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数学特論A 第8回http://my.reset.jp/˜gok/math/advanced/ 1
行列の固有値と固有ヴェクター
1 定義
定義
1.1
正方行列M
が与えられたとします。あるゼロヴェクターでないヴェクター と実数
l
がM = l
と云う関係式を満たしているとき、
l
は行列M
の固有値(eigenvalue
)であると言 い、またヴェクター は行列M
の固有値l
に関する固有ヴェクター(eigenvector
) であると言います。例
1.2
√ − 1 8
− 2 7
! √ 2 1
!
= 3
√ 2 1
!
ですから、
3
は√ − 1 8
− 2 7
!
の固有値であり、また、
√ 2 1
!
は√ − 1 8
− 2 7
!
の固有値
3
に関 する固有ヴェクターです。注意
1.3
ゼロヴェクター は、任意の実数l
に対してM = l
を満たすのでM
の固 有ヴェクターである(どんな行列に対してもそうである)と考えても良さそうに思えま すが、慣例としてゼロヴェクターの事は固有ヴェクターとは言いません。もしも が行列
M
の(固有値l
に関する)固有ヴェクターであったならば、M = l
が成り立ちますから、このヴェクターの定数倍である様なヴェクター= k
は、M = M (k ) = k(M ) = k(l ) = l(k ) = l
となってやはり
M
の(固有値l
に関する)固有ヴェクターである事が分かります。従って例えば2つのヴェクター
√ 2 1
!
、
√ 10 5
!
は、どちらも行列
√ − 1 8
− 2 7
!
の(固有 値
3
に関する)固有ヴェクターである事は確かですが、そんな事を言ったところであま り意味がない。どちらか一方を言えばそれで十分ですわね。もしくは、k
√ 2 1
!
(
k
は0
以外の任意の実数)は
M
の(固有値3
に関する)固有ヴェクターである、などと言っても良いか(ゼロヴェ クターを固有ヴェクターから排除してしまったのでこんな風に『0
以外の』みたいな野 暮なコメントを付けざるを得ないです)。例
1.4 √
− 1 2 2 − 4
! √ 2 1
!
=
√ 0 0
!
= 0
√ 2 1
!
ですから、
√ 2 1
!
は√ − 1 2 2 − 4
!
の(固有値
0
に関する)固有ヴェクターです。例
1.5 √
− 1 8
− 2 7
! √ 0 0
!
=
√ 0 0
!
= 5
√ 0 0
!
ではあるけれども、
√
− 1 8
− 2 7
! √ p
1p
2!
= 5
√ p
1p
2!
となる様なゼロでないヴェクター
√ p
1p
2!
は残念ながら存在しません。なぜなら、
√ − 1 8
− 2 7
! √ p
1p
2!
= 5
√ p
1p
2!
=
√ 5 0 0 5
! √ p
1p
2!
から右辺を左辺に移項して
√ − 6 8
− 2 2
! √ p
1p
2!
=
√ 0 0
!
,
すなわち√ p
1p
2!
=
√ − 6 8
− 2 2
!
−1√ 0 0
!
=
√ 0 0
!
となってしまうからです。従って、
5
は√ − 1 8
− 2 7
!
