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モビリティの進化 -先進的な交通社会を目指して-:5. 高齢社会と知能化自動車

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Academic year: 2021

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(1)特 集. モビリティの進化─先進的な交通社会を目指して─. 基 応 専 般. 高齢社会と知能化自動車. 5. 鎌田 実(東京大学高齢社会総合研究機構). 高齢化と移動 日本の高齢化率(全人口に占める 65 歳以上人口. 知事連合の高齢者にやさしい 自動車開発. の 割 合 ) は 2012 年 9 月 に 24.1 % と な り,4 人 に. 地方地域では公共交通が貧弱なため,移動はもっ. 1 人が高齢者という時代もまもなくであり,世界で. ぱらマイカー主体になっているが,既存の車は特に. 最も高齢化が進んでいる国となっている.日本の高. 高齢者の使用に配慮したものはほとんどなかった.. 齢化はさらに進んでいき,2030 年には 32%,2055. 全国 35(のちに 36)の知事が合同で,高齢者にや. 年には 4 割に達すると予想されている.また,75. さしい自動車開発知事連合を 2009 年 5 月に設立し,. 歳以上の後期高齢者の数がこれから急増することに. 専門家やメーカ・行政などが加わる開発委員会を設. なり,高齢者の高齢化が日本の高齢化の大きな特徴. けて,活動を行っており,2011 年 2 月には新しい. である.上記の数値は日本全体のものであり,地方. コンセプトを盛り込んだ中間報告を行い,同年秋に. の過疎地域ではすでに 3 割を超えたところも少なく. は実証実験も行ってきた.以下,この活動の主要な. なく,限界集落の問題も顕在化している.一方,大. 部分を紹介する(詳しい報告書は,事務局の福岡県. 都市部では,団塊の世代が高齢者となっていくため,. Web サイト. 1),2). にある).. 高齢者人口の急増が顕著であり,その対応も大きな 課題となっている.. ■■アンケート. 人口構成が大きく変わっていく中で,移動や交通. 高齢者の移動の実態やニーズ等を把握するために,. の分野でも高齢化対応が重要になる.これまで高齢. アンケートを実施した.30 を超える道府県が参加. 者はどちらかというと交通弱者として扱われており,. するため,それぞれ 300 程度のサンプルを集める. 交通事故でも被害者になるケースが多かった.しか. こととし,全体では 1 万人規模のアンケートとなり,. し,高齢者数の増大にともない,高齢ドライバ数も. かつてないものが実施できた.質問項目は,車への. 増加傾向であり,高齢ドライバが第 1 当事者とな. 要望や不満等を中心に,家族構成や公共交通機関. る交通事故も増えている.加齢により運転能力が低. など生活に関するものも加えた.最終的に,10,856. 下することにより,事故を起こしやすくなっている. 件の回答が得られ,前期高齢者 4,580,後期高齢者. という指摘もある.. 4,658,高齢者予備軍の 65 歳未満が 1,037,また都. 本稿では,高齢者の移動の問題を考え,高齢者に. 市部 3,090,地方都市 3,193,農村部 3,074,男女. やさしい自動車開発に乗り出した知事連合の活動を. 比は 8:2 とバランスよいデータを集めることがで. 示し,それに関連して筆者らが取り組んでいる自動. きた.結果の詳細は報告書にあるので,ここでは概. 運転知能を応用した運転支援システムの開発プロジ. 要のみを記す.車の使用頻度は,毎日 64%,週 3. ェクトについて紹介していく.. 〜 4 回が 25%で,それだけで約 9 割に達した.普 段の運転距離は,59%が 10km 以下であり,約半. 316. 情報処理 Vol.54 No.4 Apr. 2013.

