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島嶼性鳥類の地域個体群の変動要因と 保全に関する基礎的研究

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2020 年度学位論文

島嶼性鳥類の地域個体群の変動要因と 保全に関する基礎的研究

山本 裕

(2)

目次

要旨 ... 3 英文要旨 ... 5

Ⅰ.序論 ... 6

1)研究の背景 2)研究目的

Ⅱ.調査地 ... 8 1)伊豆諸島三宅島

2)本州西部(広島県山県郡芸北町[現北広島町]及び佐伯郡大野町[現廿日市市]、山口県)

3)小笠原諸島西之島 4)奄美諸島喜界島

Ⅲ.日本の鳥類相の特徴 ... 10 1)はじめに

2)日本の鳥類相の概要

3)森林性鳥類の分布状況とモニタリング 4)本州西部の鳥類相

5)給餌場での種間関係

6)オシドリ越冬個体群の湖への飛来時刻と日没時間との関係 7)山口県における夏鳥の減少

Ⅳ.島嶼の鳥類相の特徴 ... 15 1)島嶼の生物相の一般的特徴

2)伊豆諸島の鳥類相の特徴

Ⅴ.伊豆諸島における鳥類群集の変動要因 ... 16

1)自然要因 ... 16 (1)自然移入

(2)火山活動による影響

(3)植生被害を及ぼす昆虫の大発生、移入

2)人為的要因 ... 30 (1)ロードキル

(2)人の生活との関わりによる要因 (3)移入種

Ⅵ.絶滅危惧種保全のための基礎的研究 ... 38 1)アカコッコの保全に向けての基礎的研究 ... 38

(1)置かれている現状 (2)アカコッコの形態 (3)アカコッコの繁殖生態 (4)アカコッコの生息密度 (5)アカコッコの餌内容

(3)

(6)さえずりの日周変化及び季節変化 (7)さえずりの地理的変異

(8)2000 年三宅島噴火によるアカコッコへの影響

2)カンムリウミスズメの保全に向けての基礎的研究 ... 44 (1)置かれている現状

(2)カンムリウミスズメの形態 (3)カンムリウミスズメの分布 (4)カンムリウミスズメの繁殖生態 (5)カンムリウミスズメの繁殖地 (6)繁殖地の把握とモニタリング

(7)卵殻膜の DNA 分析によるカンムリウミスズメの同定 (8)カンムリウミスズメの繁殖期の洋上分布

(9)カンムリウミスズメの減少要因と保護対策 (10)マリーン IBA への活用

Ⅶ.考察 ... 56 1)三宅島の鳥類相と本州、喜界島、西之島の鳥類相との比較

2)島嶼での鳥類の保全の重要性

謝辞 ... 58 引用文献 ... 59

(4)

要 旨

近年、地球規模での生物多様性の消失が進み、種の絶滅の加速が報告されている。本論文で は、特に保全上の優先度が高い島嶼性鳥類を対象に、伊豆諸島に生息する鳥類の地域個体群の 変動要因を調べると共に、絶滅危惧種に関する現状把握と生態の基礎情報を集め、今後の保全 に資することを目的とした。

調査地の伊豆諸島三宅島は、第 4 紀火山の一つであるが、複数の固有種と固有亜種の鳥類が 生息する生物多様性保全の観点から貴重な島である。この島の鳥類群集に影響を及ぼす要因と、

絶滅危惧種アカコッコとカンムリウミスズメに関して生態に関する基礎情報の収集を行なう とともに、三宅島の鳥類群集を相対的に示すために本州西部(広島県山県郡芸北町及び佐伯郡 大野町、山口県)、及び小笠原諸島西之島、奄美群島喜界島の鳥類相との比較を行なった。

本州西部の広島県芸北町における鳥類相の調査では 5 目 41 科 149 種の鳥類が記録され、地 域を特徴づける種としてシロハラとミヤマホオジロの繁殖が確認された。次いで、山口県内の 11 か所の調査地において 1973 年から 1995 年の間に確認された種の出現率を期間別に夏鳥と 留鳥間で比較した結果、夏鳥の方が留鳥よりも減少率が高いことが明らかになった。

地域の鳥類群集の変動要因には自然要因と人為的要因がある。鳥類の場合、本来の分布域以 外に分散、移入することはその行動の一つであるが、本論文では自然要因として、自然移入と、

2000 年に発生した三宅島の火山噴火による鳥類群集の変動について調査した。その結果、自然 移入に関しては、亜種オーストンヤマガラの分布域である三宅島で、本州亜種ヤマガラが観察 され、また、インド、中国南部、フィリピン等に生息するルリオハチクイが伊豆諸島八丈島で 国内で初めて観察された。亜種ヤマガラの移入は冬期のみで繁殖は確認されず、ルリオハチク イの観察も1回のみであったが、近年、伊豆諸島ではルリオハチクイ以外にも、三宅島でタカ サゴクロサギ、オニカッコウなど南方系の鳥類が確認されており、気候変動により本来の鳥類 の分布が変わりつつある可能性が示唆された。また、奄美群島喜界島ではモズが自然移入し、

個体群が確立されつつあるが、捕食者への逃避行動をとる距離が本土よりも長く、定着をして いくうえで有利になる可能性が示唆された。

鳥類群集の変動の自然要因として、三宅島では火山活動による鳥類への影響が大きな要素で あるが、三宅島 2000 年噴火では、火山活動開始直後に、粒子の細かな火山灰の鳥類への付着、

降灰による植生への影響、食虫性鳥類や地上採食性鳥類の採餌環境の悪化が観察された。また、

長期的なラインセンサス結果から、火山ガスにより植生が枯死した南西部の調査地で確認種数 が減り、オーストンヤマガラ、ヒヨドリが減少し、シジュウカラが増加していることが明らか になった。これらの変化は、火山活動開始直後の降灰による鳥類と採餌環境への直接的な被害 と、山頂陥没による生息地消失の直接的な影響に加えて、山頂火口からの火山ガス放出が長期 間継続し、植生が枯死したことによる生息環境の悪化や採餌環境の変化等による間接的な影響 によるものと考えられた。

三宅島では、地域個体群に影響を与える人為的要因として、ロードキルが影響を与えている 可能性が高く、ウグイス、ハシブトガラス、アカコッコ、カラスバトが交通事故に遭うケース が多かった。車の前を横切る鳥類の種類と数を調査したところ、アカコッコ、ホオジロ、ツグ ミ、ヒヨドリ、ハシブトガラス、イソヒヨドリ、メジロの個体数が多く、中でもアカコッコ、

ホオジロ、ツグミは車高以下の低い位置を横切る割合が高かった。実際、これら 3 種のうち 2 種についてはロードキルによる死体が確認された。これらに加えて、ウグイス、ミソサザイな ども低い場所を移動することから潜在的リスクがあると考えられた。道路を横切る鳥類個体数 の経時変化は、日の出時刻が最も多く、日の出時刻 5 時間、10 時間となるにつれて数は減った。

三宅島では、日の出時刻の時間帯は定期船の入港時間にあたり交通量が多いため事故に遭って いる可能性が高いことが示唆された。

絶滅危惧種の現状把握に関しては、アカコッコを調査対象とした基礎研究では、伊豆諸島と

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島で高いことが明らかになり、本種の個体群の主要な生息地であることが示された。また、さ えずりを構成するシラブル数に種内の地理的変異があり、八丈島の個体群では三宅島より少な く、青ヶ島やトカラ列島では多いといった違いがあった。

カンムリウミスズメを調査対象とした基礎研究では、卵殻に付着していた卵殻膜の DNA から 同種の同定を可能とする手法を確立した。この手法により、静岡県下田市神子元島での約 27 年 ぶりの繁殖の再確認ができたが、この手法を応用することで、卵殻や羽毛などの痕跡から新た な繁殖地を始めとして、本種が利用する地域を把握できると期待される。また、本種の洋上分 布調査のデータを用いて、海鳥を指標として重要な海域を選定し、保護施策を進める日本のマ リーン IBA(Marine Important Bird and Biodiversity Areas)の選定に寄与することができた。

今後は本研究により得られた情報を基に、火山活動からの鳥類群集の回復過程、絶滅危惧種 の個体群変動や、自然移入種の定着の有無等については継続的にモニタリングをしていくこと、

また、個体群に負の影響を及ぼす要因のうち人為的要因に関しては、軽減させるための施策に 反映させる等の取り組みを進め、島嶼性鳥類、特に絶滅危惧種の保全を図ることが必要である。

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Fundamental Study on Fluctuation Factors and Conservation of Bird Populations on Miyake-jima Island(in the Izu Islands)

Yutaka YAMAMOTO

Abstract

Recently, the loss of biological diversity is advancing rapidly and the acceleration of the extinction of many species has been reported. In this thesis, in order to obtain fundamental information on the threatened species in need of conservation, I clarified factors that have negative impacts on the local population of island birds.

