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厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究
分担研究報告書(平成 29 年度)
「診断基準の改訂」
カプセル内視鏡所見を取り入れたクローン病診断基準の改訂について
研究協力者 江﨑幹宏 九州大学病態機能内科学 講師 研究分担者 平井郁仁 福岡大学筑紫病院炎症性腸疾患センター 診療教授
研究要旨:多施設共同研究で集積された 108 例のカプセル内視鏡画像から粘膜傷害程度がほぼ同等のクロ ーン病(CD)と非 CD 各 25 例、計 50 例を抽出し、カプセル内視鏡で検討した粘膜傷害所見の観察者間変動お よび観察者内変動を検討した。その結果、観察者内変動では粗大病変、病変配列に関する一致度は良好で あったが、小病変分類は中等度の一致度にとどまった。一方、観察者間変動は小病変分類に関する一致度 は低かったが、粗大病変、病変配列の一致度は消化器内科臨床経験年数やカプセル内視鏡読影経験数の増 加に伴い上昇した。以上から、カプセル内視鏡における CD の拾い上げに際しては、主要所見である縦走潰 瘍や敷石状外観に加えて小病変の配列に着目することが有用と考えられた。
共同研究者
松本主之(岩手医科大学医学部内科学講座消化 器内科消化管分野)、佐藤祐邦(福岡大学筑紫病 院炎症性腸疾患センター)、矢野豊(福岡大学筑 紫病院消化器内科)、高津典孝(田川市立病院消 化器内科)、竹内健(東邦大学医療センター佐倉 病院消化器内科)、長沼誠(慶應義塾大学医学部 消化器内科)、大塚和朗(東京医科歯科大学医学 部附属病院光学医療診療部)、渡辺憲治(兵庫医 科大学腸管病態解析学)、小金井一隆(横浜市立 市民病院炎症性腸疾患科)、杉田昭(横浜市立市 民病院炎症性腸疾患センター)、二見喜太郎(福 岡大学筑紫病院臨床医学研究センター外科)、味 岡洋一(新潟大学大学院医歯学総合研究科分 子・診断病理学分野)田邊寛)(福岡大学筑紫病 院病理部)、岩下明徳(福岡大学筑紫病院臨床医 学研究センター病理部)
A. 研究目的
カプセル内視鏡(CE)所見に基づいた本症の診 断基準については、これまで欧米からいくつかの 案1)−3)が報告されているが、いずれの基準も曖
昧なもので妥当性の評価も行われていないのが現 状である。実際、OMED‑ECCO コンセンサス4)にお いても現時点では CE 所見に基づいた妥当な CD 診 断基準はないと記載されている。H26〜28 年度に かけて実施した「新たな診断基準作成—カプセル内 視鏡所見に基づいたクローン病診断基準の確立—」 における分担研究において、CD と他の小腸炎症性 疾患の鑑別に有用な CE 所見・基準を見出すことを 目的とし 108 例の CE 所見を検討した。その結果、
主要所見である縦走潰瘍、敷石像に加えて、CD で は線状びらんならびにアフタ・びらん病変の縦走 配列・輪状配列といった病変配列の規則性が高率 に見られた。続いて、CD 拾い上げにおける CE 所 見分類の妥当性・再現性を評価するために 2 名の 消化器内科医による観察者間変動を検討した。し かし、妥当性・再現性の検討は十分と言えず、H29 年度からの本分担研究では更なる観察者間変動、
観察者内変動を中心とした検討を行い、CD 診断基 準に追記し得る CE 所見を明らかにすることを目 的とした。
B. 研究方法
①対象例の抽出
116 集積された 108 例から下記選択・除外基準を満 たす症例を抽出し、ルイススコアならびに病変分 布を概ね対応させた CD25 例、非 CD25 例。
a) 選択基準
CD 例:線状びらん、輪状配列、縦走配列のうち、
少なくとも1つの所見を認める。
非 CD 例:最終診断確定例 b) 除外基準
前処置スコア総和 5 未満の前処置不良例
②検証試験における注意事項
検証試験における CE 読影に際しては、画像表示 モード、読影速度などの読影条件を統一した上で、
CE 所見の抽出を行った。
C. 研究結果
①検証試験対象例の内訳および臨床像の比較 Table 1, 2 に対象例の内訳および CD 群、非 CD 群における臨床像の比較を示す。
(Table 1)
(Table 2)
Table 2 に示すように、CD 群では非 CD 群に比較
して有意に若年であり肛門病変を有する例が多か った。しかし、検査データ、前処置スコアおよび ルイススコアに 2 群間で有意差を認めなかった。
②CE 所見の観察者間および観察者内変動 Table 3 に読影医 3 名と主読影医の所見一致率 および一致度(κ 係数)を示す。
