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埼玉県における残留農薬検査の取り組み

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Academic year: 2021

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(1)

点と年によって大きく異なっています。これは,その 時々に全国的に残留農薬問題が起こり,その影響が反映 されているものと考えられました。また,近年では作物 試料数は,ほぼ

100

点となっています。9年間で,作物 試料の総数は

688

点です。

次に,採取してきた作物について,どのような農薬を 分析するかを決めます。分析する農薬は,栽培履歴の聞 き取り調査の結果,散布履歴がある主要な農薬を

1

作物 について数種類選択し,分析対象農薬とします。また,

特に残留性が高い農薬を選択する場合もあります。表―

1

の分析農薬種類数は,その年度にこれだけの種類の農 薬を分析したという意味で,作物の種類によって分析す る農薬の種類も異なります。

作物試料

1

点に対し分析する農薬の種類数を掛け合わ せたものを分析検査数とします。年度ごとの分析検査数 は,2004年が特別に少なく

80

点でありましたが,他の 年はほぼ

200

点以上分析しました。2003年度は特に多

674

点分析を行いました。9年間で,分析検査数は

2,442

点でした。

表―

2

に作物種類別の分析検査数を示しました。2000

08

年の

9

年間に検査した作物種類数は,19種類でほ とんど野菜です。分析検査数ではキュウリが最も多く

524

点,次いでブロッコリー

290

点,ホウレンソウ

283

点で以下,イチゴ,トマト,ナス,ネギ,コマツナの順 となっています。平成

18

年度野菜生産出荷統計(農林 水産省,2008)によれば,埼玉県では,キュウリは全国 は じ め に

埼玉県では「食の安全県民会議」を開催し,食品の安 全性に対する施策に対し,一般消費者の方,学識経験者,

マスコミ等メディアの方,生産者,加工・流通業の方を 委員として,広く意見を伺っています。

そこで出される意見の多くは,農薬のことがほとんど です。やはり,消費者の方をはじめとして,他の分野の 方たちにとっても,農産物の安全性というと農薬のこと になってしまうようです。

埼玉県では,1970年代から農薬の適正な使用方法を 推進することを目的に,県産農作物の残留農薬の分析を 行ってきました。これは,保健医療部で行っている農作 物中に残留基準値を超えて農薬が残留していないかの検 査,すなわち,農作物等食品の収去検査と異なり,農林 水産省が定めている,「農薬使用基準」どおりに農薬を 使えば,収穫時には残留基準値以下に必ずなるというこ とを前提にした調査です。生産者の方が農薬を使う場合 には,「農薬使用基準」どおりに農薬を適正に使い,県 内産農作物の安全安心を図ってもらうという趣旨で調査 を実施してきました。

本稿では,最近の

9

年間,すなわち

2000

08

年の調 査についてとりまとめました(埼玉県農林総合研究セン ター,2000

2008)

I

調 査 の 内 容

調査は,県内農家が栽培している作物について出荷前 に病害虫防除所の担当職員が採取した試料を,埼玉県農 林総合研究センターで分析しました。

年度ごとの作物試料数は,表―

1

に示しました。作物 試料数とは,例えばキュウリであれば,異なる農家

10

軒から採取した試料数は,10と数えます。さらにナス

5

軒の農家から採取してくれば

5

と数え,併せて

15

の作物試料と考えます。すなわち,この数だけ,農家が 生産した農作物を分析試料として採取してきたというこ とです。作物試料数は少ない年で

40

点,多い年で

165

埼玉県における残留農薬検査の取り組み 567

――

47

――

Pesticide Residue Testing Activities in Saitama Prefecture. By Kenichi SATO

(キーワード:農薬使用基準,残留農薬,分析検査)

埼玉県における残留農薬検査の取り組み

とう けん いち

埼玉県農林総合研究センター リレー随筆:残留農薬研究の現場から

7

表 −1 調査年度別の分析内容 調査年度 作物試料数

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

40 40 40 165 70 46 89 99 99

合計 688

(注)分析農薬種類数は年度間で重複あり.

