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v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察

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(1)v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察 岡 本 丈 彦 Ⅰ 序 Ⅱ v. ヴェルダーの企業概念 Ⅲ 企業管理とその担い手 Ⅳ 企業の管理組織 Ⅴ 結. Ⅰ. 序.  19 9 0年代以降のグローバル化や2 000年代初頭の IT 革命に代表される情報化 社会の到来によって、企業管理(Unternehmungsfhrung)が複雑化、そして、非 構造化する傾向にある。それに伴って、企業管理を担う組織、すなわち、企業の 管理組織(Fhrungsorganisation)の重要性は否応なく高まっている。また、企業 が社会に対して与える影響も無視することが出来ない程、非常に大きなものと 1)   企業が社会に対して与える影響力が増大するに伴い、 「企業は誰の なっている。. ものか」 、 「企業を支配するのは誰か」、あるいは「企業の管理を誰がどうやって監 2) 査・監督するのか」というコーポレート・ガバナンス(corporate governance). の問題が活発に議論され、現代の焦眉の課題となっている。ここでの企業管理と は、企業活動の基礎的な方向性を決定し、一定方向への企業活動の展開に対して 影響を与えること意味している。 本稿においては、 ベルリン工科大学(Technische 3) の最 Univasitt Berlin, TU Berlin)のフォン・ヴェルダー(v. Werder, Axel). 1)とりわけ、 2 00 8年9月に起きた金融危機の引き金となったリーマン・ショックや、 2011年3月 に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故を見ても明らかである。 2)v. ヴェルダーは、コーポレート・ガバナンスを、 「企業の管理と監督についての法的で、実践的な 秩序の枠組み」と定義している(v.Werder 2 00 8, S.1) 。 3)v. ヴェルダーは、ケルンの大学で経営経済学(Betriebswirtschaftslehre)を専攻し、 1981年には、 学士号(Diplom)を取得した。その後、フレーゼ(Frese, E)の助手となり、そして、アーヘン工 科大学(Rheinisch-Westfaelische Technische Hochschule Aachen)に勤務し、 1986年に博士号を 取得した。彼は、 1 99 3年にケルンで大学教授資格を得て、同年にベルリン工科大学で「組織 (Organistion)と企業の最高管理(Unternehmungsfhrung) 」の講座を受け持っている。. 53.

(2) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察 近の研究 4)に依拠することによって、企業の管理組織について考察を進め、その 特徴と意義を明らかにしよう。  フォン・ヴェルダー(以下、フォン・ヴェルダーを v. ヴェルダーと表記す る)は、ベ ル リ ン 工 科 大 学 に お い て「組 織(Organisation)と 企 業 管 理 (Unternehmungsfhrung)」の講座を持つとともに、 19 90年代にドイツで発生し た一連の企業不祥事の後、ベルリン・グループ(Berliner Initiativkreis German. Code of Corporate Governance)という民間の委員会を設立した。また同時に、 ド イ ツ・コ ー ポ レ ー ト・ガ バ ナ ン ス 基 準(Deutsche Corporate Governance. Kodex, DCGK)を策定した政府委員会の構成員でもある。この様にして、コー ポレート・ガバナンスの領域においても活発な活動を行う v. ヴェルダーは、. DCGK の様なコーポレート・ガバナンスについての規制は、企業の管理組織の 枠組み条件を形成するとも主張している(v. Werder 20 08, S.1)。そして、ヴェ ルダー理論の特徴は、企業の管理組織を考察する際に、組織理論的な観点に加え て、法的な観点からも考察を行っている点である。  本稿においては、ヴェルダー理論に依拠して、企業の管理組織の前提となる v. ヴェルダーの企業概念を明らかにしたうえで、企業管理とその担い手について議 論するとともに、企業の管理組織に関して考察を行うことにする。. Ⅱ v. ヴェルダーの企業概念 1.行為システムとしての企業  v. ヴェルダーの提唱する企業の管理組織(Fhrungsorganisation)の概念を明ら かにする前に、その前提となる企業概念を明確にする必要がある。そもそも、v. ヴェルダーは、企業を以下の様に定義している。企業(Unternehmung)とは経済 的 に 独 立 し、統 一 的 に 管 理 さ れ た 行 為 シ ス テ ム(einheitliche geleitete 5) その行為システムは、 4つの市場に組 Handlungssysteme)を意味している。. み入れられ、希少な資源の結合による価値創造(Wertschpfung)を行っている (v. Werder 2 00 8, S.18)。この4つの市場としては、資本市場(Kapitalmarkt)、 販 売 市 場(Absatzmarkt)、労 働 市 場(Arbeitsmarkt)、そ し て、調 達 市 場 4)本 稿 に お い て は、v. Werder, A.(2 00 8) ,Fu ¨hrungsorganisation : Grungdlagen der Corporate Governance, Spitzen- und Leitungsorganisation, 2. Aufl., Wiesbaden. に依拠して研究を進めてい る。 5)本稿においては、Handlung を、 「行為」と訳すこととする。. 54.

