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天文学をサポートする情報新技術:2.観測を支える新技術:2.すばる望遠鏡の制御技術

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Academic year: 2021

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(1)                          2. 観測を支える新技術 2. すばる望遠鏡の制御技術 2. 観測を支える新技術. 2. すばる望遠鏡の制御技術 伊藤 昇 三菱電機(株) [email protected]. 1). ■ すばる望遠鏡の概要 ■. の単位で精度良く,しかも再現性良く制御する必要が ある..  ハワイには,富士山よりも標高が高い 4,205m のマウ.  以下,本稿では,すばる望遠鏡の持つ主たる制御技. ナケア山がそびえ立つ.その山頂には世界各国の最先端. 術について,設計段階の目標と実際の性能について解説. の天文学研究施設が建設されており,その一角にすばる. する.. 望遠鏡がある.すばる望遠鏡は,文部科学省国立天文 台が建設し,運用している有効口径 8.2m の光学赤外線 望遠鏡である.その口径は,一枚鏡としては世界最大で. ■ 設計目標性能と制御系の構成 ■. あり,現在定常運用されている望遠鏡の中でも有効口径. ★設計目標性能. 10m の Keck 望遠鏡 2 台に次ぐ大きさである.すばる望.  すばる望遠鏡の設計目標性能を次に示す.. 遠鏡は,1998 年のクリスマスイブにファーストライト を迎え,2000 年 12 月より,世界各国の天文学研究者向. 総合分解能:0.23 秒角(大気のゆらぎは含まない). けに共同利用装置として一般公開されている.. 指向精度:1 秒角.  すばる望遠鏡はこれまでにいくつもの素晴らしい天文. 追尾精度:0.07 秒角(大気のゆらぎは含まない). 学的な成果を生みだしてきた.最近の主なものでは,最. 駆動速度:毎秒 0.5 度. も遠い銀河の発見が挙げられる.天文学の最たるテーマ の 1 つに「宇宙の起源」がある.最古の宇宙の姿を知る.  総合分解能とは解像度のことで,分解能 0.23 秒角とは. ためには遠くの宇宙を観て,そこで何が起きているのか. 0.23 秒角(1 秒は 1 度の 1/3600)離れた星を識別できると. を知る必要がある.すばる望遠鏡は,その優れた結像性. いうことである.この高い解像度を達成するためには主. 能と他の大望遠鏡にはない主焦点の広視野カメラを駆使. 鏡の形状を数 10nm のオーダで理想の形状に保ち,天空. し,最も遠い銀河の発見・研究で最先端の道を走っている.. を動いていく星を 100 分の数秒のオーダで望遠鏡が追尾.  こうした最先端の研究を可能にしているのは,新しい. できることが必要である.指向精度とは,目標の星に望. 計測および制御技術を開発し,実際に応用利用している. 遠鏡を向けることができる精度を表す.いったん,星を. ためである.その中でも以下の 2 つの計測技術が特記す. 捕捉した後は,目標の星は視野上静止していることが要. るに値する.. 求される.追尾精度とは視野上の捕捉後の星の静止精度. (1)すばるの主鏡は厚さがたったの 20cm しかない.と はいえ, 重さ 23 ト ンにも 達する 主 鏡を 表 面 精 度 約 50nm 以下の誤差でどんな姿勢に対しても維持する必. を表す.高い追尾精度を達成するためには高精度で,ま た風外乱などに対して抑圧度が高い制御系が要求される. 2). 要がある.このため,すばる望遠鏡では「能動光学方. ★制御系の構成. 式」による制御を導入し,261 本の「アクチュエータ」.  望遠鏡構造と駆動方式を図 -1 に示す.望遠鏡構造は. というロボットの指が 0.1 秒ごとにコンピュータ制御. 総重量 550 トンの精密な構造物である.また,望遠鏡構. されることで目標を達成している.. 造のうち鏡筒は高度軸まわりに回転でき,鏡筒と架台は. (2)重さ 550 トンに達する望遠鏡を,天文学の観測天体. 方位軸まわりに回転できる構造となっており全天の星を. である星や太陽系内の惑星や彗星などの動きに合わせ. 指向追尾させることができる.. て制御するためには,望遠鏡の機械部分で 1 ミクロン.  従来の望遠鏡ではモータと歯車減速機からなる駆動機 IPSJ Magazine Vol.45 No.12 Dec. 2004. ※タイトル写真は国立天文台提供. 1245.

