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数列の推定、あるいは我々の直観の破綻

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Academic year: 2021

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Revised at 20:24, October 5, 2015 数学特論B 第1回 http://my.reset.jp/˜gok/math/advancedcourse/ 1

数列の推定、あるいは我々の直観の破綻

Abstract

高校入試(いや、中学入試か)にも出題される

2, 4, 8, 16, . . . の次はどんな数?

といった数列のよくある問題について深く考えてみます。そうすると実はこの手の問 題は『問題になっていなかった』事が明らかとなります。その中で線形代数で学んだ

Vandermonde の行列式が重要な役割を果たすのを見る事が出来るでしょう。

1 数列のよくある問題

問題 1.1 数列 2, 4, 8, 16, . . . の次の項は何でしょうか?

1.1 円の分割問題

円周上にいくつかの点をとって、異なる2点間を全て線分で繋いでみます。

例えば円周上に2点とると円は二つのパートに分かれ、3点、4点、5点をとった場 合も下の図の様になっています。 n 点の場合の分割数を Q n としましょう:

では、円周上に6点とった場合、円はいくつのパートに分かれるでしょうか?

2、4、8、16と来ましたから次は32であり、一般項は Q n = 2 n 1 であると、

そう考えるのが普通の感覚でしょう。しかし、予想しただけではそれは事実とは言えま せん。ちょっと実際に描いて数えてみて下さい。

 どうでしたか? 32個の領域に分割出来ま したでしょうか?

 31個になった人が多いと思いますが、ひょっ としたら30個になった人も居るんじゃないで しょうか。これは非常に特殊な場合でして、中 心付近で3本の線分が交わってしまっています。

そこで例えば円周上にとった6点のうち、どれ か1個で良いですからほんの少しだけずらして みて下さい:

そうすると今まで1点で交わっていた中心に一つの三角形が現れると思います。その 他の部分は多少ずれたり四角形だったものが五角形になったりするだけで領域の個数自 体は変わっていませんから、円周上の1点を少しずらす事によって結果的に中心に三角 形が増えて全体の分割された領域の数は31個になっています。3直線が1点で交わる と云うのは 特殊な 場合であり、一般的には答えは Q 6 = 31 です。

1.2 一般項

円周上に異なる n 個の点があって円が Q n 個の領域に分割されている状況で円周上

にもう1点加えます。新たに加える点を E n+1 とし、ここから時計回りに既存の点を

(2)

Revised at 20:24, October 5, 2015 数学特論B 第1回 http://my.reset.jp/˜gok/math/advancedcourse/ 2 E 1 , E 2 , . . . , E n とします。

E n+1 を加える事によってこの点と既存の各点 E j とを結ぶ n 本の線分が新たに発生 しますが、これを E n+1 E 1 から順に見て行きましょう。

まず E n+1 E 1 ですが、これは既存の他の線分とは交わりません。従ってこの線分を引 くと2点 E 1 , E n を結ぶ線分と弧によってはさまれた領域 R m が2つに分割されますか ら分割領域数は1つ増える事になります。

  次 に E n+1 E 2 で す が 、こ の 線 分 は E 1 と E 3 , E 4 , . . . , E n の各点を結ぶ n 2 本の線分と 交わります。従って点 E n+1 から出発して線分を描 いて行くと、他の線分と交差する度に通過して来 た領域が2つに分割されて領域が1個増えて行き、

最後に E 2 に到着した瞬間にもう1個増えるので合 計で n 1 個領域が増える事になります。

 一般には、 E n+1 E j (2 j n 1) を引く場合 を考えるとこの線分は E 1 , E 2 , . . . , E j 1 のうちの任 意の1点と E j+1 , E j+2 , . . . , E n のうちの任意の1点 を結んで作られる様な全ての線分と交わっています。