の固有値ではありません。
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2 固有値の求め方
2.1
背景となる計算実数
l
は行列M
の固有値だと仮定します。固有値の定義によれば、M = l
となる様な
6 =
が存在しますので、さっきと同じ計算により、M = lE
あるいは(M − lE) =
となりますが、ここで左辺の行列M − lE
が正則ならば= (M − lE)
−1=
となってしまい、 がゼロヴェクターでないと云う事と矛盾してしまいます。従ってこ の行列
M − lE
は正則ではありません。事実
2.1 l
がM
の固有値であるならば、M − lE
は正則ではありません。今度は逆に考えて
M − lE
が正則でなかったとしましょう。すると、連立方程式:(M − lE)
x y z
=
0 0 0
は(今回は3次元で考えましたが、
M
が2次の正方行列なら2次元で考えればオッケー です)、x = 0, y = 0, z = 0
以外の解を持ちます。これはちょっと難しいので証明は後回しにしておきます。
当面は各自の計算経験を思い起こして、係数行列が正則でない場合の連立方程 式はどんな風になったかを思い出してみればまずまず納得出来ると思います。
この解を
x = p
1, y = p
2, z = p
3とし、=
p
1p
2p
3
と置けば(M − lE) =
ですから、これを変形して
M = l
が得られ、6 =
でしたからこれはl
がM
の固有値で ある事を示しています。事実
2.2 M − lE
が正則でなければ、l
はM
の固有値です。以上により実数
l
がM
の固有値である事は行列M − lE
が正則でない事と同値であ る事が分かりますが、正則かどうかは行列式を見れば分かるわけですから、これは事実
2.3
実数l
が行列M
の固有値である事は| M − lE | = 0
である事と同値です。と言い換えられます。
従って、行列の固有値を求めるには
l
の方程式| M − lE | = 0
の解を求めれば良い事 が分かります。この方程式の事を行列M
の固有方程式(a.k.a.
特性方程式)と言いま す。固有方程式は複素数解を持つ場合がありますが、これは固有値と呼ばない事にしま す(本当は複素行列で考えて複素固有値も考えた方がすっきりするんだけどね)。2.2
簡単な例題問題
2.4
行列
2 − 1 2
− 1 5 − 1 2 − 1 2
の固有値を求めて下さい。題意の行列を
M
と書く事にします。変形すると| M − lE | = Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø
2 − l − 1 2
− 1 5 − l − 1 2 − 1 2 − l
Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø
= Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø
3 − l − 1 2 3 − l 5 − l − 1 3 − l − 1 2 − l
Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø
となり、第1行から3 − l
を括り出せば| M − lE | = (3 − l) Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø
1 − 1 2 1 5 − l − 1 1 − 1 2 − l
Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø
= (3 − l) Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø
1 − 1 2 0 6 − l − 3 0 0 − l Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø
= − l(l − 3)(l − 6)
従って、固有値は
0, 3, 6
である事が分かります。Revised at 09:12, June 9, 2015
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3 同次方程式の解と係数行列の正則性
ここではさっきうやむやにした、
係数行列が正則でない様な連立方程式
M =
は、=
以外にも解を持つと云う事を3変数の場合に幾何学的に考えてみましょう。
この様に変数を含まない右辺の部分が である様な方程式を同次方程式と言います。
まず係数行列
M
を成分で書けば連立方程式は次の通りです:M =
a b c l m n s t u
,
ax + by + cz = 0 lx + my + nz = 0 sx + ty + uz = 0.
連立方程式の係数行列
M
の行列式を見てみるわけですが、行列式の値自体は行列を 転置しても変わらないので、転置した行列tM
の行列式を見る事にしますが、これは ヴェクターの内積と外積を使って次のように書くことが出来ます:|
tM | = Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø
