2~3歳児の保育園生活の構成と社会的発達 : ethnographicalな分析
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(2) . 北海道教育大学紀要 (教育科学編) 第4 9巻 第1号. 0年8月 平成1. Journa lofHokka i i i i do Un I 1 v r t yofEducat e s on(Educa口on)VO -49 . ,No. Augus t ,1998. 2~3歳児の保育園生活の構成と社会的発達 - ethnographi cal. 臼井. 博o松本. な分析 - 聡美*. 北海道教育大学札幌校・教育心理学研究室 *北海道教育大学札幌校 ( 1998年卒業). 1. 問. 題. 最近, 日本の幼稚園や保育園の子どもたちの生活や保育者の行動 についてのすぐれたエスノ グラフィ が多 数報告されている (Ben-Ar i in et aL,1989; 結 城, 1998ほ か)‐ s ,1997;Lewi ,1995;Peak ,1991;Tob エスノ グラ フ ィ( ethnography)と は 「民族 誌」 と翻訳 さ れ てき たよう に も と も と は 民 族 学 者 や 人 類 学 者 た ち が彼 らの研 究 対象 の 民族 やそ の文 化 につ いて の フ ィ ー ル ドワ ーク に基 づ く 詳細 な 記 述 をさ していた (佐藤 , 1992) ‐ もう 少 し具 体 的 に言う と, 外 か ら距 離 を置 い て見 て いた の で はわ か り にく い 現 象 の 詳 細 (detan) に立ち 入 り, 行 為, 出来 事 の 意 味を 内部 にいる 者, ある い は行為 者 の 視点 か ら理 解 しよう とする ア プロ ーチ であり, この 目 的実 現 の ため に は参加 観 察法 (part ion) を 用 い る こ と が 多 い‐ こ の よ う i ipant observat c に して研 究 者 が 現象 が起 き て いる 現場 (フ ィ ー ル ド) に身 を置 い て, そ こ で 直接 体 験さ れ た生 の データや 一. 次資料を集めて, 生態学的妥当性の高い現象把握を目指すアプローチである (南, 1997 ) . これまの社会科 学の研究方法では, 客観主義や数量主義や操作主義の強い影響のもとにあったので, そこでは研究者が冷徹 な観察者としてできごとを客観的に記録したり, 測定することに焦点がおかれた. しかし, このようなせま い 実 証主 義 的な 考 え方 (pos i i i t v sm) に対す る 疑 問 が提起 さ れる よう にな っ て きた. た とえ ば, で き る だ け. 主観を入れないと言うのが研究を行うときの基本的な前提であったが, 次の例のように主観は個人の中の心 理的な経験というよりは, 親密な他者との間に共有されるものである. 乳児と母親の間の相互作用のプロセ ス を細 かく 見 て いく と, 乳児 は声 を 出 したり, 顔 を しか め たり, 体 をよ じっ たり して 自 己の 心理 ・ 生 理 的な. 状態を表出する‐ おそらく乳児の側では当初は相手に 「お腹がすいた」 とか 「暑苦しい」 というようなメ ッ セ ー ジを 伝え る こと を 意 図 して いる わ けで はな い は ずで ある‐ しか し 母親 はそ れと 状況 の 手 が かり か ら赤 ,. ちゃんの要求を読みとり, 適切な応答をする‐ その一方で乳児の方でもそれにこたえて行動の調整をして, 相互交渉が続くのである‐ このような発達初期の母子の相互交渉がスムーズに進行していくのは, お互い同 士の気持ちが通じ合うことであり, 換言すると両者の間に意図や意識, 感情などが共有されるようになる, i i つ ま り 間 主観 性 (共 同 主観)intersub t tyが存 在 す る か らで あ る. j ec v. こうして客観主義の万能論を脱して, 主観性の問題を心理学の問題として改めて積極的に位置づけるよう な考え方が徐々に受け入れられつつ あり, 実験室的な厳密な実験や多くのサンプルに基づく大量のデータで なければ科学的な研究とは言えないという ドグマから質的な方法を含めた多元的な研究方法を用いる方向へ と か わりつ つ あ る (Jessor 1996) ‐ さ らに, Jessorは研究 法 の この よ う な パ ラ ダイ ム の 変 換 と 呼 応 し て, , 他者 の視 点 か ら行動 の 意 味を 解釈 したり, 理 解す る こと, つ ま り エ スノ グラ フ ィ の ア プロ ーチ の 重 要性 を高 く 評価 し て いる. そ して, 変 数 中心主 義 か ら人 間 中心 主義 へ の転 換 を力 説 して いる. 筆 者なり にこ の こと を 49.
(3) . . 臼 井. 博・松. 本. 聡 美. 考えると, 心理学の研究と言いながらも, どちらかと言えば個人の心の中を見ているのではなく て, 研究者 の側で窓意的に決めた特定の変数としての個人のある側面しか見てこなかったのではないだろうか‐ これに 対して事例研究は, 対象となる個人の内面に迫ることができるが, 現実にはやはり研究者の側の関心に沿っ て特定の変数に偏った分析になりやすく, やはり 「人のいない」 研究に陥ることがあっ たと言う批判を免れ な い だろう‐. さて, 私たちは上記のような研究の視点から保育園の中で子どもたちがどのようにして彼らの生活を形づ く っ て いく の か, そ して仲 間や 保 育 者 たち との 関わり を どのよ う に築 い ていく の か につ い て考 え て みた い‐ つ ま り, 言語 による コ ミ ュ ニ ケー シ ョ ン能 力 の 著 しい発達 の 時期 の2, 3 歳の 幼 児 の保 育 園 に お ける 生 活適. 応のスキルや自己制御的な行動がどのようにしてあらわれ, そして仲間や保育者との関わりを通してどのよ i id に描 き 出す こ と を 目指 す. そ の 際 に, できう る 限り 子 ど も た ち と 保 う に して 発達 していく の か をより v v. 育者に近い視点で観察を行う. 具体的には昼寝, 模倣行動, 向社会的行動の3つのテーマに即 して子どもた ちの保育園生活の中の行動を選び出し, そこから子どもたちの保育園生活を構成していく姿を社会性の発達 の枠組みの中で考察する. 2 予備観察. 2 ー1. 目的. 保育園の生活サイクルを知り, 観察場面や観察するクラスをを決定するため, 保育園の1日の生活の流 れ を大ま か に観 察 す る. 保 育園 に は, 乳 児ク ラス と 幼 児ク ラス があ るの で, 2 日間に分けて観察を行うこ とと する. 2ー2. 手続き. ①観察場所 0名であり, 札幌市内にある私立のA保育園である‐ 乳児保育も行っていて, それを含める全体の定員は9 札幌市の中では標準的な規模である‐ ②観察日・時間 00~17 00であ っ た. 8月29日 は幼 児ク ラス, 9月 2 1997年 8月29日, 9月 2 日の 2 日間 で, 時間 は8: : 日 は乳 児ク ラス にお い て観 察 を行 な っ た. 2 ー3. A保 育 園 の 実 態 につ いて. ①年齢層・人数 年 齢 層 は, 0 ~6 歳 であ っ た. 保 育 園 に通 う 全 園児 数 は, 約90名 で あ っ た.. ②クラス構成 乳児ク ラ ス は, ひよ こ組 (0 歳児ク ラ ス) , うさ ぎ組 (1 歳児ク ラス) の2ク ラス で あ る. 幼 児 ク ラ ス は, 未満 児ク ラス と縦割り ク ラス に分 か れ ている. 未 満 児ク ラ ス と は2 歳児ク ラス の こと で, ばん び組 と 呼 ばれてい る‐ 縦割 りク ラ ス は, 3~ 6歳 の 子 どもの混 合ク ラス で, にん じん組, ピー マ ン組, トマ ト組 の 3ク ラ ス とな っ て いる. A 保育 園 のク ラス 構 成 ・ 年齢 ・ 人 数 をま と めた の が 表1 である.. 幼. 乳. ひよこ組. 0歳~1歳. 9人. うさぎ組. 1歳~2歳. 1 3人. 児. 児 50. ク ラ ス名. 表1. A保育園のクラス構成・年齢層・人数 ク ラス名 人 数 年齢層. 年齢層. ばんび組 (未満児クラス) 2歳~3歳 とまと びーまん (縦割りクラス) 3歳~6歳 に ん じん. 人 数 1 8人 0人 約5.
