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1 学習院大学理学部 〒1718588 東京都豊島区目白 151
Faculty of science, Gakushuin University, Mejiro, Toshima-ku, Tokyo1718588, Japan (E-mail: masahito.watanabe@gakushuin.ac.jp) 2 Faculty of Engineering, Institute of Micro and Nanomaterials, Ulm University, Albert Einstein Allee 47, D89081, Ulm,Germany
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小特集微小重力,宇宙環境利用による流体および材料研究 (原著論文)
回転を考慮した液滴振動法による表面張力と粘性係数の解析
樋口 健介
1・渡辺 匡人
1・Rainer. K. WUNDERLICH
2・Hans-J. FECHT
2Analysis of Surface Tension and Viscosity by Oscillation Drop Method
including Sample Rotation EŠects
Kensuke HIGUCHI1, Masahito WATANABE1,
Rainer K. WUNDERLICH2and Hans-J. FECHT2
Abstract
We precisely analyzed the surface tension and the viscosity of NiAl and TiAl melts by the oscillation drop method including droplets rotation eŠects. Under microgravity conditions, beat-like radius variations due to droplet rotation were observed on the oscillating droplets in electromagnetic levitation (EML) experiments. The beat-like radius varia-tion prevents to evaluate the surface tension and the viscosity, thus we need to solve the problem about droplet rotavaria-tion for obtaining the correct surface tension and viscosity. From this purpose, we performed numerically simulations of three-dimensional droplet shape with rotation, surface oscillation by the surface tension and its damping by the viscosity. From the simulation result, we proposed analytical technique to evaluate surface tension and viscosity from the beat-like radius variations of surface oscillating droplet with rotations. We applied the technique into the oscillating drop data of NiAl and TiAl melts obtained by EML experiments using TEMPUS under microgravity conditions on board parabol-ic ‰ights. As a result, it was conˆrmed that the surface tension and viscosity were precisely determined even under droplet rotating conditions.
. は じ め に 自動車や航空機産業において,省エネルギーの観点から 軽量で耐久性の高い金属系新材料を用いた製品開発が急速 に進展している.これらの新素材を用いた溶接や鋳造など の製造プロセス制御に対して,その材料の熱物性値が必要 となっている.このため,高温融体の熱物性値計測手法に ついても改良,開発していかなくてはならない.金属等の 高温融体の熱物性値計測について,無容器浮遊法の有効性 はこれまでに多く述べられてきており,多数の報告例があ る1).特に,合金融体の測定には試料周りの雰囲気を任意 に設定できる電磁浮遊法の使用が有効である.このため, ESA および DLR では,航空機に電磁浮遊炉 TEMPUS を 搭載し,放物線飛行で得られる短時間微小重力環境下にお いて,次世代ジェットエンジンのタービンブレード用途と なる TiAl および NiAl 融液の表面張力と粘性係数の測 定を試みている2). 表面張力と粘性係数は,空中に浮遊した液滴の表面張力 振動の周波数とその減衰時間から求めることができる.液 滴に加わる外力がない場合,表面張力によって振動する液 滴形状の時間変化は,表面張力振動を vs,減衰時間を t として,次のように記述できる34). r(u, q, t )=R0+
∑
|m|=0, 1, 2 Drmsin (vst )Yml=2(u, q) ×exp(
-t t)
(1) ここで,R0は振動していない状態の液滴の半径,m は液 滴の振動モード,Drmは表面張力振動の振幅を与える定数, Ym l は球面調和関数である.ただし,高次の振動モード(l >2)は減衰が速いため,(1)式では l=2 モードのみを示 した.表面張力 g は,表面張力振動数 vsと vs2= 8 3p g M (2) という関係にあり,また粘性係数 h は表面張力振動の減 衰時間 t との間に24 ― 170 ―
Fig. 1 Schematic diagram of experimental setup in the horizontal view.