しかも3本の線分が1点で交わる事がないようにし ていますから、それらの交点は全て異なります。

従って (j 1)(n j) 本の線分と交わる度に領域は1個ずつ増えて行き、最後に E j

に到着した時点でもう1個増えますから合計で (j 1)(n j) + 1 個領域数が増えます。

最後に E n+1 E n を引く場合はこれは最初に考えた E n+1 E 1 を引く場合と同じで分割 領域は1個増えます。

この最後の線分と最初の線分の場合も一般の場合の増加数の式 (j 1)(n j) + 1 が 成り立っている事に注意しましょう。

以上から全ての線分を描き終えると P n

j=1 { (j 1)(n j) + 1 } 個 領域が増えます。

これを計算すると X n j=1

{ (j 1)(n j) + 1 } = X n j=1

{− j 2 + (n + 1)j n + 1 }

= 1

6 n(n + 1)(2n + 1) + 1

2 n(n + 1) 2 n 2 + n

= 1

6 n(n 2 3n + 8) となります。以上により Q n は漸化式:

Q n+1 = Q n + 1

6 n(n 2 3n + 8)

を満たしている事が分かりました( Q 1 = 1 と考えればこれは n = 1 でも成立します)。

これを解けば

6 { Q n+1 Q 1 } = 6 { (Q n+1 Q n ) + (Q n Q n 1 ) + · · · + (Q 2 Q 1 ) }

= X n m=1

(m 3 3m 2 + 8m)

= 1

4 n 2 (n + 1) 2 1

2 n(n + 1)(2n + 1) + 4n(n + 1) Q n+1 Q 1 = 1

24

© n 2 (n + 1) 2 2n(n + 1)(2n + 1) + 16n(n + 1) ™

Q n+1 = 1

24 { n 2 (n + 1) 2 2n(n + 1)(2n + 1) + 16n(n + 1) + 24 } Q n = 1

24 { (n 1) 2 n 2 2(n 1)n(2n 1) + 16(n 1)n + 24 }

= 1

24 (n 4 6n 3 + 23n 2 18n + 24) が分かります。

1.3 問題になっていない

では最初の問題の答えは31で良いのでしょうか。32ではいけないのでしょうか?

普通に考えて次の項は32だとする事に異論はないでしょう。根拠はもちろんありま す。一般項は 2 n 1 と考えるわけです。しかし今見たように次の項は31だとする事に も根拠がありました。一般項が 1

24 (n 4 6n 3 + 23n 2 18n + 24) だと考えれば良いわけ

です。つまりこの問題には『正解が複数ある』わけですが、更にもう少し考えてみると

状況はそれどころではなく、深刻です。

(3)

Revised at 20:24, October 5, 2015 数学特論B 第1回 http://my.reset.jp/˜gok/math/advancedcourse/ 3 k を定数として関数 f (n) を

f (n) = 2 n 1 + k(n 1)(n 2)(n 3)(n 4)(n 5)

と定めると、 f (1) = 1, f(2) = 2, f (3) = 4, f (4) = 8, f(5) = 16 であって、更に f (6) = 2 5 + 6!k となっていますから、 k の値を適宜定めれば f (6) はどんな値にでも出来てし まいます。

f (6) = 0 にしたければ k = 32 6! とすれば良いですし、 f (6) = 100 にしたければ k = 68 6! で OK です。つまり、数列 2, 4, 8, 16, . . . の次の項は 0 であっても 100 であって もそれなりに『根拠』はあるわけです。

従って『正解が複数ある』どころか、任意の数が正解たりうる事になります。こうな るとこれは『問題になっていない』と云う事がよく分かる筈です。

解答がマークシートだった場合、3と2をマークした人のみが正解になるのでしょう が、それは数学的には正しくありません。根拠を示す必要のないマークシート式では何 をマークしても(数学的には)正解なのです。

解答が記述式であれば根拠を示す事になりますから『これこれこう云う一般項と考え ればこうなるよ』と書けば良いわけで、一般項を書かれてしまっては次の項が 0 だろう と 100 だろうと、正解とするしかありません。