(4) . 2~3歳児の保育園生活の構成. ③. 保育園の1日の流れ 乳児ク ラス と幼 児ク ラス で は, 1 日 の 流 れ が多 少 違 っ てく る. 乳 児ク ラス の ほう が, 食 事や 昼 寝 の 時間. が 早い‐ 乳 児 ・ 幼 児両ク ラス の 1 日の 流 れ は以 下 のよ う にな っ て い る‐. 参乳児クラス (0~2歳) 8:ooa.m.~. 登園・自由遊び. 9:30a‐m.~10:oo a.m‐. おやつ・ 自由遊 び. 10:ooa‐m‐~11:oo a.m‐. 自由保育. 11:oo a‐m‐~. 昼食. 11 30a : .m.~. 昼 寝 準 備 ・ 昼寝 (起 きた 子 どもか ら自 由遊 び). 3: 0OP‐m‐~. お やつ ・ 自 由遊 び. 参 未 満 児ク ラス ・縦 割 りク ラス (2 ~ 6歳) 8:oo a.m.~. 登園・ 自 由遊 び. 9 :30a .m‐~. おや つ (未満 児ク ラス の み) ・ 自 由遊 び. 10:ooa.m.~11:30a‐m‐. 自由保育. 11:30a‐m‐~. 昼食. 30p‐m‐~ 12:. 昼寝 準備 ・昼 寝. 3 0op : .m.~. 起床 ・後 片 づ け (縦割 りク ラ ス の み) ・ お やつ ・ 自 由遊 び. ④予備観察から 予 備観 察 の 中で 特 に興 味深 か っ た の は, 縦割 りク ラス (3 ~ 6 歳 の混 合ク ラス) の 子 ど も た ち に 「自 , 分 の こと は 自分 でする」 と いう 行動 が 目立 っ て多 か っ た こ と であ る‐ ま た, 自分 の こ と ばか り でなく 他 ,. の子どもの布団をたたんだり, 未満児クラスの子どもの面倒を見たりなど, 自立行動を発展させた行動も 多く 見 られ た‐ 観 察 する 限り で は, 特 に保母 か ら命 令や 指 示 を受 けて して いる わ けで はな か っ た ま た , . 保母 に 聞 い て みた と ころ で は, 子 どもたち に 直接 的 に教 え たり, 厳 しく しつ けた こ と はあま り なく て, む しろ 子 どもたち がま わり の 子 どもの して いる こと を見 たり し てい わ ば 「自然 に身 につ けてい っ た」 もの で あ ると いう‐ 子 ども は自然 に 「や っ て みた い」 という 気 持 ち を持 っ もの で あり 保母 は子 どもの やる 気 を , 尊 重 し, 援 助 したり 励ま した り, という 関わ り を行 な っ て いる という こと であ っ た そ し て 自立 行動 を . , 身 につ ける た め に は, 子 どもの 「自分 でや っ て みた い」 という 意欲 が 最 も重要 であ る, と言 う こ この 保 . 母 たち の 考え は彼 女 たち の 日常 の 保 育 の 経 験 か ら生ま れた もの であ る だろう が, おそ らく はそ れ ばか り で. はなくて保育や発達の理論から得た信念が影響しているところもあるだろう. 実際に多くの研究から, 子 どもの自己制御的な行動の発達に対する他者との相互交渉や共同や参加の影響の重要性が指摘されている f (Rogof ) ,1990; 田 島, 1992;Lave & Wenger ‐ た とえ ば, 会話 の 成 立 にと っ て 相 手 が 話 ,1991/1993 して いる と き はそ れ を聞 き, 一 つ の 話題 につ い て 話 し終 わ っ た とき に今度 はこち らが 話 しを する と いう よ う な 話 者 の 「交 替」 ( ing) が欠 かせ な いが, この よう な ス キ ル は 有 意 味 語 を 話 す こ と が で き る turn‐ tak ず っ と以 前 か らでき る こ と がわ か っ て いる‐ 「い な い, いな い ば-」 の 遊 びを思 い 浮 かべ てみよう 赤ち ゃ .. んと母親とが交互に 「いない, いない」 と 「ば-」 を繰り返すのだが, そのときに赤ちゃんが注意を逸ら そ う とす る と 軽く 頬 を つ つ いたり, く す ぐ っ たり して 注意 を 向 ける よ う に したり, 「ば-」 の と こ ろ で 時 に は声 色 を変 え たり, 声 の調 子 を変 え たり す る. ま た, 赤 ち ゃ ん の 方 の 「いな い, い な い, ば-」 の動 作 51.
(5) . 臼. 井. 博・松 本 聡. 美. が不十分であっても, それに対して大げさに驚いてみせると言うようにして相手の方の反応を引き出そう とする‐ この よう に相 互 交 渉の ため のスキ ルが一 方 にお いて 未 発 達 で あ っ て も, も う 一 方 で 足 場 づ く り J S & Ros ) と い う よ う な 援 助 を す る こ と で, 「交 (scaffolding) (Wood, D‐ s ,1976 , , Bruner, . . , G‐. 替」 ということを学習する機会を得るのである. そ こで 本観 察 で は, 縦割 り (3 ~ 6 歳の 混合) ク ラス の前 段 階 であり, 「自分 でや っ て み た い」 と い う. 意欲が芽生える時期と言われている3歳未満児クラスの子 どもに観察対象をしぼり, この子どもたち がど のようにして保育園の生活を構成していくのかにつ いてより詳細な観察を行なうこととする. 本観察. 3. 3 ー1. 手続 き. ①観察場所 予備観察につ づいてA保育園で観察を行った. ②観察期間・場面 997年9月下旬から11月下旬であり, 朝子どもたちが全員そろう 9 :30か ら子 どもたち が 観察期間は, 1 6:0 0頃まで行った‐ 観察は基本的生活習慣の形成に関する昼食と昼寝の場面に焦 帰り出す1 v点を当てて行っ た. この ほか に, 上記 の観 察 期 間の 間 で 見 られる 自 由遊 びの 場面 につ い て も観 察 を行 っ た‐. ③観察対象 2 7ヵ月 0人) で, 平均月齢は3 A保育園の3歳未満児クラス (ばんび組) の幼児18人 (男児8人, 女児1 ‐ 観察開始時) であった‐ 年齢の範囲は, 2歳6か月から3歳5か月 であった (ただし, 1名障害児がおり, この 子 ども は4 歳4 か月 であ っ た が, 前 年 度 につ づ き ばん び組 に と どま っ て い る) ‐ ま た, ば ん び組 の 担 当 は, M 保 母, S保 母, E保 母 の 3人 で ある‐ な お, この 後 で 出てく る 子 どもの名 前はす べ て仮名で ある.. ④観察方法 観察者 (松本) は, A保育園の保母の補助者という形で子 どもたちとかかわり, 参加観察を行った. そ の 際 に, 観 察 者 が ばん び 組 の一 員 に 限り なく 近 い 存在 にな る よう につ とめ, で き る だ け子 どもたち と 一緒 に遊ん だり, 昼 寝 の と き は保 母 と 一緒 に子 どもの 背 中を ト ン ト ンと軽く 叩 い たり, 撫 でて あ げたり して, 子 どもたち に違和 感 や 緊 張 感 をあ たえな いよう 心 が けた. そ の な かで気 が つ い た ことや 興 味深 い エ ピソ ー. ドをその場で手帳にできるだけ忠実に筆記記録した‐ 子どもとの関わりなどで即座に記録できないときで も, できる だ け早く 記 録 する よう に した‐ ま た, メ モの 他 にいく つ か の場面 で はワイ ヤ レス マ イ ク でそ の 場 の状 況 を実況 という 形 で テー プ に吹き 込 み, 後 で書 き おこす と いう 方 法 を取 っ た. した が っ て, 以 下 で 分 析 の 対 象 に な る デー タ は こう して 作成さ れた フ ィ ー ル ドノ ー トで ある.. 3ー2. 分析 の枠 組 み につ いて. 上 記 のフ ィ ー ル ドノ ー トの 中の で き ごとの 単 位 (以 下, エ ピソー ドと 呼ぶ) を もと に見て いく と, いく つ かの 「テ ー マ」 が 浮か び上 が っ て きた. そ れ らは, 食事, けん か, 昼寝, 模 倣 行動, 思 いや り 行動 の 5 つ で あ っ た が, ここで は紙 幅 の 関係 か ら後 の3つ (昼 寝, 模倣行 動, 思 い やり 行動) につ い て 検 討 する.. この中で昼寝 は基本的生活習慣形成に関わるテーマ, 模倣行動, 思いやり行動は, 社会性に関連するテー 52.