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t=R 2 0r 5h (3) の関係がある.ここで r は密度である.従って,表面張 力と粘性係数を求めるには,液滴表面振動を計測し,その 表面張力振動数 vsと,振動振幅の減衰時間 t を精度良く 求める必要がある.ただし,電磁浮遊炉を用いた地上実験 では,重力と電磁気力の影響で表面張力振動スペクトルが 分 裂 し て し ま う5). こ の ス ペ ク ト ル の 分 裂 に つ い て は Cummings と Blackburn らによって振動数を補正する式が 提案されている6).また,地上における電磁浮遊では,高 周波電流による電磁撹乱のため液滴の表面振動が次々と励 起され,振動の減衰時間から粘性係数を求めることは困難 となっている. これらの問題のため,電磁浮遊法により表面張力と粘性 係数を測定するには,微小重力下において外力が無視でき る状態で,液滴振動を観測することが必要である.ところ が,微小重力環境下において液滴振動の実験を行うと,液 滴径の時間変化は単調減衰せず,うなりを伴った振動が頻 繁に観測される.過去にシャトルを用いて行われた微小重 力実験7)では,粘性係数の測定値に15以上の分散が見ら れるが,これはうなり振動する液滴径の時間変化から減衰 時間を求めていたためである.また,うなり振動時には表 面張力振動スペクトルが分裂するため,表面張力振動数に も不確定性が含まれてしまう.このようなうなりを伴った 振動は,これまで液滴が回転しているために見かけ上観測 されると考えられていたが,詳細は不明であった.電磁浮 遊液滴の回転は,融解時や表面張力振動を励起する際に起 こると考えられるが,実験では表面張力振動と回転が組み 合わさっているため,液滴の回転方向と速さを容易には判 別できない.このため Bullard らは,シャトルを用いた微 小重力実験で,トレーサーを用いて液滴が回転しているこ とを確認し,また液滴内の対流と液滴の回転を関係付け て,液滴回転の要因を説明した8).液滴の回転が液滴振動 法による表面張力と粘性係数の測定に与える影響について は,Busse らが回転する液滴の表面張力振動を力学的に近 似計算し,回転により見かけ上の表面張力振動数がシフト することを示した9).また同様の手法で,Lee らは液滴の 回転が液滴振動の減衰時間に与える影響を計算し,減衰時 間の補正式を提案した10).一方,Egry らは,回転してい る液滴の径が(1)式を回転座標に乗って観測したものであ るとして,回転する液滴の径の時間変化を計算した11).こ の結果,液滴径のうなり振動を確認し,また周波数スペク トルがシフトするだけでなく実験で観測されるスペクトル の分裂も再現できた.ただし Egry らが行ったのは鉛直軸 周りの回転についてのみである.実際の微小重力実験で は,複雑な液滴径のうなり振動とスペクトルの分裂が観測 されており,これは液滴が任意の方向に回転し,かつ回転 軸がひとつではなく才差や章動のような運動をしているた めと考えられる.また,後述するように,実験では液滴の 径を直接観測できず,カメラを用いて撮影した液滴の射影 像から径の振動を得ている.これらの問題のため,これま では実験データから回転を考慮した表面張力と粘性係数の 解析を行うことはできなかった. 実験で得られるうなりを伴った液滴径の振動データから 表面張力と粘性係数を求めるために,本研究では先ず,回 転をしながら表面振動する液滴の三次元形状を数値計算 し,才差運動や章動を含めた複数の軸の周りでの回転が見 かけ上の液滴径の時間変化に与える影響を検討した.さら に,数値計算で得られた知見をもとに,液滴が回転してい る場合においても表面張力と粘性係数の評価が行える解析 手法を開発し,航空機実験で得られた径の振動データを用 いてその検証を行った. . パラボリックフライトによる短時間微小重力 下での液滴振動実験 液滴振動実験をおこなうために,電磁浮遊炉 TEMPUS を航空機 AirBusA300に搭載し,フランス・ボルドーおよ びドイツ・ケルンにおいてパラボリックフライト実験をお こなった。AirBusA300では 1 回のパラボリックフライト における微小重力時間は20秒,1 フライトで約30回のパラ ボリックフライトを行える.本研究では,パラボリックフ ライトによる短時間微小重力環境下での液滴振動実験を合 計で約30回行った.Fig. 1 に水平方向から見た TEMPUS の概略図を示す.TEMPUS では,別々の電源に接続した 位置保持用と加熱用の 2 つの高周波コイルを用いている. これらのコイルは発生する高周波磁場が対称になるように 上下対称に巻かれ,その中心で直径 58 mm の液滴状にな った金属試料が浮遊する.試料の位置と液滴振動は水平方 向と垂直方向から CCD カメラ(フレームレート150 Hz) を用いて観測した.温度は単色放射温度計(1280 nm)を 用いて鉛直方向から観測した.チャンバー内の雰囲気は超 高純度 Ar+He(6N)混合ガスを用い,実験中は圧力0.01 MPa で保持した.また,試料とコイルの接触を防ぐた め,試料はセラミックス製のケージ内部で浮遊させた. Fig. 2 に,パラボリックフライトによる液滴振動実験で
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Fig. 2 Temperature proˆle of Ti50Al50in a parabolic ‰ight.