The main study site was Miyake-jima Island, a volcanic island in the Izu Islands, which provides habitats for a number of endemic bird species and subspecies. I conducted research to gather detailed information on factors implicated in the fluctuation of bird populations, investigating the ecology of endangered species including the Izu thrush Tudus celaenops and the Japanese murrelet Synthliboramphus wumizusume.

There are two kinds of factors implicated in variations in the numbers of birds i.e., natural and anthropogenic factors. As for the natural factors, I studied natural dispersion of two species, the varied tit Poecile varus varius and the blue-tailed bee-eater Merops philippinus. The former was observed in Miyake-jima Island during the winter of 1996-1997 within the geographical range of P. v. owstoni, and the latter was observed in July 2013 on Hachijo-jima Island.

The volcanic eruption on Miyake-jima Island in the summer of 2000 was another natural factor that had a significant impact on bird populations, both by directly killing birds and by damaging their habitats.

A long census of pre- and post-eruption populations revealed a decrease in the numbers of Owston’s varied tit P. v. owstoni and brown-eared bulbul Hypsipetes amaurotis, and an increase in the number of Japanese tit Parus minor as a result of habitat changes due to volcanic activity.

As for anthropogenic factors, road kill was likely to affect the local bird population on Miyake-jima Island. The bush warbler Cettia diphone, large-billed crow Corvus macrorhynchos, T. celaenops, Japanese wood pigeon Columba janthina often encountered traffic accident. Many birds including these species were observed to cross in front of cars, flying at a low altitude below vehicle height. The birds were active at sunrise, when traffic was busy on the island because the regular ferry arrived at that time.

The roadside census revealed that habitat density of the Izu thrush was higher on the Izu Islands than on the Tokara Islands, suggesting the importance of the Izu Islands for their habitat. Interestingly, the song structure of the birds varied among island populations: syllable numbers differed between the Izu and Tokara populations. For the Hachijyo-jima population, syllable numbers were less than for the Miyake- jima population.

The results of this study should be beneficial for promoting nature conservation in the Izu Islands, including Miyake-jima, in order to protect endangered species from extinction. However, it is still necessary to monitor the island bird populations and threatened species, and attempt to decrease anthropogenic negative effects as much as possible.

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Ⅰ.序論 1)研究の背景

近年の人間活動の増大と非持続的な資源利用により、地球規模での自然環境の改変と生物多 様性の消失が急速に進み、種の絶滅の加速や生態系サービスの低下が報告されている(e.g., MEA, 2005; CBD, 2010/ 2014/ 2020; IPBES, 2019)。

種の絶滅リスクは、ソテツ類や双子葉植物、造礁サンゴ類、両生類などの分類群で高く(IUCN, 2020)、1980 年代以降、特に造礁サンゴ類と両生類ではレッドリスト指標が悪化し、絶滅リス クが上昇している。本論文の研究対象とする鳥類では、造礁サンゴ類や両生類ほど顕著ではな いが、現存種の減少が進んでいる(Butchart et al., 2004; IUCN, 2020)。

鳥類では、1970 年代を起点として、生息地の保護と持続的な管理によって北米とヨーロッパ で水鳥類の個体群が 1980 年代以降に回復した以外は、多くの分類群で減少しており、特にシ ギ・チドリ類と生息環境が特殊な陸生鳥類に顕著な減少が報告されている(Butchart et al., 2010)。

北米では 1970 年から 2017 年の間にカモ類は増加したが、シギ・チドリ類と、飛翔性昆虫食、

草原性鳥類が減少した(Rosenberg, 2019)。ヨーロッパでは 1980 年から 2009 年の 30 年間、144 種、25 か国のデータの解析により、1980 年代に個体数が少なかった種は保護活動により増加 したが、普通種では個体数、バイオマスとも減少していることが明らかになっている(Inger et al., 2014)。この他に海鳥では 1950 年から 2010 年の 60 年間のモニタリングにより全個体数の 約 7 割が減少したと推定されている(Paleczny et al., 2015)。生息環境別では、特に島嶼において 鳥類の絶滅が起きている割合が高く、全世界で 1600 年以降に絶滅した鳥類、93 種、83 亜種の うち 93%が島嶼に生息する種で(King, 1985; Johnson & Stattesfield, 1990)、現在、全世界の島嶼に 生息する約 1,750 種のうち 23%に絶滅のおそれがあると指摘されている(Johnson & Stattesfield, 1990)。

島嶼に生息する生物は、どの分類群においても固有種、固有亜種の割合が高く、多くの島嶼 は、生物多様性を保全するうえで優先すべきホットスポットとなっている(Whittaker, 1998)。

国内では、南西諸島、小笠原諸島は、国土の1%の面積にすぎないが、絶滅種、絶滅危惧種、

危急種は各々のランクにリストアップされた種の約 30%(植物種 28%、動物種 40%)を占め、

絶滅速度が高く(プリマックと小堀, 1997)、保全の緊急性が高い地域である。この2地域に加 えて伊豆諸島は、食物連鎖の上位種である鳥類を指標に評価した場合、複数の固有種、固有亜 種が生息し、生物多様性の保全の観点から重要な地域である(Stattersfield et al., 1998; 日本野 鳥の会, 2010; 西海, 2015)。これら3地域のうち、小笠原諸島は、2011 年に世界自然遺産に 登録されている。また、南西諸島は、現在、奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島を対象に 世界自然遺産登録を目指す取り組みが進行しており、生物相や生息種の生態に関する情報の蓄 積と保全活動が進んでいる。一方で、伊豆諸島は、小笠原諸島や南西諸島に較べると生物情報 が相対的に少なく、鳥類相に関しては、山階(1942)、樋口(1973)、 磯部(1990)、大久保(2016)、

佐藤ら(2019)があるものの、鳥類の生態や保全に関しては、Higuchi (1976)、Higuchi & Momose (1981)、岡と山本(2016)の他には情報が少ない。

2)研究目的

本論文では、絶滅のおそれが高く、保全上の優先度が高い島嶼の鳥類を対象に、特に、伊 豆諸島に生息する鳥類の地域個体群の変動要因を調べると共に、絶滅危惧種に関する現状の

(8)

把握と生態の基礎情報を集め、今後の保全に資することを目的とした。また、三宅島の鳥類 相を相対的に示すために本州西部(広島県山県郡芸北町及び佐伯郡大野町、山口県)、及び小 笠原諸島西之島、奄美群島喜界島の鳥類相との比較も行なった。

(9)

Ⅱ.調査地

主要な調査地は、伊豆諸島三宅島である。この三宅島を含む伊豆諸島の鳥類相の位置づけを 相対的に示すために、伊豆諸島の鳥類相、そして伊豆諸島とほぼ同緯度にあたる本州西部の山 口県及び広島県の鳥類相、更に島嶼での比較地として、伊豆諸島と同様に火山島である小笠原 諸島西之島と、島の起源がまったく異なりサンゴ礁隆起の島である奄美群島喜界島においても 鳥類相や生息する鳥類の生態に関しての情報収集を行なった。

