天文学をサポートする情報新技術:2.観測を支える新技術:2.すばる望遠鏡の制御技術
4
0
0
全文
(2) 天文学. 特集 . をサポートする情報新技術 . 図 -1 望遠鏡の構造と駆動方式. 構が用いられていたが,歯車減速機のフリクション変動. 算出する部分と,鏡面測定装置からの形状誤差を補正す. がサーボ系への外乱トルクとなり,すばるの場合は無視. る力を求める部分と,各支持点ごとにローカルに支持力. できない追尾誤差が生じる.この影響をなくすためにダ. を力指令に追随させる部分とからなる.. イレクトドライブ方式が採用された.その構造は片側に. 鏡面形状制御のように弾性体の形状を制御する場合は,. 磁石を円弧状に並べ片側にコイルを並べる同期式リニア. 実際に発生する変形は低次のモードが支配的である,形. モータとなっている.. 状の表現を簡単にできるなどの観点から,変形形状を鏡. また軸受けについてもフリクション変動を押さえるた. の固有モードで展開して取り扱う方法を採用している.. めに静圧軸受が用いられた.そのため,総重量 550 トン. また,測定された鏡面変形から低次のモードだけ取り出. の構造物を人の指で動かせるほどフリクションが小さい. す(モードフィルタをかける)ことにより測定ノイズな. 望遠鏡構造が実現されている.. どにより不必要に大きな力をアクチュエータに出すこと. 望遠鏡全体の制御系を図 -2 に示す.観測する星の光. を防げている.. は主鏡,副鏡で反射され,観測装置に一点に集められる.. 力アクチュエータの方式には,ボールスクリューと. 観測する星とは別の星が参照星として用いられ,この光. モータでばねを圧縮させて,その力を力センサで検出し. が鏡面測定装置と天体追尾装置に導かれる.鏡面測定装. フィードバックする方式が用いられている.力センサに. 置からは鏡面形状誤差が主鏡能動支持制御装置にフィー. は,音さに張力が加わると固有振動数が変化することを. ドバックされ,主鏡変形を補正するための支持力が力ア. 応用した音さ式を用い高精度(∼ 10 )を得ている.. クチュエータに出力される.天体追尾装置からは追尾誤. 鏡面形状測定方法として,シャックハルトマン方式が. 差信号が得られ,エンコーダ出力とともに架台駆動制御. 用いられている .構造は図 -3 に示すように主鏡からの. 装置にフィードバックされ鏡筒の向きを補正するための. 光を平行光にしたあとマイクロレンズを通して多数の点. トルクがモータに出力される.計算機は全体の統合,運. に集光するというものである.鏡面が正しい形状であれ. 用管理などを行う.. ば集光した点は正しく格子状に並ぶが,鏡面が変形する. 主鏡形状制御系のブロック図を図 -3 に示す.構成は. と集光した点の位置がずれる.このズレから鏡面変形を. 高度角θ EL(鏡の姿勢)を用いて鏡の自重分の支持力を. 求めることができる.この方式は 1 分間程度の時間をか. 1246. 45 巻 12 号 情報処理 2004 年 12 月. -5. 3).
(3) 2. 観測を支える新技術 2. すばる望遠鏡の制御技術. 図 -2 望遠鏡制御系. 図 -3 主鏡形状制御系 IPSJ Magazine Vol.45 No.12 Dec. 2004. 1247.