(2) 5. 高齢社会と知能化自動車. 分類. アンケートの回答結果. ニーズ. ①近距離の運転しか行わず 高速道路を利用しない者 (3 割). ・車の利用目的…買い物:8 割 通院:4 割 地域活動:3 割 ※ドライブや旅行にはほとんど利用しない ・運転頻度…毎日:5 割 週 3 〜 4 回:3 割 週 1 〜 2 回:1 割 ・普段の運転距離…10km 以内:8 割 10km 超:2 割 ・希望サイズ…軽自動車サイズ:6 割 小型自動車サイズ以上:3 割 ・重視するもの(※安全,価格,燃費以外) 乗り降りのしやすさ>視界のよさ>小回り>乗り心地 ・希望価格…100 万円以下:5 割 101 万円〜 150 万円:4 割 151 万円〜 200 万円:1 割 201 万以上:ほとんどなし. ・ 日常生活のために車を利用 ・ 運転頻度は高いが,普段の運転 距離は短い ・ 小さいサイズの車を好む ・ 視界,小回りなど運転のしやす さを重視 ・ 安価な車を希望. ②長距離の運転を行い 高速道路を利用する者 (4 割). ・車の利用目的…買い物:8 割 地域活動:4 割 通院:3 割 ドライブ:2 割 旅行:2 割 ・運転頻度…毎日:7 割 週 3 〜 4 回:2 割 週 1 〜 2 回:1 割 ・普段の運転距離…10km 以内:5 割 10km 超:5 割 ・希望サイズ…軽自動車サイズ:3 割 小型自動車サイズ以上:5 割 ・重視するもの(※安全,価格,燃費以外) 乗り心地>視界のよさ>乗り降りのしやすさ>高速走行時の安定感 ・希望価格…100 万円以下:2 割 101 万円〜 150 万円:4 割 151 万円〜 200 万円:3 割 201 万以上:1 割. ・ 日常生活のほか,旅行やドライ ブにも車を利用 ・ 大きいサイズの車を好む ・ 乗り心地や高速走行時の安定感 なども重視 ・ ある程度の価格は許容 等. ③長距離の運転は行うが 高速道路を利用しない者 (2 割). ・近距離の運転しか行わない者の回答結果およびニーズに類似. ④長距離の運転は行わないが 高速道路を利用する者 (1 割) 表 -1 高齢者 1 万人アンケートからの分類. ・回答結果は全体平均に類似 1). 数の人は高速道路を使用していなかった.普段の乗. 能性について議論を行った.この種の検討は,国土. 車人員は 1 名が 40%,2 名が 54% で,それだけで. 交通省の ASV(先進安全自動車)プロジェクトとし. 9 割を超えている.不満な点は,夜間の視認性,合. て研究開発がなされているものであるが,技術とし. 流や右折の判断,乗り降りや後退時の体の負担など. て実用化されているもの,実用化されているが高級. の指摘が多かった.車に求めるものとしては,燃費,. 車しか設定がないもの,研究開発段階のもの,とい. 安全,価格への重視の割合が高かった.. ったかたちで分類整理し,さらに車両単体の自律的. アンケート結果から,分類分けすると,高速道路. 要素と,インフラ等との通信が必要なものといった. 走行の有無と 1 日の走行距離が 30km を超えるかど. 整理も行った.その結果を表 -2 に示す.64 種のう. うかで整理ができ,表 -1 のようになった.前期高. ち実用化済みなのは 46 にとどまり,価格の点から. 齢者では長距離・高速ありが 48% で一番多く,後. 容易に普及がはかりにくいものも多い.. 期高齢者では近距離・高速なしが 34% で一番多い 集団となった.表 -1 の①のカテゴリが従来の車に. ■■コンセプト. はないもので,こういった車の開発が求められてい. さまざまな検討をもとに,表 -3 のような車両コ. くものと考えられた.. ンセプトをまとめた.支援機能は 2 タイプ共通で あるが,車両規格としては,これまでにない 2 人. ■■技術調査. 乗り超小型車を提案している.後者のスペックを. 高齢者が起こしやすい事故について,全国の事故. 表 -4 に示す.. 統計や福岡県警の協力による事故事例などを分析し. このようなものが,高齢者にやさしい自動車とし. た.また,高齢者の運転特性などを文献調査し,事. てユーザに受け入れられるかを確認するために,デ. 故防止機能 30 種および運転能力向上機能 26 種を. モビデオを作り,高齢者約 1,000 人に対してインタ. リストアップした(さらに積雪寒冷地ニーズ 8 種. ビュー調査を行った.その結果,支援機能について. も) .これらを要求機能として,技術的な対応の可. は約 9 割が欲しいと回答,2 人乗り超小型車につい. 情報処理 Vol.54 No.4 Apr. 2013. 317.