Fig. 3 Radius variations of X, Y, X+Y, X-Y and Area of Ni31.5Al68.5droplet observed in a parabolic ‰ight
experi-ment.
Fig. 4 Images cut from generated 3D model of surface oscillat-ing droplet observed in the top view with time gooscillat-ing, which motion is in case of m=0 mode surface oscillation with a precession.
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得られる典型的な温度履歴(試料Ti50Al50合金)を示す. まず 2 つのコイルに流す電流を最大にして試料を融解し, その後加熱用のコイルの電流を遮断し試料保持用のコイル の電流を下げて,電磁気力が無視できるような状態で温度 を低下させた.温度低下中に加熱コイルにパルス電流を流 し,表面振動を励起させ,液滴の表面振動を CCD カメラ で観察した.表面張力と粘性係数の評価には,主に上方か ら撮影した画像を用いた.得られた液滴の動画から輝度解 析により液滴の外形と重心を検出し,液滴径の時間変化を 求めた.観測する液滴の径は,撮影した二次元動画上の液 滴の重心から水平方向の外形までの距離を X,垂直方向 の外形までの距離を Y とした(Fig. 4 を参照).また,本 研究では後述する回転効果の除去のため,新たに和 X+ Y,差 X-Y,および動画像上の液滴の射影面積 Area も 観測した.
Fig. 3 に航空機実験で得られた典型的な液滴径(X, Y, X+Y, XY,および Area)の時間変化を示す.この図に おいて,1.5秒の時点でパルス電流を印加して表面張力振 動を励起しているため,Y において振幅が増加している. その後振幅は減衰しているが単調には減衰せず,表面張力 振動を励起していないのにもかかわらず,2.4秒付近で振 幅が増加し“うなり”のような振動が見られる.また X では逆の変化を示しているが,振幅の変化がうなりを伴っ ていることがわかる.一方,Area,X+Y では,このうな りが消失し単調に減衰している.X や Y にみられるよう な液滴径振動の時間変化からは,指数関数をフィットさせ て減衰時間を算出することは困難である. . 回転している液滴形状の三次元シミュレー ション Fig. 3 において観測されたうなりを伴った液滴振動は, 前述したように回転している液滴の表面張力振動を観測し ていることが原因と考えられる.そこで,回転しながら表 面張力振動する三次元液滴形状を数値計算し,試料回転が 見かけ上の液滴径の時間変化に与える影響を調べた. まず(1)式で表される理想的な表面張力振動する液滴を 計算機上に生成し,この液滴にオイラー角の回転行列を用 いて回転を与えた.液滴の表面振動は(1)式に現れている 3 つの振動モードの重ね合わせを考え,回転は液滴の幾何 学的対称性を考慮したあらゆる方向の一軸回転と,「才差 運動」および才差運動の軸が振動する「章動」の場合を考 えた.観察方向は実験と同じく鉛直方向からとした.計算 に用いた値は,表面振動周波数43 Hz,回転周波数 2 Hz, 中心軸に対して30°傾いた才差運動の周波数 1 Hz,サンプ リングレートを200 Hz とした. Fig. 4 にシミュレーションで得られたm=0 モードの表 面振動する液滴が才差運動している画像を時系列で示す. この液滴の動画像に,実験と同様の画像解析を適用し,液
26 ― 172 ― Fig. 5 (a) Radius variations of X, Y, X+Y, X-Y and Area
as a result of simulation in case of m=0 mode surface oscillation with a precession. Exponential decays of radius variations using input damping time 0.8 sec are drawn in the same graph. (b) The results of the FFT of radius variations shown in (a).
Fig. 6 (a) Radius variations of X, Y, X+Y, X-Y and Area as a result of simulation in case of m=0+1 mode super-position of surface oscillations with a precession. Ex-ponential decays of radius variations using input damp-ing time 0.8 sec are drawn in the same graph. (b) The results of the FFT of radius variations shown in (a).
