雑誌名 教職教育研究 : 教職教育研究センター紀要
号 25
ページ 109‑114
発行年 2020‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/10236/00029223
高等学校における道徳教育の改善に向けた取り組みについて
下 野 厚 子
はじめに
高等学校で HR 担任、教科指導、運動部顧問として生 徒に向き合う教諭の時代から、管理職として学校運営に 携わり勤務した学校のどこにおいても、道徳教育を教育 課題として取り組んだ。
新任として赴任した学校で不登校の男子生徒と拒食症 の女子生徒を担任したことで、カウンセリング研修会や ケーススタディの研究会に頻繁に出かけ、教育心理や臨 床心理についての本を読み、研修を積んだ。そして彼ら が元気に学校に通って欲しいという願いを持って関わる うちに、それは特別に指導やカウンセリングを必要とす る生徒にだけ当てはまるものではなく、全ての生徒に必 要であると考えるようになった。さらに、国際交流担当 としてオーストラリアの姉妹校への夏季語学研修を引率 した際の経験が自分の教育に対する認識を大きく変え た。場面緘黙の女子生徒がその語学研修に参加した。彼 女のホームステイ先のホストスチューデントが不登校 だったが、彼女がホームステイをしたことで二人で学校 に通いだし、その不登校の生徒が学校に行くようになっ た。ホストマザーは生徒を日本に帰したくないと言って 別れを惜しんだ。英語を話す不登校の生徒と言葉をほと んど発しない日本人生徒の不思議なコミュニケーション や生徒の変化を目の当たりにして、「心」とは何かにつ いて考えるようになり、「心の教育」に関心を持つ大き なきっかけとなった。
教科指導や生徒指導面においても同様に、知識や行動 の仕方を教えているだけでは、生徒の成長は期待できな いことに気が付いた。そして問題を抱えている生徒だけ でなく、学力や生活面で特に問題はないが進路実現やク ラスや部活動での人間関係や家族関係に悩む生徒たちと の関わり合いから、彼らの成長についても、心理学やカ ウンセリングだけで解決できない多くの事に直面した。
生徒たちがまわりと良い関係を築き、学ぼうとする意欲 や向上心を身につけるためには「心の教育」が大切であ るという考えに至った。「人間としての在り方生き方」
(高等学校学習指導要領)の教育が学校の教育全体で明 確に教員が意識して行われることで、生徒の心を育て、
善悪の判断力を高めるものや規範意識を向上させるもの につながるものにしていく必要があると強く感じ、「道
徳教育」に取り組み始めた。
管理職になってからは、学校の教育理念・教育目標を 道徳教育の視点から設定し、学校経営においての判断の 基準を生徒の成長と道徳性の涵養に置いて取り組んだ。
道徳教育を学校のすべての教育活動の基本に置くこと で、管理職として自分がぶれずに自信をもって学校組織 を動かしていくことができると確信していたからであ る。
勤務した県立高等学校での実践をもとに、高等学校に おける道徳教育の改善と「道徳」授業の必要性について 述べる。
高等学校での道徳教育の現状
高等学校では義務教育での「特別な教科 道徳」につ ながる時間や科目がない。道徳教育は教育活動全体で行 うことになってはいるが、それがカリキュラム上に設定 されたものではないために、指導内容や指導方法を教員 が検討する機会がなく、それを身に付けようとする動機 にまでいたらない。「キャリア教育」はどこの学校でも 行われているが、そのなかで考える「人間としての在り 方生き方」は、「進路指導」に重点がおかれ、人間とし ての在り方や自己の生き方に関する本質的な点につい て、生徒たちに問いかけ考えさせることができにくい。