分析農薬種類数 分析検査数 8

9 18 30 5 19 15 14 11

190 200 200 674 80 194 310 276 318

―― 2,442

(2)

そこで次に,残留基準値〜残留基準値の

1/5

の間に 分析値があるものの数を求め,分析検査数に対する割合 を求めました。その結果は表―

5

に示したとおりです。

この表から

2003,2004,2008

年度の

3

年間は,残留農 薬分析値が残留基準値以下であるが,残留基準値の

1/5

以上であったものが数点認められました。9年間を通し てでは,その割合は

0.6%でありました。

3

位,ブロッコリーは第

2

位,ホウレンソウは第

2

です。また,ネギが第

2

位で,コマツナは第

1

位と生産 量がおおむね全国で上位の野菜の分析数が多くなってい ます。

表―

3

に年度ごとの検査作物の具体的な種類を示しま した。少ない年で

4

種類,多い年で

13

種類と年度によ りその数は異なりました。

II

調 査 結 果

1

分析結果の残留基準値との比較

表―

4

2000

08

年の

9

年間に農作物の残留農薬を 検査した検体中で,残留基準値を超過した数と割合を示 しました。各年度とも,いずれも残留基準値以下であり,

残留基準値を超過したものはありませんでした。すなわ ち,超過割合は

0%でありました。これらの結果から,

農家では農薬を散布する場合「農薬取締法の農薬使用基 準」を遵守して作物栽培を行っているものと推察されま した。

2

農薬分析値の分布

本調査での検体試料の残留農薬分析にあたっては,残 留基準値の

1/10

1/100

を主要な定量限界の範囲とし て分析を実施しています。言い換えれば,厚生労働省で 定 め て い る 作 物 , 農 薬 ご と の 残 留 基 準 値 の

1 / 1 0

1/100

までの数値を求めることができます。

植 物 防 疫  第65巻 第9号 (2011年)

568

――

48

――

表 −2 作物種類別分析検査数 順位 作物種類 分析検査数

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

キュウリ ブロッコリー ホウレンソウ イチゴ トマト ナス ネギ コマツナ ニンジン ミニトマト ダイコン サントウサイ ブドウ ハマボウフウ ダイコン(葉)

ナシ サンショウ 玄米 チンゲンサイ

524 290 283 271 260 223 214 145 108 24 20 18 16 11 10 9 8 5 3

合計 2,442

表 −3 調査年度別の分析作物の種類 調査年度 作物種類数 作物名

2000 4 イチゴ,キュウリ,ニンジン,ホウレン ソウ

2001 4 トマト,ナス,ネギ,ホウレンソウ 2002 6 イチゴ,キュウリ,トマト,ネギ,ホウ

レンソウ,玄米

2003 13 イチゴ,キュウリ,サンショウ,トマト,

ナシ,ナス,ニンジン,ネギ,ハマボウ フウ,ブドウ,ブロッコリー,ホウレン ソウ,ミニトマト

2004 9 イチゴ,キュウリ,コマツナ,ダイコン,

ダイコン葉,トマト,ネギ,ブロッコリ ー,ホウレンソウ

2005 7 イチゴ,コマツナ,ダイコン,トマト,

ネギ,ブロッコリー,ホウレンソウ 2006 10 イチゴ,コマツナ,サントウサイ,チン

ゲンサイ,トマト,ナス,ニンジン,ネ ギ,ブロッコリー,ホウレンソウ 2007 7 イチゴ,キュウリ,ナス,ニンジン,ネ

ギ,ブロッコリー,ホウレンソウ 2008 6 イチゴ,キュウリ,コマツナ,ナス,ブ

ロッコリー,ホウレンソウ

表 −4 残留基準値超過数およびその割合

調査年度 残留基準値超過数 分析検査数 基準超過割合(%)