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滴の径 X, Y, X+Y, X-Y, Area の時間変化を観測した. Fig. 4 の動画から得られた液滴の径の時間変化とそのパ ワースペクトルを Fig. 5(a)(b)に示す.数値計算で得た 液滴径の時間変化は,X,Y および X-Y において,微小 重力実験で得た径の振動と同様のうなりを伴った振動を再 現できた.このときのパワースペクトルは,X,Y におい て 3 つ,X-Y で 2 つのピークが現れているが,いずれも 表面張力振動数 v(43 Hz)を中心に対称に分裂している.S 分裂したピークは才差運動に起因しており,m=0 モード の振動と回転に起因するピークは現れていない.一方,X +Y と Area では,液滴径の時間変化にうなり振動は見ら れず,振動振幅は入力した減衰時間 t を使って単一の指数 関数でフィットできた.また,パワースペクトルに分裂は 観測されず,表面張力振動数 vSの位置に単一のピークが 得られた.従って,X+Y と Area では回転と才差の効果 が除去されていると言える.このことは,液滴の回転方向 と表面振動モードおよび観測方向の幾何学的関係から理解 できる.m=0 モードの表面振動をしている液滴が30°傾い て自転+才差運動している状態を鉛直方向から観察した場 合,自転は液滴径の振動に影響を与えない.このためパ ワースペクトルには自転を表すピークが現れていない.ま た,Fig. 4 に示した時系列画像からわかるように,X, Y, X-Y は才差運動に応じて値が変化するのに対して,X+ Y と Area は才差運動の影響を受けない.このため X+Y と Area は自転と才差運動の影響が完全に除去され,回転 していない液滴径の振動の式(1)と同等の減衰振動とパ
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ワースペクトルが得られた. 一方,m=1,2 モードが重ね合わさって表面振動する 液滴が才差運動している場合の液滴径の振動とその周波数 スペクトルを Fig. 6 に示す.この場合は,すべての径の 振動パラメータにおいてうなりを伴った液滴径の振動が観 測された.ただし,周波数スペクトルを見ると,X+Y, X-Y, Area においてピークの本数が減少しており,自転 と才差による二軸の回転が組み合わさって生じている回転 効果の一部が除去されていることがわかる.またこの場合 においても,分裂したスペクトルはすべて,表面張力振動 数 vSを中心に対称に分裂した. ここで示した 2 例以外にも,さまざまな回転と液滴振動 のモードの組み合わせで,液滴の回転運動について同様の シミュレーションを行った.この結果,表面張力振動スペ クトルは,回転の方向,回転軸の数,液滴の振動モードに よらず,表面張力振動数 vSを中心に対称に分裂すること
がわかった.また,X+Y, X-Y, Area を観測すること で,液滴の回転効果の一部または全部を除去できることが わかった.このような回転効果の除去現象は観測方向と液 滴振動のモードおよび回転方向の幾何学的な条件が一致す ることによって起こる.これを,以降「幾何学的対称性に よる回転の効果の除去」と呼ぶ. . 回転を考慮した表面張力と粘性係数の解析法 と実験への適用 . 幾何学的対称性を利用した表面張力と粘性係数の 解析 Fig. 3 で示した航空機実験で得られた液滴径の振動と, Fig. 5(a)で示したシミュレーションから得られた才差運 動しながら m=0 モードの表面張力振動する液滴径の振動 は,うなりの周波数こそ違うものの,5 つの振動パラメー タ共に同様の傾向が現れている.実験で得られた動画から 確認した液滴の運動もシミュレーションに近い挙動を示し ているため,Fig. 3 で示した実験では m=0 モードの表面 張力振動する液滴が才差運動していたと推察される.ま た,Fig. 3 で示した液滴径の振動の X+Y と Area をフー リエ変換すると単一のピークが得られた.これらのことか ら,実験においても幾何学的対称性に起因する回転効果の 除去が起こることが確認された.したがって,液滴が回転 していても回転の方向と液滴の振動モードと観測方向の条 件がそろえば,液滴径の振動のパラメータとして X+Y, X-Y, Area を観測することにより表面張力振動数と振動 の減衰時間とが決定できる. . 幾何学的対称性を利用できない場合半値幅法に よる粘性係数の導出 幾何学的対称性を利用した回転効果の除去は常に成立す るわけではない.特にシミュレーション Fig. 6 で示した ような液滴の回転軸と振動モードが複数組み合わさってい る場合は,回転の効果を完全に除去することは困難であ る.そこで,X+Y や X-Y,Area を用いても回転の効果 が除去できない場合について,表面張力振動数と減衰時間 を求める手法を検討した. 表面張力振動数については,液滴回転のシミュレーショ ンからどんな回転が起こっていても,表面張力振動数を中 心に対称にスペクトルが分裂することがわかった.このこ とから回転によりパワースペクトルが分裂している場合 は,分裂したピーク位置の平均を取れば真の表面張力振動 数が得られる. 一方,減衰時間については,以下で述べる液滴振動のパ ワースペクトルの半値幅から算出する方法を検討した. 今,液滴形状の時間変化が(1)式で表されるのに対し,固 定座標系のある一方向から観測した回転する液滴の径の時 間変化 r′(t) を次のように表す. r′(t)=