「自主体験学習」「就業体験」「ボランティア活動」等に ついては、それにかかわる手続きの方法やテクニックの 習得、校外での体験活動にとどまり、本当に体験して自 分がどう変わったか、体験してみなければわからなかっ たことは何なのかについての振り返りや検証がおろそか になっている。生徒たちの発達や変化についての評価を する場がなくその教育効果についての検証ができない。
高等学校の現場では、教師はそれぞれの教科指導と校 務分掌で、教育課題に立ち向かい生徒の成長を願って一 所懸命生徒の指導に取り組んでいる。「教師の良心」と
「がんばっている教師」の人柄と力量に任されていると 言っても過言ではない。その教育の成果が、より大きく 実を結ぶためには、学習指導要領には述べられているこ とがきちんと実行できるようにすることが必要である。
しかしそこには道徳教育の目標は述べられてはいるが、
学校全体の教育活動の中で道徳教育を計画的に実施する
ための具体的な指導方法や指導内容は書かれてはいな い。また、高等学校の教員を対象とした研修のメニュー には道徳教育については設定されていない。目の前の生 徒たちに対して、教師は何とかよくなっていって欲しい と対応し、指導をしている。おのずと指導は生徒の生活 に密着した事柄について行われ、行動の指導になりがち である。教師自身の意識の改革も必要であることは間違 いないが、制度面での不備が高等学校での「道徳教育」
を大きく阻んでいる。
A高校(総合学科)B高校(普通科)C高校(普通科)
における「道徳」授業の試み
A 高 校 で は、担 任 と し て「ロ ン グ ホ ー ム ル ー ム
(LHR)」で、学校設定科目の「国際理解」の授業担当 者としてその授業のなかで、高等学校での道徳の授業を 試みた。LHR では、「命」「幸福」「自由」「死」「神」「人 生」をテーマに、ディスカッションし意見交換した後に 感想を書いて、またまとめたものを生徒たちに返してさ らにディスカッションすることを繰り返した。また、人 権 LHR で行われた人権課題「自由と権利」をさらに人 間愛に深める授業を試みた。「人に迷惑がかからなけれ ば自分の好きにしてよい」という考えが圧倒的に多い。
数人は「義務を果たす」ことの必要を発言したが、他と 良い関係を築きたいと考えているが、自分が傷つけられ たり相手を傷つけてしまうようなことは避けたいと考え ている生徒が多い。自由に対しては「自分が好きなよう に何かをするためには努力と勉強が必要だ」と考える生 徒が多かった。「勇気」「良心」という言葉は出てこな かった。生徒たちの考えや感覚には偏りがあるようだ。
信仰についてのディスカッションでは、「日本人は自由 でよかった」という意見が多いにもかかわらず、「信仰 がある人がうらやましい」といった感想を述べる生徒も かなりいた。「総合的な学習の時間」で高大連携事業の 一環として大学教員による特別授業を行ったが、「心理 学」の受講希望者が非常に多かった。そして心理テスト には異常なほど興味を示した。よく吟味した教育内容と 指導方法でバランスよく「道徳教育」を行う必要性を強 く感じた。
学校設定科目の「国際理解」の授業では、「国際性」
と「相互依存」のテーマの授業と関連させて、「自分と は」「自己理解」について考えさせた。今の生徒たちは 関係性ということについてはきわめて意識が低く、他と の関わりを考えさせようとしてもあまり深まらない印象 があった。しかしこちらが問うことを繰り返すと、それ なりに考え始め、反応する。生徒にじっくり考えさせる 時間をとることが本当に大切であると実感した。『高等 学校学習指導要領解説総則編』では、「高等学校におけ
る道徳教育は、人間としての在り方生き方に関する教育 の中で、小・中学校における『特別の教科である道徳』
の学習等を通じた道徳的諸価値の理解を基にしながら、
自分自身に固有の選択基準・判断基準を形成していく。
これらは様々な体験や思索の機会を通して自らの考えを 深めることにより形成されてくるものであり」とある