(6) . 2~3歳児の保育園生活の構成. マ と言 え る‐ 昼 寝, 模 倣 行動, 思 いや り 行動 の順 に, そ れ ぞ れ テーマ1~テーマ皿 とする. それぞれのテー マ ごと の 代 表 的な エ ピソ ー ドをいく つ か取 り 上 げ, 考察 す る. この 場合 の エ ピソ ー ドの 選 択 の 基 準 と して 1997 )に倣 っ て, そ れ ぞれ の エ ピソ ー ドは偶 発 的な もの で はあ る が, そ れ で も エ ピ ソ ー ドの 基 は, 無 藤 (. 本的な構造は日常の場面で 「よくある」 と直観的に思えるものとした. 4. 結果と考察. 4 ー1. テ ー マ 1 : 昼寝. 昼寝は, 体を休めて疲れを取ることが主な目的である‐ 保育園では朝から夕方までの1日の大半を過ごす わ けであ る か ら, 休 息 が必 要 な場 合 が 多 い. 実 際 に, 2, 3 歳 児 のク ラス をの ぞい て みる と, 昼 食 を食 べな が ら ほとん ど眠 っ て いる 子 どももいる. しか し, 子 ども の体 力 が つ い てく る 4, 5 歳のク ラス の 子 どもたち. にとっては昼寝が苦痛になることがある‐ 保育園に通った経験を持つ大学生との偶発的な会話や彼らのレポー トな どに もいや な思 い 出と して 「昼 寝」 があ げられる こ と が多 い. こう 考 え る と, 昼寝 の 目 的 は体 を休 め, 睡 眠リ ズム を 確立 する こ と だ けであ ろう か と 言う 気 が してく る. た とえ ば, 京 都 の 一 つ の保 育 園 を ベー ス に した e lな 分 析 を行 っ たイ ス ラ エ ル人 の 人 類 学 者 の Ben‐Ar i( 1997 ) は, キ ブ r ッ と 日 本 の 保 thnographi ca. 育園は基本的には共通の機能と形態をもちながらも, 昼寝の場面につ いてはまったく対照的であると述べて いる. キ ブー ッ の昼寝 は, そ の 時 間 になる と 保 母 が 子 どもたち の と ころ にや っ て きて お話 を したり, 絵 本 を. 読んであげる. それが終わると, 部屋を暗くして保母は子どもたちだけを残して部屋を出ていく. これに対 して, 日本の場合には先にも述べたように数名の保母が子どもたちの寝ている部屋に残り, 眠られない子ど もの 隣 に 行 っ て 話 しを したり, 添 い 寝 を したり す る. そ して, 形 態 をと っ て もキ ブー ッ で は一 人 一人 の 子 ど もが ペ ッ トに寝 て いる の に 対 して は, 日本 の 場合 は広 い ホ ー ルに び っ しり と布 団 を敷 き 詰 め て 「雑 魚 寝」 と い う ス タイ ルが多 い. Ben-Ar iは保 育者 が子 どもの 手 を 軽く 握 っ て あ げた り, 体 を さ す っ た り す る な どの. 身体接触を多くするだけでなく, 子ども同士でもそういう行動が多く見られると報告している‐ つ まり, 「眠る」 と いう こと はイ ス ラ エ ルのキ ブー ッ で は完 全 に個 人 の 行為 で ある が, 日本 の 保 育 園 で は 子 ど も た ち と教 師との 共同 行 為で あ る‐ そ して, こう した習 慣 が 日本人 の パ ー ソ ナ ル・ ス ペ ース や 集 団指 向性 の基 礎 に な っ て いる こと を 示 唆 して いる. この よ う な 理 由で, 昼寝 場面 にお ける 保 母 と 子 どもと の 関わ り を見 て いく こ と に した . 4 -1 ーー. エ ピソ ー ド1 -① : 「ホ ー ル で は遊 べ な いん だよ」 ( 10月31日). 昼寝の時間‐ マユミが布団から出て遊んでいる. E保母が何度か注意するが, マユミはなかなか布団に入 ろ う と しな い‐ とう と う, マ ユミ はE 保母 に お説 教さ れる.. 保. 母 「マユ ミ が遊 ん でい る と みん な 遊 びた く なる ん だよ. 遊 ぶん な らお部 屋で1人で遊びなさい . そ の か わ り お部 屋 に は誰 もいな いん だ よ. そ れで もいい の か い ? どう する の? ホ ー ル で 遊ぶ の ?」. マ ユ ミ (う な ずく) 保. 母 「ホ ー ルで遊 べな いん です. みん な 寝 て るん だか ら‐ 頑 張 っ て寝 てる ん だか らホ ー ルで 遊ん だ ら迷 惑な ん で す. みん な こう や っ て 頑 張 っ て寝 よ う と してる ん だか ら静 か に して て マ ユ . ミ が遊 びた い か ら っ て 遊ん だ ら, 他 の 人 だ っ て 遊 びたく なる ん だ よ マ ユ ミ寝 る の?寝 な い . の ?」 5 3.
