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生産価格体系下の不等労働量交換

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(1)

生産価格体系下の不等労働量交換

和 田 豊

Ⅰ.問題の所在

労働価値体系 における諸生産部門の剰余価値 は,一般 にその投下資本価値 に比例 しない.他方,生産価格体系下の諸部門利潤 は,その投下資本額 に比 例する.労働価値体系 と生産価格体系のこの ような東経 は,労働価値 レベル ではみ られなかった種類の不等労働量交換が生産価格の もとで発生す ること を意味 してお り, しば しば 「剰余価値 の再分配」 として捉 え られて きた(1㌧ それは,生産価格 によって確保 される利潤の源泉が,社会的総体でみれば労 働者階級の行 った剰余労働 にはかならないが,必ず しも自部門の労働者の剰 余労働 のみ とは限 らない事態 を説明 しようとした ものである.

この ような把握 は,大筋 において誤 りではないが,立 ち入って考えてみる と幾つかの問題点 を含 んでいる.

まず, ここでの 「剰余価値の再分配」 とい う表現 は,厳密 にいえば不適切 であろう.労働価値体系 と生産価格体系 は,資本制 において不等労働量交換 をもたらす さまざまな要因を抽 出 し整序する中で,論理的 ・歴史的にスパ ン の異なる交換価値 の体系 として認識 され積み重ね られるものである.両体系

(1)た とえば,見田石介 『価値お よび生産価格の研究』 (新 日本出版社,1972年)70‑71 頁,富塚良三 『経済原論』 (有斐閣,1976年)316頁,松石勝彦 『マルクス経済学』 ( 木書店,1990年)208頁.

157 ‑

(2)

158

は,ひとたび成立 した資本制 において時間的に前後 して現れた り,一方か ら 他方へ現実 に移行す るといった関係 にあるのではない.生産価格体系の成立 を想定 した分析では,生産過程で投下 された諸労働 にたいす る支配力の分配 は,労働価値体系の もとでではな く生産価格体系の もとで初めて行 われるの だか ら

,

「再分配」 は正確 には 「分配」 としなければな らない. また,その 場合 に諸商品の労働価値 を投下労働 と同一一視す ることも,厳密 にいえば誤 り である.労働価値の概念 は,抽象的な市場経済の レベルで想定 される1物1 価法則 を踏 まえて,諸投下労働 の熟練度 ・強度 ・複雑度や生産の客体的条件 が社会的平均 的水準 にあることを前提 に規定 されている.その意味で,労働 価値体系は,諸商品の個別的な投下労働か らは乗離 した支配労働 の体系 なの である. したが って,生産価格体系下の利潤の実体 は,究極的には 「剰余価 値」ではな く 「剰余労働」 とされなければならない.

だが,これ らの不正確 さを除去 して も残 る重要な問題がある.生産価格の もとで新 たに発生す る不等労働量交換 は,いわゆる 「剰余価値の再分配」だ けであろうか.いいかえれば,剰余価値 の実体 と利潤の実体 は,社会的総計 でみればまった く同一の剰余労働 なのだろうか.

生産価格体系 に固有の不等労働量交換 を考 える場合 に注 目されるのは,い わゆる総計一致諸命題の同時不成立 とい う周知の事実である.すなわち,労 働価値体系 と生産価格体系の間では, きわめて特殊 な条件が満たされない限 り,総価値 ‑総生産価格,総価値生産物 ‑総収入,総剰余価値 ‑総利潤 とい う3命題のいずれか二つ以上が同時 に成立す ることはない. もとよ り時間で 測 られる労働価値 とさまざまな通貨単位で測 られる生産価格がその ままで量 的に一致 しない ことは自明だが, この同時不成立 は,生産価格 をそれが表す 支配労働時間に変換 して もなお解消 されない実質的な総計不一致である.