(28-29頁)。生徒に問いかけ考えさせることを日常的に 繰り返すと、クラスが落ち着いてくるように思われる。
他の生徒の意見を聞くことにより自分の思考回路がさら に深まる。考えざるを得ない状況で、考えたくなるよう な問いかけを生徒にする授業が、全ての高校生にできた らいいと心から思う。以下に生徒の書いた文章を抜粋す る。
・最近この授業を受けているからか自分の考えが変わっ てきたのが分かる。今回もこうして、いろんな人の意 見を理解しようとする自分がいた。こんなことを繰り 返しているうちに、視野がどんどん広がっている気が した。「国際理解」の授業は世界(外国)のことを学 ぶのかと思っていたけど、自分の国を含めた世界を理 解しようとすることで、予想とはまったく違ってい た。そのギャップが大きい分自分には大きなプラスと なって表れていることを今すごく感じている。人、人 生、存在について考えることは難しい。
・他の人の意見を読んで、自分が存在する理由について 自分の意見が少し変化した。私は自分という対象を、
世界にいる一般人と見ていたが、私自身に置き換えて 考えることができた。生きている今の価値について考 えさせられた。
・自分を原点に考えると、世界を見たときにとても小さ く感じ最小の単位のように見えるが、こう考えている 自分を見た場合、とても大きくそして最大の単位のよ うに思える。
LHR と「国際理解」」の授業の両方で、「自分とはな んだろう」ということについてディスカッションをし た。正解のない意見の出し合いに、生徒たちは非常に興 味を持って参加していた。正解のない問いに対して、答 えは出なくても、生徒も筆者も非常に充実した満足感を 味わった。
教頭として勤務したB高校では、文部科学省研究開発 学校の指定を受け⚓年間にわたって「道徳」の授業を実 践した。第⚑学年の学年主任から、管理職として相談を 受けたことがきっかけである。問題行動が頻発し対応し ていく中でどう指導していったらいいかが学年主任の悩 みだった。学年目標を「対話する学年」として掲げ、生 徒とじっくり向き合っていきたいと取り組む中で、その 思いがなかなか実践につながらないという悩みを持って
いた。学校全体としても、明るくすなおな生徒たちであ るが、自分の判断でその場に応じた適切な言動がとれな い、夢や希望、目標を持ちにくく進路や学習に対して意 欲や向上心が低い傾向があった。
初年度は職員研修を通じて、高等学校における道徳教 育と「道徳の時間」について学びながら、第⚑学年が各 クラスで道徳の授業を実践した。中学校の資料を用いる が、高校生への発問を十分吟味しながら行った。研究指 定の⚒年目は全教師が、⚑,⚒年生を対象に、そして、
⚓年目は全学年で道徳の授業を行った。第⚑学年の初年 度の実践を職員会議や職員研修で伝えるとともに、授業 前には指導案の検討会議を行った。学年以外の専門部の 教師は各学年に振り分け、ローテーションで授業を行う 工夫をした。授業の難しさや資料の理解不足など、いろ いろな課題はあったが、道徳教育を教師が理解し意識す るとともに「道徳」の授業を試みることで、進路意識の なかった生徒が前向きに考えるようになったり、表情が 明るくなったりと、少し変化が見られたことから、教師 の道徳に対する意識が変わってきた。担任が自分の学級 経営の在り方について考えるようになったり教科指導の 方法も見直すようなことがうかがえるようになった。生 徒の表情や態度のちょっとした変化やクラスの雰囲気が しっとりと変化したことを感じた担任の中には、常に自 分が「道徳」の授業をしたいと希望する者もでてきた。
「道徳」の授業が道徳教育の要であり、それが学級経営 に良い影響を及ぼしはじめたと考えられる。しかし道徳 の授業に対する苦手意識を持つ教師もいたことは事実で ある。以下は教師のアンケートからの抜粋である。