(7) . 臼 井. 博・松. 本. 聡. 美. マ ユ ミ (う な ずく) 保. 母 「で もお部屋 行く のイ ヤな ん で し ょ う ? どう する の ? ホ ー ル で な ん か遊 べな いよ‐ みん な寝 てる ん だか ら. みん な 眠いん だ もん‐ マユ ミ 眠たく な い か ら っ て 迷惑 か けな いで. 静 か に し てく れる か い?」. マユミ (うなずく) 保. 母 「ち ゃ ん と布 団 入 っ て て ね‐ 眠 たく な っ た ら寝 な さ い」 この 後, マ ユ ミ は布 団 に入り, お とな しく 横 にな っ て い た.. この エ ピソ ー ドで着 目す べ き 点 は, マユ ミ に対 する 保母 の声 か けであ る. 保母 はホ ー ルで遊 びた がる マ ユ ミ に対 して, 「みん な 寝 てる ん だか ら, ホ ー ルで遊 ん だ ら迷 惑な ん だよ」 , 「マユ ミ が遊 ん だ ら, み ん な も 遊 びたく なる ん だよ」 な どと い っ た 言葉 をか けて い る. こ れ らの 言 葉 は, ま わり の状況 を 見 て, いま 何の 時間 な の か を考 え て 行動 する こ とや, 自分 勝 手な 行動 を つ つ しむ こと を要 求 する もの であ る‐ この エ ピソ ー ド以. 外にも, 保母が眠れない子 どもに対して, 協調性やけじめを強調するような声かけをしている場面が多く見 られた‐. 例) 寝ない子どもへの保母の対応の仕方. 例①. 昼寝 の とき, リナ が ホー ルを走 り 回 っ て いる. S 保母 はリナ に, 「リ ナ ち ゃ ん, み ん な 寝 て 10/21 ) るん だ よ」 と 注意 す る ( .. 例②. ミチ ョが ドタ ドタ して い る. E保 母 が 「ミ ッ チ が バ タ バ タ した らみん な 寝 れな いん だよ‐ い ま は遊 ぶ 時間 じ ゃ な いん だよ」 と 注意 する‐ そ して ミチ ョを だ っ こ して布 団 に寝 かせ, ト ント 11/4) ン してあ げる ( ‐. 例③. シン ジがホ ー ルに ブロ ッ ク の お もち ゃ を持 っ てく る. そ して 保母 に, 「寝る時間 だよ‐ フ ロ ッ 10/31 ) ク しま っ て き て」 と 注 意さ れ, お部 屋 に戻 しにいく ( ‐. こ れ らの 保母 の声 か けを見て いく と, 「いま は寝る 時間 であ っ て遊 ぶ 時間 で はな い」 と いう こ と, 「ま わり が どう いう 状況 で あ る か」 と いう こと を こ とさ ら強調 して いる‐ この こ とか ら, 昼寝 の 役割 は体 を休 め る こ と だ けでなく, セ ル フ ・コ ン トロ ー ル能力 や協 調 性 を 培う 場 と して も機能 してい る こ と がう か がえる‐ 保 育. 園生活の基本は 「遊ぶこと」 であり, 園生活のほとんどは遊びから構成さ れている‐ しかし, 昼寝の時間だ けは別である. 唯一, 昼寝の時間だけは遊ぶことを禁止されるのである‐ なぜなら子どもは体を休めること が必 要で あり, 眠 れな い子 どもが遊 ん で いて は疲 れて い る 子 ども はゆ っ く り 休 めな い か らであ る‐ ばん び組 と 縦割 りク ラス の子 ども はホ ー ルで 一緒 に寝 る こと にな っ て い るの で, な おさ らで ある. 眠 れな い子 ども も 疲 れ てい る 子 どもも布 団 に入 っ て 静か に して いる こと を 要求さ れる. こうなると, 眠れない子 どもはセルフ・ コ ントロ ー ルを しな けれ ばな らなく なる. 自然 な 流 れと して, 保母 は け じめ や協調 性 を 子 どもに求 める こ と にな る の で ある‐ ま た これ らの声 か けの もう ひとつ の特 徴 と して は, 単 に 「寝 な さ い」 , 「寝 なく ち ゃ だめ」 という 声 か けと は違 っ て, そ の 場の 状況 の み を伝え る声 か けが多 い こ と があ げられる‐ つ ま り, 「そ の 後 どう しな け れ ば な. らないか」 という判断を子どもに任せていることになる. このことは, まわりの状況を自分で判断 して行動 す る こ とを 要求 して いる よう に思 える‐ もち ろ ん, 直 接 的 に 「だめ だよ」 や, 「寝 なさ い」 と い う 注 意 の 仕. 方も見られた. しかしその場合でも, ただ 「だめ」 というのではなく, 自分がされたらどう思うか, どうし 54.
(8) . 2~3歳児の保育園生活の構成. て だめな の か と いう 理 由 をきち ん と説 明 して いる こと が多 か っ た. 普段 か らそ のよう に接 してい れ ば, 子 ど もたち は 「どう し て 怒 られる のか」 という こと を 自 分 で判 断で きる よう にな る であ ろ う. 自分 で判 断でき る. ようになれば, 今の状況を伝えてあげるだけで自主的に適切な行動を取るようになると思われる‐ 「いまは ~の時間だよ」 という注意の仕方は, 状況判断の能力やまわりへの思いやりの気持ちを育てる声かけと言え る で あ ろう‐ そ れで は, どう して も寝 よ う と しな い 子 どもに は どのよ う に接す る の であ ろ う か. な か に は, きち ん と し た 睡眠リ ズム が 身 につ い て いな い 子 ども, 昼 寝 の 時 間 にな っ て も遊 びの 気 持ち が抜 けな い子 ども もい て, 保 母 が 注意 して もな か な か聞 か な い こ と が ある‐ この よう な ケ ース は, 以 下 の エ ピソ ー ド1 -② である‐. 4ー1ー2. エ ピ ソ ー ド1 -② : 「寝 な いな らお部屋 行き なさ い」 ( 10月31日). 昼 寝 の 時 間‐ リナ がホ ー ルを走 り 回 っ て いる‐ ホ ー ル で は年長 組 の 子 どもたち が布 団 を敷 いて い る 最 中で ある. ばん び 組 の 子 どもたち は, 布 団 を敷 い て も ら っ た 子 か ら布 団 に入り始める. しか し, リ ナ, ミ チ ョ, マ ユ ミ はま だ走 り 回 っ て いて, Y 保 母 (A 保 育 園の 主 任 保母) に注意 さ れる‐ この 後, リ ナ は年長 組 の アイ コ ち ゃ ん に ト ント ン して も らう がな かな か寝 よう と せ ず, アイ コ に抱 き つ い たり ドタ ドタ 音 をた て たり して いる‐ とう とう リ ナ はE 保 母の 近く に移 動 さ せ られる. そ れで も. リナは落ち着きなく動き回り, 再三E保母に注意される‐ とうとうE保母は, 「寝ないならお部屋 行 き なさ い」 と怒 る‐ リ ナ は, 「イ ヤ だ」 と 言 う. 保 母 が 「寝 る の か い ?」 と聞くとりナはまた 「イ ヤ だ」 と 言 う‐ しば らく の 間, 何 を言 っ て も 「イ ヤ だ」 と いう やり と り が 続 く そ の 後 リ ナ は ‐ 1度 布 団 に入 っ た が, 首 を起 こ した り して 落ち 着く 様 子 がな い. E 保母 はリ ナ に, 「寝 な い な ら 外 に行 きなさ い‐ 遊ん で た ら迷 惑 で す」 と怒 る‐ リ ナ は 「イ ヤ だ」 と言 う‐ そ して, 保母 が何 か 言う. と 「イヤだ」 と言う状態が続く. とうとうE保母は, リナを本当にばんび組の部屋に連れていく. 2 ~ 3分 後, E 保母 はリ ナ を だ っ こ し て ホ ー ル に戻 っ てく る‐ リナ は お とな しく 布団 に入り, ト ン ト ン して も ら っ て いる‐ こ のエ ピソ ー ドに登 場 する リ ナ は, 非常 に気 が 強く き かな い性 格 で, こ の 日 に 限 らず昼 寝 の 時 間 に遊ん で い て よく 怒 られる 子 ども であ る‐ 昼 寝 の 時間な の に観 察 者 に だ っ こ を求 め たり 年長 の 子 どもたち が 布 団 を ,. 敷くのを邪魔したりして, なかなかおとなしく 眠れない傾向がある‐ 当然, 保母はリナに再三注意を与える の だが, そ れで も寝 よう という 気 持 ち にな らな い こと があ る‐ この よう に どう し て も眠る 気 持ち にな れ ない 子 ども に対 して, 保母 は 「お部 屋 に戻 り な さ い」 と いう 声 か けを行 なう こと があ る つ ま り 昼寝 の 場か ら ‐ , 隔 離 する の で あ る. この よう な声 か け はエ ピソ ー ド1 - ① にお いて も 「遊 びた いん な らお部 屋 行 っ て遊 びな さ い‐ そ のか わり お部 屋 に は誰 もい な いん だよ」 と いう 形 で 行な わ れて いる ‐ 例) テ ッ ペイ が, どた ばた 音 を た て たり, お しゃ べ り したり して, 何度 も E保 母 に注意さ れて いる . E 保 母 : 「寝 てる 人 が い るん だよ. 寝 な いん だ っ た らお部 屋 戻 っ て 迷惑 だか ら」 と ‐. 1 0/22 ) ブッ ペイ : 「イ ヤ だ, 寝 る !」(と叫ぶが, その後はおとなしく布団に入る) ( . と ころ で, 「お部 屋 に戻 り なさ い」 と いう 声 か け は, 何 度 注 意 して もき かな い とき の 最 後 の 手 段 の よ う に 思 える‐ と いう の は, この こと ばか けが上 の例 の よ う にかなり 有効であるか らである‐ 上述の エ ピソー ド1- 55.