総計一致諸命題の同時不成立 にかん しては,労働価値体系 と生産価格体系 を 「マルクスの基本定理」 を中心 とした異次元間の対応 として関係づけるべ きだ とする立場か ら総計一致命題の成否 を経済学上の問題 とは考 えない見解

158‑

(3)

や,総計一致諸命題 はあ くまで同時 に成立すべ きだ とする立場か ら労働価価 や生産価格のオーソ ドックスな規定 を変更する見解 も存在する. しか しなが ら,筆者はそ うした見解 を支持 しない.生産価格体系 を通貨単位 タームか ら 労働時間タームへ変換 して労働価値体系 と直接 に比較す ることは,両体系間 の対応関係 をいわば定性的に検出す る目的には不要であって も,検出された 対応関係 を踏 まえて諸商品の生産価格 と労働価値の乗離が労働主体や所有主 体 にとって有す る意味 を問い,それを定量的に分析する段階では不可欠 とな る. また,線形連立方程式 によって同時的に決定 される労働価値 と生産価格 は,任意の選ばれた期間に発生 した不等労働量交換 を要因別 に抽出す るさい の基準 として重要な役割 を演ずる.総計一致諸命題の同時不成立は,これを 無視 した り回避 した りす るのではな く,生産価格体系の もとでたんなる 「剰 余価値の再分配」 とは異 なる不等労働量交換が現実 に発生することを示す証 左 と解 さなければならないのである.

以上の ような問題認識 は,従来か ら相当数の研究者の脳裏 に浮かんで きた ことと思われる.本稿では,平易 な数値例 を併用 した分析 によって,生産価 格体系の労働価値体系か らの乗離 に 「剰余価値 の再分配」以外 の不等労働量 交換が伴 うことを具体的に立証 したい(2).

Ⅱ.分析 の枠組み

本稿の分析では一貫 して,生産的な技術 をもった資本制経済 を想定 し,早

(2)本稿 は,内容的には和 田豊 「転化問題 における総計一致諸命題の実在的意義

」(

『岡 山大学経済学会雑誌』第30巻第4号,19993月)にたいす る補論 であ り,参考文献 等 はさしあた り同論文 を参照 されたい.また,その基礎 をなす不等労働量交換の概念 については同 「マルクス派経済学の価格理論 一不等労働量交換 の重層 的展 開‑」 ( 山大学経済学会雑誌』第26巻第3・4号,19953月) を,転化問題一般 にかんす る最 近の研究動向については同 「欧米 における転化問題論争の現局面‑1990年代 の研究 を 中心 に‑」(岡山大学経済学会雑誌』第30巻第3号,19993月) をも参照のこと.

159‑

(4)

160

純化のために固定資本 ・結合生産 ・著移財 ・非生産的部門 ・複雑労働 ・労働 者貯蓄 ・土地所有 ・外 国貿易等 を捨象する.

A を生産手段 の投入係数行列,tを直接労働 の投入係数ベ ク トル,dを 労働1単位 当た りの実質賃金バ ン ドル,V を労働価値 ベ ク トル,pを生産 価格ベ ク トル,rを均等利潤率 とす ると,労働価値体系 と生産価格体系 は

V

‑vA+l ①

p‑(

1+

r)p(A

+

dl) @ ここで,① 式が労働価値 の絶対 的な大 きさを与 えるのにたい し,② 式で 決定 されるのは相対生産価格 (生産価格比) と均等利潤率の租だか ら, この ままでは生産価格 を労働価値 と比較することはで きない.両者 を比較可能 と す るためには,労働価値 を相対労働価値 (労働価値比) にす るか,相対生産 価格 を労働時間で測 られる支配労働量 に変換すればよいが,不等労働量交換 の定量的な分析 を課題 とす る本稿では,後の方法 を採 る.そ して,相対生産 価格 をそれが表す支配労働量 に変換す るために,いわゆる総価値 ‑総生産価 格 を 「第3の方程式」 として加 える.す なわち,

VX ‑PX

ただ し,方 は総生産ベ ク トル.