・これまでは教科の授業で、自分が期待する答えを言っ てくれそうな生徒を当てて、自分の思い通りにスムー ズな授業をしようとしていたが、最近はどのような答 えが返ってきても受け止められるようになった。生徒 に発問をして、生徒と一緒に考えられるようにもなっ た。
・生徒の多様な意見を受け止めきれず、切り返しの発問 をどうしたらよいかわからず苦労している。道徳の授 業を通じて、生徒に考えさせることがいかに難しいか 実感している。
・生徒指導上の問題があった生徒が、自分なりに考える ようになった。また、これまで殴り書きだった授業後 の振り返りシートが、しっかりした文字で書くように なり、内容も異なってきている。「自分を振り返るこ とができたか」の項目の点数が⚒から⚓に上がる生徒 が増えた。
・道徳の授業を楽しみにする生徒が出てきた。
道徳の授業を⚒年間受けた生徒へ聞き取り調査を実施
した。以下はその調査と毎回の授業後の振り返りシート からの抜粋である。
・中学校の時は結論がまとめられていた。高校では授業 中も発表するし、意見を書くことができるので、それ ぞれに結論がでる。自分の思ったことが必ずしもみん なが思っている事と同じだと限らないし、一つの事に 対するとらえ方がいろいろだと気付き相手の事を考え るようになった。いらいらするときでも「こんな話が あった」と思い出すことで、自制がきくようになった。
・これまではただ楽しければいいという思いで過ごして きた。楽しいと思うこともいいけれど、それだけでは ダメだと思うようになった。「~したい」「~なりた い」という思いを大事にして目標を叶えたいという思 いが強くなった。
・みんなの意見を聞いて意外と予想していたことと違っ ていたのでびっくりした。自分が考えつかないこと を,他人は考えつく。
・もっとみんなの意見を知りたかった。
・自分の意見をもっと言えたらと思った。
道徳との関連性は明確ではないが、高校⚒年生のイン ターンシップ後の感想文からは、自分の変化を自覚する とともに日常の生活における振り返りができているよう で、道徳の授業の効果であるように感じられる。
・一人でよく考えてから質問をするようになった。
・相手の目を見て挨拶が出来るようになった。
・今はまだ考えなくてもいいと思っていたが、将来のこ とを考えるようになり、最近就職した24歳の兄に話を 聞こうと思った。
・知らない人としっかり話が出来るようになった。
・時間を気にするようになった。
・インターンシップに行く前は、学校と同じ感じで一日 が流れていくと思っていたが、自分の行動がとても周 りに影響し、言葉にも責任があると気付いた。
校長として着任したC高校は、当時創立53年の伝統を 持つ平均的な普通科の学校であった。部活動と学習をバ ランスよく行い、生徒たちは学校生活を大いに楽しんで いる。生徒指導面で特に大きな問題はない。どちらかと いうとおとなしい生徒が多く、自主性や積極性、意欲を もっと持ってほしいと教員は思っている。それだけの力 はあると思われるが、自分に自信が持てないゆえに伸び 悩んでいる。自主的に学習に取り組む姿勢を強めよう と、土曜学習会や始業前の朝学習などいろいろ工夫を凝 らして取り組んでいる一方で、どちらかというと従来の 指導方法での授業が行われており、授業改善への取り組
みが少々遅れている。
校長講話に替えて⚑年生の各クラスで「道徳」の授業 を行った。第⚑学年では、生徒に自信をつけて向上心を 養わせたいと、卒業生を迎えて講演会を⚔回実施しなが ら、ボランティア活動や活動発表などに取り組んでい る。このような学年の姿勢をみて、先に述べたように、
じっくり考える時間をとる必要があると考えて、授業を することにした。⚗クラスそれぞれ別の資料(「カーテ ンの向こう」「足袋の季節」「ロレンゾの友達」「二通の 手紙」「原稿用紙」「⚑冊のノート」「いつわりのバイオ リン」)を用いて生徒と一緒に考えた。授業を見学した 担任や学年の教員が、生徒の別の面を発見したり、授業 方法を見直すきっかけなってもらえればという思いも あった。「道徳」の授業に対して担任教師は、「あのよう な難しい問いに、生徒がなぜ『楽しい』と言うのか不思 議だ。」「自分も真剣に考えた。」という感想が担任から あった。