(Table 3)
読影医 1 は消化器内科経験年数 2 年、CE 読影経験 10 例、読影医 2 は消化器内科経験年数 8 年、CE 読影経験 30 例、読影医 3 は消化器内科経験年数 8 年、CE 読影経験 200 例以上である。その結果、微 細病変の一致度はいずれも不良であったが、粗大 病変や病変配列に関する所見一致率、一致度は消 化器内科経験年数、CE 読影経験数に比例して良好 となった。
Table 4 に主読影医における所見一致率および 一致度(κ 係数)を示す。
(Table 4)
主読影医における観察者内変動では微細病変は中 等度の一致度にとどまったが、粗大病変、病変配
117 列における一致度は良好であった。
③ 軽微な CE 所見に基づいた CD 診断能
Table 5 に軽微 CE 所見に基づいた CD 診断能を 示した。主読影医の評価から抽出された線状びら ん、微細病変の縦走あるいは輪状配列の CD 診断に 対する感度、特異度,陽性的中率(PPV)、陰性的 中率(NPV)を算出すると、良好な特異度、PPV が 確認された。これらの病変配列に線状びらんの有 無を併せた場合の CD 診断能についても検討した が、付加的効果はみられなかった。
(Table 5)
D. 考察
CD 群と非 CD 群の CE 所見を検討した結果、主要 所見である縦走潰瘍、敷石像に加えて、小病変で は線状びらんが CD 群で多く、これらの小病変が輪 状配列あるいは縦走配列する所見が CD 群で高率 に確認された。そのため、先行分担研究に引き続 き本分担研究では、CE 所見分類のさらなる妥当 性・再現性の検討を行った。
その結果、敷石像については読影医の消化器内 科経験年数、CE 読影件数に関係なく中等度の一致 度を認めたが、その他の粗大病変ならびに病変配 列の一致度は消化器内科経験年数、CE 読影件数に 大きく影響されると考えられた。一方、微細病変 に関してはこれらの臨床経験に関係なく所見の一 致度は不良であった。主読影医における観察者内 変動については、粗大病変ならびに病変配列の一 致度は良好であった。しかし、微細病変における 一致度は中等度に留まった。
観察者間変動におけるばらつきについては、①
検証試験に際しての CE 所見に関する意見のすり 合わせ不足、②読影医間での炎症性腸疾患画像診 断における経験の差異、③CE 読影に対する経験の 差異が要因と考えられた。加えて、観察者内変動 で微細病変の一致度が中等度にとどまった要因と して、CE が生理的条件下で撮像された内視鏡画像 を判定するため、撮像された微細病変が腸管内の 条件に影響される可能性があると推測された。
これらの検証結果から、CD 拾い上げに有用な CE 所見としては CD の主要所見である縦走潰瘍、敷石 像に加えて、小病変の配列に着目することが有用 と考えられた。本 CE 所見を CD 診断基準に付記し 得るか否かは、多数例を用いた前向き検討で検証 する必要があるが、現時点では CD 診断基準の副所 見「消化管の広範囲に認める不整形〜類円形潰瘍 またはアフタ」の(註 9)に「十二指腸・小腸で は kerckring 襞状に輪状に多発する場合もある」
との文言を加えることも可能ではないかと思われ た。
E. 結論
CE 所見分類の検証試験の結果、CD 主要所見に加 えて小病変の配列に着目することが CD 拾い上げ に有用と考えられた。今後の方針として、本 CE 所見分類をもとにした CD 拾い上げに有用なスコ アリング式の作成を目指したい。
(参考文献)
1. Eliakim R, et al.: Eur J Gastroenterol Hepatol, 15:363‑7, 2003
2. Mow WS, et al.: Clin Gastroenterol Hepatol, 2:31‑40, 2004
3. Dubcenco E, et al.: Gastrointest Endosc, 62:538‑44, 2005
4. Bourreille A, et al.: Endoscopy, 41:618‑37, 2009
F. 健康危険情報 なし
118 G. 研究発表
1. 論文発表
Esaki M, et al. Capsule endoscopyfindings for the diagnosis of Crohn s disease: A nationwide case‑control study. (under submission) 2. 学会発表
なし
H. 知的財産権の出願・登録状況 (予定を含む) 1. 特許取得 なし
2. 実用新案登録 なし