(3) 岡 本 丈 彦 (Beschaffungsmarkt)が存在する(図表2−1参照) 。  そして、企業は一定の枠組み条件のもとで行動する。その様な枠組み条件とし ては、法的枠組み条件(rechtliche Rahmenbedingungen)、社会的枠組み条件 (soziale Rahmenbedingungen)、及 び、全 体 経 済 的 枠 組 み 条 件 (gesamtwirtschaftliche Rahmenbedingungen)の3つがある。それらの枠組み条 件は、多かれ少なかれ、価値創造活動に対して、一定の影響を与えるものである (v. Werder 2 00 8, S.18)。 図表2−1 行為システムとしての企業. Unternehmung. 出所:v. Werder 2 008, S.19を参考に、筆者作成。. 2.企業における分業と調整  次 に、企 業 に お け る 基 本 的 な 事 象 で あ る 分 業(Arbeitsteilung)と 調 整 (Koordination)の関係を明らかにする。現代企業が取り扱う事象の多くは、複 雑であり、かつ動態的であるが、一方で企業における業務の担い手の能力には限 界が存在している。そのため、一般的な企業においては、必ず個人間の分業が図 られている(v. Werder 2008, S.19 f.)。しかしながら、個人間の分業というも のは、能力の限界を解消する万能薬ではない。なぜならば、十分な対策を施すこ となく安易に分業を行えば、意図しない結果を招く危険性があるためである。そ 55.

(4) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察 れというのも、分業において個々人は必然的にある程度、お互いに依存しあうこ となく行動している。そのため、自律性コスト(Autonomiekosten)が発生する 場合がある。この自律性コストの例としては、価値創造プロセスの各段階での同 期化が不十分である際に生じる生産の中断、もしくは二重労働に基づく非効率性 が挙げられる(v. Werder 2008, S.20)。  この様な自律性コストをそのまま放置するのであれば、分業を行う意義が疑わ れることにもなりかねない。それ故に、この様な自律性コストを逓減させること を目的として、重複する部分を同調させ効率的に作業を行わせるために、部分領 域を相互に調整する必要がある。しかしながら、この調整も容易に実行すること は出来ない。なぜならば、調整の手段に時間と資源を投入することで、追加的に 調整コスト(Abstimmungskosten)が発生するためである。そのため、分業ある いは調整を行う際には、自律性コストあるいは、調整コストを慎重に比較検討す ることが求められる(v. Werder 2008, S.20)。以上で説明した自律性コストと 調整コストの関係は、下記の図表2−2に示されている。 図表2−2 企業の基本的な事象. 出所:v. Werder 2 008, S.20を参考に、一部を筆者作成。. 3.ヒエラルヒーの形態としての企業と統一的管理  続 い て、ヒ エ ラ ル ヒ ー(Hierarchie)の 形 態 と し て の 企 業 と 統 一 的 管 理 (einheitliche Leitung)に つ い て み て い こ う。企 業 を 組 織 的 な 観 点 56.

(5) 岡 本 丈 彦 (organisatorische Sicht)か ら 見 た 場 合、端 的 に 分 業 の 調 整 シ ス テ ム (arbeitsteilige Koordinationssysteme)と捉えることができる。それゆえに、企 業の重要なメルクマールは、目標志向的な方向付け(zielorientierte Ausrichtung) と個別行為(Einzelhandlungen)の調整が、ヒエラルヒーの形態によって行われ て い る こ と で あ る(v. Werder 2008, S.20, Frese 20 00, S.54 ff. 清 水 ほ か 2 0 10, 3 9頁以下) 。これらの調整原理(Koordinationsprinzip)の結果として、企 業全体の価値創造活動は、統一的管理の下にあることが明らかとなり、この統一 的 管 理 は、企 業 に お け る 最 上 位 の 調 整 レ ベ ル で あ る ヒ エ ラ ル ヒ ー・ト ッ プ (Hierarchiespitze)によって行使される(v. Werder 20 08, S.20) 。 4.個別企業とコンツェルン  最 後 に、 個 別 企 業(Einheitsunternehmung) と コ ン ツ ェ ル ン 6) (Konzernunternehmung) について明らかにしよう。まず、v. ヴェルダーは法的. 単位としての企業(Unternehmen)と、経済的単位としての企業(Unternehmung) を区別している(v. Werder 2008, S.22)。さらに、企業においては経済的独立 が1つのメルクマールである。この様な区分を用いるならば、経済的単位として の企業は、個別企業とコンツェルンに分類できる(図表2−3参照) 。 図表2−3 個別企業とコンツェルンの概念図 Einheitsunternehmung. Konzernunternehmung. 出所:v. Werder 2 008, S.23を参考に、筆者作成。 6)ドイツの実践においては、株式会社の約7 5%がコンツェルンに組み込まれている(ヴェルンハル ト・メーシェル著 小川訳 2 011, 1 34頁) 。また、ゲルム(Gerum, E)が2004年に行った調査 によれば、巨大企業の全てがこの形態を採用している(Gerum 2007, S.76 f.). 57.