以下は生徒の振り返りシートからの抜粋である。
「カーテンの向こう」
・考えさせられるお話だった。ヤコブの優しさや思いや りを感じるとともに、主人公の後悔を感じた。優しさ の嘘を守っていきたいと思った。
・自分もライバルが決勝戦に出ていると足をけがしない かなとか思ってしまう事もありますが、自分が伸びて くるとライバルに対してはあこがれを抱きます。この 気持ちは主人公と同じだと思います。人間は他人より も何か劣っている部分があると相手に対して、うらや ましいだけでなく、嫉妬に近い気持ちになってしまい ます。でも自分が相手と同じ場所にたつとその気持ち はなくなると、今日感じました。
・誰かがしてくれた優しさや善い行いなどは違う人に広 げていかないといけないと思った。
・ヤコブは嘘をついてまで他の患者に生きる希望を与え ていたとはすごいと思ったが、ヤコブ自身は生きる希 望を持っていなかった人じゃないかと思った。(「カー テンの向こう」)
・今日の授業は、心に響くことがありましたが、あまり 気付くことはできませんでした。
・いろいろな困難があっても小説の力で人を元気にさせ るのはすごいことだと思った。是非僕もそういう小説 を読んでみたいです。夢に向かってしっかり生きてい こうと思える授業で、僕も人を元気づけることができ るような人になりたい。
「原稿用紙」
・友達じゃなくても、知り合いじゃなくても、人と人は 支え合うことができるのがいいなと思った。
・今日の授業は最終的に何を伝えたいのかがいまいちわ かりませんでした。人にはそれぞれ考えていることが あって、それが自分のためなのか、他の誰かのためな のかを考えるのか、その辺が知りたいと思った。
・原稿用紙の種類にこだわっているという所が理解でき ませんでした。
・たった一つや一人でも、自分がずっと頑張ってきた意 味がちゃんとあったって思えることって素敵だなと 思った。人との繋がりがしっかりとあってすごい。恩 と恩の繋がりは人を強くする。自分も大切にしたい。
「足袋の季節」
・主人公と同じような経験をしたことがあります。私の おじいちゃんは中⚒の時に他界しました。亡くなる⚑
週間前に会って少しケンカをしてしまいました。それ が今でも心に残っている傷です。あの時に謝っていた ら良かったのにと思います。
・普段生活している中にもこういった状況はあり得る し、もしそうなった時にどうするだろうと考えられて おもしろかった。これだけ後悔していたのでこの人は 悪い人ではなかったと思う。
・罪悪感とどう向き合っていくかを考えさせられた。何 か悪いことをしてしまった事実は後からは取り消せな いけれど、その事実とどう向き合っていくかが大切な んだと思った。人から受けた優しさや人から感じた良 心は受け止めるだけでなく、今度は自分が誰かに受け 渡していく事が大切だと思った。
・高校に入って初めて道徳の勉強をして、やっぱりたま にはこういう授業が大切だと思いました。今日の授業 で、命の尊さも学ぶことができました。
・ずるいことをしてしまった時の自分と同じ気持ちで、
ちょっとどきっとしました。ずるいことをしたら苦し い。
「⚑冊のノート」
・中学校の時の道徳でやったことのある資料だったけれ ど、今高校生になって考えて見ると、少し思うことが 変わっていました。全員が発表して授業に参加できた のですごく楽しかったです。
・いろいろな意見が聞けてとてもおもしろかったです。
同じ意見もあったけど、自分が考えていなかった意見 がたくさん聞けて「ああ、こんな意見もあるんだな。」
と考えたりして、本当に楽しかったです。普段聞けな かった人の意見もたくさん聞けてとても自分のために なりました。