生産価格 の絶対水準 と集計値 (総生産価格)は,ガ の影響 を受 けて変化 す る し,別の総計一致命題 を想定すれば異 なった大 きさになる.総価値 ‑紘 生産価格 を選ぶ理由は,それが本質的にあ らゆる不等労働量交換 を相殺 して 成 り立つ恒等式だか らである.価格 に相当す る貨幣の一定量 によって支配可 能な労働 は,裏面か らみればその貨幣 によって購買可能な商品の投下労働 に ほかな らないか ら,経済全体でみた総支配労働 は,それがいかなる価格体系 や価値体系の もとで も常 に総投下労働 と一致す る.他方,総価値生産物 ‑紘 収入や総剰余価値 ‑総利潤が成 り立つのは,総不変資本 ない しは総投下資本

‑1601

(5)

1 労働価値 と生産価格の数値例

aH al2 71 2 dl XL Vl P1 〟 0.2 0.1 4 10 0.02 80 8 8.90 0.36

α21 α22 / / d2 x2 V2 P2 /

にかかわる不等労働量交換が相殺 されてゼロとなる場合のみであって,その ために必要な条件 は きわめて特殊であることが知 られている.

さて,① 〜 ③ 式 を生産部門の数が二つの場合 に具体化 してみ よう.方程 式体系 は

vl ‑ a llVl+a21V2+ ll

v2‑a12V

l +

a22V2+l2

p.‑(

1 +

r)[(a

.

I

+

dlll)pl+(a21

+

d2l.)p2] p,‑(

l+

r)[(a 12

+

d.l2)p

. +

(a22+d212)p2] vIX

l +

V2x2‑PIXl+p2x2

@

㊨ Lで、

@

で, これに表 1の ように想定 された生産手段 と直接労働 の投入係数 ・実質質 金バ ン ドル ・総生産の値 を代入 して解 くと,第 1商品 と第2商品各1単位 当 た りの労働価値 は8,12,生産価格 は8.90,ll.28となる. したが って,第 1商品 と第2商品の生産価格 は,それぞれの労働価値か ら労働時間タームで 0.90,‑0.72だけ乗離 していることになる.

なお,総価値 は1840で総生産価格 に等 しい.

Ⅲ.生産価格の労働価値か らの乗離

筆者 は,生産価格の労働価値 か らの乗離 を,基本的には次の ような3種類 の比の変化 によって生 じる不等労働量交換の複合であると考 えている.

‑161‑

(6)

162

i) C部分 とⅤ+M部分の間の構成比の変化 ii) Ⅴ部分 とM部分の間の構成比の変化 iii) M部分の部門間配分比の変化

ただ し,ここでC部分,Ⅴ部分,M部分は,それぞれ総生産ない しは個別生 産物中の生産手段補填部分,生産的労働者消費部分,剰余部分 を意味 し,必 要に応 じて使用価値,投下労働,労働価値,生産価格等の諸 タームで表 され

るものとする.

生産価格体系の成立 に伴 うi)〜iii)の変化が,いずれ も交換価値 の増大 を目的とする諸資本の部門間移動 (投資 と操業度の決定)によって引 き起 こ されることはいうまで もない. しか し,三つの比は,単純な横並びではな く 重層的な関係 にある.マルクス派経済学の分析 にしたが えば,労働価値や生 産価格の内部構成 を捉 える場合の もっとも根底的な分割はC部分 とⅤ+M部 分の分割であ り,次がⅤ部分 とM部分,最後がM部分内部の分割である.す なわち,C部分 とⅤ+M部分の分割の基礎 には,人間の労働 を生産の唯一の 根源的 ・主体的要素 とし,生産手段 は労働 との関係で客体的要素 として位置 づける認識 (労働過程論の視角) と,一定期間の投入 ・産出活動 を追求 して 総生産を生産手段補填部分 と純生産に分ける認識 (再生産論の視角)が,結 合 されて横たわっている.これ らは,いかなる社会にも存在する普遍的構造 の認識である.Ⅴ部分 とM部分の分割は,このような生産的労働の位置づけ と純生産部分の析出を不可欠の前提 としている.そ して,M部分 と生産的労 働者 との関係 を調べ ることによって,その社会に搾取‑階級関係が存在する か否かを知ることがで きる.さらに,M部分内部の分割のされ方 には,その 社会が有する特殊歴史的な階級構造が反映 されざるを得ない.生産価格体系 下でみ られるC+Ⅴ部分 に比例 したM部分の部門間配分は,諸資本の自由競 争 によって生産が編成 され剰余生産の使途が決定 されてゆ く資本制の基本的 特徴 を抽象的に表現 している.