(3) 特 集. モビリティの進化─先進的な交通社会を目指して─. 運転能力向上機能(26 機能). 事故防止機能(30 機能). 積雪寒冷地向けオプション(8 機能). ○ 1 機能 ○ 7 機能 車体構造や ・ アクセルとブレーキの踏み間違いを防ぐペダルの ・ 見やすいメータやスイッチ類 レイアウト, 配置や構造 ⇒メータ直径や文字の大型化,スイッチ類の最適 デザイン等で ⇒踏力調整,ペダル間の間隔設定・段差の最適化 レイアウトによる視認性向上 対応 ・ 楽に乗り降りができる車体構造 (8 機能) ⇒着座位置のレイアウト最適化,低床フロア,ア シストグリップ 支 実用化済 援 普及度 高 の機能 装 (6 機能) (46 機能) 置 の 装 備 に よ 普及度 低 る (32 機能) 対 応. ○ 4 機能 ・ 高制動のブレーキ/タイヤ ⇒ ABS(アンチロックブレーキシステム) ・ブレーキ踏力の補助機能 ⇒ブレーキアシスト. ○ 1 機能 ・ 楽にハンドル動作ができる機能 ⇒パワーステアリング ○ 1 機能(積雪寒冷地向けオプション) ・ブレーキ時のスリップを防止する機能 ⇒ ABS(アンチロックブレーキシステム). ○ 10 機能 ○ 15 機能 ・ 交差点で死角から接近する側方車を知らせる機能 ・ 夜間や雨の日でも周囲を見やすくする機能 ⇒交差点左右視界情報提供装置 ⇒配光可変型前照灯 ・ 前方車との車間距離を維持する機能 ○ 7 機能(積雪寒冷地向けオプション) ⇒車間距離制御装置 ・発進時のタイヤの空回りを防止する機能 ⇒ TCS(トラクションコントロールシステム). ○ 15 機能 ○ 3 機能 ・ 横断歩道を通行する自動車や歩行者の存在を知ら ・ スーパーの駐車場から道路に出る場合などで合流 実用化に至っていない機能 せる機能 を支援する機能 (18 機能) ・ 赤信号を知らせる機能 ・ 夜間に対向車のライトによるまぶしさを防止する ・ 交差点の状況を感知して発進を支援する機能 機能 ・ サイレンや踏切音を知らせる機能 表 -2 技術調査のまとめ. 1). 車 両 規 格. ○軽,小型・普通自動車 (長距離用高齢者自動車). ○軽自動車より小さい 2 人乗り自動車 (近距離専用 超ミニ高齢者自動車). 颯爽と走れるクルマ 長距離の旅行やドライブにも最適. ちょい乗り(日常生活)に便利なクルマ 細い道や狭い駐車場もラクラク. 支 援 機 能. ○事故防止機能 (アクセルとブレーキの踏み間違いを防止する 機能) ・踏み間違いを感知し,自動で止まる機能 (追突事故を防止する機能) ・車間距離を維持する機能 等 (右折時の事故を防止する機能) ・対向直進車の接近を知らせる機能 等 (出会い頭事故を防止する機能) ・死角から接近する側方車を知らせる機能 等. ○運転能力向上機能 (知覚機能を補助する機能) ・夜間や雨の日でも周囲を見やすくする機能 ・見やすくシンプルなメータやスイッチ類 等 (体力,筋骨格系機能を補助する機能) ・乗り降りしやすい車体構造 ・楽な姿勢でバックの運転ができる機能 等 (情報処理機能を補助する機能) ・右折を避けて目的地まで案内する機能 ・合流を支援する機能 等. <積雪寒冷地向けオプション>. ・冬道でのタイヤのスリップを防止する機能 ・フロントガラス等の凍結を防止または短時間で溶解する機能 等. ては約 7 割から支持があった.. 表 -3 車両コンセプト. 1). を図 -2 に示す.. さらに,車両イメージを明確化するために,デザ. 318. インのコンテストも実施した.約 100 点の応募が. ■■実証実験. あり,図 -1 のものが最優秀作品として選ばれた.. 車両のイメージがまとめられたが,実際の使用環. 2011 年の東京モーターショーでは,数社から 2 人. 境の中で,超小型車がどのように受け止められるか. 乗り車のコンセプトモデルが出品された.その一例. を確認するために,実証実験を行った.実験は,国. 情報処理 Vol.54 No.4 Apr. 2013.