中学校や高校、時には大学受験の現場でも見受けられるよくあるタイプの問題は、特 にマークシート式の場合、実は(数学的には)問題になっていなかったと云う事です。

これが算数であり、高校数学なんですね。

2 the Vandermonde determinant

2.1 4次曲線の決定問題

数列 1, 2, 4, 8, 16, . . . の一般項を別の方法で求めてみましょう。

直線は通る2点を指定すれば定まりますし、放物線は3点で定まります。同様に考え れば5点を指定すればその5点を通る4次曲線が定まる筈です。

そこで4次(以下)の多項式 Q(n) = a 0 + a 1 n + a 2 n 2 + a 3 n 3 + a 4 n 4Q(1) = 1, Q(2) = 2, Q(3) = 4, Q(4) = 8, Q(5) = 16

を満たすものを求めてみましょう。要するに5点 (1, 1), (2, 2), (3, 4), (4, 8), (5, 16) を通 る4次(以下の)曲線 y = a 0 + a 1 x + a 2 x 2 + a 3 x 3 + a 4 x 4 を求めようと云うわけです。

これは次の連立方程式を解く事になりますが:

 

 

 

 

 

 

 

a

0

+ a

1

1 + a

2

1

2

+ a

3

1

3

+ a

4

1

4

= 1 a

0

+ a

1

2 + a

2

2

2

+ a

3

2

3

+ a

4

2

4

= 2 a

0

+ a

1

3 + a

2

3

2

+ a

3

3

3

+ a

4

3

4

= 4 a

0

+ a

1

4 + a

2

4

2

+ a

3

4

3

+ a

4

4

4

= 8 a

0

+ a

1

5 + a

2

5

2

+ a

3

5

3

+ a

4

5

4

= 16

あるいは

 

 

1 1 1

2

1

3

1

4

1 2 2

2

2

3

2

4

1 3 3

2

3

3

3

4

1 4 4

2

4

3

4

4

1 5 5

2

5

3

5

4

 

 

 

 

a

0

a

1

a

2

a

3

a

4

 

 

=

 

 

 1 2 4 8 16

 

 

この係数行列式は Vandermonde の行列式と呼ばれるもので、

Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø

1 x 1 x 2 1 · · · x n 1 1 1 x 2 x 2 2 · · · x n 2 1

.. . .. .

1 x n x 2 n · · · x n n 1 Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø

= Y

1 j<k n

(x k x j )

となる事がよく知られていますから、係数行列は正則であり逆行列が存在します。

5次正方行列の逆行列を求めるのは大変ですが、掃き出し法で計算する事が出来ます

(参考資料に詳しい計算をのせています)。すると件の連立方程式の解は

 

 

 

a 0

a 1

a 2

a 3

a 4

 

 

 

=

 

 

 

1 1 1 2 1 3 1 4 1 2 2 2 2 3 2 4 1 3 3 2 3 3 3 4 1 4 4 2 4 3 4 4 1 5 5 2 5 3 5 4

 

 

 

1 

 

 

 

 1 2 4 8 16

 

 

 

= 1 24

 

 

 

120 240 240 120 24

154 428 468 244 50 71 236 294 164 35

14 52 72 44 10

1 4 6 4 1

 

 

 

 

 

 

 1 2 4 8 16

 

 

 

= 1 24

 

 

 

 24

18 23

6 1

 

 

 

となり、4次多項式 Q(n) = 24 1 (n 4 6n 3 + 23n 2 18n + 24) は Q(1) = 1, Q(2) = 2, . . . , Q(5) = 16 を満たす唯一の4次多項式である事が分かります。これは前節で見た 円の分割数の一般項に一致します。