労働価値 と生産価格の この ような諸構成部分への分割 を踏 まえて,i)〜

162‑

(7)

iii)の変化 にもとづ く不等労働量交換 を抽出す る手順 を考 えてみ よう.その さいに注意すべ きことは,三つの比の変化 とその影響が独立 にではな く,相 互 に規定 しあった複合的な姿 をとって現れるとい うことである.

は じめに

,C

部分 と

Ⅴ+M

部分の間の構成比の変化 は,労働価値でみた

C

部分の評価量 と生産価格でみたそれが異 なることを意味する.そ うした相違 によって生ずる不等労働量交換 を純粋 に抽出するためには

,C+Ⅴ+M

部分 の支配労働 にかんする社会的総和 を一定 と想定 して,その もとで決定 される C部分の生産価格 と労働価値の差 を求めることが,まず もって必要である.

具体的には,総価値 ‑総生産価格 を表す ③ 式 と① 式 によって得 られる生産 価格の絶対水準 をベ ク トルp*で表 して

AC‑ (p*‑V)A

を計算すればよい.ただ し,AC は各商品 1単位 中のC部分 にかんす る生産 価格の労働価値か らの乗離ベ ク トル.

Ⅴ部分 とM部分の間の構成比の変化 は,労働価値でみたⅤ部分の評価量 と 生産価格でみたそれが異 なることを意味す る.そ うした相違 によって生ずる 不等労働量交換 を純粋 に抽出するためには, さしあた り

Ⅴ+M

部分の支配労

働 にかんする社会的総和 を一定 と想定 して,その もとで決定 されるⅤ部分の 生産価格 と労働価値の差 を求めることが必要である.具体的には,総価値生 産物 ‑総収入 を示す式

Ix ‑pdLr+rp(A+dl)x @ と② 式 によって得 られる生産価格の絶対水準 をベ ク トルp**で表 して

A V‑ (p**‑V)dl @

を計算すれば よい.ただ し,AV は各商品1単位 中のⅤ部分 にかんす る生産 価格の労働価値か らの乗離ベク トル.

‑163‑

(8)

164

ところが,⑲ 式が表す総計一致は③ 式が表す総価値‑総生産価格が成立 するか ぎり成立 しないか ら,Ⅴ部分 にかんする生産価格の労働価値か らの乗 離は,実際には ⑪ 式のAVか ら乗離 して次のようなベク トルになる.

AV‑p*'dl

p

*dLr

+

rp*(A+dl)x

p*'dlx

+

rp**(A+dl)x] この第2項が,総価値生産物 ‑総収入の不成立によって必要 となる補正部分 を表す.そこでは,生産価格 タームでみた各商品1単位 中のⅤ部分の評価量 が,総価値 ‑総生産価格の もとでの

Ⅴ+M

部分の生産価格総計が総価値生産 物‑総収入の もとでのそれにたい して とる比率 に応 じて,拡大 または縮小 さ

れている.

M部分の部門間配分比の変化は,生産的労働者の消費部分 を控除 した残 り の所得の部門間配分が労働価値体系 と生産価格体系 とでは異なることを意味 する.そうした相違 によって生 じる不等労働量交換 を純粋 に抽出するために は,さしあた りM部分の支配労働 にかんする社会的総和 を一定 と想定 して, その もとで決定 される各部門の利潤 と剰余価値の差 を求めることが必要であ る.具体的には,総剰余価値 ‑総利潤 を示す式

(I‑vdl)x‑rp(A

+

dl)x @ と② 式 によって得 られる生産価格の絶対水準 をベク トルp***で表 して

AM ‑rp***(A+dl)‑(i‑vdl) @ を計算すればよい.ただ し,A〟 は各商品1単位あた りの 「剰余価値の再分 配」ベク トル.