(9) . 臼 井. 博・松. 本 聡. 美. ② の り ナ でさ え, 実 際 に彼 女 のク ラ ス の お部 屋 に連 れ て い か れ た後 はお とな しく 布 団 に入 っ ている. のちに, お部 屋 でリナ と どん な会 話 を した の かE 保母 に尋ね た と ころ, ホ ー ル に戻 っ て寝 る か, お 部 屋 で 1人 で遊 ぶ か を本 人 に選択 さ せ て い た という. そ して, リ ナ 自 身 がホ ー ルに戻 る こ と を選 択 した と いう こ と であ っ た.. あれだけ寝ることを嫌がっていたりナが, 「遊ぶ」 という選択肢が用意されていたにもか かわらずおとな し く 寝る ほう を選 ん だ の であ る. テ ッ ペイ や マユ ミ の 例 に して も, 遊 ぼう と思 え ば遊 べた に もか かわ らず, お とな しく 寝る ほう を選 択 して いる‐ な ぜ で あ ろう か. こ れ は, 一種 の 分 離 不 安 であり, みん な が一 緒 にいる. 空間から自分だけが離されると感じたときの不安である‐ 昼寝の時間は, ばんび組と年長組の子どもがホー ルで 一 緒 に寝 る. 「お部 屋 で遊 ぶ」 と いう こと は, そ の集 団 か ら自分 だ けが引 き 離さ れ る こ と に な る の で あ. る. たとえ遊びたい気持ちが残っていたとしても, 自分1人だけが違う空間に残されると強い不安感を覚え る の で はな い だ ろ う か. そ れゆ え, マユ ミや テ ッ ペイ はみん な の いる ホ ー ルに残 る こ と を選 択 した と考え ら れる‐ リ ナ に して も, 本 当 に部 屋 に連 れ て いか れ, 自分 だ けが違う 空 間 にいる こと を実 感 する こと によ っ て. 部屋に戻ることを選択したのではないだろうか. このように所属集団からの分離による不安感は, 「遊びた い」 と いう 気 持ち よ り も強い もの になり 得る の であ る‐ しか し別 の 見方 を す れ ば, そ れ はク ラス への所 属 感 や 連帯 感 のあ らわ れ で もあ る. 「みん な と一 緒 に いた い」 と いう 気 持ち の あ らわ れ であ り, 他 の 子 ど も た ち の 存 在 を 認知 して いる か らこそ, この よ う な こと が お こる の で はな い だろう か. お 互 いの 存 在 を認 め 合う こ. とが社会性を身につ けるための基盤になる. 2~3歳という年齢は, まわりの子どもたちとの連帯感が芽生 えはじめ, さまざまな社会性の基盤がつくられる時期 だと言えるようである. 4ー2. テー マ 韮 : 模 倣 行動. 模倣行動も観察中にいろいろな場面で数多く見 られた. 子ども同士の模倣行動は, 1歳前後から見られる といわれているが, 実際に予備観察で乳児クラスを観察 したときに, 1人の子どもがすべり台ですべり始め る と 他の 子 どももす べ り 台 に集ま り, 次々 に滑 り 始 め るな どの 模 倣行動 がい たる と ころ で認 め られた‐ この. ような子どもの相互模倣は, 誰かが何かを始めると伝染するように同じようなことを始め, ある種の遊びの よう で あ っ た. この 行動 の 伝染 も子 どもたち が かわ り 番 に 同 じ行動 を 再 現 して い る の で はなく て, そ れ ぞれ の子 どもが で きる レ ベ ルで参 加 して い るの で あ る. 年 少 の子 どもの場 合 に は, 模 倣 の 能力にも限界 がある し, 自分 の行動 が他 の 子 どもの して いる こと と どれく らい似 てい る のかをモニターすることにも大きな制約 をもっ. ているので, 時折年長の子どもから手本を示してもらったり, 修正されたり, ときによってはみんなと同じ こ と を して いな い と言 う こと でそ の場 か ら排 除さ れたり する か も しれな い. こう して, 一人 で は興 味 を持 た な いよ う な 活動 に対 して もそ の 子 どものス キ ルの レ ベ ルで 参 加 する こ と は, そ れ ぞれ の子 どもの 発 達 の最 近 接 領域 に直 接 的 に働 き か ける こと にな っ て い る.. 4 ー 2 ー1. 11月20日) 1- ① : 布 団 運 び ( エ ピソ ー ド1. 昼寝が終わり, 年長の子 どもたちが布 団をたたんでいる. それを見 てい たユウキが, 自 分の 布 団 を2 つ折りに し, 布団 置 場まで運んで行く. Y 保 母は, 「す ごいねぇ. 自分でできるんだね」 とユウキをほめ る. すると, テッペイ も自分で布 団をたたみ, 布 団 置場まで運んで行く. Y保 母 は, テッペイ をほめる‐ それを見ていたリュウタが, 「ぼくもできる」 といって布 団 を2つ折りに し, 運 ぼうとする‐ しかし, なか なか布 団を持 ち上 げることができない. Y 保 母は, 「リュウちゃん, 頑張れ」 と盛んに声 をかける‐ しば らく苦 戦 していたリュウタだったが, しっかりと布 団を持ち上 げ, 布 団置場まで運 んで行く. そして, ユ ウコも自分の布 団 を運ぶ‐ ユウコは, 自分の布 団 だけでなく, 他の子の布 団もたたんで運 んでいる. 56.
(10) . 2~3歳児の保育園生活の構成. この エ ピソ ー ドは, 昼寝 の あ との 出来 事 で あ る. 昼寝 の あ と 年長 の 子 どもたち は 自分 の 布団 と ばん び組 , の 子 どもたち の 布 団 を片 づ ける こと にな っ て いる. ばん び組 の 子 どもたち は毎 日の よう に年 長 組の 「布 団運 び」 を見 て いる‐ この エ ピソ ー ドは, 年長 の 子 どもたち をモ デルと した 模倣 行動 によ っ て起 こ っ た 出来 事 だ. と考えられる. 実際, この他にもばんび組の子どもが自分で布団を運ぶ場面が何度か認められた ‐ この エ ピソ ー ドの大 きな 特 徴 は, 「模 倣 の連 鎖」 が生 じて いる こと であ る 年 長 の子 ど も か ら ユ ウ キ ヘ . , ユウ キ か らテ ッ ペイ, リ ュ ウ タ, ユ ウ コ ヘ と 引 き 継 が れて いる 年長 の子 ども→ ばん び組 (子 ども1→ 子 ど . も2 → 子 ども3 → 子 ども4 ・ ・ ・) と いう 連 鎖 に なる そ して この 連鎖 の 促進剤 とな っ て いる の が保母 の ‐ , 声 か けであ る. 保 母 は, 自発 的 に行 動 を起 こ した子 ども を ほめる こと によ っ て 「自分 で や っ て み よ う」 と , いう 意 欲 を 促進 してい る‐ そ し てそ の働 きか けは 1人 の 子 どもだ けでなく ま わ り の子 どもたち に も影響 , ,. を与えており, その結果模倣行動が連鎖的に起きたのではないだろうか ‐ もう ひと つ の大 きな 特 徴 は, ユ ウ コ の 取 っ た行 動 である 他 の 子 どもたち は自分 の 布団 を運 ぶの み で あ っ . たが, ユ ウ コ は 自分 の 布 団の みな らず, 他 の 子 どもの 布 団 もたた んで 運ん で いた つ ま り 目の 前の 出来 事 ‐ , を応 用 さ せ た 行動 を 取 っ て いる こと になる ユウ コ は 普 段 か ら保 母 の手 伝い をよく して いる し 次の例 に . , , 示 すよ う に彼 女 自身 がそ のよう な お 手伝 い を し ている 場面 が ひん ぱん に見 られた ‐. 