(4) 5. 高齢社会と知能化自動車. サイズ 定員. ○長さ 2.3m 〜 2.8m 運転スペースのほか荷物スペースにも配慮 ○幅 1.3m 〜 1.4m 横に 2 人が座れるスペースを確保 ○高さ 1.5m 〜 1.6m 高齢者があまり腰を曲げないで乗り降りができる高さ 2名. 最高速度. 時速 60 キロ以下 ・生活道路および一般道路は走行可 ・高速道路は走行不可. 航続距離. 60km 程度 (メーカによる実測値) ・エネルギー使用の多いヒーター使用時でも航続距離 30km 程度を確保 ※ヒーターのフル使用時には航続距離は半減. 車両重量. 700kg 以下. ※ FRP(繊維強化プラスチック),アルミ,スチール等,使用する素材等によって車両重量に幅がある.. 燃料の種類 電気(バッテリ) ※家庭用電源で充電可 10kW 〜 20kW 最高出力 ・混合交通下でスムーズな運転ができる加速性能を確保 ・山間部における十分な登坂性能を確保 表 -4 2 人乗り超小型車のスペック. 1). 図 -2 コンセプトモデルの例(ダイハツ・PICO) ①小回りが利いて運転しやすい車両 ②コンセプトの支援機能の中で特に高齢者の要望が高い機能 ③高齢者に魅力的な車体デザイン (高齢者にやさしい自動車の車体デザインコンテスト最優秀作品). 図 -1 デザインコンテストの作品. 1). 体験走行会は,高齢者に限らず多様な年齢層の 方々に,市内一周(4.2km)を,小型乗用車(ビッツ), 2 人乗り 2 車種(ezone および日産ニューモビリテ. 土交通省の環境対応車を活用したまちづくりのプロ. ィコンセプト),1 人乗り(コムス)の合計 4 種を. ジェクトの一環として実施され,福岡県朝倉市の. 乗り比べてもらうもので,33 名が参加した.実験. 2 地区(美奈宜の杜,杷木)での市民モニタ(1 週. の模様を図 -3,4 に示す.. 間貸し出す)と朝倉市中心部での体験走行会(2 日. モニタ実験のアンケート結果としては,1 〜 2 人. 間)を行った.詳細は報告書を参照いただくことと. 乗り車の利活用で約 2 割の人が日常行動に変化が. し,ここでは大まかな概要のみを記す.. あったと回答し,その半数は気軽に外出できるよう. モニタ実験では,2 地区それぞれ 16 名で,自己. になったと答えている.また,将来の利用意向とし. 所有車,2 人乗り(韓国製 ezone) ,1 人乗り(ト. ては,63% が使いたいと答え,69 歳以下が 53% に. ヨタ車体コムス)の 3 種について,それぞれ 1 週. 対し 70 歳以上では 71% と高年齢ほど評価が高い.. 間日常生活で使用し,常時記録ドライブレコーダで. 超小型車は比較的ゆっくり走るため,後続車の渋滞. 記録しアンケートに答えてもらった(知事連合で提. や追い越し・あおりが気になるが,常時記録ドライ. 案するコンセプトの市販車はないため,市場で入手. ブレコーダの 100 時間分の映像分析からは,渋滞. 可能な超小型車を実験車として用いた).. は皆無,追い越しは 13 件,あおりは 6 件が確認さ. 情報処理 Vol.54 No.4 Apr. 2013. 319.