a l s b m t c n u
Ø Ø Ø Ø Ø Ø Ø
=
a b c
·
l m
n
×
s t u
= · ( × )
この形で考えると、行列式が0
であるとはどういう事なのでしょうか。· ( × ) = 0
と云う事は、内積が0
ですから、, ×
いずれかのヴェクター(両 方でも良いですが)がゼロヴェクターであるか、両方ともゼロヴェクターでなければ互 いに直交するかです。しかし、基本的に
, ×
のいずれかがゼロヴェクターであれば明らかに· ( × ) = 0
ですから、これらは全てゼロヴェクターではないとしましょう。すると、 はゼロヴェクターではありませんので、考えられる可能性は、外積
×
がゼロヴェクターであるか、もしくは、 と×
が直交するか、どちらかです。さて、まず
×
がゼロヴェクターである場合ですが、,
は共にゼロヴェクターで はありませんので、これらの外積がゼロヴェクターになるのはこの2つのヴェクターが 平行である場合に限られます。一方 と
×
が直交する場合はどうでしょうか。×
は,
双方に直交するヴェクターでしたから、そのヴェクターと が直交する と言う事は、このヴェクターは2つのヴェクター,
が作る平面上にある事が分かりま す。つまり、3本のヴェクター, ,
は同一平面上にあると云う事です。以上の考察から、次の事が分かりました:
| M |
が0
であるための必要十分条件は、次のうちのいずれかが成り立つ事である:• , ,
いずれかがゼロヴェクターである。• ,
が平行である。• , ,
は同一平面上にある。しかしよくよく考えてみれば、この1、2番目の条件は、3番目の条件に含まれてし まいますね!従って,簡単に書けば、
事実
3.1 (A) M =
t≥ ¥
のとき
| M | = 0
であるための必要十分条件は、, ,
が同一平面上にある事である。となります。
次に、件の連立方程式が
=
以外の解を持つための条件を考えてみましょう。それは,単刀直入に言えば、要するに
aα + bβ + c∞ = 0 lα + mβ + n∞ = 0 sα + tβ + u∞ = 0
となる様な
α β
∞
6 =
があると言う事ですが、この事はちょっと視線を変えて、αx + βy + ∞z = 0
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と言う平面があって、その平面上に3点(a, b, c), (l, m, n), (s, t, u)
が乗っているのだ、と見る事が出来ますね。
これって,要するに、3つのヴェクター
, ,
が同一平面上にあるって云う事に他 なりません。以上から、事実
3.2 (B) M =
t≥ ¥
のとき、連立方程式
M =
が=
以外の解 を持つための必要十分条件は、, ,
が同一平面上にある事である。となって、2つの事実[
A
],
[B
]によれば、| M | = 0
である事と連立方程式M =
が=
以外の解を持つ事は同値である事が分かりました。注意
3.3
3本のヴェクターが同一平面上にある と云う言い方はちょっと不正確かも 知れません。僕が 3本のヴェクターが同じ平面上にある と言うのは、3本のヴェク ターの始点をそろえた時にヴェクターの矢印が3本とも平面上に乗っていると云う事、すなわち、それぞれの終点が3つありますが、揃えた1つの始点と3つの終点の合計4 点全てが同一平面上にあると云う事を意味しています。
Exercise
基本演習
1
次の行列の固有値を求めて下さい:(1)
0 1 0 0 0 1
− 4 4 1
(2)
2 3 − 2
− 2 − 2 1 4 − 1 6
(3)
2 − 1 1 6 − 1 0 6 − 2 1
(4)
0 − 1 − 1
1 2 1
− 1 − 1 0
(5)√ 0 − 1 3 2
!
(6)
√ − 1 8
− 2 7
!
基本演習
2
ヴェクター,
は行列M
の、同じ固有値l
に関する固有ヴェクターで あると仮定します。このとき任意の実数a, b
に対して、ヴェクターa + b
も(こ の和がゼロヴェクターでない限り)M
の固有値l
に関する固有ヴェクターである 事を証明して下さい。発展演習
3
ヴェクター,
は行列M
の、それぞれ固有値l, m
に関する固有ヴェ クターであるとします。このときl 6 = m
ならば と は平行ではない事を証明し て下さい。発展演習
4
行列M, N, P
はP
−1M P = N
を満たしているとします。このとき、M
とN
の固有値は(存在するならば)全て一致する事を証明して下さい。発展演習
5
2次正方行列M
は固有値l, m
をもつと仮定します。このとき| M | = lm
である事を証明して下さい。発展演習
6
2次正方行列M
は固有値l, m
をもつと仮定します。このときtrM = l + m
である事を証明して下さい。
ただし、
trM
とは、行列M = (m
ij)
の対角成分の和(trM = m
11+ m
22)であ るとします。発展演習
7 M
3= O
(ゼロ行列)を満たす行列M
は固有値0
をもつ事を証明して 下さい。発展演習
8
2次正方行列M
がt
M = M
を満たす(この様な行列を対称行列と言います)とき、
M
は(実)固有値を必ず もつ事を証明して下さい。発展演習
9
固有値をもたない2次正方行列の例を挙げて下さい。発展演習