電子社会を推進する暗号技術:1.21世紀初頭の暗号技術2.代数曲線上の公開鍵暗号
3
0
0
全文
(2) 1. 21 世紀初頭の暗号技術 2. 代数曲線上の公開鍵暗号. �. �. �. �. �. �. 図 -3 種数 3 の超楕円曲線の例. 図 -1 楕円曲線の例. . 楕円曲線,超楕円曲線,Cab 曲線 �. 暗号応用に関していくらかの結果が知られている代数 曲線に Cab 曲線がある.有限体 Fq 上の Cab 曲線とは以下 の定義式を持つ非特異アフィン曲線である(図 -2) .. � �. ���������. ��������������������. ここで,fi, j. � ��� � � � � ��. Fq であり,a と b は 互いに 素な 自 然. 数である.Cab 曲線に対し「種数」と呼ばれる不変量が 図 -2 C45 曲線の例. ��. ���������� �. で定義される.F(x,y) = 0 を満足する Fq. の要素の対 (x,y). Fq と唯一の無限遠点 を,C の有理. 点という.代数曲線の暗号応用ではもっぱらこの有理点 で広く実社会において使われることはなかった.この原. の集合を扱う.. 因の 1 つに,約十年前までは,現実的な安全性を得るた. Fq 上の種数 g の超楕円曲線 C は,Cab 曲線のサブセッ. めの数論的問題のサイズを最小に固定したとき,RSA 暗. トとして,. 号のほうが楕円曲線暗号より高速な暗号化が可能であっ たことがある. しかし, 現在では,楕円曲線暗 号に 必. ����� ����� ����� ������. 要なサイズが 160 ビットであるのに対し,RSA 暗号には. � � � � ��� �� ����. 1,024 ビットが必要であるとされており,楕円曲線暗号. で与えられる(図 -3).楕円曲線とは,種数が 1 の超楕. は RSA 暗号と比較し数十倍高速な暗号化が可能である.. 円曲線のことである.. また,よりコンパクトな実装が可能である.したがって,. これらの曲線上で離散対数問題を定義するには,曲. 最近国内外で盛んに行われている公開鍵暗号の標準化作. 線上で有限可換群 G が定義される必要がある.大雑把に. 業では,RSA 暗号とともに楕円曲線暗号がリストアップ. 言って,Fq の g 次拡大体上の g 個の有理点の集合を 1 つ. されるようになった.楕円曲線暗号は現在では最も優れ. の要素とみたとき,それら全体の集合には加法が定義さ. た公開鍵暗号アルゴリズムであるが,楕円曲線自体は代. れ,この集合は有限可換群になる. 数曲線の中の非常に小さなクラスの 1 つに過ぎない.そ. 曲線に対しては有理点集合そのものが有限可換群になる.. こで,最近では,より効率的な公開鍵暗号アルゴリズム. このようにして得られた有限可換群 G 上の離散対数問題. ☆3. . したがって,楕円. を目指して,より一般的な代数曲線上の離散対数問題を 用いた暗号アルゴリズムの研究も盛んに行われるように なった.. ☆ 3 . 正確な定義は,文献 2), 6)等を参照いただきたい.. IPSJ Magazine Vol.45 No.11 Nov. 2004. 1115.
(3) 特集 電子社会を推進する暗号技術 を「代数曲線上の離散対数問題」と呼ぶ.また G 上の加 法は実際に効率的に計算可能であり,さらに暗号アルゴ リズムの速度に直接影響することから多くの研究が行わ. 安全な代数曲線の構成. れ,その速度は日進月歩に向上している.. 以上で見たように,安全な代数曲線を構成するために. . は,N を知る必要がある.この N は曲線 C のパラメータ. 代数曲線上の離散対数問題の解法. 設定により,q 付近で変動することが知られており,ラ g. ンダムに与えた C は高い確率で square-root 法に対する. 代数曲線暗号の解読にはさまざまな方法が考えられる. 安全性要件を満足しない.しかし,ランダムに与えた C. が,最も直接的な方法は代数曲線上の離散対数問題を解. に対する N の計算を O(log N) 回繰り返せば安全な代数曲. くことである.代数曲線上の離散対数問題の解法アルゴ. 線が得られる.したがって,安全な代数曲線の構成には,. リズムは大きく 2 つに分類される.1 つは square-root 法. C に対する N を計算するアルゴリズムが必要である.こ. と呼ばれる,代数曲線上に限らず離散対数問題一般に適. のアルゴリズムの構成は困難な課題であるが,楕円曲線. 用可能な方法であり,もう 1 つは代数曲線上の離散対数. に対しては効率的なアルゴリズムが提案されており,安. 問題に特化した方法である.Square-root 法は,G の位数. 全な曲線を豊富に構成可能である .また,Fq の標数が. N の最大素因子を Nmax としたとき,計算量 � ������ �. 小さい場合のアルゴリズムは近年目覚ましい進歩を遂げ,. のアルゴリズムである.