・中学校の時に読んだことがあるのですが、その時より も違う感想が浮かんできておもしろかったです。
・高校では道徳の授業がなくて自分の意見を述べる機会
があまりなかったので、今日は楽しかったです。一つ のことについて色々な考えがあったのがおもしろかっ たです。
・クラスの雰囲気がとてもよかった。
「ロレンゾの友達」
・楽しかった。逆に校長先生はどう考えているのか聞き たかった。
・友情とか友達をとかを考えるのは難しいと思った。い ろいろ感じることがあり、今の自分にも当てはまるこ とだと思った。
・友情についてしっかり考えることなんてなかなかない し、とてもいい機会だった。
・久しぶりに真剣に小説を読んで、気分が良くなりまし た。短い小説ですが、読んでいておもしろかったで す。自分にこんな事が起きたらと思うと色々頭にこみ 上げてきました。今後たくさん小説を読みたくなりま した。是非もう一度授業をしてもらいたいです。
・みんな意見がばらばらで時には正反対の意見もあって おもしろかった。
・今回の授業を受けて、普段あんまりそうことを考えた りすることがないので楽しかった。
「二通の手紙」
・主人公の佐々木さんは、失敗を二度としないように しっかり勤めていると思う。
・ルールを破ってでも、人に喜ばれることはできると思 います。でも、同時に、危険が及ぶことがあるので、
人として、その時の状況を判断して動きたいと思いま す。
・今回の授業で、「命の大切さ」を考えさせられた。た またま事故にならなかったから良かった。子どもたち と家族を幸せにできたし、自分は新しいことを学べて 成長できので、はればれしたのだと思った。自分自身 の失敗を振り返ったら新しいことを発見できそうな気 がした。
・規則を守ることの重要さと同時に、どうすれば規則を 守りつつ、人を幸福にできるのかを考えさせられまし た。
・突っ込みどころ満載だったのでおもしろかった。
・人によって考える事やどう感じるかが全然違っていた ので、おもしろいと思った。
「いつわりのバイオリン」
・難しかった。けれどクラスの一人一人の意見が聞け て、私が思いつかないことや納得する意見も多くあっ て、とても楽しい授業だった。
・「生きる」ことについて考えたけど、あまりよくわか
らなかったです。自分は毎日当たり前に生きていて、
寝たら次の日目が覚めるし、嫌のことがあっても学校 に行かないといけないし、毎日を普通に過ごしている ので、「生きる」ということは、あまりわからないで す。でも、こんな機会はあまりないので今回考えれて よかったです。
高校入学時アンケートからわかる生徒の願い
C高等学校では、学校の目標を「生きる力」の育成を その基本に置き、各学年・専門部、学校行事の目標にお いて、道徳教育の観点から考えるようにした。道徳教育 の全体計画を作成する際には、学校の教育目標とのつな がりを明確にして、各教科指導における道徳教育の視点 を別葉に作成した。
入学当初のオリエンテーション合宿で、学習指導や集 団行動等を主に行う従来のプログラムを改善し、「人間 としての在り方生き方」の自覚を促す時間を設けた。ま た、校長講話として、横山利弘先生の著書『道徳教育と は何だろうか』(廣済堂あかつき、2007年)を参考にし て、「立志・志学」「人間の魅力」「自分自身のキャリア 経験と生き方」について生徒たちに話をした。
以下は、その際に行った生徒(280名)へのアンケー トから、⚒つの項目についての生徒の回答からの抜粋
(同様なものは一つにまとめた)である。質問に対して
「特にない」という回答は全くなかった。どの生徒も「人 間としての在り方生き方」について学びたいと考えてお り、自分がより良くなっていきたいと思っていることが うかがえる。
「中学時代の自分から高校生になって最も変わりたいと 思っていることは何ですか」
・行動力をつけたい
・勉強時間を増やしたい
・周りに迷惑をかけないようにしたい