ところが,⑬ 式が表す総計一致は③ 式が表す総価値 ‑総生産価格が成立 するか ぎり成立 しないか ら

,M

部分 にかんす る生産価格の労働価値か らの乗 離は,実際には ⑭ 式の〝 か ら乗離 して次のようなベク トルになる.

‑164‑

(9)

AM ‑rp***(A

+ d l )

‑rp'*'(A+dl)

rp**(A+dl)x rp***(A+dl)x

rp*'(A+dl)x rp*(A+dl)x rp… (A+dl)x rpH*(A+dl)x この第2項は,総価値生産物 ‑総収入が成立する場合 に総剰余価値 ‑総利潤 が成立 しな くなるところから必要になる補正部分であ り,第3項は,総価値

‑総生産価格の成立 を想定 した場合に総価値生産物‑総収入が成立 しな くな るところか ら必要になる補正部分であって,いずれ も補正方法はⅤ部分の乗 離の場合 と同様である.最終的に成立する総計一致は総価値 ‑総生産価格で あ り,総価値生産物 ‑総収入ではないが,〟 か らの東経 を要因別 に抽出す るために補正部分の項は分けなければならない.

以上の結果を総合すると,総価値 ‑総生産価格が成立する場合の生産価格 体系 と労働価値体系の乗離は,次式のような関係 を満たす ことがわかる.

p*‑V‑A C

+

AV‑p**dl

+AM ‑rp***(A +dl)

‑rp***(A +dl)

p*dlx

+

rp*(A+dl)x p**dLr

+

rp**(A+dl)x rp糊(A

+

dl)x

rp

H

*(A +dl)x

rp榊(A +dl)x rp*(A +dl)x rp'**(A +dl)x rp叫*(A +dl)x

ここで,⑮ 式右辺の諸項 を,本節の冒頭 に掲 げた i)〜iii)のいずれの変化 に対応するものかによって仕訳すれば,以下の ようになる.

A*‑ACIP**dl p*dlx+rp*(A +dl)x p**dLr

+

rp**(A +dl)x

1 6 5

(10)

166

‑rp***(A +dl) rp'*(A +dl)x rp*(A +dl)x rp榊(A

+

dl)x rp'**(A

+

dl)x

A**‑AV‑rp***(A +dl)

△***=△〟

rp**(A +dl)

x

rp(A +dl)x

ただ し,△*,A**,A***は,それぞれi),ii),iii)の比の変化 によって生 じ る生産価格 の労働価値 か らの乗雛 を表す. この ように i) 〜iii)の変化 の影 響 は複合的であって,一つ一つがC部分,Ⅴ部分,M部分 のいずれか と単純

な対応 関係 にあるのではない.なお,⑰ 〜 ⑲ 式 か ら p*‑V‑ A*

+

A**

+

A'**

であ ることも明 らかである.

最後 に,以上の ような一般 的考察 に もとづいて,前節の数値例 で得 られた 生産価格 と労働価値 の乗離0.90,‑0.72が どの ような諸 要因が作用 した結 果であ るのか を,定量 的に分析 してみ よう.

表2は,三つの総計一致 を順 に想定 した場合 に第 1商品 と第2商品の生産 価格 とその構成部分が どの ような値 になるか を計算 して,それぞれの労働価 値 と対比 させ た ものであ る. これ に もとづいて ⑰ 〜 ⑲ 式 を具体化す る と以 下の ようになる.