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

0 0 0 0 0 0 0 0 0

190 200 200 674 80 194 310 276 318

0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

合計 0 2,442 0.0

(3)

さらに同様に,残留基準値〜残留基準値の

1/10

の間 に分析値があるものの数を求め,分析検査数に対する割 合を求めました。その結果は,表―

6

に示しました。

2003,2004,2006,2008

年度の

4

年間にその数は数点 認められました。9年間では,1/5以上に比べ

1/10

上の場合には

0.4%増加し,1.0%となりました。

近年,残留農薬の分析に限らず化学物質の分析では,

機器の進歩が著しく,最小検出濃度が低くなり,年々極 微量な分析が可能となっています。したがって,残留基 準値の

1/10,1/100,1/1,000

と際限なく分析値を出す ことができ,残留基準値以下であるが,何々

ppm

検出 されたということが言えるようになってきました。本調 査では,すでに述べたように,主要な範囲は残留基準値

1/10

1/100

を定量限界として分析を実施していま す。そのため,残留基準値〜定量限界までの範囲に農薬 の残留値がある場合には,残留基準値以下であっても定 量され分析値が出てくることになります。そこで,残留 基準値の

1/10

以下で行った分析について,定量限界値 以上で分析値を定量化できた数とその割合を求めまし た。結果は表―

7

に示したとおりです。

それによると,2000

08

年の

9

年間を通した割合は

5.6%となりました。すなわち, 2,409

点の試料を分析し,

そのうちの

136

点は定量限界以上で何

ppm

という値が 求められ,残りの

2,273

点は定量限界以下の濃度を示し たため不検出となりました。

以上のような結果を総括すると,作物中の残留農薬分 析値の分布は,図―

1

の模式図に示したようになりまし た。すなわち,分析検査数

1,000

点の試料を分析すると 残留農薬基準値を超えるものはありません。残留農薬基 準値以下の分析値の分布を見ると,残留農薬基準から残 留農薬基準の

1/5

の中に

1,000

点中

6

点存在し,残留農 薬基準の

1/5

から残留農薬基準の

1/10

の間に

1,000

4

点存在し,残留農薬基準の

1/10

から定量限界の間

1,000

点中

46

点存在しました。そして,定量限界以

下には

1,000

点中

944

点存在したということになります。

この結果は,妥当な結果と考えられました。農薬の登 録をとるための作物残留性試験では,登録申請のための 作物残留データ値が,残留基準値の

1/10

以下になるよ うな使用方法(散布方法)がとられる場合がほとんどと 思われます。したがって,登録農薬の使用基準に則って 使用している限り,農薬濃度は残留基準値の

1/10

以下 になるのが多数を占めると考えられます。

以上のような検討から,「農薬使用基準」を遵守して 農薬散布する限り,当該作物の農薬残留の心配はほぼな いと考えられました。

埼玉県における残留農薬検査の取り組み 569

――

49

――

表 −7 定量限界以上の数およびその割合

調査年度 定量限界 以上の数

分析検査

定量限界以上 の割合(%)

実際の定量限界 の範囲(ppm)

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

0 0 7 92 20 6 4 0 7

190 200 192 654 75 194 310 276 318

0.0 0.0 3.6 14.1 26.7 3.1 1.3 0.0 2.2

0.050.01 0.050.01 0.10.001 0.050.005

0.10.005 0.10.005 0.20.004 0.10.005 0.10.0013

合計 136 2,409 5.6

(注1)定量限界が残留基準値の1/10以上の分析は除いた.

表 −5 残留基準値の1/5以上の数およびその割合

調査年度 残留基準値の1/5

以上の数 分析検査数 残留基準値の1/5 以上の割合(%)

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

0 0 0 8 5 0 0 0 1

190 200 199 654 75 194 310 276 318

0.0 0.0 0.0 1.2 6.7 0.0 0.0 0.0 0.3

合計 14 2,416 0.6

(注)定量限界が残留基準値の1/5以上の分析は除いた.