(6) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察  まず、個別企業からみていこう。個別企業は法的単位として捉えられている た め、経 済 的 単 位 と し て の 企 業(Unternehmung)と 法 的 単 位 と し て の 企 業 (Unternehmen)の領域が完全に一致する。これに対して、コンツェルンは、い くつかの法的に独立したコンツェルン企業(Konzernunternehmen)、あるいは、 コンツェルン会社(Konzerngesellschaften)から構成されている。それらは、統 一的管理(einheitliche Leitung)の下にあるために、個々のコンツェルン構成企 業は、経済的に独立しているわけではない。この統一的管理は、親会社のヒエラ ルヒー・トップのみが行使でき、各コンツェルン企業はコンツェルンを構成する ことに伴って、法的には独立性を維持しながらも、全体としては単一の企業政策 と管理のもとに経済的な一体性を持った1つの組織を形成している(吉田 19 94, 1 8 1頁) 。また、個別企業とは対照的にコンツェルンにおいては、コンツェルンと しての企業の境界と、法形態としての親会社(Muttergesellschaft)と子会社 (Tochtergesellschaft)の境界が相互に一致しない。  v. ヴェルダーの研究においては、個別企業だけではなく、コンツェルンの管理 組織についても考察が行われていることも特徴の1つである。. Ⅲ. 企業管理とその担い手. 1.企業管理の概念  次に、v. ヴェルダーの企業管理(Unternehmungsfhrung)の概念を明らかにし て お こ う。v. ヴ ェ ル ダ ー に よ る と、企 業 の 管 理 組 織(die Organisation der. Unternehmungsfhrung ; die Fhrungsorganisation einer Unternehmung)は、企 業組織の全ての問題における中核的な部分を意味している。そして、企業管理は、 第 一 に 制 度 的 な 観 点(institutionale Sicht)か ら、第 二 に 機 能 的 な 観 点 (funktionale Sicht)から特徴づけられる(v. Werder 20 08, S.17) 。ここでの制 度的な観点と機能的な観点は、所謂、コインの表と裏を表していると理解するこ とができる。制度的な観点から企業管理を考える場合には、企業管理は企業にお ける枠組みを決定する行為(Rahmenhandlungen)そのもの、あるいは、その担い 手(Trger)を意味している(v. Werder 2008, S.1 7)。  これに対して、機能的な観点から企業管理を考察する場合には、企業管理は枠 組みを決定する行為の実行(Vornahme) を意味している。これらの行為によって、 企 業 活 動 の 基 礎 的 な 方 向 性 が 決 定 さ れ、一 定 方 向 へ の 企 業 活 動 の 展 開 58.

(7) 岡 本 丈 彦 (Entwicklung)が規定される。この枠組みを決定する行為と同時に、それに続く 行為(Folgehandlungen)は、下位のヒエラルヒー・レベルへと伝達され、そし て、より詳細に明確化され実行に移される(v. Werder 20 08, S.17) 。この様に して企業管理を理解するのであれば、企業の管理組織の対象は次の様に表わすこ とができる。  まず、企業の管理組織(Fhrungsorganisation)の中心には、最高管理機関 (Leitungsorgan)、すなわち、トップ・マネジメントが存在する。この最高管理 機関は、企業管理の枠組みを決定する行為の大部分を担う存在である。そして、 それは第一に、企業体制の法的な機関システムに組み入れられており、次に、組 織上の企業のヒエラルヒー上層部として機能している(v. Werder 20 08, S.18) 。 つまり、最高管理機関は法的側面においては法的機関であり、組織的には、企業 のヒエラルヒー上層部を形成している。以上のような前提に基づいて、企業管理 の担い手である最高管理機関と他の法的な機関の関係に関して考察を進めてい く。 2.最高管理機関と他の法的な機関  最高管理機関(Leitungsorgan)は、ヒエラルヒーの上層部に位置づけられるた め、一般的に絶大な権力を持っているように理解される傾向にある。しかしなが ら、現実においてはそれ程、最高管理機関に権限が集権化されているわけではな い。むしろ、最高管理機関以外の法的機関に権限が分権化されている。例えば、 ド イ ツ の 株 式 会 社(Aktiengesellscaft, AG)に お い て は、ド イ ツ の 株 式 法 (Aktiengesetz)及 び、共 同 決 定 に 関 す る 様 々 な 法 律 に よ っ て、株 主 総 会 (Hauptversammlung)、取締役会(Vorstand)、そして、監査役会(Aufsichtsrat) 7) に権限の分権化が図られている(図表3−1参照)。 ただし、権限は平等に配置さ. れているのではなく、企業のヒエラルヒー上層部に位置する最高管理機関に集中 している(v. Werder 2008, S.24 ff.)。. 7)取締役会に関しては、株式法第7 6条から9 4条を、監査役会に関しては、同法第9 5条から116 条を、株主総会に関しては、同法1 18条から1 28条を参照のこと。. 59.

(8) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察 図表3−1 最高管理機関と他の法的な機関. 出所:v. Werder 2 008, S. 2 5を参考に、筆者作成。.  上記の図表3−1に描かれている様に、最高管理機関は企業のヒエラルヒー上 層部に位置しているのに対して、他の法的な機関(例えば、株主総会や監査役会) は、企業のヒエラルヒー外部に存在する単位であると見なされる。それ故に、他 の法的な機関は、最高管理機関の自由裁量余地(Handlungsspielraum)を制約する 存在であると理解することができる(v. Werder 200 8, S.24 f.)。ドイツの株式 会社を例に挙げて説明することにしよう。ドイツの株式法において取締役会は、 企業の業務執行(Geschftsfhrung)を担うとともに、企業を代表している(株 式法第76条)。また、業務執行は取締役の自己の責任において行われる(株式法 第76条) 。その意味において取締役会、あるいは、取締役は他の法的な機関の指 示に、原則として拘束されないが、一定条件の下では制約を受ける(ヴェルンハ ルト・メーシェル著 小川訳 2011, 68頁)。つまり、監査役会の持つ取締役の任 免権(株式法第8 4条)や同意見の留保(株式法第111条)、あるいは、株主総会の 持つ定款に規定されている内容(株式法第118条)によって制約を受ける。した がって、最高管理機関と他の法的な機関の関係は、以下のように定義づけること が可能である。最高管理機関の構成員は、下位のヒエラルヒー・レベルに存在す る組織単位に対して命令を与える一方で、他の法的な機関によって、自らの自律 的管理に制約を受ける。それ故に v. ヴェルダーは、最高管理機関をヒエラルヒー の組織理論上の構造に、会社法上の機関システムを結合する存在であると定義づ けた(v. Werder 2 008, S.24 f.)。 60.

