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博 士 論 文 概 要

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学大学院 理工学研究科. 博 士 論 文 概 要 論. 文. 題. 目. エージェントベース社会シミュレーションを 用いた組織学習観点による業績評価制度の分 析枠組みの提案 Proposal of a Framework for Analysis on Performance Evaluation Systems in Organization with Organizational Learning Concept by Agent-Based Social Simulation 申. 請. 者. 後藤 裕介 Yusuke Goto 経営システム工学専攻. システム論研究. 2009 年 11 月.

(2) No.0 近年,組織メンバに対する評価制度を利用して組織目標の達成を目指す試みが 多くの組織で見られる.このような評価制度は,組織メンバの行動や業績に関す るいくつかの評価指標から組織メンバの評価を行うシステムである.このとき, 評価制度は組織メンバが組織目標を達成するよう行動することを促すマネジメン ト ・ コ ン ト ロ ー ル ・ シ ス テ ム ( MCS) と し て 位 置 づ け ら れ て い る . こ の 位 置 づ け は,組織メンバは自身の評価向上を目指して,よりよい評価を得られるような態 度を学習するだろうという考えに基づく. 組織学習は組織の長期的競争力の源泉であるから,組織学習の実現は組織目標 の有力な候補の一つである.とりわけ組織学習の実践としてのナレッジマネジメ ン ト( K M )へ の 関 心 は 高 い .し か し ,多 く の 組 織 が K M を 実 施 し て い る 一 方 で , 意図した効果を達成できていないという報告も多い. 組織学習の問題に関しても,評価制度を適切に設計することで,問題を解消し よ う と す る 試 み が な さ れ て い る . Bartol は ,評 価 制 度 に よ る 適 切 な イ ン セ ン テ ィ ブ設計が組織学習における知識共有の問題を解消しうることを述べている.イン センティブ理論研究では,数理モデル(ゲーム形式)を用いて組織学習を失敗に 導きうるモラルハザードを防ぐためのインセンティブ水準や評価制度の議論が行 われている.実証研究においては,組織業績を計測することが比較的容易な営業 組 織 で 多 く の 取 り 組 み が な さ れ て い る . 松 尾 ( 2002) は , 組 織 内 に お け る 競 争 優 位への固執に起因する知識共有の問題を解消している評価制度の特徴を事例分析 から明らかにしている. 社会科学では,当該問題領域において受け入れられている事実・理論に基づき 様式化された記述をスタイライズドファクトと呼ぶ.組織学習の観点による評価 制度設計に関しては,評価制度が知識の送り手としての組織メンバの態度や組織 パフォーマンスに与える影響に関して,いくつかのスタイライズドファクトが明 らかになっている.スタイライズドファクトの多くは,特定組織群に対する調査 結果あるいは特定事例の分析から導かれたものである.このとき,スタイライズ ドファクトが成立する組織状況を明らかにすることは,スタイライズドファクト の理解を深めるから,組織のマネージャなど評価制度設計者の参考となる.この ようなスタイライズドファクト分析にはエージェントベース社会シミュレーショ ン( A B S S )が 有 効 で あ る . A B S S は モ デ ル の 言 語 や 概 念 を 計 算 機 上 で 実 行 可 能 な 形 で 定 義 し て , 仮 定 を す べ て 明 示 す る 必 要 が あ る . こ の た め , ABSS を 利 用 し た 分析は,スタイライズドファクトの成立する組織状況や暗黙になされている仮定 を明らかにすることが期待できる. し か し な が ら ,こ の よ う な 分 析 に 先 立 っ て ,( 1 )M C S の 効 果 検 討 を 考 慮 し た エ ー ジ ェ ン ト ベ ー ス の 組 織 学 習 モ デ ル お よ び ( 2 )( 1 ) を ふ ま え た 評 価 制 度 に よ る 組 織 行 動 へ の 影 響 モ デ ル の 2 つ を 開 発 す る 必 要 が あ る .( 1 ) の モ デ ル は 本 質 的 に M C S に よ る 作 用 を 分 析 可 能 で あ る 必 要 が あ る が ,既 存 の エ ー ジ ェ ン ト ベ ー ス の 組.