(5) 特 集. モビリティの進化─先進的な交通社会を目指して─. なども顕著になってきている.運転免許の返納や認 知機能検査(講習予備検査)をもとに更新不可とす ることもなされてきているが,後期高齢者のドライ バの急増に向けて,色々な面からの対応が必要にな 図 -3 体験走行会の模様 1. ってきている. ITS 等の技術により,情報提供や警報などの運転 支援システムが研究レベルから実用レベルになって きているが,高齢者では情報支援が有効でないケー スも少なくないという報告もある.高齢ドライバの 特性はさまざまで一括りにできるものではないが, 頭の処理能力の点から,せっかくの情報支援がうま く伝わらなかったり,さらに驚いてパニックになっ たりしてしまうことが懸念される.. 図 -4 体験走行会の模様 2. 一方,自動運転の研究開発も進んできており,イ ンフラ協調でも自律でも条件がよければあるレベル. れた.追い越しがしやすい環境を用意するか,制限. までの自動運転は技術的に可能になってきている. 速度の低速化で他車も含めてゆっくり走るような環. (しかし,まだ万能とは言えず,万一の場合の責任. 境を用意するかが必要と思われた.. 問題を考えると,実社会への適用にはハードルが高. 体験走行会でも超小型車はおおむね好評で,特に. いと言わざるを得ない).. 狭路走行では幅の狭い車種は容易にすれ違いができ,. 以上の背景から,自動運転技術を運転支援に役立. 運転しやすさについて高い評価が得られた.また,. てる,特に高齢者の日常の生活圏における走行条件. 心理的な面も測るため,心拍計を装着してもらった. 下で比較的安価で普及を広めることを重視した開発. が,今回の条件設定の範囲では車種間の違いは有意. プロジェクト「高齢者の自立を支援し安全安心社会. には現れなかった.. を実現する自律運転知能システム」を 2011 年から. 以上の実証実験から,いくつかの課題はあるもの. スタートさせた.トヨタ自動車,豊田中央研究所,. の,超小型車が高齢者の日常生活の足として活用で. 東京農工大学,東京大学が共同し,JST の「戦略的. きるという手ごたえが得られた.. イノベーション創出推進プログラム」(通称,s イ ノベ)のプロジェクト. 320. 3). として採択され,鋭意検. JST s イノベのプロジェクト紹介. 討を進めているところである.. ■■ねらい. ■■開発仕様と展開計画. 知事連合のプロジェクトでも確認されたように,. プロジェクトは 10 年間で社会実装し普及を目指. 公共交通の貧弱な地域においては,日常の足として. すというもので,3 つのフェーズからなる.第 1 フ. マイカーが重要であり,それがないと自立した生活. ェーズは,開発企画を行い,各所のリソースをもと. ができなくなるともいえる.しかしながら,加齢に. にハード・ソフトの共通プラットホームを構築し,. より運転能力の低下が見られ,交通事故の懸念があ. 要素技術開発を進め,受容性に関する初期検討を行. る.統計によると,高齢ドライバ数も高齢ドライバ. い,プロトタイプ車のスペックを定めるところまで. が第 1 当事者になる交通事故の件数も上昇傾向で,. で,2012 年度で終了する.第 2 フェーズはプロト. 特に認知症や軽度認知障害により,逆走による事故. タイプ車を作成し,テストコースや実フィールドに. 情報処理 Vol.54 No.4 Apr. 2013.

(6) 5. 高齢社会と知能化自動車. ステージI(H22~24年度) ;基本システム・要素技術の研究開発 ステージII(H25~28年度) ;プロトタイプ車の完成,社会実験(FOT)での改良と市販化準備 ステージIII(H29~31年度) ;普及に向けた取り組み および 日本発信のグローバル標準への展開. Ⅰ. 低速域 低速域(30km/h以下)の (30km/h以下)の 自動危険回避システムの基本機能 自動危険回避システムの基本機能. 1. 要素技術. * FOT : Field Operational Test. 日本発信のグローバル標準への展開 さらなる飛躍に向けた先端研究. レーザスキャナ・カメラ (独自センサ・ハードウェア 開発)と識別性能向上. 前方車両衝突回避. 自動運転機能の 公道実証実験 (FOT). シミュレータ実験. より広範囲で詳細に 2. 外界環境認識 ・予測. 車,歩行者,自転車の属性判別, 外界障害物予測. 福井県 大野市. 歩行者・自転車衝突回避. 経験値による状況判断. 模擬市街路実験. 3. ドライバモデル. 危険予知,リスクポテンシャル, アルゴリズム. Ⅲ. 愛知県 豊田市. Ⅱ. 千葉県 柏市. ドライブレコーダで ドライブレコーダで フィールデータ分析 フィールドデータ分析 フィールデータ分析. 山梨県 河口湖町. • 高齢者の受容性評価 • 死傷者低減効果の推定. 走行レーンからの逸脱. 危険度の等高線図 4. 危険回避 アルゴリズム. 安全な経路候補と適正速度を生成 危険回避経路の生成. 高齢運転者を見守る 知能化モビリティ技術の創出・市販化 知. 出合い頭事故防止. 図 -5 プロジェクトの展開計画. ドライバ 運動制御. 