(9) 岡 本 丈 彦  次節において考察を行うが、v. ヴェルダーによれば、最高管理機関とヒエラル ヒーの外部に存在する他の法的な機関から構成される組織がトップ組織 (Spitzenorganisation)である。以上で述べた様な区分、あるいは境界づけは、 トップ組織の権限配置や基本モデルの考察についての重要な前提となる。. Ⅳ. 企業の管理組織. 1.企業の管理組織の形成領域  前節において、企業管理とその担い手に関して考察を行った。これまでの考察 を踏まえた上で、v. ヴェルダーが提唱する企業の管理組織(Fhrungsorganisation) に 関 し て 検 討 を 行 う。ま ず、企 業 の 管 理 組 織 を 構 成 す る の は、ト ッ プ 組 織 (Spitzenorganisation)と最高管理の組織(Leitungsorganisation)である。これら 2つの本質的な形成領域を区分する必要がある。その際に、組織理論的な観点に 加えて、 法的な観点が用いられることがヴェルダー理論の特徴である(v. Werder 2 0 08, S.4 1)。すなわち、図表4−1に示されているように、企業の管理組織と は、法的な観点から見ればトップ組織がそれに該当し、組織理論的な観点からみ れば最高管理の組織がそれに該当する。  まず、組織理論的な観点にしたがえば、図表4−2に示されているように企業管 理(Unternehmungsfhrung)の権限は、企業の最高管理(Unternehmungsleitung)、 すなわち、ヒエラルヒー・トップにのみ存在する。しかしながら、法的な観点か ら見れば、企業管理の権限は、法的機関である最高管理機関と、ヒエラルヒー外 部に存在する他の法的な機関に分散して存在する(図表4−1参照) 。最高管理機 関とは、例えば、株式会社では取締役会のことであり、他の法的な機関とは、株 主総会や監査役会がこれに該当する。その際に、他の法的な機関は、ヒエラル ヒーの外部に存在し、かつ法的に権限を与えられているため、最高管理機関の自 由裁量の余地を制約する存在であるとみなすことができる。したがって、最高管 理機関は下位のヒエラルヒーのレベルに存在する組織単位に命令を与える一方 で、ヒエラルヒー外部に存在する他の法的な機関によって制約を受ける。その意 味で、この最高管理機関は2つの観点の連結部(Bindeglied)とみなすことができ る。図表4−1は、トップ組織と最高管理の組織の形成領域を描いたものであり、 図表4−2は、最高管理機関の中に、企業の最高管理、すなわち、ヒエラルヒー・ トップが存在することを示している。株式会社にあてはめた場合、最高管理機関 は取締役会に相当し、企業の最高管理は取締役会の構成員全員が参加する全体取 締役会(Gesamtvorsatnd)に相当する。 61.

(10) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察  次項以降において考察を行うが、最高管理機関の構成員は企業の最高管理の権 限を行使することだけではなく、部分領域の管理(Teilbereichsleitung)の権限を も行使することに注意が必要である。企業における部分領域の管理とは、財務 (Finanzen)やロジスティックス(Logistik)、そして、人事(Personal)などが該 当する。以上を踏まえたうえで、トップ組織と最高管理の組織について考察を 行っていく。 図表4−1 企業の管理組織の形成領域. 出所:v. Werder 2 008, S.41を参考に、著者作成。. 図表4−2 最高管理機関内部に存在する企業の最高管理. 出所:v. Werder 2 008, S.43を参考に、著者作成。. 62.

(11) 岡 本 丈 彦 2.トップ組織  次に、法的な観点によって考察されるトップ組織に関して考察を行う。トップ 組織(Spitzenorganisation)は、法的な機関である最高管理機関と、ヒエラルヒー 外部に存在する他の法的な機関から構成されている。これまでに行った考察に よって、トップ組織の形成領域は、組織理論的な組織問題だけでは無く、法的な 機関システムをも包括していることが明らかとなった(v. Werder 20 08, S.41) 。 以下においては、トップ組織に関わる様々な要因について考察を進めていく。. 2 .1. トップ組織の基本的な役割.  まず、トップ組織の基本的な役割は、企業の目標設定の定式化(Formulierung) と実現(Realisierung)に企業内外の特定の個人と集団が参加することを規定する ことである。そして、このトップ組織においては、行為の担い手がその権利と義 務に基づいて、企業管理に対して影響力を行使できる(v. Werder 20 08, S.50) 。 したがって、トップ組織を分析すれば、最高管理機関(Leitungsorgan)の自由裁 量の余地を制約する機関(例えば、監査役会)と、そこに参加する企業内外の利害 集団を法的に特定することが可能となる。この様な分析は、現代企業にとって焦 眉の問題として活発に議論が行われているコーポレート・ガバナンスにおいても、 非常に重要な意義を持っている。. 2 .2. トップ組織の中心的な問題.  次に、トップ組織の形成領域における中心的な問題とトップ組織の機関につい て検討しよう。まず、v. ヴェルダーはトップ組織の形成領域において、下記の5 つを中心的な問題として分析すべきであると述べている。①トップ組織の機関の 中で、どの機関が各法形態において特有の機関として定められているか、②各機 関はどの様な権限を行使できるのか、③したがって、どの機関に最高管理機関と しての機能が割り当てられるのか、④どの様にして、最高管理機関とその他の法 的な機関の間に権限が配置されるのか、⑤形成形態の違いによってどの様な結果 が生じるのかである(v. Werder 2008, S.41)。  また、トップ組織の機関においては人的な配置も問題となる。ここで本質的な 問題となるのは、①機関構成員の数及び、②機関構成員の複数機関にまたがる兼 任についてである。まず、機関構成員の数は、広範囲にわたり様々な影響を及ぼ 63.