表 −6 残留基準値の1/10以上の数およびその割合

調査年度 残留基準値の1/10

以上の数 分析検査数 残留基準値の1/10 以上の割合(%)

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

0 0 0 13 7 0 1 0 3

190 200 192 654 75 194 310 276 318

0.0 0.0 0.0 2.0 9.3 0.0 0.3 0.0 0.9

合計 24 2,409 1.0

(注)定量限界が残留基準値の1/10以上の分析は除いた.

(4)

より大手の流通業者との間で有利な販売ができていると のことで,やはり農薬に対する「安全・安心」が販売に 対して大きな武器になることを改めて認識しました。今 後,当農林総合研究センターにおいても残留農薬の一斉 分析システムを組みたてるための研究を実施していく必 要性を感じています。

なお,本稿で述べた残留農薬の分析は,農林総合研究 センター農産物安全性担当(当時)の農薬関係課題担当 者各氏によって行われたものです。

引 用 文 献

1)埼玉県農林総合研究センター(2000): 平成12年度 農産物安

全性担当成績書,埼玉,p. 3234.

2) (2001): 平成13年度 農産物安 全性担当成績書,埼玉,p. 111113.

3) (2002): 平成14年度 農産物安 全性担当成績書,埼玉,p. 112119.

4) (2003): 平成15年度 農産物安 全性担当成績書,埼玉,p. 138148.

5) (2004): 平成16年度 農産物安 全性担当成績書,埼玉,p. 118124.

6) (2005): 平成17年度 農産物安 全性担当成績書,埼玉,p. 122130.

7) (2006): 平成18年度 農産物安 全性担当成績書,埼玉,p. 104114.

8) (2007): 平成19年度 農産物安 全性担当成績書,埼玉,p. 8291.

9) (2008): 平成20年度 農産物安 全性担当成績書,埼玉,p. 7076.

10)農林水産省(2008): 平成18年度野菜生産出荷統計,農林統計

協会,東京.

お わ り に

残留農薬に関して安全・安心のシステムと言います と,埼玉県では,10年以上前に農林総合研究センター 農産物安全性担当主幹・中村幸二氏(当時)や

JA

ふか や営農指導センターの生方藤一氏らによって作り上げら れた

JA

ふかや「安全・安心野菜システム」があります。

これは,特別栽培農産物生産農家のうち,特に「安全・

安心野菜システム」に参画する農家と,あらかじめ使用 する農薬の種類を協定で決めておき,使用した農薬につ いて出荷前にイムノアッセイという方法で残留農薬のチ ェックを行い,基準値の

1/10

以下であれば「特別栽培 農産物(残留農薬チェック済み)」として出荷できると いうシステムです。

本稿で述べた農作物の残留農薬分析検査は,一つの農 薬ごとに分析を行う個別分析です。これは手間と時間が かかり限られた人員,予算の中で実施するのはかなり困 難な状況になっています。筆者は,2007年に宮崎県農 業総合試験場にうかがい,安藤 孝副部長(当時)が開 発した超臨界抽出・一斉分析についてお話を聞きまし た。このシステムは数百点の分析が一度にできるシステ ムですが,実際に宮崎県内の

JA

の分析センターなどに 導入され,現場で使われていることに驚かされました。

宮崎県では,このシステムによる残留農薬のチェックに

植 物 防 疫  第65巻 第9号 (2011年)

570

――

50

――

残留基準値の1/10 以下〜定量限界(46)

1,000  

1,000

800

600

400

200

0

定量限界以下(944) 

残留基準値以下 

〜1/5以上6  残留基準値の1/5以  下〜1/10以上4 

図 −1 作物中の残留農薬分析値の分布

(分析検体数1,000当たりの数)

参照

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