知能化. HMI. 地図DB. センサフュージョン LIDAR モジュール CAMERA モジュール. 車両センサ. 運転知能モデル 基本走行 ドライバモデル. 潜在リスク予測 ドライバモデル. 緊急回避 ドライバモデル. 前方注視点モデル 先行車追従モデル 単独走行モデル. 構造物,移動物体,先行車, 歩行者,自己位置,車両運動 白線,縁石,横断歩道, 一時停止線,etc. 衝突までの時間. Y. 支援量決定. GPS. Driver preview point. V. Vehicle. yc O. Lψ. ψ Desired path. L =V � Tp. ε. y* X. ルールベース. 熟練者の 知識ベース. 10 s. 5s. 物理法則. 1s. 車両運動制御モデル. 自律運転知能. 信頼度確認・制御出力値生成. センシング. Accel.. Steer Brake. 0s. 通常時 (基本走行) 潜在リスクを含む場面(リスク予測) 緊急時(事故回避) 事故. 図 -6 開発システムの概要 . おいて走行実験を行いつつ,ドライバならびに社会. ポイントとなることは,完全自動ではなく,通常. の受容性検討を行っていき,市販レベルのスペック. は運転者に主権があるものの,自動運転知能が見守. をまとめるところまでで,2016 年度まで.第 3 フ. り,ある範囲を逸脱した際に制御介入がなされる. ェーズは市販を開始し,市販車でモニタを募り,フ. ようなシステムを目指していることである(図 -6).. ィールドデータを収集し,さらなる改善や技術の高. 衝突寸前の被害軽減や回避については,自動ブレー. 度化を目指すという展開計画になっている(図 -5).. キが商品化されているが,ここで目指すのは,衝突. 情報処理 Vol.54 No.4 Apr. 2013. 321.

(7) 特 集. モビリティの進化─先進的な交通社会を目指して─. 寸前だけでなく,リスクが高まらないように熟練者. と s イノベのプロジェクトを紹介してきた.高齢者. ドライバモデルにより見守り・介入を行うことであ. がいきいきとした生活を送っていくためには適切な. り,障害物のセンシングとその挙動予測,熟練ドラ. 移動手段があることが必須であり,地方地域ではマ. イバモデルの構築,制御介入のやり方の受容性など. イカーの役割が大きく,高齢者にやさしい自動車,. が研究開発項目になる.. あるいは知能化運転支援システムが,その手段とし て非常に重要な役割を占めると考えられる.それぞ. ■■これまでの進捗等. れのプロジェクトがさらに進展した段階で再度ご紹. これまで各所でなされてきたものの一部は,東京. 介していきたい.. モーターショーでのトヨタ AVOS や農工大自動危. 終わりに,本稿で紹介した内容は,それぞれのプ. 険回避コムスなどで一般向けに公開されているほか,. ロジェクトからの提供で,図表も報告書等からの引. ITS 国際会議や fastzero11 などで講演やパネル展示. 用であることを記し,結びとする.. 等をしてきている. 現在取り組んでいる内容については,しかるべき 時期に研究発表等をしていく予定であるが,新しい システムの社会的受容性については,車両メーカ 1 社だけで対応できる話ではなく,メーカ相互の連 携・協調や,大学等の研究組織も入ったかたちでの 受容性検討を続けていく必要があり,複数メーカで の連携については FAST 研究会. 4). 参考文献 1) 高 齢 者 に や さ し い 自 動 車 開 発 委 員 会 報 告 書(2011 年 2 月 ),http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/39/ 39250_12681916_misc.pdf 2) 高齢者にやさしい自動車開発推進知事連合 高齢者にやさ しい自動車開発委員会 合同会議(平成 24 年 3 月 27 日), http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/61/ 61540_14943400_misc.pdf 3) http://www.jst.go.jp/s-innova/research/h22theme05.html 4) http://www.asahi-net.or.jp/~yw5m-tti/fast/index.html (2012 年 12 月 10 日受付). を立ち上げて議. 論を重ねてきている.. まとめ 本稿では,これから日本が迎える超高齢社会の状 況について示し,それに向けて動いている知事連合. 322. 情報処理 Vol.54 No.4 Apr. 2013. 鎌田 実 [email protected] 1987 年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.1990 年同大 講師,91 年同助教授,2002 年同教授,2009 年から現職.自動車技 術会,日本機械学会,日本生活支援工学会などの会員..

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