(4) 天文学. 特集 . をサポートする情報新技術 . 図 -4 総合分解能. 図 -5 追尾精度. けて測定することにより大気のゆらぎの影響を抑えるこ. ■ 今後の展開 ■. とができ,0.02 秒角程度の鏡面の傾きまで検出が可能で. . ある.. 日本の光学赤外線天文学は,1960 年に岡山天体物理 4). . ■ 星の光を用いた性能評価 ■. 総合分解能を評価した結果を図 -4 に示す.これは星. 観測所の 188cm 望遠鏡の完成から,1998 年の 8.2m すば る望遠鏡の完成までの 30 年間で大きくジャンプアップ した.この間に,世界各国は 3 ∼ 4m クラスの望遠鏡を 製作し,天文学的だけでなく,望遠鏡技術の面でも重要. の強度を赤外線カメラ(CISCO)で測定したものである.. な成果を挙げてきた.日本が 3 ∼ 4m クラスの望遠鏡の. 中心波長は 2.04 ミクロンで,露出時間は 10 秒間である.. 経験がないにもかかわらず,最高性能の 8.2m 望遠鏡を. FWHM(Full Width Half Maximum)は,解像度を表す. 完成することができたのは,日本の天文学者と民間の技. 1 つの 指 標で 星の 強 度の 最 大 点(Maximum)の 半 分. 術者がすばるという 1 つの目標に向けて新しい技術を開. (Half)の地点での幅(Full Width)を表す.FWHM で 0.2. 発してきたからと考えられる.. 秒の解像度が得られている.. こうしたすばる望遠鏡に応用している技術を発展させ,. 追尾精度を評価した結果を図 -5 に示す.参照星(ガイ. 次世代の 30m 以上の超大型望遠鏡の設計・製作にも役. ド星)の等級(Magnitude)を横軸にして追尾精度を表. 立てたいと考えている.. したものである.18 等 級から 19 等 級という 暗い 星を ガ イド星として使用すると追尾誤差を得るために必要な露 光時間は 1 ∼ 4 秒程度(cf. 12 等では 0.1 秒程度)と長くな るにもかかわらず 0.1 秒角程度の追尾精度が得られてい ることが分かる.この追尾精度には星の大気のゆらぎの 影響が含まれている.追尾誤差を周波数分析すると望遠 鏡の固有振動数(6Hz 程度)あたりに 0.03 秒角程度のピー クが若干ある.さらに追尾精度を向上させるためにこれ らの影響を抑える努力がなされている. 指向精度についても 1 秒角以下の精度がすばるの 4 つ の全焦点で達成されている.指向精度へは望遠鏡レール のうねりの影響が大きくこの補正テーブルを高精度化し, 指向精度を向上させる試みがなされている.. 1248. 45 巻 12 号 情報処理 2004 年 12 月. 参考文献 1)臼田知史,神澤富雄,伊藤 昇 : すばる望遠鏡の計測制御技術,計測 と制御 , Vol.43, No.3(Mar. 2004). 2)伊藤 昇:大型光学赤外線望遠鏡「すばる」に活かされる機械技術,日 本機械学会誌 , Vol.103, No.974(Jan. 2000). 3)Takato, N., Usuda, T., Tanaka, W., and Subaru Telescope Group : SPIE, 4837, 675(2002). 4)Usuda, T., Takato, T., Morino, J., Kosugi, G., Miyashita, A., Noumaru, J., Kanzawa, T., Hayashi, S.S., Letawsky, M., Yamashita, T., Itoh, N., Tanaka, W. and Subaru Telescope Group: SPIE, 4837, 831(2002) . (平成 16 年 11 月 12 日受付).
(5)
図
関連したドキュメント
シークエンシング技術の飛躍的な進歩により、全ゲノムシークエンスを決定す る研究が盛んに行われるようになったが、その研究から
大きな要因として働いていることが見えてくるように思われるので 1はじめに 大江健三郎とテクノロジー
これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,
*2 施術の開始日から 60 日の間に 1
今回、新たな制度ができることをきっかけに、ステークホルダー別に寄せられている声を分析
今年度は、一般競技部門(フリー部門)とジュニア部門に加え、最先端コンピュータ技術へのチ ャレンジを促進するため、新たに AI
当面の間 (メタネーション等の技術の実用化が期待される2030年頃まで) は、本制度において
⼝部における線量率の実測値は11 mSv/h程度であることから、25 mSv/h 程度まで上昇する可能性