代数曲線暗号の暗号化速度には. この場合には,安全な超楕円曲線も豊富に得られるよう. N の大きさが影響するので,実装効率を考慮すれば,N. になった.この分野も暗号応用というモチベーションを. はほぼ素数. ☆4. である必要がある.. 5). 得て急速に発展しており,Fq の標数が大きい場合につ. したがって,. いても,安全な曲線を豊富に得られる日は遠くないであ. 1. N はほぼ素数. ろう .. 2. N は十分に大きい(現状では最低 160 ビット程度). . 3. その上の離散対数問題に対し,square-root 法より 効率的な解法が知られていない. 6). 最近の話題. が,安全な暗号系を構成するための曲線 C の必要条件と. 代数曲線の暗号応用の近年の話題の 1 つに,楕円曲線. なる.. 等の種数の小さな曲線上の離散対数問題を種数の大きい. 一方,代数曲線上の離散対数問題に特化した解法に. 曲線上の離散対数問題に変換して解く,Weil descent 法. は,この離散対数問題を Fq の拡大体の乗法群上の離散. と呼ばれる代数曲線上の離散対数問題の解法アルゴリズ. 対数問題に変換し,これを解く方法と,Fq の加法群上. ムがある.これまでのところ,どのような曲線に対しこ. の離散対数問題に変換し,これを解く方法が知られてい. のアルゴリズムが効果を持つか等不明な点が多く,現在. る.前者の計算量は準指数時間であり,後者は低次多項. 盛んに研究がされている.もう 1 つの大きな話題に,ペ. 式時間である.ただし,これらが効果を持つ曲線はきわ. アリング暗号がある.これは代数曲線上の離散対数問題. めて稀に存在するのみである.また,これらが効果を持. を Fq の拡大体の乗法群上の離散対数問題に変換して解. つか否かは,N から簡単に判定可能である.これらとは. く際に用いられるペアリングと呼ばれる写像を用いた暗. 別に,種数の大きな曲線に対しては有限体上の乗法群上. 号アルゴリズムであり,逆転の発想といえるもので大変. の離散対数問題に対する準指数時間アルゴリズムの類推. 興味深い.これの詳細については提案者らの著書 を参. が働くことが知られている.このアルゴリズムは,種数. 照いただきたい.. が N とともに大きくなるという仮定の下で準指数時間ア. 参考文献. ルゴリズムであるが,固定された g に対しては指数時間 アルゴリズムである.また,g3 のとき square-root 法 より計算量が小さくなる.しかし,種数 3 程度の曲線に 対する 効 果については 議 論の 余 地がある. また,Fq の サ イ ズを 通 常より 大きくとれば,square-root 法に 対し 必要な耐性よりも大きな耐性を確保でき,安全な暗号系 を構成可能である.このように,現実的な安全性の議論 には,各解法に対する計算量の詳細評価が必要である. ☆ 4 . 大きな素数と小さな素数の積.. 1116. 45 巻 11 号 情報処理 2004 年 11 月. 4). 1)Blake, I., Seroussi, G. and Smart, N.: Elliptic Curves in Cryptography, LMS 265, Cambridge U. P.(1999). 2)Koblitz, N.: Algebraic Aspects of Cr yptography, Algorithms and Computation in Mathematics, No. 3, Springer-Verlag(1998). 3)岡 本 龍 明,内 山 成 憲 : 楕 円 曲 線 暗 号の 安 全 性について,情 報 処 理, Vol.39, No.12, pp.1252-1257(Dec. 1998). 4)笠原正雄,境 隆一 : 暗号∼ネットワーク社会の安全を守る鍵,共立 出版(2002). 5)佐藤孝和 : 有限体上の楕円曲線の位数計算アルゴリズム,日本応用数 理学会論文誌,Vol.13, No.2, pp.273-288 (2003). 6)松尾和人,有田正剛,趙 晋輝 : 代数曲線暗号,日本応用数理学会論文 誌,Vol.13, No.2, pp.231-243(2003). (平成 16 年 9 月 30 日受付).
(4)
関連したドキュメント
2012 年 3 月から 2016 年 5 月 まで.
被保険者証等の記号及び番号を記載すること。 なお、記号と番号の間にスペース「・」又は「-」を挿入すること。
脱型時期などの違いが強度発現に大きな差を及ぼすと
すべての Web ページで HTTPS でのアクセスを提供することが必要である。サーバー証 明書を使った HTTPS
(自分で感じられ得る[もの])という用例は注目に値する(脚注 24 ).接頭辞の sam は「正しい」と
補助 83 号線、補助 85 号線の整備を進めるとともに、沿道建築物の不燃化を促進
今日のセミナーは、人生の最終ステージまで芸術の力 でイキイキと生き抜くことができる社会をどのようにつ
これも、行政にしかできないようなことではあるかと思うのですが、公共インフラに