(3) No.1 織学習モデルの多くはダブル・ループ学習の有効なメカニズムに注目しており, こ の 作 用 を 考 慮 し た も の は な い .( 2 ) の モ デ ル に 関 連 す る も の と し て , 集 団 に お ける規範の促進過程を,集団のメンバが相互に観察を行い,成績の悪いものが成 績 の よ い も の の 戦 略 を 模 倣 す る メ カ ニ ズ ム と し て 捉 え た Axelrod の モ デ ル が あ る . しかしながら,このモデルは進化論的メタファをかなり忠実に取り入れているた めに,態度の変容過程においてメンバの同一性が保持されず,特定のメンバの態 度の変化をトレースすることができない.また,メンバは規範ゲームにおける意 思 決 定 を 学 習 す る が ,本 研 究 で 対 象 と す る KM の よ う な 組 織 学 習 に 関 わ る 活 動 の モデルではないから,このモデルを直接利用することは難しく,新たに開発する 必要がある. 評価制度設計の現場では,ある組織目標達成に有効な評価制度に関して,十分 な知識が蓄積されているとはいえない.評価制度によるメンバへの評価が導く組 織行動とその帰結にはさまざまな要因が影響している.例えば,メンバの学習に 関する要因を考えたとき,自身の評価にあまり関心が無く学習を行わないメンバ がいれば,そのメンバは態度が変わらずに組織行動も変化しない一方で,評価に 関心があるメンバは態度を学習するために,組織行動に違いが現れて,他のメン バの学習にも影響を与える.多くの場合,これらの要因には不確実性が認められ る . こ の と き , 不 確 実 性 が あ る と は , ABSS の モ デ ル 作 成 過 程 に お い て , モ デ ル を構築し利用する者にとって,モデルの要因に関して正確に決定・予言できない ということを指す.これら組織内外の様々な要因の不確実性がもたらす影響につ いての理解が十分でない中で,実務家は評価指標のライブラリや他社事例などを 参考にしながら,評価制度設計の場面で試行錯誤の意思決定を強いられている. 高い不確実性に直面し試行錯誤的な意思決定を行っているのは,評価制度設計 以外の社会・経済・組織のシステム設計の場面においても同様であり,最近の A B S S を 利 用 し た 研 究 で は ,シ ナ リ オ 分 析 と 呼 ば れ る 分 析 が 注 目 さ れ 始 め て い る . ABSS に お け る シ ナ リ オ 分 析 は ま だ 萌 芽 段 階 に あ り , 広 く 共 有 さ れ て い る わ け で は な い が , 関 連 す る 研 究 の 主 張 を 整 理 す る と ( 1) 検 討 す る 状 況 下 で 政 策 を 実 行 し た 際 に あ り 得 る 帰 結 に 関 す る 知 識 ,( 2 ) こ の 帰 結 が 現 れ る メ カ ニ ズ ム に 関 す る 知識の 2 種類を獲得する試みであるといえる. シナリオ分析において用いられる手法も,方法論的に整備されていない.著者 の知る限りランドスケープ分析と逆シミュレーション手法の 2 つの手法がある. 出 口 ( 2009) は 巨 大 な 政 策 代 替 案 集 合 に 対 し て , パ フ ォ ー マ ン ス を 表 す 縦 軸 と 政 策の特徴を表す横軸の 2 軸により規定される平面上に各政策の 1 回の実行結果を プロットしていくことで,政策効果の全体像を俯瞰するランドスケープを作成・ 分析する手法を提案している.この手法は政策効果の全体の傾向を把握する際に は有用であるが,政策効果がある要因の不確実性から受ける影響を分析する際に は,各政策について複数回の実行結果を検討する必要があり,この手法とは異な.

