図1 試験塗装実施橋脚
鋼製橋りょうの塗替えにおける環境負荷低減に向けた取組み
東京地下鉄㈱ 正会員 ○柳沢 有一郎 東京地下鉄㈱ 正会員 河畑 充弘 東京地下鉄㈱ 内藤 宏文 東京地下鉄㈱ 佐々木 勝正
1.はじめに
東京地下鉄㈱における構造物の延長は、全体で約 196 ㎞であり、その内 85%をトンネルが占めている。ま た、高架橋や橋りょう等も 10%以上存在し、鋼製橋りょうも約 3%存在する。鋼製橋りょうは、基本的に周期 的なペイントの塗替えが必要であるが、塗替えに当たっては、近年、環境負荷の少ない塗装が求められている。
そこで、より環境負荷の少ない塗装方法の検討にあたり試験塗装を実施した。本報告では、その試験塗装の内 容と追跡調査結果を報告する。
2.東京地下鉄㈱における塗装の概要
橋りょうの維持管理の一環として鋼製橋りょうの塗替えを周期的に行っている。塗替え周期は潮風の影響を 受けやすい海岸沿いは 10 年、湿り気のある河川部は 11 年、それ以外は 12 年としている。定期的な塗替えが 必要な橋りょう数は 90、面積にすると約 29 万㎡であり、毎年の塗替えの面積は 1 万~3 万㎡/年である。塗替 え塗料の標準仕様は、下塗りが弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料、中塗が弱溶剤形ポリウレタン樹脂塗料用、上 塗りが弱溶剤形ポリウレタン樹脂塗料である。以前は強溶剤形塗料も使用していたが、平成 14 年のグリーン 購入法改正による鉛・クロムを含む下塗り塗料の排除や、平成 16
年の大気汚染防止法改正による VOC の規制といった社会的な動き も考慮し、平成 17 年からは弱溶剤形の塗料を標準としている。
3.試験塗装概要
弱溶剤形塗料を標準としつつも、さらなる環境負荷低減に向け た取り組みとして、平成 19 年に水性系塗料を中心とする試験塗装 を実施した。場所は、荒川の河口近くから約 3km 弱の距離にある 高架橋部(図 1)であり、潮風の影響を無視できない地区である。
塗装は 4 橋脚(8 本)に対し実施し、一つの橋脚には標準仕様を 適用し、それ以外の 3 つの橋脚には、主に水性の塗料を適用した
(表 1)。
表 1 試験塗装仕様 A橋脚
A1(海側)、A2
(山側)共通
B橋脚 C橋脚 D橋脚
B①(海側) B②(山側) C①(海側) C②(山側) D①(海側) D②(山側)
<標準仕様>
・変性エポキシ
・ポリウレタン
・変性エポキシ
・水性ウレタン
・変性エポキシ
・水性ウレタン
・水性エポキシ
・水性ふっ素
低溶剤弱溶剤型 変性エポキシ
・変性エポキシ
・水性エポキシ
・水性ウレタン
・水性エポキシ
・水性ウレタン
4.追跡調査
試験塗装の経過を確認するため、塗料メーカー3 社と合同で追跡調査を行った。試験項目は、膜厚、光沢、
テープ付着試験、引張付着試験の 4 種類である。付着試験の評価基準は、鋼構造物塗膜調査マニュアル(JSS Ⅳ 03-2006 社団法人 日本鋼構造協会)に従った。以下に調査結果を示す。
キーワード 鋼製橋りょう,ペイント,塗替え,水性塗料
連絡先 〒110-0015 東京都台東区東上野 5-6-6-8F 東京地下鉄㈱ 鉄道本部工務部土木工事所 TEL03-3837-7215
山側 塗 海側
装 範 囲
土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)
‑807‑
Ⅴ‑404
全体としては、さび・はがれ・割れの発生は見られず良好な状態であった。膜厚は、何れの測定箇所におい ても低減は見られるものの、顕著な減少は見られなかった。光沢は、全体的に低減していたが、標準仕様(A
①、A②)よりも水性塗料の方が高い保持率(塗装時の状態を 100 とした保持率)となった。特に、フッ素樹 脂を用いたもの(図 2 における光沢保持率(海側橋脚)C①)は、光沢保持率がほとんど低減していない結果 となった。
引張付着試験およびテープ付着試験は、紙面の都合上直近の 8 年目の結果のみ示す(表 2)。標準仕様(A 橋脚)のみ、評価点として 1 または 2 という付着力が低下している傾向が見られた。なお、標準仕様が 3 種ケ レン、その他が 2 種ケレンで行っており、この違いの影響もあるが、標準仕様以外では経年変化がほとんど見 られない結果となった。
表 2 付着試験結果 表 3 評価点の基準
6.最後に
現段階においては、弱溶剤形塗料の使用を標準としつつ、試験塗装で使用した水性塗料等の経年状態も踏ま え、施工条件に応じた塗料の使い分けを行っていく所存である。最後に、調査に協力して下さった関西ペイン ト販売㈱、日本ペイント販売㈱、および大日本塗料㈱に感謝申し上げます。
引張付着力の評価点 評価点 引張付着力(Mpa)
0 2.0≦X 1 1.0≦X<2.0 2 0<X<1.0
3 X=0
引 張
付着試験 テ ー プ 付着試験
A橋脚 ① 2 2
② 1 2
B橋脚 ① 0 0
② 0 0
C橋脚 ① 0 0
② 0 0
D橋脚 ① 0 0
② 0 0
図2 膜厚の変化割合と光沢保持率
土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)
‑808‑
Ⅴ‑404