1)伊豆諸島三宅島

主要調査地である三宅島(34°5’N, 139°31’E)は、東京から南南西へ約 180km、静岡県の 伊豆半島からは約 80km に位置するほぼ円形の火山島である。第 4 紀火山の一つで約 2 万 5 千 年前以前より活動しているとされる(産業技術総合研究所地質調査総合センター, 2013)。富士 箱根伊豆国立公園に属し、周囲約 35km、面積 55.5km2で、標高 450m 附近以下ではスダジイ Castanopsis sieboldii やタブノキMachilus thunbergiiを中心とする常緑広葉樹林がまとまった面 積で残されており、現在は人為的な移入種が入り込んでいるが、海が生物の移動の障壁となり、

本来は捕食者の哺乳類や両生類が分布していなかった島である。種分化が進み、伊豆諸島と伊 豆半島に固有のオカダトカゲPlestiodon latiscutatusや、アカコッコTurdus celaenopsなど日本固 有種の鳥類、伊豆諸島固有亜種の鳥類の他、黒潮の流れを受けてサンゴの種類や海水魚類相は 豊富で、生物多様性の保全上、重要な島である(Moyer et al., 1985)。

この地域を特徴づける鳥類には、アカコッコ(国指定天然記念物、環境省 RDB 絶滅危惧ⅠB 類) やイイジマムシクイPhylloscopus ijimae (国指定天然記念物、環境省 RDB 絶滅危惧Ⅱ類)、カラ

スバトColumba janthina(国指定天然記念物、環境省 RDB 準絶滅危惧)、伊豆諸島固有亜種であ

るタネコマドリLuscinia akahige tanensis、オーストンヤマガラPoecile varius owstoni(いずれも 環境省 RDB 絶滅危惧Ⅱ類)、モスケミソサザイTroglodytes troglodytes mosukei(環境省 RDB 絶滅危 惧ⅠB 類)、日本と韓国の一部のみで繁殖する準日本固有種の海鳥であるカンムリウミスズメ Synthliboramphus wumizusume (国指定天然記念物、環境省 RDB 絶滅危惧Ⅱ類)が生息しており、

2015 年 10 月までに 273 種の鳥類が確認されている(大久保, 2016)。

2)本州西部(広島県山県郡芸北町[現北広島町]及び佐伯郡大野町[現廿日市市]、山口県)

本州西部は、地史的には以前はユーラシア大陸の一部で、その東縁部にあたる。本州西部の 調査地として、伊豆諸島とほぼ同緯度にあたる広島県山県郡芸北町及び佐伯郡大野町、山口県 において現地調査を実施し、鳥類相の比較を行なった。

3)小笠原諸島西之島

小笠原諸島西之島(27°15’N,140°52’E)は、父島から約 130km 西にある無人島で、富士・

箱根伊豆火山帯からマリアナ諸島まで、伊豆諸島を含む一連の火山帯の中にある火山島である。

1973 年の海底火山の噴火により誕生した海洋島である。カツオドリSula leucogaster やクロア

ジサシAnous stolidusなど8種の海鳥が繁殖していたが(川上ら, 2005)、2013 年に火山活動が

大規模化し、2020 年時点でも活動は継続しており、従来の生物相は、海鳥の繁殖地の一部を除 いてほぼなくなった。火山噴出物の組成から火山学の上では大陸の生成の初期段階にあたると 考えられており、海洋島への生物相の移入を解明するモデルケースとなりうる島である。

4)奄美群島喜界島

奄美群島喜界島(28°19'N, 130 °00'E)は、奄美大島の東約 24km にある、面積 56.8km2、最 高標高 214m(国土地理院, 2020)のサンゴ礁の隆起によって生じた平坦な島で、約 10 万年前に

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海面上に現れ、その後も隆起が継続している。ここでは、14 目 31 科 78 種の鳥類が観察されて おり(濱尾と鳥飼, 2011)、西之島と同様に生物相の移入と定着を研究するのに適した島である。

図1. 調査地.

(11)

Ⅲ.日本の鳥類相の特徴 1)はじめに

地域に固有の生物種と生物群集を保全するには、本来の状態のままで保全することが基本的 に重要なことである。各々の地域、環境の中で、長い年月の中で進化してきたその生物種と生 物群集の保全は、原則として、その種の進化がもたらされてきた非生物的・生物的環境のもと で行なわれなければならない(鷲谷と矢原, 1996)。人間活動に起因する生物多様性の消失への 脅威となっている主なものとしては、生息地の消失、生息地の断片化、汚染を含む生息環境の 悪化、移入種、病気の蔓延、乱獲等が挙げられるが(Primack, 1993)、こうした人間活動の増加 により起きている自然環境の改変と生物多様性への負の影響を軽減し、地域に特有の生物多様 性を保全するためには、その保全の基礎情報となる、地域の生物の目録(インベントリー)や分 布、個体数、地域個体群の現状と動向、生物種の生態、その種への脅威や種間関係等を調べて いく必要がある。そのうえで得られた基礎情報を根拠として、種への脅威に対して保全の方向 性を決定し、施策などに結びつけることが大切である。

食物連鎖の上位に位置する鳥類は、生息環境の変化や環境汚染物質の影響を受けやすく、ま た、比較的観察しやすく、識別が可能なことから環境変化や生態系の健全度を示す良い指標と なる(Spellerberg, 1991; 永田, 2007)。地域の鳥類群集を保全するには、様々な場所に生息する 鳥類について、適切なデータベースの構築と、対象とする地域の鳥類群集の特徴を把握する必 要がある(村上と平尾, 2007)。

本項では、鳥類を対象にして、主要な調査地である三宅島の鳥類群集の位置づけを明らかに するために、日本の鳥類相とその特徴、そして、三宅島とほぼ同緯度である本州西部での鳥類 相、三宅島以外の島嶼の鳥類相について現地調査と文献をもとに検討した。

2)日本の鳥類相の概要

日本列島は、北緯 24~46°の間で南北約 3,000km 連なり、大小 6,800 個を超える島々から構 成されている(日本海洋データセンター, 1987)。 亜寒帯から亜熱帯の気候の中、様々な環境 にこれまでに 633 種の鳥類が確認されている(日本鳥学会, 2012)。このうち日本だけに周年生 息する日本固有種は 11 種で(西海, 2015)、これらの種は地史的歴史の中で隔離され進化して きたと考えられる(高木, 2007)。

日本の鳥類相は、ユーラシア大陸に較べると繁殖する鳥の種数が少なく、中国の鳥類相と比 較すると、中国では 20 目 77 科 996 種が繁殖しているのに対し、日本では 18 目 55 科 254 種と 少ない。日本は森林面積が国土の約 70%を占め、日本で繁殖する陸鳥約 150 種のうち約 100 種 が森林性の鳥であるのに対し、中国では森林性の鳥と草原性の鳥が多く、特にヒタキ科、キジ 科、アトリ科、タカ科、ハト科が多い。また、日本では多くの無人島や岩礁が海鳥の繁殖地と なっており、アホウドリ科、ミズナギドリ科、ウミツバメ科、ウミスズメ科など海鳥の種数が 多いといった特徴がある(樋口, 1996)。

3)森林性鳥類の分布状況とモニタリング

国土面積の多くを占める森林環境において生物相のモニタリングを行なうことは、気候変動 や中山間地域での過疎化による自然環境の変化を知るうえで重要である。そのため環境省は 2003 年より「モニタリングサイト 1000」という長期生態系観測を開始した。森林・草原分野の 鳥類調査は 2004 年度に開始され、5年を1サイクルとして繁殖期と越冬期に行なわれている。