∑
nansin (vst ) sin (vnt ) exp
(
-t t
)
(4) ここで vnは液滴回転の角周波数,anは(1)式での球面 調和関数を含んだ液滴振動の振幅である.この(4)式の フーリエ変換は,ローレンツ関数を用いて次のように表せ る. R ′(vn)=∑
n An{
G (v-vs+vn)2+G2 + G (v-vs+vn)2+G2}
(5) t= 1 pG (6) ここで,Anはスペクトル強度の振幅を表す定数.vnは 液滴回転に由来する周波数で,分裂したそれぞれのピーク 位置と表面張力振動数 vSとの差である.なお,vn=0 は,分裂せずに中心の表面張力周波数が残る場合を表す. n は液滴の回転軸の数に対応する数であり,n≧(回転軸 の数)となる自然数である.G はパワースペクトルの半値 幅で,この半値幅 G を測定することで表面張力振動の減 衰時間 t が決定できる11).パワースペクトルの半値幅は液 滴回転の周波数に依存しないため,液滴の回転の有無およ び回転の軸の数によらず減衰時間を求めることができる. ただし,航空機実験等の短時間微小重力環境での液滴振動 実験において液滴振動のパワースペクトルの半値幅を精度 良く求めるには,高速フーリエ変換による液滴振動の解析 では周波数分解能が十分ではない.そこで,高速フーリエ 変換(FFT)の替わりに周波数分解の高い最大エントロピー 法(MEM)12)を用いて,液滴振動のパワースペクトルを 求めた. Fig. 7 (a )に , 航 空機 実 験 で 得 た1800 K にお け る Ti50 Al50の液滴径の振動うち Y を示す.この場合は,X+Y や X-Y,Area を観測しても回転効果を完全に除去すること はできなかった.この Fig. 7(a)に示した振動に対して,28 ― 174 ― Fig. 7 (a) A beat-like radius variation of Ti50Al50droplet due
to droplet rotation from a parabolic ‰ight experiment. Decay time was estimated using an exponetial function. (b) Frequency space of (a), compared between FFT and MEM. Decay time can be estimated from the half width of Lorentzian function.
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測定時間2.68 sec の幅で MEM を適用して求めたパワース ペクトルを Fig. 7(b)に示す.Fig. 7(b)には MEM による 結果と FFT による結果を併せて示してある.この結果, FFT および MEM によって得られたスペクトルの双方と もに,液滴回転によるピークの分裂が観測された.ただし, FFT では測定時間が短いため,半値幅は MEM に比べて 広くなっている.この分裂したピーク位置の平均からこの ときの表面張力振動数42.2 Hz が得られた.さらに MEM で得られたスペクトルを(5)式で示したローレンツ関数の 和でフィットし,その半値幅から減衰時間0.85±0.025 sec が得られた.一方,Fig. 5(a)の液滴径の振動を指数関数 でフィッティングして減衰時間を求めると,0.95±0.15 sec であった.液滴径が回転によって見かけ上うなり振動 を起している場合には,指数関数によるフィッテングでは 減衰時間の誤差が15以上含まれる.このような場合に は,回転の影響を受けないパワースペクトルの半値幅を用 いた減衰時間評価法が有効である.Fig. 7(b)から得られ た Ti50Al50の1800 K における表面張力と粘性係数は,そ れぞれ1.25 Nm-1,7.7 mPa・sec である.これらは今回の 測定において初めて得られた値であり,今後ほかの実験と 測定手法によって得た値と比較する必要がある.しかし, 今回行った数回の測定について,幾何学的対称性を利用す る方法と半値幅法を用いて解析した結果,粘性係数値のば らつきは10以下であり,回転を考慮していない従来の方 法よりも精度の高い値が得られた. . 考 察 4. で述べた方法は,液滴の回転の有無に関わらず,分 裂したパワースペクトルの平均値から表面張力,パワース ペクトルの半値幅から減衰時間を求められるが,実際の航 空機実験では液滴径の振動の測定時間が短いことが問題と なる.