例) おやつの場面での模倣行動:延滞模倣 例①. 朝 の おや つ の 時間‐ 切 っ た りん ごが 入 っ た 大 皿 が棚 に置 い てある ユ ウ コ が椅 子 を 持 っ て き ‐ て, り ん ごを 小 皿 に 1~2 個 ず つ に取 り 分 けて いる ( 9/30 ) .. 例②. 朝 の おや つ の 時間. ユウ コ が 手ふ き用 の タオ ル を持 っ てい っ て 水 道 で洗 い しぼ っ て いる , ‐ しか し いまり 方 が弱く, テ ー ブル に持 っ て い こう と する と き に床 が び し ょ び しょ にな る 保 母 ‐ は, 「あ ら, 洗 っ てく れ たの? あり がとう ね」 と 言 っ てユウ コ か らタオ ル を も ら い し ぼ り 直 ,. す( 1 0/2 ) ‐ これ らの 「お 手 伝 い」 と いう 行動 も, もと は保 母や 年長 の 子 ども ある い は父母 を モ デルと した 模 倣行動 , の ひと つ だ (延 滞 模倣) と思 わ れる ユウ コ は 人 一 倍 保母 のま ね ごと をする のが 好 きな 子 ども で 保 母 た . , , ち の 間 で も 「小 さ な 保母 さ ん」 と 言 わ れ ている した が っ て 自分以 外 の子 どもの 布 団 も運 ん だあ げた と い . , う 先 の エ ピソ ー ドに関 して も, 他 の 子 ども が布 団 を運 ん でいる こと を 直接 的 に模 倣 を したものというよりは , 他 の 子 どもたち の この よう な 行動 が刺 激 とな っ て 彼女 の レパ ー トリ ー と して 既 にある 保 母 の行動 を再現 さ せ た の か も しれな い‐. 4ー2-2. エ ピソ ー ドロ ー② : 「首 苦 しく な い?」 ( 11月13日). 公 園遊 びの 前. 外 はか な り 寒 い の で, 子 どもたち は ジャ ン パ ー を着 て 公 園 に行く用意をしている . アキ が観 察 者 (松 本) の と ころ にや っ て き て 「ジ ャ ン パ ー の ボ タ ン して」 と 言 う 観 察 者 は ア キ , ‐ の ジ ャ ン パ ー の ボタ ンをとめ てあ げる 1番 上 の ボ タ ンを する とき 首の と ころ がき つ そう だ たの . っ で, 「首, 苦 しく な い ?」 と 聞きな が ら ボ タ ンを とめ てあ げる そ の 後 カ ョが 「ボ タ ン し て」 と ‐ , と の アキ ころ にや っ てく る. ア キ は, カ ョの ジャ ン パ ーの ボタ ンをと め て あ げる そ し てi 番上 の ‐ ボタ ンを と め る とき に, アキ はカ ョに 向 か っ て 「首苦 しく な い?」 と聞 く ‐. 57.
(11) . 臼 井. 博・松. 本 聡. 美. この エ ピソ ー ドに は, 観 察者 が 直接 関わ っ て い る. ア キ に頼 ま れ, 観 察者 が ア キ の ジ ャ ン パ ー の ボタ ンを してあ げる が, 1番上 の ボタ ンを しめる と首 の と ころ が きつ そう だ っ た の で, 確認 の意 味で 「首, 苦 しく な い ?」 聞 い た の であ っ た. この 後 に, ア キ がカ ョ の ボタ ンを してあ げる こと にな る の であ る が, この と き ア. キは, 観察者とま ったく同じ声かけをカョに対して行なっている‐ つまり, アキは観察者の行動の延滞模倣 を行なっているのである. このように, ある出来事を経験したり見たりすると, 自分が同じような状況に立 たされたときに, その場面を再現することができるのだが, その際にも単に自分が経験した行動を再現する のではなく, 子どもなりに状況に適した行動を選択している点が注目すべきところである. 例) 模倣により習得した行動の適用 3 時の おや つ で, 個 装 して ある ス テ ィ ッ ク チ ー ズが 出る. 印のつ い た と ころ か ら紙 をむ いて い け ば開 け られる もの で ある が, 開 け方 がわか らな い 子 どもが多 い‐ ヒロ ヤ はM 保母 に, 「開 け て」 と 頼 む‐ M 保 母 は 「こう や っ て 開 ける ん だよ」 と言 いな が ら, 開 け方 を ヒロ ヤ に教 え る. する と, ヒ ロ ヤ は1人 で 開 けられる よう にな る. そ して, 今 度 はヒロヤ がユウ キ や テ ッ ペイ のチ ー ズを 開 けて 10/17 ) あ げてい る ( . 例 のな かで は, チ ー ズの 開 け方 を習 っ た ヒロヤ が, 開 け られな い子 のチ ー ズを 開 けてあ げて いる. つ ま り 保母 か ら学ん で体 得 した こと を, チ ー ズを 開 け られな い子 に対 して 再現 して い るの で ある. ア キや ヒロ ヤ の. 行動は, 援助してもらった経験を援助する立場に立ったときに模倣という形で再現したものだと考えられる. 援助された経験を模倣することは, 他者に対する思いやりや共感を育てる上での基盤となるのではないだろ う か‐ この 場合 に は, 早く チ ー ズが食 べた い と言う 気 持ち が 強 か っ た ので, チ ー ズの 包装 を はがす こ と が で きな い 子 どもの 気 持ち を理 解 する こ と は容 易 で あ っ た ろう. ユウ キ や テ ッ ペイ の包装 を はが して い るう ち に. チー ズを食べるための手段だった行動が半ば目的化しつつ ある感じもしたが, このような経験を共有化でき る よう な 状況 で思 い やり や共 感 性 が高 め られて いく の で はな い だろう か.. 4 ー3. テー マ m : 思 いや り行動. 観察中, 子どもたちの間で助けてあげたり, 慰めたり, といった向社会的行動が数多く見られた. ばんび 組の子ども同士の援助行動, 愛他行動はもちろんであるが, 自分たちよりも年下の子どもたち, すなわち乳 児ク ラス の 子 ども に対 する 思 いや り 行動 も多く 見 られた. 特 に弟 や妹 が乳 児ク ラス にいる子 どもにつ いては,. 自分の弟妹の面倒をよく見る傾向があった‐ 4- 3 ーー. 10月 3 日) エ ピソ ー ドm -① : 「ぶ どう 取 っ て あ げる」 (. 食事 の 時 間‐ こ の 日の主 食 は レー ズ ンパ ン. リ ナ は レー ズ ンが 嫌い で, しきりに 「ぶどう取 っ て」 と 観察者 に頼 み にく る. そ れをそ ばで聞 い て いた アキ が, 「ぶ どう 取 っ てあ げよう か?」 と言 っ て, リ ナ の パ ンの ぶ どう を取 っ てあ げる (取 っ た ぶ どう は, ア キ が食 べ て い た) ‐ リ ナ の 近く に い た シ ンイ チ ロ ウ は, 「ぶ どう つ い て な いよ」 と言 っ て, 自分 の パ ンの ぶ どう が つ い て い な い 部 分 を リ ナ にあ げる.. このでき ごとのちょうど1か月後に, 登場人物も役割 もま ったく同じでき ごとが再現されたのである. 58.