本項では、日本の森林性鳥類の分布状況を明らかにするために 2004 年 12 月から 2008 年2月 にかけて行なったモニタリングサイト 1000 調査の結果(植田ら, 2011)について纏める。

調査は、各地の鳥類観察者・研究者の協力を得て、1km、調査幅 100mでラインセンサス法 により確認した 253 地点のデータを用いた。解析には調査回数が5回以上実施された地点のデ ータを用い、観測された最大数を生息個体数とした。調査方法、解析方法の詳細は植田ら(2011) に記述されている。

(12)

解析の結果、繁殖期に全国的に出現率が高かったのはウグイスCettia diphoneで、潜在植 生が亜熱帯多雨林の地域でやや出現率が低いものの、それ以外の地域では出現率が 1 位か 2 位 で、優占度も上位を占めていた。次いで、亜高山針葉樹林帯を除くとシジュウカラParus major の出現率と優占度が高かった。落葉広葉樹林帯以南ではヒヨドリ Hypsipetes amaurotis とコゲ ラDendrocopos kizukiの、中間温帯林以南ではメジロZosterops japonicusとハシブトガラスCorvus

macrorhynchosの出現率が高く、ヒヨドリとメジロは優占度も高い傾向が見られた。

種数、個体数、バイオマスと潜在植生との関係では、繁殖期の種数は落葉広葉樹林で高く、

それより南方、北方とも低い傾向があり、個体数やバイオマスは南に行くほど高い傾向があっ た(植田ら, 2011)。この他に、寒冷地域ほど夏鳥が多く、温暖地域になるほど冬鳥が多かった。

また、繁殖期には、寒冷地域では昆虫食の鳥類の割合が高く、温暖地域では空中採食やとびつ き採食する鳥の割合が高かった。越冬期には、寒冷地域ほど地上採食の鳥の割合が低く、樹幹 を利用する鳥の割合が高かった。

クラスター分析による鳥類相の区分では、繁殖期は4つ、越冬期は3つに区分され、これら の区分は潜在植生帯により説明された。これらの区分を特徴づける種として、寒冷地域では出 現率や優占度が高かったヒガラ Periparus ater 、コガラ Poecile montanus、ゴジュウカラ Sitta

europaeaが、温暖地域では出現率と優占度が高かったヒヨドリ、ヤマガラPoecile varius、メジ

ロが選定され、今後、気候変動等のモニタリングをする際の指標種になると想定された(植田 ら, 2011)。

4)本州西部の鳥類相

以上のような全国規模の鳥類の分布状況の把握に加えて、本項では、より地域を絞り、1991 年4月から 1995 年3月にかけて本州西部(広島県山県郡芸北町[現北広島町]及び佐伯郡大野町 [現廿日市市]、山口県)において行なった鳥類相の把握と生態に関する調査について纏める。

調査は、双眼鏡、または望遠鏡による観察と、特に5月から8月にかけては繁殖調査に重点を おき、さえずりや巣の発見等により、繁殖状況を把握した。この他に、観察では識別が困難な 種や潜行性のため観察しづらい鳥を確認するため、標識調査も実施した。現地調査と日本野鳥 の会広島県支部会員からの情報も含めて、5 目 41 科 149 種の鳥類が芸北町内で記録され、繁殖 調査では 50 種の繁殖が確認された(上野ら, 1996)。この調査により、臥竜山が森林性の鳥類 の生息地、繁殖地として貴重であること、また、西八幡原は冬鳥の渡りの中継地であること、

俵原牧場は人為的な要素が強いが、オオジシギGallinago hardwickiiやホオアカEmberiza fucata といった希少な種が繁殖していることが明らかになった。この調査の一環で、西中国山地の臥 竜山(1,223m)においてシロハラTurdus pallidusの営巣が国内で初めて発見された(上野, 1993)。

繁殖していることを示すメスの抱卵斑を図2に示す。本種は、ウスリー・アムール川流域で繁 殖し、日本には冬鳥として渡来する。国内では、1966 年に対馬で巣立ち雛が観察されている(鴨 川と山口, 1976)。この他にミヤマホオジロEmberiza elegansの営巣中の雛 4 羽が 1993 年に確 認された(上野ら, 1995)。この種は、ウスリー・中国北東部、朝鮮半島で繁殖しているが、国 内での観察は対馬での鴨川(1968)による幼鳥 5 羽の観察に次ぐもので、本州では最初の繁殖記 録である。ミヤマホオジロ、シロハラとも対馬で繁殖が確認されているが、芸北町で繁殖が観 察されたことは、当該地域の鳥類相に大陸に近い要素が入っていることを示唆するものである。

(13)

図2. 標識調査により捕獲されたシロハラ雌の抱卵斑.

上野ら(1996, 高原の自然史 1)より許可を得て転載。

5)給餌場での種間関係

地域の鳥類群集を保全するには、その構成種と群集に影響を与える要因について明らかにす る必要がある。本項では、種間関係に影響を及ぼす可能性のある、給餌による順位制について 調査した。調査地は、広島県南西部に位置する「おおの自然観察の森」(34°20’N, 132°15’E, 広島県佐伯郡大野町)で、給餌場を訪れる鳥類を対象に種間関係について調べた。

図3. 大きい鳥による小さい鳥の追い払いの割合と全長の差との関係.

山本(1992, Strix 11)より許可を得て転載。

(14)

観察を行なったのは、1991 年 9 月から 1992 年 4 月までの間で、給餌場に飛来した種を同定 するとともに、飛来した鳥のうち大きい鳥による小さい鳥の追い払いを(A)、追い払いをせず共 に採食した割合を(B)、小さい鳥による大きい鳥の追い払いを(C)として、優劣を示す行動を記 録した。観察期間を通して見られたのは 19 種で、観察中に給餌場で異種の野鳥が同時に記録 されたのは 435 例で、その組み合わせは 50 通りであった。種間関係は、追い払いをせずに共 に採食する割合が最も多く 51.7%、全長の大きな鳥が小さい鳥を追い払う割合は全体の 43.7%

で、小さい鳥が大きな鳥を追い払う割合はわずかに 4.6%であった。給餌場で順位が高いと推 察されたのはカケスとヒヨドリであった(山本, 1992)。

6)オシドリ越冬個体群の湖への飛来時刻と日没時間との関係

前述の「おおの自然観察の森」において、湖(名称「ベニマンサク湖」、 標高 430m)を越冬 地としているオシドリ個体群の湖の利用状況と日没時間との関係を調査した。オシドリは、環 境省版のレッドリストで情報不足(DD)、広島県版レッドリストでは要注意種である。調査は、

1991 年から 1992 年、1992 年から 1993 年の 11 月から 3 月にかけて、湖に面した自然観察セン ター内から双眼鏡(7~8 倍)及び望遠鏡(20 倍)を用いて実施した。オシドリは、昼間は調査地 周辺で過ごしていると考えられ、夕方になると湖に飛来した。最初の個体が湖に着水する時間 を飛来時刻とみなし、飛来時刻の照度と飛来数を記録した。

その結果、飛来するオシドリの個体数は 5 羽から最大 78 羽と日毎に変動があり、計 43 回の 調査による平均は 24.9±19.6 (Mean±SD) 羽であった。飛来時刻は、霧や曇天、雨天などによ り照度が低い場合には日没時間よりも早まる傾向が見られ、照度に依存していると考えられた。

霧により照度が低下したと考えられる日を除き解析すると、オシドリの飛来時刻は日没から平 均 22.2±5.7(Mean±SD)分後であった(山本, 1996)。

図4. オシドリの飛来時刻と日没時間との関係. 実線は広島市の日没

(15)

7)山口県における夏鳥の減少

山口県内の 11 か所(平野部 3 か所、山間部 8 か所)を対象に、日本野鳥の会山口県支部が発 行している支部報「山口野鳥だより」と現地調査により、1973 年から 1995 年を対象として、

