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在宅脳卒中者の活動性向上を支援する

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学審査学位論文 博士(人間科学) 概要書. 在宅脳卒中者の活動性向上を支援する 行動変容型介入プログラムの開発および評価 Development and evaluation of active lifestyle intervention program for stroke survivors. 2017年1月 早稲田大学大学院. 人間科学研究科. 小沼 佳代 KONUMA,Kayo 研究指導教員:. 竹中. 晃二. 教授.

(2) 1.問題と目的 リハビリテーションの目標は,各人にとっての生活の質(Quality of Life:以下,QOL と する)の向上である(上田,2013)。しかしながら,現在のリハビリテーションにおいては, 未だ目の前の身体機能や日常生活動作能力の向上のみに偏ったリハビリテーション介入が展 開されている(厚生労働省,2013)。いかにして,社会生活における「活動および参加(以 下,活動性とする)」を向上させていくかは,わが国のリハビリテーション全体の課題と言 える(厚生労働省,2015)。 本研究では,永続的な後遺症により社会生活での活動性に制限が生じる脳卒中を対象とし て研究をおこなう。本研究では,脳卒中者が自立的に活動性を向上させていくことに着目し, 社会生活における活動性向上を支援する行動変容型介入プログラムの開発および評価をおこ なう。 2.本研究の概要 本研究は第 1‐5 章,研究Ⅰ‐Ⅵにより構成されている。 【第 1 章:本研究の概要】 第 1 章では,本研究の目的,意義を概説し,本研究の構成を示した。 【第 2 章:脳卒中者を取り巻く現状および支援における課題】 第 2 章においては,脳卒中者を取り巻く現状および支援における課題についてのべ,背景 を整理した。その結果,在宅脳卒中者の QOL 向上には,活動性に着目した介入が有効である こと,および在宅脳卒中者の活動性の向上を支援する介入においては,脳卒中者の自立的な 活動性の向上を促す行動変容型の介入プログラムが望まれることがわかった。 【第 3 章:介入プログラム開発のためのフォーマティブ・リサーチ】 第 3 章では,「在宅脳卒中者の活動性向上を支援する行動変容型介入プログラム」の開発 における基礎資料を得ることを目的として,フォーマティブ・リサーチをおこなった。 在宅脳卒中者の活動性向上を支援する介入の動向(研究Ⅰ) 研究Ⅰでは,文献レビューをおこない,在宅脳卒中者の活動性向上を支援する介入の動向 について先行研究を概観した。その結果,介入プログラム開発に先立つ課題として,活動性 向上の機序を明らかにする必要があること,および専門職による個別介入を基本とし,介入 効率のよいプログラムの開発が必要であることが示された。 在宅脳卒中者の活動性の関連要因および QOL に与える影響(研究Ⅱおよび研究Ⅲ) 研究Ⅱでは,活動性向上の機序を明らかにする ため,在宅脳卒中者における活動性の関連要因, および活動性が QOL に与える影響をインタビュー 調査により検討した。結果に基づき,活動実施意 図,計画,およびセルフ・エフィカシーに働きか ける介入によって変化した活動性は,障害への心理. Figure 1 介入のモデル. 的適応,および QOL に影響 を与えるという介入のモデルを作成した(Figure 1)。. 活動をおこなおうと思う「活動実施意図」には,家族・友人からの推奨,専門家からの情 報,脳卒中仲間の存在,自己の経験,症状の理解が影響を与えること,および「活動性」に は,支援者の存在,具体的な目標,他者からの評価,効果の実感,活動環境・方法の調整が 影響を与えることがわかった。.

(3) 研究Ⅲにおいては,活動性と QOL の関係に焦点を当て,活動性が QOL に与える影響を質 問紙調査により量的に検討した。その結果,活動性の下位因子は,障害への心理的適応およ び QOL の異なる下位因子に影響を与えており,介入において,単一の活動のみならず,活動 性の下位因子である役割活動,余暇活動,および機能回復活動のそれぞれの活動性向上を促 す必要性が示された。 活動に対する属性の影響(研究Ⅳ) 研究Ⅳでは,活動性に対する属性の影響を検討した。その結果,男性には機能回復とは異 なる目的を有する活動を推奨すること,および移動手段が車椅子の者には,車椅子上でも実 施可能な活動を推奨することの必要性が示唆された。 【第 4 章 活動性向上を支援する行動変容型介入プログラムの開発および有用性の検討】 第 4 章では,これまでの知見に基づき「活動性向上を支援する行動変容型介入プログラ ム」を開発した。さらに,通所リハビリテーションサービス利用者,および回復期リハビリ テーション病院からの退院者という 2 つの対象者群において,介入を試行し有用性の検討を おこなった。通所リハビリテーションサービス利用者は,回復期リハビリテーション病院か らの退院者と比べ,在宅生活を経験している,また実用場面を想定した場合にフォローアッ プ介入が可能であるという特徴がある。 活動性向上を支援する介入プログラムの概要 冊子およびまとめシートを用いた個別介入を開発した(Figure 2)。 本介入では,活動実施意図,計画,およびセルフ・エフィカシーに働 きかけ,活動性および QOL の向上を目指す。 脳卒中者に対する試行的介入による有用性の評価(研究Ⅴ) 通所リハビリテーションサービス利用者においては,介入によって, 活動実施意図,計画,およびセルフ・エフィカシーが変化し,介入 3 ヵ月後にかけて,活動性および QOL が向上した。回復期リハビリテ ーション病院からの退院者においては,介入による活動実施意図の変 化が得られなかった。介入 3 ヵ月後にかけての活動性および QOL の 向上は限定的であった。. Figure 2 介入用冊子. 介入者による介入プログラムの評価(研究Ⅵ) 研究Ⅵでは,介入者による介入プログラムの評価をおこなった。リハビリテーション専門 職による介入においては,介入者の時間的負担感が大きいことがわかった。 【第 5 章:総合考察】 第 5 章では,得られた知見,および限界点をまとめ,今後必要な研究を展望した。 3.今後の展望 本研究では,在宅脳卒中者の活動性向上を支援する介入のモデルケースを示すことができ た。本研究の結果は,「社会生活における活動性をいかにして向上させていくか」というリ ハビリテーションの課題解決において有益な知見である。しかしながら,本研究においては, 対照群を設定できておらず,介入の効果に言及することができない。今後は,介入群を設定 した試行にて,効果の検討をおこなっていくつもりである。また,本介入プログラムのリハ ビリテーションでの実用に向けては,様々な介入場面および介入者での試行をおこない,各 介入場面および介入者における課題の解決が必要とされる。.

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