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「嵐山」の景観構造

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Academic year: 2021

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「嵐山」の景観構造 

 

藤井義令,吉川  眞, 田中一成   

 

Analysis of Landscape Structure in“Arashiyama”

 

Yoshiharu FUJII, Shin YOSHIKAWA and Kazunari TANAKA

Abstract: The historical landscape has been reduced because of rapid urbanization. The authors aim to grasp landscape structure around “Arashiyama” in Kyoto from the viewpoint of sequential landscape. There are a lot of historical landscape remained. They identified the “Arashiyama”

District recognized as a tourist resort by checking names and addreses of shops. In addition, they analyzed the visibly of Mt. Arashi (Arashiyama) from the tourist route as the sequential landscape.

Keywords:

景観構造(landscape structure ),シークエンス景観(sequential landscape), 

可視・不可視(visibility analysis) 

1.はじめに

わが国では,戦後から高度経済成長期にかけ て,とくに生産性重視の社会基盤整備が行われ た.その結果,生活水準が向上し豊かな生活に なり,都市には高層建物が立ち並ぶとともに,

技術の発展から快適で便利な社会となってきて いる.その反面,昔ながらの自然や街並みなど 地域特有の伝統や文化を育んだ歴史的な景観が 失われてきた.この反省より,現在では歴史的 景観,寺院や仏閣などの歴史的建造物の保存を 法整備などで積極的に行っている.例えば京都 では昭和 41 年に「古都における歴史的風土の保

存に関する特別処置法」すなわち,古都保存法 の適用を受け保存活動を行っている.またそれ 以前においても昭和 31 年には京都市美観風致審 議会条例などにより規制がひかれ,寺院や仏閣 などの歴史的建造物や,歴史的景観の保存が熱 心に行われている.今後もこのような歴史的景 観は保存され続けるであろう. 

山や河などの自然は,先述した歴史的景観の 背景としてはもちろん,都市景観の背景として も重要であり,地域のランドマークとしての役 割を果す場合もある.わが国の伝統的なデザイ ン技法にも,庭園の背景に自然の山を加えて一 枚の絵のように見せる「借景技法」がある.ま た,古くから観光地として人々を惹きつけてき た地にはこのようなランドマークとして山を背 景に抱えている場所が多く,これらは現在でも 藤井:〒535-8585  大阪市旭区大宮 5-16-1 

大阪工業大学大学  工学部研究生

TEL: 06-6954-4109(内線3136) 

e-mail: [email protected]

(2)

人を癒す力や惹きつける魅力がある. 

 

2.研究目的と対象地域 

本研究では,自然の山を借景とするシーン景 観ではなく観光地として重要な意味を持つルー トを移動するという観点,すなわちシークエン ス景観の面から考えることで,山と観光ルート の関係を分析し,魅力ある観光ルートの構築を 目指している.そこで,観光地という古くから 人々を惹きつけてきた地に着目し,観光地を形 成してきた景観構造を明らかにする手法の構築 を目的とした. 

対象地域には,歴史のある寺院や庭園が山麓 に多く存在する京都,なかでも西部に位置し代 表的な観光地である嵐山とその周辺を対象とし た(図−1).嵐山地域は,山や河に囲まれてお り,都市景観の中に自然が多く残されている.

また,世界文化遺産「古都京都の文化財」とし て登録されている天龍寺をはじめ多くの寺院が 地域のいたるところに存在し,各寺院からも嵐 山を見ることができる.また嵐山地域の観光的 な大きな特徴として,多くの寺院・神社を歩い て周回することが挙げられる.これは寺院・神 社が特に密集している嵐山地域独特のものであ り,それにより多くの観光ルートが存在し,そ の観光ルートも各寺社とともに観光客の観光資 源となっている.  

3.研究方法

本研究ではまず,店舗名やマンション名など で「嵐山」の名称が使用されている建物の検索 を行いデータベース化したのち,GIS を用いて 数値地図上に表現することで,住居表示だけで はなく店舗名や建物に嵐山が使われている範囲,

すなわち

name value

が高いとして認識されてい

る範囲を特定している.また,「嵐山」の名称 使用を景観構造の観点から可視・不可視分析を 行い把握している.さらに,シークエンス景観 という面から「嵐山」を捉えるために,嵐山地 域の観光ルートに着目し観光ガイドブックなど

に掲載されている観光ルートの街路出現頻度を 調べ,出現率の高い代表的な街路上での嵐山の 可視・不可視分析を行って,街路と嵐山の間に ある「見えの位置関係」を探った.

なお,可視・不可視分析のために,航空機搭 載型レーザ測量(LIDAR)データや国土地理院

HP

よりダウンロードした数値地図 2500 などか ら , 対 象 地 の 数 値 表 層 モ デ ル (DSM :Digital

Surface Model)を作成している. 