調査地毎の確認種の出現率を求め、期間別に夏鳥と留鳥に分けて比較した。

その結果、1981 年から 1985 年と 1991 年から 1995 年の比較において、留鳥では「変化なし」

の割合が高かったのに対し、夏鳥では留鳥よりも「減少」の割合が高く、出現率に差が見られ た(山本と脊戸, 1997)。

図5.夏鳥と留鳥間の出現傾向の類型と種数の比較.縦棒は 60%信頼 区間を示す。山本(1997, Strix 15)より許可を得て転載。

留鳥 夏鳥

変化なし 減少 増加 不明

種の割合(%)

(16)

Ⅳ.島嶼の鳥類群集の特徴 1)島嶼の生物相の一般的特徴

島嶼の生物相の一般的な特徴としては、島嶼生態系において独自の進化をしてきたことによ り、インベントリーの中で固有種、固有亜種の占める割合が高いこと(MacArthur & Wilson, 1967;

Whittaker, 1998; Witt & Maliakal-Witt 2007)、また、鳥類では翼の退化や本土との共通種の間で体 サイズの変化や渡り性の消失(Roff, 1994; Whittaker, 1998)、クラッチサイズの減少等、形態や生 態が大陸にすむ種とは異なる(Higuchi, 1976)。生物相を構成する種のもつ歴史が大陸に生息す る種より浅く、隔離された環境の中で今も種分化が進みつつある(Whittaker, 1998)。また、海洋 環境は、生物の移動の障壁となり、海洋島では大型哺乳類や両生類がいない等、大陸の生物相 とは異なり分類群の欠如が見られる(MacArthur & Wilson, 1967)。科レベルでは、近縁種が繁殖 しておらず、ある種の生息密度が高いこと等がある。島嶼では、捕食者となる哺乳類が分布し ていないことから、捕食者への対抗や逃避がうまくできない種が多く、病原性に対する抵抗力 も低いなど脆弱性もある。

2)伊豆諸島の鳥類相の特徴

伊豆諸島は、大島から鳥島までに広がる一連の火山島である。伊豆諸島の鳥類相に関しては、

山階(1942)を始めとして、樋口(1973)、磯部(1990)などがあり、伊豆諸島全体では 52 科 281 種 が確認されている(磯部, 1990)。近年、各々の島での鳥類観察者が増え、情報の蓄積が進みつ つあり(ex. 小倉, 2000; 大久保, 2016; 小木ら, 2012)、これらの文献整理と現地調査によ り、伊豆諸島の鳥類目録を作成し、2019 年 3 月時点で 306 種が確認されている(山本, 投稿準 備中)。

伊豆諸島を特徴づける鳥類には、アカコッコ(日本固有種)やイイジマムシクイ(日本固有繁 殖種)、分布がユーラシア大陸東縁の島嶼に限られるカラスバト、伊豆諸島の固有亜種として、

タネコマドリ、オーストンヤマガラ、ナミエヤマガラPoecile varius namiei、モスケミソサザイ、

シチトウメジロZosterops japonicas stejnegeri、ミヤケコゲラDendrocopos kizuki matsudairai、準 日本固有種のカンムリウミスズメがある。本州の亜種とは別亜種である5亜種は羽色や体の大 きさ、習性が本州とは異なり、シチトウメジロでは体サイズの大型化(山階, 1985)や、クラッ チサイズの減少(磯部, 1991)、ヤマガラでは、本州の亜種ヤマガラと比較して亜種オーストン ヤマガラではクラッチサイズが少ないことや、巣立ちビナの餌ねだりの期間が長いことが報告 されている(Higuchi, 1976; Higuchi & Momose, 1981)。モスケミソサザイやタネコマドリといっ た亜種では、本州亜種では移動性が高いのに対し、周年ほぼ同じ生息地で過ごし、留鳥性が強 い。この他に伊豆諸島では近縁種が繁殖していない。例えばカラス科では、本州では、ハシブ トガラスCorvus macrorhynchos、ハシボソガラスCorvus corone、カケスGarrulus glandarius、オ ナガCyanopica cyanus、ホシガラスNucifraga caryocatactesの5種が繁殖しているが、伊豆諸島 ではハシブトガラスのみしか繁殖していない。この他に、伊豆諸島及びその属島の無人島は海 鳥の繁殖地となっており、鳥島のアホウドリPhoebastria albatrusを始めとして、カンムリウミ スズメ、オーストンウミツバメ Oceanodroma tristrami、ヒメクロウミツバメ Oceanodroma

monorhis等の海鳥が繁殖している。また、渡り鳥の主流な渡りコースではないものの、約 60 種

の鳥類が春秋にほぼ定期的に通過しており、伊豆諸島は渡り鳥の中継地としての役割も担って いる。

(17)

Ⅴ.伊豆諸島における鳥類群集の変動要因 1)自然要因

(1)自然移入

本来の分布域でない地域に鳥類が分散したり、移入したりすることは鳥の行動の特徴である。

移入種の新たな移入場所での定着と個体群の確立の有無は、移入種の地域群集に適応する生態 的柔軟性や競争力、天敵の有無や病原菌の有無などに依存して変わる(ギル, 2009)。自然移入 には幼鳥の分散による移入のほかに、台風などにより偶発的に遠方に運ばれる場合や、近年は 地球温暖化とともに本来の分布地とは異なる場所に移動し定着するケースがある。国内でもオ ニカッコウ Eudynamys scolopaceus やタカサゴクロサギ Ixobrychus flavicollis、シロハラクイナ

Amaurornis phoenicurs のように南方系の鳥が侵入し、分布を拡大しているケースもある。シロ

ハラクイナは、かつては南西諸島に迷行する迷鳥と考えられていたが、1975 年に沖縄本島で繁 殖が確認された後、全国での分布や繁殖が増加し、北海道北部の羽幌町でも分布が確認された (伊藤ら, 2013)。また、オニカッコウは南アジアから東南アジアに広く分布しているが、近年、

南西諸島を中心に観察記録が増加し、長野県や福岡県でも確認されている(池長と高山, 2020)。

こうした自然移入の例として、亜種ヤマガラの三宅島での初記録(Yamamoto & Higuchi, 2004)、

ルリオハチクイの八丈島での観察記録(山本ら, 2015)がある。

三宅島は、本来オーストンヤマガラPoecile varius owstoniの分布域であるが、本州亜種ヤマ ガラP. varius variusが 1996/1997 年の越冬期に確認された(Yamamoto & Higuchi, 2004)。

図6. ヤマガラ 3 亜種の体重と翼長との関係. 図の測定値は樋口(1976)とその後の 標識調査の測定による。●は亜種オーストンヤマガラ、△は亜種ナミエヤマガ ラ、◯は亜種ヤマガラを示す。観察された2個体を■に示す。この 2 個体の測 定値は表 1 のとおりで、体サイズから亜種ヤマガラと考えられた。Yamamoto

& Higuchi(2004, J. of Yamashina Institute for Ornitholgy 35)より日本語に改変し転 載。

翼長(mm)

体重の三乗根(g)

(18)

表1.標識捕獲された 2 個体の測定値.

捕獲個体 自然翼長

(mm)

露出嘴峰長

(mm) 鼻孔高(mm) 跗蹠長(mm) 体重(g) 足輪番号 No.2F893392 71.5 10.3 5.1 19.8 17.7 足輪番号 No.2F893422 73.2 10.6 4.8 19.3 17.6 注)露出嘴峰長:上嘴基部の羽毛の生え際から先端までの稜線の長さ. 跗蹠長:かかとから

脚の指のつけ根までの長さを示す.

図7.三宅島で観察された亜種ヤマガラ(b). (a)、(c)は亜種オーストンヤマガラ.