(4) No.2 る ラ ン ド ス ケ ー プ の 作 成 ・ 分 析 手 順 が 求 め ら れ る . 倉 橋 他 ( 1999) は , 特 徴 的 な 帰結が現れるときのモデルの構造変数値や相互作用を,逆シミュレーション技術 を利用して探索する手法を提案している.しかし,この手法では探索に先立って 特徴的な帰結が明らかになっていることや探索対象に対してある程度の仮説・予 想が必要となる. 研 究 背 景 よ り ,A B S S を 用 い た 組 織 学 習 観 点 に よ る 評 価 制 度 設 計 支 援 に 関 し て , 次 の 2 点 が 喫 緊 の 研 究 課 題 と し て 挙 げ ら れ る .( 1 ) 知 識 共 有 を 促 進 す る 評 価 制 度 設計の問題について,組織状況の違いがスタイライズドファクトの成立・不成立 に 影 響 す る か ど う か 明 ら か に す る .( 2 ) あ る 政 策 下 で 起 こ り う る 可 能 性 を 一 望 で きるような可視化の方法と可視化した結果を利用した不確実性の影響分析手法の 開発する.本論文は 8 章から構成されている. 次 章 以 降 の 内 容 は 以 下 の 通 り で あ る .2 章 ~ 4 章 に お い て ,本 研 究 が 対 象 と す る 評 価 制 度 , 組 織 学 習 , ABSS に つ い て 説 明 を 行 う . 2 章 で は , 本 論 文 に お け る 評 価 制 度 の 定 義 を 示 し ,明 ら か に な っ て い る ス タ イ ラ イ ズ ド フ ァ ク ト の 整 理 を 行 う . 3 章 で は 本 論 文 に お け る 組 織 学 習 概 念 を 明 ら か に し た 後 , MCS の 効 果 検 討 を 考 慮 し た エ ー ジ ェ ン ト ベ ー ス モ デ ル の 枠 組 み を 示 す . 4 章 で は , ABSS の 概 説 を 行 った後,本論文で行うスタイライズドファクトの分析とシナリオ分析について説 明 を 行 う . 5 章 で は , 2~ 4 章 で 規 定 し た 概 念 に 基 づ い て , ABSS を 用 い た 組 織 学 習 観 点 に よ る 評 価 制 度 分 析 の エ ー ジ ェ ン ト ベ ー ス モ デ ル( A B M )の 枠 組 み を 示 す . 6 章では知識共有のための評価制度設計に関するスタイライズドファクトが成 立する組織状況の分析を行う.組織学習に関する諸プロセスの中でも礎石に位置 づけられる知識共有が失敗する問題について,関連するスタイライズドファクト の分析を行い,理解を深める.5 章で示した枠組みをひな形にして,営業組織に お い て 販 売 ノ ウ ハ ウ を ナ レ ッ ジ ベ ー ス( K B )を 介 し て 共 有 す る 状 況 の モ デ ル を 構 築する.構築したモデルの妥当性をスタイライズドファクトとの整合と解釈の観 点で評価して,組織内の初期状態や組織の外部環境などの組織状況を変化させた ときのスタイライズドファクトに関連する結果を分析する. 7 章ではシナリオ分析の効果的実施のための不確実性の影響分析の手法の開発 と適用を行う.要因の不確実性が評価制度の効果に与える影響の分析を行う方法 として,可能性のランドスケープを利用した分析方法を提案する.この方法はあ る評価制度下で起こりうる可能性の範囲や特等的な可能性が起こるメカニズムに 関する知識を得ることを支援する.組織学習における利他的行動が行われなくな る問題について,営業組織において組織学習が行われる状況で,メンバの特性に 関する不確実性が評価制度の効果に与える影響の分析に,提案方法を適用する. 適用結果から,メンバ特性の不確実性が評価制度の効果に影響を与えることと, 特定のメンバ特性構造が特徴的な結果を生むメカニズムを明らかにする. 8 章では結論として,本論文のまとめを行い,今後の課題を示す..

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