(12) . 2~3歳児の保育園生活の構成. 4 -3 ー 2‐ エ ピソ ー ドm - ①′ : 「ぶ どう 取 っ て あ げる」 ( 11月 4 日). 食 事の 時 間. 主 食 は レー ズ ンパ ン‐ ァキ がり ナ に, 「ぶ どう つ いて る よ」 と し き り に 話 し か け て いる. リ ナ は, 「取 っ て」 と アキ に頼む. アキ は, リ ナ の パ ンの 中 か らぶ どう を 探 し て 取 っ て あ げ る‐ そ して シンイ チ ロウ が 「ぶ どう つ い て な い か らね」 と 言 っ て, 自分 の パ ンのぶ どう が つ い て い な い 部 分 をリナ にあ げる. エ ピソ ー ド皿 - ① に つ いて は, 「リナ の パ ンか ら レー ズ ンを取 っ て あ げる」 と いう ア キ の 援 助行 動 と, 「自 分 の パ ンか ら レー ズ ンのつ い て いな い部 分 を リナ に分 けてあ げる」 と いう シ ンイ チ ロ ウ の 援助 行動 が見 られ る. シンイ チ ロ ウ の 行動 は, ア キ の 行動 か ら誘 発 さ れた もの である と 考 え られる. つ ま り, 「援 助 行 動 の 連 鎖」 が見 られ て い るの であ る‐ しか も単 にアキ の 行動 を モ デリ ン グ した の で はなく, アキ の 行動 か ら情 報 を 得 て 自分 な り にリナ にと っ て 何 が必 要 な ことな の か を正 しく 推 測 して, 自分 の 行動 を選 択 して いる. テ ー マ. ロでも 「模倣の連鎖」 が見られ, ユウコの行動については模倣によって習得した行動を現実場面で適用する 行動 につ いて 紹 介 した. 3 歳 の誕 生 を迎 え る ころ にな る と, この エ ピソ ー ドの よう な 日常 生 活 の 上 で 誰 もが. 共通に経験することについては他者の視点に立って, 相手の感情や要求を正しく推測したり, それに沿って 自分な り に行動 を調 整 す る こと が で きる の であ る. そ して この エ ピソ ー ドの大 きな 特 徴 は, 全く 同 じ登場 人物 でま っ たく と言 っ て い いく らい 同 じこと が1 ヵ 月 後 に再 び起 こ っ て いる こ と で ある. 特 に シンイ チ ロ ウ は, 全く 同 じ行 動 パ タ ー ンを して い る. た だ し最初 の エ ピソ ー ド (①) と 1か月 後 の エ ピソ ー ド (①′) に はわ ずか だ が違 い があ る こ と も事実 であ る つまり ‐ , 後 の エ ピソ ー ドで は, アキ は 「ぶ どう つ い て る よ」 と 何度 もリ ナ に話 しか け, む しろ ア キ の ほう か らぶ どう を取る こと を働 き か けて いる‐ こ れ は, アキ が ひと月 前 に経験 した こ と を知 識 と し て覚 え て いて 同 じよ う , な 状 況, つ ま り 「食 事 に レー ズ ンパ ンが 出た」 と いう 状 況 に 出会 っ た とき にそ の 知 識 を活 用 しよう と したの で はな い だろう か. そ し て, シ ンイ チ ロ ウ につ い て も同様 の こ と が言 え る で あ ろう‐ 4 - 3 -3. エ ピ ソ ー ド皿 - ② : 「帽 子 取 っ た!」( 11月13日). 保育園のすぐそばの公園での遊びの時間. 2卵性双生児の兄のナオヤが, ブランコの順番待ちを して い る. ブラ ンコ の 横 にあ る アス レチ ッ ク で は, そ の 双 生児 の妹 のナ オ コ が遊 ん で いる そ こ に ‐ ユ ウ キ がや っ てき て突 然 ナオ コ の か ぶ っ て い た毛 糸 の 帽子 を取 る ‐ そ れ を ブラ ンコ の と ころ か ら見 て い たナ オ ヤ は, 「帽子 取 っ た !」 と は っ き り み ん な に 聞 こ え る 声 で 言う‐ そ の 間 にナオ ヤ が 順番 を 待 っ て い た ブラ ンコ が 空 き 保 母 に 「ナオ ヤ い いよ」 と声 を , , か け られる が, ナ オ ヤ は じっ と ナオ コ たち の ほう を見 て いる そ れ か らま もなく して 帽子 はナオ . , コ の 手元 に戻 る‐ ナオ ヤ はそ れ を見届 けて か ら, ブラ ンコ に乗る . A 保 育 園 に は, き ょ う だい で通 園 してい る 子 どもが多 い. ばん び組 のな か に も 乳 児ク ラス に弟 や 妹 が い , る 子 (マ ユ ミ, ヒロ ヤ, アキ, ユ ウ キ) や, 縦割 りク ラス (年長ク ラ ス) に兄や 姉 が いる 子 (ユウキ カ ヨ , ペイ ズキ ) が いる. ナオ ヤ と ナオ コ は2 卵 性 の双 生児 で, 4月 か ら ばん び組 に入園 した兄 妹である プッ , カ ‐. ナオヤとナオコはけんかもよくするが, 結束は固いようである. 公園に遊びに行くときは, 2人1組で手を つ な い で 行く こと にな っ ている が, ナオ ヤ と ナ オ コ はい つ も ペ ア で ある. ま た, 他 の子 どもが ナ オ コ の物 を 取 ろう と したり する と, ナ オ ヤ が 「だめ !」 と言 う場 面 も見 られた. エ ピソ ー ドm -② はナオ ヤ とナオ コ の 59.
(13) . 臼. 井. 博・松. 本 聡. 美. 結 束 の 固さ が よく 表 れて いる 出来 事で あ る. ナオ ヤ は, 帽 子 をユ ウキ に取 られ たナオ コ の こと を気 に して, ブ ラ ンコ が空 い た に もか かわ らず ブラ ンコ に乗ろう と しな か っ た‐ そ して 帽 子 が 無事 にナオ コ の手 元 に戻 っ た こ と を確 認 し, よう やく ブラ ンコ に乗 っ たの で ある. ブ ラ ンコ は, 子 どもたち の 間 で人 気 の 高 い 遊 具 で あ り, とき に は順番 を め ぐ っ て トラ ブルが起 こる こ と もあ る‐ ナ オ ヤ は, ブラ ンコ が空 い た の に乗 ろう と しな か っ た ほ ど, 帽 子 が取 られたナ オ コ が気 が かり だ っ た こと がう か がえ る. よく 母親 の 報 告 か ら は, 家 に帰る と 始終 き ょ う だい 同 士 で けん か を して困 らせ る こ と が多 い よう で あ る‐ しか し, こ のエ ピソ ー ドの よう に家. 庭を離れた状況ではきょうだい同士で助けあうことをよく目にする. エ ピソ ー ド皿 - ③. 4ー3ー4. 11月11日) ア ヤコ ち や ん事件 (. 公園での遊びの時間. この日はばんび組の他に, うさぎ組 (1,2歳) の子どもたちも 一緒に公 園 に遊 びに来 て い た. ブラ ンコ の と ころ で, う さ ぎ組 の アヤ コ が 泣いて いる. そ れ を見 たカ ズキ, リ ュ ウタ, タエ コ がア ヤコ の 頭 を撫 で て あ げる‐ アヤ コ は ブラ ンコ の上 にお 気 に入り の お もち ゃ を おい て い て, そ れを 触 れ られる の が いや で 泣 いて い る ら しい. う さ ぎ組 の 保母 が, 「み ん な ブ ラ ン コ 乗り たく て 待 っ て いる か ら, お もち ゃ どけてあ げよ う」 と言 う が, ア ヤ コ はそ こ か ら離 れよう と しな い‐ そ こ に は, ばん び組の子 どもが何 人か ブラ ンコ に乗り たく て待 っ て いる が, 無 理や り 乗ろ う と したり, アヤ コ に文句 を言う 子 ども は誰 もいな か っ た. こ のエ ピソ ー ドで は, ばん び組の 3人 の子 どもたち が自 分より も年下 の アヤ コ の ルー ル違 反 の 行動 に対 し てき わ め て 寛 大 にふ るま っ て いる ばかり でなく, 彼 女 が泣 い て いる の を 「頭 を撫 でる」 と 言う 形 で 慰 め て い る‐ た だ, この エ ピソ ー ドが こう した 慰 め 行動 の 事例 以 外 に注 目に値 する の は, アヤ コ が ブラ ンコ のま わ り か ら離 れよう と しな い の に, ばん び組 の子 どもたち は彼 女 を 無理 に どかそう と しな い で, 待 っ てい た こと で あ る‐ ブ ラ ンコ は子 どもたち に と っ て も っ と も人 気 のあ る遊 具 の 一 つ で あり, 乗る 順 番 をめ ぐ っ て の トラ ブ ルが多 い が, そ れが起 こ らな か っ た の はアヤ コがう さ ぎ組 と いう 彼 らよ り も年 下 で あ っ た こと によ る と推測. される‐ というのは, これ以外の場面でも年下の子どもをかばったり, 慰める行動をよく見ることができた か らであ る. けん か や トラ ブル にな る の は, 子 どもな り に相 互 の対 等 性 の認 識 が前 提 とな っ てい る の で はな い だろう か‐ この こと は, 前 述 した この 組 の 一人 の 障害 児 のナ ナ に対 す る 次 の ような 子 どもたち の行動 か らも見る こ と. ができる. ナナ はばんび組の子 どもたちよりも1歳か, それより上だが全般的な発達の遅れが著しくて, ほ とんど有意味語を話すことができないし, 歩くときもよちよち歩きの状態である. また, 相手と目を合わせ ることができずに, 食事やおやつの時にいきなり隣の子 どもの食べ物に手をつ けるというような行動が目立 つ 子 ども である‐ この ナ ナ に対 して も年 下 の 子 どもに対 する と 同 じよう に実 に寛 大 にふ るま っ ている‐. 例①. 公 園遊 びの前. 子 ども たち は ジ ャ ン パ ー を着 て外 に 出る 準 備 を して いる. ユ ウ コ は, ナ ナ の 11/7 ) ジ ャ ン パ ー を取 っ て き て あ げる ( ‐. 例②. 朝 の おや つ の 時間. リ ナ が 保母 に だ っ こさ れ て い る ナ ナ の と ころ にや っ てく る‐ リ ナ は 「ナ ナ ち ゃ ん」 と言 っ て, ナナ の 顔 を撫 で て い る. ナ ナ はリナ の 髪 を引 っ ぱる‐ リナ は笑いな がら,. 11/4) 「い て て て」 と言う. 保母 は, ナ ナ の 手 を取 っ て リナ の頭 を撫 でさ せる ( . 例 ③ おや つ の 時間‐ ナ ナ が シンイ チ ロウの頭 の上にひじをのせる. シンイ チロウ は驚いて 「わ ぁ!」 と 叫ぶ‐ マ ユ ミ がそ れ を見 て, 「そう か. シン君 っ て言 っ てる ん だ」 と言う. 保母も 「シン君 っ 60.