Yamamoto & Higuchi(2004, J. of Yamashina Institute for Ornitholgy 35)より日本語 に改変し転載。

自然移入のもう一つの例として、八丈島ではルリオハチクイ Merops philippinus (ブッポウ ソウ目ハチクイ科)が国内で初めて観察された(山本ら, 2015)。本種は本来の分布域はインド、

ネパール、パキスタン北部、スリランカ南東部、タイ、マレー半島、中国南東部、フィリピン 等で(del Hoyo et al., 2001; Phillipps, 2009)、留鳥性のものと渡り性のものがいるとされている(吉 井監修, 1988)。本来の分布域では、水辺に隣接する農耕地、樹林地の林縁、伐採地、マングロ ーブ林などの汽水域等さまざまな環境に生息する(del Hoyo et al., 2001)。本種は、2013 年 7 月 7 日に、八丈島南東部の末吉地区の山林(33°04′N,139°50′E)において観察され、撮影した 写真(図8)を元に種の同定を行なった。

観察された環境は,耕作放棄地に成立した二次林中の道路際で、樹高約 7–8mのオオバヤシ ャブシ、ハチジョウグワ、樹高約 3–5mのハチジョウキブシ、アカメガシワ、樹高約 1–2mのガ クアジサイなどの落葉広葉樹等が自生する場所である。観察されたのはこの日のみであった。

(19)

図8.八丈島で観察されたルリオハチクイ(撮影:金田京子2013年7月7日).

山本ら(2015, Strix 31)より許可を得て転載。

また、喜界島ではモズLanius bucephalus が新たに自然移入し、個体群が確立されつつある。

自然移入した種の生息数の変化や営巣場所、餌内容を調べることは、その種の定着の有無を図 るうえで重要である。

調査は、2017 年 1 月 16~18 日、3 月 5~11 日、4 月 23~30 日、5 月 26 日~6 月 1 日、6 月 22~27 日の 5 回で、生息数の調査は,2 名が自動車に同乗し,島内全域の道(180~200 km)を 低速(時速 20km 以下)で走行しながらモズを探し、発見した場合には、見失うまで観察を続け て他の個体の発見や繁殖状況の把握を行なった。その結果、全島で 13 つがいが、また単独個体 が 12~17 個体観察された。つがいの多くが造巣、産卵中と考えられたが、抱卵、育雛に当たる 時期には繁殖を継続していない場合が多く、繁殖の失敗が示唆された。営巣場所は畑の縁の薮 で、採食はサトウキビ畑で行われ、地上の昆虫類を捕食することが多かった(濱尾ら, 2018)。

また、クマネズミRattus rattus による捕食圧があることから、捕食者への回避反応として、人 が近づいた時に逃避する距離を測定したところ、喜界島のモズは本土のものよりも長く、リス クを回避する傾向が強いことが明らかになった。このリスク回避性は、自然移入後、定着して いくうえで有利に働くと考えられた(Hamao et al., 2020)。

また、海洋島への鳥類の自然移入が記録されているケースとしては、小笠原諸島西之島が挙 げられる。西之島は 1973 年の海底火山の噴火により誕生し、2004 年にはカツオドリ Sula

leucogasterやクロアジサシAnous stolidusなど海鳥8種の繁殖が確認されていた(川上ら, 2005)。

2013 年に大規模な火山活動が開始し、2020 年時点でも継続している。この火山活動により、従 来の海鳥の繁殖地は一部を除きほぼ消失したが、今後、海鳥を始めとして、どのような生物の 移入があるか等、モニタリングが非常に重要である。

(20)

(2)火山活動による影響

鳥類群集に変動を起こす自然要因として、三宅島では火山活動がある。本項では 2000 年に 発生した三宅島の火山活動とその影響について、➀火山活動開始直後の直接的影響、②火山ガ スの放出による間接的な影響、③噴火前後の鳥類相の変化について纏めた。

1)2000 年以前の三宅島の火山活動と野鳥への影響

三宅島は伊豆大島とともに古くから火山活動の活発な島としても知られており、噴出物の層 序と分布に関して最近 7000 年間について詳しく記載されている(津久井と鈴木, 1998)。記録 が残っている火山活動としては、1085 年が最初で、最近では、1940、1962、1983 年に噴火して いる。山腹からの割れ目噴火をする、火山性微動が始まって短時間でマグマが地表に流出し、

約1日で火山活動が終息する、などの特徴が挙げられた。

前回 1983 年の噴火では島の南西部の山腹から溶岩が流出し、西側にある集落の大多数が焼 失し、南西側にあった新澪池と照葉樹林が消失した。この噴火により、消失もしくは植生の部 分的な枯死や落葉などにより影響を受けたとされる面積は約 8.4km2で全島面積の約 15%にも 及んだ(アジア航測, 1984)。この噴火では、島南部の地域において、植生への被害や火山灰、

噴石などの量を基準にして、被害度ごとの野鳥の種類と個体数が記録されており、被害度が大 きくなるにつれて観察種数、個体数とも減少していた(樋口, 1984)。特に影響を強く受けたの はヒヨドリとアカコッコで、メジロ、ホオジロEmberiza cioides、ウグイス、コゲラ、コジュケBambusicola thoracicus、イソヒヨドリMonticola solitarius、アオジEmberiza spodocephala、ヤ マガラなども被害度の増加とともに減少傾向があった(樋口, 1984)。

2) 2000 年噴火の経緯と特徴

2000 年6月下旬に始まった火山活動は、世界的にも類を見ない大量の火山ガス(SO2)を山頂 火口から放出した。この噴火は、昭和に起きた3回の噴火とは異なり、溶岩の地表への流出は ないものの、火山活動開始直後から 2000 年9月頃までの、細かな粒子の大量の火山灰の放出 と、9月以降の長期間にわたる火山ガスの噴出が大きな特徴であった(津久井ら, 2002)。その ため、鳥類へは、灰の付着などによる直接的な被害のほか、山頂の陥没や泥流の発生などによ る生息地の消失、採餌環境の悪化などの影響があった(山本, 2001)。一連の火山活動の概要を 表2に示す。

表2.三宅島 2000 年噴火活動の概要.

日 付 概 要

2000 年 6 月 26 日 夜、島内2地区に緊急避難勧告発令。夜中過ぎから地震多発。

7 月 8 日 最初の島内噴火。山頂部の八丁平が陥没。

7 月 14 日 島の北側から北東側に降灰あり。森林への被害発生。

8 月 10 日 やや強い頂上噴火。島の南西側に初めての降灰発生。

8 月 18 日 夕方に大噴火。噴煙の高さ約 15km。全島内に降灰あり。山頂付近で約1m の 降灰。

8 月 29 日 早朝にやや大きな噴火。噴煙の高さ約 8km。低温の火災流が発生。

9 月 4 日 全島避難。アカコッコ館一時閉館。

9 月 5 日 降雨により泥流発生。

9 月中旬以降 地震減少。火山灰の噴出も減少。代わって、大量の火山ガスが噴出。

2000 年 12 月末 火山ガス量一日あたり約2~5万トン。

2001 年 1 月~2002 年 3 月 火山活動は全体としては低下傾向。火山ガス量は一日あたり約1~2万トン。

(21)

3)鳥類への直接的影響

ここでは、特に 6 月の火山活動の開始から9月上旬の全島避難までの間に観察された、鳥類 への影響や生息地への被害状況を纏める。

2000 年 7 月 8 日に発生した、雄山山頂部の噴火により、山頂部に広がっていた八丁平カルデ ラ(南北 1.8km×東西 1.6km)が陥没し、ウチヤマセンニュウLocustella pleskeiの島内最大の繁 殖地が消失した。これにより、この種は約 300 羽と噴火前の約半数に減少したと推定された(藤 田ら, 2005)。山頂火口からの降灰による死亡事例として、メジロ 2 例、イイジマムシクイ Phylloscopus ijimae 1 例、カラスバト 1 例が確認された。その他に、カラスバト、ヒヨドリ、カ