(2) 天文学. 特集 . をサポートする情報新技術                          . 図 -1 望遠鏡の構造と駆動方式. 構が用いられていたが,歯車減速機のフリクション変動. 算出する部分と,鏡面測定装置からの形状誤差を補正す. がサーボ系への外乱トルクとなり,すばるの場合は無視. る力を求める部分と,各支持点ごとにローカルに支持力. できない追尾誤差が生じる.この影響をなくすためにダ. を力指令に追随させる部分とからなる.. イレクトドライブ方式が採用された.その構造は片側に.  鏡面形状制御のように弾性体の形状を制御する場合は,. 磁石を円弧状に並べ片側にコイルを並べる同期式リニア. 実際に発生する変形は低次のモードが支配的である,形. モータとなっている.. 状の表現を簡単にできるなどの観点から,変形形状を鏡.  また軸受けについてもフリクション変動を押さえるた. の固有モードで展開して取り扱う方法を採用している.. めに静圧軸受が用いられた.そのため,総重量 550 トン. また,測定された鏡面変形から低次のモードだけ取り出. の構造物を人の指で動かせるほどフリクションが小さい. す(モードフィルタをかける)ことにより測定ノイズな. 望遠鏡構造が実現されている.. どにより不必要に大きな力をアクチュエータに出すこと.  望遠鏡全体の制御系を図 -2 に示す.観測する星の光. を防げている.. は主鏡,副鏡で反射され,観測装置に一点に集められる..  力アクチュエータの方式には,ボールスクリューと. 観測する星とは別の星が参照星として用いられ,この光. モータでばねを圧縮させて,その力を力センサで検出し. が鏡面測定装置と天体追尾装置に導かれる.鏡面測定装. フィードバックする方式が用いられている.力センサに. 置からは鏡面形状誤差が主鏡能動支持制御装置にフィー. は,音さに張力が加わると固有振動数が変化することを. ドバックされ,主鏡変形を補正するための支持力が力ア. 応用した音さ式を用い高精度(∼ 10 )を得ている.. クチュエータに出力される.天体追尾装置からは追尾誤.  鏡面形状測定方法として,シャックハルトマン方式が. 差信号が得られ,エンコーダ出力とともに架台駆動制御. 用いられている .構造は図 -3 に示すように主鏡からの. 装置にフィードバックされ鏡筒の向きを補正するための. 光を平行光にしたあとマイクロレンズを通して多数の点. トルクがモータに出力される.計算機は全体の統合,運. に集光するというものである.鏡面が正しい形状であれ. 用管理などを行う.. ば集光した点は正しく格子状に並ぶが,鏡面が変形する.  主鏡形状制御系のブロック図を図 -3 に示す.構成は. と集光した点の位置がずれる.このズレから鏡面変形を. 高度角θ EL(鏡の姿勢)を用いて鏡の自重分の支持力を. 求めることができる.この方式は 1 分間程度の時間をか. 1246. 45 巻 12 号 情報処理 2004 年 12 月. -5. 3).

(3)                           2. 観測を支える新技術 2. すばる望遠鏡の制御技術. 図 -2 望遠鏡制御系. 図 -3 主鏡形状制御系 IPSJ Magazine Vol.45 No.12 Dec. 2004. 1247.

(4) 天文学. 特集 . をサポートする情報新技術                          . 図 -4 総合分解能. 図 -5 追尾精度. けて測定することにより大気のゆらぎの影響を抑えるこ. ■ 今後の展開 ■. とができ,0.02 秒角程度の鏡面の傾きまで検出が可能で.  . ある..  日本の光学赤外線天文学は,1960 年に岡山天体物理 4).  . ■ 星の光を用いた性能評価 ■.  総合分解能を評価した結果を図 -4 に示す.これは星. 観測所の 188cm 望遠鏡の完成から,1998 年の 8.2m すば る望遠鏡の完成までの 30 年間で大きくジャンプアップ した.この間に,世界各国は 3 ∼ 4m クラスの望遠鏡を 製作し,天文学的だけでなく,望遠鏡技術の面でも重要. の強度を赤外線カメラ(CISCO)で測定したものである.. な成果を挙げてきた.日本が 3 ∼ 4m クラスの望遠鏡の. 中心波長は 2.04 ミクロンで,露出時間は 10 秒間である.. 経験がないにもかかわらず,最高性能の 8.2m 望遠鏡を. FWHM(Full Width Half Maximum)は,解像度を表す. 完成することができたのは,日本の天文学者と民間の技. 1 つの 指 標で 星の 強 度の 最 大 点(Maximum)の 半 分. 術者がすばるという 1 つの目標に向けて新しい技術を開. (Half)の地点での幅(Full Width)を表す.FWHM で 0.2. 発してきたからと考えられる.. 秒の解像度が得られている..  こうしたすばる望遠鏡に応用している技術を発展させ,.  追尾精度を評価した結果を図 -5 に示す.参照星(ガイ. 次世代の 30m 以上の超大型望遠鏡の設計・製作にも役. ド星)の等級(Magnitude)を横軸にして追尾精度を表. 立てたいと考えている.. したものである.18 等 級から 19 等 級という 暗い 星を ガ イド星として使用すると追尾誤差を得るために必要な露 光時間は 1 ∼ 4 秒程度(cf. 12 等では 0.1 秒程度)と長くな るにもかかわらず 0.1 秒角程度の追尾精度が得られてい ることが分かる.この追尾精度には星の大気のゆらぎの 影響が含まれている.追尾誤差を周波数分析すると望遠 鏡の固有振動数(6Hz 程度)あたりに 0.03 秒角程度のピー クが若干ある.さらに追尾精度を向上させるためにこれ らの影響を抑える努力がなされている.  指向精度についても 1 秒角以下の精度がすばるの 4 つ の全焦点で達成されている.指向精度へは望遠鏡レール のうねりの影響が大きくこの補正テーブルを高精度化し, 指向精度を向上させる試みがなされている.. 1248. 45 巻 12 号 情報処理 2004 年 12 月. 参考文献 1)臼田知史,神澤富雄,伊藤 昇 : すばる望遠鏡の計測制御技術,計測 と制御 , Vol.43, No.3(Mar. 2004). 2)伊藤 昇:大型光学赤外線望遠鏡「すばる」に活かされる機械技術,日 本機械学会誌 , Vol.103, No.974(Jan. 2000). 3)Takato, N., Usuda, T., Tanaka, W., and Subaru Telescope Group : SPIE, 4837, 675(2002). 4)Usuda, T., Takato, T., Morino, J., Kosugi, G., Miyashita, A., Noumaru, J., Kanzawa, T., Hayashi, S.S., Letawsky, M., Yamashita, T., Itoh, N., Tanaka, W. and Subaru Telescope Group: SPIE, 4837, 831(2002) .  (平成 16 年 11 月 12 日受付).

(5)

図 -3  主鏡形状制御系図-2 望遠鏡制御系

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