・人の話を最後まで聞けるようにしたい
・さぼり癖を直したい
・部活に入って仲間と共に一つのことを本気で取り組む 人になりたい
・物事を続けてやれるようになりたい
・積極性を身に着けて委員会などにも挑戦したい
・字をきれいに書きたい
・人との関わりを増やしたい
・苦手と言って避けてきたことをがんばる
・授業中にぼーっとしていることがあったのでそこを直 したい
・人見知りで人の目を見ていないので、いろいろな人と 話をして練習したい
・自分の持っている欲をなくしたい
・すぐにあきらめてしまうのを直したい
・初対面の人とも話せるようになりたい
・勉強の準備を早くから始められるようになりたい
・だらけた生活態度を改めて、自分のことは自分ででき るようにする
・生活時間と生活習慣を改めたい
・自分のことに責任を持てるようになりたい
・自分の気持ちをはっきり言えるようになりたい
・自分から進んでいろいろなことに挑戦したい
・時間にルーズなところを直したい
・約束を守る
・夢に向かって進み、自分に限界を決めない
・引っ込みがちで自己主張できない自分の性格
・ポジティブ思考に変えたい
・人柄を変えたい
・明るい性格になりたい
・まわりに流されず、意志の強い人間になりたい
・自分の性格の雑なところを直したい
・ここぞというときに判断する力が欲しい
・いろいろな人に頼られるような人になりたい
・協調性
・友人を作りたい
・努力を続けることができるようになりたい
・情熱を持ちたい
・心に余裕を持ちたい
・気持ちの持ち方
・人間性をよくしたい
・自分で表現できるようになりたい
・決断力を持ちたい
・もう少し大人になりたい
・冷静に行動したい
「自分が一番学びたい・知りたいことは何ですか」
・進路実現のために必要な知識
・大人になるために必要なこと
・社会の仕組み
・人との接し方
・人間関係の作り方
・どのようにしたら良い人間になるのか
・なぜみんな生きてやがて死ぬのか
・リーダーは何をしたらいいか、どうすれば人をまとめ られるか
・なぜ戦争が起きるのか
・地球があと何年生き続けられるのか
・将来一人で自分のことを解決できるようになるために 必要なこと
・ひとの気持ちについて
・自分に勝つためにすることやる気の出し方
・集中力
・恋愛について
・礼儀
・忍耐力
・どうすれば自分を律することができるか
・どうすれば謙虚になれるか
・どうしたら誰とでも仲良くできるか
・自分が住んでる地域のこと
・日本や世界で何が起きているのか
・人の価値観
・社会に役立つ知識
高校生は道徳の授業を待っている
生徒たちは、人間としてどう生きるべきなのか、友人 関係や家族についてなどの他者との関係性、善悪の判断 など、人間の根本についてよく考えたいと思っているこ とがよくわかる。「在り方生き方」について、教師と対 話をしながら、じっくり考える時間をとることが本当に 必要である。
学校現場では目に見える行動について指導がなされが ちである。「道徳性を養う」という内面的な指導よりも、
「規則を守る」というような「行動」についての表面的 で見た目の面からの指導に重点が置かれがちである。規 則を違反しておらず目立った行為がなければ、特に指導 されずに終わってしまうことが多い。これでは学ぶ楽し みや学ぼうとする意欲、人間性の涵養等、生徒たちの望 む成長へと高めることはむつかしいのではないだろう か。生徒自身が自ら考え、自覚を深めて自己実現へと導 く機会となる、「道徳」の授業の確立が望まれる。
参考文献
文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総則編』2018年。
横山利弘『道徳教育とは何だろうか――道徳をどう解く』廣 済堂あかつき、2007年。
横山利弘『道徳教育、画餅からの脱却――道徳をどう説く』
廣済堂あかつき、2007年。
(しもの あつこ・園田学園中学校 高等学校国際交流室長)