ワラヒワChloris sinica、メジロ、スズメPasser montanusが各 1 個体が灰まみれになった状態

で保護された。山頂からの降灰により積もった灰の深さは、山頂附近で約 1 m、麓では約 2 cm で、樹木の葉や枝への付着や噴火による倒木などにより、鳥類の生息環境、採餌環境の悪化が 考えられた。

8 月 18 日、8 月 29 日と大規模な噴火があり、特に 8 月 18 日には全島に降灰があった。降灰 の鳥類への影響を把握するために、7 月 24 日に実施した島内 10 か所(各 5 分、約 100 m ×100m;

図9)での定点センサスを 9 月 4 日にも実施し、比較した。

図9.調査地及び調査コース. 富賀、大路池、三宅高校裏および都道 212 号線沿いの定点 10 か所(灰色○印)を調査地とした。

その結果、確認種数にはほとんど差が見られなかったが(図 10a)、留鳥の個体数が約3割減 少していた(図 10b)。また、噴火の前後でスズメ目の留鳥の個体数を環境別で比較したところ、

降灰前に森林、草地、農耕地、市街地といった4つの環境で見られたヒヨドリ、ウグイス、メ ジロ、ホオジロ、ハシブトガラスの内、降灰後にはヒヨドリ、ウグイスが全ての環境で減少し

(22)

ていた。メジロは森林で減少し、農耕地、市街地で増加していた。また、ハシブトガラスは森 林と農耕地で減り、市街地、草地で増加していた(図 11)。このことは生息地の森林の状態が降 灰により悪化したため、メジロやハシブトガラスなど一部の種は比較的降灰の少ない場所に移 動した可能性が考えられた。各調査地点で留鳥の個体数の増減をもとに、累積の降灰量と種数 の変化の関係を見てみると、累積の降灰量が 20mm 以下の地点では鳥類の種数の増加と減少の 双方が見られたが、降灰量が 20mm を越えると種数が減少する傾向が見られた(図 12; 山本, 2001)。

図 10.2000 年 8 月の噴火の鳥類への影響.

0 20 40 60 80 100 120

2000年7月 2000年9月

個体数

(b)

0 5 10 15 20

2000年7月 2000年9月

種数

夏鳥 留鳥

(a)

(23)

図 11. 環境別の留鳥の個体数の推移.

図 12. 累積降灰量と種数の関係.

-1 -0.5 0 0.5 1

0 20 40 60 80

種数の増減(r)

累積降灰量(mm)

0 2 4 6

個体数(平均)

森林

0 2 4 6

個体数(平均)

草地

0 2 4 6

個体数(平均)

農耕地

0 2 4 6

個体数(平均)

市街地

2000年7月 2000年9月

(24)

4) 2000 年噴火前後の鳥類相の比較

この火山活動によって、島の生態系には多大な影響が出ており、噴火直後より継続的な調査 が行なわれてきた。これまでに、鳥類への影響に関しては、植生回復と鳥類群集との関係から、

樹木植被率と種数、個体密度の間には概ね正の相関が見られることや、TWINSPAN を用いた種組 成の分類から、植被率の低下に伴って種組成が変化するパターンが抽出されている(加藤ら, 2002; 加藤と樋口, 2003)ほか、植生の退行・回復に伴う鳥類群集の変化も報告されている(加 藤と樋口, 2011)。また、ウチヤマセンニュウとオーストンヤマガラについては噴火前後の個 体数が推定され、ほぼ半減したことが報告されている(藤田ら, 2005)。ここでは、2000 年噴火 の鳥類への影響について、主に噴火前後の鳥類の個体数に注目し、継続的に実施しているライ ンセンサス調査や標識調査より得られた結果(山本ら, 2004)について纏める。

①調査対象地域

調査対象地域は、三宅島の坪田地区(大路池/三宅高校裏:火山ガスの影響の少ない地域)、

阿古地区(富賀神社:火山ガスの影響のある地域)を対象とした(図 9 参照)。

②調査期間

2000 年噴火以前には、大路池では、1993 年 7 月から 2000 年 8 月までの間に毎月 2 回、富賀 神社では、1997 年 4 月以降 2000 年 8 月までの間に毎月1~2回調査を実施していた。この期 間のデータを噴火前のデータとした。2000 年噴火以降は、全島避難前の 2000 年 7 月 24 日、9 月 4 日及び、全島避難以降の 2001 年 11 月 28 日~12 月 1 日、2002 年 2 月 25 日~28 日、2002 年 5 月 24 日~29 日、2003 年 1 月 22 日~25 日、2003 年 3 月 18 日~21 日、2003 年 6 月 24 日

~28 日、2003 年 11 月 1 日~5 日、2004 年 2 月 5 日~14 日に調査を実施した。

③調査方法

ラインセンサス調査は、調査コース上を時速 1~2km で歩きながら、左右 50mの幅内で、肉 眼、双眼鏡(8 倍もしくは 10 倍)を用いての目視、あるいは鳴き声等により確認された鳥類の種 類と個体数を記録した。噴火以前のセンサス開始時刻は、大路池では午前9時、富賀神社では 日の出時刻とし、2 時間おきに調査を実施した。開始時刻は、噴火後もほぼ同時刻とした。全 島避難以降の調査では時間が限られていたが、大路池では噴火前と同時刻で、富賀神社では、

噴火以前と比較しうる調査が複数回実施できた「日の出時刻」と「日の出2時間後」のセンサ スを比較に用いた。解析対象には森林性のスズメ目鳥類9種を選び、噴火前後で個体数の比較 を行った。

定点調査では、冬季に大路池で見られる水鳥類についてカウントし、噴火前後の個体数を比 較した。

標識調査では、2003 年 11 月及び 2004 年 2 月にかすみ網(36 メッシュ, 12mまたは 6m)を用 いて鳥類を捕獲し、足輪を装着するとともに、嘴峰長や跗蹠長等、体の各部を計測した後、放 鳥した。調査地点は、①植生被害が軽微ながら見られる大路池、②植生への被害が大きい富賀 神社、③植生被害が見られない三宅高校裏の3地点の森林とした。噴火以前のデータとしては 1996 年 11 月、1997 年 2 月、1999 年 2 月のものを用いた。

(25)

④結果及び考察

ラインセンサス調査では、大路池での森林性のスズメ目鳥類9種の噴火前後の個体数は、噴 火後の繁殖期では 2003 年 3 月に極端に少ないものの、2002 年 5 月及び 2003 年 6 月の調査では 特に噴火前に較べて減少していなかった(図 13)。また、越冬期では 2003 年 1 月に少ないもの の、2002 年 2 月、2003 年 11 月、2004 年 2 月とも噴火前と比較して目立った減少はみられなか った(図 14)。

富賀神社では、2004 年 2 月の時点では火山ガスによってタブノキやヤブツバキ等の落葉や枯 死が目立っていた。繁殖期の「日の出2時間後」のラインセンサス結果では 3 月、6 月とも噴 火前に較べて、確認された鳥類の個体数は減少していた。噴火以降、ヒヨドリと常緑広葉樹を 選好するヤマガラが見られなくなり、疎林や林縁部に多いシジュウカラが増加していた(図 15)。

越冬期の「日の出2時間後」のラインセンサス結果(図 16)及び「日の出時刻」でのラインセン サス結果(図 17)でも各月で個体数は減少しており、特にヒヨドリとヤマガラが減少していた。

しかし、大路池、富賀神社とも、調査回数が限られていたため、よりはっきりとした傾向を把 握するには、今後も調査を継続していく必要があると考えられた。

冬季に大路池を訪れる水鳥類は、2000 年噴火以前はオシドリが最も多く、その他には少数の マガモ、カルガモ、ヒドリガモなどが観察されていた。噴火の翌年(2001 年/2002 年)冬季には、