(12) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察 す。つまり、それは、その機関の行為の質と発生するコストにまで影響し、また、 個人的にだれがそのポストを占めるかという問題にまで関係する(v. Werder 2 0 08, S.5 2)。例 え ば、機 関 構 成 員 の 数 が 多 け れ ば、一 般 的 に 意 思 決 定 (Entscheidung)に時間を要するが、意思決定の質あるいは、多様性が向上する 可能性がある。これに対して、機関構成員の数が少なければ、意思決定の時間の 短縮が可能であるが意思決定の質あるいは、多様性が低下しうる。また、異なっ た機関における構成員の兼任についてであるが、 1つの特定の機関構成員である ことが、他の機関構成員になるための前提条件となる場合もあれば、阻害要因と なる場合もある (v. Werder 2008, S.52)。例えば、ドイツの株式会社の場合、トッ プ組織は株主総会、取締役会、監査役会によって構成されている。株式法第98 条第1項の規定によって、監査役会の資本側構成員は、株主総会で選任されるた め、監査役会の構成員になるためには、株主総会の構成員であることが前提条件 となる。他方、同法の第1 05条第1項によって、取締役と監査役の兼任が禁止さ れている。つまり、取締役会の構成員であることは、監査役会の構成員になるた めの阻害要因となる(v. Werder 2008, S.52)。以上が、トップ組織の中心的な 問題である。. 2 .3. 個別企業のトップ組織の基本モデル.  最後に、個別企業(Einheitsunternehmung)におけるトップ組織の基本モデルを 明らかにする。第2節でも述べたように、個別企業は、経済的単位と会社法的単 位の領域が一致している。それ故に、経済的単位と会社法的単位が不一致である コンツェルン(Konzernunternehmung)よりもモデル化が容易である。v. ヴェル ダーによれば、個別企業のトップ組織は、二構成の機関構造と三構成の機関構造 に分類することが可能である(図表4−3参照)。. 64.

(13) 岡 本 丈 彦 図表4−3 個別企業のトップ組織上の基本モデル. 注1: こ の 図 表 に お け る 管 理 の 機 関 は、Verwaltungsgremium を 訳 し た も の で あ り、 Leitungsoragn とは異なることに注意が必要である。 出所:v. Werder 2 0 08, S.5 4を参考に、筆者作成。.  まず、二構成の機関構造からみていこう。二構成の機関構造においては、まず 第一の法的機関は出資者の総会(例えば、株式会社においては株主総会)を担うの に対して、管理の機関(Verwaltungsgremium)は別の法的機関が担うこととなる。 管理の機関とは、例えば、株式会社においては取締役会が該当する。これに対し て、三構成の機関構造においては、基本的に管理の機関が、監督機関と業務執行 機関の2つの法的機関に分割される。その結果、出資者の総会と、こられ2つの 法的機関の3つの機関から構成されるため、三構成の機関構造と呼ばれる。  また、二構成の機関構造においては、業務執行と監督が非分離であり、 1つの 機関において行われているため、一元制システム(monistisches System)、ある いは、ボード・モデルと呼ばれている(v. Werder 2 00 8, S.55) 。そして、この 構造はアメリカをはじめとする国々で採用されているため、アングロサクソン型 モデルとも呼ばれている。これに対して、三構成の機関構造は、業務執行と監督 65.

(14) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察 が2つの機関に分離しているため、二元制システム(dualistisches System)、あ るいは、分離モデル(Trennungsmodell)と呼ばれる。また、この構造は、ドイツ やオーストリアなどの国々で採用されているため、ドイツ型とも呼ばれている (v. Werder 2 00 8, S.55)。 3.最高管理の組織  以上において、法的な観点からのトップ組織に関して考察を行ったが、本項に おいては、もう1つの観点である組織理論的な観点からみた最高管理の組織 (Leitungsorganisation)について検討を行う。先に紹介した図表4−1にも示さ れている様に、最高管理の組織は、最高管理機関(Leitungsorgan)とヒエラル ヒー下位へと続く組織から構成されている。言い換えれば、最高管理の組織は、 最高管理機関の内部に存在する組織と最高管理機関の外部に存在する組織によっ て構成されている。以下においては、最高管理の組織の構成について言及を行う とともに、最高管理の組織の2つの形成領域と個別企業における基礎モデルにつ いて、考察を進めていく。. 3 .1. 最高管理の組織の構成.  まず、最高管理の組織の構成からみていこう。企業の最高管理の組織の構成に おいて問題となるのは、最高管理機関(Leitungsorgan)が、 1人の人物によって 構成されるのか、あるいは、複数の人物によって構成されなければならないのか という問題である。一般論としては、巨大企業における複数人物による最高管理 (Leitung)が支配的である(v. Werder 2008, S.42)。これには、以下の様な理 由が考えられる。  まず、組織理論から見た場合、大規模化した企業においては、最高管理機関の 構成員が、解決しなければならない問題は構造化されているのではなく、非常に 複雑である(宮田 2010, 75頁以下)。また、第2節において考察を行った様に、 個人の能力には一般的に限界が存在している。したがって、非常に複雑で構造化 されていない意思決定の問題を個人が単独で解決することはおおよそ不可能であ る。このため、巨大企業における最高管理機関は、複数の人物によって構成され ているのが一般的である(宮田 2010, 75頁以下)。また、事業分野の多角化を行 い、それに伴って多くの子会社を親会社の統一的管理(einheitliche Leitung)のも とにおくコンツェルン(Konzernunternehmung)の最高管理機関において、こ 66.