4.アドレスマッチングによる「嵐山」 

「嵐山」という地域は,住居表示では大堰川 の右岸側のみに存在し,左岸側は「嵯峨」とい う表示になる.しかし,京福電鉄嵐山駅・JR 嵯 峨嵐山駅や天龍寺といった観光客の集まる場所 の多くは,左岸側に位置しており,住所だけで 観光地としての嵐山地域を把握することは難し い.そこで,観光地としての「嵐山」の範囲を 特定するため,インターネット上の電話帳,

「イエローページ」で「嵐山」と「嵯峨」が名 称に含まれる店舗の検索を行った.ここで店舗 名に「嵐山」が使われていることが有名処,つ まり観光地嵐山として認識されていると考えら れる.「嵐山」を名称に含む店舗として 122 件,

「嵯峨」は 117 件が検索された.このイエロー ページにより検索した店舗名,郵便番号,住所 をデータベース化し,CSV アドレスマッチング サービスを用いて,各店舗の座標値を抽出し数 値地図上へプロットを行った.その結果,「嵐 山」と名称のつく店舗は,渡月橋を中心にした

図−1 研究対象地域 

(3)

図−3  嵐山の

DSM

大堰川の右岸側と左岸側の両方に多く位置して

おり,一方,「嵯峨」と名称のつく店舗は大堰 川の左岸側にしか存在せず,JR 嵯峨嵐山駅を周 辺に多く位置していた.さらに「嵐山」と名称 のつく店舗は嵐山を見ることができる範囲に多 く位置していると予想できる結果となった(図

−2).そこで,より的確に観光地としての

「嵐山」の範囲を特定するために,嵐山の可 視・不可視分析を行うことにした.

5.可視・不可視分析 

可視・不可視の分析を行う際に使用する

DSM

を作成するため,数値地形モデル(DTM:Digital

Terrain Model)と建物データの作成を行った.

まず

DTM

作成のために数値地図 2500 を基本と して,GIS アプリケーションである

SIS(Spatial Information System)を用い,都市計画基本図を

取り込み幾何補正し,交差点ポリゴンをトレー スすることで作成して

LIDAR

データから各ポリ ゴンの最頻値算出を行い,TIN(不定形三角形 網)を生成させ

DTM

を作成している.なお,

交差点の存在しない山岳地域の

DTM

作成には 数値地図 50mメッシュ(標高)データを使用し ている.

次に建物データも同じように,都市計画基本 図に記載されている建物外形を

SIS

により数値 地図上へトレースしたのち,LIDAR データの最 頻値の算出を行い,これらを建物高とする建物 データを作成している.そして

DTM

と建物デ ータをマップ演算することで,建物などの地物 を考慮した地形データ,すなわち

DSM

を作成 している(図−3).この

DSM

を用いて,嵐 山山頂から可視である嵐山地域の範囲を特定し,

観光地「嵐山」の範囲を把握できた.

 

6.嵐山地域における観光ルートの把握    次にシークエンス景観の観点から観光ルート 上での可視・不可視分析を行うにあたり,まず  観光ルートとして利用される街路とその出現頻 度などを,観光ガイドブックなどにより調査し 

   

た.ガイドブックには(宇佐美,2005)を用い た.このガイドブックに掲載されていたモデル コースは全 22 ルートであった(図−4). 

モデルコースへの出現頻度が高い街路と低い街 路に分け,出現頻度の高い街路,すなわち観光 客が多く利用していると思われる街路において 可視・不可視分析を行っている. 

7.観光ルートからの可視・不可視分析  図−2  アドレスマッチング結果

図−4  嵐山の観光ルート

(4)

ガイドブックに掲載されていたモデルコース において出現頻度の高かった街路(表−1)に 視点を設定し,街路全体における可視・不可視 分析を行っている.

また周りを見渡しながら歩くことが観光の際 の歩き方であると考え,一般的に考えられてい る進行方向視野角 60°ではなく 360°を対象と し,視点の高さを 1.5m としている(図−5).

また歩きながら可視領域がどうのように変化す るかを把握するため,同じ条件で街路上に5m 間隔で視点を設定し各視点から分析を行い,変

化を把握している(図−6,図−7,図−8).       

   

8おわりに 

本研究では,景観資源の集積地である観光地 という観点から嵐山地域の特定をアドレスマッ チングと可視・不可視分析により行った.さら にシークエンス景観の観点より,街路上からの 嵐山の可視・不可視分析,さらに街路を移動す る際の可視領域の変化も把握している.その結 果,ガイドブックの記載数上位の街路全体から はすべて嵐山が可視であった.しかし街路の一 点だけを取って分析してみると,可視領域の変 化からも分かるとおり,嵐山の可視性に対して 観光ルートに面する建物が阻害要因として大き く影響していることが把握できた. 

今後は,樹木なども考慮した精緻な

DSM

を 作成し,可視・不可視分析の精度を向上させよ うと考えている.さらに,代表的な寺院内にお ける拝観ルート上での嵐山などの可視性分析や,

他のランドマークへの展開,観光ガイドブック 記載回数以外の観光ルートの新しい指標などを 見出し,新たな観光ルートの開発・提案に繋げ たいと考えている. 

  謝辞 

本研究を遂行するにあたり、LIDAR データを 提供頂いた(株)パスコをはじめ,協力と指導を いただいたすべての方々に深く感謝の意を表し ます。

参考文献   

宇佐美睦編(2005)『るるぶ情報版  ʻ06 京都を 歩こう』,JTB パブリッシング.

滝口寺→祇王寺  8  常寂光寺→二尊院  5 常寂光寺→落柿舎  7  宝筐院→京福嵐山  5 落柿舎→二尊院  6  祇王寺→化野念仏寺  5 渡月橋→天竜寺  5  大河内山荘→常寂光

寺 

5 表−1  掲載頻度の高い街路

図− 5  可視・不可視分析

嵐山

図−6  図−7 図−8

参照

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