噴火前とほぼ同数のオシドリが訪れていたが、池周囲の森林の中低木層の被度が減少した 2003 年及び 2004 年の越冬期にはオシドリの飛来数は少なく、また、噴火前に較べるとオオバンが 増加していた(表3)。

標識調査による鳥類の捕獲効率を噴火前後で比較としたところ、森林の中低木層の被度が減 少した大路池では、噴火後、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロの捕獲効率が低下していた(表 4)。標識種数も減少し、2003 年 11 月及び 2004 年 2 月の調査ではアオジ、クロジ、アトリな どの冬鳥は標識されなかった(表4)。富賀神社では噴火前と較べて、タブノキ、ヤブツバキな どの落葉や枯死が進み、代わって低木層でアオノクマタケランが繁茂していた。標識種数は噴 火前に較べて若干減少し、2004 年 2 月時の調査ではヒヨドリ 1 羽が標識されたにすぎない(表 4)。

三宅高校裏の森林は、2000 年噴火の影響をほとんど受けていなかった。2004 年 2 月の調査 では、モスケミソサザイ、タネコマドリなど、この地域を特徴づける鳥類が標識され、噴火前 と同様の良好な環境が保たれていることが示唆された(表5)。

以上の3地点での標識調査結果からは、植生の被害度と捕獲効率との間に関係がある可能性 が考えられたが、今後の調査によりさらに検討する必要がある。

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図 13.火山ガスの影響の少ない地域(大路池)での繁殖期のラインセンサス結果.

△は 2000 年噴火開始を示す。調査開始時刻 9 時。

図 14.火山ガスの影響の少ない地域(大路池)での越冬期のラインセンサス結果.

△は 2000 年噴火開始を示す。調査開始時刻 9 時。

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図 15.繁殖期における日の出 2 時間後の富賀神社でのラインセンサス結果.

△は 2000 年噴火開始を示す。

図 16.越冬期における日の出 2 時間後の富賀神社でのラインセンサス結果.

△は 2000 年噴火開始を示す。

0 10 20 30 40 50 60

9706 9803 0303 0306

観察個体数

調査年月

ヒヨドリ アカコッコ ウグイス ヤマガラ シジュウカラ

メジロ スズメ ハシブトガラス イイジマムシクイ

0 10 20 30 40 50 60

9711 9801 9802 0301 0311 0402

観察個体数

調査年月

ヒヨドリ アカコッコ ウグイス ヤマガラ シジュウカラ メジロ スズメ ハシブトガラス

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図 17.越冬期における日の出時刻の富賀神社でのラインセンサス結果.

△は 2000 年噴火開始を示す。

表 3.大路池で確認された水鳥類.

種名 調査月

噴火前 噴火後

1999年12月 2000年2月 2001年12月 2002年2月 2003年1月 2003年3月 2003年11月 2004年2月

カイツブリ 2 2 2 4

ウミウ 1 2 1 1 2

アオサギ 1

ヨシガモ 6 1

オシドリ 16 32 48 39 1 7

マガモ 3 3 4 1

カルガモ 1

ヒドリガモ 2 1 1 1

オナガガモ 1

ハシビロガモ 1

スズガモ 1 1 2

バン 1 2

オオバン 6 6 1 3 19 20 8 26

カワセミ 1 1

種数 4 6 5 6 5 5 7 6

個体数 24 45 54 50 30 25 22 35 0

10 20 30 40 50 60

9801 9802 9803 9901 9902 9903 0001 0002 0003 0301 0303 0402

観察個体数

調査年月

ヒヨドリ アカコッコ ウグイス ヤマガラ シジュウカラ メジロ スズメ ハシブトガラス

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表 4.鳥類標識調査での捕獲効率(羽/10m/5hr.).

大路池 富賀神社

11 月 2 月 2 月

噴火前 噴火後 噴火前 噴火後 噴火前 噴火後

種名 調査日 96.11.4 96.11.5 96.11.7 03.11.2 03.11.5 97.2.10 04.2.11 99.2.9 99.2.26 04.2.12 コゲラ 0.6 0.2

ヒヨドリ 0.4 0.2 0.8 0.2

モズ 0.2

アカコッコ 0.8

シロハラ 0.2 0.2

ウグイス 0.3 0.5

ヤマガラ 3.6 5.6 4.2 0.5 0.8 4.2 0.5 シジュウカラ 4.2 0.2 1.7 1.2 0.6

メジロ 3.0 1.4 0.4 0.7 0.2

アオジ 0.6 1.0

クロジ 0.6 0.8 0.6

アトリ 1.4

カワラヒワ 1.2

マヒワ 0.6

スズメ 2.1 0.2 0.6 捕獲効率 13.8 10.5 5.8 2.0 4.1 7.2 1.3 2.0 0.4 0.2

種数 7 4 4 6 4 5 4 3 2 1

表 5.鳥類標識調査結果(2004 年 2 月).

調査地 大路池 富賀神社 三宅高校裏

種名 調査日 2004 年 2 月 11 日 2004 年 2 月 12 日 2004 年 2 月 13 日

コゲラ 1

ヒヨドリ 1

ミソサザイ 1

コマドリ 1

シロハラ 1

ウグイス 2 2

シジュウカラ 4

アオジ 2

標識個体数 8 1 6

使用した網の枚数 4 3 4

※いずれの調査日も8時 30 分に開網、15 時に閉網。

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(3)植生被害を及ぼす昆虫の大発生、移入

2000 年噴火後の 2002 年 5 月に、三宅島ではマイマイガLymantria disper幼虫が大発生し、ツ

ツドリCuculus saturatusが例年よりも多数記録された(加藤ら, 2007)。ツツドリは渡りの途中

に三宅島を通過するが、通常は 1 個体が一か所でのみ観察されており、複数個体が同じ日に異 なる場所で記録された例はない。2002 年 5 月 24 日から 28 日のセンサス調査では、5 月 24 日 に 2 地点で 2 個体が、25 日には 8 地点で 12 個体が、26 日には 4 地点で 7 個体が、27 日には 2 地点で 2 個体が、さらに 28 日には 4 地点で 4 個体が観察された。これらのツツドリの確認地 点はマイマイガの分布とほぼ一致しており、マイマイガ幼虫の大発生が、ツツドリの島への滞 在期間を延長し、例年より多くが観察されたことが示唆された。マイマイガが大発生した理由 は不明であるが、様々な理由で植生にストレスがかかることで、食害する生物の個体数が増え ることが知られており(Baker, 1972)、火山ガスの継続した噴出が植物に対するストレスとな った可能性がある。三宅島では、2005 年及び 2006 年にハスオビエダシャクDescoreba simplex が大発生し、ハシブトガラス、イソヒヨドリなど 7 種の鳥類が捕食していた。こうした昆虫の 大発生は鳥類群集の変動に影響する可能性がある。この他にも、三宅島では近年カシノナガキ クイムシPlatypus quercivorusが移入し、スダジイCastanopsis sieboldiiへの被害が発生している。

スダジイの実はオーストンヤマガラが好み、貯食等もするため、この木種の減少はオーストン ヤマガラ個体群へ影響することが懸念される。

図 18. 2002 年繁殖期(5/24~28 日)におけるツツドリ確認地点とマイマイガ幼虫分布状況.

ツツドリ確認地点は丸数字で示し、数字は同時に確認された個体数を示す。異なる日 に近接した場所で観察された場合にも図では異なる丸数字で示した。●:マイマイガ幼 虫を確認できた落葉樹の比率が 70%以上だった地点、◎:同 30~70%、○:30%未満、

□:比率は計測しなかったがマイマイガの幼虫は確認できた地点、×:調査を行ったも ののマイマイガ幼虫を確認できなかった地点。△:ハスオビエダシャク幼虫が確認でき た地点。加藤ら(2007, Strix 25)より許可を得て転載。

参照

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