(15) 岡 本 丈 彦 の傾向はより顕著であると言えるだろう。  次に、法的に見た場合、例えば、共同決定法(Mitbestimmungsgesetz)の適用 を受けるドイツ企業では、最高管理機関の複数による構成が法的に規定されてい る。ドイツにおいては、 2,001人以上を雇用しているモンタン分野以外の株式会 社は、共同決定法の適用を受ける。そして、この法律は、適用を受ける株式会社 の最高管理機関である取締役会に労務担当取締役(Arbeitsdirektor)を設置する ことを義務付けている(共同決定法第33条)。そのため、この法律の適用を受け る企業においては、必然的に取締役会の構成員は複数となる。以上の様に、最高 管理機関は複数によって構成されるのが一般的である。. 3 .2. 最高管理機関内部の組織.  次に、最高管理の組織の形成領域に関して検討を行う。この組織を考察する場 合には、以下の点に注意が必要である。すなわち、最高管理の組織の形成領域 は、機関内部の組織だけではなく、機関外部の組織にまで及んでいる点である。 つまり、この最高管理機関の組織とは、最高管理機関の直ぐ下のヒエラルヒーの 行為の担い手までを包括している組織である。  まず、最高管理機関内部の組織についてみていこう。図表4−2に描かれてい る様に、企業の最高管理(Unternehmungsleitung)は、企業のヒエラルヒー・トッ プのみを意味している。そのために、最高管理機関の構成員の権限領域には、部 分領域の管理の権限も包括されているため、企業の最高管理の権限領域とは完全 には一致しない(v. Werder 2008, S.42)。すなわち、最高管理機関の構成員 は、必然的に企業のヒエラルヒー・トップにおける機能を行使するだけにとどま 8) らない(v. Werder 2008, S.42 ff.)。 具体的に説明すれば、株式会社におけ. る取締役会の構成員(A, B)は、企業の最高管理としての権限の行使だけではな く、企業の部分領域の管理(Teilbereichsleitung)をも指揮する場合がある。した がって、その場合には、企業の最高管理と最高管理機関の範囲が異なってくる。. 3 .3. 最高管理機関外部の組織.  次に、最高管理機関外部の組織を明らかにする。最高管理の組織を考察する際 に、最高管理機関、あるいは、その中の企業の最高管理にのみ焦点を当てるので 8)最高管理機関の構成員がどの様な職分を果たすかに関しては、職務関連的分業か、あるいは、部 局関連的分業を行っているのかによって変わってくる。. 67.

(16) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察 あれば、重大な問題が無視されてしまう。なぜならば、経営経済学に関する様々 な文献において、一般に議論されている「企業の最高管理の組織(Organisation. der Unternehmungsleitung)」の領域は、最高管理機関内部の組織だけではなく、 最高管理機関外部の組織をも包括しているためである(v. Werder 20 08, S.43) 。 そのため、最高管理の組織の概念においては、最高管理機関の形成問題が議論さ れるのと同時に、ヒエラルヒーのより広範なレベル、つまり、下位のヒエラルヒー のレベルまでその認識対象が拡張されるのである(v. Werder 20 08, S.43 f.)。  . v. ヴェルダーにおいては、最高管理機関の構成員と直ぐ下の行為の担い手とを 結び付けるために、最高管理機関の直ぐ下のヒエラルヒー・レベルが組み入れら れる(図表4−1参照)。しかしながら、ここで注意が必要なのは、直ぐ下のヒエ ラルヒー・レベルに存在する構成員は、もはや最高管理機関の構成員ではないこ とである(v. Werder 2008, S.44)。最高管理機関の構成員は法的に見れば、雇 用主(Arbeitgeber)であるのに対して、そのレベルに従事している個人は、企業 と雇用契約を結ぶ被雇用者(Arbeitnehmer, 従業員)であり、法的に見れば別の法 律の適用下にある。以上が最高管理機関内部の組織と最高管理機関外部の組織か ら構成される最高管理の組織の形成領域である。. 3 .4. 最高管理の組織の基礎モデル.  最後に、v. ヴェルダーの提唱する最高管理の組織の基礎モデルについて検討を 行う。このモデルは、 1987年の論文 9) において既に見られたものである。v. ヴェ ルダーによれば、最高管理の組織の基礎モデルを決定するのは、 2つの原理と2 つの分業の方策である。 2つの原理とは、合議制原理(Kollegialprinzip)と単独 決定原理(Direktorialprinzip)であり、 2つの分業の方策とは職務関連的分業 (Portefeuillebindung)と部局関連的分業(Ressortbindung)である(v. Werder 2 0 08, S.1 73 ff) 。  まず、合議制原理と単独決定原理からみていこう。合議制原理においては、企 業の最高管理(Unternehmungsleitung)に、最高管理機関の構成員がそれぞれ同 権で参加することとなる。したがって、企業の最高管理についての意思決定は、 最高管理機関の構成員全員によって下される。その際の方法としては、全会一致 の原理(Einstimmigkeitsprinzip)か、多数決の原理(Mehrheitsprinzip)が用いら , Organisation und Unternehmungsfhrung, in : Frese, E.(1987), 9)v.Werder, A.(1 9 8 7) Unternehmungsfu 99-3 85. を参照のこと。 ¨hrung, Augsburg, S.2. 68.

