことが観察できる.エタノールの粘性が

1.2 mPa · s

であるのに対し

DMSO

は約

2 mPa · s

であ

る.添加剤の粘性が高くなったこと塗布したインクが

基板上で十分に広がらなかったことが原因である.こ

れにより光を透過しやすい薄膜になったと考えられる.

(6)

図 11 各処理方法による抵抗率の変化 図 12 マイクロスコープによる薄膜の観察 (DMSO 含有 インク,3 回印刷,× 100)

DMSO

含有インクで作製した薄膜は表面が粗かった.

インクの粘性が増加したことで不均一な薄膜になった

ことが原因である.インクが塗布後に均等に広がらな

かったことで表面が粗くなっている.これにより,抵

抗率の上昇が大きかった.均一性の低下や高い表面粗

さは界面の状態が悪化していることを表している.

PEDOT:PSS

インクに

DMSO

を添加することでイ

ンクの粘性を一定に保つことができ,凝固を抑制する

ことが可能であった.また,この結果から機器の寿命

や薄膜の再現性においても有効であると考えられる.

しかし,

DMSO

の粘性による薄膜の均一性の低下や

これに伴う表面粗さが課題となった.

図 13 AFMで測定した薄膜の表面粗さ (DMSO 含有イ ンク,3 回印刷,25µm × 25 µm)

3. 3 DMSO

含有インクで作製した薄膜の処理

方法

10

に各処理による薄膜の抵抗率を示す.印刷

間熱処理無しの薄膜が

3

回印刷で最も低い

2.00 ×

10

−3

Ω · cm

であった.印刷間熱処理有りの薄膜は極性

溶媒を塗布することで抵抗率が低下した.これはエタ

ノール含有インクと同じ傾向である.また,

3

回印刷

から

4

回印刷の抵抗率の上昇は

15%

であった.極性溶

媒の塗布によって抵抗率の上昇を抑えることができた.

(7)

11

に薄膜の透過率を,図

12

にマイクロスコープ

で観察した薄膜の画像を示す.印刷間の熱処理を行わ

ないことで凝集を抑制できた.これによって透過率が

低くなった.印刷間の熱処理を行った薄膜は凝集が発

生している.凝集間からは光を透過しやすいため透過

率が高くなった.極性溶媒を塗布した薄膜は凝集状態

が広がっている様子が観察できた.凝集状態を抑制す

ることで薄膜の導電性が向上した.エタノール含有イ

ンク同様に印刷間の熱処理工程は省略できる.

13

AFM

で測定した薄膜の表面粗さを示す.印

刷間熱処理の有無では表面粗さに大きな変化が現れな

かった.しかし,印刷間熱処理有りの薄膜に極性溶媒

を塗布した結果,表面粗さが

6.80 nm

と最も高くなっ

た.極性溶媒の塗布による表面粗さの上昇はエタノー

ル含有インクでは見られなかった.インクの添加剤が

高沸点溶媒になったことで印刷間の熱処理

90

C

30

分の条件では薄膜が乾燥しにくかった.プリンタによ

る極性溶媒の塗布は乾燥していない薄膜に衝撃を与え

表面を粗くする.

DMSO

含有インクで作製した薄膜はインクの粘性

が上昇したことや薄膜が乾燥しにくいことによって膜

表面が不均一になる課題があった.また,極性溶媒の

塗布によって更に不均一な薄膜となった.しかし,抵

抗率の上昇を抑えることができた.これは極性溶媒の

塗布が有効であることを示している.今後,薄膜の導

電性を向上させるためには更なる均一性の改善が求め

られる.

4.

む す び

本研究では,

ITO

の代替材料として

PEDOT:PSS

に注目しプラスチック基板上にプリンタで塗布するこ

とでフレキシブルな透明導電膜を作製した.インク

ジェット法で平面印刷するにあたってインクの凝集に

よる薄膜の不均一性は改善すべき課題であった.

印刷間熱処理を行わないことで凝集状態を抑制し,

均一な薄膜となった.また,界面の状態が改善された

ことによって複数回印刷による抵抗率の上昇を抑える

ことができた.印刷間の熱処理を省略することで作業

の簡略化が可能となった.

インクの添加剤を

DMSO

に変更することで,成膜中

の粘性の変化及び凝固を抑制することができた.

DMSO

含有インクは安定的な成膜を可能とし,機器の寿命や

薄膜の再現性において有効であった.また,

DMSO

有インクで作製した薄膜はこれまでで最も低い抵抗率

を示した.

3

回印刷で抵抗率

2.00 × 10

−3

Ω · cm

,透

過率

86.8%

の特性を得た.この結果はフレキシブルデ

バイスの製造にインクジェット法を適用するにあたっ

て有用なものである.

謝辞 本研究は平成

28

年度長岡技術科学大学技術

開発研究振興の助成を受けたものです.深く感謝いた

します.また,このような機会をくださった和文

C

集委員会の山口様に御礼申し上げます.

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2015.02.128

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今村 優希 (学生員)

2017鹿児島工業高等専門学校電子制御 工学科・卒.2018 同高専専攻科機械・電子 システム工学専攻在学中.現在,電子デバ イス分野の研究に従事.

武田 和大

2000鹿児島大学大学院博士前期課程修 了.鹿児島大学技官.2006 同大学院博士 後期課程修了.2009 鹿児島工業高等専門 学校助教,2012 同高専准教授.現在,電 子物性,分散並列処理,熱環境工学に関す る研究に従事.

(9)

新田 敦司 (正員)

2004大阪市立大学大学院博士後期課程 修了.博士(工学).2009 鹿児島工業高等 専門学校電子制御工学科准教授.2015 同 高専教授.現在,電子デバイス,電子物性 分野の研究に従事.

図 5 AFM で測定した薄膜の表面粗さ(3 回印刷, 25 µ m × 25 µ m) が明らかになった.印刷間の熱処理を行った薄膜は凝 集状態が原因となって表面が粗くなっている.一方, 極性溶媒を塗布することで表面粗さは改善した.しか し,印刷間熱処理による凝集状態があるため印刷間熱 処理無しの薄膜より表面は粗い.表面の均一性は薄膜 の導電性に影響を及ぼすことが知られている [19] .ま た,印刷間熱処理を行っていない薄膜は抵抗率の上昇 が抑えられていた.抵抗率の上昇は界面の状態が影響 を及ぼすが,薄
図 9 に AFM で測定した薄膜の表面粗さを示す.
図 11 各処理方法による抵抗率の変化 図 12 マイクロスコープによる薄膜の観察 (DMSO 含有 インク,3 回印刷, × 100) DMSO 含有インクで作製した薄膜は表面が粗かった. インクの粘性が増加したことで不均一な薄膜になった ことが原因である.インクが塗布後に均等に広がらな かったことで表面が粗くなっている.これにより,抵 抗率の上昇が大きかった.均一性の低下や高い表面粗 さは界面の状態が悪化していることを表している. PEDOT:PSS インクに DMSO を添加することでイ ンクの粘性を

参照

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