まず,短い測定時間の液滴径の振動データに MEM を適用する際に端点の影響により多数のゴーストピークが 出現し,回転によるパワースペクトルを識別できない場合 がある.このため,3. で述べた X+Y,X-Y および Area といった液滴径のパラメータを観測し,回転の効果をキャ ンセルする方法を併用する必要がある.また,液滴径の振 動の測定時間が短いため,時間空間と周波数空間の間の不 確定性の測定誤差を検討する必要がある.ここでは単純な 振動減衰関数 r(t)=cos (vt )e-t t (7) を使って,入力した減衰時間 tinputに対してパワースペク トルの半値幅から得た toutputについて測定時間の依存性を
調べた.(tinput-toutput/tinput)×100が MEM 解析による測 定値に対する相対誤差となる.入力する減衰時間 tinputを 0.4秒から1.2秒まで変化させて,測定時間の長さ 1 秒から 7 秒の範囲で相対誤差を求めた結果を Fig. 8 に示す.この 結果から,測定時間が長く減衰時間が短いほど相対誤差は 小さくなることが確認された.航空機実験における粘性係 数 1 点の測定時間=約 3 秒を考えると,減衰時間が0.8 sec の 測 定 対 象 ( 直 径 6.3 mm の Ti Al 液 滴 , 粘 性 係 数 が 8 mPa ・ sec に 相 当 ) に 対 し て 3 秒 間 測 定 を 行 っ た 場 合 , MEM により求めた減衰時間には 5 の測定誤差が含まれ る.さらに(3)式を用いて粘性係数を見積もると, 20秒間 の航空機のパラボリックフライトによる微小重力環境にお いて,直径 58 mm の試料を浮遊できる電磁浮遊炉を用い た場合,標準的な密度の金属融体ならば,粘性係数が約 5 mPa・sec 以上の温度域においてその粘性係数をパワースペ クトルの半値幅から十分な精度で決定できることがわかっ た. 航空機実験およびシミュレーションにおいて確認された 液 滴の回 転に よる表 面張力 スペ クトル の分裂 は, Egry ら11)の解析的な計算結果とよく合う.減衰時間について は,液滴回転と液滴径のうなり振動の関係を幾何学的観点 で扱った本研究に対し,Lee ら10)が行った力学的エネル ギー保存則を用いた計算は本質的に異なる.このため Lee
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Fig. 8 Relative errors between input decay time and output decay time threw Maximum Entropy process depending on sampling time width and input decay time.
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らの液滴回転による減衰時間の補正式を考慮しなくては ならない.ただし,TEMPUS における液滴の回転速度は 1 Hz 以下と低速であるため,Lee らの補正式を適応して も,回転による減衰時間の変化は0.1以下となり無視で きるほど小さい. . ま と め 微小重力下では液滴の理想的な表面張力振動とその減衰 が観測されるため,高精度に表面張力が決定でき,地上で は測定できない粘性係数が測定可能という利点がある.し かし,実際の微小重力実験において得られた液滴振動で は,液滴が回転する影響でうなりを伴った液滴径の振動が 観測され,従来の解析手法では表面張力と粘性係数の測定 が困難であった.そこで本研究では,回転しながら表面張 力振動する液滴の三次元形状を数値計算で求め,液滴振動 法による表面張力と粘性測定に与える液滴回転の影響を明 らかにした.この結果,液滴の径のパラメータとして X +Y, X-Y, Area を観測すれば,回転の効果を除去するこ
とができ,理論式に合う液滴の径の振動および単一の表面 張力振動パワースペクトルが得られることがわかった.ま た回転によりパワースペクトルが分裂した場合でも,分裂 したスペクトルの位置の平均から表面張力,スペクトルの 半値幅から粘性係数が評価できることを示した.さらに航 空機実験によって得た液滴径の振動データに本手法を適用 した結果,液滴が回転している場合においても精度よく表 面張力と粘性係数を求められることを確認した.今後,測 定を重ね本手法の精度を詳細に検討していく. 謝辞 液滴振動について有意義な議論をしていただいた首都大 学東京の日比谷孟俊教授および小澤俊平氏に感謝いたしま す.なお,本研究の一部は財日本宇宙フォーラムが推進し ている「宇宙環境利用に関する地上研究公募」プロジェク トの一環としておこなったものである. 参 考 文 献
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