AT ‑(

4.04‑4.00)‑2

. 5 3

×

‑2.30

×

A2㌧ (2.02‑2.00)‑6.31×

ー 1 6 6 ‑

4 8 6 . 4 6 ‑ 4 8 4 , 7 4

(11)

表2 生産価格の労働価値 か らの希離

C+Ⅴ+M C Ⅴ+M Ⅴ M

社会的総計 1840.00 520.00 1320.00 844.80 475.20

Vl 8.00 4.00 4.00 2.56 1.44

V2 12.00 2.00 10.00 6.40 3.60 社会的総計 1840.00 524.66 1315.34 830.60 484.74

p . *

8.90 4.04 4.86 2.52 2.34

p , *

ll.28 2.02 9.26 6.29 2.97 社会的総計 1846.52 526.52 1320.00 833.54 486.46

p . * *

8.93 4.05 4.88 2.53 2.35 p2*" ll.32 2.03 9.30 6.31 2.98 社会的総計 1803.79 514.34 1289.45 814.25 475.20

p

l**

'

8.72 3.96 4.77 2.47 2.30

2

. 9 1

× 486.446‑475.2084.74

△‡ *

‑(2,53‑2

. 5 6 )

‑2.30×

A; * ‑(

6.31‑6.40)‑2.91×

E

・一 書 ' 言J

(11

芸 諾)

A;**‑2.30‑1.44 A;**‑2.91‑3.60

したがって,㊨ ,㊨ ,⑳ 式 と⑳,㊨ ,⑳ 式か らそれぞれ

AT +AT * +AT

**‑0.02

+

0.02

+

0.86‑0.90

A,〜+A2**+A2***‑ ‑0.01I0.02I0.69‑ ‑0.72 ⑳

‑167‑

(12)

168

が確認で き,⑳ 式 の関係が成 り立 ってい ることがわか る (ただ し,計算 は 小数点以下第3桁 を四捨五入).

Ⅳ.小 括

本稿の結論 は,すでに述べた ように,諸商品の生産価格の労働価値か らの 乗離が次の ような3種類の変化 によって生 じているとい うことである.

i) C部分 とⅤ+M部分の間の構成比の変化 ii) Ⅴ部分 とM部分の間の構成比の変化 iii)M部分の部門間配分比の変化

これ らの諸要因による生産価格の労働価値か らの乗雛 は,単 なる 「剰余価値 の再分配」 に とどまらない不等労働量交換 を引 き起 こす.i)やi)の変化 によって引 き起 こされる不等労働量交換 は,iii)の変化の場合の ようにエ ク スプリシッ トではないか も知れないが,労働者階級 は労働力の販売 と生活手 段の購買過程で,社会的総資本 は生産手段の購買 と生産物の販売過程で,そ れぞれ否応 な くこれを行 って各 自の再生産 を確保 している. したがって,刺 余価値の実体 と利潤の実体 は,社会的総計でみて もまった く同一の剰余労働 であるとはいえない し,社会的に集計 したC部分やⅤ部分の交換価値 の実体 をなす投下労働 も,労働価値でみた場合 と生産価格でみた場合 とで完全 に同

じであるとはいえない.

本稿の分析過程では,総価値 ‑総生産価格 と並 んで総価値生産物 ‑総収入 と総剰余価値 ‑総利潤の想定が,生産価格の労働価値か らの東経 を要因別 に 抽出するために一定の役割 を演 じて きた. しか し,総価値 ‑総生産価格の成 立 とは異なって,総価値生産物 ‑総収入 と総剰余価値 ‑総利潤 は最終的には 否定 されるべ き総計一致であ り,これ ら2命題の不成立 こそが生産価格体系 の もとで 「剰余価値の再分配」以外 の不等労働量交換の存在 を裏付 けるもの

として,見逃す ことので きない分析 的意義 をもつのである.

‑168‑

(13)

追記〕 脚注 (2)で掲 げた最近の拙稿2編 と同時期 に公表 された神 田敏英氏 の論 文 「価値の生産価格への転化 :マルクス転化論 の意義 と修正」 (岐阜大学地 域科学部研究報告』第4号,19993月)が,生産価格論 における総計一致 命題 と生産価格 の労働価値 か らの流離 にかん して,筆者 と基本 的 に同一一の主 張 を行 っている.価値論 ・価格諭 の方法的側 面にかん しては見解 の異 なる点 もあるが,拙稿 とともに比較 ・検討 されたい.

‑169‑

参照

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