(14) . 2~3歳児の保育園生活の構成. て言 っ てる ん だよ」 と言う 例④. 公 園 遊 び. リ ュ ウ タ が 木 の実 を拾 っ て いる. リ ュ ウ タ は木 の 実 の 一 つ を 「ナナ にあ げる」 と. ) 観察者に言う ( 1 1/7 ‐ 例⑤. お やつ の 時 間. ナ ナ が 牛乳 パ ッ ク と 煎 餅 の 入 っ た箱 を ひ っ く り 返 す‐ ナナ は落 と した 牛乳 の パ ッ ク をい じっ て いる. M 保 母 は, 「ナ ナち ゃ ん, 一 生懸 命 牛 乳あ げよ う と して い る ん だ‐ が ) ん ばれ っ て 言 っ て あ げて」 と子 どもたち に言う (11/7 ‐. この よ う に ばん び 組 の子 どもたち はいる い るな 形 でナ ナ の 援 助 を し て いる‐ 観 察期 間の約2か月 の間にも, ばん び組 の なか でナ ナ と 関わ り を 持つ 子 どもの 数 が増 して い る よう に 感 じた が, そ れ は例 ⑤ に示 す よう に保 母 が機 会 をと らえ て 子 どもたち にナ ナ に か か わ らせ よう と して いる こと の 影 響 とい え る だろう (この 場 面 に つ い て ナ ナ が5,6 歳 の子 ども で もむ ず か しい牛 乳 パ ッ ク をあ げる こと を本当 に して い た の か どう か を 後 で M 保母 に尋ね て み た. 実 際 に は観 察 者 の 見 た とお り ナナ はそ れ を い じっ て いた だ けだ っ た が, M 保 母 は 「-. 生懸命あげようとしている」 というように行動に意味を与え, 他の子どもたちとの共通点を強調して同じ仲 間 であ る ことと 援 助 が必 要 な こと を伝 えた か っ た と言う こと で あ っ た) . ま た 興 味深 い こと は, 例 ② と例 ⑧ の よう にナナ が人 の いや がる こ と を して も ばん び組の 子 どもたち はそ れ. に対して否定的な反応をしていないことである. 例③では第三者がナナの行動を正当化する肯定的な解釈を 出して, 保母もそれに同調している‐ さらに例②の 「被害者」 のリナは普段は自己主張の大変強い子どもで 他 の 子 どもか ら攻撃 を しか け られる と黙 っ て はすま な いタイ プであ る が, この 場合 はま っ たく そ う した素振 り す ら見 せな か っ た こ と であ る. こ れ は後 で保 母 が ナナ の 手 を 取 っ て頭 を撫 でさ せ る こと で, 彼 女 の 仕返 し の 気 持ち が鎮 ま っ た と 言う より も, ナナ につ い て の 「こ ころ の 理 論」 (theory of mind) を 既 に も っ て い る こ との あ らわ れ で はな い だろう か. つ ま り, ナナ はこと ば で 自分 の 気 持ち を 表す ことがうまく できない分, 体で 何 か を表 そう とす る とす る よ う にコ ミ ュ ニ ケー ショ ンのス タイ ル で は違 う が, 相 互 に好 意 を持 っ て いる と 認 識 して, 上 記 のよう な 行 動 が生 じたの で はな い だ ろう か‐ むろ ん, こう した 認 識 の 形成 に は保 育者の か かわ り 方 の 影響 が きわ め て 強 い こと はこ れま で 見 て き た と おり で ある‐. 61.
(15) . 臼. 井. 博・松. 本. 聡. 美. 文 献 ions in a Preschool ion and Emot ldcare: Cul ture, organizat ts in Japanese Chi Ben‐Ari , , E. 1997 Body Projec Curzon. i t i ve thods in conte ・L Jessor Porary perspec . ln Jessor, R. , Colby, A. & Shweder, R. A. , R. 1996 EthnograPhc me i i S i ty of d M i C l t t D t o c allnqui ry. The Uni vers h d e a n n n E h H o n e x a n t e e o me n : (Eds ) v p g nograp y an uman .. ,. Chicago Press . pp.3‐14 ion, Ca bridge Uni ic ipat ty Press, i t t ] m L versi tuated Learning: Legi l nate peripheral par Lave enger, B. 199I Si , J. & Wr. 佐伯. 畔 (訳). 3 199. 状況に埋め込まれた学習, 産業図書. ion, ions on Japanese Preschool and E1e l inds i H d ルー l エ l entary Educat t ect : Ref Lewis , C. C・1995 Educatng ears an ty Press idge Uni Cam versi Lbr .. 南. 博文 19 97 参加観察法とエスノメソ ドロ ジーの理論と技法. 中浸 潤・大野木裕明・南. 博文 (編著). 心理学マニュアル・観. 3 6 45 北大路書房, pp. … 隆 1997 協同するからだとことば-幼児の相互交渉の質的分析, 金子書房. 察法 無藤. Peak, L. 199I. i f ion f ty of t e rom ho北I e to preschoo1 1 Learning to go to schoo1 in Japan: The transi , Universi. Cal i fornia Press i ia1 context ty Press C i i d 1 1 t i hi i hi ki 1 entin Soc f Rogof . , oxford Univers , B.199O Apprentces p n t n ng: ogn ve eve op1. 2 ヴィ ゴッキー理論の展開 田島信元 199. 東洋・繁多進・田島信元 (編) 発達心理学ハンドブック. 137 114 福村出版, pp. ‐. ted 1989 Preschoolin Three Cul tures: Japan, China, and the Uni Tobin, J. J. , & Davidson, D‐ H. , Wru, D. Y. H. i States, Yal ty Press e Univers .. 2 フィールドワーク 佐藤郁哉 199. 新曜社. l fChi ld Psychloogy J bl li i i Wood, D. , 1976 The role oftutor ng n pro e・n so v ng, ourna o , G. , J. S. , & Ross , Bruner 100 and Psychiatry,17 , 89‐. 結城 恵 1998 幼稚園で子どもはどう育つか-集団教育のエスノ グラフィ. 62. 有信堂.
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