(17) 岡 本 丈 彦 1 0) れる。 そのため、合議制原理においては、最高管理機関の各構成員の間にヒ. エラルヒーの階級づけが存在しない。これに対して、単独決定原理が採用される 場合には、最高管理機関の各構成員間にヒエラルヒー化を引き起こす。この様な 場合には、選ばれた1人の構成員(A)が、他の構成員(B, C)に対して命令権を 持つことになる。そのため、機関内部において意思決定の不一致が起きた際には、 全ての意思決定の権利、あるいは最終的な意思決定の権利を、構成員(A)が単独 で行使することが可能である。つまり、この原理が適用されるならば、企業の最 高管理の機能は、最高管理機関全体に存在するのではなく、最高管理機関の最上 位の構成員にのみ与えられる(v. Werder 2008, S.1 74) 。次に、職務関連的分業 と部局関連的分業であるが、前者においては、最高管理機関の構成員は、単にそ の時々の職務に関しての職分を持っているに過ぎない。これに対して、後者にお い て は 与 え ら れ た 部 局 を 独 立 し て 管 理 す る こ と が で き る(v. Werder 20 08,. S.175)。以上の2つの原理と2つの分業の方策を組み合わせることで、下記の図 表4−4のように、 4つの基礎モデルが導き出される。 図表4−4 企業の最高管理の組織の基礎モデル. 出所:v. Werder 2 008, S.176を参考に、筆者作成。.  上記の図表4−4に示されている4つの基礎モデルについて検討を進めてい く。 4つのモデルの考察に際して重要となるのは、最高管理機関のすぐ下のヒエ 10)多数決の際には、単純多数決か、条件付きの多数決がある。条件付きの多数決においては、過半 数ではなく、 3分の2や4分の3を超える賛成票が必要となる。. 69.

(18) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察 ラルヒー・レベルの構成員である被雇用者が部分領域の管理を受け持つのか、あ るいは、部門管理(Abteilungsleitung)を受け持つのかということである。この 点を明らかにすることで、最高管理の組織の領域を正確に把握することが可能と なる。  まず、代表者モデル(Sprecher-Modell)は、合議制原理と職務関連的分業が適 用される場合に存在する(図表4−5参照)。 図表4−5 最高管理の組織の代表者モデル. 出所:v. Werder 2 008, S. 1 77を参考に、筆者が作成。.  上記の図表にも描かれている様に最高管理機関においては合議制原理が適用さ れるために、企業の最高管理には最高管理機関の構成員(A, B, C)が同権で参加 する。このため、最高管理機関内部にはヒエラルヒーが存在しない。また、分業 の方策としては職務関連的分業を採用しているため、部分領域の管理は被雇用者 が担うことになる。すなわち、ヒエラルヒーのレベルでみれば第二番目のレベル である被雇用者が部分領域の管理を行うこととなる。このモデルを採用している 具体例は、ジーメンス(Siemens AG)の取締役会が考えられる(v. Werder 20 08,. S.176 ff.)。  次に、部局モデル(Ressort-Modell)であるが、これは合議制原理と部局関連 的分業によって形成される(図表4−6参照)。. 70.

(19) 岡 本 丈 彦 図表4−6 最高管理の組織の部局モデル. 出所:v. Werder 2 008, S. 1 80を参考に、筆者が作成。.  上記の図表に描かれている様に、このモデルは代表者モデルと同様に、企業の 最高管理には、最高管理機関の構成員(A, B, C)が同権で参加するため、機関内 部には、ヒエラルヒーが存在しない。しかしながら、部局関連的分業を行うた め、最高管理機関の各構成員がそれぞれ与えられた部局を独立して管理すること になり、部分領域の管理をも兼任することとなる。したがって、被雇用者は部門 管理から担当することになり、ヒエラルヒーのレベルでみれば三番目から担うこ ととなる。また、最高管理機関の構成員は、企業の最高管理の職分を担うととも に、同時に企業の部分領域の管理をも担当するために、v. ヴェルダーは“2つ帽 子の原理(zwei Hte-Prinzip)”あるいは、 “兼任の原理”と呼んでいる。この様 なモデルを採用している具体例としては、ドイツ・ポスト(Deutsche Post World. Net)が考えられる(v. Werder 2008, S.180 ff.)。  続くヒエラルヒー・モデル(Hierarchie-Modell)は、単独決定原理と部局関連 的分業によって特徴づけられる。このモデルを図示したものが、図表4−7である。. 71.

(20) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察 図表4−7 最高管理の組織のヒエラルヒー・モデル. 出所:v. Werder 2 008, S.183を参考に、筆者が作成。.  これまでの2つのモデルにおいては、合議制原理を採用されていたが、このヒ エラルヒー・モデルにおいては、単独決定原理が採用されている。このため、企 業の最高管理は最高管理機関の構成員(A)が単独で担うこととなる。これによっ て、最高管理機関の内部にヒエラルヒー化が引き起こされる。つまり、構成員 (B、C)は、構成員(A)の指示を受けることとなる。また、部局関連的分業に したがって、機関構成員が部分領域の管理を担当する。これによって、被雇用者 はヒエラルヒーの三番目のレベルから担うことになる。このモデルの具体例とし て、v. ヴェルダーは Nestl SA(Socit Anonyme)を挙げている(v. Werder 2 0 08, S.1 83 ff.) 。  最後に、スタッフ・モデル(Stabs-Modell)であるが、単独決定原理と職務関 連的分業からなりたっている。これを図示したものが、図表4−8である。. 72.