ただし、唯一と言ってもそれは4次式の中で唯一と云うだけであって、5次以上であ ればもっと沢山あるわけです。具体的には

1

24 (n 4 6n 3 + 23n 2 18n + 24) + (n 1)(n 2)(n 3)(n 4)(n 5)R(n)

の形の多項式( R(n) は任意の多項式)は必ず題意を満たします。

(4)

Revised at 20:24, October 5, 2015 数学特論B 第1回 http://my.reset.jp/˜gok/math/advancedcourse/ 4

2.2 一般の場合

今の議論は最初の5項が 1, 2, 4, 8, 16 でなくても適用可能ですし、最初の3項でも、

何項が分かっている場合でも同じように適用されます(項数が多いと行列が大きくな り、計算は大変になりますが)。また、 『最初の何項』でなくても、任意の有限個の項が 分かっていさえすれば同様です。

一般に数列 a n の異なる n 1 , n 2 , . . . , n m 番目の各項が分かっている場合、つまり a n

1

= w 1 , a n

2

= w 2 , . . . , a n

m

= w m

である場合に(各 w j は定数)、 m 1 次(以下)の多項式 B(n) = b 0 + b 1 n + b 2 n 2 +

· · · + b m 1 n m 1 で、連立方程式

B(n 1 ) = w 1 , B(n 2 ) = w 2 , . . . , B(n m ) = w m (2.1) を満たすものがただ1つ常に存在します。なぜなら連立方程式を行列で書けば

 

 

1 n 1 n 2 1 · · · n m 1 1 1 n 2 n 2 2 · · · n m 2 1

.. . .. .

1 n m n 2 m · · · n m m 1

 

 

 

 

b 0

b 1

.. . b m

 

 

 =

 

 

w 1

w 2

.. . w m

 

 

であり、係数行列式は Vandermonde の行列式であるため n j が全て異なると云う条件か ら正則となり、逆行列を両辺に掛ければ解が求まってしまうからです。

そうして求まった m 1 次(以下)の多項式 B(n) を使って B(n) + (n n 1 )(n n 2 ) · · · (n n m )R(n)

と置けば( R(n) は任意の多項式)、これは連立方程式 (2.1) を満たしており、更に R(n) を調節する事によって他の項を思い通りの値にする事が出来るわけです。

数列は、その有限個の項が分かったとしてもそれだけでは決定されないと云う事が実 感出来ますね。

3 2項間漸化式

一般に2項間漸化式: a n+1 + ka n + f(n) = 0 は階差数列を使って解く事が出来ます。

まず数列の項を含まない部分を全て右辺に移動して、両辺を ( k) n+1 で割ると a n+1

( k) n+1 a n

( k) n = f (n) ( k) n+1 となりますから、ここで b n = ( a k)

nn

と置けばこれは

b n+1 b n = f (n) ( k) n+1 を意味し、

b n = (b n b n 1 ) + (b n 1 b n 2 ) + · · · + (b 2 b 1 ) + b 1 =

n X 1 j=1

f (j) ( k) j+1 + b 1

a n = ( k) n

n X 1 j=1

f (j)

( k) j+1 + ( k) n 1 a 1

となります。あとはシグマの部分を計算するわけですが、その難易は f (n) がどんなも のかによります。

Exercise

基本演習 1 平面内に直線が n 本あり、どの2本も平行ではなく、またどの3本も 1点では交わっていません。このとき平面は幾つの領域に分割されているでしょう か。漸化式を作り、それを解いて計算して下さい。

基本演習 2 数列 a n が漸化式: a n+1 a n = n 2 を満たし a 1 = 1 であるとき、その 一般項を求めて下さい。

基本演習 3 数列 a n が漸化式: b n+1 b n = 2 n を満たし b 1 = 0 であるとき、その 一般項を求めて下さい。

基本演習 4 数列 c n が漸化式: c n+1 3c n 3 n = 0 を満たし c 1 = 0 であるとき、

その一般項を求めて下さい。

参照

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