(21) 岡 本 丈 彦 図表4−8 最高管理の組織のスタッフ・モデル. 出所:v. Werder 2 008, S. 1 86を参考に、筆者作成。.  上記の図表4−8に描かれているスタッフ・モデルにおいては、ヒエラルヒー・ モデルと同様に単独決定原理が適用される。このため、企業の最高管理は最高管 理機関の構成員(A)が単独で担うこととなり、機関内部にヒエラルヒー化が引 き起こされる。そして、同時に職務関連的な分業が図られているため、被雇用者 が部分領域の管理を担当する。このため、ヒエラルヒーの第二番目のレベルから 被雇用者が担うこととなる。なお、このスタッフ・モデルの具体例を挙げること が困難である。なぜならば、このスタッフ・モデルは中規模の同族経営の企業に おいて採用されることが多いが、この様な企業の組織図は、殆ど公開されること が無いためである(v. Werder 2008, S.186 f.)。  以上が、最高管理の組織の4つの基礎モデルであるが、これらはあくまでも理 論的なモデルであるため、企業によっては様々なヴァリエーションが存在してい る。また、ヒエラルヒー・トップに存在する権限をどの様にして、下位のレベル へと委譲するのかについても検討が必要である。. Ⅴ. 結.  以上において、v. ヴェルダーの企業概念を明らかにするとともに、企業管理と その担い手、そして、組織理論的な観点に加えて、法的な観点からも特徴づけら れる企業の管理組織について考察を行った。 73.

(22) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察  上述の様に、v. ヴェルダーの企業概念においては、企業を経済的に独立し、統 一的に管理された行為システムとして捉えている。そして、企業内部に存在する 業務の担い手の能力には限界があるため、一般的な企業においては個人間の分業 が図られている。しかしながら、分業を行うことによって発生する自律性コスト と、自律性コストを逓減させるために行われる調整によって発生する調整コスト の問題が存在している。また、組織的な観点から見れば、企業は分業の調整シス テムであるため、企業ではヒエラルキーの形態で調整が行われることになる。 ヴェルダー理論においては、以上の様な企業概念に基づき、自律性コストと調整 コストから企業内部を考察していることが特徴である。  続いて企業管理は、企業のヒエラルヒー上層部に存在する最高管理機関だけが 担うのではなく、ヒエラルヒー外部に存在する他の法的な機関もこれを担ってお り、これらの機関には法的な権限が分権化されている。そして、v. ヴェルダーは、 最高管理機関をヒエラルヒーの組織理論上の構造に、会社法上の機関システムを 結合する存在であると定義づけている。  最後に、ヴェルダー理論において、企業の管理組織は組織理論的な観点に加え て、法的な観点からも考察が行われている。法的な観点から考察する場合には、 企業の管理組織は、企業管理の担い手である最高管理機関と他の法的な機関から 構成されるトップ組織が該当する。また、組織理論的な観点から考察を行う場合 には、最高管理機関と直ぐ下のヒエラルヒーのレベルを包括する組織から構成さ れる最高管理の組織がそれに該当する。トップ組織は、企業の目標設定の定式化 と実現に、企業内外の特定の個人と集団が参加することを規定している。した がって、トップ組織の分析によって、最高管理機関の自由裁量の余地を制約する 法的な機関(例えば、監査役会)と、そこに参加する企業内外の利害集団を法的に 特定することができる。この様な分析は、コーポレート・ガバナンスにおいて も、非常に重要な意義がある。  最高管理の組織においては、法的機関である最高管理機関の内部だけではな く、最高管理機関の直ぐ下のヒエラルヒーのレベルが包括される。それによっ て、法的な観点からだけでは考察することができない最高管理機関の直ぐ下のヒ エラルヒーのレベルに存在する構成員についても考察することができる。このレ ベルに存在する構成員は、法的に見えれば被雇用者ではあるが企業の部分領域の 管理を担う場合があるため、v. ヴェルダーはこの領域も考察の対象としているの である。 74.

(23) 岡 本 丈 彦  ここで、今後の課題についても触れておこう。ヴェルダー理論をさらに解明す るためには、v. ヴェルダーの企業概念や管理概念が、長い歴史を持つ経営経済学 の中で、どの様に位置づけられるのかを明らかにする必要があるであろう。そし て、ヴェルダー理論においては組織理論的な観点だけではなく、法的な観点から も考察が行われるが、この様な企業の管理組織の把握は、どの様にして展開され てきたのか、そして、他の研究者が主張する企業の管理組織の考察対象とはどの 様な理論的差異があるのかについても研究を行う必要がある。. (筆者は、関西学院大学大学院博士課程後期課程1年). 75.

(24) v. ヴェルダーの企業の管理組織についての一考察 参考文献 Frese, E.(2 00 0) ,Grundlagen der Organisation : Konzept - Prinzipien - Strukturen. 8. Aufl., Wiesbaden,(清水敏允監訳 井藤正信・宮田将吾・山縣正幸・柴田 明訳(2 0 1 0) ,『組織デザインの原理 ∼構想・原則・構造∼』 文眞堂。) Gerum, E.(2 00 7),Das deutsche Corporate Governance System : Eine empirische Untersuchung, Stuttgart. v. Werder, A. (19 8 7) , Organisation und Unternehmungsfhrung, in : Frese, E.(1 987) , Unternehmungsf¨ uhrung, Augsburgm, S.29 9-385. v. Werder, A. (20 08), Fu ¨hrungsorganisation : Grungdlagen der Corporate Governance, Spitzen- und Leitungsorganisation, 2. Aufl., Wiesbaden. 海道ノブチカ(2 005),『ドイツの企業体制 ―ドイツのコーポレート・ガバナン ス―』森山書店。 宮田将吾(20 1 0) ,「トップマネジメントの職務と組織」『京都学園大学経営学部 論集』第1 9巻第2号 , 75-92頁。 メーシェル , ヴェルンハルト著 小川浩三訳(2010), 『ドイツ株式法』信山社。 吉田修(1 99 4), 『ドイツ企業体制論』森山書店。. 76.

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参照

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